diff --git "a/data/en-ja/tst2022/IWSLT.TED.tst2022.en-ja.ja2.xml" "b/data/en-ja/tst2022/IWSLT.TED.tst2022.en-ja.ja2.xml" new file mode 100644--- /dev/null +++ "b/data/en-ja/tst2022/IWSLT.TED.tst2022.en-ja.ja2.xml" @@ -0,0 +1,1825 @@ + + + + +37498 +2014年は私にとって重大な年でした。 +皆さんもきっと、自分にとって大きな意味を持つ、重大な年を経験されたことがおありかと思います。 +私の場合はこんな感じでした。10月3日、2度目の妊娠をしました。 +そして、10月8日、父が癌で亡くなりました。 +そして、11月25日、夫のアーロンがステージ4のこうが腫(脳腫瘍)を3年間患った後に亡くなりました。 +楽しんでますよ。 +周りの人はひっきりなしに私を連れ出すのが大好きです +社交で大忙しです +この人生の節目について話すと たいていはこんな反応が帰ってきます: +「私には想像もつかない」と +けれど 想像できると思います。 +そうできるんです。 +そして、いつか皆さん自身にも起こることなので、想像すべきだと思っています。 +もちろんこの特定の順序や速さで死別が訪れるわけではないでしょうし、私はとても楽しんでいます。また私の調査結果に皆さんはきっと衝撃を受けるはずです。皆さん愛する人は全員が 100% 死にます。 +だから皆さんTEDに来たんですよね。 +さて こうした死別を経験したために私は死や死別について話すことを仕事にしました。なぜなら、簡単にまとめられるからです。自分の経験だけでなく他の人々が経験した。死別や悲しみについてもです。 +本当に「ニッチ」だと言わざるを得ませんよね。 +あんまり他には見ない「ニッチ」だし、もっと稼げればいいんだけど。 +私は前向きになれる本を何冊か執筆し、元気の出るポッドキャストを主催したり、小さなボランティア活動も始めました。 +私は少しでも多くの人が、受入れにくい状況に対処しやすいように援助したいと思っています。でも「悲しみ」は扱いにくいものですよね。 +他の人の「悲しみ」であれば、なおさら居心地の悪いものです +その仕事の一部として、私の友人で 同じく未亡人である「モエ」と始めたグループがあり、私たちはこのグループを「ホットヤングウィドウズクラブ」と命名しました。 +実在するグループで会員証とTシャツもあります。 +そして 夫や妻 彼女や彼氏などの大切な人が亡くなったとき、実際に結婚しているかは関係なく、あなたの友達や家族はあらゆる知り合いのつて、友人の友人まで辿って同じような経験をした人を探し回るでしょう。見つけたら あなたと引き合わせて互いに話させるんです。他の人が悲しい話を聞かずに済むようにね! +それが私たちの活動です。 +男性、女性、同性愛者、異性愛者、既婚、事実婚などの人々が自身の身近な不幸について語ったり、話しあったりして、自分の周囲の人々が まだ聞く心の準備ができていないことや耳にしたくないことを話したりできます。 +非常に幅広い会話をすることができます。 +例えば、「2週間前に夫が亡くなって、セックスのことが頭から離れないんだけど、これって普通なの?」みたいな感じです。 +そうです。 +「プロパティ ブラザーズを見てもそう思うの」とか +普通ではないけどアリでしょう。 +他にも「外出したときに明らかに何十年も連れ添った年配の2人が手を繋いでいるのに出会うと、それを見て想像するの、2人が一緒に経験した様々なこと―良いことも悪いことも、色々ね。どっちがゴミ出しをするかみたいな口論まで 。怒りで煮えくり返ってしまう!」とか +これには私も同意します。 +私たちがグループでする会話の多くは、参加者の内に留めておくものですが、私たちが話す事柄の中にはグループの外の世界―悲しみと隣り合っていながら、まだ悲しみに直面していない世界にとても役に立つこと���あるのです +お分かりかもしれませんが、私は非科学的な研究にしか興味もなければ、もしくはできもしないので、グループへ行きこのように言いました。「大切な人が亡くなったときのことを覚えていますか?」と。皆さん覚えておられました。 +「人に言われたことを全部覚えていますか?」 +「覚えてるとも」 +「一番嫌だった意見はなんですか?」 +多くのコメントや答えが返ってきました。本当に様々な意見がありましたがこの言葉が一番トップに浮上しました。 +「次へ進みましょう」 +さて 2014年以来私はすごくハンサムなマシューという男性と再婚し、私たちの混合家族には4人の子供がいて、アメリカのミネソタ州ミネアポリスの郊外で暮らしています。 +レスキュー犬も飼っています。 +私はミニバンに乗っています。触れなくてもドアが自動で開くような車です +どの「メジュレ」に照らしても良い人生です。 +「基準」をこんな発音で、言ったのは初めてですけど。 +なぜそう言ったのかわたしにもわかりません +他の人がそう言うのを聞いたこともありません +それが正しい言い方のような気もしてくるのが、ここが英語という言語のだめな点ですよね。 +母国語に加えて英語も話せる人には本当に感心します。素晴らしいです。 +しかし、どう考えても・・・。 +誰が見ても、本当に素晴らしい人生なのですが、私はまだ「次に進んで」はいません。 +次に進んではいませんし、この言葉がとても嫌いで他の人が嫌がる理由がわかります。 +なぜなら この言葉はアーロンの人生と死と愛情は瞬間に過ぎず、後ろに置いていくことができるもので、そうすべきだと示唆しているからです。 +私はアーロンのことを話すときつい現在時制になってしまい、自分は変なんだと常に思ってきました。 +そして、誰もがそうしていることに気がつきました。 +それは状況を受け容れられないとか、忘れっぽいからではなく、私たちが失った 愛する人が私たちにとっては存在しているからです。 +だから 私が「アーロンは...」とあたかも現在存在しているかのように表現するのは・・・ +まだアーロンが、現在にいるからなのです +彼がかつて存在していたのとも違いますし―それには及びません。「今も存在している」と教会の人々が言うのとも違います。 +その存在は消せるものではないので、私にとっては存在しているのです。 +今も、私のこの仕事にもアーロンの存在はありますし、アーロンとの子供の中にも、他の3人の子供たちの中にも、アーロンの存在はあります。アーロンに会ったこともなければ、血縁関係にもありませんが、その子たちが私の人生にいるのは、私がアーロンと過ごしてそして失ったからなのです。 +マシューと私の結婚にも彼の存在はあります。アーロンの生涯と愛情と死があったからこそ、私はマシューが結婚したいと思う女性になれたからです。 +だから 私はアーロンから次へと進んだのではなく、アーロンと一緒に前に進んでいるのです。 +アーロンの遺灰は彼が愛したミネソタ州の川にまきました。袋が空になると―なぜなら火葬されると遺灰はビニールの袋に入れられますよね―私の指の間にはまだ灰が残っていました。 +そして、手を水で洗い流すこともできたのですが、代わりに 私は手を綺麗になめました。すでに失ったもの以上のものを失うのが怖くて、彼がいつも自分の一部であることを確認するのに必死だったからです。 +けれど もちろん彼はいるのです。 +大切な人があなたともう少しだけ一緒に生きていられるように、3年間も体に毒であるものを受け入れ続けるのを見たらそれは心にずっと突き刺さって残ります。 +出会った夜のあの健康だった彼が、無���消えていくのを目の当たりにすると、ずっとそれは心に残ります。 +まだ2歳にもなっていない息子が、父親の人生の最後の日にベッドまで歩いて行って、まるで数時間後の出来事を予期しているかのように「お父さん大好きだよ。お別れだね。バイバイ」と言うのを見たら +それはあなたの心に残ります。 +自分を本当に理解して、ありのままの自分を見てくれる人と、とうとう本物の恋に落ちてこう思ったら 「なんだ。ずっと間違えていたんだ。愛は駆け引きでもリアリティ番組でもなく、こんなにも穏やかなんだ。たとえ すべてが混沌としていて、物事が手からこぼれ落ちて、たとえ彼がいなくなっても、私たち2人を結ぶ目に見えない穏やかな糸が愛なんだ」 +それはあなたの心に残ります。 +かつてのわたしたち2人の習慣で、私の手はいつも冷たくて、彼は温かかったので、私は氷のように冷たい手を彼のシャツの中に入れて、 +彼の温かい体に押しあてていました。 +そして、彼はそれをとても嫌がりました。 +それでも、私を愛してくれました。彼が亡くなったあとアーロンとベッドに横になり、私は手を彼の体の下に入れて、彼のぬくもりを感じました。 +私の手が冷たかったかも分かりませんが、そうすることができるのが最後だとは分かっていました。 +そして、その記憶はいつまでも悲しいものだと。 +このことを思い出すといつも心が悲しくなります。 +もし私が600歳のホログラムになったとしてもです。 +彼との出会いの記憶が、いつまでも私を笑わせてくれるように。 +悲しみは空虚な空間ではなく、他の様々な感情と同時にまた混ざり合って起こるものです。 +私は 「現在の夫」であるマシューに会いました。本人はこの肩書きが好きでないそうですが、 +でもとても正確な表現ですよね。 +私はマシューと出会って +私を愛してくれている人たちの間から、「終わった!という安堵のため息が聞こえてきました。 +やりとげたんだ。 +ハッピーエンドだ!めでたしめでたし。 +わたしたちもよく彼女を支えたよ」と。 +その筋書きは私にとってもとても魅力的で、そうなのかもと思いもしましたが、そうではありませんでした。 +別の章が始まったのです。 +「あなたがとても好き」というすばらしい章でした。 +けれど、特に始めのうちはパラレルワールドのようでもあり「人生を自分で切り開く」という2つの並行する筋書きが用意されている、80年代の物語のようでもありました。 +マシューに心を開くと、脳内では「アーロンのことを考えていたいんでしょ?過去も今も未来も?」と尋ねてきて、私は考えていたいと思いました。 +すると突然2つの物語が一気に広がりました。マシューと恋に落ちたことで、アーロンの死で失ったものの大きさを、心から実感することができたのです。 +同じくらい大事なことに、私のアーロンへの愛と悲しみ、そしてマシューへの愛情は相反する力ではないことに気付くことができました。 +互いに絡み合っているものであり、 +実は同じものなんです。 +私は...両親に言わせると +特別ではありません。 +彼らには4人の子供がいて、彼らはまるで......率直に言って。 +しかし、私はそうではありません、私は特別な存在ではありません。 +毎日、毎日、世界中で恐ろしいことが起きていることは十分承知しています。 +ずっとですよ。 +言った通り、私は楽しんでいますが。 +人々は毎日 深く自分を変えてしまい、傷を残すような別れを経験しています +仕事の一部として私がやっているポッドキャストで、人々の身に起きた最悪の出来事について話すことがあります。 +時には、愛する人を亡くした経験が、数日前や数週間前や数年前数十年前の出来事であることもあります。 +私がインタビューする人々は大切な人との別れの内に、自分を閉ざすこともなく生活の中心にもしてはいません。 +彼らは生活を続けており、世界は周り続けています。 +しかし、彼らが赤の他人の私に愛する故人のことを話してくれるのは、死別の経験が喜ばしい経験と同じくらいに私たちに影響し、形作ってくれるものだからです。 +同じくらい決定的に。 +お悔やみ状やお見舞いの差し入れが、来なくなってからも ずっとです。 +人生の喜びや不思議を経験している人たちに「次へ進む」ように言ったりしませんよね? +「出産おめでとう」カードを送っておいて、5年後に「また誕生会?もうよしてよ」なんて思いません。 +分かってるって、5歳なんでしょ。 +すごいねー なんて。 +死別の悲しみというのは恋や出産や 「THE WIRE/ザ・ワイヤー」というドラマのようなもので、実際に経験するまでは理解できないものです。 +そして いったん経験すれば、恋に落ちたり、赤ちゃんを産んだり死別して、葬儀の最前列に座ることになってみると理解できるのです。 +自分が経験していることが、一瞬のものでもなければいつか癒える骨折でもなく何か永続的なものなのだと分かるのです。治ることのないものです。 +致命的ではなくても、死別の悲しみはそう思えることもあります。 +そして お互いに防ぐことができなければどうしたらいいのでしょうか? +一体 何ができるというのでしょう?この世には直らないものもあり、すべての傷が癒えるわけではないと、互いに確かめ合う以外に? +私たちは思い出すために、そして思い出させ合うために、互いを必要としているのです。死別の悲しみは様々な事柄に、向き合わせられる感情なのだと。 +悲しいと同時に幸せを感じたり、悼むと同時に愛することもできるのです。同じ年や同じ週や同じ瞬間にもです。 +悲しんでいる人も、またいつか笑ったり、微笑んだりすると心に留めておく必要があります。 +運がよければまた愛を見つけるかもしれません。 +もちろん彼らは前へ進むでしょうが。 +それは悲しみを忘れて、次へ進んだということではないのです。 +ありがとうございました。 + + +39331 +そこで、ブレグジット投票の翌日の2016年6月、イギリスのEU離脱という衝撃と共に目覚めたとき、イギリスの「オブザーバー」紙の編集者から、自分が育った南ウェールズに戻って報告書を作って欲しいと頼まれました。 +それで、私はエブブ・ベールという町に行きました。 +それがここです。 +ここはサウス・ウェールズ・バレーズと呼ばれる特別な場所です。 +非常に豊かで、また労働者階級の文化があり、ウェールズの男声合唱団やラグビー、石炭などで有名です。 +しかし、私が10代の頃、炭鉱と製鉄所が閉鎖され、地域全体が荒廃してしまいました。 +私がなぜそこに行ったかというと、国内で最も「離脱」票が多かったからです。 +ここでは62%の人がEU離脱に投票しました。 +そして、その理由を突き止めたいと思っていました。 +以前エブブ・ベールに行ったときは、こんな感じの場所でしたので、町に着いたときは正直少しびっくりしました。 +現在はこのような状態になっています。 +これは、EUがほぼ全額出資した3,300万ポンド(約51億円)の新しい高等教育機関です。 +これは、EUが資金提供している3億5千万ポンドの再生プロジェクトの中心となる新しいスポーツセンターです。 +これは7,700万ポンド(約545億円)の新しい道路改良計画で、新しい鉄道路線や駅��含まれていて、これらはすべてをEUが資金提供しています。 +しかも、このような大きな看板があちこちに設置されているので、このことは秘密にされているわけではありません。 +[EU基金:ウェールズへの投資] +街を歩いていると、なぜか現実離れした感覚に襲われました。 +そして、スポーツセンターの前でこの青年と出会ったことで、それが確信に変わりました。 +彼は、EUが自分のために何もしてくれなかったから、離脱に投票したのだと言いました。 +彼はうなだれていました。 +そして、街中で人々から同じことを言われました。 +彼らは、キャンペーンのスローガンの一つである「コントロールを取り戻す」と言っていました。 +そして彼らは、特に移民や難民にうんざりしていると話してくれました。 +でも彼らは十分に満足していました。 +それがとても不思議だった。 +なぜなら、街を歩いていても、移民や難民には出会わなかったからです。 +一人のポーランド人女性に会いましたが、彼女はこの町で外国人は実質的に自分だけだと言っていました。 +さらに、数字を確認したところ、実はエブブ・ベールは国内で最も移民率が低い地域の一つであることが分かりました。 +そのため、人々がどこから情報を得ているのか不明で少々困惑しました。 +なぜなら、移民に関する記事を掲載していたのは、右翼のタブロイド紙だったからです。 +そして、この地域は非常に左翼の力が強い労働党の拠点でもあります。 +しかし、記事を出版した後、その女性と接触できました。 +彼女はエブブ・ベールから来ていて、フェイスブックで見たこんなことを話してくれました。 +「え?フェイスブックの情報?」と私は正直思いました。 +その人は、移民問題、特にトルコについての非常に恐ろしい話をしていました。 +それで、フェイスブックを検索してみたのですが、 +全く何もみつかりませんでした。 +なぜなら、人々が見た広告や、ニュースフィードに掲載された広告のアーカイブが存在しないからです。 +何の痕跡もなく、まったくの空になっていました。 +この国民投票は、イギリスに永遠にわたって深い影響を与えることになります。そしてすでに深い影響を及ぼしています。鉱業の事業の代わりにウェールズや北東部に来ていた日本の自動車メーカーは、ブレグジットのためにすでに去りつつあります。 +そして、この国民投票は、フェイスブック上で行われたため、いわば暗闇の中で行われました。 +そして、フェイスブックで起こったことはフェイスブック内だけにとどまり、自分だけがニュースフィードを見たあと、情報が全部消えてしまうので、結局何も調べられないのです。 +そのため、誰がどんな広告を見たのか、それがどんな影響を与えたのか、またこれらの人々を対象にどんなデータが使われたのかが全く分からないのです。 +また、誰が広告を出したのか、どれだけのお金を使ったのか、国籍はどこなのか、といったこともすべてです。 +でも、フェイスブックは把握しています。 +フェイスブック側はすべての答えを把握していますが、その情報開示を拒否しています。 +イギリスの議会は、マーク・ザッカーバーグ氏に何度もイギリスに来てもらい、これらの答えを開示してもらうようお願いしました。 +でもその度に、毎回、断られています。 +その理由を考えてみましょう。 +なぜなら、私や他のジャーナリストが明らかにしたことは、国民投票中に複数の犯罪が行われたということだからです。 +そして、それらの犯罪はフェイスブック上で行われました。 +なぜかと言うと、イギリスでは、選挙で使えるお金の額が制限されているからです。 +19世紀には、文字通り手押し一輪車一杯に現金を詰めて歩き回り、有権者を票を買って回っていました。 +ですから、それを防ぐために厳しい法律が作成されました。 +でも、現代においてその法律はもう通用しません。 +今回の国民投票は、ほとんどがオンラインで行われました。 +フェイスブックやグーグル、ユーチューブの広告にいくらお金をかけても、「ブラックボックス」なので誰にも分からないわけですね。 +そして、今回のような事態を招きました。 +そして実際の全貌は誰にも分かりません。 +しかし、ブレグジット投票前の最後の数日間に、公式の「離脱に投票を」キャンペーン団体が、別のキャンペーン団体を通じて25万ポンド(約3880万円)近くを洗浄し不正に取得していたことは把握しています。これについては、選挙管理委員会が違法と判断し、警察に照会しました。 +そして、この違法な資金を使用し、「離脱に投票を」キャンペーン団体はデマ情報を流しました。 +このような広告です。 +[トルコの7600万人がEUに加盟] これは嘘です、全くの嘘です。 +トルコはEUに加盟しません。 +欧州連合(EU)に加盟するという話も出ていません。 +そして、ほとんどの人は、これらの広告を見ることはありませんでした。なぜなら、わたしたちはそのターゲットではなかったからです。 +「離脱に投票を」キャンペーン団体は、説得力のあるごく一部の有力者の人々を特定し、彼らだけをターゲットにしていたからです。 +今、わたしたちがこの情報を知っているのは、議会がフェイスブックに強制的に提供させたからです。 +もしかしたらあなたは、「ちょっと使い方を間違っただけではないか、大しことのない嘘だ」と思われるかもしれません。 +しかし、これはイギリスで100年ぶりに起きた最大の選挙違反でした。 +選挙対象者のわずか1%の肩にのしかかった一世一代の大勝負でした。 +そして、これは国民投票で行われた犯罪の中の一つに過ぎません。 +もうひとつのグループは、トランプ氏の右隣にいるナイジェル・ファラージ氏がリーダーを務めていました。 +加えて、彼のグループである「EU離脱」も法律に違反しています。 +イギリスの選挙法やデータ法に違反しており、警察へ情報が提出されています。 +そしてこの男、アロン・バンクス氏はこのキャンペーンに資金を提供しました。 +全く別のケースとして、彼はFBIに相当する国家犯罪局に情報が提出されています。なぜなら、選挙管理委員会は彼の資金がどこから来たのか分からないと結論づけたからです。 +もしくはそれがイギリスのものであったかどうかにも疑いがかかっています。 +また、アロン・バンクス氏がロシア政府との秘密の関係について語った嘘については、本日は言及するつもりはありません。 +また、ナイジェル・ファラージ氏がジュリアン・アサンジ氏やトランプ氏の仲間であるロジャー・ストーン氏(現在は起訴されている)と会っていたのは、2つの大規模なウィキリークスの情報開示直前という絶妙のタイミングであり、そのどちらもがたまたまドナルド・トランプ氏に利益をもたらしています。 +なお、ブレグジットとトランプ氏が密接に絡み合っていたことはお伝えしておきたいと思います。 +この人は、ブレグジットがトランプ氏の利益の温床になったと語っていました。 +そして、私たちは同じ人や会社、また同じデータやテクニックが、共通して憎しみと恐怖を利用していることを知っています。 +これは、彼らがフェイスブックに投稿していた内容です。 +また、[同化しない移民は侵略と同じ]というのは、私にとっては「ヘイトクライム」とほぼ同じですので、これを単に嘘だとは呼びた��ありません。 +世界のどこにおいてもネット上で憎しみや恐怖が拡散されていることは言うまでもありません。 +イギリスやアメリカだけでなく、フランス、ハンガリー、ブラジル、ミャンマー、ニュージーランドでもそうです。 +そして、世界中の私たちを強く結びつけているのは、この暗黒の力、恐怖や憎しみなのです。 +そして、それはテクノロジーを基盤にして流れています。 +しかし、私たちが目にしているこれらは、氷山の一角に過ぎません。 +私がこの闇の部分について知ったのは、トランプ氏とファラージ氏の関係や、ケンブリッジ・アナリティカという会社について調べ始めたからなのです。 +そして、何ヶ月もかけて元社員のクリストファー・ワイリー氏を探し出しました。 +彼は、トランプ氏とブレグジットの両方と一緒に働いていたこの会社が、人々の恐怖心を理解するために政治的な観点で人々を調査し、フェイスブック広告のターゲットを絞るのに役立てていたと話してくれました。 +そのために、フェイスブックから8,700万人のプロフィールを不正に取得したのです。 +クリストファー氏の意見を録音するためには、1年がかりの作業が必要でした。 +そのために、わたしは特集記事のライターから調査記者に転身しなければならなかったほどです。 +この会社は、トランプ氏の資金源となった億万長者、ロバート・マーサー氏が所有する会社であり、彼は私たちの出版を阻止するために、何度も訴訟を起こすと脅してきました。 +それで、ようやくすべてが出版に向けて整ったのは、出版予定日の1日前でした。 +しかしまた、法的な脅しを受けたんです。 +今回はケンブリッジ・アナリティカ社からではなく、フェイスブックからです。 +出版すると訴えられるという内容でした。 +でもとにかく出版してみました。 +フェイスブック、これはまさに歴史の流れに逆らっていますね。 +そして、あなたは歴史をゆがめ、私たちが必要とする答えを開示することを拒否しました。 +それで、そのために私はここにいるのです。 +率直に言うと、シリコンバレーの神々です。 +そして、シェリル・サンドバーグ、ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン、ジャック・ドーシー、そして皆さんの従業員や投資家の方々も。 +なぜなら、100年前、南ウェールズの炭鉱での最大の危険はガスだったからだ。 +それらは音もなく吸うと命にかかわり目に見えません。 +そのために、まずカナリアを放して空気をチェックしました。 +現代の大規模でグローバルなオンライン社会において、私たちイギリス人はいわばカナリアのようです。 +私たちは、100年にわたる選挙法がテクノロジーによって破壊されたとき、西洋の民主主義に何が起こるかを知っています。 +我々の民主主義は壊れています。そして法律はもう機能していません。これは私個人の意見ではなく、国会が報告書に基いて発表している内容です。 +あなたが発明したこの技術は素晴らしいものです。 +しかし、現在は犯罪の温床となっています。 +そして、その証拠も揃っています。 +また、「今後は失敗しないようにする」とただ口で言うだけでは不十分です。 +二度とこのようなことが起こらないようにするためには、私たちすべては真実を知らなければならないからです。 +もしかしたらあなたは、「たった数枚の広告に過ぎない。そんなものに騙される人々はいないはずだ」と思うかもしれません。 +それに対して私は、「その意見が通用したら警察はいらないよね」と言わして頂きます。 +なぜなら、ブレグジットの投票が示しているのは、リベラルな民主主義が壊れているということだからです。 +そして、あなたはそれを壊したんです。 +これは民主主義ではありません。暗闇の中で広められた嘘であり、神のみぞ知る場所で違法なお金が支払われたのです。 +それは反乱であり、ファイスブック、あなたはそれに追随しているのです。 +私たちの国会は、世界で初めてあなたの責任を追及しようとしましたが、失敗に終わりました。 +イギリスの法律だけでなく、9つの議会、9つの国の代表者が、マーク・ザッカーバーグ氏に証拠を提出することを拒否したのですから、文字通り手が届かなかったのです。 +これはあなたが思っている以上に非常に大きな問題なのです。 +そして、実はこれは私たちの誰もが想像するよりもとてつもなく大きな問題なのです。 +そしてこれらは、単に「左」か「右」か、まはた「離脱」か「残留」か、トランプ氏かそうでないかといった単純な問題ではありません。 +自由で公正な選挙を将来行うことが実際に可能かどうかという問題なのです。 +なぜなら、現状では「行うことはできない」からです。 +そこで私が皆さんにお聞きしたいのは、これが皆さんの望む現状なのかという点です。 +世界中で台頭しつつある権威主義の手先として、歴史に名を残すことをお望みでしょうか? +なぜならフェイスブックの目的は人と人をつなぐことだからです。 +そして、同じ技術が現在、私たち同士を互いに引き離していることを認めようとしていないのです。 +そして他の皆さんに質問ですが、これは私たちが望んでいることなのでしょうか?彼らをのさばらせて、この闇が増え広がる中、ただ座って携帯電話をいじっているだけでいいのでしょうか? +サウス・ウェールズ・ヴァレーズの歴史は、権利のための戦いの歴史でもあります。 +そして、これは訓練ではなく、転換点なのです。 +民主主義は保証されたもの、自然と生じるようなものではありません。それは私たちが戦い、勝ち取るべきものなのです。このようなハイテク企業に無制限の力を持たせるわけにはいきません。 +それは私たちにかかっています。あなたにも、私にも、そして皆さま全員にもです。 +私たちは、コントロールを取り戻さなければなりません。 + + +42604 +私たちは今、固い地面の上に立っているように思えるかもしれませんが、実際はそうではないのです。 +私たちの下にある岩や土には、小さな小さな割れ目や空洞が交差しています。 +そして、それぞれの隙間には、天文学的な量のこのような微生物が生息しています。 +今までで、地球の最も奥深くで微生物を発見したのは、5km地点です。 +例えばあなたが地下に向かって走りだすとします。5kmのレースをずっと走り続けることになり、その道中には微生物がぎっしり存在しています。 +もしかすると、あなたは地殻の奥深くにいるこうした微生物についてはあまりお考えになったことがないかもしれませんが、私たちの腸内に生息する微生物については想像したことがおありではないでしょうか? +地球上のすべての人と、すべての動物の腸内細菌を合計すると、約10万トンの重さになります。 +これは私たちが毎日お腹の中に抱えている巨大な生物群です。 +私たちは皆、誇りに思うべきです。 +しかし、土壌や川、海など、地球の表面全体を覆っている微生物の数に比べれば、その数は少ないです。 +それらすべてを合わせると約20億トンにもなります。 +しかし、地球上の微生物の大半は、海や腸や下水処理場にいるわけではないことが分かっています。 +そのほとんどは地殻の中に存在しているようです。 +これらを合計すると400億トンにもなります。 +これは地球上で最も大きな生物群のひとつであり、数十年前まではその存在すら知られていませんでした。 +ですから、そこにどんな生命が存在するのか、あるいは人間にとってどんな意味があるのか、その可能性は無限大です。 +これは、最新の微生物学的手法を用いて深部地下のサンプルを入手した場所に赤い点をつけた地図です。皆さんは、全世界をかなり網羅していると感心されるかもしれませんが、実際には、サンプルがあるのはこれらの場所だけだということを思い出すと、少し見劣りしてしまうのではないでしょうか。 +もし私たちがエイリアンの宇宙船に乗って、これらのサンプルだけで地球の地図を復元しようとしたら、絶対にできないでしょう。 +でも人々の中には、「地下にはたくさんの微生物がいるけど、ただ.眠ってるだけじゃないの」と言われる方もおられます。 +とても良いご指摘です。 +ガジュマルの木やはしか、わたしの子供が飼っているモルモットなどと比べると、これらの微生物はおそらく何の活動もしていないでしょう。 +数が非常に多いので、活動がゆっくりなのはあたりまえかもしれません。 +もし、それらがすべて大腸菌のような分裂を始めたら、一晩で岩石を含む地球の全重量を2倍にしてしまうことができるのです。 +実際、その多くは古代エジプトの時代から一度も細胞分裂をしていないでしょう。 +ほんとに驚くべきことです。 +どうやって長寿命を維持するのだろうと思いますよね。 +今日私は、大好きな例えを皆さんにお伝えしようと思っているのですが、ちょっと奇妙で複雑なんです。 +皆さんどうぞわたしに少々お付き合い頂ければと思います。 +では、始めましょうか。 +それはまるで、木のライフサイクルを計算するようなものです。 +一日でも生きられたら +だから、もし人間の寿命が1日で、もし冬に生まれたとしたら、葉の生茂る木を一度も見ないで一生を終えることになるということになりますね。 +そして、たった一冬で過ぎ去る人間の世代があまりにも多いので、木はいつも何も活動しないいわば「死んでいる棒」とみなされ、どの人間の歴史書をみてもそう書かれているかもしれません。 +もちろん、ばかばかしい話しですよね。 +私たちがみている木々は単に夏を待ち望んでいる状態なのです。 +しかし、もし人間の寿命が木の寿命よりかなり短かったとしたら、この全くありふれた事実に全然気付かないかもしれません。 +それで、私たちがこの深い地下の微生物を活動中止状態だとみなすとき、それはまるで、木のライフサイクルについて解明しようと試みる1日で死んでしまう人間の例えと同じと言えるかもしれません。 +もし、地下深くの生物たちが、自分たちの夏を待っているのだとしたら、私たちの人生はとても短すぎて、それを見ることはできないでしょう。 +もし大腸菌を試験管に入れ、餌も栄養分も与えず、数ヶ月から数年放置すると、当然ながらほとんどの細胞は飢餓状態になって死にます。 +しかし、その中の数個の細胞は生き残るんです。 +この古い生き残った細胞を、同じく飢餓条件下で、急速に増殖する新しい大腸菌の培養液と競争させると、白髪のこの老人が毎回、きれいな新生児を打ち負かすのです。 +つまり、とても遅いということは、実は進化の過程で見返りがあるという証拠だということが分かります。 +だから、遅いことは、重要でないことだと早合点してはいけないのかもしれません。 +実はもしかすると、この「見えない」、「見えない」微生物が、人類の役に立つかもしれないのです。 +なるほど、私たちが知る限り、地中生活の生き抜き方は2つあります。 +1つは、1000年前のピクニックの残りを食べるように、表世界から食べ物が降ってくるのを待つことです。 +しかし、このちょっと正常でないように思える生活は、地球内の多くの微生物にとって実は驚くほどうまくいっているようです。 +もうひとつの可能性は、微生物が「表世界はいらない、私はここにいればいいんだ」 言い出すことです。 +この道を歩む微生物にとっては、生きていくために必要なものをすべて地球内部から調達しなければならないのです。 +実際に手に入れやすいものもあります。 +水や窒素、鉄、リンなどの栄養分、あるいは住む場所など、地球の内部に多く存在するものです。 +このようなものは、表世界では手に入れるために文字通り殺し合いが行われています。 +しかし、地下では、十分なエネルギーを確保することが課題です。 +植物は、太陽の光が葉に当たると同時に、二酸化炭素の分子を化学的に結びつけて、おいしい糖分を作り出します。 +しかし、地下には当然ながら太陽光がありませんから、この生態系は、誰がみんなの食料を作るのかという問題を解決しなければならないのです。 +地下には、植物のように岩石を呼吸させるものが必要なのです。 +幸いなことに、そのようなものは存在し、化学合成無機独立栄養生物(ケモリトリオートロフ)と呼ばれています。 +化学物質(ケモ)を使って、岩石(リト)から食物を作る微生物(独立栄養生物)です。 +そして、それをさまざまな要素からそれらを作成することができるのです。 +硫黄、鉄、マンガン、窒素、炭素、中には純粋な電子をそのまま使うことができるものもあるそうです。 +電気コードの先を切って、それをいわばシュノーケルのように使って呼吸できるようにするとかです。 +この化学合成無機独立栄養生物(ケモリトリオートロフ)は、これらのプロセスから得たエネルギーを、植物と同じように食べ物を作るために利用します。 +しかし、植物はただ食べ物だけを作っているのではないことを皆さんご存知だと思います。 +それらは、私たち人間が100%依存している「酸素」という廃棄物も作っています。 +しかし、この化学合成無機独立栄養生物(ケモリトリオートロフ)が作る廃棄物は、フールズゴールドのような錆や黄鉄鉱、石灰岩のようなカルミナイトといった鉱物の形になって排出されることがほとんどです。 +つまり、岩石のようにゆっくりとした動きで、岩石からエネルギーを得て、他の岩石を廃棄物として排出する微生物が存在します。 +では、私は生物学の話をしていると思われますか、それとも地質学の話でしょうか? +これらは、本当に境界線があいまいなんですよね。 +だから、もし私が、岩石のような微生物を研究する生物学者になるつもりなら、地質学の勉強を始めるべきだと言えるでしょう。 +そして、地質学の最も興味深い分野はなんだと思われますか? +火山の分野です。 +これは、コスタリカのポアス火山の火口内を見たところです。 +地球上の多くの火山は、海洋構造プレートが大陸プレートにぶつかることで発生します。 +この海洋プレートが沈み込んだり、大陸プレートの下に移動したりすると、水や二酸化炭素などの物質が、濡れた洗濯物を絞った時のように絞り出されます。 +このように、沈み込み地帯は地球深部への入り口のようなもので、表層と地下の世界の物々交換が行われているのです。 +そこで最近、コスタリカの同僚から、そうした火山のいくつかを一緒に研究しないかと誘われました。 +もちろん、私は「はい」と答えました。コスタリカは美しい国であるという理由と、それが、沈み込み地帯の一部の真上に位置しているという理由からです。 +私たちは、この点について非常に詳細な質問をしたいと思っていました。なぜ、この深く埋もれた海洋構造プレートから出る二酸化炭素が、火��からしか出てこないのか? +なぜ、沈み込み地帯全体に分布していないのでしょうか? +もしかすると微生物が関係しているのでしょうか? +これは、ポアス火山の中で、同僚のドナート・ジョバンネリ氏と一緒に撮った写真です。 +私たちが立っているあの湖は、バッテリー液そのものでできているんです。 +この写真を撮ったとき、pHを測定したのでそれが分かります。 +そして、火口内で作業をしていたある時、コスタリカ人の同僚であるカルロス・ラミレス氏に向かって、「ねえ、もし今噴火が始まったら、我々はどうやってここから脱出するんだろうか?」と話しかけると +彼は、「ああ、いい質問だね、全然簡単だよ。ただ振り返って、その光景を楽しむだけだよ」と言いました。 +なぜなら、それがあなたにとって人生の最後となるからです。 +大げさに聞こえるかもしれませんが、あの湖のほとりに立ってから54日後に、実際にそのとおりになりました。 +恐ろしくてたまらないでしょ? +この火山にとっては60数年ぶりの大噴火で、この映像が終わって間もなく、撮影していたカメラが撮影した光景が消滅し、サンプリングしていた湖全体が完全に蒸発してしまうのです。 +ただ、はっきり言いますと、私たちが実際に火山に入った日には、そうしたことは起こらないという確信を持っていました。なぜなら、コスタリカはオヴシコリ研究所を通じて火山を非常に注意深く監視しており、その日は同研究所の科学者が同行していたからです。 +しかし、この噴火の事実は、この海洋プレートから二酸化炭素のガスが出ている場所を探したいなら、火山そのものを探すべきだということをよく示しています。 +しかし、皆さんがコスタリカに行かれると、これらの火山に加えて、すてきで気持ちのいい小さな温泉があちこちにあることに気づかれることでしょう。 +この温泉の水の一部は、実はこの深く埋もれた海洋プレートから湧き出しているのです。 +そこで、私たちは一緒に湧き出ている二酸化炭素が、地中深くで何かによりろ過されているのではないかという仮説を立てました。 +それで、2週間かけてコスタリカ中をドライブし、ありったけの温泉を検査したんですが、はっきり言って最悪な結果に終わりました。 +そして、その後2年間は、データの測定と分析に費やしました。 +科学者でなくても、大きな発見は、美しい温泉や大舞台にいるときではなく、雑然としたコンピューターに向かっているとき、難しい機器のトラブルシューティングをしているとき、自分のデータに完全に混乱して同僚とスカイプをしているときに起こるのだと知っておいてください。 +科学的な発見というのは、地下深くの微生物のように、とてもとても時間がかかるものなのです。 +でも、私たちの場合は、この一回で本当に報われました。 +この深く埋もれた海洋プレートから、文字通り何トンもの二酸化炭素が出ていることを発見したのです。 +コスタリカの愛らしいナマケモノやオオハシの地下には、化学合成無機独立栄養生物(ケモリトリオトロフ)が生息していたのです。 +微生物とその周囲で起こっている化学的プロセスによって、この二酸化炭素は炭酸塩鉱物に変換され、地中に閉じ込められていたのです。 +そうすると、皆さんきっとこう思われるかもしれません。もし、この地下のプロセスが、さらに下から来るすべての二酸化炭素を吸い上げるのに優れているならば、地表で起こっている地下よりもっと小規模の二酸化炭素の問題を解決するのに役立つのではないか?と +人類は大気中に非常にたくさんの二酸化炭素を放出しており、私たちが知っているように、地球が生命を維持する能力を低下させているのです。 +そして、科学者やエンジニア、起業家たちは、今言及した源を使って二酸化��素を抜き出して、大気中に放出しないようにする方法を研究しています。 +そして、それをどこかに設置する必要があるのです。 +そのため、炭素を貯蔵する場所(地下の可能性もあります)を研究し続け、もしそれらを地下に取り込んだ時に炭素がどうなるかを知りたいと思っています。 +これらの深部地下微生物は活動が遅すぎて、実際に何かをそこに留めることができないことが今後課題になるのでしょうか? +それとも、これらを固体の炭酸塩鉱物に変換してくれるから助かると言えるでしょうか? +コスタリカで行った1つの研究だけで、これだけ画期的なことが可能になったのですから、この先どんな発見が待っているのか、どうぞ想像なさってみて下さい。 +この地質生物化学(ジオバイオケミストリー)、あるいは深部地下生物学(ディープサブサーベラスバイオロジー)という新しい分野は、地球温暖化の改善だけでなく、生命と地球が共生するための理解を深めたり、産業や医療に役立つ新しい製品の発見など、私たちにとって非常に大きな意味を持つ可能性があるのです。 +もしかしたら、地震の予知や地球外の生命体の発見もできるかもしれません。 +生命の起源そのものの解明にもつながるかもしれません。 +幸いなことに、私は一人でそれに取り組む必要はありません。 +この地下深くの謎を解き明かしに取り組んでいる素晴らしい仲間が世界中にいます。 +この地殻の奥深くに埋もれている生命は、私たちの日常生活とはかけ離れた存在で、なんだか自分達とは関係ないように思えるかもしれません。 +しかし、実はこの奇妙でスピードの遅い生命が、地球上の生命の最大のいくつかの謎のを解き明かす答えを持っているかもしれないのです。 +ありがとうございました。 + + +45614 +実は、今日は私の誕生日で、とても特別な日なんです。 +本日は皆さま、パーティにご参加いただきまことにありがとうございます。 +でも、毎回開かれるパーティーで、必ずと言っていいほどそれを台無しにする人がおられますよね? +私は物理学者ですが、今回はそうするためもう一人物理学者を連れてきました。 +彼の名前はアルバート・アインシュタイン--私と同じアルバート--で、彼は「30歳までに科学に大きな貢献をしなかった人間は決して科学者として成功しない」と語った人物です。 +現在、私が30歳を超えていることは、ウィキペディアで確認するまでもないでしょう。 +つまり、事実上彼は私に、そして私たちに、私が科学者としてあたかも枯れ木のようだと述べているのです。 +まあ、幸運にも、私の経歴には運がありました。 +私が28際のころ、ネットワークに強い興味を持っていて、その数年後、スケールフリーネットワークの発見をに関するいくつかの重要な論文を発表することができ、今日ネットワーク科学と呼ばれている新しい学問分野を誕生させることができたのです。 +そして、もし皆さんがこの分野をとても気に入られたならば、ブダペストでもボストンでも、ネットワーク科学の博士号を取得できますし、今なら世界中で研究することができるのです。 +数年後、サバティカル(長期休暇)でハーバード大学に移った私は、別のタイプのネットワークに興味を持つようになりました。つまり、遺伝子、タンパク質、代謝産物がどのように互いに結びつき、それがどのように病気につながるのかという、私たち人間自身の中のネットワークにです。 +ハーバード大学のネットワーク医学部門には300人以上の研究者がいて、患者の治療や新しい治療法の開発にこの分野の研究を活用しているのです。 +そして数年前、私はこのネットワークについての考え方と、ネットワークに関する専門知識を、別の分野、つまり成功を理解するために活用しよう��考えました。 +なぜそんなことをしたのかお分かりでしょうか。 +私たちの成功は、ある程度、私たちが属するネットワークによって決まると考えたからです。ネットワークは私たちを前進させることも、後退させることもできるのです。 +そして、ネットワークを構築する際の知識やビッグデータ、専門知識を活用して、これらのことがどのように起こるのかを数値で表示できないかと考えました。 +これは、その結果です。 +ここでご覧いただいているのは、美術館のギャラリーが互いにつながるネットワークです。 +昨年作成したこのマップを通して、あるアーティストの最初の5つの展示会での経歴を教えてもらえば、その成功を非常に正確に予測することができます。 +成功について考えるうちに、成功とはネットワークだけでなく、さまざまな次元が存在することに気づきました。 +そして、成功のために必要なもののひとつは、当然ながらパフォーマンスです。 +では、パフォーマンスと成功の違いはが何かを定義してみましょう。 +まあ、パフォーマンスというのは、走る速さとか、どんな絵を描くか、どんな論文を発表するかとか、そういうことですね。 +しかし、私たちの定義では、成功とは、あなたが行ったこと、あなたのパフォーマンスを、地域社会がどのように評価するかということに起因します。地域社会がそれをどう評価し、どう報いてくれるのかが関係しているといえるでしょう。 +言い換えれば、あなたのパフォーマンスは自分で行い獲得するものですが、成功は自分に属していないのです。 +成功とは「地域社会が」我々を評価する値であると定義したことは、非常に重要な変化でした。もしそれが地域社会からのものであるならば、それは測定可能なデータがたくさんあるからです。 +それで、私たちは学校に行き、運動し、練習します。パフォーマンスが成功につながると信じているからです。 +しかし、実際にこの探求を始めると、数学敵に表わせば、パフォーマンスと成功はまったく別ものであることに気づきました。 +そして、それを図解してみましょう。 +ここにいるのは、地上最速の男、ウサイン・ボルト氏です。 +もちろん、出場した大会のほとんどで優勝していますね。 +彼の速度を測る速度計があるので、彼が地球上で最も速いことが分かります。 +まあ、彼のレースで興味深いところは、勝つ際、相手をそれほど大きく引き離して勝つのではないことです。 +彼にレースで負けた人よりもせいぜい1パーセント速く走っているぐらいです。 +つまり、言い換えると彼は2番目の人より1パーセントしか速く走れないのです。さらに私の10倍も速く走れません。--私は走るのが得意ではないことはご承知の通りですね。 +そして、パフォーマンスを測定でするたびに、非常に興味深いことに気づきます。つまり、パフォーマンスというものには限界があるということです。 +それはどういうことかというと、人間の能力には大きなばらつきがないということです。 +非常に狭い範囲での違いしかないので、その小さな差を測定するために速度計のようなものが必要なのです。 +これは、良いものを見分けることができないという意味ではなく、良いものを見分けるのは「非常に難しい」という意味です。 +そして問題は、ほとんどすべての人が自分のパフォーマンスを計るいわば「速度計」が存在しない分野で働いていることです。 +さてさて、パフォーマンスには限界があります。私たちのパフォーマンスに関しては、他の人と大差はありません。 +それでは「成功」についてはどう言えますか? +では、話題を変えましょう。例えば本について考えます。 +作家の成功の尺度のひとつは、自分の作品をどれだけ多くの人��読んでもらえるか、ということですね。 +それで、2009年にこの前作が出たとき、ヨーロッパでその編集者と話をしていて好奇心にかられました。競争相手は誰なのか?という点です。 +そして、素晴らしいことがありました。 +その週は--。 +ダン・ブラウン氏の「ロスト・シンボル」が発刊され、ニコラス・スパークス氏の「ラスト・ソング」も発刊されたんです。 +そして、この本のリストだけを眺めると、パフォーマンスの観点からして、こうした本と私の本との違いが見えてきません。 +そうですよね? +だから、ニコラス・スパークス氏のチームがもう少し頑張れば、簡単に1位になれるかもしれませんね。なぜならトップになるということは偶然に生じるからです。 +このことを、私は数学的に皆さんにご説明したいと思います。私はデータ人間ですからね。 +では、ニコラス・スパークス氏の売上はどのくらいだったでしょうか。 +発刊された日の週末に、ニコラス・スパークス氏の本が10万部以上売れたということが分かりました。 +実際1週間に1万部売れれば「ニューヨーク・タイムズ紙」のベストセラーにランクインできるため、要するに彼は1位になるために必要なことの10倍の結果を残したということができます。 +それでも彼は1位にはなれませんでした。 +なぜでしょうか? +なぜなら、その同じ週末に120万枚を売り上げたダン・ブラウン氏がいたからです。 +私がこの数字を好む理由は、成功には限りがないこと、トップの人が二番手より少し多く得るというよりかは、桁外れに多く得ることができることを示しているからです。なぜなら成功とは集団で獲得するものだからです。 +パフォーマンスにてお金を稼ぐというより、与えるのです。 +私たちが気づいたことの1つは、私たちが行うパフォーマンスには限りがあるが、集団で行う成功には上限がないということです。パフォーマンスにはわずかな差しかないのに、どうして成功には大きな差があるのでしょうか? +そしてその点を関節した本をわたしは最近出版いたしました。 +しかし、今そのすべてお話する十分な時間はないので、質問に戻りたいと思います。さて、あなたは成功を収めました。それはいつ表れるでしょうか? +では、パーティーを台無しにするという話題に戻り、少し自問してください。アインシュタインはなぜ、30歳までにしか創造性を発揮できないという馬鹿げた発言をしたのでしょうか? +というのも、彼の周りの、量子力学や現代物理学を生み出した素晴らしい物理学者たちは全員20代から30代前半で成功をおさめていたからです。 +そして、これは彼だけがそう述べている個人的な意見というわけではありません。 +これは観察者バイアスによる曲解の結果ではありません。実際に天才研究の分野では、過去の尊敬する人々を調べて、彼らが何歳で最大の貢献をしたか、それが音楽であれ科学であれ工学の分野であれ、そのほとんどが20代、30代、最大でも40代前半であるという事実が証明されています。 +しかし、この天才研究にも問題があります。 +まず、クリエイティブは若さ、という印象を私たちに与えてしまったのは痛手ですよね。 +また観察者バイアスを通し、天才だけをピックアップし、一般の科学者や私たち全員を取り上げないため、観察的な偏りがあるのです。それで、年齢を重ねると創造性が失われるというのは本当なのでしょうか。 +それがまさに私たちがやろうとしたことであり、これは実際に参照証拠を取得するために重要だといえます。 +では、私のような一般の科学者の経歴を見てみましょう。 +つまり、ここに表示されているのは、1989年当初にわたしが発表した論文のすべてです。 その時、私は当時まだルーマニアにいました。 +そして、こ���縦方向を見ていただくと論文が与えた影響、例えばその内容が引用された数や、その研究を引用した他の論文がどのくらいの数書かれたかを理解できます。 +そして、これを見ていただくと、私の経歴はおおよそ3つのステージに分かれていることがわかります。 +最初の10年間は、たくさん働かなければならないのに、あまり成果を上げられない時期でした。 +まあ、誰も私の仕事には興味がないかもしれませんが。 +つまりほとんど影響力がないのです。 +その頃、私は材料科学に取り組んでいて、ネットワークを発見し、その後ネットワークに関する論文を発表するようになりました。 +それが、影響力のある論文が、さらに別の論文へとつながっていったのです。 +そして、それは本当に気持ちのよい体験でした。これが私の経歴のステージでした。 +それで問題は、現在どうなっているかということです。 +そして、その論文がどれほどの影響力を持つのか、まだ十分な時間が経過していないため正直分かりません。 +まあ、データだけを見ますと、天才研究者アインシュタイン氏が正しいような気もします。まあ、そんな段階に私はいます。 +そこで私たちは、まず科学の分野で、今お伝えしたような事柄がどのように起こるのかを解明しようと考えました。 +そして、天才だけを見るという「選択バイアス」を避けるために、1900年から今日までのすべての科学者のキャリアを洗い出し、すべての科学者について、ノーベル賞を取ったか、取らなかったか、もしくは誰も彼らの功績をしらないのか、さらには自己ベストといった点をすべて確認しました。 +それが、このスライドに表示されています。 +それぞれの線が経歴で、その経歴の線の上の水色の点は、対象者の自己ベストを表わしています。 +そして、問題は、彼らが実際に最大の発見をしたのはいつかという点です。 +それを数値化するために、例えば、仕事の経験を積んで1年、2年、3年、10年後に、最大の発見をする確率はどのくらいか、ということを計算します。 +皆さんにお見せしているのは、「学力年齢」と呼ばれるものです。 +最初の論文を発表したときから、あなたの「学力年齢」が始まっています。 +まだ赤ちゃんの年齢の方々もこの中にはいらっしゃると思います。 +では、最も影響力のある論文を発表する確率を見てみましょう。 +そして、見えてくるのは、まさに天才的研究の正しさです。 +多くの科学者は、最初の10年から15年の間に最も影響力のある論文を発表する傾向があり、その後は徐々に減少していきます。 +その減少率は非常に速いので、私は現在のキャリアのちょうど30年目に差しかかりますが、それ以前に発表した論文よりも高い影響力を与える論文を発表できる確率は1%にも満たない状況です。 +このデータによると、私はその段階に入っているようです。 +しかし、それには問題があります。 +ただしくそれをコントロールできていないのです。 +つまり、特にきまりがなく科学に貢献する科学者をコントロールすることが関係します。 +あるいは、科学者の生産性とはいったい何でしょうか? +彼らは論文はいつ書くんでしょうか? +そこで、生産性を測定したところ、驚くべきことに、1年目、10年目、20年目のどの年に論文を書いたとしても、どのタイミングで書いた論文が影響力のあるものになるのか、にとくに影響を与えないということが分かりました。 +それで簡潔に申しますと、たくさんの統計テスト経て分かった結論はただ一つです。私たち科学者のする仕事、作成する論文や、行うプロジェクトどれにおいても、自己ベストになる確率がどれもまったく同じだということです。 +つまり、発見とはいわば宝くじのようなものな��です。 +そして、宝くじをたくさん買えば買うほど、チャンスが増えるのです。 +そして、たまたまそうなのですが、ほとんどの科学者は、仕事を始めて最初の10年、15年で宝くじをほとんど買ってしまい、それ以降は生産性が低下してしまうのです。 +彼らは宝くじはもう買わないそうです。 +だから、まるで創造性がないように見えるのです。 +現実には、努力することをやめてしまったということです。 +ですから、実際にデータを並べてみると、結論は非常にシンプルで、「成功はいつでも手に入る」ということが分かるのです。 +それは、あなたの仕事の経歴の中で最初かもしくは最後の論文になるかもしれません。 +プロジェクトの空間において特に決まった法則はありません。 +変化するのは生産性です。 +さてそれを図解してみましょう。 +このフランク・ウィルゼック氏は、大学院生時代に書いた最初の論文でノーベル物理学賞を受賞しています。 +さらに興味深いのは、70歳でイェール大学から強制的に退職させられたジョン・フェン氏です。 +研究室を閉鎖され、その瞬間、彼はバージニア・コモンウェルス大学に移り、別の研究室を開設したのです。そして、そこで72歳の時に論文を発表し、15年後にノーベル化学賞を受賞しました。 +ここで皆さんこう思われるかもしれません。「科学は特別だけど、他の分野はどうなんだろう、創造性が必要なのか?と。 +では、もう一つの代表的な例として、起業を取り上げましょう。 +シリコンバレーといえば、若者の国なのはご承知の通りですね。 +そして実際に見てみると、TechCrunchアワードなどの大きな賞は、平均年齢が20代後半から30代前半の人ばかりが受賞していることに気づかされます。 +ベンチャーキャピタル(VC)が誰に資金を提供しているかを見てみると、ほとんどすべてがベンチャーキャピタル(VC)会社最大手の30代前半の人々です。 +もちろん、シリコンバレーには「若さ=成功」という気風があることは知っています。 +データを見ると、会社を設立することだけが目的ではありません。会社設立は、生産性、努力、挑戦のようなものです。この中で、どの人が実際に会社を成功させ、成功を見出したかを見てみましょう。 +最近、私たちの同僚がまさにこの点について調べました。 +そして、20代、30代の人たちは、たくさんの会社を立ち上げ、作るのですが、そのほとんどが潰れてしまうということがわかりました。 +この仕組みでは、年齢が高いほど、株式市場や会社売却に成功する確率が高いことがわかります。 +これは、実は30代よりも50代の方が、実際に成功を生み出す確率が2倍になるくらい高いんです。 +では、結局、私たちが見ているものは、実は何なのでしょうか? +そこから見えてくるのは、「創造力は年齢に関係ない」ということです。 +生産性もそうであると言えるのではないでしょうか? +つまり、一日の終わりに、もしあなたが努力を続けるなら... +皆さんは、何度でも成功することができるのです。 +ですから、私の結論はとても簡潔です。ではステージを降りて研究室に戻ることにします。 +ありがとうございました。 + + +45973 +まず、皆様のご清聴に感謝いたします。 +こんな風に、たくさんの人が集まって、みんなが私に注目してくれるなんて、本当に最高な気分です。 +注目を浴びるというのは、本当に強い力があります。 +私は俳優なので、そのことについてよく通じてはいますが、余談でした。 +でも、注目を浴びるということがどういうことなのか、私は知っています。 私はこれまで幸運にも、それなりに多くの��目を集めることができました。 +そして、そのことに感謝しています。先ほども言ったように、本当に心強い気持ちになるからです。 +しかし、もうひとつ、役者として幸運にもたくさん経験させてもらっているなかで感じる強い思いがあります。 +そして、面白いことに、それは注目を集めることから生まれるのではなく、逆の感覚です。 +それは、注意を払うことから生まれます。 +演技をしているときは、集中力が高まって、ひとつのことにしか目がいかなくなるんです。 +撮影現場で、これから撮影という時に、最初にADが 「ローリング!」と叫んだ時などです。 +そして、「スピード」、「マーカー」、「セット」と聞こえてきて、監督が 「アクション!」と叫びます。 +何度も聞いているうちに、パブロフ(条件反射)の魔法にかかったような感じがします。 +ローリング、「スピード」、「マーカー」、「セット」、「アクション」。 +自分の中に何かが起きますが、押さえることはできません。 +私の視野は ... +狭くなります。 +そして、世界の自分以外の他のすべてのもの、私を悩ませるもの、私の注意を引くものは、すべて消え去り、私はただ......そこにいるのです。 +そしてその感覚、それこそが私の愛するものであり、私にとっての想像力なのです。 +それが、私が俳優をやらせてもらっている最大の理由です。 +この2つの強い思いがあるんですね。 +「注目されること」と、「注意を払うこと」があります。 +もちろん、この10年ほどの間に、新しいテクノロジーによって、より多くの人がこの強力な注目を浴びる感覚を持てるようになりました。 +演技に限らず、創造力を表現できるあらゆる分野においてです。 +文章でも、写真でも、絵でも、音楽でも、何でもいいんです。 +情報放映経路が大衆化されたのは、いいことだと思います。 +しかし、創造力を発揮したいという衝動に駆られている地球上のすべての人に、意図しない結果が生じていると思います。 +私たちの創造力は、ある目的のための手段、つまり注目を集めるための手段になってきていると思います。 +私の経験では、「注意を払う」という強力な感覚を追い求めれば追い求めるほど、幸福になれます。 +しかし、「注目を浴びたい」という強力な感覚を追い求めれば追い求めるほど、私は不幸になるのです。 +そして......ありがとうございます。 +だから、これは私にとっては昔からのことなんです。 +初めて演技を使って注目を集めたのは、8歳の時の夏のキャンプの時でした。 +その頃、私は1年ほどオーディションを受け続け、幸運にもテレビ番組やコマーシャルで小さな役をもらうことができ、その夏のキャンプで、それを大いに自慢したんです。 +そして、最初はうまくいった。 +他の子供たちは、私が「ファミリータイズ」の番組に出演していたこともあり、私に特別な注意を払いました。 +これは「ファミリータイズ」"に出演した時の写真です。 +ただその後ちょっと道をはずし、自慢話をしすぎてしまったようです。 +そうしたら、他の子たちからバカにされるようになったんです。 +ロッキーという片思いの女の子がいたのを覚えています。 +彼女の名前はレイチェルで、ロッキーというニックネームで知られていました。 +そして、その人は美しく、歌が上手で、私はその人にほれ込み、その目の前で自慢したのです。 +しかし、彼女は私に向かって、私のことを目立ちたがり屋と言いました。 +それは100%あたりまえのことでした。 +でもね、やっぱりすごく傷つきました。 +そして、その夏以来、自分の演技で注目を集めようとすることに、ある種のためらいを感じるようになったのです。 +時々、「ちょっと待てよ、注目されるのが嫌なら、なぜ俳優をやっているんだ?」と尋ねられることがあります。 +そして、「演技とはそういうものではない、芸術のことだ」と答えます。 +そして、「おーすごい」と返ってきます。 +そして、ツイッターが登場しました。 +そして、他の人と同じようにすっかりハマってしまい、私は完全な偽善者になってしまいました。 +あの時は、絶対に演技で注目を集めようと思っていましたから。 +つまり私は、「自分の素晴らしいツイートのおかげで、こんなにフォロワーが増えた」と考えたと思いますか? +実際にそう思ったんですが、私は......まるで......。 +「バットマン」で見たからというだけでなく、みんな私の言葉が好きなんだ、言葉は使いようなんだと感じました。 +そして、あっという間に、私の大切にしている創作活動に影響を与えるようになったのです。 +今でもそうです。 +させないようにしています。 +でもね、座って台本を読んでいるようなものなんです。 +そして、「このキャラクターに個人的に共感するにはどうしたらいいか?」と考えるのではなく、「このキャラクターをどうしたらいいか?」と考えるのです。 +あるいは、「観客はこの物語にどう共感するのか?」です。 +「この映画、ツイッターで何て言われるんだろう?」っていう感じです。 +そして、「どう返信すれば、リツイートが多くなるような、いい意味で鼻につく、でも、人は怒るのが好きだから、ドタキャンされないような、刺激のある言葉を返そうか?」と考えます。 +台本を読んでいるはずなのに、アーティストであろうとする私の心には、このような思いがめぐってしまうのです。 +しかし、テクノロジーが創造力の敵だと言うためにここに来ているのではありません。 +そうは思っていません。 +テクノロジーはただのツールです。 +テクノロジーは、未だかつて見たこともない人間の創造力を育てる可能性を秘めています。 +例えば、ヒットリコード(HITRECORD)というオンラインコミュニティを始めたのですが、そこでは世界中の人が様々な創造的なプロジェクトに協力して取り組んでいます。ですから、ソーシャルメディア、スマートフォンなど、どのようなテクノロジーもそれ自体が問題だとは思えません。 +しかし ... +創造力が注目を集めるための手段になっている危険性に言及するなら、今日の巨大ソーシャルメディア企業の注目を集めるビジネスモデルについて言及しないといけないですよね? +何人かの方には見慣れた分野でしょうが、実に関連がある質問をしましょう。「例えばInstagramなどのソーシャルメディアプラットフォームはどのようにしてお金を稼いでいるのでしょうか?」 +写真のシェアリングサービスを売っているのではありません、これは無料のサービスです。 +ならば、何を売っているのでしょうか? +注目を売っているのです。 +ユーザーの注目を広告主に売っています。 +現在、どれほど私たちがInstagramなどに注目を向けているかについて多くの議論がなされていますが、私の質問は「どれほどInstagramが注目を”獲得している”のか?」です。 +私たちの注目は彼らの利益になります。 +いつでもInstagramに投稿すると、フォロワーから一定の注目を集めます。フォロワーが数人であろうと数百万人であろうと関係なく。 +皆さんが注目を集めることができればできるほど、Instagramは多くの注目を売ることができるのです。 +ですから、できるだけ多くの注目を集めることは、Instagramを利することになるのです。 +そのため、皆さんは、注目���望み、注目を切望し、十分な注目が得られないとストレスを感じるようにしつけられているのです。 +Instagramによって、ユーザーは注目を集めたいという強い思いの中毒になっていくのです。 +「あーあ、スマホ依存症だ」と冗談めかすことがありますが、これは真の依存症です。 +科学的な裏付けがあります。 +興味のある方は、ジャロン・ラニアー、トリスタン・ハリス、ニール・エヤルの著作を一読されることをお勧めします。 +しかし、確かに言えることがあります。 +注目を集めることに依存することは、何か別のものに依存することと全く同じです。 +決して満足できないのです。 +始めたばかりの頃、「フォロワーが、1000人でもいれば、気分がいいだろう」と思っています。 +しかし、その後、「フォロワーが1万人になったら」とか、「100人になったら 100万人になったら、気分がいいだろう」となっていきます。 +Twitterで私のフォロワーは420万人ですが、気分がよくなったことはありません。 +Instagramのフォロワー数がどれほど多いかを言っているわけではないのです。Instagramのフォロワー数があまりにも少なくて本当に恥ずかしいのです。「バットマン」の公開後にInstagramを始めたからです。 +他の俳優を検索すると、フォロワー数が私より多いのです。自分のことが嫌になります。 +フォロワー数のことを考えると、誰もが自分のことを嫌になります。 +まだまだ足りないという感情が、投稿に突き動かし、もっと注目を集めることができます。そして、皆さんが集めた注目こそ、ソーシャルメディア企業が売っているものなのです。こうして彼らはお金を稼いでいます。 +このように、どんなに注目を集めても、「ああ、もうこれでいい」と言えるような達成感のある域には達しません。 +もちろん、私より有名で、私よりフォロワー数が多い俳優はごまんといますが、きっと彼らも同じことを言うでしょう。 +創造力が注目を集めたいという願望によって動かされるとしたら、創造力を発揮することは決してないでしょう。 +しかし、良いニュースもお伝えしましょう。 +別の強力な感情があるのです。 +注目を使ってできることが他にもあります。巨大なハイテク企業があなたの注目をコントロールして、それを売るだけではありません。 +これこそ、私が言っている感情です。私は、なぜ演じることが大好きなのでしょうか。ただひとつのことだけに注目できるからです。 +実は、こうした背景にも科学が関係していることがわかってきました。 +心理学者や神経科学者、彼らは「フロー」と言われる現象を研究しています。一つのことだけに、例えば創造的なものだけに注目して、他のことに気を取られないようにしているときに人間の脳内で起こる現象です。 +これがもっと定期的に行われれば、もっと幸福になれるとも言われています。 +私は、心理学者でも神経科学者でもありません。 +しかし、これは私にとってまさに真実であると確かに言えます。 +いつも簡単にできるわけではありません。難しいことです。 +このように本当に注目することには訓練が必要ですが、誰もが自分のやり方で訓練しています。 +しかし、集中して、注目するのに役立つと思えることを、皆さんにお伝えできることが一つだけあるとしたら、「他の創造的な人をライバルと思わないようにする」でしょう。 +協力者を見つけるようにしています。 +例えば、私はあるシーンで演技をしています。もし他の俳優をライバル視するようになって、「ああ、彼らは私より注目を集めている、私の演技より彼らの演技が話題になるんだろうな。」私は集中力を失っています。 +そのシーンでの私の演技は最悪になるでしょう。 +しかし、他の俳優を協力者と思えば、集中することは簡単です。ただ彼らに注目しているだけですから。 +私が何をしているかを考える必要はありません。彼らのしていることに反応し、彼らも私のしていることに反応し、皆がお互いそれを一つになって保つことができます。 +しかし、このように協力しあえるのは撮影現場の俳優だけだとは思わないでください。 +どんなタイプの創造的状況でも可能だと思います。 +専門的な状況でも、ただ楽しみたいとう状況でも可能でしょう。 +同じ部屋にいない人とでも協力しあえるでしょう。 +実際、今までしてきたことで気に入っていることには、物理的に会ったことのない人たちと成し遂げたことがあります。 +ところで、これがインターネットの醍醐味だと私は思っています。 +注目を集める競争をやめれば、インターネットは、協力者を見つける最高の機会の場になります。 +他の人と協力し合うと、撮影現場であろうと、オンラインであろうと、その「フロー」を見つけるのがもっと簡単になります。皆が共に作り上げている一つのことにだけ注目しているからです。 +そうすると、私は、自分自身より大きな何かの一部だと感じられ、気を取られる何か別のものから互いを守り、ただそこにいればよくなります。 +少なくとも私には効果があります。 +時々ですが。 +時々、いつも効果があるわけではありません。 +時々、未だに、注目を集めたいという中毒的な渦に完全に囚われてしまうことがあります。 +つまり、今でも、正直、「ねえ、私を見て、TEDトークやるんだ!」という部分がないわけではありません。 +ありますよ。そういう部分があるんです。 +しかし、正直な気持ちをお話しすれば、原稿を準備して、このトークをするという創造的なプロセス全体が、自分がとても気になっていることに集中して、それに本当に注目する非常に重要な機会となりました。 +その結果注目を集められたかどうかに関わらず、成し遂げたことに喜びを感じています。 +このような機会を与えてくださったすべての方に感謝します。 +ありがとうございます。そうです。これから、あなたは他の人に注目をすることができるのです。 +ご静聴ありがとうございました。 + + +46528 +皆さんの前でこの話をするのは今回が初めてです。個人的な側面の話をしようと思います。 +ヨギ・ベラは世界的に有名な野球選手でした。「分かれ道に来たら、とにかく進め」という名言を残しています。 +100年以上、研究者はがんと闘う手段として免疫システムに取り組んできましたが、がんワクチンは、残念ながら満足のいくものではありませんでした。 +子宮頸がんや肝臓がんなど、ウイルス由来のがんだけには効果がありました。 +そのため、基本的に、がん研究者は、免疫システムを利用してがんと闘うという考えを諦めてしまいました。 +いずれにしても、免疫システムは、がんと闘うために進化しませんでした。外部から侵入する病原体と闘うために進化したのです。 +つまり、免疫システムの役割は、バクテリアとウイルスを殺すことなのです。 +免疫システムがほとんどのがんに苦戦しているのは、がんは、外部から侵入するのではなく、自分自身の細胞から進化しているからなのです。 +したがって、免疫システムががんを問題として認識していないか、がんだけでなく人間の正常な細胞も攻撃してしまう結果、大腸炎や多発性硬化症などの自己免疫疾患を引き起こします。 +では、それを回避する方法はなんでしょうか? +私たちの答えは、がん細胞を認識して殺すようにデザインされた合成免疫システムであることがわかりました。 +そうです、合成免疫システムです。 +遺伝子工学や合成生物学を使用します。 +免疫システムの中で自然発生する部位、B細胞とT細胞を使って取り組んできました。 +こうした細胞が構成要素です。 +T細胞は進化してウイルスに感染した細胞を殺します。B細胞は、分泌後にバクテリアを殺す抗体を作る細胞です。 +さて、この2つの機能を組み合わせ、がんと闘うために再利用するようデザインしたらどうなるでしょうか? +B細胞からT細胞に抗体用の遺伝子導入することが可能であることに気づきました。 +その方法とはなんでしょうか? +HIVウイルスをトロイの木馬として、T細胞の免疫システムに侵入させました。 +その結果がキメラです。ギリシャ神話に出てくる、口から火を噴き、ライオンの頭、山羊の胴体と蛇の尻尾を持つ空想上の生き物キメイラです。 +B細胞抗体、T細胞キャリア、HIVのトロイの木馬を使って産生したパラドックスの物質を「キメラ抗原受容体T細胞」、CAR-T細胞と呼ぶことに決めました。 +ウイルスも遺伝子情報に導入され、T細胞を活性化し、殺傷モードになるようプログラムします。 +CAR-T細胞をがんに罹患した人に輸注したとき、CAR-T細胞が腫瘍のターゲットを見つけて融合するとどうなるでしょうか? +ステロイドに作用するスーパーチャージしたキラーT細胞のように機能します。 +体内で攻撃―防御増強システムをスタートし、文字通り分化して数百万倍増幅してから、腫瘍を攻撃して殺します。 +つまり、CAR-T細胞は、医学分野では初めての生きた薬だということです。 +CAR-T細胞は、モールドを破壊します。 +通常飲む薬とは異なり、CAR-T細胞に仕事をさせ、代謝されたら、体内に戻さなくてはなりません。CAR-T細胞は何年も生き続け、仕事を続けます。 +現在、がん患者の体内で8年以上生き続けているCAR-T細胞があります。 +このようにデザインされたがんT細胞であるCAR-T細胞の半減期は、計算上17年以上です。 +したがって、1回輸注するだけで仕事をして、患者の残りの人生を見守り続けます。 +医学分野においては初めてのパラダイムの始まりです。 +ここで、こうしたT細胞輸注に立ちはだかる一つの大きな障害がありました。 +患者の体内で仕事をするT細胞を作り出せるのは、一卵性双生児でない限り自分自身のT細胞だけです。 +ですから、ほとんどの人が運に見放されています。 +そこで私たちが取り組んできたのがCAR-T細胞の産生でした。 +患者自身のT細胞を増殖する方法を学ばなければなりませんでした。 +そして、1990年代、堅牢なプラットフォームを開発しました。 +その後1997年、進行性HIV-AIDS患者にCAR-T細胞を輸注する治験を開始しました。 +CAR-T細胞は、10年以上患者の体内で生き続けていることがわかりました。 +そして、患者の免疫システムを改善し、ウイルスを減少させましたが、治癒には至りませんでした。 +そこで、ラボに戻り、次の10年をかけてCAR-T細胞のデザインを改良しました。 +2010年までに、白血病患者の治療を開始しました。 +私たちのチームは、2012年に進行性慢性リンパ球性白血病の3人の患者の治療を行いました。 +アメリカでは、毎年およそ2万人の成人に発症する不治の白血病の一種です。 +最初に治療に当たった患者は、退役海兵隊軍曹で刑務所の矯正官でした。 +この患者の余命は数週間と言われ、実際に葬儀の費用を支払い済みでした。 +細胞を輸注して数日後、高熱が出ました。 +多臓器不全を発症させ、ICUに移送され、昏睡状態でした。 +彼は助からないだろうと思われました、実際臨終の秘跡が行われました。 +しかしその後、別の分かれ道が現れたのです。 +そして、CAR-T細胞輸注からおよそ28日後、患者は覚醒し、医師が最後に診察したところ、がんが消滅していました。 +体内にあった大きな塊は溶けていました。 +骨髄生研では、白血病の出現がみられず、その年、治療に当たった3人の患者のうち2人が長期寛解で8年経ち、1人は部分的寛解状態です。 +CAR-T細胞が3人の患者の体内の白血病を攻撃し、患者1人当たり2.9から7.7ポンド(1.3から3.5キログラム)の腫瘍を溶解しました。 +彼らの体はCAR-T細胞の正真正銘のバイオリアクターとなり、骨髄、血液、腫瘍の塊に何百万ものCAR-T細胞を産生しました。 +CAR-T細胞は、ボクシングで例えるならば本来の階級よりはるかに上の階級でパンチを繰り出すことができるということがわかりました。 +たった1個のCAR-T細胞が、1,000個の腫瘍細胞を殺すことができるのです。 +その通りです。1対1,000の比率です。 +最後の腫瘍細胞が消滅するまで、CAR-T細胞とその娘細胞が体内で分化に分化を重ねます。 +がん医学において前例のないことです。 +最初の2人の患者は、完全に寛解し、今日まで白血病の兆候がないため、治癒したと考えられます。 +彼らは、選択肢に尽きていました。あらゆる伝統的な治療を受け、現代のラザロのようでした。 +言えることはただ一つ、「分かれ道があってよかった」です。 +次のステップは、子どものがんで最もよく見られる、急性白血病に罹患した小児への治療許可を得ることでした。 +治験で受け入れた初めて患者は、エミリー・ホワイトヘッドです。当時6歳でした。 +エミリーはここ数年化学療法と放射線治療を受けてしましたが、白血病が再発を繰り返していました。 +実際、3回再発しました。 +初めて会ったとき、エミリーの病状はひどく悪いものでした。 +公式の診断結果では進行性の、不治の白血病でした。 +がんは、彼女の骨髄、肝臓、脾臓にまで浸潤していました。 +CAR-T細胞の輸注を開始したのは2012年の春、4月でした。その後数日間、症状は改善しませんでした。 +悪化し、実際に症状はさらにひどくなりました。 +刑務所の矯正官が2010年にそうであったように、エミリーは2012年にICUに運ばれ、今回の話に出てくる道の中でも最も恐ろしい分かれ道でした。 +3日目には、エミリーは昏睡状態に陥り、腎不全、肺不全、昏睡状態で生命維持装置につながれました。 +106℉(41℃)の高熱が3日間続きました。 +発熱の原因を突き止めることができませんでした。 +感染症を疑いあらゆる標準的な血液検査を行いましたが、高熱が感染によるものという結果は得られませんでした。 +しかし、医学分野でかつて見たことのない、非常にまれな状態が血液にあることを発見しました。 +血液中のインターロイキン6(IL-6)と呼ばれるタンパク質の濃度が上昇していました。 +実際、通常濃度の千倍以上に上昇していたのです。 +ここで、また別の分かれ道が登場しました。 +まったくの偶然ですが、私の娘の1人が小児関節炎です。 +そのため、がん専門医として、娘の関節炎に実験的治療が必要になる場合に備えていました。 +その治療が必要になったのが、エミリーが入院するわずか数か月前でした。高濃度のインターロイキン6を治療するための新しい治療法が、FDA(米国食品医薬品局)に認可されました。 +娘の関節炎の治療でもその治療法が認可されました。 +トシリズマブと呼ばれる治療薬です。 +実際、エミリーの病院の薬剤部にも関節炎治療薬としてトシリズマブが入荷しました。 +インターロイキン6の濃度が非常に高いことがわかった時、ICUにいるエミリーの主治医に電話をかけ、「この関節炎の薬で治療してみたらどうか」���話しました。 +そんな提案をするなんてなんて無茶なやつだと言われました。 +他のどの治療法でもエミリーの高熱と低血圧は改善しなかったため、主治医は急遽施設内治験審査委員会、エミリーの両親などすべての人に許可を求めました。もちろんイエスです。 +トシリズマブを試しましたが、結果は驚き以外のなにものでもありませんでした。 +トシリズマブを投与して数時間以内に、エミリーの症状は、急速に改善していきました。 +治療から23日目、エミリーのがんは消えたと宣言されました。 +そして今日、今12歳ですが、寛解状態が続いています。 +CAR-T細胞輸注に伴う高熱と昏睡状態というこのような激しい反応は、現在サイトカイン放出症候群(CRS)と呼ばれています。 +治療に反応するほとんどすべての患者にCRSが見られました。 +反応しない患者にはCRSは見られませんでした。 +ですから、逆説的ではありますが、CAR-T細胞輸注の治療後、私たちの患者は高熱が出てほしいと思っています。「生きてきて一番つらいインフルエンザ」のようなものです。 +患者がこの反応を望んでいたのは、紆余曲折を経て健康を取り戻せることを知っているからです。 +残念なことですが、すべての患者が回復するわけではありません。 +CRSを発症しない患者さんは、治癒しないことが多いのです。 +このように、白血病を根絶するには、CRSと免疫システムの力の間の関係が強く影響しています。 +そのため、昨年夏、FDAは、白血病治療用にCAR-T細胞を認可した際、患者のIL-6効果とそれに伴うCRSをブロックするためのトシリズマブも共同認可しました。 +それは、医学の歴史上、非常にまれな出来事でした。 +エミリーを担当した医師たちは、現在さらに治験を完了し、30人の患者のうち27人の報告をしています。治療した最初の30人、つまり90%は、CAR-T細胞輸注後1か月以内に完全寛解しました。 +進行性がんに罹患した患者の90パーセントが完全寛解状態になるというのは、50年以上にわたるがん研究では前代未聞です。 +実際、患者の完全寛解率が15パーセントであれば、多くの製薬会社はがんの治験を成功と公表します。 +2013年、注目すべき研究が、「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」に掲載されました。 +以来、世界中の研究によりその結果が確認されてきました。 +おかげで、2017年8月、小児白血病と若年性白血病治療用にFDAが認可するに至りました。 +細胞・遺伝子治療で史上初の認可を受けたCAR-T細胞治療は、現在では耐性リンパ腫の成人患者に対しても治験が行われています。 +米国でこの病気に罹患する人は、毎年2万人います。 +治験結果は、どの人も期待できるもので、現時点で治癒しています。 +6か月前、FDAは、この進行性リンパ腫に対してCAR-T細胞を使った治療を認可しました。 +現在では、世界中の多くのラボ、医師、科学者が、その他の様々な病気についてCAR-T細胞の試験を行っています。急速な進歩にワクワクしていることは想像に難くありません。 +以前は死に至るとされていた患者が、エミリーのように健康な生活に戻っているのを目にすることができて本当に感謝しています。 +長期にわたる寛解の結果、実際に治癒することに興奮しています。 +同時に、気がかりなのは金銭的負担です。 +CAR-T細胞を産生するのに患者1人当たり最大15万ドルかかります。 +CRSやその他合併症の治療にかかる費用を追加すれば、患者1人当たり100万ドルに達します。 +しかし、失敗の代償はさらに大きいことを忘れてはなりません。 +現在の治癒できないがん治療でも費用は高額で、患者は死に至ります。 +ですから、言うまでもなく、現在までに行われた研究を確認して、効率化を進め、すべての患者が支払い可能になるようにしたいと思っています。 +幸い、この分野は新しく、進化しており、その他多くの新しい治療やサービス同様、業界が効率化を学ぶにつれ価格は下がっていきます。 +CAR-T細胞治療に導くすべての分かれ道について思いを寄せると、非常に重要に思われることが一つあります。 +この偉大な発見は一夜にしてなし得たものではないということに気づかされます。 +CAR-T細胞治療は、挫折と驚きに満ちた道を進んだ30年にわたる旅の後に現れました。 +満足や24時間365日オンデマンドの結果が即座に得られるこの世の中において、その上をいく粘り強さ、ビジョン、忍耐が科学者には求められています。 +科学者は、分かれ道が二者択一のジレンマや回り道ばかりとは限らないことをわかっています。時には、当時は気づかなかったものの、その分かれ道が帰路になるのです。 +ご静聴ありがとうございました。 + + +49440 +5年前にとても興味深い経験をしました。 +私と夫は、1日おきに食料品店に買い物に行っていたのですが、このとき、この高級品を見つけてしまったのです。フェアトレード、オーガニック、ケニヤ産、単一原産国のコーヒーです。そして散財して購入しました。 +その時すでに問題は始まっていました。 +私の夫は、このブレンドコーヒーはいつも買う安物のコーヒーよりも上質だと考えていました。それで、私は、高級コーヒーだけを買う生活を想像しましたが、家計が爆発的に増えている様子が目に浮かびました。 +さらに悪いことに… +この投資は無駄になるのではないかという心配もありました。 +結局、この違いに気づくことができないのではないかと思ったのです。 +残念なことに、特に私の夫の場合、食品科学を専門とする神経科学者と結婚したことを一瞬忘れることがありました。 +それではさっそく、つまり、夫にテストを受けてもらいました。 +実験を計画して、まず夫に目隠しをしました。 +次に、2種類のコーヒーを入れ、コーヒーは一回につき一杯出すと伝えました。 +さて、夫は、はっきり確信して、一杯目のコーヒーは、野卑で苦いと形容しました。 +アラームのような味わいで体を威嚇しながら目覚めさせるだけなら、朝には理想的なコーヒーですよね。 +他方、二杯目のコーヒーは、フルーティーでしかもいい香りでした。 +夜、リラックスしているときに味わうコーヒーですね。 +しかし、夫は、実は私が2種類のコーヒーを出してなどいないとは知る由もありませんでした。 +全く同じコーヒーを二度夫に出したのです。 +明らかなことですが、この一杯のコーヒーが突然ひどいものからすばらしいものに変わったということではありません。 +この味覚の違いは、夫自身の意識の産物でした。 +高級コーヒーが好きだという夫のバイアスによって、実際には存在しない味覚の違いを体験してしまったのです。 +これでよかったんです。我が家の家計節約にもなりましたし、とても笑わせてもらって終わりました、特に私は-- +次に、一杯のコーヒーからこのような2つの異なる反応がどうやって得られたのだろうと考え始めました。 +残りの人生を公然と嘲笑われる危険を冒してまで、夫はなぜこのような大胆なことを言ってしまったのでしょう? +驚くような答えになりますが、皆さんも同じことをしたと思います。 +それが私の専門とする科学の分野で最も大きな課題なのです。私たちが受け取る回答にはどんな真実が隠されているのかを評価するのです。 +というのも、人々が実際に好きだと言っていることに頼れない場合、どうやって食品をもっと美味しくすることができる���でしょう? +これを理解するために、まずは私たちが実際どうやって食品を知覚しているかを見てみましょう。 +一杯のコーヒーを飲むとき、身体の受容体がこのコーヒーを検出します。次に情報が脳内の活性化した神経細胞に変わります。 +光の波長は色に変換されます。 +液体の分子が口の中で受容体に検出され、5つの基本的な味覚の一つに分類されます。 +塩味、酸味、苦味、甘味、うまみの味覚です。 +空中の分子が鼻の中で受容体に検出され、匂いに変換されます。 +触覚、温度、音なども同様です。 +これらの情報はすべて私の受容体に検出され、脳内の神経細胞間に送られる信号に変換されます。 +それから、情報は、織りあわせられ、統合され、私の脳はこのように認識するのです。「はい、ちょうど一杯のコーヒーを飲みました、はい、そのコーヒーが気に入りました。」 +神経細胞がこのような重労働をした後、私たちは初めてこの一杯のコーヒーを意識的に経験するのです。 +ここで、非常によくある誤解があります。 +意識的に経験することは、現実を完全に正しく反映しているに違いないと思いがちです。 +しかし、今お話した通り、物理的なものとその意識的経験の間には神経細胞による何段階もの解釈が存在します。 +つまり、時に、この意識的経験はその現実を全く反映していないことがあります。 +私の夫に起こったことと同じです。 +物理的刺激には、単にその刺激が非常に弱いため、障壁を突破して意識に入ることができないものがあり、その一方で情報は途中で無自覚のバイアスによってゆがめられる可能性があるからです。 +人には多くのバイアスがあります。 +そうです、もしあなたがたった今そこに座っていて、こんな風に考えているとしたら… +自分なら私の夫よりいい結果が出せただろう、2杯のコーヒーを正確に評価できていただろうと考えているとしたら、実はバイアスがかかっています。 +バイアスの盲点と呼ばれるバイアスです。 +自分は他人よりバイアスが少ないと考える傾向があります。 +ええ、先入観があるバイアスにさえバイアスをかけることができます。 +これをもっと簡単にしようとはしないのです。 +食品業界で知られているバイアスが、礼儀バイアスです。 +これは、社会的に受け入れられそうに思われる意見を述べる場合のバイアスですが、自分自身の意見を述べていないのは確かですね。 +さらに食品研究者として、このバイアスに苦慮しています。糖分をカットした私の新しいミルクセーキが美味しいと言うとき、人々はそう思っているでしょうか? +それとも、私が聞いていることを知っていて、私を喜ばせたいだけで美味しいと言っているのでしょうか? +それとも、健康、ヘルシーに聞こえるようにしたいだけでしょうか。 +私にはわかりません。 +しかし、さらに悪いことに、彼ら自身さえわかっていないでしょう。 +訓練を受けた食品評価者でさえ、嗅覚と味覚のもつれを明確に解き放つよう教えられている人でさえ、バニラが含有されると、製品の甘さが増していると評価するバイアスを持つ可能性があります。 +なぜでしょう? +バニラの味が実際甘いからではないのは確かですね。 +これは、こうした専門家でも人間ですし、私たち同様たくさんのデザートを食べてきました。ですから、甘さとバニラを関連付けることを学んできたのです。 +そのため、味覚、嗅覚やその他の知覚情報は、私たちの意識の中で切り離せないほどもつれているのです。 +一方で、実際にこれを利用することができます。 +こうした意識的経験を利用し、このデータを使用し、砂糖の代わりにバニラを加えて製品���甘くすることで有効に利用することできます。 +しかし、他方で、この意識的評価を用いても、糖分をカットしたミルクセーキを本当に気に入ったかどうかはやはりわかりません。 +さて、この問題をどうやったら回避できるでしょうか? +こうした意識的食品評価に隠された現実を、私たちは実際にどうやって評価するのでしょうか? +鍵は、意識の障壁を取り除き、その代わりに脳内の情報を直接ターゲットにすることにあります。 +脳は多くの魅力的な秘密を抱えていることがわかっています。 +脳は、身体全体から常に知覚情報を受け取りますが、そのほとんどについて、胃腸管から常に受け取る味覚情報同様、私たちは気づいてもいません。 +また、脳はこれらすべての知覚情報に基づいて機能します。 +脳は、知らないうちに私の行動を変化させ、本当に好きなものを経験すると瞳孔の直径を広げることができます。 +さらに、その感情が激しいと、本当にわずかですが発汗が増加します。 +現在、脳スキャンを用いれば、脳内のこの情報を評価することができます。 +具体的には、脳波記録法、「EEG」と略される脳スキャン技術を使用しましたが、この際、電極付き、私の場合は128個の電極付きのキャップを装着します。 +各電極が脳の電気的活動を1000分の1秒の精度で測定します。 +しかし問題は、電気的に活動するのは、脳だけではなく、身体の残りの部分や、常に多くの電気的活動が含まれる環境も電気的に活動するということです。 +したがって、研究を行うため、これらすべてのノイズを最小限にする必要があります。 +ここで、参加者には、多くのことをお願いします。 +まず、頭部をあご当てで休めてもらい、過度な筋肉運動を避けてもらいます。 +また、コンピュータのモニターの中心を見つめてもらい、過度な眼球運動とまばたきも控えてもらいます。 +飲み込むこともできないため、参加者には、ガラス製ボウルの上で口から舌を突き出してもらいます。そして、味覚刺激を舌に常に与えて、ボウルに唾液を垂らしてもらいます。 +次に、このすばらしい写真を完全なものにするため、参加者にはよだれ掛けも提供します。色はピンクとブルーから、お好きなものをお選びいただけます。 +普通の食体験っぽいですよね? +いえいえ、全く違います。 +さらに悪いことに、参加者が考えていることをコントロールすることができません。ですから、この味覚テストを複数回繰り返す必要があります。 +おそらく最初は、参加するともらえる無料のランチのことを考えているかもしれませんし、二回目は、もうすぐクリスマスだけど、今年はママに何をプレゼントしようかと考えているかもしれませんね。 +しかし、反応それぞれに共通しているのは、味覚への反応です。 +そこで、この味覚テストを複数回繰り返します。 +事実60回繰り返すのです。 +それから、反応の平均値を取ります。これは、味覚に無関係な反応を平均化するためです。 +この方法を用いて、私たちやその他のラボで、「食品が舌に上陸」してから、脳がどの味覚を体験しているかを解明するまでにかかる時間を調査しました。 +意識する前の既に最初の100ミリ秒以内、およそ2分の1秒以内であることがわかりました。 +次に、私たちの設定では非常に味覚が似通っている砂糖と人工甘味料の味覚の違いも調査しました。 +実際、とても味が似ていたため、半数の参加者は、味覚が異なっているとかろうじて理解できましたが、残りの半数は違いが全くわかりませんでした。 +しかし、驚いたことに、参加者のグループ全体を見ると、参加者の脳は、確かに味の違いを区別できていました。 +そこで、EEGやその他の脳スキャンデバイス、汗と瞳孔のサイズというその他の生理学的測定を行って、脳への新たな出入口が得られました。 +出入口によって、意識の障壁を取り除いて、人々のバイアスを見透かし、おそらく潜在意識での味覚の違いをもキャプチャできるようになるでしょう。 +というのも、今では、人々が食品を意識する前、そしてその食品がなぜ好きなのかなぜ好きではないのかを合理的に考え始める前に、食品への最初の反応を測定することができるからです。 +表情を測定し、視線の方向を測定し、発汗反応を測定し、脳反応を測定することができます。 +これらの測定値を使えば、より美味しい食品を作ることができるでしょう。人々があの糖分をカットしたミルクセーキを本当に好きかどうかを測定できるからです。 +味に妥協せずにより健康的な食品を作ることができます。様々な甘味料への反応を測定し、砂糖への反応により近い反応になった甘味料を探し出すことができるからです。 +さらに、より健康的な食品を作るサポートだけをすることもできます。実際、まずどのように食品を知覚するかの理解をサポートできるからです。 +いずれも意外に知られていません。 +例えば、5つの基本的な味覚があることは知られていますが、味覚はもっとあるのではないかという疑いが強くあります。実際、EEGセットを利用して、脂質はその食感や匂いが知覚されるだけではなく、味覚として感じられるというエビデンスを発見しました。 +つまり、脂質は新たな6番目の基本的な味覚になり得るということです。 +私たちの脳が脂質と糖分をどのように認識しているかがわかれば、今はまだ夢にすぎませんが、いつか、まるで本物のような味のするカロリーゼロのミルクセーキを作ることができるかもしれませんよ? +あるいは、作れないことがわかるかもしれません。潜在意識では、胃腸管内の受容体を介してカロリーを検知しているからです。 +未来が証明してくれるでしょう。 +私たちの食品に対する意識的経験は、食品への総合的な知覚の氷山の一角にすぎません。 +この総合的な知覚を、意識的、潜在意識を含め研究することで、より美味しく、より健康的な食品を作ることができると強く信じています。 +ご清聴ありがとうございました。 + + +50853 +今日お伝えしようと思っている話の始まりは、私にとって2006年にさかのぼります。 +それは、ミステリアスな病気のアウトブレイクについて初めて耳にした時です。ペルーのアマゾン熱帯雨林で発生しました。 +この病に罹っている人たちの症状は、恐ろしいもので、悪夢のようでした。 +信じがたい頭痛を訴え、食べることも飲むこともできませんでした。 +幻覚を見る人もいました。困惑し、攻撃的でした。 +中でも最も悲劇的だったのは、罹患した人の多くが子どもだったことです。 +そして、罹患した人はすべて亡くなりました。 +後でわかったことですが、人々を死に至らしめたのはウイルスでしたが、エボラでも、ジカ熱でもありませんでした。科学が目にしたことのない何か新しいウイルスでもありませんでした。 +これらの人々は昔からある死に至る病で亡くなっていました。何世紀にもわたって知られていた病です。 +狂犬病で亡くなっていたのです。 +彼らに共通していたのは、眠りにつくと、皆、血液だけを摂って生きる唯一の哺乳類、吸血コウモリに噛まれていたことです。 +コウモリから人に感染するこうした類のアウトブレイクは、ここ数十年間でさらによく見られるようになってきました。 +2003年に起こったのがSARSです。 +中国の動物市場で発生し、世界中に蔓延しました。 +ペルーのウイルス同様、そのウイルスも、結局コウモリに由来するものでした。ウイルスは、���ウモリが宿主となり何世紀も発見されていなかったと思われます。 +その後、10年が経ち、西アフリカでエボラが発生しましたが、ほとんど誰もが驚きました。当時の科学によれば、エボラは西アフリカでは発生していないと思われていたからです。 +歴史上最も大規模に広まったエボラアウトブレイクとなりました。 +憂慮すべき動きがありますね。 +致死率の高いウイルスは、思いもよらない場所で発生し、世界の健康共同体としては、対応に追われています。 +この終わりなきサイクルで次に出現するウイルスを常に追いかけ、既に発生した後に疫病を根絶しようと常に努力しています。 +ですから、新たな病気が毎年発生する状態で、今こそがまさに、何ができるのかを考え始める必要がある時期なのです。 +次のエボラが発生するのを待っているだけでは、次は幸運に見放されるかもしれません。 +様々なウイルスに遭遇する可能性があります。より致死率が高いもの、人に広がりやすいもの、あるいはワクチンがまったく足元にも及ばず、防御できないものかもしれません。 +パンデミックを予期できるのでしょうか? +パンデミックを食い止めることができるでしょうか? +非常に回答に苦慮する質問です。というのも、パンデミックとは、世界中に蔓延し、予期したいものですが、実際は非常にまれな事象なのです。 +そして種としての人間にとって、それは良いことです。だから私たちが皆ここにいられるのです。 +しかし、科学的な観点からすると、少し問題です。 +パターンを発見するには、発生がわずか一度や二度では不十分だからです。 +パターンとは、次のパンデミックの発生時期や場所を教えてくれるものです。 +だったら我々はどうすべきなのでしょうか? +そうですね、解決策の一つとして考えられるのは、パンデミックを引き起こすと考えられるウイルスと同一でないとしても、野生動物から人間、ペットあるいは家畜に日常的に感染する何種類かのウイルスを研究することでしょう。 +そうした日常的にみられるキラーウイルスを使って、一つの種から別の種に、そのような最初の、決定的な感染に至らしめるパターンのいくつかを分析し、食い止める方法を解明することができれば、種から種に感染することはまれでも、パンデミックの脅威があるようなウイルスに対して、より適切に備えることができるでしょう。 +ところで、狂犬病はそれ自体恐ろしいものですが、この場合、非常に親切なウイルスであることがわかっています。 +ご存じの通り、狂犬病は恐ろしい、致死率の高いウイルスです。 +致死率は100パーセントです。 +つまり、狂犬病に感染して、早期に治療を受けないと、手の施しようがありません。 +治療法がないのです。 +死に至ります。 +そして、狂犬病は過去の病気でもありません。 +今日でも、毎年5万人から6万人が狂犬病に罹って死亡します。 +その数字をある視点から見てみましょう。 +およそ2年半の西アフリカで発生したエボラアウトブレイク全体を想像してみてください。そのアウトブレイクで死亡したすべての人を1年間に凝縮します。 +かなりひどい数字です。 +しかし、その数を4倍したものが、毎年狂犬病による死亡者数になります。 +そして、狂犬病がエボラのようなウイルスと違うのは、罹っても蔓延しない傾向があるということです。 +つまり、人が毎回毎回狂犬病に罹るのは、狂犬病の動物、通常は犬かコウモリに噛まれたことが原因です。 +しかし、これは、種から種へのそうした感染を理解することが非常に重要ですが、ほとんどのウイルスでは非常にまれで、ところが狂犬病について言えば、実際に何千もの感染が発生しているということも意味し��す。 +ですので、ある意味、狂犬病はほとんど、致死率の高いウイルスのミバエや実験用マウスのようなものです。 +このウイルスを使用し、研究すれば、パターンを発見でき、新しい解決法を試すことができるかもしれません。 +そして、ペルーのアマゾンでの狂犬病のアウトブレイクを初めて聞いたとき、潜在的に強力なもののように思えました。これは、コウモリから別の動物に十分頻繁に感染するウイルスだから、予想できるかもしれないと… +食い止めることもできるかもしれない。 +そして、大学院一年目に、高校時代に受けたスペイン語の授業のぼんやりとした記憶を頼りに飛行機に飛び乗り、吸血コウモリを探しにペルーに飛び立ちました。 +このプロジェクトの最初の数年間は非常につらいものでした。 +ラテンアメリカから狂犬病を撲滅させるという意欲的なプランには事欠きませんでしたが、同時に、土砂崩れ、車のパンク、停電、腹痛にひっきりなしに見舞われ、すべてが私の計画を阻んでいました。 +しかし、南米での仕事ではよくあることでしたし、私にとって冒険の一部でした。 +それでも私を突き動かしていたのは、自分のしている仕事は、短期間で、実際、人々の生活になにか本当に影響を及ぼすかもしれないと初めて自覚したからです。 +それを最も実感したのは、実際にアマゾンに出向き吸血コウモリの捕獲を試みていたときです。 +おわかりでしょう、村に行ってあちこち聞いて回ればいいのです。 +最近コウモリに噛まれた人はだれですか? +それから、人々が手を上げました。このあたりでは、コウモリに噛まれることは毎日起こっている日常茶飯事だからです。 +そして、噛まれた人の家に行き、ネットを開いておき、夜に訪れ、コウモリがネットの中に飛んできて人間の血液を摂取しようとするまで待機すればよかったのです。 +ですから、私にとって、頭部に噛み傷がついた子どもやその子のシーツに血痕があるのを目にすることは、その日にたまたまロジスティックな頭痛や物理的な頭痛があっても克服できる、これ以上ないモチベーションだったのです。 +しかし、徹夜で作業をしていたため、この問題への実際の解決方法について考える時間がたっぷりありました。2つの火急の疑問がありました。 +第一に、住民は常に噛まれているのはわかっていますが、狂犬病のアウトブレイクは常に発生するわけではない、狂犬病のアウトブレイクは、数年に一度あるいは10年に一度発生しているということです。 +次のアウトブレイクの発生時期と場所を何とか予測できれば、本当のチャンスでしょう。つまり、誰かが死ぬ前にワクチンを接種してもらうことができるのです。 +しかし、裏を返せば、ワクチン接種は実際バンドエイドにすぎないということです。 +ダメージコントロール戦略のようなものです。 +もちろん、ワクチン接種は人命を救助する大切なことで、行わなければなりませんが、結局のところ、何頭の牝牛、何人の住民にワクチン接種をしても、コウモリには全く同量の狂犬病が潜んでいるのです。 +コウモリに噛まれる実際のリスクは全く変わりません。 +そこで、私の第二の疑問は、「感染源からどうにかしてウイルスを除去できないか?」でした。 +コウモリ自体の狂犬病の量をどうにかして減らすことができれば、真のゲームチェンジャーとなるでしょう。 +ダメージコントロール戦略を予防に基づく戦略にシフトすることについて話し合ってきました。 +その場合、どうやってその戦略を始めればよいでしょうか? +最初に理解しなければならないのは、自然の宿主であるコウモリの中でこのウイルスは実際どのように機能しているのかということでした。 +それはあらゆる感染症、特にコウモリのような隠遁種による感染症では難���い注文ですが、どこかで始めなければなりませんでした。 +したがって、まず始めたのが、いくつかの過去データに当たることでした。 +過去にこのようなアウトブレイクがいつどこで発生したのでしょうか? +そして、明らかになったのが、狂犬病は活動しなければならないウイルスということでした。 +じっとしていられなかったのです。 +ウイルスは、1年間、2年間かもしれません、一つのエリア内で循環している可能性がありますが、どこか別で感染させる新しいコウモリのグループを見つけない限り、ほぼ絶滅してしまう運命にありました。 +それに基づき、狂犬病感染についての課題の一つの主要なパートを解明しました。 +活動するウイルスに取り組んでいることはわかっていましたが、ウイルスがどこに向かうのかはわかっていませんでした。 +基本的に、必要だったのは、Google Map形式に似た予測でした。「ウイルスの目的地は?到着までにどの経路を取りますか?移動速度は?」 +そのため、狂犬病のゲノムに注目しました。 +他の多くのウイルス同様、狂犬病のゲノムは大変小さいのですが、とても、とても進化が早いのです。 +非常に早いため、ウイルスがある地点から次の地点に移動するまでに、新しい2個の変位株を増やすことになります。 +ですから、進化樹の点と点をつなげればいいのです。これによって、ウイルスの過去の居場所、蔓延方法がわかります。 +そこで、外に出て、牝牛の脳を集めました。狂犬病ウイルスを採取できるからです。 +その後、牝牛の脳にあったウイルスから得たゲノム配列によって、毎年10マイル(16キロメートル)から20マイル(32キロメートル)の範囲で広がるウイルスであることを解明できました。 +OK、つまり、今ウイルスの制限速度がわかりましたが、そもそもウイルスの目的地はどこかという別の主要なパートは未解決のままです。 +そのため、コウモリのことをもう少し考える必要がありました。狂犬病はウイルスで、それ自体では移動しませんが、コウモリという宿主によって動き回らなければならないからです。そこで、コウモリの飛距離と飛行頻度について検討する必要がありました。 +これだけでは、私の想像力はそれほど広がりませんでした。コウモリに最初に装着しようと試みたデジタルトラッカーもうまくいきませんでした。 +とにかく必要な情報を得られなかったのです。 +そこで、コウモリの交配パターンに注目することにしました。 +コウモリのゲノムの特定部分を見ると、いくつかのコウモリのグループの中には、グループ間で互いに交尾するグループと、他のグループとはかなり孤立しているグループがあることがわかりました。 +ウイルスは、基本的にコウモリのゲノムが敷いた経路をたどっていたのです。 +しかも、その経路の一つは、少し驚くほど、信じられないほど際立っていました。 +その経路とは、ペルーのアンデス山脈上空をまっすぐ横断し、アマゾンから太平洋岸まで横断する経路のようでした。ちょっと信じられませんでした。先ほどお話したように、アンデス山脈は標高が非常に高く、およそ2万2千フィート(6,700メートル)で、吸血コウモリが飛ぶには高すぎるのです。 +しかも... +もう少しよく調べたところ、ペルー北部には網目状に谷が連なるところがあり、谷の両側ともそれほど標高がないので、コウモリが交尾できないほど高いわけではなかったのです。 +それからもう少しさらに調べたところ、案の定、狂犬病はその谷を通って毎年、およそ10マイル(16キロメートル)だけ広がっています。 +基本的には、私たちの進化モデルの予測と全く同じでした。 +お話していなかったのですが、これは本当に重要なことです。狂犬病はアンデス山脈の西側傾斜地や南米の太平洋岸全体にはこれまで発生していなかったからです。ですから、南米の非常に広い範囲に歴史上初めて侵入したことをリアルタイムで実際に目撃していました。このことで、「その侵入にどう対処すればいいのか」という重大な疑問が生まれます。 +そうです、短期的に私たちができる明らかなことは、人々に、「ご自身や、動物にワクチン接種が必要です。狂犬病が近づいています」と話すことです。 +しかし、長期的には、その新情報を使ってウイルスの到来を完全に食い止めることができれば、さらに効果的でしょう。 +もちろん、「今日は飛ばないでくれ」とコウモリに伝えることはできませんが、おそらく、ウイルスがコウモリと一緒にヒッチハイクするのを止めることはできるでしょう。 +そこで、世界中の狂犬病管理プログラムから身に付けてきた重要な教訓に至ります。犬、キツネ、スカンク、アライグマであろうと、北米、アフリカ、ヨーロッパであろうと関係ありません。 +動物の感染源にワクチン接種をすることが、狂犬病を防止する唯一の手段です。 +さて、コウモリにワクチンを接種できるでしょうか? +犬猫へのワクチン接種についてはいつも耳にしていると思いますが、コウモリへのワクチン接種はあまり聞いたことがないですよね。 +変な質問に聞こえるかもしれませんが、コウモリのために特別にデザインした食用狂犬病ワクチンの用意がすでにあるのです。 +さらに朗報ですが、このワクチンはコウモリからコウモリに伝播します。 +一羽のコウモリにワクチンを塗って、毛づくろいをし合うコウモリの習性を利用して残りのコウモリにも効くようにするだけでいいのです。 +つまり、少なくとも、非常に小さなシリンジで何百万羽ものコウモリに一羽一羽ワクチン接種をする必要はないということなのです。 +しかし、そのツールがあるからと言って、使い方を知っているということにはなりません。 +今、疑問が山積みです。 +何羽のコウモリにワクチン接種をする必要があるのか? +1年のどの時期にワクチン接種をする必要があるのか? +1年に何度ワクチン接種をする必要があるのか? +こうした疑問はいずれも、どのようなワクチン接種キャンペーンを展開する際に本当に基本的なものですが、ラボで答えが出ない疑問です。 +そこで、多少もう少しカラフルな手法を取っています。 +本物の野生コウモリを使いますが、ワクチンはフェイクです。 +コウモリの毛を光らせる食用ジェルと、コウモリ同士がぶつかったときに拡散するUVパウダーを使います。それによって、野生コウモリのコロニーで本物のワクチンがどれぐらい拡散するかを研究します。 +この研究はまだ初期段階ですが、これまでの結果は非常に期待の持てるものでした。 +それによると、既存のワクチンを使えば、狂犬病アウトブレイクの規模を劇的に縮小できる可能性があるのです。 +それが重要です。覚えておられるでしょうが、狂犬病は、常に活動していなければいけないウイルスです。ですから、アウトブレイクの規模を縮小するたびに、ウイルスが次のコロニーへの移動に成功する危険性を減らしていることになります。 +伝染の連鎖の輪を断ち切っています。 +そうするたびに、ウイルスを一歩ずつ絶滅に近づけているのです。 +ですから、私にとって、狂犬病を完全に駆逐することについて実際に話し合っているそう遠くない将来の世界に思いをはせることは、非常に励みになり、ワクワクします。 +では、元の疑問にもどりましょう。 +パンデミックを防ぐことができるでしょうか? +そうですね、この問題への特効薬的な解決策はありませんが、狂犬病についての私の経験から言わせてもらえば、かなり楽観視しています。 +ゲノミクスでアウ���ブレイクを予測し、有能な新技術、例えば食用自己拡散型ワクチンがあり、人々に感染する機会が生じる前に感染源からこうしたウイルスを取り除くことができるような将来は、そう遠くないと考えています。 +そして、パンデミックと闘うことになると、一歩先を行くことこそが至高の目標となります。 +言わせていただけば、成功に導く方法の一つは、狂犬病など現在既に知られている問題をいくつか利用することにあります。いうなれば、宇宙飛行士がフライトシミュレーターを使うような方法で、何が効果的で何が効果的ではないかを把握し、危険度が高まったとき、無視界飛行をしないようにツールセットを築くことだと思います。 +ご清聴ありがとうございました。 + + +54706 +あなたの仕事は何ですかと人に尋ねられるときが本当に楽しいということを白状しなくてはいけません。文字通り物質を擦り合わせていると答えるからです。 +馬鹿げたことのように聞こえるかもしれませんが、ただ物質を擦り合わせているのです。 +しかしそれには技術的名称があります。トライボロジーです。 +T-r-i-b-o-l-o-g-y、古代ギリシャ語で「擦る」を意味する「tribos」から作られた言葉です。 +おそらく今までに聞いたことのない不思議な単語かもしれませんが、トライボロジーを知ると、物理学の世界での経験が変わることをお約束します。 +トライボロジーは、すばらしいプロジェクトを与えてくれました。 +私は、舞い上がる材質に取り組み、ドッグフードにも取り組みました。わずか数年のスパンで一人の人間がする仕事とは思えない組み合わせですが、トライボロジーのレンズを通して世界を見始めると不思議ではなくなるでしょう。 +ある非常に大きな問題を軽減するのに、トライボロジーのわずか一部であってもどれほど意味があるかを知ると驚くのではないでしょうか。 +トライボロジーは、摩擦、摩耗、潤滑の研究です。 +皆さんは、この3つのすべての経験をされていると思います。 +最近、床の上で重いものを動かそうとしたことがありませんでしたか?あなたに抵抗する何かを感じることができたでしょう。 +それが摩擦です。 +摩擦は、運動に抵抗する力です。 +摩耗は、材料が失われたり移動することです。 +お気に入りの靴を交換しなければいけないのはそのためです。靴底が最終的には消えてしまうからです。 +潤滑剤は、摩擦と摩耗を減らすために使われます。 +頑固に錆びて動かないボルトを緩めてくれます。 +しかし、トライボロジーは、相対運動、相互作用する表面の科学としても定義されています。 +そうです。相対運動、相互作用する表面、世の中にはそういうものが沢山あります。 +あなたは今そこに座っています。足をくねくね動かしたり、椅子で身体を動かしていませんか? +なぜだと思いますか?トライボロジーが起こっているのです。 +椅子でほんの少し動くだけでも、相対運動をする2つの表面が関わっています。 +あなたが動くときのトライボロジーの相互作用は、隣の人とは異なります。 +着ている服によって、人と椅子の間の摩擦を変化させているからです。 +シルクの服の方がウールの服より椅子で多少くねらせやすくなります。 +シルクはウールより摩擦が低いからです。 +くるぶしを動かしたり、くねらせると、ポンとはじける音がしましたか? +鳴りましたよね? +立ち上がって、動き回ると、どこかの関節がパキッ、パチッと鳴ります。 +その音を出してくれるのがトライボロジーです、ありがとう。 +その音は、今動き回っている関節を滑りやすくする流体から出ています。 +その流体中の気泡を実際に放出しているのです。 +その音は、単に互いに動いている腱から出ていることもあります。 +くるぶしでは非常によく見られる光景ですから、よく足をくねらせる仲間がいれば、腱のトライボロジーににわかに興味を持つかもしれませんね。 +しかし、どうやって人は私のようにトライボロジストになるのでしょう? +もちろん、子どものときにトライボロジストの人生が始まります。 +子どもの頃、私はバレリーナでした。 +つま先で立つ「ポワント」ができるレベルにまで達していました。 +さて、ポワントで踊るときには、驚くようなシューズを履いているのですが、シューズはステージでは滑りやすいのです。 +つま先立ちで踊ろうとするときに最もやりたくないのが、滑ったり転んだりすることです。 +そこで、何箱ものロジンというものを使います。 +ロジンに足を入れて、シューズに薄くコーティングさせます。 +ロジンの原料は樹液です。パウダー状で、物を滑りにくくさせます。 +シューズにつける適切な量については、ダンサーとして本当にすぐにわかるようになりました。十分な量をコーティングしないと、シューズとステージの間の摩擦が低いために滑ってしまうことになるかもしれません。 +最良の場合なら、ステージでぎこちないバレリーナになっています。最悪の場合は、怪我をします。 +既に私は、摩擦を最適化し、操っていたのです。 +おわかりでしょう、私はトライボロジストになるべくしてなったのです。 +けれど、皆さんも同様に若手トライボロジストだったのです。 +クレヨンや色鉛筆を使っていると、強い力で描くほど、色が濃くなったのをご存じだったしょう。 +また、そうやって使うと、クレヨンや色鉛筆をより頻繁に削らなくてはいけないこともご存じだったでしょう。摩耗が早くなっていたからです。 +ここで、どうしても滑りたくなる魅力的なピカピカにワックスがかけられた床についてお話ししましょう。 +靴下を履いていれば、フロアで非常にうまく滑ることがとわかっていました。 +是非、裸足でも滑ってみてください。 +摩擦を操る達人です。 +子どもは皆トライボロジストです。 +大人はどうでしょう? +今日のある時点で、皆さんは歯を磨きました。 +磨いているといいのですが。 +これには、トライボロジーが作用しています。 +歯磨き粉と歯ブラシを使って歯の歯垢を取り除くか摩耗させます。 +念のために言いますと、私の父は歯科医師です。 +自分のキャリアが家業に戻ることになるとは思いもしませんでした。 +しかし、ある日、歯垢除去を調査するテストを開発するという任務を任され、同じ言語を話していることがわかりました。 +単純に聞こえるかもしれませんが、それをトライボロジストとして見つめるようになって初めて、信じられないほど複雑になりました。 +硬い素材、歯と、歯茎、歯磨き粉、歯ブラシなどの柔らかい素材があります。 +潤滑剤は、唾液と水の形態で、人がブラッシングなどをするのが動力学です。 +歯磨き粉にダイヤモンドを入れると、確実に歯垢は取り除けるでしょう。 +おそらく、同時に歯も削れてしまうでしょう。 +ですから、歯垢を落とすことと、歯と歯茎を傷つけないことの間には絶妙なバランスがあります。 +歯を磨くのは、食事をしたからです。 +食べることは、誰もがするもう一つの日課です。 +単純なように思えるかもしれません。 +しかし、これは、トライボロジーの別の分野では、それほど単純ではありません。 +食事をします。食事中、食べものは砕け、摩耗し、歯、舌、唾液、喉と相互作��をします。 +こうした相互作用はすべて、食べるという経験に影響します。 +皆さん、なにか新しいものを試したとき、「そうだな、悪くない味かな。食感があまり好きじゃないかも」と言ったことがあると思います。 +トライボロジストは、潤滑性、摩擦係数、口当たりや食感を、経験することと結びつける方法を調べています。糖分の含有量や脂質の含有量が異なるように食べたり飲んだりしている物の配合を変えると、口当たりはどう変わるでしょうか? +定量化方法は? +これが、トライボロジストが解明しようと試みていることです。 +ラボの一角で、同僚がヨーグルトの脂質の含有量を調べていました。別の一角で、私はドッグフードを研究していました。 +ところで、そのラボはとてもよい匂いがしたことをお伝えしておきます。 +私たちは皆、定期的に歯磨きをします。 +ペットの歯磨きをしている人はどれぐらいいるでしょうか? +成体の動物は、歯周病になっていることが多いため、動物の歯磨きは本当に必要で、歯磨きを始めるペットオーナーさんが増えてきています。 +私の親友は、どういうわけか猫の歯磨きをとても得意にしています。 +機会があれば、私の猫にもしてみようと思います。 +そういうわけで、ペットフード業者は、おやつなどに歯垢除去効果を取り入れようとしています。 +犬を飼っている方なら、トリーツを与えると、たった一噛みで魔法のようにトリーツが消えてなくなる光景を目にしたことがあるかもしれません。 +そこで、別の課題が生まれます。「一度噛んだだけで歯垢除去できるようにするには?」 +私は、ベンチトップテストを開発しこの問題を研究しました。そのためには、犬の口腔内の系統、歯、歯垢、唾液を模倣しなければなりませんでした。 +それから、摩擦と摩耗の測定値を用いて、トリーツの歯垢除去効果を研究しました。 +愛犬の歯磨きをしなかった時のことを考えながらいまここに座っているのなら、歓迎しますよ。 +しかし、トライボロジーの重要性は何でしょうか? +もう一つの例をお話させてください。 +今どこにいようと、なんとかしてこの場所にたどり着きました。 +徒歩や自転車で来た人もいらっしゃるでしょうが、この部屋にいるほとんどの方は自動車でいらしたのだと思います。 +自動車のトライボロジーシステムをすべて考えてみてください。 +あなたは、自動車と個人的な相互作用をします。自動車は、道路や、ボンネットの下と駆動系内部にあるすべての部品と相互作用をします。 +いくつかの日常的なメインテナンスは、トライボロジーに直接結びついています。 +タイヤ交換までのタイヤの推奨使用マイルをご存じでしょう。 +タイヤの溝を定期的に点検します。 +積極的にタイヤの摩耗を監視しています。 +トライボロジーは、摩耗と摩擦の研究です。タイヤの場合、安全に到着するか自動車事故を引き起こすかは摩擦によって決まります。 +タイヤと道路の間の摩擦は、加速、減速、停止距離に影響するからです。 +ドライバーとして、皆さんは、摩擦の重要性を既に無意識のうちにわかっています。道路が濡れていると、滑りやすく危険が増えることを知っているからです。 +水は、タイヤと道路の間の摩擦を低下させるからです。 +摩擦は、運動に抵抗する力だということを思い出してください。ですから、水がその力を低下させるというのは、運動しやすくなるということです。したがって、道路が濡れていると滑りやすくなるのです。 +他に考慮すべきなのは、摩擦を克服するにはエネルギーが必要だということです。摩擦にエネルギーを取られます。 +これは、タイヤが燃費に影響を与える一つの理由です。 +実際、内燃機関の車両に入れた燃料の三分の一が摩擦克服のために使われていることをご存じでしたか? +三分の一です。 +トライボロジー研究は、摩擦を低下させ、したがって燃費を向上させ、排気量を削減させるのに役立ってきました。 +Holmberg(ホエンベルク)とErdemir(エルデミール)による実にすばらしい研究により、トライボロジー研究がエネルギー消費削減に影響を与えることが証明されています。 +彼らは、20年のスパンで見ると、乗用車のエネルギー消費を最大60パーセントまで削減できるチャンスがあるということを発見しました。 +世界中のすべての自動車について考えると、非常に大きなエネルギー節約になります。 +それも、著者らが特定したトライボロジーを節約に役立てられるエネルギー量、すなわち現在の世界のエネルギー消費の約9パーセントのうちの一部です。 +非常に大量のエネルギーになります。 +数字に目を向けると、トライボロジーはいくつかの目覚ましい業績があります。 +私の同僚は、アメリカ合衆国だけでも最大20クワッドのエネルギーを節約できることを明らかにしました。 +これを広い視野から見ると、1クワッドのエネルギーは約1億8千万バレルの石油に相当しますが、トライボロジーはその20倍のエネルギーの節約に貢献することができます。 +新たな材料、新たな潤滑剤、新規な部品設計を通じて、風力タービンをより効率的で信頼性の高いものにするようなものです。 +トライボロジーのレンズを通じて世界を見つめた31人を一つの部屋に入れただけで、これが生まれました。 +トライボロジーをいたるところで目にするようになる人が増えると、その機会はおのずと明らかになることを想像してみてください。 +今私が気に入っているプロジェクトは、航空宇宙分野での応用です。 +このようなやりがいのある環境下で摩耗と摩擦を減少させることが大好きです。 +動いている部品やエンジンの摩擦を減らし、運動に抵抗する力を小さくするような材料、部品を作ることができます。 +運動するための力が少ないということは、必要な電力を削減できるため、アクチュエータのサイズが小さくなり、重量軽減、燃料節約につながります。 +低い磨耗性の中で、長持ちする部品を作る手伝いもできる。 +資源の無駄を減らせる上に、製造の頻度も減るということだから、製造での消費エネルギーも削減できる。 +自分の周りの世界にあるトライボロジーを意識して、身の回りで起きている表面同士の相互作用をどう改善できるか考えると良い。 +どんなに小さな改善でも、続けていれば意味をなす。 +トライボロジーは、面白い響きをしているかもしれないが僕たちの世界に大きな影響をもたらしている。 +ありがとう。 + + +55061 +ポエト・アリ「こんにちは。」 観客「こんにちは。」 +ポエト•アリ「皆に質問がある。皆は何ヶ国語を話せる?」 +これは修辞的な質問ではない。 +皆に実際に数字を思い浮かべて欲しいんだ。 +君たちの中には、簡単な質問だと思っている人もいるだろう。 +頭の中で、「1つだ。君が今話しているだろう。以上。」と考えているだろう。 +その他には、元カレや元カノが罵り言葉を教えてくれた言語も数に入れても良いか悩んでいる人もいるかもしれない。いいよ、それも数に入れて。 +自分自身にこの質問をした時、僕の答えは4つだった。それか5つ。お酒を飲んでいたらね。 +でももっと厳密に考えてみたら、83あった。83ヶ国語だ。そこで疲れて数えるのをやめた。 +これが僕に、僕たちが持つ言語に対する定義というものを再考させた。 +最���の定義は、こうだった。「音声、または筆記を含む、特定の構造や慣例に従った言葉の使用から成る、人間のコミュニケーション手段」 +一番下の定義は、医学、科学、技術などの専門分野に関して。 +彼らが自分のヴァナキュラー語を持っていることはわかっている。自分たちの専門用語をね。 +でも一番僕の興味をそそったのは、真ん中に書かれている定義:「特定のコミュニティや国で使われるコミュニケーション体系」だ。 +この定義に変更を加えるつもりはない。 +それより、僕たちの日常の全ての物事にこの定義を当てはめることの方に興味がある。なぜなら、僕たちは自身が気付いている以上に多くの言語をはなしているから。 +これからの残りの時間、僕はこの部屋の全ての人間にとって母語である言語だけで話すことを試みる。 +でもそうしたら少し話が違ってきてしまう。プレゼンではなくなってしまうから。 +会話になるんだ。そしてどんな会話にも必ず何かしらのやり取りが発生する。 +更にどんな会話にも、両者の幾分かの意欲が必要になる。 +そして僕らが意欲的であれば、その少しの意欲だけで魔法のようなことが起きるのを見れると思うんだ。 +そこで僕は、皆が意欲的かどうかを測れそうな、比較的リスクの低い共通基準を選んだ。 +幸せなら手をたたこう。 +そうこなくっちゃ! +ありがとう。どうぞ席に座って。 +もし今ので少し居心地の悪い気分にさせたなら、あなた達のことを馬鹿にしていた訳じゃないってことは約束するよ。 +僕はただスペイン語話者の観客に、立ち上がって彼らのそばに座っている人達を見て笑うように言っただけ。 +少しいじわるだったのは分かっている、ごめん。でもその瞬間、僕たちの中の何人かは何かを感じたんだ。 +ほら、僕たちが誰かの言語を話す時、言語にどういう働きがあるのか大体わかっている。どうやって繋げて、どうやって結びつけるのか。 +でもほとんどの場合、その言語を話せない時にどういう働きをしているのかは忘れてしまう。どうやって孤立させ、どうやって排除しているのか。 +ここで僕たちが様々な言語の中を旅する間、皆には辛抱していて欲しい。 +僕はペルシャ語で「ペルシャ文化にあるtaarofという概念を訳したい」と言った。だが、実際は英語の語彙目録には、それと同等の言葉は無いのだ。 +一番近い定義だと、究極の礼儀正しさや究極の謙遜のようなものになる。 +でもこれではあまりちゃんと焼くせていない。 +だから例を挙げよう。 +二人の男性がすれ違う時に、大抵片方の人が(ペルシャ語で:「私はあなたに恩がある」)訳すと「私はあなたに恩がある」と言う。 +もう片方の男性はこう返すだろう。(ペルシャ語で:「私のシャツを開いてあげよう」)訳すと「私のシャツを開いてあげよう」。 +最初の男性はこう返すだろう。(ペルシャ語で:「私はあなたの召使いだ」)訳すと「私はあなたの召使いだ」。 +そして二人目の男性はこう返す。(ペルシャ語で:「私はあなたが踏みつけている土だ」)直訳すると、「私はあなたが踏みつけている土だ」だ。 +想像できなかった人のために、これがその具体例だ。 +これを皆と共有したのは、新しい言語と共に今まで存在しなかった新しい概念も得られるから。 +もう一つは、僕たちはたまに言語とはある言葉の意味を理解することだと考えてしまうが、僕は言語は言葉を自分にとって意味のあるものにすることだと信じている。 +この一連の言葉を画面に次々と表示させたら、皆のうち何人かはそれが何なのかがすぐにわかるだろう。 +それ以外の人たちは、少し苦労するかもしれない。 +そして僕35歳以上と35歳以下の間で、結構はっきりとした線をひけるだろう。 +意味がわかる人たちの間では、それがメール言語、もしくはSMS言語であることがわかる。 +これらは、最大量の意味を最小限の文字数で伝えるための一連の文字で、「特定のコミュニティや国で使われるコミュニケーション体系」と言う僕たちの持つ言語の定義に結構似ている。 +さて、メッセージで喧嘩になった経験がある人は、これが良いコミュニケーション方法ではないと主張するかもしれないが、もし僕が、さっき見たものが現代のラブレターだと言ったらどうする? +こう言うことだ。「現時点では、とても愛している。何故なら君は私の良いところを全て引き出してくれて、私を笑わせてくれるから。言い換えると、何が起きてるのか教えて欲しい。私にとっては君は可愛い人だから、そして私の知る限り、君に会うことは、君が他の人と付き合っていないなら、私を幸せにしてくれる。参考までに、私はいつまでもここにいる。どちらにしろ、連絡を取り合おう。返信はいらない。幸運を祈るよ。わからない、誰かがこれを見たとしても気にしない。そこには行かないで、また会おう、じゃあひとまずさようなら。ハグとキスを送るよ。一度きりの人生だ。」 +現代のロメオとジュリエットみたいな感じだ。 +この瞬間笑ったなら、君はもう一つ説明が不必要な言語を話したことになる。笑い、だ。 +世界中で一番使われている言語のうちの一つだ。 +互いに説明しなくてよくて、ただ皆が感じるもの。だから笑いや音楽のような物はこんなにも普遍的なんだ。どう言うわけか、説明の域を超えて凄まじい量の意味を伝えるからだ。 +私たちが学ぶ全ての言語は、他の言語にアクセスできる入り口なのだ。 +もっと知れば、もっと話せる。 +そしてそれは私たち皆がしている、とても普通のこと。 +新しい概念をとって、私たちの中にある既存の現実でフィルターをかける。 +言語は私たちに、新しい人だけでなく新しい世界へのアクセスをくれる。だからこんなにも重要なんだ。 +見たり聞いたりすると言うことだけじゃない。感じて、経験して、共有するんだ。 +そしてこれらの言語について話したが、まだ一番深い言語のうちの一つについて話していないと思う。それは経験という言語だ。 +だから誰かと話している時、相手があなたが共有したことのある内容を共有した場合、そこまで説明は必要じゃない。 +もしくは、あなたがある話をし終えた時に、話している相手があまり内容を理解していなかったら、一番最初に「その場にいなかったからね」と言う。 +今週ここの場にいないと、今何の話をしているかもわからないだろうね。 +説明がなかなか難しいでしょ? +この研究のために、皆さんにもう一度経験の言語に参加してもらうことでこの場を締めたいと思う。 +これからいくつかの言語をフィルターにかけていく。もし自分の言語を話していたら、立ち上がってそのまま立っていて欲しい。 +何も聞かなくて良い。君たちがわかるということを伝えたら、僕にも、君たちがこの経験の言語を話していると言うことがわかるから。 +この言語は話せる? +僕が小学生の時、年末にはパーティーをしてたんだけど、遊園地かウォーターパークのどちらが良いかを投票するんだ。 +それで僕はパーティーがウォーターパークじゃないことを願うんだ。そうしないと水着を着なきゃいけないから。 +君たちがどうかは知らないけど、更衣室に近づくと僕の汗腺が勝手に働き出すんだ。その衣服を僕が身に付けても、マネキンが着てた時と同じようには見えないことを知っているから。 +それか、これはどうだ? +親戚の行事や集いに行って、おかわりが欲しい時ーほぼ毎回だったけどー +一連の費用便益分析が始まるんだ。親戚たちは僕を見て、「どうだろ��、本当に必要なの?あなた、見た感じはもう十分そうだけど。」とでも言いたそうに。 +僕のほっぺたに、僕の知らない「つまんでくれ」って言うサインでもあったのか? +そしてもし君たちがもぞもぞしていたり、笑ったり、立ち上がったり、もしくは立ち上がろうとしているなら、君たちは僕が愛を込めて「太った子供として育ってきたと言う言語」と呼ぶ言語を話すと言うことだ。 +全ての身体イメージに関する問題は、その方言と言える。 +皆さんにそのまま立っていて欲しい。 +もう一度言うけど、僕が君たちの言語を話しているなら、どうぞ立ち上がって。 +僕の手の中に二枚の請求書があることを想像して。 +一枚は電話料金、もう一枚は電気料金。 +どちらにしようかな、片方を払ってもう片方は放っておく。つまり、「今は、両方とも払うのにはお金が足りないかも知れない。」と言うことだ。 +君は機略に優れていなければいけない。どうにかしないといけない。 +そしてもし君が立っているのなら、収支のやりくりが出来ていないと言う言語、経済的困難という言語を知っているということだ。 +更に、もし君が幸運なことにその言語を話すのなら、不足ほど素晴らしいきっかけはないということがわかるだろう。 +資源がなければ、見てくれもない、財源もないというその状況は、しばしば最も生産性の高い種が苦労して植えられ、収穫される痩せ地となる。 +僕は今から皆さんに、この言語を話すか聞く。 +分かった瞬間に、立ち上がっていいよ。 +診断結果を聞く時、僕はこう考える「あの言葉はダメだ。あの言葉だけは。あの言葉は嫌いだ。」、と。 +それから沢山の質問をするんだ。「確かですか?」と。 +転移している? +あとどれくらい? +そして一連の回答がその人の人生を決める。 +僕のお父さんのお腹が空いた時、僕たちは皆急いで夕飯の席に向かって、食べるんだ。それが僕たちが昔していたことだから。 +皆で食べていたから、これからもそれを続けていく。 +何故僕たちがこの戦いに負けていたのか、僕には理解できなかった。僕は、戦って、正しい闘志さえあれば、勝てると教わったから。 +僕たちは勝ってはいなかった。 +立ち上がった人たちは、僕が愛する人が癌と闘うという言語を話していることがよくわかるだろう。 +全ての末期疾患は、その言語の派生言語となる。 +今から、最後の言語を話すよ。 +あぁ、いやいや、聞いているよ。 +うんうんうん、いやいやいやいや、僕と君、ここでね。うん。 +いや、聞いてるよ。聞いてるよ! +もしくは、電気が全部消えていて、ベッドに横たわる中青い光だけが君の顔を照らしていると想像してみて。 +君たちの中の何人かは、僕みたいにその携帯を顔面に落としたことがあることを僕は知っている。 +それか、これだよね? +助手席の人がパニックになりながら、「ちゃんと道路を見て?」という。 +立ち上がった人たち、君たちは僕が「断絶の言語」と呼ぶ言語を話す。 +接続の言語と呼ばれてきたが、僕は断絶の言語と呼ぶのが好きだ。 +断絶という意味ではなく、断続という意味だ。人間の断絶、お互いから断絶されている。僕たちがいる場所から、僕たちの思考から、他の空間を占領するために。 +もし立っていないのなら、仲間外れにされる気分がきっとわかるだろう。 +君はきっと、君は、他の皆が何かの一部なのに自分は違うという時の気持ちがわかるだろう。 +少数派であることがどういうことなのかわかるだろう。 +僕が今君の言語を話しているから、立ってもらいたい。僕たちは同じ言語を話すのだから。 +少数派であるという言語は、一生の中で話す最も重要な言語だと僕は信じている。弱い立場で感じたものは、自分が強い立場に置かれたときにとる行動を直接的に左右するから。 +参加してくれてありがとう。 +よかったら席を座ってもらって、最後の言語を話すよ。 +これは、立たなくてもいい。 +わかるかどうかだけ見たいんだ。 +世界中の女の子のほとんどが愚痴ってる「アレ」 +世界中の詩のほとんどが題材にしてきた「アレ」 +ラジオから流れる音楽のほとんどが嘆く、わめく、毒づく「アレ」 +歌謡業界じゃ歌詞として吐き出される「アレ」世界中の歌のほとんどで語られてる「アレ」 +失恋した知り合いのほとんどが失ったまま歩き回るか、存在を疑い始めるか、失って途方に暮れる「アレ」 +暗闇に潜む影のほとんどが忘れ去ってしまった「アレ」 +世界中誰もがそれなしでは正気を失う「アレ」 +男の子も女の子も皆それなしでは生きていけず、苦しみ、空っぽになる「アレ」 +埋まったページのほとんどがその話で埋まる「アレ」 +流される涙は、そのために流される「アレ」 +感じたことのある人は 本気になる「アレ」 +それなしの人生では、先を見失ってしまう「アレ」 +その中にいれば、大声で語りたくなる「アレ」 +全世界誰もが知ってる「アレ」 +それを拒絶した僕は、間違ってたと傷心、絶望、慟哭する。 +それなしで、傷や痛みは癒えるのか? +それについて感じていることは隠せないのか? +皆それに関する理想、夢、主張を持っている。 +それの何がそんなに凄いのだろう。 +人生は、それ無しじゃ夢に過ぎず本物じゃないとわかろうとしているのか? +でも僕はただの物書きだ。 +何故世界中で最も話されている言語が、話したり表現したりするとなると最も苦労する言語なのだろうか。 +何冊もの本を読んで、いくつものセミナーに行って、いくつものライフ・コーチングのセッションを受けても、飽き足りることはない。 +ここで聞くけど、最初に思い浮かべた言語は変わったかな? +皆挑戦してみて。誰かに会った時、自分の問いかけてみて、「この人との共通言語は何だろう?」と。 +そして何も思いつかなかったら、自分に問いかけてみて、「何の言語を共有できるだろう?」と。 +それでも何も思いつかなかったら、自分に問いかけてみて、「自分は何の言語を学べるだろう?」と。 +その会話が、その瞬間はどんなに無価値で重要性のないもののように見えても、将来役に立つと約束する。 +僕の名前はポエト・アリ。ありがとう。 + + +57418 +毛髪の太さくらいのサイズの微生物についてだ。 +地球上の至る所に生息しているーー塩水、淡水、どこでもーーそしてこいつは食料を探しに出ている、 +僕が初めてこいつを見た時のことを覚えている。8歳くらいで、ひどく圧倒された。 +だって、そこにはこの素晴らしい小さな生物がいて、それは狩りをして、泳いで、人生を過ごしているのに、その世界全てが一滴の井戸水の中に納まってしまうんだ。 +ポール・マッキューアン:この小さな輪形動物が素晴らしいものを見せてくれるんだ。 +機能的で、複雑で賢いけど、その全てが小さなパッケージに納まる機械が作れると言う。小さ過ぎて見えないくらいの。 +僕の中のエンジニア魂がこれに圧巻されている。誰でもこんな生物が作れるんだってことに。 +でもその感嘆のすぐ裏側には、少しの羨望もあることを認めなければいけない。 +だって、自然にできるのだから、何故僕たちにできない? +何故僕たちは小さなロボットを作れない? +まぁ、このアイディアを思いついたのは僕一人だけではないが。 +実際に、過去の、ああ、何年かに渡って、世界中の研究者が小さすぎて見えないほどのロボットを作るという課題に挑戦してきた。 +今日お話しするのは、コーネル大学、そして現在ではペンシルバニア大学での小型ロボットを作る奮闘についてた。 +オーケー、それじゃあそれがゴールだ。 +でもどうやってやる? +小さなロボットを作るにはどうすれば良い? +まぁ、こともあろうにパブロ・ピカソが一番最初のヒントをくれるんだ。 +ピカソはこう言った。「良い芸術家は真似をし、素晴らしい芸術家は盗む。」 +良い芸術家は真似をする。素晴らしい芸術家は盗む。 +オーケー、でも何から盗む? +まぁ、信じがたいかもしれないけど、小さなロボットを作るのに必要な技術のほとんどは既に存在している。 +半導体業界は、機器を小さくするのにどんどんどんどん長けてきているから、現時点で100万程のトランジスタなんかを、例えば単細胞のゾウリムシが入るくらいのパッケージに搭載できる。 +それに電子機器だけじゃない。 +小さなセンサー、LED、完全なコミュニケーションパッケージも目に見えないくらい小さく作れるんだ。 +それが僕らが今からすることだ。 +その技術を盗む。 +これはロボットだ。 +なんと、ロボットには二つの部位がある。 +頭があって、足がある。 +[これを盗んで:脳] +僕たちはこれを足なしロボットと呼ぶ。風変わりに聞こえるかもしれないが、彼らは結構かっこいいんだ。 +実際に、今皆さんのほとんどは足なしロボットを持っている。 +皆さんのスマホは、世界で一番成功している足なしロボットだ。 +たったの15年間で、全世界を乗っ取ってしまった。 +それの何が悪い? +素晴らしい小さな機械じゃないか。 +ずば抜けて智能があり、素晴らしいコミュニケーションスキルもあって、それが全て手で握れるパッケージの中に入っている。 +このようなものを作れるようになりたいんだ。ただ細胞のスケールの、ゾウリムシのサイズのを。 +それがこれだ。 +これが僕たちの細胞サイズのスマホだ。 +見た目もスマホみたいで、ただ10,000倍くらい小さいだけ。 +OWICというんだ。 +[Optical Wireless Integrated Circuits] よし。僕たちは宣伝員じゃない、いいね? +でもこれ結構クールなんだ。 +実際に、このOWICはいくつかの部位がある。 +上の方には、クールな小さい太陽電池があって、この機器に光を照らすと真ん中にある小さな回路を呼び起こすんだ。 +そしてその回路は小さな小さなLEDを動かして点滅させ、あなたとOWICのコミュニケーションを可能にする。 +なので皆さんの携帯電話とは違い、OWICは光でコミュニケーションをとる。小さな蛍みたいな感じだ。 +このOWICに関して結構クールなのは、一つずつ作るんじゃないんだ。はんだ付けをして全ての部品をくっつけてってね。 +大量に平行で作る。 +例えば、このOWIC約100万台くらいが、4インチ大のウェハ1つに納まる。 +君たちの電話に様々なアプリがあるのと同様に、OWICもいろんな種類がある。 +例えば電圧を測れるものがあったり、温度を測れるもの、それからただ小さな光を点滅させてそこにいることを知らせるだけのもある。 +結構クールでしょ、この小さい機械たち。 +これらに関して、もう少し詳細にお話ししたい。 +でもまずは、別の話をしなければならない。 +ペニー貨について君たちが知らないであろうことをいくつか話そう。 +これは、少し古いペニー貨。 +裏にリンカーン記念堂の絵がある。 +君たちが知らないであろう一つ目のことだ。拡大すると、この真ん中には実際はエイブラハム・リンカーンが見えるんだ。ここからそう遠くないリンカーン記念堂のようにね。 +絶対皆さんが知らないだろうと確信しているのは、さらに拡大すると、 +エイブ・リンカーンの胸に実はOWICがあるというのが見える。 +だがクールなのは、これを一日中眺めていても、絶対に見えないということだ。 +裸眼には見えない。 +これらのOWICはとても小さくて、並行工法で作るから、一つあたりのコストは1ペニー以下だ。 +実際に、このデモ版で一番高価なのは「OWIC」と書いてあるその小さなシールだ。 +かかる費用は、約8セントくらい。 +さて、僕たちがこれらに対してとてもワクワクしてるのには様々な理由がある。 +例えば、小さい安全なスマートタグとして使う。指紋よりも特定しやすい。 +実は、他の医療機器の中に入れて、その他の情報を与えるというのと、更には脳内に入れて、ニューロン一つ一つを読み取ることまで考え始めている。 +実際に、これらのOWICにおける唯一の問題は;それはロボットではないということ。 +ただの頭なんだ。 +皆さん、半分のロボットは、全くロボットではないと同意すると思う。 +足がなければ、基本的に何もないということだ。 +MM:分かった、それじゃあ足も必要なんだね。ロボットを作るには。 +さて、どうやら既存の技術を盗むだけではダメなようだ。 +小さなロボットに足をつけたいなら、アクチュエータが必要だ。動く部品が。 +それらは様々な条件を満たさなければいけない。 +低電圧で、 +低電力でもないと。 +でも一番重要なのは、小さくなければいけない。 +細胞サイズのロボットを作りたいなら、細胞サイズの足が必要だ。 +さて、誰もそれをどう作るのかは知らない。 +それら全ての要求を満たす既存記述はなかった。 +私たちの小さなロボットに足を作るために、新しいものを作らなければいけない。 +そこで僕たちが作ったのがこれだ。 +これがアクチュエーターの一つで、今電圧を与えている。 +そうすると、アクチュエーターが丸まって反応するのが見える。 +大したことないように見えるかもしれないが、画面に赤血球を乗せるとすると、これくらいの大きさになる。だからこれは信じられないほど小さな丸みになるんだ。 +信じられないほど小さいのに、曲がったり元に戻ったりできるんだ。問題ない。何も壊れない。 +さて、どうやっているんだろう? +このアクチュエーターはたった12個ほどの原子の厚みの白金の層から成っている。 +なんと、白金を取って水中に入れ電圧をかけると、流す電圧の量次第で、水中の原子が白金の表面にくっ付いたり離れたりするのだ。 +これが力を作り出し、その力を電圧制御型作動に使える。 +全てを極薄にすることがカギなんだ。 +そうすることでアクチュエーターは、壊れずにこんな小さく折りたためるくらい柔軟性を持ち、一層の原子がくっ付いたり離れたりすることによる力を利用できる。 +そして、これらを一つずつ作る必要もない。 +実際に、OWICと同様に、大量の平行製造が出来る。 +ここには何千かのアクチュエーターがある。僕はただ電圧を与えるだけで、みんな波を打つ。未来型ロボット軍隊の足のように。 +さて、これで知力と腕力が手に入った。 +智能とアクチュエーターが揃った。 +OWICが脳。 +センサー、電力源、そして光を通して二方向のコミュニケーションを与えてくれる。 +白金原子層が筋肉。 +これでロボットを動かす。 +この二つをくっつけて、僕たちの小さな小さなロボットを作れる。 +一番最初に作りたかったのは、とても簡単なもの。 +ユーザーコントロールで歩き回るロボット。 +真ん中には、太陽電池と配線が取り付けられている。 +それがOWIC。 +白金原子層のある一組の足に繋がっていて、上に置いているこれらのリジッドパネルが足にどうやって折りたたんで、どういう形状を取るかの指示を出す。 +考え方としては、異なる太陽電池にレーザーを照射することによって、どの足を動かしたいかを選んでロボットを歩き回らせる。 +そこで、もちろん、それらを一つずつ作るわけでもない。 +これらも大量に平行して作る。 +僕たちは、約100万台のロボットを、4インチ大のウェハ1つの上で作れる。 +だから、例えば、この左側の図はチップで、このチップには大体10,000台のロボットが乗っている。 +さて、僕たちの世界、マクロ世界では、これは新しいマイクロプロセッサか何かに見える。 +でもそのチップを取って、顕微鏡の下に置いたら、見えるものは何千もの小さなロボットなんだ。 +さて、これらのロボットはまだくっつけられている。 +まだ作られた表面上にくっ付いている。 +歩き回らせるためには、解放しなければならない。 +それをどうやるか、どうやってロボット軍隊を解放するのか生で見せたかったけど、この工程はとても危険な化学薬品を使うんだ。とても厄介なやつ。それに僕たちは今ホワイトハウスから数マイルのところにいるだろう? +うん、やらせてくれないよ。 +だから +だから代わりに映像を見せるよ。今見ているのは、ロボットを実環境に展開する最終段階だ。 +化学薬品を使ってロボットの下から基材をエッチングする。 +それが溶けると、ロボットは自由に最終形態に折りたたむことが出来る。 +さて、ここでも見てわかるが、歩留まりは約90%ほどだから、10,000台作られるロボットのうちほぼ全てが、後に僕たちに実環境に展開され、コントロールされるロボットとなる。 +更に、それらのロボットをとり、様々な場所に置くことも出来る。 +左側の映像を見てもらうと、何体かのロボットが水中にいる。 +僕はピペットを持ってやってきて、それらを全部吸い上げることが出来る。 +そしてピペットからロボットを再び射出しても、どうともない。 +実際に、これらのロボットたちはとても小さくて、購入可能な一番細い皮下注射器でも通り抜けられるくらいに小さい。 +そう、だからもしそうしたいなら、大量のロボットを体内に注入することもできる。 +満更でもないようだ。 +右側は、井戸水に入れたロボットだ。 +1秒だけ待ってほしい。 +見たかい?あれは鮫なんかじゃない。ゾウリムシだ。 +これが、この物たちが生きる世界なんだ。 +オーケー、これは全部素晴らしいけど、この時点で疑問に思っているかもしれない。「これらは歩くのか?」と。 +でしょ?それが彼らがすべきことだから。してくれないと。だから見てみよう。 +ここにロボットがあって、真ん中に太陽電池がある。 +それらは、よく見る小さな長方形だ。 +スライドの上に一番近い太陽電池を見てほしい。 +あの小さな白い点々が見える?あれがレーザー照射点だ。 +ロボットの様々な太陽電池の間でレーザーを切り替えるとどうなるか見てみよう。 +ほら! +ロボットがマイクロの世界を行進しに繰り出すよ。 +このムービーに関してクールなことの一つは、このムービーでは僕がロボットを操縦しているんだ。 +実際に、6ヶ月間に渡って僕の仕事は小さな細胞サイズのロボットにレーザーを撃ってマイクロ世界の中を操縦することだった。 +それが実際に僕の仕事だったんだ。 +僕から見たら、それは世界で一番クールな仕事だったね。 +完全に興奮しているその気持ちがたまらない。不可能をこなしているようなね。 +子供の時、初めて顕微鏡を覗き込んで輪形動物を凝視したあの時のような驚嘆の気持ち。 +今、僕は父親だ。自分の息子がいて、3歳くらいだ。 +ある日、彼もあれみたいな顕微鏡を覗き込むだろう。 +そして僕はしばしば考える。彼は何を見るんだろう? +ただマイクロ世界を見るだけではなく、僕たちは今人間としてそれを形成し、相互作用し、設計する技術を作ることが出来る。 +30年後、息子が僕と同い年の時、その能力を使って何をするだろう? +マイクロロボットが僕たちの血管の中に生息しているだろうか、バクテリアと同じくらい普遍的に。 +作物に棲みついて、害虫を駆除してくれるだろうか? +感染症にかかっていたら教えてくれて、癌と細胞単位で闘ってくれるだろうか? +PM:クールなのは、この革命に皆さんも参加できるということだ。 +今から10年ほど経って、新しいiPhone 15x Motoか何かを買う時、 +携帯電話のアプリでコントロールできる、数千体の小さなロボットが入った小さい瓶が同梱されているかもしれない。 +だから、もしゾウリムシに乗りたいなら、どうぞ。 +もし君たちが、わからないけど、世界一小さなロボットのダンスパーティーのDJになりたいなら、それを実現させて。 +僕個人としては、その日の到来がとても楽しみだ。 +MM:ありがとう。 + + +60872 +まずこのプレゼンを始めるのに、少し自分の経歴の話をしてからこの話題を切り出そうと思う。なぜなら、正直にいうと、コービット・ナインティーンに関して意見を持っている老人の話を本当に、本当に聞くべきじゃないから。 +私は約20年くらい、国際保健で働いてきた。私の特定の技術専門分野は、医療制度と、その医療制度が極度の衝撃を受けた時に何が起きるのかについてだ。 +国際保健ジャーナリズムでも働いたことがある。新聞やウェブ機関で、国際保健とバイオセキュリティーについて書いたこともあって、数年前には私たちが地球として直面する大きな国際的な健康への脅威についての本も出版した。 +エボラ治療センターの評価から、保健施設での結核の伝染、そして鳥インフルエンザに対する準備など、多岐に渡る疫学の取り組みを支援、指揮してきた。 +国際保健の修士号も取得している。 +私は医師でなければ、看護師でもない。 +私の専門は、患者看護でなければ、個人の人々の面倒を見ることでもない。 +私の専門は、住民と医療制度を見ること、大規模なレベルで病気が移動したら何が起こるかを見ること。 +国際保健の専門的知識を1から10の間で格付けするなら、1はFacebookで不平を並べている人で、10が世界保健機関。私のことは、大体7か8くらいに置いておけると思う。 +私が話している間、それを覚えておいて。 +まずは基本から始めよう。何故なら、それはコービット・ナインティーンに関するメディアの騒音の中で失われていると思うから。 +さて、コービット・ナインティーンはコロナウイルスだ。 +コロナウイルスは、ウイルスの特定のサブセットで、ウイルスとして独特の特徴を持っている。 +それは、遺伝物質としてDNAの代わりにRN Aを使用していて、ウイルスの表面はトゲで覆われている。 +そのトゲを使って、細胞に侵入していく。 +そのトゲが、コロナウイルスのコロナだ。 +コービット・ナインティーンが新型コロナウイルスとして知られているのは、12月までの間でコロナウイルスは、6つしか聞いたことがなかったから。 +コービット・ナインティーンは、7つ目になる。 +私たちにとって新しい。 +遺伝子配列をしたばかりで、名前を得たばかりだ。 +だから新型なんだ。 +SARS、重症急性呼吸器症候群、もしくはMERS、中東呼吸器症候群を覚えているかな。それらもコロナウイルスだった。 +そしてどちらも呼吸器症候群と呼ばれた。それがコロナウイルスのすることだからーー肺に行くんだ。 +吐かせないし、目から血を流させも、出血もさせない。 +肺へ直行する。 +コービット・ナインティーンも、全く同じ。 +乾いた咳のようなものや熱から、致命的なウイルス性肺炎まで、幅広い呼吸器症候群の症状を引き起こす。 +そしてその症状の幅広さこそが、この集団発生を追跡困難にしている理由のうちの一つなんだ。 +多くの人がコービット・ナインティーンに感染しているが、程度がとても軽い。症状がとても穏やかなため、医療提供者の元にも行かない。 +システムに登録されないんだ。 +子供たちにとっては、特にコービット・ナインティーンの影響はとても軽いものとなっている。これに関しては、私たちは皆感謝すべきだ。 +コロナウイルスは、人獣共通感染症である。動物から人間に伝染するということだ。 +コービット・ナインティーンのような、いくつかのコロナウイルスは、人間と人間の間でも伝染する。 +人間同士のものは、移動が速い上に遠くまで行く。コービット・ナインティーンのように。 +人獣共通感染症は、駆除するのが非常に困難だ。何故なら、病原体を保有する動物がいるから。 +その一例は、鳥インフルエンザ。家畜、ターキー、アヒルなどから駆除できても、野生の鳥によって持ち込まれるため、毎年戻ってくる。 +鳥インフルエンザは、人間同士の伝染はないためあまり聞かないかもしれないが、毎年世界中の養鶏場で集団発生している。 +コービット・ナインティーンは、大方、中国武漢の野生動物市場で動物から人間へ飛び移ったんだろう。 +ここからが基礎以外の部分。 +これは、私たちが目撃する最後の大規模集団感染ではない。 +これからも更なる集団感染が発生し、更なる流行病が発生する。 +多分じゃない、必然なんだ。 +そしてそれは、私たちの、人間としての地球との接し方が原因なんだ。 +人間の選択が、私たちがより多くの集団発生を経験しなければいけない状況に追い込んでいるんだ。 +その一つが気候変動で、暖かくなる気候がこの世界をウイルスや細菌の棲みやすい環境にしているという点。 +だが、それ以外にも私たちがこの地球上に残された最後の野生の地に押し迫っているという点も一つなんだ。 +遊牧のための安価な土地のためにアマゾンの熱帯雨林を燃やし、耕す時、アフリカの最後の茂みが農場に変身させられた時、中国の野生動物が絶滅するまで狩られた時、人間はそれまで接触したことのなかった野生の住民と接触することになり、その住民たちは新種の病気を持っている。:細菌やウイルスなど、私たちの準備がまだ出来ていないもの。 +蝙蝠は特に人に感染する病気を宿すのが得意だが、彼らはそれをする唯一の動物ではない。 +だから、人里離れた土地の距離を縮め続けている間は、集団感染は絶えることはない。 +集団感染は、隔離や渡航制限では止められない。 +それが皆の第一反応なんだ:「人々の動きを止めよう。集団感染が起こるのを食い止めよう。」 +でも実際は、優れた隔離を実施するのはとても難しいこと。 +渡航制限を設けるのはとても難しいこと。 +アメリカや大韓民国のように公衆衛生に多額の投資をしている国々でさえも、このような制限を迅速に設けて、即刻集団感染を抑えることは出来なかったんだ。 +そこには物流に関する原因と、医療に関する原因がある。 +現在のコービット・ナインティーンを見ると、感染していても症状が現れない期間が24日間もあるようだ。 +だから人々は、このウイルスを持ちながら、何の症状もなく歩き回っている。 +この人たちは隔離を受けない。誰も彼らが隔離が必要だということは知らない。 +更に、隔離と渡航制限にはかなりの費用がかかる。 +人間は社交的な動物であるため、ある場所に留めたり、引き離そうとすると抵抗する。 +エボラの集団感染の時、隔離を実施した瞬間に、人々はそれを回避しようとし始めた。 +個人の患者たちは、厳格な隔離制度があると知ったら医療施設には行かないかもしれない。医療制度に恐怖心を抱いていたり、もしくは治療費が払えなかったり、家族や友達と離れたくないからだ。 +政治家や政府官僚は、集団感染や感染数について話すと隔離されるかもしれないとわかると、隔離制度の発令を引き起こしてしまうことを恐れて本当の情報を隠してしまうかもしれない。 +そしてもちろんこのような回避や不誠実さこそが、病気の集団感染を追跡困難にしている。 +隔離や渡航制限に慣れることは出来るし、慣れるべきだけど、これらは私たちの唯一の選択肢ではないし、このような状況下では最善の選択肢とは言えない。 +長い目で現実的に集団感染の脅威を減らす方法としては、国際保健システムを作り、世界各国の核心的な医療機能を支援することで、貧しい国を含んだ全ての国々が、新しい伝染病が現れた時に迅速に認識して治療することが出来るようにすること。 +中国は、コービット・ナインティーンへの対応に関して多くの批判を受けている。 +でも現実問題、もしコービット・ナインティーンが、10万人に3.5人の医者しか居ないチャドで現れていたらどうなっただろう? +もし、つい最近最後のエボラ患者が治療から解放されたコンゴ共和国で現れていたら? +実際は、このような国々は伝染病に対処する資源がない。ーー人々を治療して、迅速に報告をすることで世界中の人々を救うための資源が。 +私はシエラレオネのエボラ治療センターの評価を指揮したことがあるが、本当はシエラレオネ現地の医者たちはエボラ危機をすぐに認識していた。最初は危険な感染力のある出血性ウイルスとして、そしてその後エボラとして。 +でも、認識していてもそれに対処する資源がなかった。 +充分な医者、充分な病床がなく、そしてどうエボラを治療するのか、どう感染対策をするのかに関する充分な情報もなかった。 +シエラレオネでは、医者もエボラで亡くなっている。 +この危機が始まった時、国には120人しかいなかったのに。 +それと比べて、ダラス・ベイラー・メディカル・センターでは1,000以上の医者が従事している。 +このような不平等が人を殺す。 +まず、集団感染が始まった時に貧しい人を殺し、感染が広がると世界中の人を殺す。 +もし本当にこのような集団感染を遅らせ、影響を最小限に抑えたいのなら、世界中の国々が新しい病気を認識、治療、報告して情報を共有できる能力があることを確実にする必要がある。 +コービット・ナインティーンは医療機関にとって大きな負担となる。 +コービット・ナインティーンは、我々の国際保健の供給網にある弱点も露わにした。 +JIT発注や、リーン生産方式は通常の状況下ではとても良いが、危機下では、備蓄がないということを意味する。 +もし病院ーーもしくは国ーーで、マスクや個人用防護具の不足があった場合、箱がたくさん並んだ大きな倉庫に行ってもっと入手することはできない。 +供給元にもっと発注して、生産を待ち、輸送を待つ必要がある。一般的に中国から。 +迅速な行動が一番大事になる時に、タイムラグが発生する。 +もし私たちがコービット・ナインティーンに対して完全に準備が出来ていたなら、中国は集団感染をもっと早く認識できただろう。 +新しい建物を建てることなく、感染者を手当てできただろう。 +国民と正直な情報を共有し、中国のソーシャルメディアでとんでもない噂が広まることもなかっただろう。 +そして国際保健機関と情報共有をすることで、自国の医療機関に報告をしてウイルスが拡散した時のための準備が出来ただろう。 +それで国の医療機関は必要となる防護用具を貯蔵して、医療提供者に治療と感染対策に関する教育もできただろう。 +何かが起きた時にどうするか、科学に基づいた手順もあっただろう。例えばクルーズ船で感染者が発見された時とか。 +そして全ての人々に本物の情報が届けられて、フィラデルフィアの道端でアジア系の外見の人が攻撃されるといったような、恥ずかしい外国人嫌悪事件なども起きなかっただろう。 +でもこれら全てが揃っていたとしても、集団感染は起こる。 +どうこの惑星で居住するかに関する私たちの選択が、それを不可避にしている。 +もし専門家の間で、コービッド・ナインティーンに関する意見の一致があるとしたら、これだ:ここアメリカで、そして世界中で、改善する前にまず悪化するだろう。 +帰国者からでなく、ただ域内で発生している人間同士の伝染のケースが見られており、コービッド・ナインティーンに感染しているが、どこで感染したのかもわからないという人もいる。 +これらは、集団感染が悪化している兆しであり、集団感染がコントロールされているのではない。 +落胆はするが、驚きはしない。 +国際的な医療の専門家が新しいウイルスで起こりうるシナリオについて話す時、これがそのうちの一つのシナリオである。 +誰もが、大事にならないで済むことを願っていたが、専門家がウイルス対策の計画を話し合う時、このような状況やウイルスの動向を想定している。 +私からの個人的なアドバイスでこの場を締めたいと思う。 +手を洗って。 +手を沢山洗って。 +皆さんは不快な人たちではないから既に手を洗っているだろうけど、もっと洗って。 +日常の中で、手洗いをするキューや日課を作って。 +毎回建物に入る時と出る時に手を洗って。 +毎回会議に入る時と出る時に手を洗って。 +手洗いに関する儀式を作って。 +携帯電話を消毒して。 +汚い、洗っていない手でいつもその携帯電話を触っているんだから。 +トイレに持って行ってることだって知ってるんだよ。 +だから携帯電話を消毒して、公共の場ではあまり使わないということも検討してみて。 +TikTokやインスタグラムも自宅限定のものになれるかも。 +顔を触らないで。 +目を擦らないで。 +爪を噛まないで。 +手の甲で鼻を拭かないで。 +いや、それはどっちにしろやめて。気持ち悪い。 +マスクは着けないで。 +マスクは、具合が悪い人と医療提供者のためにあるから。 +具合が悪いと、マスクが咳やくしゃみを食い止めてくれて、周りの人を守ってくれる。 +医療提供者なら、マスクはあなたが使用の教育を受けた個人用防護具の一つで、それを使うことで患者の手当てもでき、自分が病気になることも防いでくれる。 +もしあなたが普通の健康な人でマスクをつけているのなら、それは顔を脂っこくさせているだけだよ。 +そのマスクを、医者や看護師、具合の悪い人たちのためにお店に残しておこう。 +もしコービッド・ナインティーンの症状があると感じたら、自宅待機し、医者に電話して指示を仰いで。 +コービッド・ナインティーンだと診断されたら、覚えておいて、一般的にはとても軽いから。 +そしてもしあなたが喫煙者なら、今が禁煙する一番良いタイミングだ。 +いや、もし喫煙者なら、いつだって今が禁煙する一番良いタイミングだ。でももしあなたが喫煙者で、コービッド・ナインティーンも心配なら、禁煙をすることがコービッド・ナインティーンの最悪の影響から自身を守るために出来る最善の行動だということを私が保証する。 +コービッド・ナインティーンは怖い、全てのニュースが怖く感じるこの時代の中で。 +そしてそれに対処するために沢山の、良くないけど魅力的な選択肢がある:パニック、外国人嫌悪、広場恐怖症、権威主義、そして嫌悪と憤激と孤独が集団感染に対する解決策だと思い込ませる極度に簡易化された嘘。 +でも違うんだ。 +これらは私たちを準備不足にするだけ。 +他にもいくつか、集団感染に対して使えるつまらないけど役に立つ選択肢がある。ここや色々なところの医療を改善すること、医療インフラや疫病監視に投資し、新しい疫病が現れた時にわかるようにすること;世界中で医療体制を構築すること;供給網を強化して、緊急事態に備えること;より良い教育を通して、皆盲目にパニックするだけでなく、疫病の集団感染やリスクに関する数学について話し合えるようにすること。 +私たちは公平さに導かれなければいけない。実際この状況下では、他の沢山の状況と同様で、公平さは私たちの個人の利益にもなるのだから。 +今日は話を聞いてくれてありがとう。そして、これを誰よりも先に言っても良いかな:劇場から出るときは手を洗って。 + + +62628 +このようなところで自分がTED Talkをするなんて、考えたこともなかった。 +でも、人類の半分と同様に、新型コロナウイルス感染症が引き起こした国際的なパンデミックのせいで、過去の4週間をロックダウンの中で過ごしたよ。 +こんな時に、イギリス南部の実家近くのこの森林に来れて非常に幸運だ。 +この森林はいつも私に刺激を与えてくれた。回避するための行動を取らないが為に恐ろしいことが起きてしまわないように、どうやったら自分たちの行動のコントロールを取り戻すインスピレーションが見つかるかと人類が思考している今だからこそ、ここは私たちが話すのにぴったりの場所だと思った。 +そしてその物語を6年前、初めて国連に入った時から始めたいと思う。 +国連は、連携と協力を促進するにおいて、現在世界で無比の重要性を持っていると固く信じている。 +でも入った時に教えてくれないのは、この必要不可欠な仕事は基本的に、究極に退屈な会議、究極に長くて退屈な会議という形で行われる。 +さて、皆さんも人生の中で長くて退屈な会議に参加したことあると感じているかもしれない。きっとそうだと私も思う。 +でもこれらの国連の会議はそれ以上のレベルで、そこで働く人たちは、禅マスターしか手に入れられないような平静さでその会議に参加する。 +でも私は、心の準備ができていなかった。 +私は、ドラマや衝突、大躍進を期待して入った。 +私が準備できていなかったのは、氷河のスピードで動くプロセス。昔氷河が動いていたスピードで。 +そして、この長い会議のうちの一つで、メモを渡された。 +それは友達であり同僚、共同執筆者でもあるクリスティアナ・フィゲレスによって渡された。 +クリスティアナは国連気候変動枠組条約の事務局長をし���いた為、国連が後にパリ条約となるその内容に合意する段階まで持っていく全体の責任があった。 +私はその政策係だった。 +だから彼女がこのメモを私に渡した時、それにはどうやって私たちがはまってしまったこの悪夢のような沼地から抜け出すのかについての詳細の政治的指示が書かれているのだろうと考えた。 +そのメモを取って、見た。 +そこには、「苦痛だ。けど、愛情を持って取り組もう!」と書かれていた。 +私は、沢山の理由でこのメモが好きだ。 +「苦痛だ」という文字から、小さな巻きひげが生えているのが好きだ。 +その瞬間の僕の気持ちを実によく捉えた視覚表現だ。 +でも特に好きな理由は、それを見ていると、それは政治的指示であって、成功するにはこの方法で進めるんだということがわかった。 +そこで、少し説明させて欲しい。 +私がそれらの会議で感じていた感情は、コントロールに関してだった。 +私は、ニューヨークのブルックリンからドイツのボンへと、妻の非常に消極的な応援と共に生活を移動させた。 +私の子供たちは、言語のわからない学校に行っていて、これらの私の世界への妨害は全て、これから先起こることに対して幾分かのコントロールを得られるからだと考えていた。 +私は何年もの間、気候危機こそが私たちの世代における決定的な挑戦だと感じていた。そして今ここに私はいて、自分の役割を果たし、人類のために何かが出来るんだ。 +でも、与えられたコントロールのレバーに手を置いて引いて見たが、何も起こらなかった。 +私がコントロールできるのは、日常のつまらない事柄なんだと気づいた。 +自転車で通勤している?そして「どこでランチを食べる?」。私たちが成功するかどうかを決断するのは、「ロシアが交渉を台無しにするだろうか?」というような問題だというのに。 +中国は自分たちの二酸化炭素の排出量に責任を取るのか? +アメリカは、自分より貧しい国の気候変動の負担を支援してあげるのか? +差が大きすぎて、その二つをつなげる方法が私には見えなかった。 +無駄のように感じた。 +自分は過ちを犯したのだと感じ始めた。 +精神的に落ち込み始めた。 +でもその時、自分が感じていたことは、数年前に初めて気候危機について知った時の感情と沢山共通点があることに気づいた。 +私は20代前半の頃、仏教僧侶として形成期のほとんどを過ごしたが、出家生活を離れた。なぜなら、20年前のその当時でも、気候危機は既に素早い展開を見せている危機で、自分にできることをしたいと感じたから。 +でもそこを離れて、俗世に再び戻ってみると、自分がコントロールできる物事を見てみた。 +それは、自分と、自分に一番近い家族の数トンの二酸化炭素の排出量、数年毎にどの政党に投票するか、いくつかのデモ行進に参加したかどうか、だった。 +それから結果を左右する問題を見て見たら、それは大きな地政学交渉、巨大なインフラ投資計画、他の人たちがやっていることだった。 +その差は、またもや大きく感じられ、その架け橋になれる方法は見当たらなかった。 +ずっと行動を起こそうとしていたが、あまり効果がなかった。 +無駄のように感じた。 +さて、これは多くの人にとってはよくある経験だということはわかっている。君たちもこんな経験もしたことがあるかもしれない。 +主導権やコントロールがないと感じるような大きなチャレンジに直面した時、私たちの頭は私たちを守る為にちょっとしたトリックを使うんだ。 +大きな力に直面してコントロールを失っていると感じたくないから、私たちの脳は「もしかしたらそんなに重要じゃないかもしれない。どのみち、人々が言うようなことは起きていないかもしれない��」 +もしくは、自分たちのルールを軽視し始める。 +あなたが個人として出来ることは何もない、だったらなんでやるの? +でもここで不思議なことが起きている。 +人間は、高度なコントロールを握っていると感じていない限り、極めて重要な問題に対して継続的で献身的な行動を取れないと言うのは本当だろうか? +これらの写真を見てみて。 +この人たちは、人類が、過去の数ヶ月間パンデミックとして世界中を巻き込んだコービッド・ナインティーンのコロナウイルスと向き合うのを手伝ってきた介護士と看護師の方々だ。 +この人たちは、この病気の拡散を防ぐことができる? +いいえ。 +彼らは、患者が死んでしまうことを防げる? +何人かは、防げただろう。でもそれ以外の人にとっては、彼らのコントロール外だろう。 +それは彼らの貢献を無駄で意味のないものにしてしまう? +いや、そんなことを示唆するだけでも侮辱的だ。 +彼らがしていることは、同胞が一番脆弱な状態にある時に面倒を見ること。 +そして、その仕事は大きな意義がある。私がそれらの写真を見せるだけで、その人たちが示す勇気と人間性が、彼らの仕事を、人間として出来得る一番意義のある行動にしているということが明白になるくらいに、大きな意味だ。彼らが結果をコントロールすることが出来ないとしてもだ。 +さて、これは興味深い。なぜならこれは、人間は結果をコントロールできなくても献身的で継続的な行動を取れると言うことを表しているから。 +でもまだもう一つのチャレンジが残っている。 +気候危機では、私たちの行動はその影響から切り離されている。それに比べてこの写真では看護師たちは世界を変えるという気高い目標でなく、他の人間が弱っている時に面倒を見るという、日々の達成感によって動かされているんだ。 +気候危機では、大きな乖離がある。 +昔は時間による乖離だった。 +気候危機の影響は、遠い未来に起こるはずだった。 +でも今、その未来が私たちに会いにきたんだ。 +大陸が燃えている。 +都市が沈んでいる。 +国が沈んでいる。 +気候変動によって、何十万人もの人が移動を強いられている。 +でもその影響が、もう時間によって私たちから切り離されていないとしても、直接的な関係性を感じることを困難にさせるような乖離はまだ存在する。 +それらはどこか他のところで他の人たちの身に起きているか、私たちが経験してきたのとは違う形で私たちの身に起きている。 +あの看護師の話が人間性について示してくれたが、私たちは継続的に気候危機に対処する異なる方法を見つけなければいけない。 +これが出来る一つの方法がある。根深く支援的な態度が一貫性のある行動と合わさった時、共通の目標に向かって、社会全体に継続的な方法で献身的な行動を取らせることができる。 +それは、歴史を超えて良い効果を発揮してきている。 +だから、歴史的な話を使って説明しよう。 +今、私はイギリス南部の実家近くの森の中に立っている。 +そして、この森はロンドンから遠くない。 +80年前、その都市は攻撃下にあった。 +1930年代後半、英国の人々は、ヒトラーがヨーロッパ征服を止めることはないと言う現実を直視することを、どんな手段をとってでも避けた。 +第一次世界大戦の記憶が新しい中、ナチスの攻撃行動に怯え、その現実から目を背ける為なら何でもした。 +最終的に、現実に打ち破られた。 +チャーチルは、様々な事柄で覚えられていて、全てがポジティブなことではない。だが戦中初期のその頃に彼が行ったのは、自分たちが何をしていて、これから何が起きるのかに関して、英国の人々が自分に言い聞かせていた話の内容を変えたこと。 +以前までは警戒心、緊張感と恐怖心があったそこには、落ち着いた決心、一つの島、栄光の時、最も偉大な世代、彼らと浜辺でも山岳でも道端でも戦う国、絶対に降伏しない国があった。 +恐怖心と警戒心から、それが何であろうとどれだけ暗かろうと現実を直視するようになったその変移は、勝算の有無とは何も関係無かった。 +前線からは、戦いが上手くいっているだとか、その当時に関しては、強力な新しい同盟国が戦いに参入して運命を有利にしたというニュースは全く入ってこなかった。 +それはただ単純に、選択だった。 +楽観主義が、根深く断固とした頑強な形で現れ、迫りくる暗闇を避けたり否定したりしないが、それに怖気付かされることも拒否した。 +その頑強な楽観主義は、力強かった。 +それは、結果が良いものになると言う憶測や、未来に対する一種の願望的思考に依存したものではない。 +その代わり、それは行動を活気づけて、その行動に意義を注ぎ込んだ。 +その時から、リスクやチャレンジがあったにも関わらず、目的に満ちた意義のある時になっていったと言うことがわかる。そして複数の証言により、ブリテンの戦いのパイロットから、地面からジャガイモを引っ張り出すと言う簡単な行為までもに意義が注ぎ込まれるようになったと言うことが確認された。 +彼らは、共通の目的と、共通の結果に向かって活気づけられていた。 +私たちは、歴史を通してそれを見てきている。 +根深く断固とした楽観主義と行動を組み合わせること、その楽観主義が断固とした行動に繋がる時、彼らの行動は自活できるようになる。;頑強な楽観主義がなければ、行動は自活できない。;行動がなければ、頑強な楽観主義はただの姿勢になる。 +この二つが一緒になることで、問題全体を一変させ、世界を変えることができる。 +私たちはこれを、他の幾つもの場で見てきた。 +ローザ・パークスが、バスの席を立つのを拒否した時に見た。 +ガンディーの浜辺への塩の行進の時に見た。 +サフラジェットが「勇気はいたるところで勇気を呼ぶ」と言った時に見た。 +ケネディが、10年以内に人間を月に着陸させると言った時に見た。 +それは、一つの世代に衝撃を与え、暗くて恐ろしい逆境に対抗する共通の目標に意識を集中させた。その目標をどう達成するのか、わからなかったにも関わらず。 +これらのそれぞれのケースで、現実的で気骨があるが断固としていて頑強な楽観主義は、成功の産物では無かった。 +成功の要因だった。 +パリ条約へと向かう道のりで起きた変移も、このようにして起きた。 +難解で困難で悲観的な会議は、徐々に多くの人が、自分たちが掘り下げて行き、自分たちの責任下で失敗させない、可能だと分かっている結果を導く、と言う決意をするにつれて変移していった。 +徐々に多くの人たちが、その視点に転換していき働き始めた。そしてそれは最終的には波のような勢いとなり私たちに襲いかかり、幾つもの難解な問題に対して、想像していた以上の結果を出すことができた。 +そして何年も経った、ホワイトハウスに気候変動否定論者がいる今でも、当時動き出した多くのことは展開され続けていて、この先の数ヶ月、数年の間も気候危機に関して出来ることは沢山ある。 +今、私たちの中のほとんどの人の人生の中で、一番困難な時期のうちの一つに差し掛かっている。 +個人的な悲劇があったかどうかに関わらず、国際的なパンデミックは恐ろしい。 +でも同時にそれは、大きな変遷の中で私たちが無力であると言う考えを揺るがした。 +数週間の間で、最も弱い立場の人々を守るために人類の半分が思い切った行動をする程、一致団結した。 +それが可���なら、共通の困難に面した時に人類が出来ることの限界をまだ試していないのかもしれない。 +私たちは今、無力さのナラティブを超える必要がある。なぜなら、勘違いしちゃダメだー私たちのもとへ迫りくる悲劇を回避するためにまだ取れる行動をとらないと、気候危機はパンデミックよりも最悪な規模になる。 +私たちにはもう無力さを感じている余裕はない。 +再生可能な未来と、全てを投げ出してしまった未来の分岐点に立っている今この瞬間の私たちを、未来の世代は畏敬の念をもって見るというのが真実だ。 +そして、この変遷の中で多くの物事は私たちにとって良い方向に進んでいると言うのも真実。 +クリーンエネルギーの費用が下がっている。 +都市が変化している。土地が再生されている。 +人々は、私たちが一世代の間、目にしなかった力強さと根気強さと共に路上に出て変化を求めている。 +この変遷の中で、本物の成功は可能だし、本物の失敗も可能である。だからこそ、生きていて一番ワクワクする時代なのだ。 +この困難に対して、気骨があって、現実的で断固としている楽観主義の頑強な形で挑んで、自分たちの出来る限りのことをすることで、パンデミックを終えると共に再生可能な未来に向かう道のりを確実に作れるようにするという決断を、今私たちはできるのだ。 +先には暗い日々が待っていたとしても、人類にとっての希望の光となることを私たち皆で決意できる。そして私たちが責任を持つこと、私たちが自分たちの二酸化炭素排出量を次の10年以内に最低50%減らすこと、政府と企業に働きかけて、パンデミックを終えた後に彼らに再建して欲しい世界を作るのに必要なことをさせる為に行動を起こすことを決意できる。 +今、これら全てのことは可能なんだ。 +さて、私がクリスティナからもらったメモを見ている、あの退屈な会議室に戻ることにしよう。 +それを見ていると、私の人生の中でも特に革新的な経験が思い出された。 +僧侶として学んだ沢山のことのうちの一つは、冴えた思考と、喜びで満ちた心は、人生の道のりでもあり、目標でもあるということ。 +頑強な楽観主義は、応用された愛情の一種なんだ。 +それは、私たちが創りたい世界と、その世界を創れる方法の両方。 +そして私たち皆にとっての選択。 +この瞬間を頑強な楽観主義を持って臨むことを選択すれば、それは私たちの人生を意義と目的で満たしてくれる。そして、そうする中で、歴史の弧に手を置いて、私たちが選ぶ未来に向かって曲げることができる。 +うん、今を生きるのはコントロールを失っている気がする。 +恐ろしくて、怖くて、新しく感じる。 +でも今私たちに向かってきている一番重要な変移を前に怯まないようにしよう。 +頑強で断固とした楽観主義で臨もう。 +うん、今世界で起きている変化を見るのは苦痛かもしれない。 +でも愛情を持って取り組もう。 +ありがとう。 + + + +37498 +39331 +42604 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