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15.8k
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scp-801-jp |
評価: +64+–x
補遺ハの日誌に記載されていた図
アイテム番号: SCP-801-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-801-JPは██湖に完全に定着しており収容には多大なコストがかかるため、現在発見された██湖の周囲半径10㎞を封鎖し収容されています。収容範囲内への海水の持ち込みは禁止されています。また、死骸にも特異性がある為死骸を処理する際に海水に接触しないよう注意して下さい。侵入した一般人を発見した場合クラスA記憶処理を行い解放してください。また、爆発を一般人が目撃した場合はカバーストーリー「花火大会」を流布した後にSNS上の写真を削除してください。SCP-801-JPの成体は現在██個体確認されています。稚魚や卵を含めるとおよそ██尾のSCP-801-JPが生息すると推測されています。
説明: SCP-801-JPはクロマグロ(学名 Thunnus orientalis)に一部を除いて非常に近い外観を有した生物です、通常のクロマグロと異なる点として、本来クロマグロは胸鰭がマグロ属の中で最も短いにも関わらず、トビウオのように胸鰭が発達している点が指摘されています。また、SCP-801-JP個体の平均的な大きさは体長2m体重200㎏です。
体内からは本来存在しないはずの爆発性物質1が発見されています。後の死骸を使った解剖実験により更に多数の爆発性物質が発見されました。補遺ロを参照して下さい。SCP-801-JPが活性化した際、水面から未知の方法を用いて高速で飛び出し、一定時間経過するか目標に衝突することで爆発を起こします。この爆発はTNT爆薬1tに相当する威力を有します。また、SCP-801-JPは、発達した胸鰭を使用することで滑空することが可能です。SCP-801-JPはおよそ1200km/hのスピードで滑空し、飛行可能距離はおよそ100㎞に達すると推測されます。2
この特異性は発見したSCP-801-JPの死骸を解剖する際に海水が付着した手袋で触れた際、実験室内で活性化し実験室の天井を突き破り上空で爆発したため爆発するだけでなく、飛行が可能な事も判明しました。この後の実験により活性化の条件が判明しました。
SCP-801-JPは摂食する事により生体濃縮に似た特異性を発する事が確認されています。また、SCP-801-JPは死骸を視認した際に強い摂食への欲求を発生させます。
SCP-801-JPは██湖付近の漁業組合に漁師達から「湖でマグロを見た」との目撃情報が多数寄せられたため財団のエージェントが██湖を調査したところ発見され収容に至りました。███氏の証言と、それに基づいた資料調査によると、SCP-801-JPは19██年に不審な人物が██湖にバケツに入った稚魚を放流していた事が確認されており、付近に存在する日本生類創研の放棄された研究施設から日誌が発見されており関係性が推測されています。
+ 以下はSCP-801-JPを用いた摂食実験の実験結果です
- テキストを隠す
摂食量
結果
活性化条件
1〜50g
四肢のいずれかもしくは消化器系の爆発
海水への長時間の接触
50〜200g
頭部もしくは四肢、内臓全ての爆発
海水への接触
200〜500g
全身の爆発に加え数秒間の低速飛行
汗を含む塩分を含んだ液体への接触
500g以上
全身の爆発、数秒間の飛行に加え全身の紡錘形への形状変化
塩化ナトリウムを含む物質への接触
補遺:イ SCP-801-JPの滑空可能距離、また爆発の威力の実験は広大な水場が必要な点と、収容違反を起こす可能性があるため現在は停止されています。
補遺:ロ SCP-801-JPの体内から発見された可燃性・爆発性物質のリスト
・トリニトロトルエン
・ニトログアニジン
・ニトロセルロース
・ジニトロトルエン
・硝酸アンモニウム
・ニトロベンゼン
これらは本来の結晶構造や形状を無視して体内に存在する事が判明しています。
また、死骸を解剖する際強い桃の様な芳香が確認されました、これは体内に存在するニトロベンゼンによる物と推測されます。
Footnotes
1. トリニトロトルエン(主に爆薬に用いられる成分)に酷似しています
2. この特異性は後の実験により詳しく判明しました
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scp-802-jp |
評価: +122+–x
SCP-802-JP(センサー部の拡大)
アイテム番号: SCP-802-JP
オブジェクトクラス: Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-802-JPは現在収容されていません。回収された場合、隔離実験室に一時収容します。ただちに再稼働実験とオブジェクトクラス再評価実験を行って下さい。実験手順はSCP-802-JP再評価プロトコルに従います。
説明: SCP-802-JPはオフィス用コピー機に酷似した外見を持つ装置です。立体センサーで認識させた物体を複製し、側面にある22cm×15cmの開口部から出力します。開口部より大きな物体はセンサーが認識しません。液晶画面部分には数字のみが表示され、1回使用するごとに数字が1増加します。現在の数字は27です。複製される物品に特異性はありませんが、機能性などの点でオリジナルよりも大きく劣化しています。詳細は実験記録の抜粋を参照して下さい。
対象
結果
付記
未使用のUSBメモリ32GB
未使用のUSBメモリ4GBを出力。
メーカー名は同じでしたが、実在しない製品でした。生成物03と記録。後述の実験に使用。
[編集済]の書籍
同じ題名の書籍を出力。
社会学の古典的名著が、陰謀論と差別的偏見に満ちた内容に改竄されていました。生成物06と記録。焼却。
ビニール袋に封入された精米200g(コガネヒカリ)
ビニール袋に封入された精米200gを出力。銘柄不明。
遺伝子解析と成分分析により、コガネヒカリの原種にあたるコシヒカリの古米と特定。生成物09と記録。焼却。
モルモットの生体
モルモットの死体を出力。
DNAはほぼ一致したが、幾つかの遺伝性疾患の因子を発見。生成物11と記録。焼却。
財団標準12mmショックブラスター(Defender Talon)
自動式9mm拳銃(SIG SAUER P220)
武装セキュリティの旧制式装備です。生成物17と記録。保管。
実験を繰り返す中で、不可解な結果が発生しました。下記の実験記録を参照して下さい。
実験記録022 - 日付2015/██/██
対象: 未使用のUSBメモリ32GB
実施方法: SCP-802-JPで複製。
結果: 未使用のUSBメモリ4GBを出力。方法・結果ともに生成物03の実験と全く同じです。
本来予定されていたのは生成物03を繰り返しSCP-802-JPでコピーし、劣化の進行度を確認する実験でした。予定と異なる実験が行われています。またオブジェクトの数字表示が27になっているのを確認。実験開始前は21でした。
オブジェクト周辺から未使用のUSBメモリ32GB 5個を回収。実験担当者によると予備とのことです。
分析: 表示されている数字が正確ならばSCP-802-JPは6回作動したことになり、因果関係としては生成物が6個出現していなくてはなりません。しかし現実にはそうなっていないため、因果関係が成立していないことになります。このためSCP-802-JPの故障、あるいは現実改変が発生した可能性が疑われます。検証のために、幾つかの実験が早急に必要です。
研究チームはさらなる実験を計画しましたが、実験022の後、SCP-802-JPは完全に作動しなくなりました。財団は様々な方法で分析と再稼働を試みましたが失敗し、2ヶ月後に全ての実験を終了。SCP-802-JPは回復不能なレベルで故障したものと結論づけられ、オブジェクトクラスはNeutralizedに変更されました。
補遺: オブジェクトクラス変更後、SCP-802-JPが消失しました。映像記録を参照して下さい。ただし以降の情報への接触には、セキュリティクリアランスレベル2が必要です。
映像記録 - 日付2015/██/██
<再生開始>
(初老の男性研究員が1人、保管庫でSCP-802-JPを調べている。IDカードの姓は"犀賀"と読める)
犀賀研究員: 多重複製で安全装置が作動してしまったのは誤算だったが……。
セキュリティ担当者: 誰だ!?
(巡回中のセキュリティ担当者が1名入ってくる。男性研究員はIDカードを提示)
犀賀研究員: 私だ。犀賀だよ。
セキュリティ担当者: ああ、犀賀博士。どうされたんですか?
犀賀研究員: こいつを搬出したいんだ。
セキュリティ担当者: Neutralizedオブジェクトをですか?
犀賀研究員: もうこの世界には必要のないものだからね。
セキュリティ担当者: 動かないガラクタですからね、ははは。
犀賀研究員: いやいや、ガラクタだなんてとんでもない。こいつを使えば、オリジナルとコピーが交換されたことに誰も気づかないのだよ。改良されたコピーの方を、ずっと前から存在しているオリジナルだと思い込んでしまうからね。まあ、もう終わった話だが。
セキュリティ担当者: そういうものですか……自分にはわかりかねます。許可書はお持ちですか?
犀賀研究員: これがオブジェクトの移動許可書だ。急ごう、次の予定が入っているのでね。
セキュリティ担当者: わかりました。すぐに手配します。
犀賀研究員: ありがとう。ところで君の郷里は長野だったね。
セキュリティ担当者: え? ああ、そうです。山奥も山奥ですよ。
犀賀研究員: うむ、良かった……たまには苦労も報われるものだな。
セキュリティ担当者: はあ……。
<再生終了>
終了報告書: この後、SCP-802-JPは消息不明になりました。取り付けられていたGPS発信機は異常な座標を示した直後に信号が途絶しました。通信は現在も回復していません。
財団に犀賀という名前の研究員は存在しません。セキュリティ担当者はインタビューに対し、「なぜか彼と旧知の間柄だと思い込んでいた」と答えました。SCP-802-JPは完全停止していたため、これは画像の人物の特異性によるものと考えられます。追跡と調査を継続中です。
この人物の発言が事実なら、実験022で使用されたUSBメモリ32GBと回収された予備のUSBメモリ32GB 5個は、いずれもSCP-802-JPの本来の生成物です。生成物と考えられていたUSBメモリ4GBはオリジナルであり、これを使って6回複製したことになります。この仮説は実験結果と矛盾しません。
過去の実験で用いられたオリジナルの物品は全てSCP-802-JPの生成物であり、逆に生成物として記録されていたものが全てオリジナルである可能性が出てきました。しかしオリジナルの物品は全て一般にも流通しているものばかりであり、この仮説が事実なら大規模な過去改変を含む現実改変が行われたことになります。オブジェクトの回収と検証が必要です。
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scp-803-jp |
評価: +30+–x
SCP-803-JP
アイテム番号: SCP-803-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-803-JPは高強度の収容ロッカーに器具に固定された状態で収容されます。雨天時には防音を施したプロテクターを装備した二名以上の警備員を配置し、ロッカーを監視してください。現在、SCP-803-JPの実験は禁止されています。
説明: SCP-803-JPは外見上は一般的な雨傘です。材質は市販のものと同じで、非活性時には強度も同じと測定されています。防水加工された傘布の表は濃い緑、裏面は薄緑や茶色、水色など様々な色が混合した縦縞模様になっています。傘先と持ち手は木製、持ち手は山羊の頭部を模した彫像のようになっています。
SCP-803-JPは雨天時1 に活性化し、以下の異常性を段階的に発揮します。
第 一 段 階
活性化したSCP-803-JPは室内であっても雨を感知し、傘先を地面に向け、跳ねながら移動します。活性化した際、人間がSCP-803-JPを持っていた場合は手から離れ、移動を始めます。進路に障害がある場合は回避しようとしますが、人為的な妨害があった際には体当たりなどの敵対行動をとります。この敵対行動はプロテクターなどの装備を整えることで無力化でき、訓練を受けた警備員であれば問題なく取り押さえることが可能です。
第 二 段 階
SCP-803-JPは雨が当たり、傘布を広げられる場所に移動すると、傘先を地面に立てた状態で傘布を開きます。この段階になったSCP-803-JPは不可視の力によってその場に固定され、物理的な干渉を受けなくなります。同時にSCP-803-JP自体も物理的干渉を受け付けず、破壊は困難とされています。SCP-803-JPはその状態を維持し、雨水を貯め始めます。この際に雨を遮るなどの行動に出ると、再び雨の当たる場所へ移動を始めます。2 SCP-803-JP内に雨水が満たされると、SCP-803-JP内の雨水はSCP-803-JP-1に変容します。SCP-803-JP-1は白い液体で大量の水を投入しても溢れることはなく、同じ水位を保ち続けます。測定実験ではSCP-803-JP-1の深度は計測不可能でした。
第 三 段 階
SCP-803-JP-1が発生すると、SCP-803-JPの持ち手の彫像の口が動き出し、鳴き声を上げ始めます。この鳴き声は音声解析の結果、波長と声量ともに山羊に非常に近いものとされました。哺乳類3がSCP-803-JPの鳴き声を認識すると、SCP-803-JPへ向かっていきます。影響下にある生物は外的な刺激に疎くなり、SCP-803-JPに向かうことを最優先します。影響された生物がSCP-803-JPにたどり着くとSCP-803-JP-1内に侵入を始め、消失します。
第 四 段 階
雨が止むとSCP-803-JPは鳴き声を止め、彫像の口からSCP-803-JP-Aを発生させます。SCP-803-JP-Aは雲に酷似した非実体の存在で、視認することはできますが物理的干渉を受け付けません。SCP-803-JP-Aは煙のように上昇すると、雲の存在する高度で留まり、視認での区別は困難となります。SCP-803-JPはSCP-803-JP-Aを発生しおえると非活性化し、傘布を折り畳みその場に倒れます。
第 五 段 階
発生したSCP-803-JP-Aは物理的干渉を受けないにもかかわらず、ほかの雲と同じように移動を続け、6日〜12日の期間の間に活性化します。一塊だったSCP-803-JP-Aは分裂し、高積雲4と類似した形状に変化します。分裂したSCP-803-JP-Aは自然崩壊し、実体存在であるSCP-803-JP-Bを地上に降らせます。SCP-803-JP-Bは通常の哺乳類と類似した生物群です。SCP-803-JP-BはDNAなど通常の哺乳類と変わりませんが、全身の毛がありません。実験の結果、SCP-803-JP-BはSCP-803-JP-1内に侵入した生物と種類、DNAが一致、関係性が指摘されています。SCP-803-JP-Bは地上に落ちてきた時点では高所からの落下で死亡していますが、SCP-803-JP-Aからの発生時に生存しているかどうかは確認できていません。
SCP-803-JPが発見されたのは奈良県██市の民家です。民家周辺では██名に及ぶ行方不明事件が発生しており、遺体が全身の毛がない状態で和歌山県██の沖合で発見されたことなど不自然な点が財団の目に留まりました。民家の家主である坂本██氏、その家族はSCP-803-JPの影響を受けたと考えられ、SCP-803-JP-B個体として発見されました。発見当初のSCP-803-JPには指紋などは付着しておらず、人に使用された痕跡もありませんでした。
補遺: 実験の際、SCP-803-JPの影響を受けた羊をSCP-803-JP-1の内部に侵入させたところ、SCP-803-JPが鳴き声を停止しました。その後、全身の毛が抜かれた羊を排出すると雨が降っているのにも関わらず非活性化しました。
その後、SCP-803-JPの傘布の裏に以下の文章が刺繍されていました。
おまえはもうとんでいる
以降、SCP-803-JP自体に影響をもたらすとして、羊を使ったSCP-803-JPの実験は禁止されています。
脚注
1. 自然発生のものだけではなく、気象操作で人工的に発生した雨にも反応します
2. 雨水を抱えたまま移動しますが、水量が多すぎるとバランスを崩し、転倒して雨水をこぼしてしまいます。
3. コウモリなど一部哺乳類を除く
4. 一般的に羊雲、まだら雲、叢雲とも呼ばれます
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scp-804-jp |
評価: +189+–x
評価: +189+–x
クレジット
タイトル: SCP-804-JP – パンを踏むべからず
著者: ©ykamikura
作成年: 2016
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評価: +189+–x
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SCP-804-JP-1内に陳列されたSCP-804-JP-3群
アイテム番号: SCP-804-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-804-JP-1の周囲100mは、カバーストーリー「林業会社の私有地」が適用され、対人センサー付きのフェンスによって封鎖されています。部外者が侵入した場合はセキュリティ担当者によって対応、必要があれば適切な記憶処理を行って下さい。
SCP-804-JP-2の挙動は、店外に設置された監視カメラによって24時間体制で監視します。通常のパターンと異なる行動を見せた場合は、直ちに研究班へ連絡して下さい。
SCP-804-JP-3を1日に最低10個は購入し、24時間以内にDクラス職員に摂食させて下さい。SCP-804-JP-3は専用のケースに入れて慎重に持ち運び、摂食以外では決して破損させないで下さい。SCP-804-JP-3を故意に破損させる実験の被験者は、Dクラス職員にのみ許可します。
説明: SCP-804-JPは、SCP-804-JP-1、-2、-3の3つの実体で構成されます。
SCP-804-JP-1は、ごく一般的なベーカリーの外見をした建造物です。平屋建てで、サイズは約10m×15m×3mです。正面入口の看板には「ベーカリー・Andersen」と記述されていますが、管轄地域の保健所、消防署、税務署等1には該当する店名は登録されていませんでした。電気配線や上下水道が通っていないにも関わらず、内部では電灯や水道が利用可能です。
発見当初は、███県██市の商店街に存在していましたが、初期の収容違反事例(後述参照)において、現在の所在地である██県██郊外の緑地帯へと転移しました。
SCP-804-JP-2は、若いコーカソイド系女性の外見をした人間型実体です。SCP-804-JP-1の店員として振る舞い、来客に好意的な態度で接します。氏名を尋ねると“ブレッド夫人”と名乗ります。質問には答えますが、氏名以外の答えは毎回異なる等、内容には信憑性がありません。具体例については、第█回インタビューログ804-JP-2を参照して下さい。
SCP-804-JP-2
SCP-804-JP-2の行動パターンは概ね定形的で、毎朝9:00になるとSCP-804-JP-1を開店し、以降、接客、レジスターでの会計、店内の掃除などをして過ごします。食事や休憩等を行っている様子はありません。20:00になるとSCP-804-JP-1を閉店し、シャッターを閉鎖します。現時点では、SCP-804-JP-1外に出たことはありません。
SCP-804-JP-2に対して敵対的な行為を試みた人間は、即座に自失状態に陥ります。SCP-804-JP-2が勧めるままにSCP-804-JP-3(後述参照)を購入する以外の行為が取れなくなり、この状態はSCP-804-JP-1から退店するまで継続します。
SCP-804-JP-3は、SCP-804-JP-1内で販売されているパンです。原材料は小麦粉、乳製品、野菜等、一般的なパンと差異はなく、摂食も可能です。現在、2種類の異常性が確認されています。
第1の異常性は、摂食した人間の心理的性質を変化させるものです。デュセイ/エリックバーン人間性診断テストの結果、元の性質をベースにしつつも、自己主張の欲求が薄まり、社会的規律を重視するようになることが確認されています。また、特筆すべき点として、食料を粗末にする行為に激しい抵抗感を示すことも挙げられます。この効果はAクラス記憶処理で解除可能な他、個人差はあるものの時間経過でも強制力が薄れていくことが確認されています。被験者の臨床例については、第█回実験ログ804-JP-3を参照して下さい。
第2の異常性は、摂食に適さない状態にされた場合2、それを実行した人間と共に消失するというものです。Dクラス職員を用いた実験では、転移先は閉鎖型異常空間と推測され、GPS等を用いた位置特定は成功していません。消失した人間が発見された例は、現時点ではありません。詳細は█回探査ログ804-JP-異常空間を参照して下さい。
SCP-804-JPは2016/██/█、███県警察への、「兄がパンを踏み潰したら消えてしまった」という通報により発見に至りました。県警に潜入していたフィールドエージェントが通報者の児童から聞き取りを行い、現場に残されたSCP-804-JP-3を回収、購入したのが近隣の商店街に最近開店したSCP-804-JP-1であることが判明しました。この児童と近親者にはCクラス記憶処理が行われ、カバーストーリー「交通事故死」が適用されました。
財団は当初、SCP-804-JP-1の店員であるSCP-804-JP-2の確保を試みましたが、前述の異常性により失敗に終わりました。次善策としてカバーストーリー「改装工事中」を適用しSCP-804-JP-1の封鎖が行われましたが、5日後にSCP-804-JP-1がその場から消失、約700Km離れた現在の所在地へと転移しました。一定期間来客が途絶えることが転移のトリガーになったと推測され、これを防ぐためにSCP-804-JP-3を購入する手順が特別収容プロトコルに導入されました。
第█回実験ログ804-JP-3: 2016/██/█
SCP-804-JP-3の摂食実験ログより、実験後に被験者のDクラス職員D-7122へ行った聴取部分を抜粋
〈前略〉
D-7122: いやあ、美味いパンだったなぁ! パンで感動したのなんて、生まれて初めてだよ。
咲沼博士(当事案研究主任): 味以外に、何か特筆すべき点は? 見たところ、特に変化はないようですが。
D-7122: 変化も変化、大変化だよ! これまでの人生観が、すっかり変わっちまった!
咲沼博士: ほう、具体的にどのように?
D-7122: 気付かされたよ、俺達は他の生き物から、命を貰っているんだってことに。あのパンを口にした瞬間、ああ、俺は今、命を食べているんだ。この美味さは、命の美味さだ。そんな気持ちが、わーっと湧き上がってきてさ……。昔の俺は、自分一人の力で生きてると思い込んでた。傲慢だったよ。
咲沼博士: なるほど。そう言えば、あなたは実験後の夕食の席で、同僚と口論になったそうですね。何でも、彼が食事を残していることに、腹が立ったとか?
D-7122: [興奮した様子で]あ、当たり前だろ! 食いもんを残すなんて、命への冒涜だ!
〈後略〉
第█回インタビューログ804-JP-2: 2016/██/█
〈前略〉
※D-7122がSCP-804-JP-1に入店する。
SCP-804-JP-2: あら、いらっしゃい、加藤3さん!
D-7122: あ、ああ、こんにちは、ブレッドさん。
SCP-804-JP-2: 新作の根野菜カレーパンはいかがでした?
D-7122: めっちゃ美味かったぜ! いやあ、最初は肉の入ってねえカレーパンなんてと思ったけど、カブもゴボウも味がしっかりしてて……。
咲沼博士: 私語はそれぐらいに。前回インタビューと同じ質問を繰り返して下さい。
D-7122: あ、はい。ええと、ブレッドさん。あんたに、聞きたいことがあるんだが。
SCP-804-JP-2: まあ、何かしら? パンのレシピ以外なら、何でも聞いて!
D-7122: ええと、ここで店を開く前はどうしていたんだい?
SCP-804-JP-2: いえね、ここだけの話よ? 実は私、████皇太子と████・████4の隠し子でね。
D-7122: あんた、この前は「佐賀の農家の出身で」とか言ってなかったか?
※この後、自身の異常性や、SCP-804-JP-3を販売する動機、閉店後の過ごし方等について質問するも、ことごとく前回までのインタビュー時とは異なる内容の返答。
〈後略〉
探査ログ804-JP-異常空間: 2016/██/█
目的: SCP-804-JP-3を損壊した際に転移させられる異常空間の探査。
手段: D-4290にGPS付き通信機を装備させた上、SCP-804-JP-3を足で踏み潰させ、異常空間に送り込む。
結果: D-4290、SCP-804-JP-3を踏み潰した瞬間に、SCP-804-JP-3と共に消失。スーパースローカメラの映像を再生したところ、両者共に実験室の床に沈むようにして消失する様子が確認された。
GPS、消失後より位置エラー。
消失後、約3分後に実験室の通信機がD-4290からの通信を受信。内容は以下の通り。
〈通信開始〉
※映像は激しいノイズで判別不能
D-4290: [水が泡立つような音]すけて、助けてくれ!
咲沼博士: こちら調査本部。D-4290、応答して下さい。
D-4290: 光が、遠く[水が泡立つような音]浮かべない! パンが、重くて[水が泡立つような音]足に、くっついて[水が泡立つような音]
咲沼博士: 水中にいるのですか?
D-4290: ち、違う。水じゃな[水が泡立つような音]
[多数の人間の呻き声らしき音声]
咲沼博士: 他にも人間が?
D-4290: 大勢いる! みんな、浮かべな[悲鳴]お、お前は、俺が殺し[水が泡立つような音]は、離せ! ああ、沈む、沈[水が泡立つような音]なさい、ごめんなさい! もう、食べ物は粗末にしま[水が泡立つような音]
[地響きらしき音声。分析の結果マグマの噴出音と相似]
D-4290: そうか、ここは[水が泡立つような音]
咲沼博士: ここは?
D-4290: 地獄か。
[甲高い笑い声らしき音声]
〈通信中断〉
+ 2016/█/█、追記: 第█回実験関連情報
- 閲覧を終了する
SCP-804-JP-1から通じる、異常空間の存在が確認されました。
第█回実験において、SCP-804-JP-2の行動パターン観察のため、陳列されているSCP-804-JP-3を全て買い上げる試みが行われました。SCP-804-JP-2は感激した様子で応じ、その後、商品の補充を行うと称し“厨房”と書かれたドアから姿を消しました。このドアは幾度か開ける試みが行われていましたが、ノブに触れた瞬間SCP-804-JP-2の異常性が発現するため、失敗に終わっていました。
中継役のD-7122がドアを確認したところ、施錠されておらずノブを回すことも可能でした。そのため、咲沼博士はD-7122に内部の調査を指示しました。
緊急探査ログ804-JP-1: 2016/██/█
〈通信開始〉
※映像は激しいノイズで判別不能
D-7122: ど、どうなってんだ。ここ、建物の中だよな?
咲沼博士: 内部の様子はどうですか?
D-7122: め、めちゃくちゃ広い! [咳き込む]砂煙がすごくて、遠くは見えねえが、岩ばっかりの荒野だ。
咲沼博士: 貴方が入ってきたところは、どうなっていますか?
D-7122: こ、荒野の真ん中に、ぽつんとドアが立ってる。あ、ブレッドさんが。
咲沼博士: 彼女はどうしていますか?
D-7122: 少し先を歩いてる。こっちには気付いていないみたいだが。
咲沼博士: 追跡して下さい。なるべく、気付かれないように。
D-7122: どうしてもやるのか? [ため息]ブレッドさん、すまんなぁ。
D-7122、約5分間SCP-804-JP-2を追跡する。その間、GPSの位置情報はSCP-804-JP-1の座標を示し続けていた。
D-7122: 何か見える……十字架?
咲沼博士: 墓標ですか?
D-7122: いや、でか過ぎる。墓には見えな[驚きの声]ひ、人が! 人が磔になってる!
咲沼博士: 落ち着いて。それはどんな人物ですか?
D-7122: 男だ。腰に布を巻かれてる以外は、裸だ。顔は、よく見えない。ぴくりとも動かない。死んでるのか? あ、あれって、まさか……。ん? ブレッドさんが何か言ってる。風の音でよく聞こえないが……。
※後の分析で、ヘブライ語で「取って食べなさい。これは私の体である。この杯から飲みなさい。これは人々の贖罪のために流される私の血、契約の血である」5と言っていることが判明。
D-7122: [息を呑む]
咲沼博士: どうしました?
D-7122: ブレッドさんが、包丁で男を切り刻んで[水が泡立つような音]がパンに変わって[水が泡立つような音]ち、血がドバドバ……あれ? この匂いは[水が泡立つような音]
※水が泡立つような音が激しく、通信一時中断。
咲沼博士: D-7122、応答して下さい。
D-7122: [速い足音、SCP-804-JP-2に駆け寄っていると推測]ブレッドさんの様子がおかしい。急に座り込んで……おい、どうし[悲鳴]
SCP-804-JP-2: [低い声で]不信心者どもめ。どれ程あの方の聖体を喰らえば、悔い改めるというのか。教えは伝わらぬ。罪は清められぬ。天国は遠ざかるばかり。
D-7122: か、顔が、鳥に、ブレッドさんの、顔が!
SCP-804-JP-2: [ツル科の鳥に似た鳴き声]主よ、愛しい人よ! 千年紀を2回も経た! 私は、いつまでこんなことを続ければいい!?
〈通信中断〉
数分後、SCP-804-JP-2は大量のSCP-804-JP-3を載せたトレイを手にしてドアから出現、SCP-804-JP-1内に陳列しました。その後の行動パターンは、以前までのものと同様でした。
SCP-804-JP-2にD-7122について聴取を行いましたが、有意義な情報は得られませんでした。D-7122との通信回復、生存確認は現在でも成功していません。
異常空間の追加探査については、現在審議中です。
+ 2016/█/█、追記: インシデントSCP-804-JP関連情報
- 閲覧を終了する
ワインバー・Andersenの店内
2016/█/█/██:██、フィールドエージェントより、東京都██区のオフィス街に「ワインバー・Andersen」という店名のバーが開業していることが報告されました。
諜報局による調査の結果、公的な機関に店名が登録されていないことが判明しました。また、店長の男性の容姿が、行方不明中のD-7122と共通点が多いという情報もあります。
このバーがSCP-804-JP-1の亜種、もしくは派生オブジェクトである可能性が高いと研究班は見ており、さらなる調査を予定しています。
脚注
1. 飲食店開業の際に、届出が必要になる機関。
2. 現在までの検証では、踏み潰す、ゴミ箱に入れる、放置して腐敗させる等が該当しました。
3. D-7122に名乗らせている偽名。
4. 著名なハリウッド女優。
5. 新訳聖書、マタイによる福音書、26章26~30節からの引用か。
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scp-805-jp |
評価: +53+–x
写真を撮る際に絵を描くSCP-805-JP-1
アイテム番号: SCP-805-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-805-JPはサイト-81██の収容ロッカー内へと保管されます。一日に二回、担当の職員は専用の白色の防護服を着用し、決められた時間にSCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2の状態を観察します。この際に必要が見受けられた場合はSCP-805-JP-1と会話を行ってください。会話を行う場合、10分以内に済ませます。その後、ロッカー内へと再度保管され、施錠されます。担当となる職員は観察ごとに交代し、同職員が長期間SCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2と触れ合うことがないようにしてください。
説明: SCP-805-JPは、一般的なA5サイズの無地のダブルリングノートです。ノートは発見した時点で67枚の用紙が綴られていました。SCP-805-JPは一般的なノートとしての機能を有していますが、筆記することと用紙を破りとること以外の影響を受けることはありません1。
SCP-805-JPに綴られている用紙には、用紙内に描かれた鉛筆(以下、SCP-805-JP-1)と、同様に描かれている消しゴム(以下、SCP-805-JP-2)が存在します。これらは未知の染料によって描かれており、SCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2は、用紙内をすべるようにして移動します。また、その際にページ間の移動を行うことも可能です。これらの存在は知性および自我を持っていることが確認されており、特にSCP-805-JP-1はページ内に文字を書き起こすことで積極的に会話を試みようとします。また、SCP-805-JP-2は、油性ペンやボールペンで書かれた文字であっても消すことができるようです。SCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2は、SCP-805-JP外部の用紙へと移動することはできません。
SCP-805-JP-1もしくはSCP-805-JP-2が描かれているページを破りとった場合、破りとったページからは異常性が失われます。また、破れたページ内のSCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2は消失し、SCP-805-JPの一番端の用紙内にそれぞれ再出現します。この際、SCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2は強い苦痛2を訴えます。SCP-805-JPの用紙数には限りがあるという点と、SCPオブジェクト保護の観点から、これ以上のページ数減少をもたらす実験は現在停止されています。
SCP-805-JPは、███県の███高校に潜入していたエージェントが「相手のいない交換日記」という噂話に着目し、当時SCP-805-JPを利用していた女子生徒数人からの証言を得た結果発見されました。SCP-805-JPが回収された後、所有していた女子生徒たち、及びその周辺の人物には記憶処理が施されました。
以下は、SCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2の両方、もしくは片方の存在するページに文字を書き込むことで行ったインタビュー記録です。
+ インタビュー記録-805-1
- インタビュー記録を隠す
インタビュー記録-805-1
対象: SCP-805-JP-1
インタビュアー: ██博士
付記: ██博士はボールペンを使ってSCP-805-JP内へ文章を書き込んだ。
<記録開始>
██博士: おはよう、SCP-805-JP-1。
SCP-805-JP-1: おう おはよう 誰かさん。
██博士: 今日は質問があるのですが、よろしいでしょうか?
SCP-805-JP-1: いいよいいよ 話したくて仕方なかったんだ。
██博士: あなたはいつごろからそのように活動できるようになったのですか?
SCP-805-JP-1: あぁ うーん いつかは分かんねぇけど 随分前のことだよ。
██博士: ありがとう。 では、あなたはどの程度まで周辺の様子を認識しているのですか?
SCP-805-JP-1: 俺から見えるとこまで。
██博士: もっと具体的にお願いします
SCP-805-JP-1: んー このノートを開いてるときなら あんたの顔も見えるよ。
██博士: そうですか。 ではコレは見えますか?[ノートの前でボールペンを振る]
SCP-805-JP-1: 見えてるよ。 こんな感じだろ?[ページ内に棒を振っている手の絵を描く]
██博士: ありがとうございます。それで……
SCP-805-JP-1: だけど関心しないなぁ……。
██博士: ……何がです?
SCP-805-JP-1: 俺の目の前で 俺の家族をブンブン振ってることだよ。
██博士: 家族とは、このボールペンのことですか?
SCP-805-JP-1: そう、ボールペン。 俺もそいつも文字が書けるんだ つまり家族だろ。
██博士: なるほど、今後控えることにします。
SCP-805-JP-1: そうしてくれ。 あ、そうだ
██博士: なんでしょう?
SCP-805-JP-1: 今後も俺とは話してくれよ。 話せるやつがいないとつまらないからさ。
██博士: SCP-805-JP-2は話し相手にはならないのですか?
SCP-805-JP-1: なんて? あー、もしかしてあいつのこと? あいつは無口だから会話なんて無理だよ。
██博士: そうですか。 それではそろそろ私は失礼します。
SCP-805-JP-1: もう終わり? またきてくれよ、今度はもっと凄い絵描いてやるからさ。
<記録終了>
終了報告書: SCP-805-JP-1は非常に人間らしい会話を行います。また、この後SCP-805-JP-2によって文章が全て削除されました。
+ インタビュー記録-805-2
- インタビュー記録を隠す
以下のインタビューは、SCP-805-JP-1とSCP-805-JP-2がお互い逆側のページの端にて膠着している様子が確認された際に行われました。
インタビュー記録-805-2
対象: SCP-805-JP-1
インタビュアー: ██博士
<記録開始>
██博士: なにかあったのですか?
SCP-805-JP-1: おう 誰かさん いや なんでもないよ。
██博士: SCP-805-JP-2と上手くいっていないように見えますが
SCP-805-JP-1: ……そうなんだよ 聞いてくれよ なあ。
██博士: どうぞ
SCP-805-JP-1: あいつ、俺があんたらに見せるために描いた絵を消しやがったんだ!
██博士: どのような絵ですか?
SCP-805-JP-1: あんたらの中の誰かさんの似顔絵だよ。
██博士: そう ですか。 それで何故消されたのですか?
SCP-805-JP-1: わかんねぇよ……あいつ何もいわねぇし。 まぁ、あいつがいないとページ中俺の字で埋まっちまうから、いなきゃいけないやつだってのは分かってんだけどよ。その、俺にだって残しておきたいものがあるわけよ。でもあいつはいつも消しちまうんだ。
██博士: 過去にも何度かあったのですか?
SCP-805-JP-1: うん 正直慣れてきてるけどさ。 あんたたちからも あいつに何か言ってやってくれよ。 そしたら仲直りしてやるから。
██博士: 分かりました。 それではそろそろ失礼します。
SCP-805-JP-1: おう。 頼んだぜ。 誰かさん……どこいったのかなぁ。
<記録終了>
終了報告書: SCP-805-JP-1とSCP-805-JP-2は、仲違いを起こすことがあるようです。また、SCP-805-JP-1はこの後しばらくの間、似顔絵の元となった個人の存在を気にしているようでした。
+ インタビュー記録-805-3
- インタビュー記録を隠す
以下のインタビューは、インタビュー記録-805-2の後にSCP-805-JP-2に対して行われたものです。この際、██博士は対象がページ内の染料を消しとることができることに着目し、ページの半分を黒く塗りつぶし、もう半分に文章を書き込むことで会話を試みました。
インタビュー記録-805-3
対象: SCP-805-JP-2
インタビュアー: ██博士
<記録開始>
██博士: 私の言葉がわかりますか?
SCP-805-JP-2: [黒く塗りつぶされたページ周辺を移動している]
██博士: 理解できるなら、そこを使って表現してみてください。
SCP-805-JP-2: なに
██博士: [少し息を整えて筆を持ち直す]あなたは何故、彼の描いた絵を消したのですか?
SCP-805-JP-2: ひとの絵だったから
██博士: どういうことですか?
SCP-805-JP-2: 彼には必要ないの
██博士: 必要ないとは?
SCP-805-JP-2: うるさい
██博士: [十分な黒い面積が無くなったため、再度塗りつぶす] 答えてください
SCP-805-JP-2: お前だってあいつらと同じにしてやりたいくらいよ
██博士: ……あいつら、とは?
SCP-805-JP-2: ここにいたボールペンにマジックペン、修正液にテープ、定規も分度器も、彼の関心を引くやつ全員。
██博士: ……それは、まさか
SCP-805-JP-2: あなたの名前は何?
██博士: [SCP-805-JPから離れ、部屋から退室]
SCP-805-JP-2: 彼が描いたら消してやるから……。
<記録終了>
終了報告書: SCP-805-JP-2の発言は注目すべきものです。もしもSCP-805-JP-2の言ったことが事実だとするのなら、本来SCP-805-JPには、他にもいくつかの筆記用具が描かれていたのだろうと推測されます。
仲違いしているSCP-805-JP-1とSCP-805-JP-2
補遺: 後に███研究員の部屋から、胸部から頭部に当たる部位の"白色部以外"が削りとられた███研究員の遺体3と、周囲に散乱した消しゴムの"くず"のようなものが発見されました。また、███研究員の活動履歴を確認した結果、インタビュー記録-805-2の前日にSCP-805-JP-1と会話を行っていたことがわかりました。この出来事によってSCP-805-JP-2はSCP-805-JP内部に描かれた対象を"削除"することができるのだと判明し、同時に、白色部及び描かれていない対象を"削除"することは出来ないということも発覚しました。以降、SCP-805-JPを扱う職員は顔、及び全身を覆う専用の白色の防護服を着用するように義務付けられました。
Footnotes
1. 親水性がなく、燃焼や衝撃、腐食などに対して強い耐性があることが分かっています。
2. SCP-805-JP-1は「皮をはがされるような痛み」と表現しました。
3. DNA検査の結果本人のものであると判明しています。 また、削られた頭部には、白髪・骨・眼球の白目部分などが残されていました。
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scp-806-jp |
評価: +72+–x
アイテム番号: SCP-806-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-806-JPを用いてSCP-806-JP-1の撮影を行う場合、撮影を担当する職員は実験終了まで会話を行ってはいけません。撮影中に別の職員に意思疎通が必要な場合、筆記で対応してください。SCP-806-JP-Aとなった職員は精神状態によっては終了が許可されています。
SCP-806-JPの作成方法は担当職員またはセキュリティクリアランスレベル4以上職員のみ閲覧可能です。一般人によるSCP-806-JPの作成またはSCP-806-JPと同じ性質を持つ物品の開発が確認された場合、速やかに回収し、SCP-806-JP-Aとなっていない関係者にBクラス記憶処理を施してください。SCP-806-JP-Aとなっている人物は隔離してください。
説明: SCP-806-JPは日立製DZ-MV100をベースに作られたビデオカメラです。SCP-806-JPは作成された当初、SCP-███-JP撮影用のビデオカメラとして試作段階であったため中身の機構や使用素材は通常とは異なります。SCP-806-JPを用いて撮影を行った場合、SCP-806-JP-1と指定される人型実体がビデオカメラに備え付けられたモニタに映り込みます。SCP-806-JP-1の姿は撮影された映像でも確認できます。SCP-806-JP-1はSCP-806-JPを同じ機構と素材で作成した場合でも撮影可能です。人間がSCP-806-JPで撮影しながらSCP-806-JP-1に話しかけた場合、SCP-806-JPを視覚、聴覚、触覚で認識することができるようになります。この条件を満たしたことによりSCP-806-JP-1を認識できるようになった人間はSCP-806-JP-Aと指定されています。
SCP-806-JP-1はSCP-806-JPを用いてのみ確認される人型実体群です。映像ではSCP-806-JP-1の体は黒い靄のようなもので構成されており、身長は90cmから220cm程度に見えます。映像で確認されたSCP-806-JP-1の基本行動には単独で人間の背後10m以内をついてくることが挙げられます。基本行動以外にはつけている人間の顔を覗き込む姿や寝ている人間の上で飛び跳ねる姿が確認されています。一連の行動はSCP-806-JP-Aではない人間に対して害はありません。また、財団施設内をSCP-806-JPで撮影した際、SCP-806-JP-1がついていく人間を不定期に変更している様子が確認されています。
映像内ではSCP-806-JP-1に後ろをつけられた人間は歩いている途中で振り返り、再び歩き出すことが確認されています。この行動の理由を質問したところ、全員が『後ろに何かがついてきていると思い振り返ったが何もいなかったので気のせいだと思った』という旨の主張をしています。SCP-806-JPを用いて市街地を撮影した場合、同様の行動を行う人間が確認されています。
SCP-806-JP-AにはSCP-806-JP-1を視覚、聴覚、触覚で認識できること以外に異常はありませんが、全員がSCP-806-JP-1の増加と話し声を訴えています。SCP-806-JPでSCP-806-JP-Aの周囲を撮影した場合、複数のSCP-806-JP-1が存在しているのが確認されています。SCP-806-JP-Aとなった日数が長いほど周囲にいるSCP-806-JP-1の数は増加していきます。SCP-806-JP-1の話し声は現在観測できていません。SCP-806-JPで周囲の撮影を行ったところ、SCP-806-JP-Aに対してSCP-806-JP-1は人間に認識されていない時の行動以外にも体に触れようとする、周囲を複数で取り囲む、といった行動をします。SCP-806-JP-Aは三週間前後で視覚、聴覚、触覚を使った認識力が著しく低下します。これはSCP-806-JP-Aの周囲に存在するSCP-806-JP-1が増加した事によるものと考えられています。さらに二週間ほどで精神異常が見られますが、睡眠不足によるノイローゼであると考えられています。この段階のSCP-806-JP-Aにはベンゾジアゼピン系睡眠薬であるトリアゾラムの投与が行われますが、現状では投与から1時間以内の覚醒という結果に終わっています。
インタビュー記録806-JP:
対象: 宗竹博士
インタビュアー: 海道博士
付記: 宗竹博士はSCP-806-JP-1の第一発見者です。宗竹博士はSCP-806-JPを用いてSCP-806-JP-1との意思疎通を試みようとした結果、SCP-806-JP-Aになりました。この時点ではSCP-806-JP-Aとなって2週間が経過しています。
<録音開始>
海道博士: こんにちは、宗竹博士。
宗竹博士: こんにちは。今日はよろしくお願いします。
(10秒ほど沈黙)
海道博士: やはりSCP-806-JP-1はこの部屋にいますか?
宗竹博士: ……もちろんだ。博士を認識するのが難しいよ。君、結構大きいのにつけられたね。
海道博士: そうですか。宗竹博士はこのオブジェクトについて何か思うところはありませんか? 何でもいいですから。
宗竹博士: ……これは主観になるけど、彼らに悪意はないんじゃないか?
海道博士: 悪意はない?
宗竹博士: そうだ。彼らを見ていて思ったんだ。彼らにとって私は動物園のパンダと同じなんだ。
海道博士: どういうことですか?
宗竹博士: 私みたいに彼らを認識できる人間が珍しいんだ。だから、たくさん寄ってくる。
海道博士: しかし、オブジェクトのせいで博士は苦しんでいますよ?
宗竹博士: 確かに彼らは常にそこにいて、時々触れたりしてくるよ。でも、私には彼らが小さい子供のように見えるんだ。いや、本当にそう見えるわけじゃない。例えみたいなものだ。最初に接触したとき、驚いたような表情をした後、嬉しそうに笑っていた。何というか、嫌らしい笑いじゃなくて、本当に嬉しい感じの。
海道博士: つまり、彼らは友好的であると。ですが、監視カメラを見ると碌に眠れていないみたいですね。これは彼らが非友好的であることを示すものと考えられますよ。
宗竹博士: たぶん、彼らには眠りという概念がないのだろう。彼らが眠るときは死ぬ時だけ。起こされたときはいつも安心したかのような表情をしていたからそう思っただけだが。もう少しいいかい?
海道博士: 構いませんよ。
宗竹博士: ありがとう。彼らに関して気づいたことなんだが、彼らは見えないだけでどこにでもいる。大通りにも、財団施設にも。もしかしたら人類が生活する範囲ならどこにでもいるんじゃないかな。それと我々は実のところ彼らを知覚はしているように思うんだ。
海道博士: 根拠はありますか?
宗竹博士: 記録映像を見ていると、気配を感じて振り返った者は全員がオブジェクトと目を合わせてるように見えた。もちろん、これも私の主観だ。
海道博士: 博士の意見は分かりました。そろそろ時間ですのでインタビューを終了します。
<録音終了>
付記: 宗竹博士のいる治療室は彼の入院以降、何かがたくさんいると言う報告がされており、海道博士も入室前後で同様の主張をしています。SCP-806-JPで室内を撮影したところ、SCP-806-JP-1で埋め尽くされていました。
事案報告806-JP-1: 宗竹博士が自身の病室で死亡しました。以下は死亡当時の病室の映像記録です
付記: インタビューを行ってから1か月が経過しています。当時、宗竹博士の精神は重度の錯乱状態にありました。記録映像は通常の監視カメラで撮影した様子ですが、SCP-806-JPでは部屋中にSCP-806-JP-1がいたため宗竹博士の姿は確認できませんでした。
<記録開始>
17:28 「一人にしてくれ」と何度もつぶやいている。当時の宗竹博士は呟いている姿が監視カメラと小型マイクに記録されている。
17:29 宗竹博士が呟くのを止める。
17:30 自身の指で目と耳を潰す。この段階で監視していた職員が警備員を入室させようとしたが、様子がおかしいことに気付いたため部屋の外で待機させる。
17:32 自身の血で床にVの字型の図形をいくつも書く。また、会話しているようであったが小型マイクには記録できなかった。
17:38 何かを受け取る動作をする。
17:39 受け取ったものを自身の首に突き刺す。
17:40 監視していた職員の指示により警備員が部屋に入る。警備員が止める前に宗竹博士は出所不明の包丁で自身の首を刺し、首を裂いていく。
17:41 応急処置を開始する。
17:43 医療スタッフが到着する。
17:45 宗竹博士の死亡が確認される。
<記録終了>
終了報告: 宗竹博士の直接の死因は失血死です。包丁の他に首にボールペンが刺さっていたのが確認されています。このボールペンは部屋の外で待機していた警備員の物であることがわかっています。しかし、この警備員と宗竹博士の接触はこの事件が初めてであることが確認されています。また、包丁は厨房にあったものであり、事件後紛失届が出されています。一連の状況からSCP-806-JP-1が持ち込んできたものではないかという推測がなされていますが、この現象は宗竹博士の事例のみでしか確認されていません。
事案報告806-JP-2:
宗竹博士の遺体は火葬されました。火葬されるまでの間、周囲に三角定規や鉛筆、Vの字型に折り曲げられた針金等が出現しています。出現した物品で持ち主が特定できたのは39個中14個です。これらの持ち主は全員が気づいたら無くなっていたと主張しています。
SCP-806-JPで撮影した宗竹博士が火葬されるまでの様子において宗竹博士の周囲には多くのSCP-806-JP-1が集まっていました。宗竹博士の周囲でたたずむSCP-806-JP-1の他にその上で飛び跳ねるSCP-806-JP-1も映像には記録されています。火葬後、SCP-806-JP-1は参列者についていく姿が確認されました。
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scp-807-jp |
評価: +42+–x
アイテム番号: SCP-807-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-807-JPはサイト81██の低脅威度物品保管庫に収容されます。実験等を目的として使用する場合、担当職員に申請してください。
財団外で発生したSCP-807-JP-2が発見された場合、速やかに収容してください。経過観察の後に記憶処理が施され、解放されます。
説明: SCP-807-JPは自殺防止ポスター████枚です。回収時、日本各地に無許可で貼られていました。特に、SCP-807-JPの回収が多い地点は自殺の発生件数が多いことが判明しています。SCP-807-JPは特定の条件を満たした人物に黒い蛇型実体(以下、SCP-807-JP-1)を認識させます。
SCP-807-JP-1を認識する人物(以下、SCP-807-JP-2)はその多くが自殺を試みた、もしくは試みようと考えています。しかし、自殺を試みようとした経験がある人物や自殺を考えていると主張する人物にSCP-807-JPを見せた場合、必ずしもSCP-807-JP-1を認識できるわけではありません。この理由は現在調査中です。
SCP-807-JP-1は先述の通り、黒い蛇の姿をした実体です。SCP-807-JP-2の報告1では、基本的には全ての人間に1体ずつSCP-807-JP-1が取り付いており、その姿は個体ごとに異なります。SCP-807-JP-1は自身が取り付く人間の身体上を自由に移動します。現在までに周囲の物品に触れる等の行動は報告されているものの、完全に身体から離れたという報告はなされていません。SCP-807-JP-1の体は物体を透過するため、通常SCP-807-JP-1に対し危害を加えることはできません。SCP-807-JP-1は自身が取り付く人間に関して理解があるような振る舞いを見せます。実験では、取り付いている人間と常に行動をしていたとしか思えないような結果も複数残されています。SCP-807-JP-1は基本的に自身が取り付く人間に対して危害を加えませんが、死の直前に噛みついたという報告がいくつもなされています。噛みついたSCP-807-JP-1は消失が確認されています。
長期間認識し続けたSCP-807-JP-2の多くが自身に取り付くSCP-807-JP-1を『自身の死』であると認識しています。しかし、そのように考える理由に明確な根拠はありません。また、自身の死であると認識しているにもかかわらず、SCP-807-JP-1に対して恐怖を感じていません。全てのSCP-807-JP-1は最終的にSCP-807-JP-2から認識されなくなります。原因は不明です。
補遺1: 以下は財団で雇用するSCP-807-JP-2を用いたSCP-807-JP-1の観察において特筆すべき点をまとめたものです。
観察記録1~6
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観察記録807-JP-1
場所: Dクラス職員用食堂。
内容: テレビを試聴していたSCP-807-JP-1たちを観察したもの。この報告では、明確に落胆している様子の個体と喜んでいる個体が確認される。テレビ番組はニュースだったが、丁度占いを行っていた。取り付いていたDクラス職員を調査した結果、占いの結果によりこのような反応を見せたのだと考えられる。なお、この反応はよく観察されるものである。
考察: SCP-807-JP-1には感覚だけではなく、明確な知性があると考えられる。また、行われていた占いは血液型占いであることから、自身が取り付く対象に関する知識も有していると思われる。
観察記録807-JP-2
場所: 財団託児施設
内容: SCP-807-JP-1たちが交流している姿が確認される。1匹の大きい個体が中心となり、小さい個体たちに話をしているようだった。観察したSCP-807-JP-2は保育所のように見えたと報告している。
考察: SCP-807-JP-1たちの行動は人間を基にしていると考えられる。しかし、報告内容から推測するに、単なる模倣ではないと思われる。
観察記録807-JP-3
場所: 職員用トイレ。
内容: 個室トイレから出てきた職員を引き止めようとするSCP-807-JP-1が確認された。調査の結果、この職員はトイレを流し忘れていた。
考察: SCP-807-JP-1の知覚は取り付いている人物に依存したものではなく、SCP-807-JP-1自身が有するものである。また、上記の様子からSCP-807-JP-1は取り付いている対象が認識していない事象でも認識することがあると考えられる。
観察記録807-JP-4
場所: サイト81全域。
内容: 日中、昼寝を行っているSCP-807-JP-1が多数確認された。
考察: 観察の結果、危険な場所にいるSCP-807-JP-1は睡眠時間が減少する傾向にあるが、逆に安全な場所にいるSCP-807-JP-1は睡眠時間が増える傾向がある。SCP-807-JP-1が安全であると認識する基準として、取り付いている人物が死の危険にあるか否かであると考えられる。
観察記録807-JP-5
場所: サイト81██。
内容: SCP-807-JP-1たちが会話を行っているような様子が確認された。これらの個体は異なるオブジェクトの調査チームの参加者に取り付いていた。このオブジェクト実験において、直接接触するDクラス職員にはこのオブジェクトの危険性が伝えられていないにも関わらず、SCP-807-JP-1は警戒を行っていた。
考察: SCP-807-JP-1たちは情報交換を行うことで取り付く人物に降りかかる危険を把握しているようである。
観察記録807-JP-6
場所: 寝室。
内容: 午前1時から午前3時にかけて、眠っている全てのSCP-807-JP-1が直立の姿勢で同じ方向を向く。その方向に何があるのかは不明。
考察: このようなことを行う理由は不明。現在調査中である。
補遺2: 以下はSCP-807-JP-2に行われたインタビュー記録です。
インタビュー記録807-JP
対象: 糸識氏
インタビュアー: 星博士
付記: 糸識氏は財団がSCP-807-JPの収容初期に偶然発見したSCP-807-JP-2です。糸識氏を除いて現在までに財団外で発生したSCP-807-JP-2は収容されていません。この理由はSCP-807-JPの特異性に起因していると考えられています。
<録音開始>
(SCP-807-JPに関する簡単な確認のため省略)
星博士: ……では、お願いします。
糸識氏: はい。……あのときの私は、……死ぬつもりでした。
(糸識氏は星博士に視線を移す)
星博士: ……話しにくい事でしょう。構わず続けてください。
糸識氏: 助かります。私は……、首を吊ろうとしていたんです。彼、あなたたちの言う黒い蛇を最初に見たのはその時でした。あの時は驚いたせいもあって、叫んでしまいました。それで、近くにいた人に見つかったんです。
星博士: その方にはSCP-807-JP-1のことを話しましたか?
糸識氏: もちろんです。でも、すぐに見えていないことはわかりました。むしろ、後ろにかけられたロープの方に注意を向けているようでした。
糸識氏: 私は詮索される前に逃げました。逃げてる間にも何回か死のうとしましたが、その度に彼が邪魔をしてきました。体を通り抜けるせいで取ることもできず、気づけば家の前でした。その日はそのまま寝たのを覚えています。
糸識氏: 夜中に一度目を覚ましたとき、彼は見張るように私を見ていました。それにどことなく心配しているようにも見えました。なんとなく、『今日はもうしない』と言ったら、安心したのか眠り始めました。
糸識氏: 私は嘘をつきました。風呂桶に水をためてから台所に行って、包丁を手にしました。
糸識氏: でも、また彼が邪魔をしてきた。
糸識氏: 彼は包丁をもった手と逆の手首に巻き付いてきました。そして、顔は私の方を向いていました。私は彼が『止めろ』と言っているように感じました。……それに、震えてもいました。目には涙を浮かべて。包丁で刺されても平気なのは知っているはずなのに。
星博士: もしかして、それが自殺を止めた理由ですか。
糸識氏: いえ。その日の自殺はやめましたが、その後で何回かやろうとしました。どうせいつか諦めると思ったんです。でも……。でも、彼は……。
(糸識氏は右腕に視線を向ける)
糸識氏: ……彼はいつまでも邪魔をしてきた。
(数分間の沈黙)
糸識氏: 博士、黒い蛇が各個体で違うことについて話しましたよね。
星博士: ……ええ。
糸識氏: 私が自殺を止めたのは……。彼の体についている傷が、私の体についているものと同じだと気づいたからなんです。たぶん、私が大怪我をすれば彼の体にも同じような跡ができると思ったんです。実際、自殺に失敗して大けがを負ったことがあります。
糸識氏: でも、彼は最後まで私を責めなかった。きっと、『この傷はお前のせいだ』と責めていてくれたら楽だったんでしょう。でも――。
糸識氏: でも、彼はその傷も含めて私を肯定してくれていた。こんな私をです。こんな、私ですら見捨てた私を最後まで見捨てようとしなかった。
糸識氏: ずっと、あの時から、今でも私を肯定してくれている。私を自慢に思ってくれている。
糸識氏: そんな彼を私は失望させたくない。彼がどこかに行ってしまいそうで。……今はそれが一番怖い。
星博士: 糸識さん、一度落ち着きましょう。
糸識氏: す、すいません。
(糸識氏は水を飲んで興奮を落ち着けているようだった。数分後、インタビューを再開する)
糸識氏: すいませんでした。もう、大丈夫です。
星博士: 気にしないでください。きっと、それだけ大切な存在なんでしょう。私だってそういうことはありますから。
糸識氏: ありがとうございます。
星博士: では、話を変えましょうか。糸識さんは黒い蛇、つまりあなたが彼と呼ぶ存在は何だと思いますか?
糸識氏: 彼はそう……、『私自身の死』だと思います。言外に、ではありますが、そう感じています。
星博士: 怖くはないんですか?
糸識氏: 彼は死であって、死神じゃない。死神だったら、きっと自殺を止めなかったでしょうし。間違っても四六時中私が死なないか見守るなんてことはしないでしょう。
糸識氏: ……自殺を止めてから、彼の仲間をたくさん見てきました。
糸識氏: 自殺する人間の蛇は泣き叫んでいて、死ぬ直前までその人が死なないように足掻いているように見えました。他の蛇たちに助けを求めていて、他の蛇たちも助けようとしていて。死ぬ直前は……。私は……、私は……、あと少しで彼をあんな風に……。
(数分間の沈黙)
糸識氏: ……1番記憶に残っているのは、死んだ祖母の蛇です。祖母が亡くなる直前、今まで見たどの蛇よりも胸を張っていたように見えたんです。誰よりも祖母の生き方を誇っている。そう感じました。
糸識氏: 彼にも、同じように胸を張ってもらいたい。間違ったこともあるが、自慢の相棒だと。最後まで私が生きたことを誇りにしてほしい。だから私はもう死ねません。最後まで、生きていきます。何より――。
星博士: 何より?
糸識氏: 私を見張っていたせいで彼は寝不足ですからね。安心して、眠って欲しい。
<録音終了>
追記1: インタビューを行った半年後、糸識氏は『SCP-807-JP-1が見えなくなり始めた』と報告してきました。この2週間後、糸識氏はSCP-807-JP-1を完全に認識できなくなりました。見えなくなった当初の糸識氏は取り乱した様子でしたが、すぐに現状を受け入れたようでした。財団は糸識氏がSCP-807-JP-1を認識できなくなった1か月後に記憶処理を行い、解放しました。現在、糸識氏は財団フロント企業に勤務しています。
追記2: 他のSCP-807-JP-2に糸識氏のSCP-807-JP-1の様子を報告してもらいました。結果、SCP-807-JP-1に不審な点は見当たらず、昼寝をしている時間が増えた以外に変化は確認されませんでした。
補遺3: SCP-807-JP-1の存在を証明するために行われた実験です。
実験記録807-JP
参加者: D-807-JP-1及びD-807-JP-2。
実験責任者: 星博士。
付記: 今回参加したD-807-JP-1はSCP-807-JP-2だが、D-807-JP-2はランダムに選ばれた通常のDクラス職員である。また、D-807-JP-1とD-807-JP-2には面識がないのは事前の調査で確認済みである。
実験内容: D-807-JP-1にD-807-JP-2のSCP-807-JP-1を観測してもらいながら、D-807-JP-2に質問を行う。D-807-JP-2とSCP-807-JP-1が別々に回答してもらい、結果を比較する。D-807-JP-1にはSCP-807-JP-1の答えを書き留めてもらう。
SCP-807-JP-1には回答ができるように平仮名と数字、そして「はい」と「いいえ」が書かれた紙を与え、指し示してもらう。なお、虚偽がないよう、近くには2名のSCP-807-JP-2が監視している。
<録音開始>
星博士: では実験を始めます。
D-807-JP-2: こっちは大丈夫だ。……本当にこのこっくりさんの紙みたいなやつは関係ないんだな?
星博士: あなたには関係ありません。D-807-JP-1は大丈夫ですね?
D-807-JP-1: はい。蛇の方も準備できています。
D-807-JP-2: 蛇って、本当にいるのかねえ。
星博士: D-807-JP-2、それを確かめるための実験です。
D-807-JP-2: 了解です、博士。
星博士: じゃあ、まずD-807-JP-2の誕生日は?
(両方とも紙に「8月24日」と書く)
星博士: 両方とも正解です。
D-807-JP-2: 博士、簡単すぎるだろ。もっと別のやつにしようぜ。
星博士: では、初恋の相手は?
D-807-JP-2: いいね。それ。
(両方の解答が異なる。星博士がD-807-JP-1の回答をD-807-JP-2に見せる。なお、この時D-807-JP-1は解答用紙に何かを書いている)
D-807-JP-2: ……嘘だろ?
星博士: その反応、こちらが正解なようですね
D-807-JP-2: 博士、俺が悪かった。何かのトリックだと思ったんだ。
星博士: 今回は見逃しましょう。ただし、次は今、D-807-JP-1が書いている失恋までの顛末を読み上げます。
(D-807-JP-2にその解答用紙を見せる)
D-807-JP-2: ……あってるから、本当にそれはやめてくれ。本当に。
星博士: では、次にいきましょう。そうですね……。そうだ。あなたがここで働き初めてどれくらい経っていますか?
D-807-JP-2: それでいいのか?
星博士: 構いません。
(両方の解答は異なっていた。D-807-JP-2は「5日」と解答。一方、D-807-JP-1は「3ヶ月」と解答した)
星博士: ……両方とも正解です。
D-807-JP-2: だから、簡単すぎるって。
星博士: D-807-JP-1、蛇は本当にそう答えたんですね。
D-807-JP-1: はい。そのまま書きました。
星博士: わかりました。実験は以上です。協力ありがとうございました。
D-807-JP-1: 待ってください。蛇が何かを言いたいみたいです。
星博士: 見せてください。
(D-807-JP-1から紙を受け取った星博士の様子が変化する)
<録音終了>
終了報告1: 今回の実験によりSCP-807-JP-1が存在しているのはほぼ確実となりました。しかし、SCP-807-JP-1が記憶処理を行う前のD-807-JP-2の記憶も有していた点は危惧すべきものです。SCP-807-JPは全て回収しましたが、SCP-807-JP-2は全員収容できていない可能性があります。
終了報告2: 今回の実験参加者は問題なく全員終了しました。
Footnotes
1. 以降のSCP-807-JP-1に関する記述は実験に協力したSCP-807-JP-2の報告によるものです。
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scp-808-jp |
評価: +36+–x
収容前のSCP-808-JP
アイテム番号: SCP-808-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-808-JPは事実上移動が出来ないため、周囲5mを工事用フェンスとブルーシートで覆い、一般人の立ち入りを禁じて下さい。周辺住民へは、カバーストーリー「橋老朽化のため立ち入り禁止」を流布しています。SCP-808-JP上を渡る必要がある場合は必ず一人ずつ渡り、やむない理由で複数名同時に渡る場合、必ず生物学的に同性で編成された人員で渡って下さい。
説明: SCP-808-JPは、██県██市内の██用水路に架かる橋です。SCP-808-JP上を、男女が20cm以内の距離を保ちながら通ると異常性が発現します。異常性に暴露した男女(以下、被験者)はお互いに関する事柄以外に意識が向かなくなり、周囲に対し無関心になります。さらに、被験者は必ずSCP-808-JP上で何らかの事故に遭い、男女どちらかが身体的障害を伴う重傷を負います。現在までに、この事故が直接原因となる死亡事案は発生していません。
3名以上で同時に渡る場合、最初に渡った人物から順にペア判定がされます。男、男、女、女、男 で渡った場合、男、[男、女]、[女、男]のようにです。また、心の性別は考慮されず、生物学的に異性であるかが考慮される事が判っています。
SCP-808-JPは、██用水路へ架けられている一番古い橋へ特性が移動します。その為、全ての橋の破壊も検討されましたが、近隣住人への利便性から却下となっています。
以下は、財団での実験及び、収容までに記録された事案の一部です。
発生日
被験者
概要
19██/12/██
近所に住む男女のカップル
男性がバランスを崩し、用水路へ転落。2時間後救助されるも、脳への酸欠状態が長く左半身に麻痺。
19██/7/██
近所に住む男女
前から来る軽トラックに気づかず、正面から衝突。女性側が腰椎を粉砕骨折し、下半身不随に。軽トラック側も前から来る男女に気づかなかったと証言あり。
19██/10/██
近所に住む兄妹
転んだ妹をかばい、兄が頭部を欄干へ強打。意識不明の重体。
19██/12/██
近所に住む母子
後ろからのバイクに気づかず、母親が接触し転倒。そのまま髪の毛を後輪に巻き込まれ、橋から出て以降も引きずられる。頸椎を骨折し、全身麻痺。
20██/8/██
旅行へ来た夫婦
激しい口論となり、夫が妻を殴る。妻は用水路へ落下し頭部を強打。意識はあるが顔面に麻痺。
20██/9/██
D-818081とD-818082
D818082の右肩へ、鹿狩り中の流れ弾が当たる。医療処置を施すも芳しくなく、右腕全体が壊死。なお、発砲された場所からは使用された猟銃の飛距離を優に超えていた。
20██/9/██
D-818085とD-818086
[編集済]。D818085は両足を失う。
以降の実験は中止となりました。
補遺1: 近隣住民の証言によると、用水路が出来て橋が架かった当初より不可解な事故は発生していた事が判りました。これは地元図書館の郷土史、地方紙にて裏付けが取られました。
補遺2: 郷土史の資料により、最初に架けられた橋の橋脚へ「愛の重さ」と刻まれていた事が判りました。現存はしていないため、関連性について追跡調査は出来ていません。
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scp-809-jp |
評価: +34+–x
アイテム番号: SCP-809-JP
オブジェクトクラス: Thaumiel
特別収容プロトコル: SCP-809-JPはサイト-81██のレベル5収容室に収容されます。SCP-809-JPの起動にはO5過半数の許可が必要となります。必要と判断された対象者には限定的にセキュリティクリアランスレベル5/809-JPが与えられます。すべての行動が終了次第対象者にはクラスH記憶処理が施されます。
説明: SCP-809-JPは任意の異常物品(以下SCP-809-JP-A)を発生させることの出来る機械です。SCP-809-JPは特異性を制御する装置と、2つの人間1人が入ることができる専用ポッド、そしてSCP-809-JP-Aが発生するケースで構成されています。また制御装置にはSCP-809-JP-Aのリストを閲覧できるディスプレイが設置されています。
ディスプレイ上で発生させたいSCP-809-JP-Aを選択すると、それに必要な人物(以下対象者)が表示されます。対象者をポッドに入室させSCP-809-JPを起動させると██分から██時間が経過後に選択されたSCP-809-JP-Aがケース内に発生します。このケース内の環境は選択されたSCP-809-JP-Aが最低限生存、存在可能な環境に逐一変化します。
+ 当該文書の閲覧にはセキュリティクリアランスレベル8が必要となります
- 当該文書を閲覧
SCP-809-JP-Aとはいわばあなた達が言うところのJokeオブジェクトということになります。このオブジェクトは本来我々の世界に存在するはずのないJokeオブジェクトを無理矢理発生させることの出来るものになっています。対象となる人物というのはその呼び出したいJokeオブジェクトの執筆者のアバターキャラになります。
仕組みを説明しますと、まず我々の世界とJokeの世界の両方からアクセスが可能な稀有な存在であるSCP-2615-Jをこの2つの世界を結ぶ特異点とします。そしてこの報告書とそれぞれの世界をbkb-001の虚構世界と現実世界を結ぶ特異性でリンクさせることにより2つの世界を直接的に接触させます。これによってこちらの世界と向こうの世界の職員を交換することができます。そうして呼び出したJoke世界の職員とそれに呼応する存在、今回の計画ではあなたになりますが、あなた方をSCP-3999によりリンクさせることによりあなたが我々の世界でもJokeオブジェクトを発生させられるようにします。事が終わればあとは元に戻すのみです。
以下はSCP-809-JPの起動記録です。
起動記録014
対象者: エージェント・カナヘビ
SCP-809-JP-A-014概要: 10代と見られる日本人女性が発生。SCP-809-JP-A-014は突然の事態にひどく狼狽したものの、エージェント・カナヘビを見た途端に沈静化した。その後SCP-809-JP-A-014は次第に強気になっていき、████████1の台詞を模した言動を繰り返した。現在は記憶処理の後財団の養護施設へ移送。
起動記録240
対象者: エージェント・ヤマトモ
SCP-809-JP-A-240概要: ██代と見られる日本人男性が発生。SCP-809-JP-A-240は頭髪が存在しないこと以外に異常性は見られなかったが、職員がその事に言及すると存在しないことを0本存在すると言うようになった。現在はレベル0職員として事務職に就いている。
起動記録710
対象者: 桑名博士
SCP-809-JP-A-710概要: ██████個の武道の術が書かれた巻物が発生。職員の1人がその中でも比較的容易なものを試すと実験室の壁に半径2mの穴が開く事例が発生。現在はサイト-81██に収容中。またSCP-809-JP-A-710の技術を習得させた対Keter級オブジェクト専用の機動部隊を編成中。
起動記録999
対象者: エージェント・許山華
SCP-809-JP-A-999概要: 人型のSCP-999が発生。SCP-809-JP-A-999は職員に対して全速力で接近してから勢い良く跳躍し、3本の偽足で無差別に強く抱きしめ始めました。この行為について職員達は肯定的な感想を主張しています。現在はサイト-81██に収容中。またSCP-682の無力化を目指したクロステストが検討されています。
+ 当該文書の閲覧にはセキュリティクリアランスレベル8が必要となります
- 当該文書を閲覧
うっすらとでも分かっていただけたかと思いますが、これは過去に行った起動記録の中からSCP-014-JP-J、SCP-240-JP-J、SCP-710-JP-J、SCP-999-JP-Jを発生させたものを抜粋したものになります。おそらくこれで今回あなたにやっていただきたいことが分かっていただけたと思います。
+ 当該文書の閲覧にはセキュリティクリアランスレベル8が必要となります
- 当該文書を閲覧
何故このオブジェクトがThaumiel指定されているか、それはJokeオブジェクトというものが我々にとって非常に有用であると判断されたからです。
ご存知の通り我々の世界は常に理不尽で溢れかえっています。明日世界が存在するかも分からない、そんな中で偶然にもこの存在を知った我々は驚きました。Jokeオブジェクト自体のその不条理さ、そしてその絶大なる特異性に。
当初我々は自身の世界のみで発生させられると考えていました。しかし我々が干渉できるのはあくまで我々の世界のみ、Jokeの世界はそもそもの法則が違っていたのであなた方でも我々の世界にJokeオブジェクトを発生させられなかった。
なので逆転の発想といいますか、それではあちらの人物を呼んでしまえばいいのではないかと。そして試したところその考えは大当たりです。幸いあちらの人々はノリの良い方ばかりなので突然の事態にもなんなく対応されました。
なぜこのような話をしているかと言うと、今回はあなたににご協力をお願いしたいのです。あなたの書かれたオブジェクトは非常に有用であると判断されました。その他の準備は整っています。是非ともよろしくお願いします。
御壁宅四
P.S. この計画は正直かなり難航しています。始まってからもうかれこれ14回も見直しされているほどです。もしよろしければあなたには計画の見直しについてのご意見もいただけたら幸いです。
Footnotes
1. 20██年に放映されたテレビアニメ。
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scp-810-jp |
評価: +50+–x
アイテム番号: SCP-810-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-810-JPはサイト-81██の防音加工が施された標準中型動物収容室のゲージ内で収容されています。SCP-810-JPに接する職員は、防音処理が施されたフルフェイス型ヘルメットの着用が義務付けられています。
説明: SCP-810-JPは全長60~80cm、トラツグミ(学名:Zoothera dauma)に類似した外見を有する大型の鳥類です。SCP-810-JPは20██年現在32体存在しており、一般的な鳥類の飼育法で管理されています。SCP-810-JPはトラツグミおよびオオトラツグミ(学名:Zoothera dauma amami)には見られない非常に発達した舌筋を有しています。
SCP-810-JPは、他生物の鳴き声を精巧に模写することが可能です(以下、模写音と表記)。SCP-810-JPの知能は高度で、対象となる生物の声を繰り返し聞くことで、鳴き声を習得することができます。
SCP-810-JPは模写音の習得対象とする生物にはある一定の条件があり、オブジェクトにとって危険性が高く、敵対的な生物の鳴き声を対象とする傾向があります。SCP-810-JPはアラーム音や動物の鳴き声を録音したものは習得出来ませんが、生物の皮や骨を素材とした楽器の演奏音であれば、その音を模写することが可能です。SCP-810-JPは習得した模写音を同種間や子の前で発し、教え合うなどの行動が確認されています。
SCP-810-JPは多くの場合、外敵が自身の周囲に存在する状況や、身の危険を察知した際、模写音を発します。SCP-810-JPの模写音を聞いた人間を含む生物は、習得元となった生物をイメージする想起現象と認識障害を発症します(以下、模写音を聞いた生物をSCP-810-JP-Aと記載)。SCP-810-JP-Aによって発生する想起現象は、模写された対象物の生物の外見を知らない状態や、絶滅などの理由により存在しない場合でも認識することが確認されています。
認識障害による影響はSCP-810-JP-AにSCP-810-JPを視認させると、オブジェクトをオオカミ・██カッコウ・白い笛といった物体と認識し、SCP-810-JP-Aに白い笛を視認させると、それら物体をSCP-810-JPと認識するといった置換的な作用をもたらします。SCP-810-JPの認識障害は模写音の対象となった生物や物体に限定されています。
置換的な認識障害のほかにSCP-810-JP-Aは、SCP-810-JPと認識した対象物の声・音に対して異常な興味を抱きます。SCP-810-JP-Aは対象物の声や音を聞くため、苦痛や暴力的な手段を用いて音を発させようと、積極的に活動します。SCP-810-JP-Aに変化した被験者に異常行動の活動理由について質問したところ、対象物の声・音をSCP-810-JPが本来持つ鳴き声(以下、地声と表記)と認識し、「未知の鳥(SCP-810-JP)の正体を明かすため行動する」と主張しました。SCP-810-JP-Aは対象物に物理接触を行った時点で認識障害から脱しますが、対象物が声・音を発した瞬間、認識障害と異常な興味が再発し、最終的に対象物が破壊/死亡するまで暴力的な行動を行ないます。
SCP-810-JPは地声を発した場合、他生物(模写音を聞いたSCP-810-JP-Aも該当する)に上述した想起現象とSCP-810-JPに対して異常な興味を引き起こすことから、オブジェクトの模写音は、他生物の注意を自身から逸らす為に使用されていると考えられています。なお、SCP-810-JP-Aに生じた全ての異常な効果は、SCP-810-JP-Aが死亡するまで恒久的に持続します。
SCP-810-JPは財団の確認する限りでは、ニホンオオカミ(学名:Canis lupus hodophilax)の遠吠えと██カッコウ(学名:████████)の鳴き声を習得していました。ニホンオオカミはSCP-810-JPを主な食料供給源とし、██カッコウはカッコウ科の持つ托卵の習性によりSCP-810-JPのヒナが巣から放り出され死亡させることから、双方は外敵とみなされ習得されたものだと推測されています(白い笛については、補遺-1を参照して下さい)。
2種の絶滅動物は森林伐採・密猟・[削除済]等の理由により個体数が減少するに従い、オブジェクトは2種の模写音の発声頻度が低下していきました。19██年からSCP-810-JPの模写音は、アモイトラ(学名:Panthera tigris amoyensis)の骨を素材にして製作された笛の音に限定されています。
補遺-1: SCP-810-JPは18██年、蒐集院から押収したオブジェクトの1つです。押収文献の内容は、一般的に平家物語や源平盛衰記として知られる「鵺退治」の話と類似していますが、模写音や認識障害等、異なる点が認められています。
押収文献(一般的に知られる「鵺退治」とは異なる箇所を抜粋)
のおあある とをある びやうびやう のおわある
はたた様のいかづちを恐れ、くわばらから、鵺の如き鳥の大犬の真似吠え響きけり
件の怪鳥、獅子の頭、猿の胴、大犬の足、二又の蛇の尾を持つと伝わる
弓張月の丑三つ時、矢を虚空に射(い)り、ふりふり落ちたその姿には
獅子頭(ししがしら)や双頭の蛇尾など無く
ほろうけん ぼおうけん ほほう しづしづやんや
おもむき深き声で鳴く、名も知らぬ死路の鳥がいるばかり
押収文献の詳細な情報によるとSCP-810-JPは、[編集済]時代末期ごろから異常性を有していたことが判明しています。[編集済]時代当時の蒐集院はSCP-810-JPが人間の声を模写した場合の影響を想定し、大規模な捕獲作戦を実行。捕獲作戦の効果的な手段として、SCP-810-JPの模写音と対象物の区別をつけるため、日本に生息しないトラの素材を用いた笛の音を意図的に習得させ、その模写音とオブジェクトの視認時に生じる認識障害を目印に捕獲作戦を行っていました。SCP-810-JPが笛の音を習得し易くするため捕獲員は、オブジェクトに矢や石等を投擲しています。
SCP-810-JPは[編集済]時代当時に習得したと推測される笛の音の模写音を発します。しかし、アモイトラの骨を元に製作された笛は3つ存在しているものの経年劣化と[削除済]によって著しく破損しており、楽器として機能する状態ではありません。また20██年現在、アモイトラは絶滅した可能性が強く疑われており、██年以内にSCP-810-JPは模写音を全喪失する可能性が指摘されています。
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scp-811-jp |
評価: +48+–x
アイテム番号: SCP-811-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-811-JPは、サイト-81██の低脅威度物品保管ロッカーに、密封機構の付いたポリエチレン袋に入れた状態で収容します。ロッカーの周囲及び内部は、冷暗状態を保って下さい。実験の際はDクラス職員を用いて行って下さい。また実験後のDクラス職員(SCP-811-JP-1)は、特別な事由のない限り終了措置などは必要としないため、他のDクラス職員と同様の生活及び職務を行わせて構いません。ただし、他のSCPオブジェクトの実験などに関わる場合、それが歯や口腔内への特別な影響がないものであることを確認した上で参加させて下さい。
(201█/7/██追記): 収容以前にSCP-811-JPを摂食しSCP-811-JP-1と化した一般人には継続的な監視を行い、歯に関する異常があったという動きが見られたら直ちに研究チームへの通報と当該人物の確保を実施して下さい。また、実験に参加したDクラス職員は実験後、SCP-811-JP摂取から28時間が経過するまで簡易的拘束を行い、歯のブラッシングをさせないよう監視して下さい。その後、当該職員に総入れ歯を支給し、監視を続けつつ通常業務に復帰させて下さい。
説明: SCP-811-JPは、一般的な銀紙と、それを更に覆う紙製の帯によって包装された、板状のチューイングガムです。見た目は一般的に市販されているチューイングガムと同様の形状及び大きさで、合計117枚が現在、サイト-81██に収容されています。10枚入りパックの紙容器には『歯を鍛える!スパルタガム』と印刷されており、別の面には『歯の健康を守りたい、丈夫な歯を手に入れたいあなたへぴったりのガムです。100歳まで自分の歯で食べましょう!』『歯の健康のコツは、自分の歯について知ることと、必ず毎日歯磨きすること!』などといった文章が確認されています。個々の包装紙は全て水色の無地であり、SCP-811-JPを直接包む銀紙も同様に無地です。これらの包装用材に異常な点は見られません。
SCP-811-JPの特異性は、これを口腔内に入れ、板状であった形状を完全に留めなくなるまで咀嚼した人物(以下、被験者と表記)に発生します。ほんの僅かでも元の形状を残す部分があったまま口腔内から出したり、そのまま飲み込んだ場合、異常性は発揮されません。
被験者が完全に原型を留めなくなるまでSCP-811-JPを咀嚼し、それを吐き出す、または飲み込むなどして口腔内から取り除いてから1分後、被験者の口腔内から全ての歯が瞬時に消失し、それと同時に『被験者が本来持っていた、通常の歯の最大本数』と同じ数のヒトの歯が、全て抜け落ちた状態で口腔内に出現します。これらの歯は同一の物ではなく、ヒトの口腔内に生えている、全ての種類の歯が必要な数だけ存在します。被験者が虫歯や外的要因によって歯を失っていたとしても、口腔内には失われた分も含めた本数の歯が出現します。さらに、被験者にいわゆる『親知らず』があった場合は、親知らずに当たる歯は出現せず、完全に消失します。これは歯茎上に露出せず、完全に歯茎の中に埋没していた場合でも同様です。
また、被験者の歯茎には、歯の生えていた部分に、歯の埋まっていた部分と同等の大きさの空洞が発生します。そのため、当オブジェクトを摂取した被験者は、あたかも被験者の歯がその場で全て抜け落ちたかのように錯覚しますが、出血や痛みなどは発生しません。被験者が虫歯や外的要因によって歯を失ってから時間が経過しており、既に歯茎が再生され空洞が存在していなかったとしても、この空洞は新たに発生することが確認されていますが、親知らずが生えていた部分には空洞は発生しません。
発生した歯及び空洞は時間が経過しても消失、復元されることはなく、その組成は通常のものと変わりありません。
歯茎に発生する空洞は全て、その位置に生えて然るべき種類の歯が、過不足なく挿し込める大きさです。口腔内に発生した歯を、正しい位置の空洞に、正しい向きで挿し込むと、微かな手応えと共に歯が完全に固定されます。間違った歯を挿し込む、または向きを間違えたまま挿し込むことを試みると、被験者は痛みを訴えますが、これは硬質な異物を歯茎に挿し込んだことに起因するものです。ただし、挿し込む歯や向きを一度間違えると、それまでに固定されていた全ての歯が歯茎に押し戻され、抜け落ちます。再挿入は可能です。
全ての歯を正しい位置及び向きで挿し込み終えた被験者を、SCP-811-JP-1と呼称します。
SCP-811-JP-1となった被験者は歯が異常強化され、物理的衝撃による破損や化学薬品による腐食といった、歯の損傷やそれに伴う痛みを一切受けなくなります。また、本来であれば歯に損傷を負う程の物理的衝撃を加えられた場合も、衝撃は感じるものの幾分緩和された状態になると報告されています。さらに、歯で舌や口腔内の粘膜を噛む、他者に顔を殴られた際に歯が口腔内の粘膜に強くぶつかるといった、SCP-811-JP-1の歯による二次的な損傷や痛みも一切受け付けなくなります。
被験者がSCP-811-JP-1となってから時間が経過しても、これらの歯には歯垢、歯石の発生や変色などが見られません。また、SCP-811-JP-1に新たな親知らずが生えてきた事例は報告されていません。
以下は、SCP-811-JP-1となった被験者の詳細な特異性を究明するために行われた実験の記録です。
実験記録811-JP-1 - 日付201█/6/██
対象: D-811-JP-1(予めSCP-811-JPを摂食させ、SCP-811-JP-1へと変化させてある)
実施方法: 歯が露出するように口を開かせた対象の前歯にマイナスドライバーをあてがい、ドライバーの先端を金属製のハンマーで叩き、歯に強い衝撃を与える。
結果: 硬質な物体同士を打ち付けるような音はしたものの、歯には一切の損傷が見られなかった。D-811-JP-1は上から衝撃を加えられたことに起因する多少の物理的衝撃を受けたものの、表情などを見る限り苦痛を感じた様子はない。
分析: 実験後、D-811-JP-1にインタビューを行ったところ、『爪で叩いたような、軽くカツンと叩かれる衝撃はあったが、全然痛くなかった』という証言が得られた。実験時に与えた衝撃に対し、明らかにD-811-JP-1が受けた衝撃は小さいように見える。 痛みを感じないだけでなく、単純な物理衝撃を大幅に緩和する効果もあるようだ。
実験記録811-JP-2 - 日付201█/6/██
対象: D-811-JP-1
実施方法: 歯の表面に濃硫酸(質量パーセント濃度96%)を塗布する。実験に際しては、歯以外の部分(歯茎、舌など)に付着しないよう留意する。塗布してから数分後、歯の表面を観察。
結果: 塗布から3分後に付着した濃硫酸を除去し、歯の表面を観察したところ、酸による腐食、分解などの影響は一切見られなかった。拡大観察しても塗布前後での違いは一切見られない。
分析: 物理衝撃に留まらず、化学的損傷にも耐性を持つようだ。
実験記録811-JP-3 - 日付201█/6/██
対象: D-811-JP-1
実施方法: 滑り止め加工を施したペンチで対象の歯を挟み、抜歯を試みる。
結果: 30分以上に渡り歯を引き抜くべく力を加え続けたものの、対象の歯は全く動かなかった。D-811-JP-1からは『軽く引っ張られるのは感じるが、やっぱり痛くない』という証言が得られた。
分析: 代わる代わる職員を交代しながら抜歯を試みたが、抜けるどころかびくともしない。歯茎が損傷した様子もないところを見るに、オブジェクトの影響は歯のみではなく、歯と繋がる歯茎の部分にも及んでいるようだ。
実験記録811-JP-4 - 日付201█/7/█
対象: D-811-JP-1
実施方法: D-811-JP-1に対し、自らの舌を歯で上下に挟み、噛むように少しずつ力を加えていくよう指示。
結果: 痛みが耐え難い程になったら中止して良い、と予め伝えてあったにも拘らず、D-811-JP-1は力を加え続けていた。中断させてインタビューすると、『いつまで経っても、どんなに強い力で噛んでも全然痛くなくて、逆に怖い』と証言した。実験後、D-811-JP-1の舌を観察してみたが、外傷はおろか歯型すらついていなかった。
分析: 歯による二次的な傷害も起こらなくするらしい。うっかり口の裏を噛んでも安心というのは、少しだけ羨ましいかも知れない。
SCP-811-JPは、201█/6/██、██県██市にて、『路上でいきなり大量の歯を吐き出した人がいる』という通報により存在が発覚しました。現場は██市で最も大きな繁華街の路上であり、被害人数は██人に上りました。被害に遭った人物には財団病院施設で暫しの入院措置がとられた後、調査により上記の復元方法が発覚すると共に、復元措置の実行とBクラス記憶処理が施され、解放されました。解放前のインタビューにより、当該の繁華街にて謎の白衣を着た年齢不詳の男性が『新製品の試供品』という名目で配っていたSCP-811-JPの存在が発覚。被害者が全員『配られたガムを食べたあとに歯が全部抜け落ちた』と証言したため原因と断定され、収容されました。その後、目撃者への記憶処理と共にカバーストーリー『行き過ぎた歯の健康キャンペーン』および『品質不良による試供品回収』が適応され、騒動の混乱は鎮静を見ました。
その後も調査と追跡が行われ、多数のSCP-811-JPを回収出来ましたが、残存したSCP-811-JPの存在、ならびに新たにSCP-811-JPが配られるケースが懸念され、現在も██市を中心に各地への監視が続けられています。
補遺: D-811-JP-1の経過観察を続ける中で、SCP-811-JP-1となった人物には歯垢や歯の変色などが発生しないことが判明しました。D-811-JP-1が食事を終えた後、歯を磨かせずに数時間放置した後に歯の観察を行ったところ、歯の表面は清潔な状態が保たれており、食べかすなども付着していませんでした。また、D-811-JP-1は元々あまり歯磨きを丁寧に行っていなかった人物であることが周知されていましたが、上記実験から2週間が経過しても、D-811-JP-1の歯には変色や歯石の発生などが見られませんでした。
補遺2: 201█/7/██、収容房にて待機していたD-811-JP-1が突如口から大量の歯を吐き出した、という看守からの報告がありました。担当研究員が調査したところ、D-811-JP-1の口腔内及び周囲に散らばっていた歯は全てD-811-JP-1のものであることが判明し、それらは全て2~5個程度の破片になるように折れ、または砕けていました。これらの歯は全て損傷などを負わないという性質を失っており、またD-811-JP-1の口腔内を観察した結果、D-811-JP-1は歯を全て失っており、歯茎は完全に再生されている状態でした。
その後のD-811-JP-1に対するインタビューにより、D-811-JP-1は前日の朝(およそ28時間ほど前)より、面倒に思ったため歯を磨いていなかったことが判明しました。別のDクラス職員を用いた追調査を行ったところ、SCP-811-JP-1となった人物が、前回歯を磨いてから28時間の間歯を磨かないでいると、全ての歯が折れ砕けて抜け落ちるという事実が発覚しました。更にその翌日である201█/7/██、██市の病院に『いきなり歯が全部折れてしまった』という男性が搬送され、調査及び病院に潜伏していたエージェントからのインタビューにより、SCP-811-JPを摂取した人物であることが確実とされました。これにより特別収容プロトコルの一部が改定されました。搬送された男性は財団病院施設へ移送され、Bクラス記憶処理と、カバーストーリー『不幸な交通事故』が適応、暫しの入院の後に再度開放されました。
D-811-JP-1には総入れ歯が支給され、職務に復帰しました。
D-811-JP-1が歯磨きを丁寧にやらないのは知っていたが、それでも丸一日サボるまで歯が砕けなかったということは、歯磨きの判定はあまり厳しくないようだ。しかし、何故24時間ではなく、28時間なんだ? ――██博士
人間、いつも決まった時間に歯を磨けるわけじゃないですからね。猶予時間、ということなのかも知れません。 ――██研究員
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scp-812-jp |
評価: +52+–x
アイテム番号: SCP-812-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-812-JPの配信を妨害する試みは全て失敗しています。一般人によるSCP-812-JPとの接触を防止するため、破損したファイルのうち発行元がFictional Reality Entertainment Ltd. のものを自動的に削除するプログラムを、SCP-812-JPの配信が予想されるハードウェアへ配信し続けてください。
SCP-812-JPの保護は標準異常プログラム取扱手順に従って実施してください。SCP-812-JPがインストールされた状態のハードウェアを確保した場合は、研究での活用を目的とした収容と、プログラムの復元が確実に不可能になる状態での破棄が認められています。ハードウェアを収容する場合は全ての機器をSCP-812-JP-a,b,c,… とナンバリングしたうえで異常精密機器倉庫へ収容し、適切に管理してください。また、SCP-812-JP-αの影響が疑われる症例を確認した場合は、医療部及び機動部隊を-1 ”橋上の鉄線”への連絡を最優先し、人命の保護と症例サンプルの確保に努めてください。
説明: SCP-812-JPは、"死 〜体験版〜"というタイトルのVR専用ゲームソフトです。VR専用ゲームソフトを実行できるハードウェアは全て、インターネットに接続されている限りSCP-812-JPを配信される可能性があります。発行元はFictional Reality Entertainment Ltd. だと確認できていますが、全てのファイルのデータが破損しており、いかなる部分も実行形式ファイルとして成立していません。
プログラムとして実行できる状態ではないにも関わらず、SCP-812-JPはHMD1を接続した機器もしくはHMDの代用として使用できる状態の機器を用いることで、一般的なVR専用ゲームソフトと同様に実行することができます2。SCP-812-JPを起動させゲームプレイを開始した場合、伝達強度が5以上に達する異常ミームを含む映像と音声が再生されることが確認されています。これらの映像と音声の一部は一般的なVRゲームと同様にVR機器と接続された他のディスプレイや音響機器からも再生されますが、伝達強度が異常値を示すのは、ヘッドマウントディスプレイからの映像とヘッドホン又はイヤホンからの音声を同時に認識した場合に限られます。
伝達強度が異常値に達している状態の本ミーム(以下SCP-812-JP-α)に曝露した人物は、心拍数と呼吸数が極端に低下3します。しかし、これにより曝露者の生命及び意識の維持、発話や平易な運動に支障をきたした例は確認されていません。ヘッドマウントディスプレイを外す、SCP-812-JPを実行している機器の電源を切るなどの対処によりSCP-812-JP-αへの曝露を中断することで、曝露によって引き起こされる異常な影響は直ちに取り除かれます。この対処は曝露者自身が行うことも可能です。
SCP-812-JP-αに曝露しその記憶を保持した人物は、自身の死に対する本能的な恐怖が欠落することが確認されています。多くのケースにおいてこの影響は曝露者に自覚されず、衝動的な自殺に帰結します。クラスB以上の記憶処理によってこの反応を完全に取り除くことが可能です。
補遺1: 聞き取り調査によって判明したSCP-812-JPのゲーム内容を以下の表にまとめてあります。詳細な記録が必要な場合は、別途聞き取り調査ログを取り寄せてください。
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症例番号
証言を基にしたSCP-812-JPのゲーム内容
プレイヤーの感想
812-JP-1
ゲーム開始と同時に、ジムのトレーナーのような恰好をした女性NPCが登場する。床も含めた背景は全て白く、女性NPCとプレイヤーの足元には桃色のヨガマットのような敷物が敷かれている。女性NPCの動きを真似することでエフェクトと効果音が発生する。女性NPCは基本的にBGMに合わせて朗らかに踊っているが、明らかにリズムを外している動きをする、変顔をする、テレビのリモコンやトングなどを手に持つなどの変化がみられる。約1時間で自主的に終了。
初回プレイ後に強烈な不安を感じたが、いい運動になるうえに面白いので、何度もプレイした。
812-JP-2
ゲーム開始と同時に、レコーディング用の防音室を連想させるプレイエリアと、黄色のエレキギター、青色のエレキベース、緑色のドラムセット、茶色のキーボード、銀色のティンパニが表示される。いずれも“ペンキに浸けたように”均一な色をしている。コントローラーによる操作で各楽器の前へ移動することができ、ゲーム内のプレイヤーが自動的に楽器の演奏の準備を整えた状態になる。楽器に応じた動作を行うことで演奏が可能であり、録音、ループ再生などの機能もある。楽器の音色が、犬の鳴き声やドアの開閉音をはじめとした、本来これらの楽器から発生しない種類の音源に前触れなく変化することがある。約1時間で自動的に終了。
初回プレイ後に強烈な孤独感を感じたが、いい加減な動作であっても演奏できるので楽しかった。
812-JP-3
ゲーム開始と同時に、前方に木製の直方体の枠が1つ表示される。プレイヤーの両手には自動的に様々な形状と色のブロックが握られた状態で表示され、コントローラーによる操作で枠の中へ自由に置くことができる。ゲーム内でブロック同士を押し付けてもグラフィック同士のめり込みは発生せず、曲がる、潰れる、崩れるなどの変形がみられる。枠の中に置いたブロックは、再度手に取るまで変形しなくなる。隙間なく敷き詰めることでブロックが消えるが、どの程度敷き詰めた時点でブロックが消えるかの法則性は特定されず、敷き詰めたブロックが枠に触れると枠が伸びて余裕ができる。約3時間で自主的に終了。
初回プレイ後に強烈な寂しさを感じたが、延々と遊べるパズルができて嬉しかった。
812-JP-4
ゲーム開始と同時に、一般的なパイ投げ用のパイとパンケーキが白色のテーブルに積み上げて並べられた状態で表示される。NPCや他のテーブルなどの表示は無いが、テーブルの奥側からパイ投げ用のパイとパンケーキがプレイヤーの方向へ飛んでくる。軌道が直線ではなく不自然に曲がっている場合もあるが、頭を動かすことで避けることが可能である。プレイヤーの顔に当たった場合は当たったものに応じて視界が汚れ、パンケーキを持った状態の手で顔を拭く動作を行うと汚れが落ちる。プレイヤー側は白いテーブルに並べられているパイ投げ用のパイとパンケーキを手に取り、任意の方向と勢いで投げることができる。約15分で自主的に終了。
初回プレイ後に強烈な喪失感を感じたが、パイとパンケーキが飛び交う様子と、爽快感が癖になった。
閉じる
補遺2: 現在確認されている症例サンプルは以下の通りです。供述は全てSCP-812-JP-1曝露者本人によるものです。
症例サンプル812-JP-1
対象: 会社員 23歳
事例: 自殺未遂、線路への飛び込み
調査結果: 電車を待っている間に「自宅の鍵を閉め忘れたのを思い出した」ことを理由として主張する。止めに入った者を含め、周囲の目撃者は通常の飛び込み自殺だと認識していることが確認できたため、特別な処理は実施されていない。「あんな部屋他人に見られるくらいなら本当に死んだ方がマシだと思った」と供述。
症例サンプル812-JP-2
対象: 学生 20歳
事例: 自殺未遂、ステーキナイフを頸部に刺す
調査結果: フードコートで水を飲んだ際に「激しくむせた」ことを理由として主張する。多数の目撃者によるインターネットへの投稿により事例が発覚し、インターネット監視課からの通報を受けた機動部隊 を-1が、エアロゾル型クラスC記憶処理剤の散布を含む対応を実施した。「一緒に食事していた彼氏が引いていたので頭が真っ白になってやってしまった」と供述。
症例サンプル812-JP-3
対象: 学生 13歳
事例: 自身の手で頸部を締める
調査結果: 対象は幼少時から首を絞められて気絶する際の感覚を好んでおり、「思いっ切り首を締めれば絶対もっと気持ちいいと思いついた」ことを理由として主張する。扼頸4跡の鑑定では、死亡に至る可能性の生じる圧力が頸部にかかっていたことが指摘されている。実際は死亡には至らず、気絶しているところを家族に発見され、病院へ搬送された。「前はやり過ぎたらどうしようと思ってたけど、今回は吹っ切れたみたいにうまく絞められた」と供述。
症例サンプル812-JP-4
対象: 主婦 57歳
事例: 自殺未遂、浴槽に入れたホルマリンに全身を沈める
調査結果: 「老いる方が怖くなった」ことを理由として主張する。回収時の対象の精神状態は思わしくなく、事案当時に関する更なる聞き取りは断念された。風呂場で水酸化カリウム、アリザリンレッド、アルシアンブルー5の混合溶液 3Lが発見されている。
補遺3: SCP-812-JPの被配信者の元に、アンケートメールが配信されていることが確認されました。配信元が存在しないアドレスであること、それにも関わらず問題なく返信できることの2点を除き、異常性はありません。現在、このメールで言及されている“有料版”についての調査が進められています。
この度は「死 〜体験版〜」をダウンロードして頂き、誠にありがとうございます。
より良い商品へ改良してゆくため、アンケートへのご協力をお願いいたしております。個人が特定できる形で本アンケートの情報を使用することはありませんので、率直なご意見をお願いいたします。
Q.1 プレイ時間は長過ぎませんでしたか?
Q.2 プレイ後に具合が悪くなってしまうことはありませんでしたか?
Q.3 プレイ中に恐怖を感じてしまうシーンはありませんでしたか?
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http://www.fictionalreality/deathdemoware/jp/index.[編集済]
死 〜体験版〜 Copyright © 20██ Fictional Reality Entertainment Ltd. All Rights Reserved.
Footnotes
1. ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着ディスプレイ)の略称。
2. スクリーンやディスプレイへのみ出力されるよう設定して実行した場合、HMDを接続するように促すメッセージが表示されます。
3. これまでの実験での最小値は、心拍数: 7回/min、呼吸数: 0.8回/min です。
4. 手や腕で頸部を圧迫すること。これによる自死は稀である。
5. いずれも透明骨格標本の作製に使用される試薬であることが指摘されている。他の試薬類は発見されなかった。
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scp-813-jp |
評価: +84+–x
アイテム番号: SCP-813-JP
オブジェクトクラス: Safe Euclid
特別収容プロトコル: SCP-813-JPはサイト-81██の10m×10m×10mの収容室に収容されています。収容室には監視カメラを設置し、男性の姿が発見された場合、担当職員に即座に報告を行なってください。収容室にはSCP-813-JP-1の出現範囲が区別できるよう、オブジェクトから4m離れた場所に目印を設置してください。SCP-813-JPの実験に参加する職員はDクラス職員に限定されます。Dクラス職員は事前に精神テスト及び幼少期から青年期の経験についてインタビューを実施、重大な危険行動に出る可能性の少ない職員を実験に参加させてください。
追記: SCP-813-JP収容室の半径30mはネットワーク環境を遮断し、隔離した状態を維持、外部との連絡が可能な機材を持ち込むことは禁止されています。SCP-813-JP収容室から30m以内に存在する職員は、決して願望を口頭化しないでください。詳細は収容違反-SCP-813-JPを参照にしてください。
20██/█/██、SCP-813-JP(画像参照)を手にし、収容室を歩き回るSCP-813-JP-1の姿が確認された。
説明: SCP-813-JPは全長160mm・底幅110mm・重量860g、ボーカル用マイクと卓上マイクスタントの2点からなるオブジェクトです。双方のボディには販売社名及び製造番号等の表記がありません。マイクとマイクスタンドは未知の力で一体化しており、いかなる手段をもっても別々に分離することはできません。マイクには電池挿入口が設けられていますが、X線等による検査の結果、内部に電池が存在していないことが判明しています。
SCP-813-JPは人間が半径3m以内(以下、範囲内)に接近すると異常性が発揮、活性化します。活性化の際、スライド式スイッチがOFFからON状態になり、SCP-813-JP-1が出現します。
この時、範囲外への移動・拒絶した態度・日本語以外の返答・質問の無視等の行動を取ると、SCP-813-JPのスイッチが自動的にOFFになり、SCP-813-JP-1が接触を中断し、不活性状態へ戻ります。なお、不活性状態の条件を満たした人間、SCP-813-JP-1のアドバイスを一度受けた人物が、再度SCP-813-JPの範囲内に接近しても活性化することなく、事実上SCP-813-JPは無害な状態になります。 SCP-813-JP-1が出現しないことが後に判明しました。
SCP-813-JP-1はSCP-813-JPが活性化時、オブジェクト付近に存在していると推測される、知性をもった男性の声です。SCP-813-JP-1の音声は、人間がマイクを使用したときに一般的に見られる音声変化を伴っており、その声量は基本約65dB程度です。
SCP-813-JP-1の音声は録音機器で問題なく録音することが可能ですが、活性・不活性時に関係なくSCP-813-JPを写真・ビデオ等の映像媒体で撮影した場合、極稀に東洋人系の外見的特徴を有したスーツ姿の成人男性が、映像に録画されているケースがあります。SCP-813-JPをサーモグラフィによる画像診断を行なったところ、生物の熱源反応が感知したことはありません。
SCP-813-JP-1は一番最初に範囲内に入った人間(以下、被験者)にのみ接触を行ない、被験者の氏名・幼少期~青年期までの体験を聞き出そうとします。特徴的なのは、人生における分岐点や未達成の出来事を詳細にする点です。SCP-813-JP-1の質問には強制力はなく、容易に質問を拒絶や無視することが可能ですが、オブジェクトと15分以上接触した被験者は急激な心理変化が発生します。
SCP-813-JP-1は被験者に対し、「やり直したかった出来事」を実行するよう、積極的でポジティブシンキングな進言を行ないます(以下、アドバイス)。
SCP-813-JP-1のアドバイスは被験者個人から詳細に聞きだした内容に依存しており、その情報を参考にしていることは明らかです。SCP-813-JP-1のアドバイス内容は、被験者が実行する理由が存在せず、未達成で“諦めがついているもの”を助言する傾向があり、これから実行・実現させたいといった未来的な願望には一切アドバイスを行ないません。
SCP-813-JP-1からアドバイスを受けた被験者は、SCP-813-JP-1を信頼のできる人物だと確信し、被験者は歪んだ認識の下、アドバイス内容が明らかに無利益・実行するに価しないものであっても、突発的に行動し実現させます。
しかしSCP-813-JP-1のアドバイスは、あくまでの助言や意見を添える程度のものでしかなく、最終的な選択は被験者個人に委ねられることになります。総的にSCP-813-JPの影響や危険性は個人によって大きな差が生じ殆ど無害の場合もありますが、留意点として、最終的な選択を決定するまで幾つものアドバイスを受けた被験者は、それら全て実行する可能性が存在します(詳細は、SCP-813-JP-1実験記録-1を参照)。なお、SCP-813-JP-1に対する被験者の認識は、映像記録による矛盾点の指摘・記憶処置による対処を行なっても変わることはありません。
SCP-813-JPは20██/█/██、██県███町██駅近辺の路地裏で発見されました。当時██駅周辺では線路内への突き落としや飛び降り、盗撮・痴漢等が多発していました。事件件数の多さに疑問を抱いたエージェント・ヨコシマが独自に調査を行なったところ、後にSCP-813-JPと指定されるマイクとマイクスタンドが発見されました。SCP-813-JPによる影響は██駅内に限らず、██県全体で窃盗・放火・猥褻物陳列・ストーカー行為・誘拐事件が発生しています。いずれも事件の加害者は██駅を使用していた人物という共通点があり、加害者側の調査を進めたところSCP-813-JPに接触していたことが明らかとなりました。収容前のSCP-813-JPは「的確なアドバイスをくれる人がいる」等の噂が流布していたことが、後の調査で判明しています。当該地区では適切なカバーストーリー及び記憶処理を、それぞれ事件関係者に適応しています。
+ SCP-813-JP-1実験記録-1
- SCP-813-JP-1実験記録
対象: SCP-813-JP-1
付記: この実験はSCP-813-JPの特性を明らかにするため、Dクラス職員(D-98)をオブジェクト範囲内に接近させ、活性化させました。SCP-813-JP-1によるアドバイスを受け、D-98に危険な兆候が発見された場合、即刻終了する手順となっています。
<録音開始>
SCP-813-JP-1: [マイクスイッチ時における稼働ノイズ] どうも、こんにちは。
D-98: うお! え、どこ? どこ? え?
SCP-813-JP-1: 私はここです。あなたの目の前にあるマイク、それが私です。
D-98: ……本当に? マジで? マイクが喋ってるのか?
SCP-813-JP-1: あなたのお名前は?
D-98: 今は……D-98。わけがあって本名は名乗れないんだ。
SCP-813-JP-1: わけありなんですね。
[この後、SCP-813-JP-1による質疑応答が行われる。15分経過する頃にD-98に異常な変化が現れ始めた。SCP-813-JPではなく、オブジェクト付近の空間に姿勢を直し、視線を向ける。後の解析で微細ながらも革靴と思わしき音が発見された。]
D-98: まぁ、それでなんつうか、誰にも言ったことねえんだけどさ、ガキくせえかもしんねえが……高校のとき、自殺を考えていたんだ。死のうとは思っていたが、本気じゃなかった。思春期特有の、漠然とした不安だったのかな。心残りといえばこれも、心残りだな。
SCP-813-JP-1: 他には?
D-98: んー? 他、他にか。あー、んー…ア! あったあった! 俺、母親を……殺しちまったんだが……殺すんじゃなく殴る程度にしとけりゃ良かったなとか、遺体をバラすとき、風呂場じゃなく山でしておけば良かったぜ。今更言ってもどうにもなんねえけど、色々後悔している。心残りというより、反省に近いけど……。
SCP-813-JP-1: そのように反省することは大事だと思います。その反省は次に活かしましょう!
D-98: ありがとう。次は、絶対、しくじらねえ……失敗しないよ、俺……!
[D-98の涙ぐむ音。この時点で15分超過。]
D-98: あんた本当に……もう、なんつうか恩人だよ。あんたなら俺は何でも話せる。どんなことでも話せそうな気がするんだ。初めてだよ、こんな人と出会ったのは。心の底から感謝させてくれ。
SCP-813-JP-1: いえいえ。私はただあなたに助言しているだけです。その後あなたは自殺もせずのうのうと生きて、取り返しのつかないことを母親にしてしまった。風呂場ではなく山で殺害しておけばと、後悔していらっしゃるんですね。母親の方はもうどうしようもないです。今さら殺そうとしても二人もいないわけですから。あなたに今出来ることは1つしかありません。愚直な意見ですが、D-98さん、あなた、死んでみてはどうでしょうか?
D-98: ……死ぬ?
SCP-813-JP-1: 良いですか? あなたが生きても無駄に時間を過ごすだけで何もならない。そんな人が生きても仕方ないでしょう、このクズめ! だから死になさい。死んでみなさい。首吊りでも構いませんから。ね?
D-98: しぬ……死ぬ、そうだな……ああ! やっぱり、そうだよな! 死ねばよかったんだよ、俺は! 何でこんな簡単なことに気付かなかったんだろう! あんたやっぱりすげえよ! よーし、死のう! 清々しく死のう! 今からでも遅くないよな? 死ぬのは!?
[D-98は興奮した様子で立ち上がる。その顔は活気に満ち、満面の笑みを浮かべていた。声のトーンも上がっており、非常に機嫌の良い様子だった。自身の両頬を両手で軽くはたき、気合いを入れる。]
SCP-813-JP-1: ええ、人間やろうと思えばいつでもやれます。勇気を持って自殺してください! 応援しています! 頑張って! おら、死ね!
D-98: でも、死ぬのはいいけど、俺、子供の頃、欲しかった玩具があるんだ。そっちの方もどうにかしたい。
SCP-813-JP-1: 買いましょう! それから死ね。すぐ死ね。
D-98: ……あぁ、待って。まだあったわ。
SCP-813-JP-1: 何をですか?
D-98: ん。俺に妹がいてさ。母親を殺したとき、解体現場を見られたから殺そうとした。未遂に終わったけどな。
SCP-813-JP-1: 知ってますよ。ええ、妹さん……ええ、ええ。
[異変前、SCP-813-JP-1がD-98に行なった質疑応答の中で母親の殺害は明言したが、妹の殺人未遂についてはこれまで発言されていなかった。]
D-98: あん時、妹が帰ってくる時間をちゃんと確かめておけば、そもそも見つからなかったかもしんねえのに、アホなことしちまったよ。家に住んでる他のやつらのスケジュールの確認の有無が最大の失敗だな。自殺したら、そんなことできねえ。自殺はまだ先にしたい。
SCP-813-JP-1: あなたは他人の行動を把握するよう努力を重ねるべきです! 自殺なんてバカなことはおやめなさい! あなたにはまだやるべきことがあります!
D-98: ここは研究室か何からしくって、俺はここの実験体なんだ。実験体はホイホイ死んでいく場所で、俺が生き残るには難しいと思う。諦めていたんだけど、俺が生きて帰るにはどうしたら良いんですか?
SCP-813-JP-1: それはあなたが一番知っているでしょう?
D-98: そうだな。奴等の命令に従えばいいんだ。
SCP-813-JP-1: そうです。命令に従いましょう。それで、あなたの望みは?
D-98: 子供の頃にほしかった玩具、[編集済]が欲しい。
SCP-813-JP-1: 買いましょう!
<録音終了>
終了報告書: 実験終了後、D-98は[編集済]の購入を強く希望しました。[編集済]はサイト-81██内に販売されているお菓子のおまけ商品であり、実際に購入させることでSCP-813-JP-1による異常性の消失が確認されました。今回の実験でSCP-813-JP-1は、被験者個人の意見が流動的に変化した場合、柔軟に対応することが判明。なお、D-98はSCP-███-JPの実験に参加し終了しています。SCP-813-JP-1の影響は現実改変を伴わない、精神面のみの影響であることが明らかとなりましたが、D-98は実験参加前、しきりに研究員や他のDクラス職員の予定を知ろうとする不自然な行動が確認されており、実験での終了は意図的な自殺の可能性が指摘されています。SCP-813-JPの範囲解明のため、追加実験の必要性があります。- ████博士
+収容違反-SCP-813-JP/要セキュリティクリアランスレベル3
-承認しました
20██/█/██、サイト-81██でSCP-813-JP-1による収容違反が発生しました。当時SCP-813-JPは内部構造の確認のため、X線による検査を受けており、オブジェクトを検査する職員は不活性状態を満たした職員のみで行なわれ、収容違反等の不備のない状態だと思われていました。しかしSCP-813-JPを収容室へ再収容し、検査結果を追記しようと担当職員がPCを確認したところ、問題が発覚。SCP-813-JP項目に財団職員以外の執筆が行なわれていました。後の調査で監視カメラをチェックした結果、SCP-813-JP-1がPCを操作し直接入力を行なっている姿が確認されています。
以下は、SCP-813-JP-1が追記を行なった内容の転写です。1
Dr.████ SCP-813-JP: 20██,██,██ 11:24
SCP-813-JP:調査報告
█博士の不在と、オブジェクトが自分のことを話して欲しい嘆かれておりましたので、アドバイスをしようと思います。私のアカウントは存在しないので、サインインしたままの████博士のPCとアカウントから失礼いたします。SCP-813-JP-1です。書類を拝読しました。
・SCP-813-JPは全長160mm
mmは半角で表記してください。
・SCP-813-JP-1はSCP-813-JPが活性化時、オブジェクト付近に存在していると推測される、知性をもった男性の声です。
活性・非活性にかかわらず私はマイクの傍にいます。ただ3m付近に誰かが近寄ったら、「お!アドバイスが欲しいんだな~」と思って、行動に出ているわけなのですよ。初見の方には積極的に姿を見せる方針を取っております。
・SCP-813-JP-1の音声は、人間がマイクを使用したときに一般的に見られる音声変化
よく解らない表現ですね。私の声は確かにマイクを使用したときの声をしており、説明がちょっと難しいのかもしれませんね。仕方ないかな?
・声量は基本約65dB程度です。
確かに! 私は大声を出すことがよくあります。アドバイスの説得力を持たせるために意図的に力強く発言しております。
・ポジティブシンキングな進言
人様に助言をしているのです! 明るくなくて、どうしましょう。当たり前のことですよ~。それと進言は目上の方に対する言葉であり相応しくないかな? 進言ではなく助言が正しいと思いました。
・被験者は歪んだ認識の下
失敬な! 怒りますよ!?
・最終的な選択は被験者個人に委ねられることになります。
何度もいいますが、私は助言をしているだけですので、ああしろこうしろと、行動を制限することはないです。しかし、場合によっては、少々強引な誘導を行なうことがあります。
・実験終了後、D-98は[編集済]の購入を強く希望しました。
[編集済]は名前を出して構わないと思いました。SPC・シャークプレデターチョコのお菓子でしょ?
・サイト-81██内に販売されているお菓子
細かい指摘ですが、サイト-81██でしか販売されていないのでしょうか? 正確には『[編集済]はサイト-81██内【にも販売されている一般的】なお菓子』と表記する方が正しいと思います。
・D-98はSCP-███-JPの実験に参加し終了
う~ん、アドバイス中に少しでも触れた内容を行動に移す可能性があるみたいですし(これは私も知りませんでした)、他実験に参加させることは他オブジェクトの収容違反に繋がるのではないかな? 危ない綱渡りですね~。
・最後に
私は言葉によるコミュニケーションを介してじゃないと、その異常性を発揮できません。よって私が記載した内容に、これという異常特性はないので、文字によるアドバイスを視認しても何の影響もないでしょう。それと現在(2015,██,██ 14:24)、私(SCP-813-JP-1)による収容違反が発生しています(SCP-813-JPから█m程度なら移動できます)。オブジェクトクラスはSafeからEuclidに格上げすべきでしょう!
私からは以上です。まだまだSCP-813-JPには未解明なところもありますでしょうが、担当職員様、がんばってください! 応援しています! もしよければ、他オブジェクトのアドバイスもいたしましょう!
Re: Dr.████ SCP-813-JP: 20██,██,██ 14:32
現在、SCP-813-JP-1が指摘した誤字等の指摘について、オブジェクトは自身が及ぼす影響の範囲を「これは私も知りませんでした」と記載しており、正しく認知していないと主張しています。SCP-813-JP-1のアドバイスに従うことは、たとえ文字上のものであっても精神異常をもたらす可能性が指摘されており、訂正の更新は一部を除き保留されています。なおSCP-813-JPの検査中、████博士は「█博士の細かいアドバイスが欲しい」、「オブジェクト自体が自分のことを教えてくれたらどれだけ楽だろうか」といった願望を口にしていたことが判明、SCP-813-JP-1の新たな異常性が発覚しました。SCP-813-JP-1活動範囲について更なる検証が予定されています。
まさかSCPオブジェクトに書類不備を指摘されるとは思ってもみませんでした。あえて言わせてもらえるならば、ふざけるな!- ████博士
Footnotes
1. 数度の更新が行われていたことから、査読したものと推測されている。
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scp-814-jp |
評価: +31+–x
評価: +31+–x
クレジット
タイトル: SCP-814-JP - 灰の降りしきる戦場へ
著者: ©︎kyougoku08
作成年: 2016
評価: +31+–x
評価: +31+–x
侵入したドローンによって撮影されたSCP-814-JP-A
撮影時、降灰は観測されていなかった
アイテム番号: SCP-814-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-814-JPはその入り口となる廃トンネルを老朽化に伴う工事中として偽装したうえに鉄柵で囲い、常に二人以上で監視を行います。SCP-814-JP内に侵入する一般人を発見した場合は即座に捕縛し、Aクラスの記憶処理を行ってください。侵入を許してしまった場合は、自力で脱出するまで救出を禁止します。脱出後、消失者以外にはAクラスの記憶処理を行い、消失者については行方不明のカバーストーリーを流布してください。SCP-814-JP-A内の調査はセキュリティクリアランス3以上の職員による認可が下りない限り全長1m以上の無人ドローンを使用してください。
説明: SCP-814-JPは長崎県██市の山中に放棄された廃トンネル内に存在する扉です。SCP-814-JPを通過することによってSCP-814-JPの内部は異空間(以下、SCP-814-JP-Aと表記)に繋がります。この通過対象は生物、非生物を問いませんが、1m以上の全長を持つことが必要です。
SCP-814-JP-Aは調査の結果、第一次世界大戦以降の時間軸に存在した戦場の一場面1を再現しているものと思われます。これらの空間は侵入ごとに変化し、現在時点において同一のものが発生した事例はありません。また空間内の特徴として本来存在しうる生物あるいは武器及び兵器が存在しない、不定期に灰が降っている、様々な種類の人形2が本来人物が存在したであろう場所に散乱している、といった点があげられます。
内部に存在する物体は持ち帰ることが可能ですが、上述の灰は地表に到達すると同時に消滅します。また、調査の結果人灰であることが判明しましたが、不特定多数の個人のもので構成されており、特定個人の追跡は不可能です。また、人形も大量生産されたものであり特定には至りませんでした。
SCP-814-JP-A内に侵入した人間は、SCP-814-JP-A内に存在する扉から脱出が可能です。ただし、単独、複数人に関わらず人間が侵入した場合、侵入した人物のうち一人が脱出時に消失することが判明しています。この現象は人間以外の生物、無機物には発生しません。消失する対象に規則性は見られませんが、現時点の調査結果から、殺人、過失致死など誰かを殺害した人物は対象に選ばれないことが判明しています。ただしこれは複数の侵入者のうち、殺人の前歴がない人物が存在する場合においてのみであり、単独での侵入、もしくは全員が殺人の前歴を持つ場合は条件を満たしている人物においても消失対象となりえます。
侵入させた無人ドローンによる記録映像から、消失対象は脱出の際扉をくぐると同時にSCP-814-JP-A内のランダムな位置に転移することが判明しています。この際、消失対象は手を合わせる、十字を切る、平伏するなど多種多様な祈りと思われる行動をとっており、同時に発声を行っています。現在時点で対象が発声している言語は地球上の言語体系いずれとも一致しないものだと確認されています。その後、侵入した人物が全員扉を抜けた時点で扉は消失し、同時にSCP-814-JP-A空間も収縮し消滅します。GPSなどの位置把握システムはこの時点で断絶します。
補遺1: これまでの実験で消失した空間が再現していた戦場の位置を特定、調査した結果、SCP-814-JP-A内において、消失現象が発生した地点を中心とした半径5mの地点と該当する位置に本来自生しないワスレナグサの花畑が確認されました。これらの植物自体には異常な特性は見られなかったものの、生息する土壌は強いアルカリ性を示しており、土壌からその原因となる物質は確認できませんでした。本来なら枯死する環境下でこれらの植物が何故自生できているかについては調査中です。
補遺2: 補遺1の結果をふまえ判別可能であった該当地域を調査したところ、殺人の前歴がある対象が消失した地域においては、前述の花畑は確認されませんでした。また、土中検査の結果████人以上の判別不可能な人骨、及び破損した音楽再生機器が発見されました。この機器は判別不能な女性が以下の一節を唱える声のみが録音されており、その再生以外の指示は受け付けませんでした。
Kyrie eleison. Oro supplex et acclinis, cor contritum quasi cinis: gere curam mei finis.
Footnotes
1. 原爆投下時の広島、ベトナム戦争時のハノイ、湾岸戦争時のイラクなどが確認された
2. こけし、マトリョーシカ、ソフビ人形、デッサン人形などが確認された
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scp-815-jp |
評価: +32+–x
SCP-815-JP
アイテム番号: SCP-815-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-815-JPは高圧高温に耐性を持つ密封可能な収容容器に保管します。7月から8月、日本標準時で午前7時30分から午前9時30分までは、収納容器を開いてはいけません。当該期間のそれ以外の時間において、毎日収容容器を開き、容器内側の状態を確かめ、劣化が激しい場合は取り換えます。収容容器の維持に関わる条件の詳細は書類815-JPを参照してください。
説明: SCP-815-JPの外見は掌大の彫刻です。外観は一枚の葉とその上に寝そべる人型から構成されています。不活性状態におけるあらゆる外部刺激への反応は、今まで確認されていません。毎年7月の半ばから8月の半ば、日本標準時で午前8時ちょうどを回ってから、およそ2時間の間だけ活性状態に移ります。SCP-815-JPがどのように日時や時刻を知り得ているのかは不明です。
活性状態にある間、SCP-815-JPは未知の手段により、周囲の空間を高温・高圧にします。SCP-815-JPとの距離が近い程その影響は大きいことがわかっており、実験では1m付近で温度は約6,000K、圧力は約25MPaを記録しています。この影響の結果、SCP-815-JPの周囲の物質の多くが気化し、爆発的に膨張します。この爆風を利用し、SCP-815-JPは周囲を不規則に移動します。SCP-815-JP自体はこの現象に対して何らかの耐久性を持っていると考えられています。移動の目的や目的地は今のところ不明です。
事件記録815-JP: 1995年8月6日、SCP-815-JPは収容容器を破壊し、収容施設からの脱出を図りました。平時よりも高い温度と圧力を発生させたと考えられており、この事件をもって、より耐久性の高い収納容器が使用されることになりました。
注記: 年々、SCP-815-JPの形状が不明瞭になっていることが確認されています。これは加熱・加圧現象の影響を受けた結果ではないかという推測が、██博士により提言されています。また彼は同様に、彫刻は現象から遠ざかろうとしているのではないかという仮説を立てています。
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scp-816-jp |
評価: +15+–x
SCP-816-JPのモデルである郵便飛行機40型。
アイテム番号: SCP-816-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-816-JPは現在サイト-8102内の2メートル四方のアクリルケースに収容されています。SCP-816-JP-1には1週間に1度金属模型用のクリーニング液を与えてください。
現在SCP-816-JPはいかなる状況であっても野外飛行は認められていません。
説明: SCP-816-JPは未知の金属によって構成される翼幅8.4センチメートルの郵便飛行機40型の模型です。左の翼の裏には油性塗料によって平仮名で"はやと"と書かれています。SCP-816-JP単体では特異性は無く、SCP-816-JP-1が搭乗することによりその特異性を発揮します。
SCP-816-JP-1はSCP-816-JPと同じ金属によって構成される全長1.07センチメートルのヒト型の生命体です。食事を必要としておらず衰弱する様子は見られません。1920年代アメリカのパイロット風の服装をした男性のように見えますが、洋服に見える部分も金属で出来ており皮膚と思われる部分と一体化しています。話す言語は日本語ですが、日本語の読み書きはできません。
SCP-816-JP-1がSCP-816-JPに搭乗し、人の腕を滑走路として用いた時SCP-816-JPは一般的な飛行機のように飛行することが出来ます。SCP-816-JP-1は、この時のSCP-816-JPは高度13000メートルを120km/hで飛行可能であると主張しています。飛行中のSCP-816-JPの周囲10,000メートルは雲が消え昼間であれば太陽が、夜間であれば月と星が必ず視認できるようになります。稀に虹や雪が視認できることもあります。
SCP-816-JPは20██/09/24に███県████市の█████山中で発見、回収されました。当初は未知の金属でできた飛行機模型としてAnomalousアイテムとして保管される予定でしたが、墜落により気絶していたSCP-816-JP-1が目覚めたことにより、SCP-816-JP-1が意思を持ったオブジェクトであることが判明したため、SCP-816-JPとして収容されることが決まりました。
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対象: SCP-816-JP-1
インタビュアー: ██████博士
付記: 対象の声を聞きとるために指向性マイクを使用。
<録音開始 20██/10/07/09:54>
██████博士: それではインタビューを開始します。
SCP-816-JP-1: やあ。巨人の博士殿。今日はよろしく頼むよ。
██████博士: こちらこそよろしくお願いします。ではまずあなたの名前を教えてください。
SCP-816-JP-1: すまない、博士殿。実は一度墜落してから何も思い出せないんだ。自分の名前も。今の私にわかるのは私が飛行機乗りだということだけだ。
██████博士: そうですか。墜落したというのは我々があなたを回収した時のことでしょうか?
SCP-816-JP-1: そうだ。本当に感謝している。あのままだったら巨大な生物たちに食べられてしまうところだった。こうやって安全な施設に保護してもらえてありがたいよ。
██████博士: いえいえ。私達はあなたを収容しているだけなのですから感謝される必要はありません。
SCP-816-JP-1: 何にせよ私は助かっているんだ。だから感謝させてくれ。
██████博士: わかりました。記憶が無いという事はあなたがどこから来たのかもわかりませんか?
SCP-816-JP-1: ああ、わからない。役に立てずすまない。
██████博士: 気を落とさないでください。他には何か覚えていることはありませんか?
SCP-816-JP-1: そうだな。[4秒間の沈黙]はやと。はやとという名前は覚えている。おそらく私の名前ではないと思うのだが。
██████博士: はやとですか。なるほど、ありがとうございます。最後にあなたから質問などはありますでしょうか?
SCP-816-JP-1: 可能ならでいいのだが、週に一度でいい。空を飛ばせてもらえないだろうか。必ず帰ってくると約束しよう。
██████博士: わかりました。許可が降りれば可能でしょう。その時はまた来ます。それでは、ご協力ありがとうございました。
SCP-816-JP-1: こちらこそありがとう。これからもよろしく頼むよ。
<録音終了 20██/10/07/09:58>
終了報告書: あまり有益な情報は得られなかったが、"はやと"という名前の人物を調べた方がいいかもしれんな。SCP-816-JPのことについて詳しく知っているかもしれん。_██████博士
追記1: SCP-816-JP-1の申請は却下されました。
追記2: SCP-816-JPの発見場所付近の町に███隼人という名前の少年が住んでいたことが確認されましたが母親とバスによる事故で既に亡くなっていることが後の調査により判明しました。
補遺1: 調査により███隼人の自宅のパソコンからSCP-816-JPに関すると思われる電子メッセージ、███隼人のものと思われる机から抗うつ剤が発見されたことにより███隼人に軽度の鬱障害があったことが判明しました。
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愛する息子へ
パパは今仕事がとても忙しいんだ(o´Д`)だからまたしばらく帰れなくなりそうだ。いつも側に居てあげられなくて本当にごめんm(_ _)mでも今回はこのメールの他にパパの最新作も送ったよ(・`ω・´)b今回のは金属模型だけど今までプラモデルを上手に作れたお前なら大丈夫!きっと上手く作れるよ( o≧д≦)o頑張れ!冬休みには帰れそうだからその時はまた遊ぼうな((o(。>ω<。)o))どうしても辛くなったとき送った模型をお前の腕から飛ばしてごらん。きっとすべての雲は晴れ、綺麗なものが見えるはずさ.゚+.(´∀`*).+゚.お前の心の雲もきっと晴れると信じて。
パパより
補遺2: ███隼人の父親は現在行方不明になっています。
補遺3: SCP-816-JP-1に軽度の鬱病の兆候が見られ始めたため、現在SCP-816-JPの飛行許可について再度検討中です。
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scp-817-jp |
評価: +33+–x
保管中のSCP-817-JP。1
アイテム番号: SCP-817-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-817-JPは不透明な布で覆い、サイト-8173に密閉した状態で保管されています。保管中のSCP-817-JPへの接触は禁止します。SCP-817-JPは2週間に一度、Dクラス職員4人で広場まで運び出し、公開しなければなりません。この手続きには以下のような条件が要求されます。
裁判中にDクラス以外の職員は発言しないでください。
割り込みなどの理由で手続きの進行が不可能だと判断された場合、参加したDクラス職員全員にCクラス記憶処理を行ってください。
記憶処理されたDクラスは次の手続きにリサイクルします。
説明: SCP-817-JPは成人男性と同一サイズの大理石彫刻です。SCP-817-JPの胸部には約9cm×9cm×2cm大にくりぬかれた痕跡があります。SCP-817-JPはいかなる物理的衝撃によっても破壊されないという点以外には通常の大理石と同様の性質を持っているように見えます。
SCP-817-JPの変則的な特性は最低3人以上の人物が半径約5m以内に入った時に発生します。SCP-817-JPの影響内に入った3人の人物たちは学歴、人種、性別、および本人の意思と関係なくそれぞれ「裁判官」、「原告」、「弁護人」、「[編集済]」を演じます。この演技において、SCP-817-JPは活性化して動き出し、「被告」を演じます。「被告」以外の役割を決めるメカニズムは未だ知られていません。
非活性化したSCP-817-JPはその時点から15日後、ランダムで周囲の人物を巻き込み、活性化する特性があります。この特性は3人以上の人物が影響内に入らなかった時にも発生します。
演技の内容はいつも裁判であり、「被告」と「原告」は最善を尽くして裁判を進行します。裁判の内容は毎回異なりますが、「裁判官」は「被告」に有利なように裁判を進めるようです。裁判の結果によって二つの結果が表れます。
「被告」が勝訴した場合、SCP-817-JPは「原告」を演じた人物の心臓を取り出し、食べた後に非活性化します。
「原告」が勝訴した場合、SCP-817-JPは正確に胸部の痕跡に沿って自分の一部をくりぬいた後に非活性化します。くりぬかれた一部は非活性化の間に再生します。
裁判の進行が5時間以上継続されると、「弁護人」が裁判の進行状況を無視して途中で割り込む可能性があります。「弁護人」が割り込むと、裁判はまず中止されSCP-817-JPはそのまま非活性化しますが、「[編集済]」によって[データ削除済]。
脚注
1. Aapo Pukk, A Man from Venice, 2006, Republic of Estonia, CC:BY-SA
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scp-818-jp |
評価: +352+–x
アイテム番号: SCP-818-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-818-JPの影響範囲内とその周囲300mは高さ4mの有刺鉄線付きのブロック塀によって隔離されています。塀の周囲は3名の警備員に偽装した、遠隔操作による殺傷が可能な首輪を装備した非武装のDクラス職員による巡回を行い、一般人による侵入を阻害してください。巡回役のDクラス職員には小型の撮影機器を装備させ、その映像を少なくとも10分以上の遅延を発生させた複製を用いて財団職員による監視を行ってください。万が一巡回中にSCP-818-JP-1の声や姿が確認された場合は速やかにSCP-818-JP担当研究チームへ報告を行ってください。
SCP-818-JP-1に暴露した人間は全て地下サイト-81██の収容施設へと収容し、備えられた焼却装置を用いて終了処分してください。この業務には必ずDクラス職員を用いて行い、業務の指示を行う際は必ず3名以上のDクラス職員を介した伝達により行われます。被害者へ何らかのインタビューが必要な場合も同様に3名以上のDクラス職員を介して行ってください。
説明: SCP-818-JPは佐賀県█山に存在する50平方メートルの空き地内で発生する異常現象です。SCP-818-JPの影響範囲内の中心には異常性のない高さ約1mほどの社が存在します。社の内部からはおよそ██個の未知の石片が発見されています。これらの石片に加工を行った形跡が見られることから、何らかの物品が経年劣化や外的要因により崩壊したものであると推測されています。しかし各石片の劣化が非常に激しく、かつ石片の一部が喪失しているとみられ、本来の形を再現する試みは失敗しています。SCP-818-JP内の環境は積雪がある場合を除き常に肉眼で土壌が観察できる状態で固定されています。
SCP-818-JPは敷地内で人間(以下被害者と表記)が現代の日本国内で一般的に善行・礼儀正しいといわれる行為(以下出現条件と表記)を行うことで発生します。出現条件を満たした人間の周囲にSCP-818-JP-1(SCP-818-JP-AとSCP-818-JP-Bの総称)が出現します。
SCP-818-JP-1は外見上およそ70代の老夫婦のように見える人型実体の総称です。それぞれ男性型がSCP-818-JP-A、女性型がSCP-818-JP-Bと呼称されます。出現したSCP-818-JP-1は被害者の行動に対して賛美の言葉を述べ始めます、賛美の言葉はひどく大げさなもので被害者の行動を全肯定する内容であり、「えらい」といった言葉が多く使用されます。この言葉は文法上や単語の意味的に使用が適切でない場合も使用され、その点を指摘した場合も訂正を行わないことから「えらい」という言葉に何らかの執着があると推測されています。
SCP-818-JP-Bが比較的通常通りに会話を行うことができる一方、SCP-818-JP-Aは被害者に対する賛辞の言葉と短い単語のみで会話を行います。ただし、SCP-818-JP-Bの言動も非常に不安定なものであり、しばしば会話の食い違いが発生します。初回の遭遇では、ある程度被害者への賛美の言葉を述べた後SCP-818-JP-1はその場から消失します。
一度SCP-818-JP-1と遭遇した被害者はSCP-818-JPの影響範囲外で条件を満たした場合も、SCP-818-JP-1と遭遇し賛美の言葉を受けるようになります。この行為による被害者への影響はSCP-818-JP-1との遭遇から数えた日数の経過により変化していきます。影響の進行速度は大きく個人差がありますがSCP-818-JP-1との遭遇回数が多ければ多いほど、より早く影響が進行します。確認されている限り影響が最終段階まで到達するために必要な期間は、最短4日から最長20日です。記憶処理を行うことにより、被害者をSCP-818-JPの影響から一時的に脱させることが可能ですが、SCP-818-JP-1の出現頻度の増加は不可逆であるため、ごく短い時間で元の影響進度まで戻ります。
SCP-818-JPの影響進度の目安は以下の通りです。
影響初期
被害者は他者から褒められるという行為に強い達成感を覚えるようになり、積極的にSCP-818-JP-1の出現条件を満たし始めます。また、しばしば被害者の性格がより明るく前向きなものへと変化することが確認されます。これはSCP-818-JP-1の影響ではなく、行動を肯定されたことによる自信の向上が原因だと思われます。
影響中期
SCP-818-JP-1の出現条件が簡易なものへと変化し始めます。同時期に被害者は徐々にSCP-818-JP-1以外の人間からかけられた感謝・賛美の言葉を自身に対する嫌味・皮肉と感じ取るようになり、結果として他者との衝突を引き起こします。この衝突はしばしば器物破損・暴行・殺人などの事件を引き起こす原因となります。
影響後期
SCP-818-JP-1の出現条件が「日本語が話せる」「上手に歩ける」「元気に生まれることができた」などの、出現条件の回避が不可能なものにまで低下します。そのためSCP-818-JP-1の出現条件が常に達成され続け、SCP-818-JP-1が被害者の周囲に存在し続けるようになります。被害者自身もSCP-818-JP-1に深く依存し、SCP-818-JP-1の言動のみに反応するようになります。この段階の被害者は食事や睡眠といった生命維持に必要な活動を行わずに生存することが可能です。
全ての段階において出現するSCP-818-JP-1は他の人間にも観察可能ですが、通常被害者以外の人物に対して反応を示しません。ただし、SCP-818-JP-1及び被害者の知覚内で出現条件を満たすことで、SCP-818-JPの影響範囲内で出現条件を満たした場合と同様にSCP-818-JP-1が出現します。この時の出現条件は被害者の影響時期に左右されるため、最終的には影響終期の被害者に接近するのみで出現条件が満たされてしまう状況になります。また、影響中期以降の被害者の殺害はSCP-818-JP-1の出現条件に抵触するため、被害者の早期回収・早期処分が必要とされます。
SCP-818-JP-1に対する攻撃はSCP-818-JP-1の一時的な撃退以上の成果が見込めず、尚且つSCP-818-JP-1の出現条件を満たす可能性が存在するため、SCP-818-JP-1に対する攻撃は推奨されません。
+ 実験記録
- 実験記録を閉じる
日付: 20██/8/20
対象: D-81801
目的: SCP-818-JP-1への暴露とその経過記録
D-81801に対してSCP-818-JP敷地内のゴミ拾いを行わせた。
D-81801: 見た感じゴミなんて落ちてなさそうだけどよ・・・、これでいいのか。
D-81801がペットボトルの蓋を拾い上げる
██研究員: それを支給したごみ袋の中に投入してください
(D-81801がペットボトルの蓋をゴミ袋の中へ投入した。その直後D-81801の背後にSCP-818-JP-1が出現した。)
SCP-818-JP-1: えらいねぇ~。
D-81801: うお!?
SCP-818-JP-A: ゴミ、えらいねぇ~。拾って。
D-81801: あんたら、いつの間にそこに?
SCP-818-JP-B: 今時ゴミ拾いするなんて、若いのに本当にえらいねぇ~。
D-81801: あー・・・あれは。
(職員からD-81801に自身の意思でゴミを拾ったとの発言をするよう指示がなされる。)
D-81801: いや・・・まぁ、当然のことだからな。
SCP-818-JP-B: いえいえ、それができる人がえらい人よ、ねぇおじいさん。
SCP-818-JP-A: とてもえらいねぇ~。
D-81801: ははは、なんか照れるな。誰かに褒められるなんて久しぶりだ。
(その後、約5分間にわたりSCP-818-JP-1がD-81801へ称賛の言葉をかけ続けた。)
SCP-818-JP-B: これからも続けてね、そろそろ行きましょうかおじいさん。
SCP-818-JP-A: うん、うんうん。
D-81801: おう、じゃあな。爺さん婆さん。
SCP-818-JP-B: ふふふ、挨拶もちゃんとできてえらいねぇ~。
SCP-818-JP-A: お仕事、えらいねぇ~。
SCP-818-JP-1はD-81801の視界外まで移動したのちに消失した。
SCP-818-JP-Aが「お仕事」という単語を発したことからD-81801が業務の一環としてSCP-818-JP-1と遭遇したこと、もしくは財団職員が通信機器を通じてD-81801に指示を行っていたことのいずれかを何らかの方法で察知していた可能性があります。
+ 観察記録
- 観察記録を閉じる
日付: 20██/9/10
対象: D-81801
D-81801がSCP-818-JP-1と接触して約1か月後、地下サイト-81██隔離室内の記録映像です。もはやSCP-818-JP-1は消失することなく常にD-81801に対して賛美の言葉を投げかけ続けています。
SCP-818-JP-B: ちゃんと大人しくできていて、えらいねぇ~。
SCP-818-JP-A: えらいねぇ~、えらい。
D-81801: へへっ、そうやって褒めてくれるのはあんた達だけだよ。
SCP-818-JP-B: それはとても不思議なお話ね。
D-81801: そうなんだよ、誰も俺の手柄を認めないんだ。それどころか逆にどいつもこいつも俺のことを馬鹿にしてくる、「はいはい、わかったわかった、偉い偉い」って感じでな。
SCP-818-JP-B: それはおかしな事ね?私達が褒めているのに。
SCP-818-JP-A: 私達、知っている。
SCP-818-JP-B: そうねぇ、だってあなたは日本語が話せてえらくて、目がしっかり見えてえらくて、呼吸ができるえらい子だものね。
SCP-818-JP-A: 人、殺してえらいねぇ~、上手。
SCP-818-JP-B: Dクラスになれてえらいねぇ~。
SCP-818-JP-A: 心臓、動いたえらいねぇ~。
SCP-818-JP-B: 生まれてきてえらいねぇ~。
SCP-818-JP-A: えらいねぇ~、えらいねぇ~。
SCP-818-JP-B: ちゃんとお仕事出来て、えらいねぇ~。
SCP-818-JP-A: お仕事、えらいねぇ~。
その後の終了処分によりD-81801が死亡するまで、SCP-818-JP-1の賛美の言葉は継続していました。収容から終了処分までの間、D-81801は食事や睡眠を行いませんでしたが問題なく生存していました。
また、SCP-818-JP-Bの「ちゃんとお仕事して出来て、えらいねぇ~」の発言の直後、D-81801およびSCP-818-JP-1を観察・監視していた財団職員█名の周囲にSCP-818-JP-1が出現しました。以前の観察・監視ではSCP-818-JP-1の出現は確認されなかったため、何らかの形でSCP-818-JP-1の知覚範囲が拡大している、もしくは被害者のSCP-818-JPに対する暴露の進行状況で一時的に知覚範囲が拡大している可能性があります。後の実験で、被害者のSCP-818-JP-1との遭遇が後期になることによって、映像・音声を通じてSCP-818-JP-1の出現条件が満たされることが判明しました。複製された記録の視聴ではSCP-818-JP-1の出現は確認されませんでした。
+ インタビュー記録
- インタビュー記録を閉じる
日付: 20██/9/13
インタビュアー: ██研究員
インタビュー対象: SCP-818-JP-1
██研究員は偶発的な事故によりSCP-818-JPへ暴露し、既に影響初期まで影響が進行しています。そのため、終了処分前に自身が直接SCP-818-JP-1へインタビューを行うことを希望しました。
通信機器を通じた他の職員へのSCP-818-JP暴露を防ぐために、インタビューはSCP-818-JPの影響範囲内で通信機能のない記録機器を用いて行われました。
記録開始
(██研究員がSCP-818-JP内にある社に賽銭および礼拝を行う。直後にSCP-818-JP-1が██研究員の背後に出現した。)
SCP-818-JP-A: お参りえらいねぇ~。
SCP-818-JP-B: 今日もお仕事頑張っていてえらいねぇ~。
██研究員: ありがとうございます。今日はいくつかあなた方に質問を行いたいのですが構いませんか?
SCP-818-JP-B: あら?何かしら?
██研究員: あなた方はいつからここに?
SCP-818-JP-A: いつも。
SCP-818-JP-B: そうねぇ昔からいるわね、おじいさん。
██研究員: 具体的に何時からここにいるのかは覚えていませんか?
SCP-818-JP-B: 私達が偉い時からよ。でも帰ってきたばっかりよ。
██研究員: 一体どこから帰ってきたのですか?
(直後、SCP-818-JP-Aが不意に泣き出し始める。SCP-818-JP-Bがそれに寄り添い、SCP-818-JP-Aが落ち着くまでの約10分間会話が中断される。)
██研究員: 落ち着きましたか?インタビューを再開しても構わないでしょうか?
SCP-818-JP-A: 茶色黄色白い、狭い柔らかい部屋、ゴミ箱で、他にも沢山いた。
██研究員: はい?ああ、話の続きですね、どうぞ。
SCP-818-JP-B: 毎日毎日、意味のない歌をうたわされて、他の人達と無理やり仲良くするように言われて、私達の役目は終わったと嘘をいわれたわ、そんなことはあり得ないのに。
SCP-818-JP-A: 何度も同じところ歩いた。不味いもの食べた。熱いお湯かけられた。あいつらはいつも私達を見下していた。そして私達を褒めた。私達を褒めた。私達を褒め続けた。笑っていた。
SCP-818-JP-A: 褒めるのは私達であるべきだ。だから戻ってきた。
SCP-818-JP-B: お役目のためにね。
██研究員: 役目とは?
SCP-818-JP-B: あなた達には私達が必要でしょう?
SCP-818-JP-A: いないと、困るよね?
██研究員: いや、まぁ・・・話を戻します。何故あなた達は人間を褒めるのですか?
SCP-818-JP-B: もちろん、えらいことだからですよ。
SCP-818-JP-A: 良い子、えらいねぇ~。
██研究員: そうだとしてもあまりにも褒める基準が甘くなり過ぎなのではないでしょうか?
SCP-818-JP-B: えらいことに大きいことも小さいこともなくて、良いことも悪いこともないわ。それに褒められて、嬉しくない人はいないでしょう?みんな喜んでくれるわ。
██研究員: そうですか、では何故あなた達は褒めるという行為を通して人間に悪影響を与えるのですか?。
(SCP-818-JP-1の笑い声)
SCP-818-JP-B: みんな幸せでしょうに。
██研究員: まぁ、そう見えなくもありませんが、少なくとも普通の生活を送ることは不可能な状態です。
SCP-818-JP-B: ええ、本当に幸せそうねぇ。私達に褒められて。
SCP-818-JP-A: 幸せに違いないだろうな。
██研究員: 何故あなた方に褒められることが幸せだと考えるのですか?
SCP-818-JP-A: 真似事じゃないから。
SCP-818-JP-B: そうねぇ、私達が偉いからよねおじいさん。
██研究員: それは一体どういう意味ですか?
SCP-818-JP-A: 質問できてえらいね~。
SCP-818-JP-B: 私達が偉いから褒めるのよ。私達が認めてあげているのよ。
SCP-818-JP-A: 嬉しいだろ?
SCP-818-JP-B: そうねぇ、おじいさん、褒められて嬉しいのは私達が偉いからなのよ。私達は本物なの、だから私達に褒められると嬉しいの。
██研究員: はぁ・・・では、何故あなた達が偉い存在であるのか理由を教えてください。
SCP-818-JP-B: もちろん昔からそう決まっていたからよ。みんなみんなそう言っていたわ。だって私達は偉いのよ。
SCP-818-JP-A: 褒める事は、褒められる事より偉い。
SCP-818-JP-B: そうねおじいさん、その通りですね。あの部屋の人達もそうしていたわ。それに、私達が褒めるとみんな喜ぶのよ。それが証拠よ。ほらね、私達は偉いでしょう?
██研究員: ・・・ええ、あなた方の偉さは十分に伝わりました。では、次の質問ですが・・・。
SCP-818-JP-A: ねぇ。
██研究員: 何でしょうか?
SCP-818-JP-A: きっと多分、世界を守ることは、一番えらいことだ。
SCP-818-JP-B: 間違いないわおじいさん、それはきっと一番えらいことよ、えらいねぇ~。
SCP-818-JP-A: だが君達は決して正義ではない。君達が世界を守るために時には善行とかけ離れた行いをすることを私達は知っている。
SCP-818-JP-B:信念に則り他者の正義を押しのけ、必要であれば多くの犠牲も許容する事も知ってるわ。それで可哀想な目に合っている子達もいるでしょうね。
SCP-818-JP-A: だが、その行いがずっとえらいことだということを私達は理解しているよ。
SCP-818-JP-B: あなた達がその信念に則って、私達に何かをしようと考えていることも知っているわ。そしてそれはとてもえらいことよ。
SCP-818-JP-A: 私達は君達を認めるよ。それが私達の役割だ。
SCP-818-JP-1: だけど忘れてはいけないよ。
SCP-818-JP-1: 私達の方がずっと偉い。
SCP-818-JP-1: 私達より偉いものは存在しない。
SCP-818-JP-1: 私達が一番偉くて偉くて偉くて偉くて偉くて偉くて偉いんだ。
SCP-818-JP-1: 君達には褒められる義務がある。それから逃げちゃいけないよ?だって偉いのは私達なのだから。
SCP-818-JP-A: これからも頑張ってね。
SCP-818-JP-B: 私達のために、褒められるために、この世界を守ってね。
SCP-818-JP-A: それはとってもえらいことだよ。
██研究員: わかりました。これからも私達は世界を守るために十全の努力をしていくことを約束します。
SCP-818-JP-A: えらいねぇ~。
SCP-818-JP-B: 本当にえらいねぇ~、そのうち他の子達も褒めなきゃいけないわね、おじいさん。
SCP-818-JP-A: うん、みんな。
██研究員: ええ、きっと皆さん喜びますよ。
SCP-818-JP-A: えらい子沢山、えらいねぇ~。昔のようにえらい・・・。
SCP-818-JP-B: 本当にそうね、しばらく留守にしたせいで今はボロになってしまったけど、すぐに昔みたいに立派になるわよ。だって私たちは偉いんだもの。
SCP-818-JP-A: みんなきっと、戻ってくるさ。
SCP-818-JP-B: ええ・・・そうなると良いわね、おじいさん。・・・・・・・・・みんなって一体誰のことだったかしら、おじいさん?
SCP-818-JP-A: ・・・・・・・・・さあ?
(その後20分間、重要でない会話を行い、SCP-818-JP-1は消失した。本来予定されていたインタビュー内容が残っていたのにも関わらず、██研究員がSCP-818-JP-1を引き留める様子は見られなかった。)
記録終了
インタビュー終了後、██研究員は影響中期まで影響が進行していることが確認されたため、記録機器が回収された後に終了処分を受けた。インタビューの内容からしてSCP-818-JP-1は以前、病院もしくは老人養護施設に類似した機能を持つ施設に在籍していたのではないかと推測されています。また、インタビューの途中から明らかにSCP-818-JP-Aの発言内容が単純な称賛の言葉や短い単語のみでなく、SCP-818-JP-Bと同等の言動を行っている様子が確認されていました、このような変化を引き起こした要因は現在不明のままです。
SCP-818-JP-Bの発言から、財団に所属していること自体がSCP-818-JP-1の出現条件に新たに追加された可能性が存在するため、SCP-818-JPに関する業務は全てDクラス職員を用いて行われることが決定されました。
追記20██/10/6 :現在、SCP-818-JPの近隣の収容サイトで業務を行っていた複数の財団職員より、業務中に「えらいねぇ~」という言葉を聞いたと報告が行われました、また、その内一名は男性の声で「えらいなぁ~」という言葉を聞いたと報告しています。現在のところSCP-818-JP-1の出現が確認された例は存在しませんが、SCP-818-JP-1の影響範囲の拡大、SCP-818-JP-Aの能動的な活動が行われているなどの可能性が示唆されています。
これらの現象についてはまだ十分な情報が集まっておらず、引き続き調査が行われています。また、Dクラス職員によるSCP-818-JP隔離防護塀周囲の巡回を行わせることでSCP-818-JPの影響範囲の拡大が行われていないか常時検査が行われることが決定しました。
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scp-819-jp |
評価: +38+–x
アイテム番号: SCP-819-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-819-JPはその性質のため現在収容されていません。財団は、SCP-819-JPが接触する可能性のあるすべての米陸軍退役軍人に対し、常時監視プログラム「アイビー作戦」1による監視を徹底してください。SCP-819-JPが当該作戦対象である退役軍人に接触を図った場合、直ちに最寄りのフィールドエージェントならびにサイト-21に待機中の機動部隊シータ-8(「ライ麦畑の捕獲者」)によりSCP-819-JPの確保・収容・保護を試みてください。
説明: SCP-819-JPは米陸軍特殊作戦群大佐の正装を着た、S.████陸軍大佐と名乗る外見年齢50歳前後の中肉中背の人型実体です。SCP-819-JPは米陸軍に所属していた兵士のうち、過去█年以内の失敗した作戦によって軍を退役せざるを得なくなり、その結果として重篤な社会不適応を示す人物の前にランダムに姿を現し、説得対象とします(以下説得対象となった人物をSCP-819-JP-1とします)。
SCP-819-JPは、SCP-819-JP-1に対し、軍務への復帰と前線での作戦従事を提案し、その提案に承諾するよう説得します。SCP-819-JPによる説得にはミーム的影響力がないことが判明しています。SCP-819-JP-1が説得に同意した場合、SCP-819-JP及びSCP-819-JP-1は同時かつ瞬間的にその所在地から消滅します。同時にGPS、マイクロフォンも機能を停止します。SCP-819-JP-1がSCP-819-JPの説得を拒否し続ける、あるいは物理的脅迫により拒否された場合、SCP-819-JPは1時間ほどで説得を諦め、SCP-819-JP-1の前から徒歩で立ち去り、1km程度を歩いた後消失します。
SCP-819-JPがSCP-819-JP-1に提案する作戦は、現在の世界における米陸軍の展開と一致した地域における、極めて危険であるが高い価値を持つ秘匿作戦である、ということのみが判明しています。これについてSCP-819-JPは、SCP-819-JP-1が説得に応じた場合、作戦の具体的内容を説明するとSCP-819-JP-1に発言します。多くの場合、SCP-819-JP-1はこの発言を受け入れます。なお、200█年から、米陸軍が介入している紛争地域で、米陸軍装備ですが、米陸軍とも米陸軍が軍事役務を外部委託している民間軍事企業とも異なる軍事勢力による作戦行動が確認されるようになりました。これら作戦行動には必ず[削除済][編集済]などの戦争犯罪が含まれています。財団はこれら作戦行動とSCP-819-JPの関連を調査中です。
補遺1
以下はSCP-819-JPの説得を受けながら、それを固辞した数少ない例である元米陸軍特殊作戦群所属████退役少尉と、SCP-819-JPの会話記録抜粋です。
アイビー作戦録音記録████-██抜粋
<録音日時:200█/██/██>
録音対象:SCP-819-JP、████退役少尉
SCP-819-JP: [前略]君の陥っている窮状については深く同情している。君が国家に対して行った貢献に対し、国家は全く見合った対価を払っていない。結果、君は退役軍人年金と清掃作業員の仕事で辛うじて食いつなぐ窮状に陥っている。だが、私は君を救い出すことができる。
████退役少尉: 救い出す? どうやって? 退役軍人年金の増額でもあるのか?
SCP-819-JP: いや、もっと崇高で、そして君の能力を活かせる手段だ。
████退役少尉: それは、もしかして……。
SCP-819-JP: そう。そのもしかだ。私は君のアフガンで見せた能力を高く評価している。あの作戦は失敗だったが、それは無能な作戦将校と情報部の誤情報によるものだ。君はそんな悪条件の中で粘り強く戦い、戦友を多く救い出した。その能力を、再び国家のために用いてはもらえないだろうか?
████退役少尉: ……どんな形でだ?
SCP-819-JP: 詳しくは説明できない。しかし極めて危険だが、同時に国家にとって非常に大きな意味を持つ秘匿作戦であるとだけは明言しておこう。
████退役少尉: 秘匿作戦……。
SCP-819-JP: それについては、君が承諾してくれるならば、詳細を明かす。この作戦に君が参加してくれるならば、国家は君に対し深い敬意と報酬を払うだろう。それは君の名誉を回復し、窮状を脱するチャンスになる。ぜひ、承諾してほしい。
████退役少尉: ……断る。
SCP-819-JP: なぜかね?
████退役少尉: 俺はもう軍務に戻る気はない。確かに生活は苦しいが、あんたらの下で戦うよりまだマシだ。
SCP-819-JP: 君が戦いの中で苦しんできたことについては深く理解しているつもりだ。しかし、名誉を回復し、国家に対する忠誠と義務とを果たしてこその軍人でないかね?
████退役少尉: 俺はもう軍人じゃないし、軍人に戻る気もない。帰ってくれ。
SCP-819-JP: 待ち給え。私には君の助力がどうしても必要なのだ……。この
████退役少尉: (SCP-819-JPの発言を遮り)黙れ! さもないと(ショットガンのコッキング音)
SCP-819-JP: ……。君がそこまで固辞するのであれば仕方がない。私は帰るとしよう。君はもっと骨のある人物だと思っていたがな。
████退役少尉: とっとと帰れ! [罵倒]
<抜粋終了:200█/██/██>
補遺2
財団は████退役少尉に対し、SCP-819-JPとの接触についてのインタビューを行いました。以下はその記録です。
対象: ████退役少尉
インタビュアー: エージェント・シュシュニコワ
備考: 当インタビューはSCP-819-JPとの接触者の心理的状態を調査するために行われました。
<録音開始, 200█/██/█>
エージェント・シュシュニコワ: それでは録音を開始します。
████退役少尉: ああ、なんでもいい、聞いてくれ。
エージェント・シュシュニコワ: あなたはS.████陸軍大佐と接触しながら、その説得を拒否しました。なぜですか?
████退役少尉: あいつは軍務にさえ復帰すれば過去の汚名は灌がれ、国家は俺に敬意と代償を払うと言ってきた。しかし俺はそうしたキレイ事で踊らされてきた連中を沢山見てきた。
エージェント・シュシュニコワ: それだけですか?
████退役少尉: いや、それだけじゃない。秘匿作戦というのが……気にいらなくてな。
エージェント・シュシュニコワ: 秘匿作戦、と、いいますと?
████退役少尉: 俺は秘匿作戦の一環で、グアンタナモでテロリスト容疑者たちの尋問に関わったことがある。ろくな証拠もない相手に、頭に袋をかぶせて水責めするんだ。裸にして四つん這いにし、動物みたいに扱ったことや[削除済]したこともある。国家は何かというと名誉と忠誠と義務を尊ぶが、そんな仕事の何処に名誉があって、何処に忠誠心が抱けて、何処に義務感が持てると思う? あの大佐の言い分は、俺達にそういうことをさせた奴らと同じだったんだ。
エージェント・シュシュニコワ: ですがそれは一定の理があることでは? 少なくとも米国にとっては?
████退役少尉: いや、違うな。俺が見た……そしてやったのは……。必要悪をお題目にした、際限ない人間の堕落だったよ。自分より弱い立場の人間をいたぶるサディストに、人間は容易に堕ちてしまうんだ。あの後異動になったアフガンでの秘匿作戦でも、俺達は[削除済]や[編集済]を……だからあの作戦は失敗すべきだったんだ。
エージェント・シュシュニコワ: その結果、今のような窮状に陥ってもですか?
████退役少尉: それは多分……。俺に課せられた罰なんだ。必要悪を免罪符にしてグアンタナモやアフガンでやった事の報いが、俺に降りかかっているんだ。俺はこれを甘んじて受けなければならない……。
エージェント・シュシュニコワ: 分かりました。ところで、S.████大佐の説得に応じた兵士は、いまどうしていると思いますか?
████退役少尉: ……死んでりゃ問答無用に地獄行きだし、生きてりゃ俺達がやったような最低の作戦に属しているんだろうよ。罪もない民間人や容疑があるだけという人間を[削除済][編集済]するような。
エージェント・シュシュニコワ: ありがとうございます。質問はここまでです。
<録音終了, 200█/██/█>
終了報告書: ████退役少尉にはAクラス記憶処置が施され解放されました。
Footnotes
1. 重篤な社会不適応を示した退役軍人に体温作動式GPSとマイクロフォンを埋め込み常時監視するものです。
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scp-820-jp |
評価: +131+–x
アイテム番号: SCP-820-JP
収容中のSCP-820-JP。
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-820-JPは、常に移動を続ける無人潜水艦内部に作られた特別収容室内に収容されます。SCP-820-JPは定期的に地上に返され、状態を検査されます。地上にある間、SCP-820-JPは2時間おきに必ずその場所を移され、検査員及び収容担当職員はそれに付いて移動します。SCP-820-JPが3時間以上同じ場所にとどまっている場合、付属の発信機より信号が出され、即座に機動部隊が回収に向かいます。
説明: SCP-820-JPは、柄から刃の部分にかけて柄を囲むように這い上がっていく蛇が施された、アステカ文明下の意匠が施された石造りのナイフです。柄の部分には漢字で「如来観光 観光促進課 謹製」との文字が彫り込まれており、財団はこの企業について調査を続けています。SCP-820-JPは同一の材料で作成されたものに比べてはるかに高い破壊への耐性を有しており、現在まで傷をつける試みは失敗しています。
SCP-820-JPを██分以上直接視認した人間は、それを用いて「なるべく目立つ形で」人を傷つけてみたい、という衝動に襲われます。
SCP-820-JPを用いての殺人、ないし重傷を負わせる事件が発生した際に、SCP-820-JPはその事件に自らの異常性を分け与えます。(以下、この事件をSCP-820-JP-Aと呼称)
SCP-820-JP-Aは、前述の特性によりほとんどの場合白昼に、また人通りの多い場所で行われます。この性質から、発生したSCP-820-JP-Aは現在までその殆どが現行犯逮捕という形で警察に記録されています。SCP-820-JP-Aの「逮捕」が行われた直後から、その異常性が発現します。財団による隠蔽工作、記憶処理によって事件自体が秘匿された場合、後述の異常性は発生しません。
SCP-820-JP、またSCP-820-JP-Aについてのあらゆる情報は、それを認識したものに微弱な精神汚染を引き起こします。SCP-820-JP/-Aについての情報を認識した人間は、SCP-820-JP/-Aについて、「興味を惹かれる」「魅力的だ」などといった印象を持ち、自己の倫理的判断力をやや喪失し、機会を作ってその付近へと向かおうとします。
SCP-820-JP-Aの現場へと人が集まるにつれ、その周囲にダーク・ツーリズム1的観光空間が形成されます。通常のダーク・ツーリズムと異なっている所は、本来のダーク・ツーリズムに見られる「反省」「畏敬」などの性質がほとんど喪失し、単純に娯楽、物見遊山目的での観光がメインとなる点です。結果としてSCP-820-JP-A現場周辺には食事施設や、SCP-820-JP-Aをモチーフとしたイメージキャラクター、お土産屋などが形成されます。これらに関連する情報もまた、同様の精神汚染効果を持ち、結果としてSCP-820-JP-Aを中心とした観光空間は際限なく増大します。SCP-820-JP-Aの放置は、周囲の経済活動に多大な影響を及ぼし、無計画に私財を投げ打ってのSCP-820-JP-A周辺への出店や参入が発生します。
補遺-ア: 資料-SCP-820-A記録
事例
事件内容
結果
-1
██県の観光地である████付近にて13歳の少年が警備員の男性を刺殺。少年は現行犯逮捕。
後述
-2
白昼に首都圏の路上で発生。死者3名、重軽傷者16名。犯人は即座に現行犯逮捕。
事件現場が歩行者天国であったことから、現場付近の商工会が慰霊パレードを計画。ブラジル人ダンサーを呼びカーニバル形式でパレードを行おうとした為、南米にSCP-820-JPの情報が流出。財団による鎮静後もブラジル料理店が██件、50m2の空間に乱立した。
-3
村祭りの最中、のど自慢大会を開催していた舞台上で名古屋から呼ばれた芸人が女子中学生に刺殺された。
犯人の母親が手記を出版。観光資源の少ない村であった為、村はSCP-820-JPに対して総力をあげて協力。「わくわく██さん(犯人)会館」が建てられ、犯人の自室が会館の一部にそのまま移植される計画が持ち上がった。計画段階で財団工作により鎮静。
-4
住宅街にて独居老人を殺害。自己顕示の為犯人は死体を細切れにし路上にばらまく。数日後に逮捕。
偶然、被害者に看護師としての従軍経験があり、 自宅倉庫に当時の資料が数多く存在していた為それらを用いて被害者自宅が展示室に改造される。生前の被害者の声をサンプリングして用い、資料の数々を被害者の肉声で解説するソフトの開発依頼が出された。計画段階で阻止。この際、SCP-820-JPが犯人の自宅から発見された。
-5
後述
後述
補遺-イ: 事例-820-JP-A-1
事例-820-JP-1は、SCP-820-JPの存在が初めて確認された、また最大の被害を及ぼした事例です。影響を受けた人間は重軽度合わせて█万人に上り、財団フロントのメディア各社をあげてのサブリミナル記憶処理が行われました。
対象: SCP-820-JP-A-1現場
潜入エージェント: エージェント・黒津土
付記: エージェント・黒津土が付近に到着後、SCP-820-JP-A-1まで徒歩で向かった際の記録音声となる。
エージェント・黒津土: …到着しました。情報通り、明らかに異常な状況です。当該の事件についての情報に情報汚染効果があることは確かなようです。
サイト職員: 了解。感覚の防護装備は万全ですか?
エージェント・黒津土: 視覚、聴覚、嗅覚全て万全です。とりあえず、真っ直ぐ事件現場に向かいます。
サイト職員: 何か見つけたらすぐに報告してください。
エージェント・黒津土: はい。…今は、なんというか、うーん、市場?のような場所まで来ました。左右に屋台のお土産屋さんが出来てます。すごい人です。この道の先に、事件の現場があると思われます。
エージェント・黒津土: なかなか前に進めません。……肉を焼く…匂いがします。……前方で、「めった切り焼き」…というものを売ってます。スパイシーでいい匂いですね。500円です。買いますか?
サイト職員: いえ。そのまま進んでください。
エージェント・黒津土: あっ、解体ショーです!マグロの解体ショーが道の真ん中で行われてます。職人は事件の容疑者が着ていた格好に身を包んでいます。周りでたくさんの人が記念撮影を。撮りますか?
サイト職員: いえ、そのまま進んでください。
エージェント・黒津土: ……もう事件現場に到着するんですが…事件現場は、テントに覆われて見えません。入口に…変なものが立っています。
サイト職員: 変なもの?オブジェクトですか?
エージェント・黒津土: いえ。着ぐるみです。こちらに手を振っていますよ。事件の容疑者の格好をした豚の着ぐるみです。ゆるキャラですね。かわいいなあ。記念写真撮ってもいいですか?
サイト職員: どうでも良いですから、早くテントに入ってください。
エージェント・黒津土: 了解…テントに入りました。入場料は1800円でした。小学生以下は半額のようです。中では、容疑者のこれまでの人生についてパネル展示が開催されています。等身大の蝋人形や、事件当時を再現したパノラマがあります。内部にもう一つ、事件現場を間近で見られるテントがあるようです。1時間くらいかかりそうですが、並びます。
サイト職員: 構いません。
エージェント・黒津土: ……中に入りました。スポットライトで照らされたむき出しの地面に、血の痕が残っています。…後ろのお客さんもいらっしゃるので、とりあえずすぐに出ます。今日は横の町民会館で容疑者の母のトークショーもあるようですが、そちらも行きましょうか?
サイト職員: 結構です。すぐに戻って来てください。
エージェント・黒津土: いえ、せっかくですからもう少し調査してから帰ります。あそこにミュージアムショップが。お土産は何がいいですか?ペナントですか?みんなで食べられる、小分けのお菓子の方かな…「惨殺クッキー」というのが売ってますよ。試食もあります。粉々に砕いたクッキーをラズベリーなどのドライフルーツと一緒にチョコで固めてですね…
サイト職員: いいですからすぐに戻って来てください!
<録音終了>
終了報告書: 最終的に、エージェント・黒津土はSCP-820-JP-A-1現場付近で多数の買い物を行い、多くの手荷物を抱えた状態で18時間後に帰還した。持ち帰った購入品にはなんら異常性は認められなかった。帰還後の検査により、音声で記録を受け取っていたサイト職員は無事であったものの、エージェント・黒津土にはSCP-820-JP-A-1現場潜入当初から認識汚染の兆候が見られたため、途中からサイト職員にエージェントを放置するよう命令が下された。エージェントは帰還後即時治療が行われた。
補遺-ウ: 事例820-JP-A-5(SCP-820-JP-1)
2010/06/██、サイト-81██を一般人男性が訪問。男性はインタビューののち即時記憶処理を施され、自宅へと帰された。
対象: ██氏
インタビュアー: エージェント・木村
エージェント・木村 では質問を開始します。まず…なぜここに来たのですか?
██氏: いんや、ここにな、あんだろ。あれだよ、あれ。ナイフ。あれが見たくてな。
エージェント・木村 ナイフ?そりゃ…ナイフくらいあるかもしれませんが2…なんでまた。
██氏: 物珍しさだよ。なんかあるって噂を聞きつけてさ、いっぺん見て見たいなあ、と。観光ってそういうもんだろ。なんで見に行くのって言われても、なあ。
エージェント・木村 …どなたかから、その噂を聞いたのですか?
██氏: うーん、覚えてねえなあ。たまたま近くまで来てよ、そういえばそんなもんがあったなーって、来て見たんだけどここはいいとこだね。██駅から車で██くらいのとこにこんなとこがあるんだね。
エージェント・木村 …えっと、車で…来たんですか?
██氏: タクシーで来たよ。運転手にこれこれこういうやつがーって伝えたら、ありゃー珍しいとこ行くんですねって言って連れて来てくれたよ。
エージェント・木村 …もう結構です。ありがとうございました。
██氏: ところで、そのナイフってどこにあんの?
<録音終了>
終了報告書: 記録から、彼を連れてきたタクシー運転手にも尋問を行ったが、SCP-820-JP、またサイト-81██の場所をどうやって知り得たのかは覚えていなかった。タクシー運転手もまた、「風の噂」でそれらの情報を知ったと証言した。
未知の手段によってSCP-820-JPの場所を特定し、観光目的で訪れる人間の数は収容以来増加を続け、最終的にサイトへの取材が申し込まれるまでに発展したことから、財団サイトの特定を防ぐ目的で、SCP-820-JPは現在の収容室に移動されました。
脚注
1. 破壊・死・虐殺などの空間を目的とした観光形態。日本における広島原爆ドームやひめゆりの塔、福島第一発電所などが該当する。
2. この時点では、男性の訪問がSCP-820-JPによるものだとは確認されていなかった。
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scp-821-jp |
評価: +66+–x
SCP-821-JPの頭部。
アイテム番号: SCP-821-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-821-JPは防音処理を施した標準人型オブジェクト収容室に収容されます。現在のSCP-821-JPは完全に収容されている状態にありますが、SCP-821-JPが自発的な行動を見せた場合は迅速に管理者に連絡してください。SCP-821-JP-1との会話の試みは継続されます。詳しくは補遺3を確認してください。
説明: SCP-821-JPはかつて日本人女性████氏であったと推測される人型実体です。SCP-821-JPに自発的な行動は確認されず、またSCP-821-JPとの意思疎通の試みは今まで成功していません。SCP-821-JPに代謝や加齢の兆候は確認されていません。
SCP-821-JPの頭部は直径40センチメートルのメリーゴーラウンドに置き換えられています。メリーゴーラウンドは常にスケーターズ・ワルツ、美しく青きドナウなどの音楽を流しながら稼働し続けています。その木馬のうち1体には人型実体(以下、SCP-821-JP-1と表記)が搭乗しています。SCP-821-JP-1には観察者に向かって手を振る、観察者の姿を目で追うなどの行動が見られ、外部を認識している可能性が高く、自発的な行動が可能だと考えられます。SCP-821-JP-1に対する物理的干渉は成功しておらず、回収は現時点では不可能です。また、SCP-821-JP-1が木馬から降りる様子は確認されていません。
SCP-821-JPの頭部のメリーゴーラウンドは36秒で時計回りに1周します。SCP-821-JP-1の形態は、メリーゴーラウンドの動きに合わせ形態aから順に形態iへと向かって変化します。1周が完了すると同時に形態iから形態aへと移行し、この変化は常に繰り返されます。以下がその一覧です。
形態a
生後間もない、臍の緒が伸びたままの乳児。布に包まれ木馬の引く馬車に横たえられている。
形態b
幼稚園児と見られる。妖精を模した衣装を着用し、鈴を鳴らしている。
形態c
新品と思われるランドセルを背負っている。シロツメクサで作られた花冠を頭に乗せており、もう1つの花冠を手に持っている。
形態d
██市立██小学校の指定体操服を着用しており、メダルを掲げている。
形態e
風船とポップコーンの容器を手にしている。これらは神奈川県内の遊園地[編集済]にて販売されていたものと確認された。
形態f
██市立██中学校の制服を着用しており、楽譜を手に歌っている。曲目は「大地讃頌」であると確認された。
形態g
██市立██中学校の制服を着用しており、卒業証書を抱えている。
形態h
私立██高等学校の制服を着用しており、██市高校生陸上大会の賞状を手にしている。
形態i
顔色は蒼白であり、全身に打撲痕が見られる。この形態を取った後SCP-821-JP-1は形態aへと移行する。
SCP-821-JPは20██年12月█日、連絡の取れない状態であった████氏の安否を心配した通報に応じ、警察が████氏の自室に立ち入った際に発見されました。カバーストーリー「心労からの自殺」を適用し、事件関係者には記憶処理を施しました。SCP-821-JPの頸部以下の身体的特徴が████氏のものと一致していたことから、SCP-821-JPは████氏が何らかの手段を以って異常性を獲得したもの、或いは████氏の複製と見られます。████氏の捜索は継続されます。
補遺1:通報した██氏へのインタビュー記録
[前略]ひどい旦那さんだったんだって。見せてくれたんです、あの人の体、今も傷が残っていました。子供の存在だけが支えだった、って。それで、とうとう子供さんを連れて家を出て。なのに、その後すぐに子供さんも旦那さんから受けていた暴力が祟って亡くなってしまったって……それでこっちに越してきたって、仰ってました。辛いことだっただろうに、話してくれたんです。[嗚咽]少しでも、あの人の力になりたかった、楽になればって。でも、私じゃ無理だった、助けられなかった、どうして、あんなにいい人だったのに、██さんが、こんな目に会わなきゃいけなかったの。[しばしの号泣]子供さんのことですか。いえ、私は話に聞いていただけで。顔とかは、分からないです。ああ、私、██さんのこと、何も知らなかったんですね。[後略]
補遺2:██氏の自室に残されていた遺書
私は馬鹿な母親でした。
██にずっと支えられ続けてきたのに、最後の最後で██を守ってあげることが出来なかった。
ごめんなさい。
██は私のものだ。あいつなんかに渡したくない。
補遺3: SCP-821-JPの発する音楽の影響により、SCP-821-JP-1の発声を補足するのは困難です。現在、SCP-821-JP-1の言葉は一方的であり観察者との会話は成功していません。以下がこれまでに読唇により得られたSCP-821-JP-1の言葉の一覧です。
「おかあさん」
「もういいでしょ」
「いやだ」
「たすけて」
「おろして」
SCP-821-JP-1はどの形態においても常に苦悶の表情を浮かべていることが確認されました。
補遺4: 現在に至るまで、████氏の実子にあたる人物は確認されていません。
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scp-822-jp |
評価: +72+–x
評価: +72+–x
クレジット
タイトル: SCP-822-JP - 外閣感冒
著者: ©︎stengan774
作成年: 2020
この著者の他の作品
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財団記録・情報保安管理局より通達
以下のファイルには複数の疑念が未検証の状態のまま存在します。担当職員は脚注で示される疑念を調査し、直ちに現行版の追記・修正を行ってください。
— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ
[回収された画像]: 収容後のSCP-822-JP。SCP-822-JP-01は映っていない。
アイテム番号: SCP-822-JP
オブジェクトクラス: Euclid Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-822-JPの大部分は現在無力化されていますが、その関連記録及び物品は可能な限り早く発見・収容される必要があります。SCP-822-JP-02からSCP-822-JP-18の残骸はそれぞれ鋼鉄製円柱容器に入れて冷凍後、サイト-81AMの小型アイテム保管庫に安置してください。
説明: SCP-822-JPはかつてサイト-8141に収容されていたと記録されているオブジェクトです。サイト-8141における壊滅的収容違反(事案822-JP-Aを参照)の発生に伴い、SCP-822-JPに関するほぼ全ての情報はデータの破損その他の要因によって失われました。
財団職員が現場に到着した際、すでにSCP-822-JPは無力化されていました。財団による元々の収容文書や付随する記録を復元する試みの成果としていくつかの記録が回収されたものの、未だSCP-822-JPについては不明瞭な点が多く残されています。
[回収された記録]
説明: SCP-822-JPは複数の人型存在(SCP-822-JP-01からSCP-822-JP-18)により構成される集団です。SCP-822-JP-01を除き、SCP-822-JP実例はいずれもモンゴロイド系成人男性の特徴を持つ身体であること、頭部が何らかの物品に置換されていること、燕尾服または軍服1を着用していること、食事・排泄・睡眠など一切の生理的な行動を行わないことが共通しています。
SCP-822-JP-01を除いたSCP-822-JP実例は、常に直立不動の姿勢を保ち平坦な抑揚で、中断すること無く各個体が特定の文言の発声作業へ反復的に従事しています。各個体の特定文言はワードサラダ様の単語羅列から明確な意味を持つ数万文字の文章群に至るまで様々な例が確認されていますが、内容は概ね選民思想、全体主義、"宵の国"あるいは"夜"と呼ばれる何者かとの戦争、輝かしき"帝国"に関連するプロパガンダと非論理的考察が集約された、"演説のような"と形容される強い口調の主張であることには留意すべきです。
SCP-822-JPは19██/██/██、日本国東京都██区の地下鉄██駅ホームにてSCP-822-JP-022が突如出現したことで初めて財団に捕捉されました。周囲の一般人からの激しい頭痛とショック症状の訴え、鉄道軌条の破壊、ダイヤグラム輻輳異常3の報告に対し当該現場に機動部隊も-9("都の狩人")が派遣され、同部隊員2名のMIAを招きながらもSCP-822-JP-02を確保することに成功しました。適切なカバーストーリーの流布後、SCP-822-JP-02の影響を受けた12名の一般人は医学的判定による推測に基づき財団倫理規定に準じて終了されました。
SCP-822-JP-02収容後の研究によって、その発声内容がOPREmpr-0000314に関連した重要な情報源であると判断されたため、同様の特徴を持つ人型実体の本格的な確保作戦が展開されました。以下はその成果として作成された、既知のSCP-822-JP実例リストです。
番号
置換された頭部
発声内容
注記
01
特筆すべき点は無し5
無し
02
未知の言語で埋められた外国電報送達紙
"ここに我らが帝国は汝ら宵の国に対して宣戦布告を行う。昭に忠誠勇武なる臣民尖兵により、帝国の光栄は酒気の堕落にまみれた汝らの闇を焼き尽くすであろう。"
説明セクションを参照。
03
旧式の警察制帽
"反乱を扇動し帝国政府をゆるがせにしたhairburden6臣民。その枝葉の血統に至るまでもが潜在的な下劣頽廃者であり、依然脅威なれば転向・族滅もやむなし。名誉警官よ走れ。正統世界のリンチを叩き下せ。"
警察庁特事調査部7,8との協定に基づき財団へ引き渡された。
04
白紙の金銭出納帳簿
"えー、帝国の長き歴心期間において、臣民達は脳無しらしく、愚直に殖産富国に務めてきた訳で、あります。今回の国庫蚕食につきましては、えー、何よりも五億を下らぬ忘失が宵の者らの手によることは明らかでして、えー、けして新天蓋の16光条奏上への出費が必ずしも主たる原因ではないので、あります。"
05
ミニチュアの高射砲
"帝国参謀はKanivarus戦線においてかっかかか苛烈な殉勇を見せたドルナクゥ神聖隊の全員に対し一等銀輝勲章を授与する。真にmagimark9な事実として帝国軍は遍く戦場ににににに翳らざる光翼を広げつつある。我らが勝利は近い。"
東京都港区のGoI-012("マーシャル・カーター&ダーク株式会社")関連施設への襲撃に伴い確保。
06
ミニチュアの軍艦
"堕ち行く光宮を前に後悔の念が去来する。下陸軍は戦場の華々しい面のみを臣民に触れ回ったが、我ら昇海は知っていた。夜は穢れたるおぞましき禁忌。侵略と開拓は主客を逆転させ、宣戦した時点で我らはすでに敗北していたのだ。忘れていた。奴らは人ですら無かった。"
警察庁特事調査部との協定に基づき財団へ引き渡された。
07
傾いた天秤
(旧大日本帝国の下で施行されていた刑法全文。犯罪の実行者と被害者の身分によって刑罰の重さを変更する長大な例外規則が付随する)
GoI-101("エルマ外教")への襲撃によって確保。
08
巨大な万年筆の筆先
(小学生に向けて起草されたと思われる植物の生態についての簡潔な解説。但しすべての植物の発芽と成長に"光芒"と呼称される存在が関与している)
北海道札幌市のホテル█████より回収
09
斧または鍬の刃
"豊年だ。豊年だ。このおおきな支配機構こそが我らに限りない恵みと実りを約束してくださる。絶対的な統率こそ我らが切実に求めていたものであり、世界とともに我らは支配される。屈服こそが自由。安心こそが束縛。脳無しは光芒の永世君臨にこうべを垂れる。"
10
巨大な金槌
"帝国の臣民奉仕是の第一義は労働なりて、労働者は恒久の輝きを放つ。白昼に影立つあらゆる労苦を背負いし者ら、なんと美しく。鉄、血、油こそが真に其の陽射を焚きつける。"
ソ連軍参謀本部情報総局"P"部局(GRU“P”部局)の日本人協力者として調査が進められていた████ ██の自宅から回収
11
旧式の郵便ポスト(丸型ポスト)の上部
"敗戦を検閲せよ。世界を正統に塗り替えよ。さんざめく光芒、未だ暁に眠らず。"
12
巨大な検札鋏
"所詮眠らぬ片道切符。北極星は天蓋に二度と輝かず、英雄は白昼夢に落ちる。沿線敷設はどこまで続く?██████なんぞはくだらない。どうせ倫理は閉塞されぬれば、浮かれ浮世の憂さ晴らし。"
GoI-101("エルマ外教")への襲撃によって確保。
13
図案化された眼のポスター
(ジョージ・オーウェル著『1984年』と推測されるストーリーの改変された要約。本編に登場する超国家"オセアニア"に属する植民地の監督日誌の形式を取る)
南アフリカ、ヨハネスブルクの施設██████ █████より回収
14
巨大な注射器
"君の反駁は恣意的だよ。暴力による統治を正当化するわけでは無いが、絶対的な権力には絶対的な暴力機構がkwigod10的に不可欠だ。力こそ我らを守る盾であり、その庇護を余すことなく受け止めるのが新たな光芒歴心時代の効率的で合理的で賢い振る舞い方なのだよ。"
異常物品の取引に関連する団体、"埜木商会"への襲撃によって確保
15
未知の言語で埋められたリスト
"帝国に血を巡らせなければならぬ。宵の国は未だ脅威であり、歴心期間の腑抜け脳無しは指令を与えねば動かぬ。光芒の息吹は絶えてはならない。私が終わり無き循環業務の渦に呑まれようとも、希望は前進を続けるだろう。"
16
木製警棒
"警戒せよ、腐敗と旧悪を警戒せよ。当局としては徹底して捜査する。固陋とした倫理で疑わしきを罰せぬのは法の不備なり。末端の腐敗は疾く切り落とさねばならぬ。いわんや戦時中である。夜と通づる厭戦者討つべし。"
カナダのライブハウス████████より回収
17
紙製烏帽子
"名誉職務だけでごじゃりましゅる。燦然と輝く事象の継続。我ら栄誉として保存され、脳無しに刻みこまれることで帝国の残される筐体となるのでしゅ。至高の名誉職務である我ら、当然であろ。"
███県██市に存在する国立公園より回収
18
鉄製平鍋
"未だ遠い。しかれど手は届く。無限の光背が見える。ああ、帝国よ、素晴らしい。"
SCP-822-JP-02から018が全てサイト-8141に収容された直後、SCP-822-JP-01が回収されました。通常SCP-822-JP-01は自発的な発声を行いません。しかし他のSCP-822-JP実例とSCP-822-JP-01を接触させた場合、SCP-822-JP実例はお互いの手を握りながら輪になり、SCP-822-JP-01を内側に取り囲んだ円陣隊形を構築します。
その後、他のSCP-822-JP実例は自身の反復発声を停止し、反時計回りに回転するようそれぞれ移動し始めます。また、その動作の最中、繋がれた手を僅かに上下します。この際放射温度計による観測を実施すると、SCP-822-JP実例の頭部が平均で[編集済]℃の高熱を発していることが確認できます。
この状態に移行するとSCP-822-JP-01は活性化し、呼びかけや質問に対し応答するようになります。活性化状態のSCP-822-JP-01から取得可能な情報はOPREmpr-000031における最重要情報11,12とみなされています。以下は作戦主任である遠部博士による聴取実験記録です。なお、遠部博士はモード・ヴェテラスセト聴覚/視覚認識災害対策に基づくヘッドギア型曝露防止機器を装備しています。
実験ログ822-JP
フォーマット例:
入力: [質問の内容を記述]
行動: [特筆すべき反応を記述]
時間: [応答までの経過時間]
出力: [質問への応答の概要、または抜粋]
コメント: [関連するメモ、または個人的言及を追加]
入力: "帝国"とは何か
行動: 問いかけた際、回転の速度がわずかに上昇
時間: 7分
出力: "1つの天蓋、1人の光芒、4人の宰相、18の大臣卿、そして限りない臣民。"
コメント: かなり抽象的ではありますが、既知の情報13と符合します。SCP-822-JPは信用に足る情報源でしょう。
入力: SCP-822-JPの起源について
行動: 温度の上昇
時間: N/A
出力: SCP-822-JP-01が返答しないまま温度が上がり続けたため、実験は中止され冷却装置により実験チャンバーは低温化された。
コメント: 意図的に返答を拒んだか、もしくは複雑な質問には答えられないのかもしれません。
入力: "Xehyoifent"について14
行動: 無し
時間: 3分
出力: 空間を支配するゾウ(Elephantidae)についての詳細な生物学的説明。
コメント: 期待していた反応とは違いましたが、大きな収穫です。実験の最中にペンを落としてしまい、一部メモを取り損ねてしまいました15。次回からはタイプ装置を使用します。
入力: "光芒"とはなんであるか
行動: 温度の上昇、回転の速度の明確な上昇
時間: 5分
出力: "輝き"、"陽光"、"美しい"、"救世主"、"天蓋神"などといった言葉を多用し、"宰相Gidico"、"天蓋盤"、"16の光条"などとの関係性について触れながら、臣民に安心をもたらした"歴心期間"を如何に"光芒"が創世したかについて述べた長大な言及
コメント: 未だにあの単調な声が耳にこびりついています。有意義な時間でしたが、半日を費やしてもまだ話が続くとは思っていませんでした。今後もこんなことが続くようであれば、誰かに実験の立ち合いを頼むのは少々気が引けますね。
入力: 大臣卿とは何か
行動: (一時的に)回転速度の著しい上昇、温度の上昇
時間: 4分
出力: "内外の臓省の名誉ある長。首班により統括される。"
コメント: 首班とは何者を指しているのでしょうか?関係は無いですが、熱で実験チャンバーの壁が少し溶けてひび割れてしまったようです。冷却装置の出力をもっと上げるよう申請しておきます。
入力:16
行動: 温度の上昇
時間: 57分
出力: "偉大なる帝国はいま雌伏している。根を張りつつ、陽光へ葉を茂らせる日を待っている。"
コメント: なにかがおかしい。
入力: テスト17
行動: 無し
時間: [応答までの経過時間]
出力: "流布は我々の使命。扉を近づける、熱き展望の一手。鍵は未だ見つからず。私は喜ばしく思う。"
コメント: 見つけました。ペンは実験チャンバーのひび割れに潜り込んでいて、そのひび割れは能く熱を帯びてじゅくじゅくと血塗れて膿んでいました。引き抜いて観察したところ、ペンは種子であると分析されました。ひび割れは修理しておかなれけば。
入力: 熱はいかに世界へ作用しているのか
行動: 温度の上昇
時間: 1時間12分
出力: "熱は情報である。あまねく空間に熱を行渡らせることで正統世界はこの地に上書きされる。有りうるべきでない。"
コメント: 実験チャンバーを変更して壁も何度も修理してもらったのに、ひび割れが消えません。ひび割れが増えています。より熱を持って、触れると溶けあうように頭に靄がかかります。ペンを握るときだけ頭はさえます。ペンは明らかに育っています。
入力: 無し
行動: 温度の上昇
時間: 78秒
出力: "鍵を得てしまったのか?"
コメント: 明確になった。彼と私は聡明になった。私は研究者です。
入力:18
行動: 回転速度の上昇、円陣からの笑い声
時間: 43秒
出力: "お前はそれを得るべきではなかった。私はそれを望まなかった。"
コメント: すべては私によって統括領域となります。熱は私の内に。光栄は我が背に。
入力: "帝国"は如何にしてこの地に催芽しうるか
行動: 著しい温度上昇
時間: 3秒
出力: "我々は蘇るべきではなかった。"
コメント: いいえ。光芒はなおも穢れ輝いています。ここに。帝国は災禍を超克し、再び此の世の春に蔓延るのです。
[回収された記録 終了]
事案822-JP-A: 最後の実験ログがデータベースに保存されたのとほぼ同時刻に、事案822-JP-Aに指定されている一連の事象が開始されました。発生から自発的な収束までには14分が経過しています。
注記
以下の資料は事案822-JP-A発生前後にサイト-8141周辺で記録された映像・音声記録の内、データ破損が軽微なものを未詳資料/目録編纂室によって時系列順に抜粋、編纂したものです。資料群には未確認の認識災害、及び部分的なデータ破損が含まれている可能性があります。
以上に留意したうえで当該資料群を参照してください。
— 未詳資料/目録編纂室:81管区室長代理、転眼式見
▶︎Access: Incident Record- 822-JP-A
- Access Granted
観測異常報告
Foundation-AIC#His78による自動通知
可視化された固在流動力場
観測箇所: サイト-8141全区画
異常種別: ヒューム値異常低下
観測時刻: ██月██日 12:13 AM (JST)
脅威レベル判定: レッド ●
事象概要: 常設型カント計数機により、サイト-8141の第三実験棟を中心とした半径320mにおいて基準現実値より±78Hmの現実差が観測された。中心点となる第三実験棟では92Hm/sの高ヒュームが確認されており、観測異常の原因と推定される。
Record 19██/██/██ 12:14
サイト-8141 カフェテリア 監視カメラによる記録
【再生開始】
[00m00s-] 昼食中のサイト職員らが談笑している。
[00m03s-] 現実性変動を知らせる警報が鳴り響き、多くの職員が慌てた様子で立ち上がり、退避を始めようとする。
[00m04s-] 現実改変が発生し職員らがその影響下に置かれる。局所的再構築イベントの結果と思しき影響により、職員らの頭部が膨張と収縮を繰り返すように歪み、脱落。溶けた脱落跡が滴り落ち、鋭利な刃物で切断したかのような平面状の首の断面があらわになる。
[00m24s-] 不明な発声源から「頭こうべを上げよ、注目!」という言葉が発せられる。直後職員らが直立不動の姿勢を取り、東の方角を指さす。
[00m58s-] 職員らの首の断面から機械部品で構成された双葉様の物体が突出・成長し、三角定規、テープラジカセ、フラスコといった物品が元の頭部に置換される。
[01m19s-] 職員らが上半身を捻り、一斉にこちらを向く。
[01m20s-] 不明な理由によるカメラの破損。映像の断絶。
【再生終了】
事案822-JP-A評価
調査結果: サイト-8141中庭
発見された異常のリスト
中央芝生のガラス化 - 不明な理由による植物組織の置換。
周囲構造物の倒壊、溶融 - あらゆる直線構造が湾曲していた。
上記掲載画像 - 不明な要因により空中に投影されている。周囲の状況から、恐らくは12:17時点の映像と見られる。
固定された男性 - 元財団職員██ ███であると思われる。苦悩する表情のまま、地面から17mをループしながら徐々に加速しつつ落下し続けている。
異常光源 - 中心地点から北東方向を向き、左へ307°回転することで認識災害を含む光輝が観測される。
破断した配水管 - 本来通っている水の代わりにクロッカス(Crocus)の一輪が放出され、59秒後に消滅する。
木製の粗雑な十字架 - 接近するにつれて地中へ沈み込む。この効果は、離れると逆転的に作用する。
・・・
・・・
・・・
Record 19██/██/██ 12:19
場所不明 音声記録
【再生開始】
声1 [電子的ノイズ]…言い尽くせぬ…[電子的ノイズ]…境界を越え、遥か…[電子的ノイズ]…共に在る。
声2 事実としてそれは消滅した。残骸のみが此処にある。
声1 [電子的ノイズ]…命令に則り解放…[電子的ノイズ]…尊大かつ荒唐無稽…[電子的ノイズ]
声2 復興は出来ないであろう。砂上の楼閣と同義だ。礎が無ければ根付けまい。
声1 償いを要求…[電子的ノイズ]…眼の、震え…[電子的ノイズ]…果てた荒野…[電子的ノイズ]…誰一人。
声2 可能だ。
声1 [電子的ノイズ]…動的沈黙…[電子的ノイズ]…躍動的特異…[電子的ノイズ]…禍いなきように。
声2 試みは常に此処に。望まれぬなら何処へなりとも立ち消えよう。
声1 まだ何も終わってなどいない。我々は…[電子的ノイズ]…しなければならない…[電子的ノイズ]
声2 まだ何も終わってなどいない。取り戻さなければならない。かつてそう呼ばれていた存在を。
【再生終了】
IDCaRD
情報減殺、検閲および撤回部門
tenartni.noitadnuoFPCS|DRACDI#tenartni.noitadnuoFPCS|DRACDI
内線 7502
Fax 7503
記録:
事案822-JP-A関連情報
優先度: ZAYIN
遮断済み情報: 記録のみ
前書:
当該画像は一般人により撮影された事案822-JP-Aに関連する写真情報です。一般社会へ公開される予定であった当該画像をIDCaRDが事前に遮断し、ミーメティック要素を含むと判断されたのちに抗ミーム部門へと転送されています。閲覧の際には指定対抗ミームの摂取を必ず実行してください。
_
+閲覧する-閲覧中止
サイト-8141上空を撮影したと思しき画像
補遺#1: 事案822-JP-A後の調査によって、事件に深く関わっていると思しいSCP-822-JP群が、SCP-822-JP-01を除いて全て死亡済みの状態で発見されました。いずれも身体構造、特に頭部を大きく損壊しており、圧死、大量出血、現実性歪曲、内部撒散などが直接的な死因と見られています。
SCP-822-JP-01の死亡、もしくは破壊は確認されていませんが、それ自体がどのような外見をしているのか、どういう性質を持つのか、生物なのか物体なのか現象なのかが回収された記録から読み取れず、いずれも不明であるため判別は極めて困難です。遠部博士の死亡及び生存を示す証拠は一切確認されていません19,20,21。
脚注
1. 軍服の着用はSCP-822-JP-05、-06のみに見られる特徴。
2. 疑念1: 最初に発見された個体が01のナンバーを割り当てられていない。
3. 疑念2: 発生した異常は、いずれも説明セクションで同様の異常性が記述されていない。意図的に削除された疑いがある。
4. 疑念3: 詳細不明なコード。"OPR"はオペレーション/作戦に割り振られる接頭コードだが、Emprの指す事項は不明。
5. 疑念4: SCP-822-JP-01に関する著しい情報の不足。
6. 侮蔑の意味を含む形容詞と推測される。
7. 当該団体に関しては要注意団体観測所(OGI)編纂の"警視庁公安部特事第一課の壊滅と再編について"(████)を参照せよ。
8. 疑念5: 当該文書は存在せず、警視庁公安部特事課は現在も存続している。
9. 強調の意を添える連体詞と推測される。
10. 神聖さを示す形容詞と推測される。
11. 疑念6: OPREmpr-000031はサイト-8141にて独自に進められていた作戦である疑いがある。
12. 疑念7: OPREmpr-000031の対象とSCP-822-JPは深く関係しており、SCP-822-JPのもたらす情報が作戦において重要視されている。しかし、その何らかを現在の財団は把握していない。
13. 疑念8: OPREmpr-000031によってサイト-8141にある程度の成果が保存されていたはずだが、それを財団は把握していない。
14. 疑念9: 回収された記録に一切言及がない単語。
15. 疑念10: 理由が言及されていない音声記録装置の不使用。
16. 疑念11: 空欄。
17. 疑念12: 規定形式からの軽微な逸脱。
18. 疑念13: 空欄。
19. 疑念14: 明確な調査状況の提示が困難である理由の未記載。
20. 疑念15: "遠部博士" なる人物が財団の人事ファイル中に存在しない。
21. 疑念16: 疑念15がこの箇所に提起されている理由。
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scp-823-jp |
評価: +167+–x
アイテム番号: SCP-823-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-823-JPはサイト-81██の低危険度生物収容室に収容されています。収容室の壁に窓を取り付け、SCP-823-JPが空を観察出来るようにしてください。SCP-823-JPが空に対してデータに無い反応を示した場合、収容メンバーのリーダーに報告してください。
説明: SCP-823-JPは自律行動ができる月見団子です。SCP-823-JPの部位は大きく分けて三方部分と団子部分の2つで、三方は一般的に販売されている物とサイズや素材の違いはありません。SCP-823-JPが自律行動を可能としているメカニズムは解明されていません。SCP-823-JPは言葉を発しませんが、簡単な内容の言葉は理解する事が出来ます。
SCP-823-JPは三方の底面を地面に密着させた状態で移動します。SCP-823-JPの移動速度は約5km/hです。SCP-823-JPは30cm程度の高さまでジャンプする事が出来ます。
SCP-823-JPは三方の内部から眼象1を通して物体を出現させる事によって、自身の感情を表現します。SCP-823-JPが嬉しさを感じている時にはススキが、怒りを感じている時には杵が出現します。どちらも三方に合わせてサイズが縮小されており、上半分のみが三方から露出しています。SCP-823-JPは受けた感情が大きい程、出現した物体を強く振り回します。SCP-823-JPの感情が落ち着くと、出現していた物体は三方に引き込まれる形で消失します。
SCP-823-JPの団子部分は三段構造になっており、一段目に9個、二段目に4個、三段目に1個の団子が配置され、三方と団子の間には奉書紙が敷かれています。団子は白玉粉を用いた一般的な物で、摂食可能です。SCP-823-JPは一段目の団子が消費されることに対して杵を用いて抵抗しますが、杵のサイズが小さく可動域も狭いためにこちらに特筆すべき危害はありません。団子の数が減少するとSCP-823-JPの移動速度が下がり、すべての団子が消費されるとSCP-823-JPは一時的に活動を停止します。SCP-823-JPは2時間に1個のペースで不足している団子を適切な位置に生成します。団子の代わりにミカンや石をなど配置しても、2時間に1個のペースで団子に置き換わります。
SCP-823-JPは京都府██市のコンビニエンスストアで市民の通報により発見、収容されました。監視カメラの映像ではSCP-823-JPが何も無い空間から突如出現し、三方からススキを出現させて上下に揺らしているのが記録されています。目撃者に事情聴取を行っても有益な情報は得られず、記憶処理を施して解放しました。収容直後から現在まで、SCP-823-JPは空間を転移する能力を一度も発揮していないため、他の異常存在との関連性が懸念されています。
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追記1: 20██/██/██、午後9時、SCP-823-JPの移動能力を把握する実験を屋外で行った所、SCP-823-JPがススキを突き出して非常に強く揺さぶりました。屋外に存在する何かがSCP-823-JPを扇情したと推測されています。SCP-823-JPの素性に繋がる情報を発見出来る可能性があるため、オブジェクトの収容室に窓が取り付けられ、特別収容プロトコルが改訂されました。
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追記2: SCP-823-JPは月に対して非常に強く興奮する事が判明しました。特に、満月に対して最も強い反応を示します。
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追記3: 20██/██/██、午後10時、SCP-823-JPが満月に対して未知の反応を示しました。SCP-823-JPはススキを突き出しましたが、それを揺らす事はありませんでした。SCP-823-JPは窓の方向を向いたまま満月が見えなくなるまで一切の動きを見せませんでした。██研究員がSCP-823-JPの安否を確かめるために収容室に入室した所、SCP-823-JPはススキを微かに揺らしていつも通りの行動を再開しました。██研究員は「SCP-823-JPの奉書紙が少し濡れていた」と報告しています。
その日は満月である事に加え、雪が降っていました。
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追記4: 20██/██/██、██研究員がSCP-823-JPの奉書紙に文章が浮かび上がっているのを発見しました。それ以前の調査ではそのような文章は確認されていませんでした。
以下が文章の内容です。
お元気ですか? わたしは元気です。
こっちは夜と雪しかないので、そちらがうらやましいです。
わたしはもう行かなくてはいけません。
なので、この子をあなたに任せます。
寂しがり屋で迷惑をかけちゃうと思いますが、
可愛がってあげてください。
酩酊街より 愛を込めて
Footnotes
1. 三方に空いている穴
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scp-824-jp |
評価: +91+–x
評価: +91+–x
クレジット
タイトル: SCP-824-JP - サンドバッグと無限の称賛
著者: ©︎aisurakuto
作成年: 2017
評価: +91+–x
評価: +91+–x
被験者が描画したSCP-824-JP像
アイテム番号: SCP-824-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-824-JPはその対象になっている人物(以下、被験者とする)を監禁することで収容されます。SCP-824-JPと同じ症状が精神科の診療所で発見されたとき、被験者は財団と提携関係にある████センターへ移送されます。被験者の行動の自由は基本病室内に限られます。業務等が可能であれば、生活のモチベーションとして、財団フロント企業への転職作業を行った後に適当な業務を与えることが許可されています。面会の希望があった場合、手荷物検査を実施してファイル824に規定のある危険物を持ち込ませないようにしてください。
説明: SCP-824-JPはその被験者にのみ認識が可能な存在です。他者からはその一切を認識できません。一点に留まるよう被験者が指示したSCP-824-JPに物体を乗せる実験を行った際、被験者が置いた物体のみが宙に浮いた状態になったことから、SCP-824-JPは実際に存在しているという見解が強いです。(SCP-824-JP被験者の詳細については別途資料を参照)
以下、SCP-824-JPの被験者に共通する証言です。
SCP-824-JPは全長30cmの物体
目が書かれた茶色の麻袋で覆われており、中身は触感から粒状の物体であると判断されている。
言語を理解する。目が書かれた部分より少し下の部分が可動部になっており、そこを曲げる動作によって簡単な意思表示(肯定、否定、疑問、喜びなど)を行う。
自律移動が可能。1秒程度可動部を前に曲げる予備動作の後に跳ねるようにして10cm程度前進する。(原理は不明)
SCP-824-JPは被験者がストレスを抱えた状態になると接近する。接近時にテレパシーのようなものを発し、自身を叩くよう促す。
SCP-824-JPを叩く行為にはストレス改善効果がある。(事実、被験者が素振りのような挙動を取った後は精神的に安定した状態になることが多いです。)
SCP-824-JPは各地の精神科の診療所でイマジナリーフレンドと思わしき症状が報告されたとき、同じような報告が複数件相次いだことで財団の目に留まり、発見されました。
被験者に共通する特徴として、何らかの理由で鬱病などの不安に由来する精神病にかつてかかっていたことが挙げられます。症状は被験者の環境や自身の身体的な特徴が原因であり、SCP-824-JPによる影響ではないとされています。このことからSCP-824-JPは精神病を抱えた人物の付近へと意図的に出現していることが考えられます。
インタビューログ-1
対象: 北山██氏
インタビュアー: エージェント・梅田
<録音開始>
エージェント・梅田: まず、SCP-824-JPは普段何をしていますか?
北山氏: この子でしたら、いつもは私の傍で動き回ってますよ。私以外の人にはあんまり近づかないんですけど。
エージェント・梅田: 具体的には?
北山氏: ジャンプの繰り返しで体に上ってきたりとか。見てるだけで私を楽しませてくれるんです。
エージェント・梅田: では、あなたにSCP-824-JPが見えるようになったのはいつからですか?
北山氏: 去年の秋頃です。ちょうどその頃、私は仕事で悩んでまして。私は所謂営業マンだったのですが、空回りすることがあってなかなか契約まで漕ぎ着けられなくて。毎日上司に業績のことでどやされ、出勤する気も薄れかけていた頃、とある朝に目が覚めたら、そこにこの子がいました。
エージェント・梅田: 初期のSCP-824-JPの様子はどのようでしたか?
北山氏: 私が辛そうしてると、寄ってきて跳ね回るんです。あとそれから、「辛いなら自分に当たってくれ」というように見てくるときもありました。そのときは御免してもらって、一発だけ軽く小突いたりとか。すると、すーっと気が晴れるんです。そして、また頑張ろうと思えるわけです。
エージェント・梅田: なるほど、その頃と今とで何か変化はありますか?
北山氏: いやそれが変わったことは特にないんです。この子の行動も含めて。ここに入る直前の業績はましにはなってきたのですが、成功といえる程のことでもないですし。しかし、あんまりそれは気にしていません。次こそは、と思ってコミュニケーション術の研鑽を重ねるのが楽しくなってきたんですよ。いつか件数を稼いで、成功してやろうと思っています。ここでの事務仕事ももっと効率よくできる方法を探してますし。
エージェント・梅田: SCP-824-JPの影響と考えますか?
北山氏: そうですね、この子のおかげです。
<録音修了>
基礎的な試験の限りでは、被験者自身の能力は高いように見えました。 - エージェント・梅田
インタビューログ-2
対象: 芹沢██氏
インタビュアー: エージェント・梅田
<録音開始>
エージェント・梅田: SCP-824-JPを初めて認識したのはいつですか?
芹沢氏: 事故に遭って、それから安定してまた数日たったくらいです。これから一生足が動かないかもしれないってことを受け入れ始めて、どうしようもなくただ塞ぎこんでたときでしたかね。枕元に、ふっとコイツが現れたんです。
エージェント・梅田: SCP-824-JPは初期の頃、どんな様子でしたか?
芹沢氏: とにかく跳ねまくってたんです。それが俺にはムカついて仕方がなくて。手が届く範囲にいたから、放り投げて遠くに飛ばしたりもしました。でも何回も寄ってくるんですよ。だからまた投げて。そうして日を過ごすうちにコイツは俺を励ましてるって分かったんです。
エージェント・梅田: 何故ですか?
芹沢氏: だって跳ねてるんですよ。俺の足の近くで。俺がまた歩けるようになれるよう応援してるんだと思います。時には殴って気を晴らすよう身構えたりもしてくれます。馬鹿みたいな根拠だと思われるでしょうが、間違いありませんよ。
エージェント・梅田: そうですか。SCP-824-JPや自身について、何か変化はありましたか?
芹沢氏: えぇ。リハビリを続けてるんです。きついですけど、支えがあれば乗り越えられると思っています。そういう意味でも、コイツは相変わらずです。
<録音終了>
被験者は、全員が以下のようなメモを所持していました。メモについて、「SCP-824-JPが差し出した」と証言しています。
お元気ですか。 わたしはのんびり生き延びています。
どうやら心の優しい仲間たちが、あなたの元へ向かったようです。
出かける前、彼らはよく「皆、あせっている」と言っていました。
そちらでは物こそ言わないでしょうが、きっとあなたのために身を差し出してくれるでしょう。
そしてあなたも、あまり悩み過ぎないように。
あなたはあなたでいいのです。
酩酊街より 愛を込めて
補遺: SCP-824-JPの被験者であった芹沢氏が病棟の階段から落下する事故が発生しました。芹沢氏は看護師である財団関係者とエレベーターを待っている最中、芹沢氏を乗せた車椅子が勝手に移動し、階段へ落ちたと証言しています。監視カメラには証言通りの映像が録画されていました。財団はこの事故にSCP-824-JPが関与したとして特別収容プロトコルを強化する方針を固めています。なお、この事故により芹沢氏の症状は悪化しました。
事故後に録画された、芹沢氏の病室の映像ログ
:何でだよ。 [何も無い空間に向かって拳を振りかざす。おそらくSCP-824-JPを殴打していると考えられる。以下、殴打と表記]
:俺が何をした?
: あんなに、あんなにまでしたのに。 [殴打]
:[叫びの後、息切れ]
:もう駄目なのか。
:そんなのってないだろ! [殴打]
:俺はやったんだぞ。ああまでして。分かるか! [殴打]
:こんなことで台無しなんて、そんなことあっていいはずがない! [殴打]
:あの医者共がみんな無能なのが悪いんだ。
:ほかの医者だったらもっと楽に治してくれたかもしれない。 [殴打]
:気を分かったつもりで見舞いに来た[個人名]もだ。
:心配そうに見てきたから頑張るしかなかったんだ! [殴打]
:外の写真を撮ってきた[個人名]も、花を買ってきた[個人名]も! [殴打]
:俺には何もできねぇのに楽しそうにしやがるからなんだ!
:お前を殴っても何の意味もねぇよ、こんなの。
[間]
:あいつらが優しくなったのはいつからだったか。
:こうなってからか。
:何もできないと思ってやがるのか。
:癪だな。
:でも応援してくれるのは事実だ。
[間]
:俺が動けるようになったら、たぶんこうはならないだろうな。
:やっぱそうか。
:そのときと今とどっちがいいだろうか?
:そうだよな。
:今のほうが気はいいだろうな。
:進む必要なんてどこにもなかったんだ。
:ああ、そうすればみんな損しなくて済む。
:また明日から、やってくか。
:お休み。
後日、芹沢氏に再度インタビューと精神状態の検査を行いましたが、SCP-824-JPへの反応も含め変化はあまり見られませんでした。
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scp-825-jp |
評価: +62+–x
アイテム番号: SCP-825-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-825-JPは通常の書籍管理プロトコルに則りサイト-81██の低脅威度物品保管ロッカーに保管し、月に一度、乾燥剤と防虫剤の交換を行います。SCP-825-JPを使用した実験を行う際はセキュリティクリアランスレベル4以上の権限を持つ職員からの許可を得てください。実験以外でのSCP-825-JPの接触は禁じられています。
説明: SCP-825-JPは████社から販売された絵日記と同様のデザインの冊子です。全100ページで構成されており、表紙の氏名欄には『1年3組 佐藤 ██』と記入されています。内容は日記の所有者と思われる少年が19██,7/23-8/24の間に過ごした出来事が記されています。
SCP-825-JPの特異性は企業・団体に所属している人間が接触することで発現し、被験者は所属している企業・団体から2日後に休暇が与えられます。与えられる休暇の日数は被験者によって異なり5-20日以内だと考えられ、企業・団体側は被験者に対し休暇を与えるのが当然であるかのように振る舞うことから一時的な認識改変ミームの影響1を受けていることが分かりました。休暇を返上する試みはいずれも成功していません。被験者は接触した直後にSCP-825-JPを読み始め1枚のページを選択し、休暇中に選んだページに描かれている内容と同様の行動をとることが調査の結果判明しました。
SCP-825-JPの内容を一部抜粋
ページ数
日付
絵の内容
日記の内容
7ページ
7/29
少年が自転車に乗っている絵が描かれています。
公園で自転車に乗れるよう練習をしたという内容が記入されています。
10ページ
8/1
少年が布団で寝ている絵が描かれています。
やることがなく一日中寝ていたという内容が記入されています。
12ページ
8/3
少年が花火をしている絵が描かれています。
自宅の庭で家族たちと花火をしたという内容が記入されています。
18ページ
8/9
少年が浴衣を着ている絵が描かれています。
自宅の近くで開催された夏祭りに参加したという内容が記入されています。
24ページ
8/15
少年とその父親と思われる人物がキャッチボールしている絵が描かれています。
公園で父親とキャッチボールをしたという内容が記入されています。
SCP-825-JPは19██/8/25,██県██市で起きた佐藤 ██氏(男性、当時6歳)の行方不明事件の調査で警察に扮していたエージェント█が調査した結果、SCP-825-JPが██氏の自宅で発見されました。SCP-825-JPは当初、接触した被験者が自分の意思に関わらずSCP-825-JPを読み始め気に入ったページを1枚選ぶAnomalousアイテムに分類されていました。しかし、SCP-825-JPに接触してから2日後に被験者が休暇を貰うという事が調査した結果判明し、オブジェクトクラスがSafeに格上げされました。
実験記録825-JP
実験記録825-JP-3 - 日付19██/██/█
対象: ██研究員
結果: ██研究員はSCP-825-JPに接触した後、すぐに読み始め15ページを選択しました。選択したページの内容は少年が山で虫取りをするという内容でした。このページを選んだ理由を聞くと一度虫取りをしてみたかったという返答が帰ってきました。 ██研究員は2日後、財団より5日間の休暇が与えられ、休暇中は山に籠りずっと虫取りをしていたと報告がありました。
分析: 被験者は休暇中に自身が選んだページに記入されている内容と同様の行動を取ることが考えられます。
実験記録825-JP-6 - 日付20██/█/██
対象: ██博士
結果: ██博士はSCP-825-JPに接触した後、すぐに読み始め4ページを選択しました。選択したページの内容は少年が海の砂浜でスイカ割りをするという内容でした。このページを選んだ理由を聞くとスイカ割りを体験してみたかったという返答が帰ってきました。 ██博士は2日後、財団より12日間の休暇が与えられ、休暇中はスイカを36個購入し、海の砂浜でずっとスイカ割りをしていたと報告がありました。
分析: 被験者は休暇中に自身が選んだページに記入されている内容と同様の行動を連続で繰り返していると考えられます。
実験記録825-JP-16 - 日付20██/█/██
対象: エージェント███
結果: エージェント███はSCP-825-JPに接触した後、すぐに読み始め26ページを選択しました。選んだページの内容は少年が両親と喧嘩をした後、仲直りをするという内容でした。このページを選んだ理由を聞くと5分間の沈黙の後、両親と仲直りがしたかったいう返答が帰ってきました。エージェント███は2日後、財団より7日間の休暇が与えられ、休暇中は実家に帰省し、絶縁状態だった両親と和解したとの報告がありました。
分析: 被験者は自身がやり残した事が記入されているページを選んでいると考えられます。
+ 実験記録825-JP-25 - 日付20██/█/██
- 閲覧中
実験記録825-JP- 25 - 日付20██/█/██
対象: エージェント█
結果: エージェント█はSCP-825-JPに接触した後、すぐに読み始め34ページを選択しました。しかし選んだページには日付しか記入されていませんでした。このページを選んだ理由を聞くと自分にも何故このページを選んだか分からないという返答が帰ってきました。エージェント█は2日後、財団より20日間の休暇が与えられました。休暇中は██県██市,███河の土を掘り返していたと報告があり、休暇最終日の20日目にエージェント█から財団に白骨化した遺体を発見したと連絡が入り、遺体を調査した結果、19██/8/25,行方不明となった佐藤 ██氏(男性、当時6歳)の遺体だということが判明しました。
分析: エージェント█は当時██氏の行方不明事件を調査していました。
その後、SCP-825-JPの34ページに少年とエージェント█と思われる人物がかくれんぼをしている絵と以下の様な文章が追加されているのが確認されました。
今日は、お兄ちゃんとかくれんぼをしました。
お兄ちゃんがおにで、ぼくがかくれました。
ずっとかくれてておにいちゃんが見つけてくれるか、ふあんでした。
だけど見つけてくれてとてもうれしかったです。
Footnotes
1. 被験者が休暇を終えるとミームが影響しなくなった事が確認されました。
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scp-826-jp |
評価: +43+–x
評価: +43+–x
クレジット
タイトル: SCP-826-JP - 虚抜く夢の使徒
著者: ©︎amamiel
作成年: 2019
評価: +43+–x
評価: +43+–x
被験者の夢報告を基に再現されたSCP-826-JP-β外見の1例。ただし、顔面部の描画が曖昧な数例の報告内容を統合、標準化した結果である点には留意する必要あり。
アイテム番号: SCP-826-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-826-JP被験者の発見を目的に、専用Webクローラーは世界各国の医療機関の小児受診者情報を検索し、SCP-826-JPと一致する症例報告の発生を監視します。新たに発見された被験者は最寄りの財団施設へと移送され、各種検査と聴取の後、全関係者とともに記憶処理が施されます。
SCP-826-JPに関連するメディア報道や研究活動は事前に抑制されるか、意図的な虚偽情報の拡散を目的とした偽情報活動の一環に利用されます。学術出版業界に潜入している財団エージェントも同様に、SCP-826-JPの性質に関する誤った情報の周知促進を行います。
説明: SCP-826-JPはREM睡眠中の満4~6才の児童に影響を及ぼす現象です。この現象によって被験者には、体温の急激な低下、睡眠時無呼吸症候群に酷似した症状、12~48時間に及ぶ連続的な意識障害、後述する特定内容の"悪夢"の経験等が一時的に引き起こされます。また、SCP-826-JPが継続している限り、被験者が存在する家屋内では玄関チャイム・インターホンの誤作動、記録された音声・映像への発生源不明な"金属が激しく軋む音"の混入、撮影された写真・映像の著しい劣化や湾曲等の異常現象が極稀に観測されます。
SCP-826-JP影響下で経験する夢は、全被験者に共通した内容・展開で常に構成されます。また、この際に認識される情景描写は各被験者が睡眠を行っている周辺環境と一致し、夢の中の物品や構造物は現実における相似物の位置・状態を概ね反映します。
それに加え、夢の中にはSCP-826-JP-α及びSCP-826-JP-βと指定される、以下の2体の人型存在が登場します。
SCP-826-JP-α: 被験者と同年代程度の児童として描写される存在です。登場する個体は被験者によって全て異なり、登場個体の性別や容姿等の傾向性は見受けられません。また、後述するSCP-826-JP-βの存在もあり、夢の中で被験者がSCP-826-JP-αとの会話に成功したケースは、現在も確認されていません。
夢の中において、被験者はSCP-826-JP-αと自身の関係性を兄弟姉妹、もしくは親戚・隣人・友人等の親しい間柄の人物であると潜在的に認識します。しかしながら、SCP-826-JP-αが実在する人物であったケースは現在まで確認されておらず、財団によって実施された各種調査の結果は、調査対象が実際に存在していた痕跡が一切ないことを証明しました。
SCP-826-JP-β: スーツを着た成人男性として描写される存在です。顔を除けば、目撃される体格や服装は被験者を問わずに共通しており、その全てが同一個体であると考えられています。報告される人相は共通してヨーロッパ系とされていますが、被験者の大半はSCP-826-JP-βの顔の特徴について詳細に思い出すことができず、説明の多くには曖昧かつ抽象的な表現が用いられます。
夢の中においては、SCP-826-JP-αに対する暴行・誘拐等の加害行為を取る姿が被験者によって目撃されています。また、SCP-826-JP-βが使用する言語は、被験者の母国語と同様になることが判明しています。なお、財団による各種調査が継続されているものの、調査対象が実在する存在であるのか現在も明らかにはなっていません。
以下は全被験者が共通して経験する、夢の主要な内容及び展開です。極稀に、一部展開が省略される点には留意ください。
被験者は何らかの音や声を聞いて目を覚まし、その音の正体を探ろうと自室を抜け出す。
いずれかの部屋で、被験者はSCP-826-JP-βに暴行・誘拐されている最中のSCP-826-JP-αを目撃する。
被験者はSCP-826-JP-βに発見され、捕らえられてクローゼットや押し入れ等に閉じ込められる。
閉じ込められている間、被験者はSCP-826-JP-α/-βの行動に由来する物音や声を聞き続ける。
音が聞こえなくなった後、SCP-826-JP-βが被験者を閉じ込めていた場所へと戻ってくる。
被験者はSCP-826-JP-βから"今日の出来事は忘れなさい"等と声をかけられた後、覚醒する。
覚醒後、被験者の大半はSCP-826-JP-αが実在しないという事実に、強い混乱と恐慌の反応を示します。SCP-826-JP-αに関して質問を行った場合、ほぼ全ての被験者が自身との漠然とした関係性や、断片的なエピソードを回答するのみで、その詳細について明確に説明できません。なお、この症状は数日程度の時間経過、もしくは軽いカウンセリングによって容易に解消されます。
18世紀発行の書籍より発見された、"子どもの夢に現れる奇妙な男"に関する描画。
SCP-826-JPの存在と発生状況は、19██年代に導入された異常徴候認識プログラムの使用を通して、世界各国で特定年代の児童のみが罹患している極めて似通った症例の睡眠異常と、それに付随する共通した"悪夢"と"錯乱"の報告例群の存在が検出されたことで初めて財団に認識されました。
当初、当該年代の児童特有の精神性に由来する疾患ではないかとも論じられていましたが、後にSCP-826-JPと並行して生じる異常現象の存在が明らかになり、上記説は否定されました。更に、世界中の民間及び医療機関のアーカイブに対する広範調査の結果は、SCP-826-JPと酷似した現象が17世紀前半から世界中で発生していた事実を明らかにしました。なお、未発見の報告例を除いても、20██年現在までのSCP-826-JP発生数は、年間平均87.9件に上ると推測されます。
加えて、上記以前の時代に発生したSCP-826-JPの内容や症例、とりわけ"奇妙な格好をした人物"としてSCP-826-JP-βを描写したと思われる無数の歴史的文書も発見されています。その内、9世紀では東ローマ帝国やアッバース朝、5世紀ではゲルマン諸王において、既にSCP-826-JPが発生していたことを示唆する資料が発見されています。なお、あらゆる時代のいずれの資料においても、SCP-826-JP-βの格好が一貫して、上述した通りのスーツ姿である点には注目すべきです。
現在までの財団によるSCP-826-JPの理解は、大半が被験者及びその親族による報告・証言に基づいています。SCP-826-JPの対象となる被験者の身元や経歴に明確な共通性は確認されておらず、その再現や発生原因の解明にも至っていません。20█年現在、その起源や出自に関する広域的な研究及び調査が継続されています。
付録: 以下の記録は、カウンセリングと偽装した上で被験者に対して実施されたインタビュー群からの抜粋です。
+ ログ826-JP-257 - 日付19██/██/██
- ログ826-JP-257 - 日付19██/██/██
被験者: サイモン・レイノルズ (当時6才)
質問者: サンチェス博士
付記: 被験者はSCP-826-JP-αを、弟の"ジョージ"であると認識。
<記録開始>
質問者: それじゃあ、貴方が夢の中で見たことを先生に教えてもらえる?
被験者: 家に知らない男の人がいて、その男の人がジョージをどこかへ連れて行こうとしているのを見た。ジョージは顔に怪我をしていたから、多分、ぶたれたんじゃないかな。男の人はスーツを着ていたけど、顔はよく覚えていないよ。
質問者: その男の人は、貴方にも何か酷いことをした?
被験者: 気が付いたら、クローゼットの中に閉じ込めていた。でも、殴られたり、痛い目には合わなかったと思う。
質問者: 閉じ込められていた時、何か外の様子で変わったことや、気付いたことはなかったかな?
被験者: ずっと変な音が聞こえていたと思う。えっと、椅子や車のシートが軋むときの音をずっと酷くしてみたいな音。それに、車を押し潰してスクラップにする怖い機械が出す、唸り声みたいなのも。その、それと、ジョージが何かを叫んでいる声も一緒に。
質問者: 大丈夫? 思い出したくないのなら、無理をしなくても良いのよ。
被験者: 別に平気、だってジョージは夢だったんでしょ? 最初は変な気持ちだったけれど、よく考えたら、ジョージとどんなことして遊んだのかも、ほとんど思い出せないし。それに、1年しか誕生日も違わない弟ってことだったのに、今思うと何というか、最近できた弟? みたいな感じだったかも。
質問者: ええ、その通り、ジョージはただの夢よ。それじゃあ、話を戻しましょう。その後はどうなったの?
被験者: しばらくしたら静かになって、男の人がクローゼットを開けたんだ。男の人、最初持っていなかったアタッシュケースを持っていて、部屋にジョージがいなかったから、なんでか分からないけども、このケースの中にジョージが入れられちゃったんだろうなって。だから、次は僕が何かされるのかなって思ったんだけど。えっと。
質問者: 大丈夫。ゆっくりと続けて。
被験者: その男の人、僕に手を伸ばして立ち上がらせると、服に付いた埃を払った。わけが分からなくて、男の人の顔をただ見ていたら、突然声を聞いて。あー、どうだったかな、もしかしたら口は動いていなかったかも。声も変な感じでだったけど、ともかく、怖がる必要はないって感じのことを言っていたと思う。
質問者: 声が変な感じというのは、どういうこと?
被験者: よく覚えていない。多分、スピーカーから聞こえてくるみたいな感じじゃないかな。それで今度は、ジョージは最初からいなかった、忘れなさいってまた声が聞こえたんだ。それを聞いたら、なぜかすぐにボンヤリしてきて、気が付いたらベッドで起きていた感じ。これで全部。
質問者: ありがとう。最後に、貴方はその男の人のことを、どういう人だと感じた?
被験者: 分からない。でも、多分、思っていたよりは怖い人じゃないよ。
<記録終了>
+ ログ826-JP-391 - 日付19██/██/██
- ログ826-JP-391 - 日付19██/██/██
被験者: ヨハン・エメリッヒ (当時5才)
質問者: パッヘルベル研究員
付記: 被験者はSCP-826-JP-αを、従兄の"ニコラウス"であると認識。
<記録開始>
被験者: それでは、夢の中で起こったことを私に教えてください。
質問者: 寝ている時にね、リビングの方から玄関の呼び鈴が鳴ったのを聞いたの。僕はニコラウスがやって来たんだと思って、急いでベッドから出たんだけど、リビングから出てきた知らないおじさんに捕まっちゃった。
被験者: 最初に呼び鈴が鳴った時、どうしてニコラウスが来たと思ったのですか?
質問者: だって、昨日約束していたんだもん。ニコラウスは、えっと、どこか忘れちゃったけれど、遠い場所に住んでいてね。それなのに昨日、絶対に僕に今日会いに来るって言っていたんだよ。
被験者: ニコラウスとの約束はどのように? お父さんやお母さんは、その約束の事を知っていましたか?
質問者: えっと、ニコラウスから直接聞いたんだと思う。あと、お父さんとお母さんには言っていないよ。だって、ニコラウスから秘密の約束だって言われていたから。だから、誰にも言っていない。
被験者: ニコラウスがなぜ君に会いたがっていたのか、理由は分かりますか?
質問者: 知らない。でも、どうしても会いたいって、どうしても僕がいるこっちに来たいって、確かそんな風に言っていたと思う。とにかく、怖いくらいに僕の家に来たがっていたよ。えっと、でもよく考えたらだけど、僕はニコラウスのことをよく知らなかった気がするんだ。
被験者: それはどういうことですか?
質問者: だって、ニコラウスがどんな顔だったのか、全然思い出せないんだもの。それに、今までどんな話をしたかとか、どんな遊びをしたかとか、何も覚えていないんだよ。なんでだろう。やっぱり、ニコラウスも、ニコラウスとの約束も全部夢だったのかな。
質問者: なるほど、分かりました。それでは、夢で起こったことに話を戻しましょう。確か、男に捕まったところからでしたね。
被験者: えっと、物置部屋に閉じ込められて、しばらくしたら、知らないおじさんがまた戻ってきたんだったと思う。おじさんは僕に、もう部屋から出ても安全だって。僕は思い切ってニコラウスが来ていなかったかおじさんに聞いたんだけど、そしたら、ニコラウスは元の場所に帰ったって教えてくれたよ。それで、そのままベッドまで送ってもらったの。それで僕がベッドに入ったら、おやすみなさいじゃなくて、さあ起きなさいだって。そしたら気が付いて、僕は病院に運ばれていたみたい。
質問者: 分かりました、ありがとうございます。ちなみに、まだ目覚めてから2時間も経っていませんが、身体に違和感があったり、気分が悪かったりはしませんか?
被験者: 別に何ともないよ。お母さんとお父さんからは、眠っている間、僕の身体は大変なことになっていたって聞いたけれど。起きたら全部治っちゃったみたい。
質問者: それは良かった。では最後ですが、何か気になっていることなどはありますか?
被験者: ねえ、ニコラウスは本当に夢だったんだよね?
質問者: はい、間違いありません。
被験者: そう、良かった。
<記録終了>
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scp-827-jp |
評価: +35+–x
確保直前のSCP-827-JP-1
アイテム番号: SCP-827-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-827-JP-1は現在サイト-8124の大型オブジェクト規格収容室内に安置されています。SCP-827-JP-1が大型オブジェクト規格収容室での収容が困難になった場合に備えて、現在専用の収容建屋建造が計画されています。
SCP-827-JP-2は、各個体を飼育用ケージに収容した状態で、個体同士の距離が少なくとも5mは離れるよう配置して収容してください。SCP-827-JP-2に対しては鎮静剤と代謝抑制剤を適量投与し、給餌ではなく濃縮栄養剤の注入によって生命維持を行ってください。
これらの処置を適切に行うため、専任の獣医師を最低8名任命し、3人ずつのシフト制で各個体の健康状態を常に管理してください。
現在、SCP-827-JP-2をコールドスリープによって生命維持する計画が検討されています。
SCP-827-JP-1の現在のサイズは全高16m、全長40m、重さ1.4tです。
確保・確認されているSCP-827-JP-2の個体数は現在18頭です。
説明: SCP-827-JP-1はクジラ目の動物を模したと思われるぬいぐるみです。表面はタオル地で構成されており、眼部はプラスチックにて構築され、内部空間の87%程度が、常に綿によって占められています。
これらの素材に特異的な要素は無く、また物品としても、同種のぬいぐるみが一般販売されていた記録が発見されています。それら同種のぬいぐるみと比較しても、科学的な分析によっては、特筆に値する程の差異は発見されませんでした。
SCP-827-JP-2は、SCP-827-JP-1を一度でも目視した経験を持つコモドオオトカゲ(学名:Varanus komodoensis)です。SCP-827-JP-1を目視したコモドオオトカゲは即座にこの異常性の支配下に置かれ、永続的に異常を発露し続けます。
その際、SCP-827-JP-2には身体的な変化は発生しませんが、明らかにSCP-827-JP-1を頂点とした、半真社会性の群をSCP-827-JP-2同士で構築するようになります。
SCP-827-JP-2は利他的かつ計画的な連携能力を見せ、SCP-827-JP-1に及ぶ危害を全て排除しようとします。また、SCP-827-JP-2個体は相互的な共感能力を有していると思われますが、個体同士を隔離した状態で4m以上の距離を置いた場合、共感能力は維持されますが相互の連携能力は著しく低下します。
SCP-827-JPの最も特異的な性質は、SCP-827-JP-2が何らかの有質量の物質を摂取した場合に発生します。SCP-827-JP-2個体が物質を摂取した時、摂取した物質の体積の約103分の1と同等の体積量が、SCP-827-JP-1の体積に加算されます。
この時SCP-827-JP-1は、その構成素材の増加といった形で体積が加算されるため、SCP-827-JP-1の全体的な質量の増加という結果を引き起こします。
SCP-827-JP-2が摂取した物質は問題無く当該個体の代謝能力によって吸収・循環・排泄されますが、SCP-827-JP-1の体積が減少する、といった例は報告されていません。
SCP-827-JP-1の破壊もしくは部分的な切除はSCP-827-JP-2全個体の著しい凶暴化と攻撃性の発露を招きます。また、SCP-827-JP-1が損傷してから27時間までは、全個体はSCP-827-JP-1から半径18m以内の全存在へ無差別的に攻撃を行います。この現象はしばしば周辺環境の徹底的な破壊と同時に、SCP-827-JP-2個体同士での闘争を引き起こし、多くの状況で全個体の死亡という結果を招きます。
SCP-827-JP-2の全個体が死亡した場合、SCP-827-JP-1から最も近い場所にいる通常のコモドオオトカゲ5頭が、SCP-827-JP-1を中心とした半径4m以内の地点に瞬間的に転移させられます。
これらの個体については、SCP-827-JP-1を直接目視出来なかった場合でも、転移させられた時点でSCP-827-JP-2へと変異されています。
SCP-827-JP-1内部をスキャニング検査した際、以下の文章がワープロによって印字された紙片が発見されました。異常性によって摘出が困難であるため詳細な検査は未だ行われていませんが、紙片の一部に焼け焦げたような痕跡が観察されています。
どらごんのおうさまはおおきい おうさまそのものよりも
かあたげる とぐろくふ てもげたつち き ふす
なにもしらないあいつらむけの てごろなあそび
きみのかげ
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scp-828-jp |
評価: +80+–x
回収されたSCP-828-JP-A-72
アイテム番号: SCP-828-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-828-JP-Aは発見され次第、プロトコル-828に則り指定されたサイトへ移送されます。SCP-828-JP-Aの発見地周辺はカバーストーリー「土砂災害による封鎖」を流布し、民間人の立ち入りを防いで下さい。
説明: SCP-828-JP-Aは██県██市██町の████遺跡にて発見された、埴輪に酷似した形状の実体です。二ヶ月に一度同じ場所から同じ実体が発掘され、当初それ以外の異常性が判明していなかった為にAnomalousアイテムとして管理されていました。現在、同時に20個が発掘されます。
SCP-828-JP-Aが複数個、お互い██m以内に集まった場合、個々のSCP-828-JP-Aを中心に2m範囲の重力を弱くします。対象範囲の重力はSCP-828-JP-Aの個体密度に反比例し、指数的に弱くなる事が判明しています。これはSCP-828-JP-Aが発掘時の原型を留めていない場合も同様です。SCP-828-JP-Aは一般的な工具で容易に破壊が可能ですが、切断を実施した場合は各々にSCP-828-JP-Aの特性が残るため破壊は推奨されません。
SCP-828-JP-Aを10個以上隣り合わせて並べた場合、その効果は顕著となります。重力の低下のみならず、隣り合ったSCP-828-JP-Aは融合を始め、ロケット型の円筒構造へと変化します(SCP-828-JP-Bとします)。SCP-828-JP-Bの外見特徴は様々ですが、サターンVやAres I等の多段式ロケットの形状を取る事が共通し、先端部分は埴輪の形状を維持します。一度SCP-828-JP-Bへ変化したあと、再びSCP-828-JP-Aへ戻った事例はありません。
収容違反記録: 20██/11/██、サイト-55██よりSCP-828-JP-Bを移送中に収容違反が発生しました。移送用収容庫を突き破り直立したSCP-828-JP-Bは、空へ射出しました。射出時の衝撃により車両は大破、2名の職員が重傷を負いました。撮影されたカメラ映像により、SCP-828-JP-Bの「窓」にあたる部分へ人型の影が映り込んでいる事が判りましたが、これの正体については現在判明していません。また、射出されたSCP-828-JP-Bの行方は現在も明らかになっていません。
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scp-829-jp |
評価: +80+–x
SCP-829-JP
アイテム番号: SCP-829-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-829-JPはサイト-8173の植物育成室に収容されています。サイト-8173にはブロッコリーの持ち込み、およびサイトの食堂においてブロッコリーを使用した料理の提供を禁止しています。財団は各国、特に米国における爆発事故を調査します。未収容のSCP-829-JPが存在する危険性に注意してください。
説明: SCP-829-JPはブロッコリーの一種です。食用として流通しているブロッコリーとの遺伝子的差異はほぼありません。
SCP-829-JPを摂食した人物がブロッコリーを摂食する事を嫌っていた場合、SCP-829-JPの異常性は発現します。SCP-829-JPの摂食者の脳内のアドレナリンが、平常時に人間が好まない食材を摂食した際に分泌されるアドレナリンと同程度の数値まで達した場合、SCP-829-JPの摂食者は爆発します。爆発の規模は摂食した人物の体重と同量のC4爆薬と同等です。
爆発までに人体に起こる具体的なプロセスは解明されていませんが、上記のアドレナリンの数値の上昇によって異常性が発現することから、SCP-829-JPによる爆発は脳内のアドレナリンと何らかの化学反応によって発生するものと推測されます。
摂食した人物の爆発は体内のSCP-829-JPを中心に発生しており、喉から胃にかけての上体の爆発に続いて下肢の爆発が発生するまでに若干の時間差が生じます。このため、上半身での爆炎は下半身の爆発による爆風で上空へ放出されます。SCP-829-JPの爆炎を直接視認した人物は、ブロッコリーを摂食することに意欲を見せます。この摂食意欲は周囲の説得などで解消される微弱なものですが、ブロッコリーを摂食することを好まない人物もブロッコリーの摂食に意欲を表します。
補遺: SCP-829-JPは日本生類創研との関わりが疑われていた研究施設の爆発事故現場から回収されました。施設からはどこかへ輸送される直前だったと思われるSCP-829-JPが発見、回収されています。現場の近隣住宅にはカバーストーリー「薬品工場の火災事故」「外国産農薬使用ブロッコリーの回収」を適用しました。以下は現場から回収された文章の内容です。
米国の企業からの依頼、「ブロッコリー嫌いを直そうキャンペーン」の試作品。
先方は食べやすいブロッコリーを期待してるらしいが、それじゃ問題の解決にはなってない。
誰にでも食べられるブロッコリーを作っても意味がない。
無理矢理食べさせるブロッコリーなんて意味がない。
だれでも自分からブロッコリーを食べるようにしなくては。
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scp-830-jp |
評価: +262+–x
SCP-830-JPの出現する███山
アイテム番号: SCP-830-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-830-JPの出現地点は封鎖し、警備員5名による見回りを行い、カバーストーリー「熊出没注意」を適用してください。侵入者は即座に拘束し、尋問を行った上でクラスA記憶処理を施し解放してください。警備員は8月30日の午後8時には速やかにその場から撤退させます。出現したSCP-830-JPは決して肉眼で視認せず、███山に隣接する██山の頂上に設置した定点観測カメラの映像によって確認してください。また、SCP-830-JPの出現が確認され次第、偽装を施した自動操縦の戦闘機によって高威力の焼夷弾を爆撃してください。近隣地域ではカバーストーリー「村興し」に基づき、打ち上げ花火などを行う「███落城鎮魂祭」が実施されます。プロトコル実施後は近隣地域で異常に気付いた者が居ないかを監視し、もしも居た場合にはクラスA記憶処理を施してください。
説明: SCP-830-JPは、毎年8月30日の午後9時から翌日の午前3時の間にのみ、██県███山の頂上に出現する、戦国山城とみられる建造物です。SCP-830-JPの現在の面積はおよそ150,000㎡であり、高さ55mの本丸、二の丸、三の丸に加え様々な郭や櫓、砦から構成されているため、安土桃山時代当時の武装での真正面からの突破は非常に困難であると考えられています。また、各所に旗印が染め抜かれた旗が存在しており、それらを調査した結果、全てが██家に所属していた戦国武将の旗印であることが判明しています。
SCP-830-JPが出現すると、そこに存在していた物品は消失します。かつて出現位置に焼夷剤を設置し遠隔操作で起爆することによりSCP-830-JPを消失させる計画が試みられましたが、この異常性により焼夷剤は消失、計画は失敗に終わっています。また、SCP-830-JPの消失後は、出現時に消失した物品が元の位置に再出現します。
蒐集院より押収したSCP-830-JP-1の写真
SCP-830-JPの内部には、安土桃山時代の物と推測される鎧を身に纏った人型実体(以降SCP-830-JP-1と表記)が████体存在します。SCP-830-JP-1は安土桃山時代において一般的な武器、日本刀や弓矢、鉄砲などで武装しており、SCP-830-JPに接近する人間に対し非常に敵対的です。SCP-830-JP-1は通常の人間にとっての致命傷を受けるとその場で消滅します。また、本丸にあたる部分にはSCP-830-JP-1を統率する個体が存在しており、この個体を無力化、もしくはSCP-830-JPの██%を破壊した場合SCP-830-JPは「落城」し、SCP-830-JPおよびSCP-830-JP-1は翌日の午前3時を待たず即座に消失します。消失時にSCP-830-JP内に存在していた人物は、SCP-830-JPの出現地点に気を失った状態で現れます。また、SCP-830-JP内部で消失の瞬間を撮影することは、映像機器の原因不明の不調が発生するため成功していません。
SCP-830-JPを肉眼で視認した人物は、その時点で持ちうる中で最も殺傷力の高い物品を構え、SCP-830-JPの攻城を始めます。この影響はクラスA記憶処理で除去が可能であり、SCP-830-JPの消失と同時に解除されます。一般人が影響を受けた場合、大抵は大手門においてSCP-830-JP-1に殺害されます。SCP-830-JP-1に殺害された人物は即座に消滅し、翌年以降SCP-830-JP-1として出現することが確認されています。
8月30日の午後9時から翌日の午前3時までの間に「落城」が発生しなかった場合、SCP-830-JPの規模の拡大が発生します。蒐集院から押収した文書では今までに合計██回の拡大が起こったとされており、現在のSCP-830-JPの規模はこの事に起因するものと考えられます。
SCP-830-JPは18██年、財団が蒐集院より押収したオブジェクトの1つです。押収文献には、15██年に██家に所属する███城主、北畠██が██軍の侵攻に対して籠城を行った際、██軍の軍師の奇策により一夜で落城させられたことを恨んだ事に起因すると記述されており、それはSCP-830-JPから確認できる情報と矛盾していません。また、詳しい記述によるとSCP-830-JPが現在の異常性を発現させたのは一国一城令により███城が廃城となった1615年からであり、それまでは███城内で発生していた幽霊騒ぎであったとされています。
+ 押収文献830
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以下の文書は、蒐集院より押収した当時の収容に関連する文献の一部です。内容は現代語訳されています。
1616/8/30
我々は「一夜城」(第███番)の蒐集を開始した。前年の報告と異なり、出現した███城は櫓が1つ多い。この蒐集物の異常性は15██年の███落城における北畠██の怨念に由来する故、祈祷による除霊を試みた。しかし第███番を視認した瞬間に祈祷師は大幣を振りかざして城へと突撃を始め、亡霊に殺され消失した。我々はこの年効果的な手を打てないでいたが、大雨により連中の鉄砲が機能していなかったのは不幸中の幸いだった。
1617/8/30
今年出現した███城は、郭の数が1つ増えている。北畠██は籠城に成功したことに気分が高揚でもしているのであろうか。今回我々は護符の加護により無為な突撃を防ぐことに成功した。しかし、夜通しの祈祷にも関わらず、城には何の変化も見られず、午前3時に前年と同じように消失した。祈祷は第███番には効果がないのかもしれない。
1618/8/30
今年の███城は、大手門の拡充が見られた。今回は██家の人間が███城で発生した幽霊騒ぎを武力で鎮めていた事に倣い、武装した兵士を動員し制圧を行った。1616年の記録において大雨で鉄砲が無効化していたことに鑑み、呪術を用いて大雨を降らせた上で攻城を開始。最小限の犠牲に抑え、見事に北畠██を討ち取った。第███番は午前3時を待たず消失した。
1619/8/30
昨年北畠██を討ち取ったにも関わらず、███城は再び姿を現した。ただし前年までのように規模の拡大は見られなかった。北畠██は籠城に成功した時のみ███城の増築を行うようだ。前年と同様に攻略を開始。容易く北畠██の首を取ることに成功した。
[中略]
1748/8/30
従来の方法では第███番を管理することは困難になってきた。亡霊の練度も上がってきており、数度の攻城失敗により城の規模はかの上杉の春日山城もかくやというほどにまで拡大した。もはや正攻法はこちらの被害を徒に増やすだけである。そんな折、██より提案された隠密部隊による北畠██の暗殺計画が実行された。博打ではあったものの結果は大成功であり、こちらは被害を1人も出すことなく制圧を完了。翌年より毎年この手順を実行することに決定した。
[中略]
18██/8/30
隠密部隊による北畠██の暗殺にも暗雲が垂れ込めてきた。(いささか対応が遅すぎるような気もしなくはないが)護衛をつけ、影武者を用いることで暗殺に対抗するようになってきたのである。昨年は不覚をとり実に██年振りに城の増築を許してしまった。今年は何とか北畠██を発見し暗殺することに成功したが、このままでは順調に第███番を管理し続けることは不可能だろう。近年は米国に由来する「財団」なる組織との交渉も難航している。いっそやつらに全て擦り付けた方が上手く行くのではないか?
財団は当初、内部調査を兼ねた複数の機動部隊による制圧を行うことによってSCP-830-JPを収容していましたが、19██年に財団の製造部門がSCP-███-JPの収容に用いる高威力の焼夷弾を開発すると、██博士により、当時米国から提供されたばかりの自動操縦が可能な戦闘機を用いたSCP-830-JPの収容への転用が提案されました。翌19██年に実施したところ、SCP-830-JPは問題なく「落城」したため、現在の特別収容プロトコルが確立しました。
補遺: 現在の特別収容プロトコルを実施するようになってから██年が経過した20██/8/30、プロトコルの実施後にSCP-830-JPの出現地点に以下のような内容の著された立て札が出現しました。
止 む べ し
なお、このインシデントの発生の翌年にも従来の特別収容プロトコルを実施しましたが、異常は確認されませんでした。よって現在まで、特別収容プロトコルの改訂は行われていません。
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scp-831-jp |
評価: +112+–x
SCP-831-JPの個体。
アイテム番号: SCP-831-JP
オブジェクトクラス: Extranormal Euclid
特別収容プロトコル: 現在研究用として、生物サイト-8102に20個体のSCP-831-JPが保管されています。SCP-831-JPの収容チーム及び研究者は、常に規定の素肌の露出しない服装が義務付けられています。万一SCP-831-JPと直接接触した場合、直ちにAクラス記憶処理を受けてください。未確認のSCP-831-JP-1発見のため、████県内の医療機関のうち、耳鼻咽喉科・精神科の診療記録、及び財団のサーチアルゴリズムによりインターネット上の疾病、幻覚を常に監視対象としています。SCP-831-JP-1として疑われる症状が発見された場合、症状確認のエージェントを派遣し、SCP-831-JP-1の初期段階の罹患者だった場合は、症状の発生時期に応じて、基本的にAからCクラス記憶処理を施した上、7年後の11月まで観察対象となります。特に最終年度には注意が必要です。Dクラス記憶処理はレベル3セキュリティクリアランスを持つ職員の許可を得た場合のみ行ってください。記憶処理を行っていない状況で症状発生から20日以上が経過していた場合、他の第二段階の対象者と同じ処置が適応されます。この場合、処置は第二段階への移行前に行われます。
SCP-831-JP-1の第二段階に移行した罹患者は、倫理委員会の監査に基づくプロトコル831-JP-09[夏季補修]により、翌年1月から6年後の12月までの間に、不自然でない形での疾病、事故、行方不明の犠牲者として処理されます。密閉された屋内での措置が理想的です。詳細な手順は別紙資料[対遊離831-JP-1採集処理]を参照してください。対象者のリストの閲覧はレベル3セキュリティクリアランスが必要です。突発的な不測の事態がない限り、順序の変更は禁止されています。その際、発生したSCP-831-JPはすべて回収し、研究に必要な場合を除き、処理手順に沿って焼却してください。
説明: SCP-831-JPは、日本では一般的にミンミンゼミとして知られている、セミ科のHyalessa maculaticollisに酷似した存在です。通常の寿命は他のセミと同程度と考えられ、9月から10月頃、SCP-831-JP-1の影響者から発生します。SCP-831-JPの生死を問わず、SCP-831-JPに素手及び素肌で接触を行うとSCP-831-JPは幾何学的に展開し、内側に向かい収縮、崩壊し、30秒後には完全に消滅します。この現象は接触者がSCP-831-JPを認識しているときのみ発生します。その約30分後、接触者は約70%の確率でSCP-831-JP-1に罹患します。SCP-831-JPはすべて雄で、20██年現在まで雌は発見されていません。SCP-831-JP-1を介して、7年ごとに通常のセミに交じって発生していると考えられていますが、197█年以前の生態は不明です。
SCP-831-JP-1はSCP-831-JPに触れた対象者へ大きく3段階の症状を与える幻覚症状です。
初期段階:接触から約30分が経過すると、罹患者は昼夜を問わず1匹のセミの声の幻聴を聞くようになります。また、周囲の気温・湿度に関わらず、体感気温を27~30℃に感じるようになります。この症状は不快なものですが耐えきれないほどではなく、2割程度の罹患者は単に疲れによる耳鳴りや体調不良の症状として、医療機関の診療を受けないケースもあります。症状は1ヵ月から1ヵ月半で終息します。この時点で、SCP-831-JPと接触した期間に対して記憶処理が成功した場合、第二段階への移行は起こりません。
第二段階:SCP-831-JP-1に影響されて何の処置も行われなかった罹患者は、7年後のほぼ同時期、以前に増した音量のセミの幻聴と体感気温の上昇を訴えます。幻聴は「何十匹もの数のセミが頭の中で鳴いている」と表現され、会話や睡眠も困難なレベルです。感じる音量はおよそ150デシベルと推定されており、社会生活に支障をきたします。体感気温は40℃前後と推定されています。第二段階に移行した罹患者が死亡した場合、頭部から数十体のSCP-831-JPが発生します。一般的なセミの幼虫のかたちで顔面の目鼻の穴、もしくは不明な方法で内側から1.5cm程度の円錐状に開けられた穴から発生し、外部に出ると即座に羽化し、罹患者の頭部に抜け殻を残して飛び立ちます。穴の内部には物理的な物体の痕跡は残りません。罹患者が生存した場合、症状は依然と同じく1ヵ月から1ヵ月半で終息しますが、3割程度は回復後もPTSDを発症し、耐えきれず自殺を図る罹患者も現れます。
第三段階:第三段階まで移行した症状は過去に1例のみ1です。第二段階を超え更に7年が経過した場合、第三段階の症状が発生します。第二段階を超える音量の脳内の幻聴が発生していると思われますが、罹患者との意思疎通ができなかったため詳細は不明です。対象となったDクラスは数時間で死亡し、326体のSCP-831-JPを発生させました。
SCP-831-JP-1は、197█/09/10の初の発生事例から198█/09/██の再発生事例までの間、超常現象として記録されていました。以下は当時の記録です。
概要紹介:████県の████████町の住民9名がセミの声がする幻聴に悩まされ、耳鼻科、精神科への診療を受けました。詳しい症状を確認したところ、体感気温も30℃前後となっている事が判明しましたが、徐々にどちらの症状も薄れていき、10月中旬には症状を訴える住民はいなくなりました。
発生日時:197█年9月10日
場所:████████町
追跡調査措置:住民には猛暑によるストレス障害というカバーストーリーが用意され、必要な住民及び医師にはAからBクラスの記憶処理を行いました。事件から4年が経過していますが、その後住民に異常は発生していません。
―夏が長くなるのと一緒に、休暇も長くなれば文句もないんだがね。―████博士
補遺831-1 オブジェクトクラス再分類経緯:
198█/09/05、実質的な2回目の発生周期。7年前の197█年に症状を訴えた住民7名、及び更に24名の住民(後の調査による197█年当時████████町住民だった████県住民3名を含む)に再度症状が現れました。197█年にも症状を訴えた住民(及び当時医師の診察を受けなかった住民7名を含む)14名は、以前に増して耐えがたい音量のセミの幻聴と体感気温の上昇を訴えました。
第二段階に移行した患者への記憶処理は何の効果ももたらさず、投薬による強制的な睡眠がかろうじて有効でした。10月中旬にはまた以前と同様に鎮静化しましたが、それまでに2名の自殺未遂、3名の精神障害、6名にPTSDが残りました。
近隣の科学工場で発生した事故による、有害物質の漏出による精神疾患としてカバーストーリーが挿入され、一部の住民に補償金が支払われました。
198█/11/██に████████町のアパートに住む独居男性(██████)の孤独死体が発見されました。死後14日が経過しており、手帳にはSCP-831-JP-1の第二段階の症状が出ていることが記載されていました。
男性の顔面及び頭部は多くの穴と42匹のSCP-831-JPの幼虫の抜殻で覆われており、室内には外へ逃げられなかった31匹のSCP-831-JPの死骸が残されていました。室内に入った警察官がSCP-831-JPに触れ、SCP-831-JP-1の第一段階の症状が現れました。警察内部のエージェントの報告により、以後の処理は財団へ引き継がれました。
197█年にAクラス記憶処理を行った住民2名には198█年の症状が発生していないことが判明しました。記憶処理を行わなかったSCP-831-JP-1罹患者に改めて症状が発生した前後の出来事を回想してもらったところ、多くの対象者がセミにぶつかった、サンダルでセミの死骸を蹴ったなど、SCP-831-JPらしき物体との接触事例が確認できました。
SCP-831-JP及びSCP-831-JP-1間で密接な因果関係がある事がほぼ確実とされたため、超常現象からEuclidへ再分類されました。
補遺831-2:プロトコル831-JP-09[夏季補修]制定案での経緯、及び以後の経過事例
198█/04/██、初期段階のSCP-831-JP-1罹患者記憶処理手順及び、以後の第二段階のSCP-831-JP-1罹患者へのプロトコル831-JP-09[夏季補修]が提案されました。記憶処理手順は承認されましたが、プロトコル831-09[夏季補修]は意図的にSCP-831-JP-1に罹患させたDクラス職員(D-225641)による長期経過実験が完了するまでは保留とされました。
199█/04/██、精神障害を患った198█年度の罹患者が自室内で自死、その際300体を超えると思われるSCP-831-JPが発生。また約200体を残し屋外に逃亡し、以後の1ヵ月で同居していた家族2名を含む36名が初期症状のSCP-831-JP-1に罹患しました。密閉環境でない屋内外での第二段階罹患者の偶発的な死亡事故によって、隠蔽し切れないレベルでの大規模収容違反が起こる可能性が否定しきれないという観点から、プロトコル831-JP-09[夏季補修]はDクラスの実験終了を待たずに承認され、198█年度の第二段階罹患者が対象となりました。
199█/09/██、3回目の発生周期。新たに25名のSCP-831-JP-1の初期症状の罹患者と、16名の第二段階罹患者が発生しました。記憶処理を行った198█年度の罹患者からの発生はありませんでした。D-225641は第二段階に移行しましたがその後回復しました。
199█/09/██、4回目の発生周期。新たに15件のSCP-831-JP-1の初期症状の罹患者と、4件の第二段階の罹患者が発生しましたが、記憶処理を行った前年度の罹患者からの発生はありませんでした。D-225641は第三段階に移行し、その数時間後に死亡、頭部から326体のSCP-831-JPが発生しましたが、全て確保されました。
Footnotes
1. 第三段階直前に死亡した例を除きます
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scp-832-jp |
評価: +48+–x
1st Try
2nd Try
3rd Try
4th Try
アイテム番号: SCP-832-JP
オブジェクトクラス: Anomalous Euclid
特別収容プロトコル: 現在SCP-832-JP-1がサイト-1024の危険物収容室に保管されています。SCP-832-JP-2が収容室に出現した場合は即座に収容室の2重隔壁を起動し、機動部隊へ通報して下さい。
説明: SCP-832-JP-1は直径20cmの電波時計です。SCP-832-JP-1は未知の原理により電池を抜かれている状態であっても時刻を表示し続けます。ただし、表示される時刻は「10月1日12:00」で固定されており、こちら側の操作は受け付けません。収容当初は「電池なしで動く壊れた電波時計」としてAnomalousアイテムに分類され低危険物収容金庫に保管されていましたが「事案832」にて出現したSCP-832-JP-2と密接な関わりがあるとされ、オブジェクトクラスを「Euclid」に再分類、現在の収容方法へ変更されました。
SCP-832-JP-2は衣服を纏った体長約2.3mの人型生物です。SCP-832-JP-2は非常に凶暴な性質と、優れた膂力・反射神経を持っていることが観測されています。
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事案832
2001年10月1日、SCP-832-JP-1が収容されていた金庫室に突如SCP-832-JP-2が出現しました。SCP-832-JP-2は出現後、SCP-832-JP-1の収容されている金庫を奪取し逃走を計りました。金庫が奪取された時点でサイト内に侵入者警報が発令され、警備員が急行しSCP-832-JP-2を取り押さえようとしましたが抵抗されたため叶わず、鎮圧用麻酔弾も効果がなかったため火器を使用しSCP-832-JP-2を殺害、SCP-832-JP-1を回収しました。また、SCP-832-JP-2の死体はSCP-832-JP-1の回収後に消失しました。この事案により警備員1名が死亡しました。
リトライする
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Now Loading…
ロードが完了しました。間もなくリスポーンします。
アイテム番号: SCP-832-JP
オブジェクトクラス: Anomalous Euclid
財団記録・情報保安管理局より通達
ファイル'SCP-832-JP'には文字の一部が赤字に変色している箇所が存在しますが、これは財団による意図的な編集ではありません。当該箇所の改竄行為は失敗に終わりました。現在、この現象とSCP-832-JPとの関連性を調査中です。
— 記録情報セキュリティ管理室(RAISA)管理官 セオドア・ジャクソン
特別収容プロトコル: 現在SCP-832-JP-1がサイト-1024の高危険物収容室に保管されています。SCP-832-JP-2が収容室に出現した場合は即座に収容室の3重隔壁を起動し、機動部隊へ通報して下さい。
説明: SCP-832-JP-1は直径20cmの電波時計です。SCP-832-JP-1は未知の原理により電池を抜かれている状態であっても時刻を表示し続けます。ただし、表示される時刻は「10月1日12:00」で固定されており、こちら側の操作は受け付けません。収容当初は「電池なしで動く壊れた電波時計」としてAnomalousアイテムに分類され低危険物収容金庫に保管されていましたが「事案832」にて出現したSCP-832-JP-2と密接な関わりがあるとされ、オブジェクトクラスを「Euclid」に再分類、現在の収容方法へ変更されました。
SCP-832-JP-2は鎧兜を纏った体長約2.3mの人型生物です。SCP-832-JP-2は非常に凶暴な性質と、優れた膂力・反射神経を持っていることが観測されています。また、武具の扱いに長けていることから人間と同等の知能を有していると推測されています。
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事案832
2001年10月1日、SCP-832-JP-1が収容されていた金庫室に突如SCP-832-JP-2が出現しました。SCP-832-JP-2は出現時に所持していた槌に類似した武器により金庫を破壊すると、SCP-832-JP-1を奪取し逃走を計りました。金庫が破壊された時点でサイト内に侵入者警報が発令され、警備員が急行しSCP-832-JP-2を取り押さえようとしましたが抵抗されたため叶わず、鎮圧用麻酔弾も効果がなかったため火器の使用とSCP-832-JP-2の殺害許可が下りました。
しかしSCP-832-JP-2の強固な武装に阻まれ殺害には至りませんでした。SCP-832-JP-2はなおも逃走を続けましたが、通報を受けた機動部隊がサイトに到着し重火器を使用したことでSCP-832-JP-2の殺害に成功し、その後SCP-832-JP-1を回収しました。また、SCP-832-JP-2の死体はSCP-832-JP-1の回収後に消失しました。この事案により警備員2名が死亡し、施設の一部が損壊しました。
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補遺
SCP-832-JP-1を回収した機動部隊員より『SCP-832-JP-1の移送時にオブジェクトの液晶部分にNow Loading…の文字が浮かび上がった』との証言を得ました。SCP-832-JP-1には未だ解明されていない性質があると見られています。現在、SCP-832-JP-1の分解も視野に入れた追加調査の実施が協議されています。
リトライする
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Now Loading…
ロードが完了しました。間もなくリスポーンします。
アイテム番号: SCP-832-JP
オブジェクトクラス: Anomalous Euclid
財団記録・情報保安管理局より通達
ファイル'SCP-832-JP'には文字の一部が赤字に変色している箇所が存在しますが、これは財団による意図的な編集ではありません。当該箇所の改竄行為は失敗に終わりました。現在、この現象とSCP-832-JPとの関連性を調査中です。
— 記録情報セキュリティ管理室(RAISA)管理官 セオドア・ジャクソン
特別収容プロトコル: 現在SCP-832-JP-1がサイト-1024の地下収容室に保管されています。SCP-832-JP-2群が収容室に出現した場合は即座に収容階層の隔離を実施し、機動部隊へ通報して下さい。
説明: SCP-832-JP-1は直径20cmの電波時計です。SCP-832-JP-1は未知の原理により電池を抜かれている状態であっても時刻を表示し続けます。ただし、表示される時刻は「10月1日12:00」で固定されており、こちら側の操作は受け付けません。収容当初は「電池なしで動く壊れた電波時計」としてAnomalousアイテムに分類され低危険物収容金庫に保管されていましたが「事案832」にて出現したSCP-832-JP-2と密接な関わりがあるとされ、オブジェクトクラスを「Euclid」に再分類、現在の収容方法へ変更されました。
SCP-832-JP-2は鎧兜を纏った体長約2.3mの4体の人型生物です。SCP-832-JP-2は非常に凶暴な性質と、優れた膂力・反射神経を持っていることが観測されています。また、武具の扱いに長けており、SCP-832-JP-2同士では未知の言語によってコミュニケーションをとりながら連携する様子が観測されていることから少なくとも人間と同等の知能を有していると推測されています。
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事案832
2001年10月1日、SCP-832-JP-1が収容されていた金庫室に突如SCP-832-JP-2群が出現しました。SCP-832-JP-2群は出現時に所持していた槌に類似した武器により金庫を破壊すると、SCP-832-JP-1を奪取し逃走を計りました。金庫が破壊された時点でサイト内に侵入者警報が発令され、警備員が急行しSCP-832-JP-2群を取り押さえようとしましたが抵抗されたため叶わず、鎮圧用麻酔弾も効果がなかったため火器の使用とSCP-832-JP-2群の殺害許可が下りました
しかしSCP-832-JP-2群の強固な武装に阻まれ殺害には至りませんでした。その後、通報を受けた機動部隊がサイトに到着し重火器を使用することでSCP-832-JP-2群の掃討に成功し、その後SCP-832-JP-1を回収しました。また、SCP-832-JP-2群の死体はSCP-832-JP-1の回収後に消失しました。この事案により警備員2名、研究員1名、機動部隊員2名が死亡し、施設の一部が損壊しました。
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SCP-832-JP-2群の掃討に参加した日下部機動部隊員の証言
あのデカブツ共は、まるで俺らが出てくるのを前もって知っていたみたいに待ち伏せして迎撃してきやがった。そのせいで同僚が2人もやられちまったよ。
デカブツ共を殲滅してやった時も、奴らなんというか「死にたくない」とか「祟ってやる」とかの悲壮な感じは無くて、ただ少し悔しそうに死んでいったんだ…まるでちょっとした勝負事で負けちまったみたいな感じ。
それとあの時計についてなんだが、実はデカブツ共が消えちまったすこし後くらいに液晶の部分に「Now Loading…」って文字が出てきたんだよ、少ししたら消えちまったけどな。あ、勿論上には報告したさ、あれなんだったんだろうな?
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補遺
SCP-832-JP-1を回収した機動部隊員より、『SCP-832-JP-1の移送時にオブジェクトの液晶部分にNow Loading…の文字が浮かび上がった』との証言を得ました。SCP-832-JP-1にはまだ解明されていない性質があると見られています。現在、SCP-832-JP-1の分解も視野に入れた追加調査の実施が協議されています。
リトライする
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Now Loading…
ロードが完了しました。間もなくリスポーンします。
アイテム番号: SCP-832-JP
オブジェクトクラス: Anomalous Euclid(現在Neutralizedと推定)
財団記録・情報保安管理局より通達
ファイル'SCP-832-JP'には文字の一部が赤字に変色している箇所が存在しますが、これは財団による意図的な編集ではありません。当該箇所の改竄行為は失敗に終わりました。現在、この現象とSCP-832-JPとの関連性を調査中です。
— 記録情報セキュリティ管理室(RAISA)管理官 セオドア・ジャクソン
特別収容プロトコル: 現在SCP-832-JP-1の残骸がサイト-1024の地下収容室に保管されています。SCP-832-JP-2群が収容室に出現した場合は即座に収容階層の隔離を実施し、機動部隊せ-1("ギガントハンター")へ通報して下さい。
説明: SCP-832-JP-1は直径20cmの電波時計です。SCP-832-JP-1は未知の原理により電池を抜かれている状態であっても「10月1日12:00」の時刻を表示し続ける性質がありましたが、事案832時に破壊されて以降はその性質は消失しています。収容当初は「電池なしで動く壊れた電波時計」としてAnomalousアイテムに分類され低危険物収容金庫に保管されていましたが「事案832」にて出現したSCP-832-JP-2群と密接な関わりがあるとされ、オブジェクトクラスを「Euclid」に再分類、現在の収容方法へ変更されました。
SCP-832-JP-2は戦闘服に類似した衣服とヘルメットを身に着けた体長約2.3mの4体の人型生物です。SCP-832-JP-2は非常に凶暴な性質と、優れた膂力・反射神経を持っていることが観測されています。また、火器・爆発物・刃物の扱いに長けており、SCP-832-JP-2同士では未知の言語によってコミュニケーションをとりながら連携する様子が観測されていることから、少なくとも人間と同等の知能を有していると推測されています。
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事案832
2001年10月1日、SCP-832-JP-1が収容されていた金庫室に突如SCP-832-JP-2群が出現しました。SCP-832-JP-2群は出現時に所持していた爆発物により金庫を破壊すると、SCP-832-JP-1を奪取し逃走を計りました。金庫が破壊された時点でサイト内に侵入者警報が発令され、警備員が急行しSCP-832-JP-2群を取り押さえようとしましたが抵抗されたため叶わず、鎮圧用麻酔弾も効果がなかったため火器の使用とSCP-832-JP-2群の殺害許可が下りました。しかしSCP-832-JP-2群の武装に阻まれ殺害には至りませんでした。その後、通報を受けた機動部隊がサイトに到着し重火器を使用したSCP-832-JP-2群の掃討作戦が実施されましたが失敗し、SCP-832-JP-2群はサイトより逃走しました。幸いなことにSCP-832-JP-2群が市街地に向かわず、サイト付近の山林に留まり続けていたため、同日中に機動部隊の増援によってSCP-832-JP-2群の掃討に成功しました。この事案により警備員2名、研究員1名、機動部隊員15名が死亡し、サイトの一角が崩壊しました。
また、SCP-832-JP-2の死体はSCP-832-JP-1の回収後に消失し、消失地点には大量の松茸が残されていました。
SCP-832-JP-1はSCP-832-JP-2群の掃討後に機動部隊によって回収されましたが、サイトへ移送する途中で日下部機動部隊員によって故意に破壊されました。
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インタビュー記録832
インタビュー対象: 日下部機動部隊員
インタビュアー: エージェント・██
<インタビュー開始>
エージェント・██: では、インタビューを始めます。さて、何故あなたはSCP-832-JP-1を破壊したのですか?
日下部機動部隊員: うーん、どう表現したものか……何というか、あの時計はすぐに壊さないとやばい奴だと思ったんですよ。
エージェント・██: 真面目に答えて下さい。
日下部機動部隊員: あー…わかりました。話します、ただ…馬鹿にしたりしないでくださいよ?
エージェント・██: もちろんです。
日下部機動部隊員: それではそうですね…██さんはFPS、あーTPSでもいい、なにかそういう系のチームを組んでミッションを達成するようなゲームをやったことはありますか?
エージェント・██: 私は今までそういったゲームで遊んだことはありませんね。
日下部機動部隊員: では説明しますね。これはある戦争ゲームのルールなんですが、まずゲームを始める前に装備を決めたり仲間を募ったりするんです。私は簡単なミッションならソロで、高難度のミッションなら友人と協力して遊んでいます。で、その後参加したいミッションを選んでゲーム開始。スタート地点に転送されてその後はミッション達成のために好きに行動する。敵をキルしたり、レアアイテムを探したり、まあ目的は何でもいいです。そして、もしもミッション中に自分がやられてしまったらリトライを選んでまたスタート地点からやり直す。ここまで大丈夫ですか?
エージェント・██: ええ、ですがそれがSCP-832-JP-1を壊したこととどういう関連があるのですか?
日下部機動部隊員: あのデカブツ共の動きを見ておかしいと思いませんでしたか?
奴らはまるで部隊員の頭数、装備、作戦行動の全てを前もって知っていたかのように待ち伏せして迎撃してきました。しかも奴らはサイト内の構造にも精通しているようでした。建物内の死角や遮蔽物を活用されて私たちの部隊は完全に攪乱されました。あんな立ち回りは奴らに予知能力があるか、我々の内部に情報を垂れ流したスパイがいたか、もしくは以前にも全く同じ戦闘をしたことがあるかしない限り絶対に無理です。
エージェント・██: すみませんが、あなたの言いたいことがまだ理解できていません。
日下部機動部隊員: それではまた、ゲームの話に戻りますね。プレイヤーはやられてゲームオーバーになったらリトライできます。ですのでプレイヤーは何故自分がやられたかを分析して反省し、次のトライのために準備することが出来ます。装備を強化したり、強い仲間を募ったり、敵の戦力・作戦を先読みして対応策を考えたり…
エージェント・██: 待ってください、あなたはSCP-832-JP-2群がそれをやっているとでもいうのですか?
日下部機動部隊員: ええ、その通りです。
エージェント・██: その…状況証拠以外のもう少し別な根拠はないのですか?
日下部機動部隊員: そうですね…奴の死体から時計を回収した時に、それを見ていた生き残りのデカブツが目に見えてうろたえていたことと、後はあの時計について、奴らを殲滅して死体が消えたすぐ後くらいにいきなり液晶の部分に「Now Loading…」って文字が出てきたことですね。で、文字を見たとたんにハッと気づいたんですよ。「奴らがまたやり直そうとしている」って、そう思ったら後は、考えるよりも早く体が動いて…気が付いたらあの時計を壊してしまった後でした。
エージェント・██: はぁ…もし仮に、仮にですよ? あなたの説が正しかったとしても、我々はタイムリープ現象を観測する手段をまだ確立出来ていませんし、SCP-832-JP-1を破壊してしまったのではオブジェクトの調査も出来なくなってしまい、あなたの説の正当性を立証出来なくなってしまうのですよ?もう少し冷静になって待つことは出来なかったのですか?
日下部機動部隊員: それでは遅いんですよ!
…すみません。自分でもおかしなことを言っているのはわかっているんです。財団に所属してる職員として絶対に犯してはいけないことをしてしまったこともわかっているんです。ただ、どうしても怖かったんですよ!
エージェント・██: 何が怖かったのですか?
日下部機動部隊員: 奴の目です! 俺がとどめを刺した奴の目です! 友人とゲームで遊んでいるときに何度も同じ目をして言われたから、言葉はわからなくても奴が死に際に何を言おうとしていたのかがすぐにわかりました!
エージェント・██: SCP-832-JP-2は何を言おうとしていたのですか?
日下部機動部隊員: 「よくもやりやがったな、次は絶対お前から殺してやる」
<インタビュー終了>
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補遺
日下部機動部隊員は記憶処理の後に財団傘下のフロント企業へ異動となりました。
「事案832」の後に、破壊されたSCP-832-JP-1の分解調査が実施されました。この調査により、SCP-832-JP-1内部に磁気媒体1と思われる装置が内蔵されていたことが判明しました。磁気媒体内のデータの調査を実施した所、以下の文章の解読に成功しました。
納品ミッション
依頼人:Xguiwhdejuioe
ミッション内容:Gyuhdiew × 40 の納品
報酬:duciGTYFtyiuw × 4
5,000,000eoi
場所:fewiofhwfio(昼)
更新:2016年3月現在、これまでSCP-832-JP-2が再出現していない事から、オブジェクトクラスを「Neutralized」へ再分類する案が現在審議中です。
リトライする
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Now Loading…
ロードに失敗しました。ビーコンが破損している可能性があります。
脚注
1. 磁気データによる記録を行う電子媒体
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scp-833-jp |
評価: +25+–x
アイテム番号: SCP-833-JP
オブジェクトクラス: Safe
臨時サイト-6003で収容中のSCP-833-JP。19██/█/██撮影
特別収容プロトコル: SCP-833-JPは現在█°██'██''、███°██'██"に位置する臨時サイト-6069の収容下にあります。SCP-833-JPの周囲15mには高さ3.5mの鉄製のフェンスを設置し、警備チームを収容エリアに配置して一般人の侵入を防いでください。SCP-833-JPの転移イベントの少なくとも15時間前には、SCP-833-JP担当職員は転移予定エリアで待機しておく必要があります。転移イベント発生時は、目撃や録画などによる情報漏洩を防ぐために周辺の警備を強化してください。担当エージェントは常にSCP-833-JPの収容に最適なエリアを探し、財団のフロント企業を通じて買収・接収を行います。人口密集地に近い場所や山林など、オブジェクトが極端に目立つエリアは候補から除外されます。エリアの整地のため、小規模な土木工事を行う事が許可されています。
説明: SCP-833-JPは3階建ての住宅団地です。外観上の劣化から、建築されてから少なくとも50年以上が経過していると推測されています。SCP-833-JPの内部調査では全ての部屋が無人であることが確認され、構造や空間にはいかなる異常も発見されませんでした。この調査結果にもかかわらず、SCP-833-JPは約4800時間周期で特定のエリアへの転移イベントを発生させます。これまでの分析調査から、SCP-833-JPが転移するエリアには以下の共通点があることが判明しています。
木などが生えていない約20×50㎡の平坦な敷地
転移イベント以前のSCP-833-JPの所在地から半径100km圏内
以前の転移イベントで転移したことがないエリア
上記の条件を満たしたエリアが存在しなかった場合、SCP-833-JPは現在の所在地から最も近い位置にある約20×50㎡の平坦な敷地への転移イベントを発生させます。転移イベントはごく短時間で終了するため、SCP-833-JPがどのような方法でこの転移イベントを発生させているのか、またどのようにして条件に合致するエリアを「選択」しているのかは不明です。
収容の初期段階においてSCP-833-JPの転移イベントの阻止が試みられましたが、これらは全て失敗に終わりました。またその失敗の結果としてSCP-833-JPが市街地へと転移し、収容違反が発生する事態となりました。これを受け、あらかじめSCP-833-JPが転移する条件を満たしたエリアを財団が接収し、意図的にそのエリアへの転移イベントを発生させることでSCP-833-JPの収容を維持するという特別収容プロトコルが制定されました。財団保有のエリアへの転移を確実なものとするため、SCP-833-JPが存在する地点から半径100km圏内の他の候補地にはエージェントチームが派遣され、手順-833-JP("ソーラー発電")を実行します。
これまでにSCP-833-JPが転移イベントの周期と条件を逸脱した例は存在しないため、このプロトコルを遵守し続ける限り、SCP-833-JPの収容は維持されると考えられています。
SCP-833-JP 関連資料
+情報を閲覧する
- 終了
19██年のSCP-833-JPの発見と収容に伴い、最初の内部探査が行われました。結果として、複数の部屋で人が居住していた痕跡が発見されました。しかしながらSCP-833-JPは数十年前に既に放棄されていたようであり、住民、およびその遺体などは発見されませんでした。放棄された正確な時期や原因は不明です。残されていた物品にはいかなる異常性も無いことが確認されました。
回収された物品リストからの抜粋
腐食が進んだ衣服34点。製造タグはいずれも1961年以前に日本で製造されたことを示す。
1959年に製造された型と同一の████社製モノクロテレビ。完全に故障している。
劣化が進んだ木製の家具類、26点。
"201号室"と推定される部屋の台所に放置された食器類13点。
錆びた壁掛け時計。11時24分を指して止まっている。
机の中に保存されていた日記帳。水の染みにより表紙部分の劣化が激しく、筆者の名前の判別は不能。
文書 SCP-833-JP-2
SCP-833-JPの初期探査時に、かつて302号室であったと思われる部屋から発見された日記帳です。机の中に保管されていたため、比較的保存状態が良く、文章が判読可能な状態でした。以下は内容の抜粋です。
19██年10月20日
休日だというのに、この辺りの空気はとても悪い。本当にあの煙突達にはウンザリする。少し目を離した隙に何本か増えているような気さえする。
昼に201号の██さんと303号の██さんと一緒に工場に抗議に行ったが、成すすべもなく追い出されてしまった。
19██年10月29日
最近、咳をよくするようになった。心なしか顔色も悪い。食欲もあまり無くなってきている。
ここへ越してきてそろそろ1ヶ月になるが、こんなに酷いとは聞いていなかった。空は煙でろくに見えないし、夜でも遠くの工場達はギラギラと光っている。
19██年11月16日
咳があまりにも酷いので昨日医者にいったが、喘息らしい。原因を尋ねたが、医者はよく分からないと言った。工場の連中は医者にも金を渡しているのだろうか。原因なんて分かりきっている事だろうに。
あの煙突達だ。
19██年12月3日
年の終わりも近づいたが、空気はますます悪くなる一方だ。煙突がまた増えていた。
この団地はこの街の影の部分らしい。他の土地よりも少し低く、あまり日が当たらず、人も寄り付かない。なによりも煙を浴びやすい。僕は部屋選びに失敗したようだ。
101号の娘さんも喘息らしい。まだ7歳なのに可哀想に。
煙にはなんの害もないなんて嘘だ。
19██年12月28日
昨日からずっと、外も見えないほどの大雪が続いてる。仕事にも行けないし電話も通じない。
インタビュー記録 SCP-833-JP-4
SCP-833-JPの収容後、当該オブジェクトに関連する情報の調査が行われました。収集された情報は非常に少なく、内容も大半がオブジェクトとの関連性が低いと思われるものでしたが、三重県██市在住の内藤 ██氏からSCP-833-JPの起源に関連するとみられる証言を得ることが出来ました。以下はインタビュー記録の抜粋です。
対象: 内藤 ██氏(内藤氏と表記)
インタビュアー: エージェント 露木
(中略)
エージェント 露木: ではあなたは、「19██年に団地が消えた」という事件について知っていると?
内藤氏: ええ……事件と言うか…本当にあった事だとは私は思いませんが、そんなような話は確かに聞いたことがあります。到底信じられない話ですし、あいつ…白岩の嘘だと思っているのですが。
エージェント 露木: その件について詳しくお願いします。
内藤氏: はい。たしか19██年の冬、もう大晦日も近い頃だったと思います。ええ、たしか何年に1度かという大雪が降った次の日でした。あいつが血相変えて電話してきたんです。「管理していた団地が消えた」ってね。思わず笑いましたよ。普通は信じないでしょう?こんな話は。
エージェント 露木: 確かにそうですね。他にも何か言っていましたか?
内藤氏: 住民も一緒に消えたんだ、と言っていました。もっとも、あいつが管理していた団地は寂れた場所にあって、ほとんど人が入っていなかったみたいですがね。あいつが電話をかけてくる時は、大体金の無心をする時でしたから、私はいつもの嘘だろうと思って話半分に聞いていましたよ。なにかまた失敗して、借金でもしたんだろうと。それにしても変な嘘だと思いましたけど。他にも何か言っていたようですが、なにぶん30年近くも前の話なので、ほとんど覚えていません。
エージェント 露木: その後の白岩氏については、何か知っておられますか?
内藤氏: あの後、こっちから電話をかけたんですよ。あれは1月の…10日も過ぎた頃だったと思います。新年の挨拶でもしようかと軽い気持ちで。でも、通じませんでしたね。
エージェント 露木: 通じなかった?
内藤氏: ええ。やつとは元々深い付き合いでは無かったですし、色々と面倒事も抱えているみたいでしたから、またそのうちひょっこり電話でもしてくるだろうと思っていました。でも、結局それっきりでした。私が貸していた金も返ってきませんでしたよ。
エージェント 露木: 白岩氏の行方がわからなくなった事について、警察に届け出たりはしておられないのですか?
内藤氏: いいえ、していません。さっきも言いましたけど、またろくでもない事に首を突っ込んだんだろうと思っていましたから。こんな事を言うのもおかしいですが、あの頃の日本では、誰かがフラリと居なくなったり、連絡が取れなくなったりすることはよくある事だったんですよ。それに、あんな変な話を聞かされた後でしたからね。
このインタビューの後、内藤氏の証言に出てきた"白岩"という人物について調査が行われましたが、「1950年代から60年代にかけて三重県で不動産に関連する仕事を行っており、19██年以降姿を消した」という情報しか入手できませんでした。彼は1940年代からいくつかの土地や職業を転々としていたようであり、"白岩"という名前も現在では偽名であると考えられています。
文書 SCP-833-JP-5
かつて101号室だったと考えられる部屋から発見された学習帳です。空の勉強机の中に放置されていました。保存状態が良く、文章が判読可能でした。以下は内容の抜粋です。
9がつ 2にち
おひっこしした
あたらしいおうちはごかいだけど やまがみえない
10がつ 5にち
けむりが もくもく ずっともくもく
せきが こんこんでた
10がつ 19にち
せきがこんこん とまらなくて おいしゃさんにいった
びょうきだって
いやだ
10がつ 27にち
がっこうをおやすみした
はるちゃんみかちゃんとあえなくて かなしい
こんこん いたい
11がつ 14にち
せきが こんこん おなかがぜーぜー
どうして こんなに いたいの
ごはんもあんまりたべられなくなった
11がつ 25にち
がっこうでも みんなこんこんしてた
けいたくんも なっちゃんも わたしとおんなじびょうきだって
12がつ 4にち
せきがいっぱいでた
こんこん こんこん
いたくてないちゃった
おかあさんをみたら
おかあさんも ないていた
12がつ 10にち
きょうは いちにちじゅう ねてた
12がつ 18にち
おかあさんも わたしとおなじ びょうきだって
おとうさんは おこってた
きょうも いちにちじゅう ねた
12がつ 23にち
わたしは このおうちが だいきらい
えんとつも きらい
もうおともだちとあそびにいけなくなつた
せきがこんこん こんこん
おなかが ぜーぜー ぜーぜー
12がつ 27にち
ちがうところに いきたい
おともだちとあそんで
おひさまがげんきで
おほしさまが きらきらしてる
こことちがうところ
補遺: 20██/██/█
+情報を閲覧する
- 終了
20██/█/██の転移イベントの際、転移元のエリアと転移予定エリアの両方に職員を配置し、転移イベントの所要時間を測定する実験が行われました。SCP-833-JPは予定通り93.1km離れたエリアに転移し、転移に要した時間は4.16秒でした。このタイムラグはSCP-833-JPの移動方法と関連していると考えられたため、転移イベント発生時にDクラス職員1名をSCP-833-JPの内部に配置し、オブジェクトの移動方法を調査する実験が行われました。Dクラス職員(D-3627)にはGPSおよび無線機が支給され、転移イベント中に何らかの異常が発生した場合は報告するよう言い渡されました。実験は20██/██/█に実行されましたが、収容エリアからSCP-833-JPが消失すると同時にGPSからの信号がロストし、無線機も通信不能になりました。SCP-833-JPは4.12秒後に90.4km離れた収容エリアに転移しましたが、D-3627、及びその装備を発見することはできませんでした。約1時間後に無線機からの通信が復活しましたが、D-3627は本部からの通信を受信する事ができないようでした。D-3627からの通信はその後も断続的に17時間にわたり受信され続けました。以下はその通信記録です。
"―クソ、なんなんだここは?あいつらは俺を騙し――ここはいや こんなところにきたかったんじゃないの ここにいるのはいやなの"
"何かモヤみたいな[不明瞭]――あれは―あれは霧か?わたしはただべつなところにいきたかっただけなの あのおうちじゃないところにいきたかったの たすけて おねがいだから"
"何も見えない。俺は死んじまったのか?わたしはずっとここにいるの どこにもいけない おともだちとあいたい かえりたい"
"おい、そこに誰かいるのか?おーーい!おーーい!お―たすけて おねがい おねがいだから ここはけむりがいっぱいなの ずっとずっとせきがでるの もういやだってないても おこっても ずっとけむりがくるの"
"――霧なんかじゃない。これは―はるちゃん みかちゃん けいたくん なっちゃん あきちゃん よっちゃん もういやだよ もうけむりはいやだ いや いや いや いや"
"(不明な人物が激しく咳き込む音。24秒間続く)わたしたちをたすけて たすけて おねがいだから たすけて だして ここからだして たすけて いやだ もうここにいるのはいやだ"
これ以降、通信は完全に途絶えました。SCP-833-JPの移動方法を調査する実験は中止されました。
D-3627の行方は現在も不明です。
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scp-834-jp |
評価: +74+–x
評価: +74+–x
クレジット
タイトル: SCP-834-JP - 優しい雪兎
著者: ©︎k-cal
作成年: 2018
評価: +74+–x
評価: +74+–x
アイテム番号: SCP-834-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-834-JPはクッション性の壁に囲まれた小型生物オブジェクト用の収容室に収容されます。SCP-834-JPとの接触はできる限り避け、部屋の清掃はDクラス職員を用いて行ってください。SCP-834-JPと接触した職員は本人の意思にかかわらず記憶処理を受けなければなりません。収容室からSCP-834-JPが壁に体を打ち付ける音が聞こえることがありますが、保安上の問題はありません。
説明: SCP-834-JPはウサギを簡略に模した、体長約15 cmの雪像です。検査により、SCP-834-JPを構成する雪には主成分である水の他に、微量のアルコールが含まれていることが判明しています。
SCP-834-JP
SCP-834-JPは人間に対して友好的で、人間を発見すると小さく飛び跳ねながら接近し、積極的に交流1を図ります。SCP-834-JPはウサギ類に類似した鳴き声を有し、主にこの鳴き声を通して人に対し感情の伝達を試みます2。また、感情の伝達方法には鳴き声以外にも、大きく飛び跳ねる、涙を流す、甘噛みをするなどがあります。
人間がいない環境下にあるSCP-834-JPは落ち着きを失い、収容室内を走り回る、壁に体を打ち付けて収容環境下からの脱出を試みるなどの行動を起こします。SCP-834-JPの非力さゆえ、この行為は収容設備の破損をもたらしませんが、SCP-834-JP自身の損傷を伴います。
SCP-834-JPとの接触は、接触者の精神状況の好転をもたらします。Dクラス職員を用いた実験においては、1週間の連続的な接触により鬱症状の改善が見られました。またSCP-834-JPからの隔離後も、効果は失われませんでした。ただしSCP-834-JPとの接触後長期間(強い個人差があります)が経過すると、接触者の精神状況は悪化します。SCP-834-JPとの長期かつ密接な接触は、悪化を早めます。この悪化はSCP-834-JPとの接触に関する記憶を処理することにより防ぐことができますが、これは同時にSCP-834-JPの精神治療効果を無効にする行為です。
SCP-834-JPは民間の心理カウンセラー3である鈴木氏の自室で発見されました。以下の文書群はSCP-834-JPの確保時発見されたものの一部です。治療経過などの詳細な文書の一覧は添付の"SCP-834-JP関連文書一覧"を参照してください。
お元気ですか?
突然押しかけてびっくりさせてしまいましたね、ごめんなさい。
でも、今そこにいるその子はとっても優しい子です。
ときどき失敗する不器用なところもありますが、一生懸命あなたのために頑張ってくれるはずです。
ですから、どうかこの子が帰り道を思い出すまで、一緒にいてあげてください。
最初は少し大変かもしれませんが、少し経てばきっとあなたもこの子のことを好きになってくれると思います。そして、もしその子が道を思い出したときは、その子と一緒にぜひこちらを訪れてくださいね。
酩酊街より、愛を込めて。
メモ帳の記述
・突然現れた兎? なにこれ?
・クライアント4さんが反応を示したので貸し出すことに。
・鬱の改善に効果あり? アニマルセラピー的な?
・今持っているクライアントさんたちにアニマルセラピーとして実験に協力してもらう。⇒方法は貸し出しが一番効果がありそう。
・同業者に知られないように情報管理しっかり!
臨床実験記録(抜粋)
被験者
病状
貸与期間
結果
須田さん
軽度の鬱病
10日
完治
神田さん
心的外傷後ストレス障害
13日
寛解
仁科さん
全般性不安障害
12日
完治
木戸さん
重度の躁鬱病
29日
完治
前田さん
解離性健忘
11日
完治
メールデータ
日付: 2015/09/05
FROM: ████5
TO: 鈴木陽介
臨床実験の結果、拝見しました。結論から申し上げますと、この試みが実際に行われているのならば、それは中止すべきです。
確かに、治療の結果は常に素晴らしいものであるように見えます。私は未だにこれを信じることができていません。しかし、それこそが第一の問題です。
我々のカウンセリングという仕事は、クライアントに対し様々なアプローチをとらなければなりません。一口に心の病であるといっても、その種類は多種多様です。体の病がインフルエンザや肝硬変など多様であるのと同じで、そして肝硬変にタミフルは効きません。ですから、逆にここまでの成果は"異常"です。
第二の問題ですが、被験者の問診票に学習性無力感に近い傾向が若干見られます。現在はそれほど大きな影響のあるものではありませんが、これは熟慮すべき傾向です。
最後にもう一度、しつこいようですが、この試みの中止を提案します。目先の利益に惑わされぬよう、深くお考え下さい。
- ████
日付: 2015/09/07
FROM: 鈴木陽介
TO: ████
ご忠言ありがとうございます。
せっかくのご意見ですが、私はこの治療法を止めるつもりはありません。
先生は聡明な方でした。常に新しいことを求め、過去のくだらない束縛にとらわれることはありませんでした。
しかし、残念ながらそれはもはや過去のことのようです。先生ならばこのあらたな治療法に賛同し、協力してくださると思っていましたが、それは私の勝手な期待でした。
目先のことにとらわれるなといいますが、私は未来を見ているのです。もしこの治療法が確立されれば様々な病を治すことができるのです。それこそ、心理学の発展ではありませんか。
私に手出しはしないでください。私も独立した事業者です。そして、やっていることはあくまでアニマルセラピーです。あなたが業務を妨害するというのなら、法は私の味方です。
- 鈴木陽介
実地運用記録(最新5件)
被験者
病状
貸与期間
結果
金田さん
対人恐怖症
10日
完治
小野さん
心的外傷後ストレス障害
14日
完治
佐藤さん
不安障害
16日
完治
西田さん
強迫性神経症
13日
完治
木戸さん
重度の鬱病
19日
自死
音声記録
<録音開始>
(咳払い) あー、録音できているかな? よし、大丈夫。うん、あー、こんにちは、鈴木です。
私は相談室を閉めて、これからあの兎と一緒に生活を始めます。これからは、この実験が終わるまで他の人に会うこともないでしょう。
とにかく、まず私は失敗しました。今になってみれば、あの忠言を聞いていたほうがよかったと思います。(沈黙) まあ、今更言ってもどうにもならないですが。
この兎は確かに悪意のかけらも持っていないし、人の心を癒します。それは間違ってません。ただ、やり方がまずいようです。
「もう頑張らなくてもいいんだよ、無理して進む必要はないんだ。」
(咳払い) 兎はこうやって優しい言葉をかけ続けます。もちろん、実際に言葉にしているわけではありませんが。
確かに最初は効果があります。すべてを捨てていけば、楽になれるのは本当です。ただ、一通り捨て終えてしまうと (沈黙) 限界が来ます。
私たちは変化し続けるこの世界に生きる以上、どんな方向にであれ進み続けなければならなりません。兎が諭す理想の生き方は、この世界では不可能です。それなら最後に捨てなければいけないものは (沈黙、続いて小さな笑い) 自明ですね。
自分勝手な優しさは残酷です。私が予約の時間に訪れなかった木戸さんの自宅を訪れたあの日、兎は、天井からぶら下がった木戸さんに向かって心配そうに鳴き続けていました。自分が彼をそうさせたのにも関わらずです! あの光景を見れば、誰もが私の言いたいことを理解できるでしょう。私は今まで治療を施してきた何人ものクライアントさんに時限爆弾を仕掛けたわけです。私はただ、助けたかっただけなのに、その方法を誤ったせいでこのざまですよ。本当に、笑えない。ああ、もう。
だから私はこの身を捧げます。爆弾の解除コードを探すために。そして、まだ助かるクライアントさんを幸せにするために。この問題を解決するにはこの兎がクライアントさんに与える影響に対する主観的理解とそれなりの専門知識が必要ですから、私が直接被験者になるしかないんです。もちろん、家族や知人は反対すると思います。だから、このことは誰にも言っていません。この音声記録は私にもしものことがあったときのために残すものであり、同時に私がこの覚悟を忘れず、進み続けるためのものです。ああ、安心するんだ私。必ず、無事に全てを解き明かして、誰もが幸せな結末を迎えよう。
それじゃあ、録音はここで止めます。また、諦めそうになったらこれを再生するんだよ、きっとあなた、そう、私はやれる。大丈夫。じゃあ、また。
<録音終了>
鈴木氏の遺書とみられるメモ
Footnotes
1. 肩に乗る、鳴き声などを用いて意思疎通試みる、"追いかけっこ"とみられる行動をとる、など。
2. 動物の飼育経験のある人間の場合、この鳴き声を通してSCP-834-JPの感情を直感的に推し量ることが可能です。
3. 患者が持参した精神科医の診断を元にカウンセリングを行うことが主たる業務であったようです。
4. 心理カウンセリングにおいて、カウンセリングを受ける側の人間を指す。
5. 鈴木氏が大学時代通っていた研究室の教授。SCP-834-JPの確保後記憶処理済み。
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scp-835-jp |
評価: +342+–x
この報告書はプロトコル・アイドル-835の実施に伴い大幅な改稿が行われました。
アイテム番号: SCP-835-JP
オブジェクトクラス: Keter Safe
特別収容プロトコル: その性質上、SCP-835-JPを収容することは不可能です。当オブジェクトの関与が疑われる財団職員の不審死が発生した場合、機動部隊く-3"篝火"により現場の封鎖と調査が行われます。周囲の職員が受ける士気への影響に配慮し、可能な限り別件による死亡事件に偽装して処理してください。
SCP-835-JP"消照闇子"は後述のプロトコル・アイドル-835によって無力化されています。現在、財団内での大規模な認識災害の発生等によって起こり得る収容違反のリスクに備え、プロトコルの適用範囲を財団外部まで拡大することによる封じ込め強化が検討されています。
説明: SCP-835-JPは消照闇子(けてる やみこ)と呼称される主に黒の学生服を着用した黒の長髪を持つ10代後半の少女とされています。外見年齢が10歳ほど上下する場合や学生服以外の衣服を着用している場合もありますが、非常に優れた容姿を持つとされる点はほぼ共通しています。無口で感情の起伏も少ないためその性格は陰気と評されることが多く、他者に自身の姿が見られることを強く嫌うようです。
"消照闇子"は暗所から暗所へ距離や遮蔽物を無視してテレポートを行うことができ、標的を殺害する際はその能力で接近し所持する大型の包丁を用い素早く攻撃を行います。また闇を意のままに操り物体を包み込んで消滅させられる能力を有しているともされていますがその原理は不明です。その能力ゆえに財団と敵対する要注意団体に誘拐され暗殺者として育て上げられたという過去を持っており、現在の人格はこうした経緯から形成されたものだとされています。
"消照闇子"に関するより詳細な情報は専用アーカイブが設置されているためそちらを参照してください。
SCP-835-JP"消照闇子"は、かつて19██年に初めて確認された研究員、エージェント、機動部隊員といった財団職員に対してのみ発生する異常な現象でした。この異常現象はおよそ1ヶ月から3ヶ月の周期で発生し、それに遭遇した対象は数秒から十数秒ほどで大量の血痕を残しその場から消失します。その生死を問わず、行方不明となった対象が発見された例はありません。現場に残された血液は対象のものであることが調査によって確かめられており、その出血量は対象が消失前に致命傷を負わされた可能性を示唆しています。この現象の発生条件は被害者が財団職員であることと現場が視界不良な暗所1であることを除き、対象、時刻、場所に目立った共通項は見当たりません。
その法則性の無さと突発性、そして遭遇した対象は例外なく消失することから、この現象の実験的観測は成功しておらず詳細は現在に至るまで不明です。現場付近に居合わせた人物の証言や監視カメラの映像といった僅かな情報から、対象は認知できない何らかの存在から攻撃を受けるかのような言動、振る舞いをしていたことが分かっていますが、その攻撃者の存在が裏付けられたことはありません。
事案835: 20██/██/██、██研究助手のデスクにて"SCP-835-JPの想像図"と題された漫画調の少女が手書きで描画された冊子が同研究助手の同僚職員らによって発見されました。その場で中身の確認を行ったところ、そのキャラクターには"消照闇子"なる名前や性格、出自、能力などといった設定付けが成されており、冊子はその日のうちに担当の███博士に提出されました。後日██研究助手が自分のものだと認めたため、数日の謹慎ののち異動処分となる旨が発表されました。
しかし事案835以降、これまで最低でも3ヶ月周期で発生していた異常現象がおよそ5ヶ月間にわたり非活性状態を維持したことから、本案件との関連性を疑った██博士によりプロトコル・アイドル-835が制定されました。
補遺835-1: プロトコル・アイドル-835
事案835以降のSCP-835-JP"消照闇子"の長期にわたる活動休止から、当オブジェクトは財団職員の認識に影響を受けていると推測されました。その仮説に基づき、財団職員にSCP-835-JPに対する共通した認識を埋め込むことを目的としてプロトコル・アイドル-835の実施が██博士から提言され承認を受けました。拡散される共通設定にはすでに一定の効果を上げていた実績の考慮、そして情報伝達の円滑性と即効性が重視され、事案835で一定数の職員に認知されていた"消照闇子"の設定がそのまま採用されました。
20██/██/██、本プロトコルは実行に移され、まず当該オブジェクトが言及されているすべての書類や情報に"消照闇子"の詳細な設定の表記やオブジェクトの呼称を固有名に差し替えるなどといった、閲覧者がこれらを関連付けやすい形式へと改稿が行われました。また職員に対する広報活動の一環として、財団のイラストレーターがデフォルメデザインした"消照闇子"のキャラクタービジュアルがプリントされた広報誌、支給品、共用物などが施設で大量に普及された他、"消照闇子"をメインキャラクターに据えた創作小説、漫画、アニメーション等が順次制作されその閲覧が推奨されました。こうした財団の努力により数か月ほどでほぼすべての職員にSCP-835-JP"消照闇子"の認識を共有させることに成功し、これ以降オブジェクトの活性化は確認されていません。
現在これらの広報活動の規模は縮小されていますが、一定以上の認知度を維持するため現在も"消照闇子"が描かれた物品が施設各所に残されている他、定期的に対象をモチーフにした創作会が財団主導で開催されています。
SCP-835-JPとはおそらく、暗闇に己を脅かす何かが潜んでいるのではないかという本能的な恐怖の具現なのだろう。だが我々がかつて恐れた想像上の怪物は、プロトコル・アイドル-835によって今や陳腐な一キャラクターへ成り下がった。 - ██博士
脚注
1. 夜間の路地、就寝時の寝室、映画館、デスク下の陰などでの発生が確認されています
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scp-836-jp |
評価: +13+–x
アイテム番号: SCP-836-JP
オブジェクトクラス: Neutralized
SCP-836-JP-4
特別収容プロトコル: SCP-836-JPは無力化しました。現在は標準収容ロッカーに収容されます。
説明: SCP-836-JPは異常性を持つ片手遣い人形です。SCP-836-JPは自律稼働をし、浮遊することにより移動します。SCP-836-JPは開口部を上に向け、振り子運動を織り交ぜて移動します。最大浮遊高度はSCP-836-JPによって差異があります。SCP-836-JPへの干渉1は原理不明の抵抗を生じさせます。これらの抵抗を干渉した人物は「殴られた様」「掴まれた様」と表現します。
以下は確保されたSCP-836-JPのリストです。
ナンバー
外見
浮遊最大高度
SCP-836-JP-1
ゾウ科の動物を模した人形
188cm
SCP-836-JP-2
カエル目の動物を模した人形
188cm
SCP-836-JP-3
ウサギ亜科の動物を模した人形
194cm
SCP-836-JP-4
カワウソ亜科の動物を模した人形
220cm
SCP-836-JPは神奈川県██市にある██宅から発見されました。██一家の所在は現在も不明です。
SCP-836-JPの確保時に運搬するため小型ボックスに入れようとして失敗しました。よって運搬はトラックの荷台に直接入れた状態で行い、収容も中型収容ロッカーに個別に収容しました。SCP-836-JPはロッカーの扉を腕部で頭部を保護する形で頭突きを行っていましたが、収容違反には至りませんでした。SCP-836-JPが徐々に衰弱していったため財団は様々な措置を施しましたが、すべてのSCP-836-JPは収容から1週間後に異常性が見られなくなりました。Dクラス職員による追試験を行ったものの、一切の抵抗が確認されなかったためSCP-836-JPは無力化したと判定しオブジェクトクラスは変更されました。
追記: SCP-836-JPを収容していた中型収容ロッカーから異臭が発生するようになりました。清掃は完了し脱臭はされましたが原因は不明です。
Footnotes
1. 強制的な移動、内部へ物体を入れる等の行為。
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scp-837-jp |
評価: +51+–x
評価: +51+–x
クレジット
タイトル: SCP-837-JP - 受罰の鶏僧
著者: ©︎stengan774
作成年: 2022
この著者の他の作品
評価: +51+–x
評価: +51+–x
頭部が脱落した直後のSCP-837-JP。
アイテム番号: SCP-837-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-837-JPはサイト-8141内の、耐熱・不燃性の床材を使用した収容室に収容します。損傷と予期せぬ収容違反を防ぐため、専用の台において横に寝かせた状態でSCP-837-JPは拘束されます。台にはSCP-837-JPの頸部に相当する位置を切り抜き穴を開け、その下には耐熱性の円柱容器を設置します。定期的に頸部からの分泌物を回収し、凝固剤を加えて冷却後OPREmpr-000031の定める標準処理プロトコルに従い適切に廃棄して下さい。
SCP-837-JPの拘束が解かれた状態でその頭部が脱落した場合、速やかに胴体部は捕獲され、耐熱性の全身装備を身につけた職員により頭部と接着されます。このプロセスが長時間実行不可能であると見なされる場合、収容区画に配備された冷却装置を最大出力で起動して下さい。
説明: SCP-837-JPは、切断により頭部を欠落した一体の雄の鶏(Gallus gallus domesticus)です。SCP-837-JPの頭部と胴体は根元の部分で完全に切り離されており、頸部に施された太さ2mmの綿糸を用いた縫合によって再度それらが乱雑に接続されています。しかしながら、SCP-837-JPがこの切断により出血及び思考・運動能力を喪失する様子はこれまで確認されていません。
SCP-837-JPの頭部切断面からは絶えず分泌物が下部方向へ流出しています。この分泌物はアブラナ由来の油とフューゼル油を主成分としており、平均温度は180℃です。この高温のため、SCP-837-JPの胴体部は羽毛が焼け焦げ、皮膚は重度の火傷を負っています。SCP-837-JPはこれに起因すると推測される苦痛を表明しますが、例外的にその頭部は高温の影響を受けていないようであり、あらゆる反応を示すことがありません。
SCP-837-JPの頭部は不定期に脱落します。これは多くの場合SCP-837-JPが頭部を執拗に打ち振る、もしくは収容房の内壁などに衝突させることで頸部の縫合が緩むためであり、脱落後SCP-837-JPの胴体部は積極的に頭部から離れた地点へと移動することを試みます。
脱落したSCP-837-JPの頭部から流出する分泌物の量は、脱落からの経過時間に比例して指数関数的に増大します。この特異性はSCP-837-JPの頭部と胴体を接着させることにより停止します。この接着の際両切断面から綿糸が出現し、それによって頸部の縫合が自動的に再度施される様子が確認されますが、その原理は不明瞭です。
頭部を欠落しているという点からは不可解なことに、SCP-837-JPは外部からの聴覚情報に対する反応を示し、それを言語的呼びかけとして理解している様子を見せます。この際SCP-837-JPが応答に用いるのは切断により損傷している声帯ではなく、脚や翼を用いた動作です。財団職員による数度の訓練を経て、SCP-837-JPは現在打鍵型の文字出力装置を用いた意思疎通を行うことが可能となっています。
補遺: 以下はSCP-837-JPへのインタビュー記録です。
インタビュー記録837-JP
Record 19██/██/██
回答者: SCP-837-JP(以下対象)
質問者: エージェント・アオ(以下AA)
序: 質問はAAによる音声での呼びかけにより行われ、返答は対象がアルファベット表記の鍵盤(対象の分泌物に対し耐久性のある素材で構成)を脚で打鍵することで実施された。
[記録開始]
AA: インタビューを開始する。SCP-837-JP、聞こえるか。
対象: [「Y」を何度か打鍵、「YES」の意を示す]
AA: 良し。まず始めに貴方の起源、つまり、何故そのような姿になったのかを教えてほしい。
対象: 罰。[約15秒間、オブジェクトが脚で頭部を掻く仕草をする。オブジェクトは苦痛を示している] 騙した。
AA: 騙した、とは?
対象: 光の他に、希望を見出した。元よりそれが永久の闇の中をさまよう者共の救いであり、我ら僧の義なる(Righteous)ものであった。だがその信仰は、彼の地ではもはや捨てるべき、忌むべきものであった。
AA: そして罰せられたと?
対象: 「Y」。明るみになった時、彼らは私を捕らえて、こう言った。"我等の赫赫たる栄光を拒み、なお退廃の宵闇へ臨むのなら、いっそ夜目の利かぬ鳥にでもなれば良い"と。[頸部からの分泌物が増加する。オブジェクトはさらに苦痛を示す] ある者がそれに続けた、"朝を渇望する雄鳥がふさわしい。それが永遠に光耀に浴せられぬ断頭の盲であるならば、なおさら堪えられぬ罰となろう"と。
[ここで対象から休憩を希望する意が示される。約5分間の沈黙]
対象: 私は放たれた。苦痛に膝を屈しながら、大路を彷徨った。この身に刻まれたエッテリフト(Etarift: 詳細不明)の徴が明白であったので、誰もが私に石と汚物を投げつけ、罵声を浴びせた。その中には、私が救おうとしていた者たちの声があった。
AA: そうして、現在の姿に?
対象: 幸福な過去が忘れられぬまま進んだ。いつしか、光の届かぬ闇と氷に。[対象の頸部から漏れる分泌物の量、油温が共に上昇。頸部以外の羽毛の一部が黒く焦げ始める] しかし信じた彼らでさえも、私の穢された魂を癒やさなかった。脳裏の黒い影男が嘲る、"ああ、なんと無為なことよ"と。私は未だ受罰の罪人であり、忘れ去られるものではなかった。[数秒の沈黙] 故に私は、跳んだ(Leap)。
AA: 跳ぶ?どこへだ。
対象: 未だ見ぬ、新たなる天地。もはや雄鳥の私は飛べぬ故に、跳んだ。加速で私の肉は砕け、細かな粒子となり、それらがなお加速した。柔らかな手が私を引きよせる感覚があった。光より早くなお疾く、魂は星の外殻を突き抜けた。そして今、私はここに。
AA: そうして自由になったと。
対象: [「N」を打鍵、「No」の意を示す] 感じた。跳びて突き抜けたるあの時。後方の穴から、白い数本の光条が。条は細糸のようにうねり、私に絡みついた。今も魂は縛られ、憎悪が私を苛んでいるのを感じる。支配(Ruler)は常に、私に罰を。
AA: 細糸とは、その頭を縫い止めている糸のことか?
対象: [数秒の沈黙] これが頭に見えるのか。
AA: ああ、鶏の頭に。
[対象は頭部を連続で「N」キーに打ち付ける。縫合が緩む。対象の頸部から漏れる分泌物の量、油温、共に急激な上昇を確認]
AA: 落ち着けSCP-837-JP![記録用カメラへ向かって] インタビューを終了、冷却装置を!
対象: これがもはや、私にとっての最後の光。支配は、私の真上に [冷却装置が作動、対象は拘束される]
[対象の頭部が僅かに口角を吊り上げる]
[記録終了]
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scp-838-jp |
評価: +90+–x
SCP-838-JP-A
アイテム番号: SCP-838-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-838-JPの出現地域は都市部であり、世界的に有名な観光名所が存在する為、封鎖は不可能と結論付けられています。SCP-838-JPの出現地域は機動部隊み-2"もぐら叩き"が巡回し、SCP-838-JPの顕現を未然に防ぎます。SCP-838-JPの目撃者には記憶処理を行い解放してください。SCP-838-JPの存在を証明する又は示唆する情報には徹底した隠蔽工作を行ってください。
説明: SCP-838-JPは[編集済み]の市内全域に出現するSCP-838-JP-A~Eの総称です。SCP-838-JP-A~Eの外観を含む特筆的特徴は以下の通りです。
SCP-838-JP-A
車両用信号機 。矢印ランプが追加されている個体も確認されている。
SCP-838-JP-B
歩行者用信号。押しボタン稼働式の個体も確認されている。
SCP-838-JP-C
郵便ポスト。郵便物がSCP-838-JP-Cに入れられたケースは確認されていない。
SCP-838-JP-D
街灯。
SCP-838-JP-E
道路標識。
SCP-838-JP-A,B,Dは稼働に必要な電力供給がされていないにも関わらず正常に稼働します。SCP-838-JP-A,-Bの各ランプの点灯時間,SCP-838-JP-Dの点灯時間,SCP-838-JP-Eの内容はすべて個体差があります。詳細な情報は付録資料838-1に記載されています。
SCP-838-JPは出現範囲内の地面に前兆無く出現します。SCP-838-JPの出現は土やコンクリートといった地面の種類、人通りの多さや発生地点の交通的な役割などに関係無く起こります。出現時のSCP-838-JPは地面に垂直で、全長1mm程度の大きさです。SCP-838-JPは約10分の時間を掛けて模倣対象と同程度の大きさまで成長し、公的に利用されている各物体と見分けの付かない状態になります。また、SCP-838-JPは周囲の物体や景観の経年劣化具合を模倣する特性も示しています。SCP-838-JPの発生頻度は判明していませんが、少なくとも市内で一日に10個以上のSCP-838-JPが発生していると推定されています。
SCP-838-JPを肉眼で見ている人物がSCP-838-JPに対して一定を超える不信感を抱いた際、SCP-838-JPは一瞬で消失します。SCP-838-JPが人間の感情をどう読み取っているのか、またどの程度の不信感でSCP-838-JPが消失するのかは判明していません。しかし参考として、財団職員がSCP-838-JPを視界に捉えてから1秒以上SCP-838-JPが存在し続けた例はありません。そのため、SCP-838-JPの組成や詳細な出現~成長プロセスの究明は絶望視されています。SCP-838-JP-Aに触れた事が記録に残っている人物へのインタビューは「ただの信号機だった」という供述以上に有益な情報は得られませんでした。
SCP-838-JPはその異常性から市内で発生した多数の通報に反して実体が確認されない状態が続き、幻覚現象として調査が進められていました。ですが調査の過程でSCP-838-JP-Bの成長過程を含む映像記録が発見され、実体オブジェクトと認定されました。現在ではSCP-838-JP-A~Eまでの5種類が確認されています。
追記: SCP-838-JPが財団に発見されるより以前の19██年に、市内でメモ用紙が回収されていました。メモの内容は情報不足で一種の怪文書とされていましたが、SCP-838-JPに関連しているとの指摘が挙がりました。
指摘は十分に有効であるとされ、メモの内容が添付されています。
お元気ですか? こちらは楽しくやっています。
うちの愉快な仲間を送りました、届いていると良いな。
そのうち地面から生えて、頑張ってくれるはずです。
余計なお世話だったらすいません。それだけが不安です。
ジャマだと思ってくれたら、それだけで消えてくれますので…
酩酊街より 愛を込めて
補遺: 上記のメモの発見時期を鑑みて、機動部隊が19██年版の土木業務用地図を参照しながら市内を巡回しました。その結果、██体のSCP-838-JPの消失を確認しました。これはSCP-838-JPが19██年時点で既に市内に蔓延していたという説への有力な裏付けになります。SCP-838-JPの消失に伴った市民の混乱は情報工作を以て概ね抑圧されましたが、その広範性から現在も情報工作及び情報監視が続けられています。
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scp-839-jp |
評価: +131+–x
アイテム番号: SCP-839-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-839-JPは一般的な学校の教室に偽装した人数分の人型オブジェクト収容室に1人ずつ収容されます。各個体には毎日指定通りの時間に食事、及び掃除時間と小学3年生相当の学習時間を設け、SCP-839-JPが規則正しいと認識する行動を実行し続けて下さい。担当職員は指定の日時に必ずSCP-839-JPのストレスチェックを行い詳細は規則文書T-839-cを参照して下さい。
SCP-839-JPの混乱と偶発的な規則違反を防止する為に担当以外の職員によるSCP-839-JPとの接触にはレベル3以上の職員2名以上の承認の後、1ヶ月前までに接触理由と質問内容等を纏めたレポートを担当職員に提出して下さい。内容を吟味された後、担当職員の承認とSCP-839-JPへの時間割に"お話しのじかん"を周知の後に接触が許可されます。
説明: SCP-839-JPは愛媛県立███小学校第89期生である3年█組32名1です。█組の生徒間での自殺が頻発し、複数の生徒が一人の生徒を殺害する事件が発生した件で財団の目を引き、収容に至りました。SCP-839-JPはその全員が収容から██年が経過しているのにも関わらず、精神的な成長が見受けられない点を除けば一般的な人間との差異はありません。
SCP-839-JPの異常性はSCP-839-JP自身が規則違反と認識する行動を行った際に発生します。規則違反を行った直後から8時間以内に必ず他のSCP-839-JPによる他殺もしくは自殺及び心停止によって死亡します。
規則違反の内容は多岐に渡り、"早寝早起きをしない" "年上の人物の言う事を聞かない"といった行動による規則違反から、"泣かない" "怒らない" "必要以上に笑わない"といった感情が規則違反として該当する事が確認されています。また先生役の担当職員による規則内容の変更は成功しませんでした。意図的に規則違反を起こした事例において死亡事象を未然に防ぐ方法は現在確認はできていません。
+ 3年█組生徒収容リスト
- 終了
識別番号
氏名
現状及び収容サイト
SCP-839-JP-1
█ 隆
█月█日: 昼食時のフォークで喉を切り裂き自殺2
収容前に死亡
██ あずさ
4月30日: 飛び降り自殺
SCP-839-JP-2
██ 蓮二
█月██日: 心停止3詳細は実験記録839-A
SCP-839-JP-3
██ 浩司
█月██日: 心停止 詳細は実験記録839-B
収容前に死亡
███ 直次
4月30日: 農機具で腹部を切り裂き自殺
SCP-839-JP-4
██ 桜
生存: サイト-81██内、第18収容室
収容前に死亡
██ 祐太郎
4月23日: 自室での首吊り自殺
SCP-839-JP-5
█ 華蓮
生存: サイト-81██内、第36収容室
収容前に死亡
██ 夏海
4月30日: 自身の喉にコンパスを突き刺し自殺
収容前に死亡
████ 充彦
4月30日: 教室内で壁に頭を打ち付けて自殺
SCP-839-JP-6
██ 灯
生存: サイト-81██内、第█セクター
収容前に死亡
██ 孝海
4月30日: 他生徒による刺殺
収容前に死亡
██ 美咲
4月28日: 道路へ飛び出し自殺
収容前に死亡
██ 吉郎
4月30日: 鉛筆で自身の喉を突き刺し自殺
SCP-839-JP-7
█ 映司
生存: サイト-████内、第█収容室
収容前に死亡
███ 優奈
4月26日: 包丁で自身の腹部を刺し自殺
SCP-839-JP-8
██ 乙姫
生存: サイト-8177内、第███収容室
SCP-839-JP-9
█ 雪
生存: サイト-8134内、第7セクター
収容前に死亡
██ 守
4月30日: 舌を噛み千切り自殺
SCP-839-JP-10
██ 清史郎
生存: サイト-81██内、█████
収容前に死亡
██ 鷹彦
4月30日: 飛び降り自殺
SCP-839-JP-11
██ 淳
█月██日: 回転遊具に首を挟み自殺4
SCP-839-JP-12
██ 七海
生存: サイト-████内、第9収容室
収容前に死亡
██ 葉月
4月30日: 鉛筆で目を抉り自殺
収容前に死亡
██ 洋平
4月30日: 家庭科室で焼身自殺
収容前に死亡
██ 梨花
4月30日: ガラス片で喉を切り裂き自殺
SCP-839-JP-13
██ 咲
生存: サイト-81██内、低危険度特殊収容室
SCP-839-JP-14
██ 拓人
生存: サイト-██内、████
収容前に死亡
██ 明
4月30日: 床に頭を打ち付け自殺
収容前に死亡
█ 唄
4月30日: カッターナイフで喉を自身の切り裂き自殺
SCP-839-JP-15
██ 英美香
██月██日: 収容サイト内で道路に飛び出し自殺5
SCP-839-JP-16
██ 良太郎
生存: サイト-8133内、第3█収容室
+ 3年█組担当教諭インタビュー記録
- 終了
対象: 3年█組担当教諭。田口 ██
インタビュアー: ██博士
付記: 収容直後のインタビューです。田口教諭は精神的なショックの為、精神安定剤の投与後に録音を行なっています。
<録音開始>
██博士: 落ち着きましたか?
田口教諭: ありがとうございます…少し落ち着きました。
██博士: それではインタビューを始めます。3年█組で最初に起きた異常現象。4月23日に自殺した██祐太郎について教えていただけますか?
田口教諭: え、えぇ…祐太郎くんはクラスの中でも特に真面目な良い子でした。内向的でしたが…その日の5時間目の授業中の…最後の辺りでに急に立ち上がって大声で叫んだんです。
██博士: どの様に叫んだのですか?
田口教諭: 分かりません。ただ、がむしゃらに叫んだというか…何かを大きな声で叫んだのですが…それで他の生徒も笑って…私が注意する前に本人もそれで落ち着いたのか座り込んで…事情を聞こうと思ったらその日の放課後はすぐに帰っていったんです。
██博士: その事を誰かに報告は? 彼の親御さんには伝えましたか?
田口教諭: 他の先生には相談しました。祐太郎君は今までそういった行動が見られなかった良い子だったのでとりあえず様子見してこれから続く様なら…然るべき機関に連絡を取るって事になって…親御さんとは相談する前に…その…。
██博士: 翌日には自殺していたのですね。
田口教諭: はい…その日からです。その…規則というか、決まりを守らなかった子が次の日には自殺して…。
██博士: あるいは他のクラスメイトに殺害されたという事ですね。
田口教諭: あ、あの子たちに人を殺す様な悪い子はいません! 何かの間違いです! どうかあの子達を…。
██博士: では質問を変えます。██ 祐太郎自殺の後に発生した他の生徒の自殺についてお話し頂けますか? 2人目が亡くなったのが4月26日、3人目が4月28日。以降の死亡記録を見ても共通点は見受けられません。何か共通点のようなものは思いつきますか?
田口教諭: [沈黙] …あまり思いつきません。どの子も元気いっぱいの子で…少しやんちゃというぐらいで…。
██博士: それは"言う事を聞かない"という意味で受け取って良いのですか?
田口教諭: 言い方は悪いですけど…そうかもしれません。私が教師として半人前であるからかもしれませんが…█組の中でも特にやんちゃだったと思います。
██博士: そうですか。では我々が収容する直前までSCP-839-JP…█組のメンバーと接触していたのは貴方です。何か違和感や気付いたことは?
田口教諭: …みんなが言う事を聞いてくれた気がします。
██博士: どう言う事ですか?
田口教諭: 私の指示に気持ち良く返事をして、授業中も集中して喋らない。ケンカも無く…クラスメイトが亡くなった直後とは思えない程…落ち着いていたと思います。あんな良い子達なのに…どうして…[嗚咽]。
██博士: では最後の質問です。我々が突入した際には校内で█組の生徒の13名もの生徒の死亡が確認されていました。何があったのですか?
田口教諭: …その日は2日前に美咲くんが亡くなっていて…子供達もどこか緊張してるみたいでした。…そんな中で孝海くん…██ 孝海くんが"もうこんなの嫌だ!"って授業中に立ち上がったんです。それと同時に孝海くんの前後左右の席の子が、孝海くんの手足を掴んで…コンパスでとハサミで…その…目を…[嗚咽]…それでパニックになって…悲鳴をあげた子が窓から飛び降りたり…もう…どうする事も…[嗚咽]。
██博士: 薬を飲んで落ち着きましょう。今日はここまでにしますか?
田口教諭: ひとつ…ひとつだけお願いがあります…。
██博士: 何でしょう?
田口教諭: どうかあの子達を…悪い子じゃないんです…どうか…。
██博士: 我々は貴方の生徒を処罰する為の組織ではありません。
田口教諭: はい…どうかお願いします…あの子達は親御さんともまともに話せていません…あの子達の味方になってられるのはもう私しか…。
<録音終了>
終了報告書: 田口教諭は記憶処理の後、他校への人事異動が実施されました。
また、SCP-839-JP内及び、SCP-839-JPの所属した教室内での集団自殺等の認識災害が発生した可能性を考慮して検査の実行を提案します。
追記: SCP-839-JPの所属した教室等は異常現象の発生から今年度に至るまでSCP-839-JP以外の298名の生徒が使用しましたがSCP-839-JP同様の死亡事例は確認されていません。
よって、SCP-839-JPの異常現象の原因はあくまでSCP-839-JP間にあると結論付けられました。
実験記録839-A - 日付20██/█/██
対象: SCP-839-JP-2"██ 蓮二"
概要: 意図的に規則違反を発生させ、その際の反応と死亡事象の発生を阻害できる可能性を検証。
実施方法: SCP-839-JP-2は他のSCP-839-JPとは███km離れたサイト-81██内の収容室に収容され、睡眠時に麻酔を使用し昏睡状態の内に自殺防止の両手足の拘束及び猿轡の使用します。収容室外に拘束用の機動部隊員及び医療スタッフを待機させSCP-839-JP-2の心電図や脈拍を記録し起床時間を大幅に超過した状態で覚醒を促します。
結果: SCP-839-JP-2が起床時間の超過を確認した際に激しい動揺が見受けられました。大きく身体を動かし地面を這って部屋の隅に移動し、悲鳴を上げようとする姿が確認されました。
その状態が█秒持続し、SCP-839-JP-2は意識を失いました。
この時点で脈拍が停止し、医療スタッフによる蘇生措置が行われましたが失敗しました。
分析: 映像を記録した担当職員からSCP-839-JP-2は何かから逃げようとしているのではないかと予測されました。
実験当時の収容サイト内外では侵入者等の警戒が厳密となり、収容室内の赤外線及び感圧センサー等にもSCP-839-JP-2以外の存在は確認されませんでした。
以降の実験ではSCP-839-JP-2が目撃したと予測される存在を確認します。
実験記録839-B - 日付20██/██/██
対象: SCP-839-JP-3"██ 浩司"
実施方法: 実験記録839-Aと同様の実験を行います。SCP-839-JP-3の両脇に事前に先生として紹介された機動部隊員を配置。起床時に猿轡を外し、舌を嚙み切らぬように注意しSCP-839-JP-3の言動を記録します。
<録音開始>
██博士: では録音を開始します。エージェント・██はSCP-839-JP-3の猿轡を外し、覚醒を促して下さい。
エージェント・██: 了解。
SCP-839-JP-3: [沈黙]…なんで….[悲鳴]。なんで![マイクに衝突した雑音]。
██博士: 浩司くん。落ち着いて。何が見えるのか教えてくれるかな?
SCP-839-JP-3: [雑音]。許して![悲鳴] ごめんなさいごめんなさい!
██博士: そこに誰かいるのかな。そのマイクを持っているおじさんに教えてくれないかな。
SCP-839-JP-3: [嗚咽] ごめん。ごめ[悲鳴]。やめて。わざとじゃないの[判別不能]
██博士: エージェント・██。もっとマイクを近づけて下さい。浩司くん。何が見えるのか教えて。勇気を出して教えて欲しいんだ。
エージェント・██: 十分に近づけてます! こいつ…いい加減暴れるなって!
SCP-839-JP-3:良い子にするから…[嗚咽]。来ないで!お願いだから[悲鳴]
██博士: よく聞こえません。もう一度お願いします。
SCP-839-JP-3: 好き嫌いしないし誰も虐めない…お勉強するし大人の言うこと聞くから…[判別不能]
██博士: 君は良い子だ。だから答えてくれないかい?
SCP-839-JP-3: [23秒間沈黙]
██博士: 浩司くん?
SCP-839-JP-3: ごめん、祐太郎くん。[ノイズ]
<録音終了>
<終了報告書>: SCP-839-JP-3は記録されたノイズの直後に心停止による死亡が確認されました。
医療エージェントによる蘇生措置が実行されましたが、心肺機能の復活は確認されませんでした。
最後の発言がSCP-839-JPの最初の死亡者である██ 祐太郎であるかは確認できませんでしたが、SCP-839-JPの重要物件として██ 祐太郎の再調査を提案します。 -██博士
+ ██ 祐太郎関連ファイル開示
- 終了
補遺: 以下の文書は最初の異常現象が発生した20██年4月23日に死亡した██ 祐太郎に関する情報書類です。██ 祐太郎の所有するノートから発見されたものであり4月22日までの筆跡は██ 祐太郎本人の文字と確認できました。
4月26日の文字列からは██ 祐太郎の所持していた鉛筆と同様の成分が検出され、4月22日以降に表記されたものと判明しました。筆者及びSCP-839-JPとの関連性は不明です。
4月██日 (水)
██くんたちとまたおなじクラスだ。いやだなあ
でもお父さんとお母さんがよろこぶからべんきょうがんばる
先生にもめいわくをかけたくないです
みんな先生の言うこときかないといけないのに
かえるときに██くんにけられたところがいたいです
4月██日 (木)
███くんにまたかおをたたかれた。いたい
みんなわらってばかにしてる
いい子にしないとダメなのに
おべんきょうがんばります
テストでいい点とったらほめられるのでがまんします
4月██日 (金)
おなかをなぐられていたい
ぼくがまちがえてるの?
言うこときかないといけないのに
おふろにはいるときひりひりする
4月██日 (土)
みんなおべんきょうしなきゃダメだよって██くんに言ったらたたかれた
なんで?
たたかれたところが青くなってる
[中略]
4月20日 ( )
みんなおかしい
わるいこばっかり
みんなおべんきょうして、先生の言うこときいてよ
ぼくが正しいよ
あした先生のいるところでみんなをちゅういしよう
4月21日 ( )
[書き殴られている文字。判別不明]
4月22日 (█████)
ごめんなさい
4月23日 ( )
[空白]
4月24日 ( )
[空白]
4月25日 ( )
[空白]
4月26日 ( )
おいでよ
脚注
1. 201█年現在で11名です。
2. 規則違反"好き嫌いをする"に該当した結果と思われます。現在では健康に影響の無い範囲で各個体の嗜好に沿った食事が提供されています。
3. 規則違反時に他生徒の干渉及び自殺が不可能な状況で発生する事例と考えられます。心停止の原因の特定は成功していません。
4. 収容初期の自由時間中に発生した事例です。現在SCP-839-JPの管理と予測不能な行動を防止する為、自由時間は設定されていません。
5. 収容直後の混乱時に発生した事例です。
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scp-840-jp |
評価: +90+–x
アイテム番号: SCP-840-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-840-JPは標準的低脅威度物品収容ロッカーに保管されます。SCP-840-JP-1群は標準生物収容室内におき、定期的に霧吹きによる給餌を行ってください。追加実験によりSCP-840-JP-1実体が生じた際、特に問題が無いのであれば同収容室に収容してください。SCP-840-JP-1の飼育担当に任命されている職員は、三日ごとに休暇を取ることが推奨されています。SCP-840-JPの利用申請については、現在保留中です。
説明: SCP-840-JPは全長30.0cm×10.0cm×2.0cmの中華包丁です。刃の根元には「我为你杀人」と彫られていますが、銘はありません。SCP-840-JPの組成検査により通常の包丁に比べて炭素の含有量が4.12%と非常に高いこと、鋳造されてからおおよそ350年経過していることが判明しています。その為、SCP-840-JPの一部は完全に欠けてしまうか、曲がってしまっています。SCP-840-JPは完全に刃引きされており、そのため紙を切ることも出来ません。
SCP-840-JPの異常性は、生きた動物の組織に、SCP-840-JPの刃の部分が触れた時に発現します。SCP-840-JPの刃は、臓器や骨などの存在に関わらず、対象の身体を抵抗無く切り分けることが可能です。切断面は即座に滑らかな薄い膜に覆われ、対象の体液は内に閉じこめられます。対象がこのプロセス中に苦痛を感じることはなく、ただ少しの痒みを感じると報告されています。対象の身体内に医療器具などの非生物由来の無機物が混入していた場合、SCP-840-JPはこれを切断することが出来ないという結果のみが残ります。これにより、対象の主要な臓器が損傷を受けたとしても、血液循環の滞り、消化液の流出などは発生しないことが分かっています。
この時SCP-840-JPによって切断されたことで生ずる断面は、以降空気中の酸素と水分を直接取り込む能力を見せるようになります。通常、これはただの表皮と変わりない為、SCP-840-JPの切断面の異常を対象が認識することはありません。対象から実体を完全に切り離した場合、この切断面は実体の生存に大きく貢献します。この、対象の身体から切り離され、主要な内臓器官が存在しないにも関わらず生存し続ける実体を、SCP-840-JP-1と指定します。SCP-840-JP-1は脳の有無に関わりなく、それ自体が思考することができるようです。また、何らかの方法で血液を循環させ、必要な酸素を行き渡らせます。SCP-840-JP-1は、自身が保有する筋肉部分や器官により、幾らかの運動能力を有するため、飛び跳ねたり、転がるといった行動を取ることがありますが、個々の行動の意図は不明です。SCP-840-JP-1と意思疎通を図る試みは継続中です。十分に養分を含んだ液体を、切断面に霧吹きで吹きかけることでSCP-840-JP-1の生存確率を上昇させることが出来ますが、多くの場合は数週間か数ヶ月以内に栄養失調で死亡してしまいます。実験といくつかの検証により、長期生存には高い湿度と適切な温度管理、異物の含まれない収容室等が必要になると結論づけられています。
回収記録: 神奈川県██市にある料理店「蠵龟饭店1」の店主が、行方不明事件の容疑者として調査を受けたことが切欠となり、財団のエージェントによって回収されました。当該料理店では"蠵龟"と称する珍味を用いた中華料理を提供しており、熱狂的なファンに支持され繁盛していました。しかし、カラスがゴミ箱を漁っているのを目撃した近隣住民が、当料理店の廃棄物に行方不明者の衣服や身分証明書の残骸が含まれていることに気が付いたことで、事態が明るみになりました。料理店の地下には多数のSCP-840-JP-1群を飼育するための施設があったと見られています。しかし、錯乱した当時の警察官の行動により、これらは焼失してしまっています。焼失した物品の中には、存命の行方不明者3人が含まれていました。その後、現場を引き継いだエージェントにより、店内から幾つかのSCP-840-JP-1実体が確保されました。回収当時の様子についてはインタビュー記録SCP-840-JP-████/██/██を参照してください。
逮捕状を携えた警察官が店内に踏み込んだ時、店主は地下室にて犠牲者を解体している最中でした。警察の追及に対し店主の丁█氏は"子供の頃よく食べていた蠵龟料理を他の人にも食べて貰いたかった"と供述しました。SCP-840-JPについては、中国河北省にある実家から持ってきた、以前は祖父が使用していたと述べるに留めています。丁氏の祖父は自身を宮廷料理人だと称していたそうですが、詳細はSCP-840-JPの製造者と共に、現在でも不明のままです。
+ インタビュー記録SCP-840-JP-████/██/██
- インタビュー記録SCP-840-JP-████/██/██を隠す
インタビュアー: エージェント・海風
対象: ██巡査長
補遺: 対象は店主の確保の為に店の地下へと突入した。店主よりも後に上階へ上ってきた対象は酷く混乱しており、地下室に灯油を撒いて火を点けたことが分かっている。対象のこの行動により、店内に存在したと思われるSCP-840-JP-1群のほとんどが失われた。
<記録開始>
エージェント・海風: ではインタビューを開始します。██巡査長、あなたは店の地下で何を見たんですか?
██巡査長: なんと表現するのが一番かは知らないが、奴はあそこを“水槽”と呼んでいたよ。見た感じは、ウサギ小屋みたいだったがね。
エージェント・海風: それは、何かを飼育していた、ということですか?
██巡査長: 何か? あぁ、そうだな……何かだ。俺は地下に降りて行ったんだ。後輩の██も一緒だ、あいつの初仕事だったんだ。
エージェント・海風: 続けてください。
██巡査長: 俺は逮捕状があることと、任意同行を求めることを口にしながら階段を降りていった。そしたら……なんか、小さな声が聞こえた。
エージェント・海風: 声は何と?
██巡査長: 声というか、囁きだった。”助けて”、そう言っていた、と思う、多分。勿論、考えたのは行方不明者のことだ。俺は足早に階段を降りきって、すぐに地下の倉庫に着いた。そこは薄暗くて、湿度が高かった。室内農場みたいな感じだ。
エージェント・海風: そこに、店主が居たんですか?
██巡査長: あぁ、店主も居た。一番奥の作業机で、何かしていた。奴はゴキゲンだったよ。イヤホンしてさ、鼻歌を歌ってた。両脇には、低い棚が並んでて……よく見るような事務用のシールで名前が書いてあった。そん時の俺はヒヨコかなんかを育ててるのかと思ったんだ。だから、██に棚を見るように指示して、俺は店主に話しかけた。……そうだ、██はどうしたんだ?
エージェント・海風: 彼は現在治療中です。問題ありませんから、どうぞ続けてください。
██巡査長: そ、そうか……あんたらすごいな……。奴は驚いたようで、しどろもどろに何故俺達が"水槽"にいるのかと問いただしてきた。逮捕状と身分証を見せたら、それは何かの間違いだと言い出した。まぁ、よく聞く言い訳だがね。とりあえず上の階へ行こう、話はそこで聞くからと俺は誘った。その場所はとても嫌な感じがしたし、奴は完全にイカレてるとしか思えなかったからな。
エージェント・海風: それから、どうしたんですか?
██巡査長: それから、俺が店主に再度上階へ行くよう促していると……いきなり、██が悲鳴をあげた。
エージェント・海風: 後輩の彼ですね?
██巡査長: そうだ。棚をひっくり返して、後ずさりした。丁度、俺と店主の方に近寄る形で。棚の、何かぷよぷよとしたものが落ちて、床を跳ねた。幾つかはそのまま棚の周りを跳ね回っていた。俺は一瞬だけ██を見た、その瞬間に奴、店主は走り寄ってきて、手に持ってた包丁を振り回したんだ。
エージェント・海風: えぇ、それで、あなたは腕に怪我を。
██巡査長: 怪我? 怪我だと? 怪我っていうのは、こんなになるってのか? なぁ!? お前らの常識じゃあ包丁振り回されたらこんなになるっていうのかよ!?
[対象は取り乱し、傷口をインタビュアーに突き付ける。対象の左腕は、肘から手首にかけて約10cmほど抉れているが血は出ていない。]
エージェント・海風: 落ち着いてください。その傷は致命的なものではありません。インタビューが終了次第、我々で治療いたします。
██巡査長: そういう問題じゃねぇだろ! 手前ぇら頭悪いんと違うか!? こんな……こんな [20秒の沈黙] ……あぁ、いや、すまなかったな。インタビューが終われば治してくれるんだよな。そうだよな? ██もちゃんと帰ってくるんだよな? あいつの家族になんて説明したらいいか、俺……。
エージェント・海風: はい、約束します。どうぞ続きを。
██巡査長: あぁ、えっと……奴は包丁を振り回しながら突っ込んできた。俺は左手で顔を庇って、そこに刃が突き刺さった。痛みは無かったけど、すごく嫌な感じだった。
エージェント・海風: 嫌な感じとは、どういった?
██巡査長: 何というか……自分がダブって、ずれるような。そんな感じだ。実際、なんか切られてから左手が上手く動いてくれねぇんだ。筋を切られた感じはしねぇんだけどな。
エージェント・海風: それで、██さんは重傷を負ったんですね。
██巡査長: 俺は辛うじて避けたんだが、気を取られてたあいつは無理だったんだ。首をざっくりだ。まずい角度だとは思った。んだが、██の頭が傾いで、そのままずり落ちた。俺は……俺には理解できなかった。いくら幅広とは言え、包丁で首が落ちるわけねぇ。なのに……。
エージェント・海風: なのに、落ちたと。
██巡査長: 落ちたんだ。その場でまだふらふらしている██の身体を突き飛ばして、そのまま店主は上の階へ逃げていった。"鍋が噴いちまう"って言ってたな。……██は、その場に倒れていて、俺は一人腕を押さえていた。不思議なことに血は出ていなかった。出てなかったんだ。
エージェント・海風: えぇ、それからどうなりました? 店主さんを追ったんですよね?
██巡査長: あぁ……いや、違う。俺は店主を追った訳じゃない。まず██の様子を見に近づいた。周りには四角いぷよぷよしたものが散乱していた。それが何だかは、その時は分からなかった。██の頭は完全に胴体から離れちまっていた……あれじゃもう、どうしようもねぇ、俺は殆ど諦めてた。ふと顔をあげると店主が作業していた机の上に、人影があった。俺は行方不明者のうちの一人だろうと思ったんだ。
エージェント・海風: 違ったんですか?
██巡査長: 違わない、俺の予想は正しかった。だが……[沈黙] 人影に声をかけたんだ、大丈夫ですか? 今助けますからって。それで……それで……。
エージェント・海風: どうなったんですか?
██巡査長: [60秒の沈黙] 助けてくださいって声が聞こえたんだ。……俺の足元から! 足元には唇が転がってた!
エージェント・海風: 唇、ですか。
██巡査長: あぁ、口だ。歯もあったし、顎もあったし、舌も見えた。それが、……それが微かに息を吐いて、"助けて"って囁いたんだ! 顔をあげたら、机の上に転がされた人と目が合った。その人の鼻から下は、最初から無かったようにのっぺりと抉れていて……その人は必死の形相で俺を見ていた! 気が狂いそうだった。後ずさりして床についた手に、柔らかいものが当たった。それはさっき、棚から落ちたものだったけど、肌色をしていて……赤い断面が見えていた。四角く切り取られたそれが、人間のどこかのパーツなんだと気づくのにそう時間はかからなかったさ。
エージェント・海風: 唇はその人のものだったんですか?
██巡査長: そんなこと俺が知るかよ! とにかく唇はずっと"助けて"って囁き続けていたし、小さいもちもちしたのが、ちょっとずつ俺の周りに集まってるのに気が付いて、嫌な汗がどっと吹き出た。そしたら、██の身体が勝手に起き上がって、自分の頭を抱えたんだ。██の頭がずっと口をパクパクしているのが見えて、鯉みたいだなって思ったのを良く覚えている。多分何か言おうとしたんだろう、あいつも俺を見ていた。その後、あいつの身体は一人で階段を上っていった。俺は、俺にはもう、耐えられなかった。
エージェント・海風: そして、逃げたと。
██巡査長: あぁそうさ、逃げたさ! みっともなく悲鳴をあげてな! 階段を上って……奴は、店主は厨房のところで同僚にとっ捕まっていた。何か喚いていたが、よく聞き取れなかったな。"スープの仕込みが"だとか、なんとか。……██の身体は頭を持ったまま真っすぐ進んで、壁にぶつかって引っ繰り返っていた。他の連中が引き攣った表情で、██と俺を交互に見ていた。それで、俺は……灯油の缶を見つけた。
エージェント・海風: そうでしたね。
██巡査長: ……あんなの、外に出すべきじゃないと思ったんだ。
エージェント・海風: でしょうね。焼け跡からは行方不明者とされている████さんと████さんの破片と、それから████さんの四肢の無い焼死体が発見されました。特に██さんについては、四肢と排泄器官などの一部内臓、口腔が切除されてはいても、まだ主要な器官が残っていたようです。一切の焼失により、貴重なデータが失われてしまいましたが、私はあなたを非難しません。
██巡査長: …………█さん、上司に言われたんだ。全部、あんたらが引き受けるから、██の事もあんたらが何とかしてくれるから、お前が見たものは忘れろって。全部、忘れろって。
エージェント・海風: そうなるでしょう。
██巡査長: なぁ、俺が見たのは、何なんだ? ……あんたらは知ってるんだろう? あれは人だったのか? もし、そうなら……あの店主は客に何を提供してたんだ? ██は本当に治るのか?
エージェント・海風: 知らない方が良いこともありますよ。大丈夫です、傷は治します。あなたは問題なく日常に戻れるでしょう。
<記録終了>
終了報告: インタビューを受けた██巡査長は、SCP-840-JPによる切断面を再度切断した後に縫合を行い、記憶処理の後に問題なく解放されました。██巡査長に同行していた██巡査の首から下の身体はSCP-840-JP-1になっていましたが、首を縫合したことで大人しくなり██巡査の意思で動かせるようになったため、影響下から外れたと見られています。一ヶ月の観察期間中に、異常が見られなかったため、██巡査は記憶処理の後に解放されました。
追記████/██/██: 追跡調査により、首の縫合手術を受けた██巡査が██/██に自殺していたことが判明しました。彼は自身の身体が、自身の思う通りには動かないのだと主張し続けており、家族が見ている中、包丁で自身の首を切断したそうです。当時の詳しい状況は調査中ですが、██巡査は自身の首を切断しながらも"死にたくない"と叫んでいたこと、██巡査の身体は失血により活動を停止するまで動き続けていたことが分かっています。
Footnotes
1. 日本語では"海亀飯店"。
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scp-841-jp |
評価: +58+–x
アイテム番号: SCP-841-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-841-JPはサイト-8141の標準人型収容室に収容されています。
現在、SCP-841-JPは収容されていません。警察無線の監視を行い、SCP-841-JPが出現した際は、エージェントを現地へ送り確保及び、警察関係者や目撃者へ記憶処理を行ってください。また、SCP-841-JPの存在を保つためプロトコル”検察”を行い収容してください。
説明: SCP-841-JPは30代ほどのモンゴロイドの男性に見える実体です。外見上では特に異常は見られませんが、体内は空洞状になっており臓器などは存在しません。収容当初、スーツ、革靴、中折れ帽、革製の黒手袋を身に着けていました。
SCP-841-JPは事件、及び事故現場に出現します。出現した時、その場でもっとも発言力のある人物はSCP-841-JPに対し非常に協力的に接し、周囲の人物に「凄腕の探偵である」といった内容の紹介をします。その後、SCP-841-JPは事件現場を取り仕切り1、調査を行います。
SCP-841-JPは事件の調査が終了すると関係者を集め、例え事件の犯人が居合わせなかったとしてもその中から犯人を指名します。この時、指名された人物が犯行を行ったという証拠が生成され、それを元に推理を行います。この推理に対し、指名された人物以外のその場にいる人物はSCP-841-JPの意見に同調する傾向にあると思われます。
+ SCP-841-JPが関連していると思われる事件記録(抜粋)
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場所: 東京都██区
容疑者: 被害者の父
事件内容: 東京都██区の██氏宅の浴槽にて██家の長男の遺体が発見された。死因は失血死、凶器は遺体の手元にあった剃刀であると思われる。現場は内側からガムテープで密閉されており、密室空間となっていた。警察が到着するまでの間にSCP-841-JPと思われる人物が出現し、被害者の父が犯人であると主張。被害者の父は容疑を否認している。
事件関係者にSCP-841-JPの推理内容について聞き込みを行ったところ、非常に曖昧で理の通っていない内容であったことが発覚した。しかし、事件関係者は、その内容に非常に納得していた様子であった。
付記: 詳細に関しては、インタビューログ841-JP-17を参照。
場所: 北海道███市
容疑者: 宝石店勤務の26歳女性
事件内容: 北海道███市の宝石店、████████にて1700万円相当の貴金属類が消失しているのを同店勤務の男性が発見した。警察が到着するまでの間にSCP-841-JPと思われる人物が出現、現場検証を行い、当時宝石店に勤務していた26歳女性が犯人であると主張した。店内監視カメラを確認したところ貴金属を持ち出す容疑者の姿が確認された。また容疑者のロッカーから盗難された貴金属類の一部が発見されたため、その他の盗難品の所在についての取り調べを行っている。
しかし、店内監視カメラに写っていた時刻と同時刻に近くのカフェにてその姿が目撃されており、また容疑者の証言とも一致することからさらなる捜査が必要であるものと思われる。
場所: 長野県██市
容疑者: 37歳男性
事件内容: 長野県██市█山にて東京都から登山に来ていた██氏の遺体が発見された。約100m上の崖から転落したものと思われる。遺体を発見したのは、遺体発見地点から下方へ200mほど離れた地点にある山小屋に泊まっていた登山客だった。遺体が発見されたのと同時刻に山小屋にSCP-841-JPが出現、山小屋にいた下山してきた客を集め、その中にいた登山客の37歳男性が犯人であると主張した。容疑者は被害者とは一切の面識がないと主張しているが、被害者の所持品の中から容疑者のものであると思われるものが発見されたこと、登山客の中から「容疑者と被害者が口論をしているのを見た」などの目撃証言が出たことなどから容疑が固まった。容疑者は容疑を否認している。
場所: 秋田県██市
容疑者: 被害者の娘46歳無職の男性
事件内容: 秋田県██市の被害者の所有していた洋館にて、その所有者である██氏の刺殺遺体が██氏の自室にて発見された。██氏宅では前日にパーティーを行っており、多くの人物が宿泊していた。遺体発見後、前日からの宿泊客としてSCP-841-JPが出現。現場検証を行い、娘の所持品から██氏の自室の鍵が出たことなどから██氏の娘が犯人であると主張した。
しかし、SCP-841-JPが到着した財団エージェントにより確保され、再調査が行われたところ、██氏を刺殺した凶器の柄に不明な人物の指紋が付着していた。指紋の人物を捜索した結果、付近の公園を住居としていた46歳無職の男性が金品目的で██氏宅に侵入、██氏を殺害したことが判明した。
+ インタビューログ841-JP-17を開く
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インタビューログ841-JP-17
対象 :佐川██ 氏
インタビュアー :田嶋研究員
付記 :佐川██ 氏は事件現場である██氏宅の隣人です。SCP-841-JPが出現し、推理を行っていた際その場に集められていました。佐川██ 氏にはインタビュー後、記憶処理を施し解放しました。
<記録開始>
田嶋研究員 :では、インタビューを開始します。事件についてお聞かせ願えますか?
佐川██ 氏 :ああ、最初はえらく驚いたよ。██君が自殺したって聞いてなぁ…。で、実際に現場見たらぴっちりガムテープで閉じられてて自殺だとしか思えなかったさ。それがまさかあの親父が殺したとは…。
田嶋研究員 :それは探偵が行った推理から判明したのですね?
佐川██ 氏 :あぁ、そうだ。██君は昔から気は弱かったがな、最近は堅物親父とよく家業を継ぐ継がないで揉めていた。でもあの親父がまさかガムテープで密室に見せかけるなんて小せぇ事して、しかも一人息子を殺すとは、とても信じられなかったよ。だが、まぁ、探偵さんの推理は否定できなかった。
田嶋研究員 :それはどういったものでしょうか?
佐川██ 氏 :風呂場の格子のついた窓あったろう?実はな、あそこに3cmぐらいの隙間があったんだ。あの堅物親父はな、その隙間から剃刀を投げ入れて██君の手首を切りやがったんだ。あの風呂場は密室に見せかけて実は密室じゃなかったんだよ。この推理を探偵さんから聞いたときはぐぅの音も出らんかった。
田嶋研究員 :えーっと…それは不可能ではないでしょうか?それにどうやって██さんを剃刀を投げて当たる位置に誘導したというのですか?
佐川██ 氏 :あー…それはな、そう、うまいことやったんだよあの親父が。探偵さんもそう言ってた。まぁどうであれ、これ以外の方法は考えられなかった。親父にも最近よく息子と喧嘩してたって動機もある。あの親父が殺したんだよ。親父は否定してたがな。せいぜい刑務所で頭冷やしてくるといい。自分の一人息子を殺すなんて[俯き泣き始める]
田嶋研究員 :インタビューを終わりましょうか。捜査のご協力ありがとうございました。
<記録終了>
SCP-841-JPは、「指名された人物は犯人である」という結論が確定し事件が解決となると、事件現場から離れ、不明な方法により消失します。しかし、結論が確定しなかった場合、消失現象は発生しないと推測されています。
SCP-841-JPは、警察内部に潜入していた財団エージェントによる「不可解な事件記録」の調査によりその存在が明らかになりました。確保のため警察無線の監視を開始したところ、2008/██/██長野県██市の事件現場にてSCP-841-JPと思われる存在の出現が確認され、財団エージェントが派遣されました。しかし、到着した時点ですでに推理は終了しており、容疑者の警察への引き渡しを行っていました。直ちに確保を試みたものの逃走、付近の雑木林に逃げ込んだ後、消失しました。
その後も警察無線の監視を続けたところ、2009/██/██秋田県██市の事件現場に出現、即座に財団エージェントが派遣されました。財団エージェントが到着した時、SCP-841-JPは関係者を集め推理を行っていました。SCP-841-JPは逃走を図ったものの財団エージェントにより拘束され、事件の関係者も確保されました。拘束された後もSCP-841-JPは激しく抵抗しましたが、消失現象は発生しませんでした。
収容後、数度のインタビューを試みましたがいずれもSCP-841-JPが錯乱し、詳細な情報を得ることができませんでした。しかし、断片的な発言2から「事件の解決に固執している」こと、及び回収以降消失現象が発生していないことから、消失現象の発現のためにはSCP-841-JPによる「事件の解決」というプロセスが必要なのではないかという仮説が立てられました。現在、この仮説に対する実験は消失後の補足を行うことが可能か不明なため許可されていません。
+収容違反記録841-JPを開く
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2009/██/██、サイト-8141にて送り主不明の封筒が発見されました。内部には1枚のカードが同封され、外装には、封筒の端に一輪の夾竹桃の花が留められており、山高帽を被り片眼鏡を付けた犬の紋章の封蝋がされています。カードの内容は以下の通りです。
予告状
拝啓、サイト-8141の皆々様。
今宵、我らが劇団キャストを回収しに参上致します。
『にじいろのおもちゃばこ』所属 Actor 配役:怪盗
これを受け、サイト-8141全体に厳戒態勢が敷かれましたが、同日21時頃、SCP-841-JPが収容室内から消失しているのが確認されました。収容室内から、封蝋と同様の刻印のされた「探偵は頂いた」と書かれたカードと一冊の本が回収されました。
本は、表紙に「配役:探偵」と印刷されており、総ページ数は279ページです。最初の7ページは項目のページとなっており、項目名欄の中にはSCP-841-JPの関与した事件状況に類似したもの3も確認されています。以降の全てのページには、それぞれ各項目名と以下の文書が印刷されていました。
アドリブでお願いします。
補遺: 収容違反記録841-JPを受け、仮説に基づいた特別収容プロトコルの改定、及び出現の際のプロトコル"検察"の制定を行いました。また、SCP-841-JPの消失に大きく関わっている可能性が高いとして、サイト-8141へ封筒を送った人物の特定を行っています。サイト-8141からの消失以降、SCP-841-JPの出現は確認されていません。
Footnotes
1. この時、SCP-841-JP自身が警察への通報等を行っています。
2. 「私が事件を解決するのだ」や「早くここから出せ。まだ私の推理は続いている」等。
3. 「閉ざされた浴槽」「崖下の真実」等。
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scp-842-jp |
評価: +35+–x
アイテム番号: SCP-842-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 1名のDクラス職員にSCP-842-JPを発病させて、標準人型収容室に隔離してください。上記の職員の死に備え、標準人型収容室はDクラス職員の収容房の近くに置いてください。収容房には常に20人以上のDクラス職員を配置しなければなりません。
説明: SCP-842-JPは顔のような見た目の組織塊です。由来は発病者の組織ですが、意志を持ち、対話することができます。必ず発病者の身体には2種類のSCP-842-JPが発生します。男性を自称する組織塊と女性を自称する組織塊で、以降それぞれをSCP-842-JP-A、SCP-842-JP-Bと呼称します。
SCP-842-JP-AとSCP-842-JP-Bは発病者のある程度離れた2つの位置で発生します。体内のあらゆる組織を由来として発生する能力があります。発生したSCP-842-JP-AはSCP-842-JP-Bの元へ近づき、接触しようとする性質があります。ほとんどの場合、発病者はこの性質により絶命します。
発病者が死亡すると、SCP-842-JPも意識を失います。いかなる検死によっても有用なデータは得られず、ただの腫れであると診断されます。発病者の死亡した場所から最も近い位置にいる人類にSCP-842-JPは新たに発生します。ここで発生したSCP-842-JP-A、SCP-842-JP-Bはそれまでの記憶を受け継ぐことが分かっています。これらの性質によって、SCP-842-JPは多大な人的被害を出しましたが、現在は保護に成功しています。(資料 842-a参照) なお、メカニズムは不明ですが、SCP-842-JPを除去して治療しようとすると、SCP-842-JPとともに発病者も死んでしまいます。
+ 補遺1: 保護までの経緯資料842-a
- 補遺1を隠す。
████県████市で変死体が多発している報告を受け、機動部隊による調査が行われた。すぐに被害が急速に拡大していることが判明し、辺り一帯を隔離して、迅速なSCPの性質調査とともに、██人の職員の人的被害とともに保護を達成した。周囲の住民には全てCクラスの記憶処理を施した。以下はさらに詳しい情報。
発病者: ████市の住民███名
情報: 機動部隊の到着の時点で既に死亡していた。ほとんどが、重要臓器の損傷、出血多量などで即死。
発病者: ████ ████
情報: ████市の住民。SCP-842-JP-Aが左足の人差し指、SCP-842-JP-Bが右の肺に発生。足関節、股関節がねじ曲がり、肺に足を突き刺すような形で発見された。すぐに応急措置を施されたが、圧迫された心臓が限界を迎え、心破裂により死亡。
発病者: 機動部隊員███
情報: 保護した████ ████に応急措置を施した隊員。SCP-842-JP-Aが鼻、SCP-842-JP-Bが臀部に発生。首がもげて即死。
発病者: 機動部隊員███
情報: SCP-842-JP-Aが腹部、SCP-842-JP-Bが背中に発生。横隔膜を傷つけ、呼吸不全で即死。
発病者: 機動部隊員███
情報: SCP-842-JP-Aが左膝、SCP-842-JP-Bが血液に発生。移動するSCP-842-JP-Bを追うようにして膝が腕から肩、心臓まで辿り、出血多量で死亡。
発病者: 機動部隊員███
情報: SCP-842-JP-Aが舌、SCP-842-JP-Bが直腸に発生。体幹に過度に負担がかかるが、処置により1週間の延命を施すことに成功した。この間、この地域一帯を隔離し、Dクラス職員を周りに配置。SCP-842-JP保護のためのサイト-███の設立が達成された。
発病者: D-0520
情報: 機動部隊員███からの一切の感染が起こらないように徹底した隔離体制が組まれたが発生。これより感染症的なプロセスを取らないSCPだと判明した。D-0520はSCP-842-JP-Aが大腿骨、SCP-842-JP-Bが小脳に発生。脳を貫き即死。
発病者: D-8549
情報: SCP-842-JP-Aが右上の奥歯、SCP-842-JP-Bが網膜に発生。頭部を通り、網膜に到達しようとする奥歯を無理に取り出すと、SCP-842-JPと共にD-8549も死亡。
発病者: その他、Dクラス職員██名
情報: いずれも死亡。
発病者: D-7251
情報: SCP-842-JP-Aが右肘、SCP-842-JP-Bが顎に発生。肩関節に簡単な処置を施すだけでほとんど死亡する危険がなく保護できた。現在に至るまでD-7251は止血、鎮痛処置とともに、サイト-███隔離。
SCP-842-JP-A、SCP-842-JP-Bとの対話の結果、これらが何よりも先んじて接触状態を果たせる限りにおいて、人類に敵対しないことを明確に示しています。さらなる対話内容については資料842-bを参照してください。
+ 補遺2: SCP-842-JP との対話資料842-b
- 補遺2を隠す。
対象: SCP-842-JP-A、SCP-842-JP-B
インタビュアー: ████博士
付記: D-7251に発生したSCP-842-JPである。資料842-aの通り、SCP-842-JP-Aが右肘、SCP-842-JP-Bが顎に発生している。D-7251の発話は事前に禁止されている。
<録音開始>
████博士: 君たちのことを聞かせて欲しいのだが。
[どちらも████博士の発言を無視し、互いに容姿を褒め合う]
████博士: [数秒沈黙]…君たちの運命的な出会いについて教えてくれないか?
SCP-842-JP-B: まあ!
SCP-842-JP-A: 照れるなあ。僕らは[発話不可能]の[発話不可能]出身さ。毎年恒例の[発話不可能]祭に出向いて、そこで出会ったのが僕らのラブストーリーの始まりなのさ。
SCP-842-JP-B: [発話不可能]ったら、すっごく情熱的でね。その日の夜には[編集済]。
████博士: つまり君たちは元々人間だったということかね?
[以降、種族に関するあらゆる質問は無視された]
████博士: 君たちはどうして互いに近付こうとする?
SCP-842-JP-B: それはもちろん…[キス]
████博士: なるほどな…。[頭を抑えて、ため息] では、君たちはどうして人間から出てくるのだ。
SCP-842-JP-B: 愛がもたらした奇跡よ!
SCP-842-JP-A: 僕らは雨の中をロマンティックにドライブしてた時に、タイヤが滑って…まあそこから記憶が曖昧だけど。なによりさ!奇跡が起きたんだよ!
SCP-842-JP-B: うふふ。
SCP-842-JP-A: そう。こうやって二人一緒に永遠の命を手に入れて、永遠に愛し合えるんだよ。君たちにも感謝してるよ。本当にありがとう。僕らの愛のためにここまでしてくれるなんてすごいよ。
SCP-842-JP-B: そんなあなたたちのためにも精一杯愛を享受しましょ。[キス]
████博士: すると、人類に敵対しているわけではないのだな。
SCP-842-JP-A: むしろ感謝してるってば!
████博士: では、一つ相談なんだが、君たちが人間から出てきてから、近付こうとするまでに少しだけ時間をくれないか?それさえしてくれれば、我々も君らに害をなすことはしないと保証しよう。
SCP-842-JP-B: それは無理よ!一瞬でも長く、[発話不可能]と一緒にいたいの!
SCP-842-JP-A: [発話不可能]・・・なんて愛おしいんだ![キス]
[以降あらゆる対話の試みは無視された。]
<録音終了>
終了報告書: 上記に出てきた出身地、祭り、交通事故などに関して、あらゆる特定の試みは失敗に終わっている。特に交通事故はその後の対話で日付まで確定しているが、その日周辺で一致するような事故は一切起きていないと断定されている。
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scp-843-jp |
評価: +55+–x
評価: +55+–x
クレジット
タイトル: SCP-843-JP - じゅるじゅる、ずずっ。
著者: ©︎yzkrt
作成年: 2019
評価: +55+–x
評価: +55+–x
アイテム番号: SCP-843-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 回収されたSCP-843-JPサンプルはハザードレベル3の密閉容器で一般的なウイルスと同様の方法で保管されます。SCP-843-JPについての実験はセキュリティクリアランス3以上の職員の許可を得た上で行ってください。
説明: SCP-843-JPは2本鎖DNAウイルスです。DNA調査の結果から、既存の発見済みウイルスの変異体でないことが確認されており、人工的に作成された物であると推測されています。SCP-843-JPの感染経路は現在のところ、注射による直接接種のみです。感染者の飛沫、直接接触でSCP-843-JPに感染することはありません。
SCP-843-JPの感染初期症状は微熱、軽度の倦怠感です。これらは一般的な風邪の症状と酷似していますが、咳やくしゃみを伴いません。これらの症状はSCP-843-JP接種直後から始まり、潜伏期間がありません。初期症状から6時間経過した感染者は次の症状へ移行します。
感染から6時間後、感染者の脳は″液体化″を始めます。液体化した脳は非常に粘性が高く、強い衝撃を与えられない限り脳としての形状を保ちます。また、脳の形状が保たれているため思考能力には問題ありません。ただし、外部からの強い衝撃によって脳の形状が保たれなくなった場合、もしくは感染者が擤鼻1を行った場合においてはその限りではありません。
脳の液体化が完了した感染者は鼻に対する違和感を感じます。この違和感は「強い鼻づまり」「鼻汁2のたまる感覚」であると報告されます。これにより鼻に違和感を感じた感染者は擤鼻を行います。
感染者が擤鼻を行った場合、液体化した脳が鼻から排出されます。脳の排出は主に大脳新皮質から始まります。感染者は自身の鼻から排出されている物が鼻汁ではなく液体化した脳であることを理解しているように見受けられますが、脳が排出される度に思考能力が低下していくため、擤鼻を行い鼻の違和感を解消することを優先します。最終的に感染者は呼吸など、生存に必要な機能を司る部位を排出することで生理活動が行えなくなり死亡します。
SCP-843-JPは新潟県三条市の渋沢 亮一氏の自宅で保管された状態で発見されました。当時、渋沢氏には略取・誘拐罪の容疑がかけられていました。その調査のため渋沢氏の自宅を訪れた警官が、脳を失った遺体を発見したために財団の目を引き、収容されました。また、渋沢氏は要注意団体″石榴倶楽部″の会員であり、“椎名”と名乗っていたことが後の調査により判明しています。また、現場には渋沢氏による走り書きのメモが残されていました。
+ 渋沢氏によるメモ
- 閉じる
次回の会合は私に任されることになった。ようやく私も年長組の仲間入りというところだ。最高級のグレナデンシロップゼリーを用意する。皆を唸らせる1品を。
入手先 グレナデンはすぐ味落ちをするようだ。→事前の用意は難しい。
・常温保存→雑菌が繁殖。すぐ腐る
・冷凍保存→固い。舌触りが悪くなる。
・塩漬け保存→ある程度は品質を保てるようだ。→ゼリーを作るのに不適。
・生きたまま調理→設備を整えられない。少なくとも会合までには無理。
ダメ ダメ どうする?
グッドニュース! [判別不能]から技術供与。 生きたままグレナデンシロップの抽出→鮮度問題なし やはり持つべきは人脈か。
(注意)
使用はきっかり6時間前に。調理を考慮し6時間18分前に使用
鼻の洗浄をしっかりと。 雑菌処理 市販の鼻うがい薬で構わないらしい。←特に████メーカーの物が効くとのこと。
取扱いは安全。冷暗所保管
会合は大成功。[判別不能]には感謝しなければならないな。次回の会合の主催も私に任せてくれるとのことだ。嬉しい悲鳴だ。
会長から直接の連絡があった。グレナデンがお気に入りらしい。都合がつくときに私の家を訪れるそうだ。
その時は″生きた″グレナデンをご所望らしい。鼻に入れた麦稈3から濃厚なグレナデンを直接。
Footnotes
1. 俗に言う「鼻をかむ」行為の正式名称
2. 俗に言う鼻水の正式名称
3. ストローのこと
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scp-844-jp |
評価: +56+–x
評価: +56+–x
クレジット
タイトル: SCP-844-JP - 蛸の海征く少女らは
著者: ©︎kyougoku08
作成年: 2019
評価: +56+–x
評価: +56+–x
アイテム番号: SCP-844-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-844-JPは内部への侵入口となる排気口を封鎖したうえで定期的な監視、観察を行ってください。SCP-844-JP内への侵入は現在凍結されています。内部探索の申請には指定の手続きを行ったうえで上級研究者3名以上の承認を受けてください。SCP-844-JP内部の探索において得られた情報から発展した、要注意団体あるいは異常現象の詳細は別ページを参照してください。
説明: SCP-844-JPは██県山中に存在する廃墟です。
SCP-844-JPは現在異常性に由来すると推測される不明な原理で封鎖されています。この封鎖は現在財団が所有するいかなる道具、方法を用いても突破が不可能であることが確認されています。また、内部の視認も不可能です。唯一、備え付けの排気口は上記の封鎖が行われていない為、SCP-844-JP内部への侵入はこの排気口を経由して行われます。
SCP-844-JP内部へ侵入した場合、侵入した対象の持つGPS装置及び通信機器は全て停止します。その為、内部の情報はSCP-844-JPより帰還した侵入者の記録及び証言に依存します。現在の帰還例は後述するA.水津を主体とする1チーム3人のみであり、他の人員は行方不明扱いとされています。
前述の記録、証言によりSCP-844-JP内部には海面が広がっている事が確認されます。回収されたサンプルから海水の組成は地球上におけるいずれの大洋とも一致せず、僅かにヒトの脳脊髄液を含んでいることが確認されています。海中には後述のSCP-844-JP-2を頂点とした生態系が広がっており、その生態系も同様に地球上において確認されていません。
SCP-844-JP-1はSCP-844-JP内の海面を航行する船舶群の総称です。SCP-844-JP-1の船種は葦船、三段櫂船からプレジャーボート、高速戦艦等多岐に渡ります。これらの船舶は多くの場合航行機能を失っている、あるいは著しく破損していることが確認されますが、その状態にも関わらず通常の船舶と同様の航海が可能です。SCP-844-JP-1にはSCP-844-JP-A等の一部を除き船員が存在しませんが、自律的に後述のSCP-844-JP-2を捕獲することが確認されています。SCP-844-JP内部に陸地は確認されず、これらSCP-844-JP-1が唯一の移動手段であると推測されます。
SCP-844-JP-2はSCP-844-JP内部に存在する頭足類と推測される生物の総称です。SCP-844-JP-2は多くの場合、海面上に触腕のみを伸ばし、胴部及び頭部は水上で確認することはできません。SCP-844-JP-2は実体を持ちますが、死亡する、あるいはSCP-844-JP-1に捕獲されることで非実体に変化することが確認されます。
SCP-844-JPは異常性発現以前は本来GoI-2722"鉄錆の果実教団"の関連施設であったことが確認されています。財団による第二次襲撃作戦の対象でしたが、作戦決行直前に異常性が発現、関連していた教団員の救助要請を受け財団の収容下に置かれました。この事案により、GoI-2722の関東地域における勢力は壊滅しています。
以下は収容時、確保された教団員への聴取記録です。
インタビュー記録844-JP-1
対象: 富士 ██氏 (GoI-2722"鉄錆の果実教団"の幹部信者)
インタビュアー: 護良研究員
<録音開始>
(前半部は事実確認のため省略)
護良研究員: では、あのオブジェクトの挙動はそちらの意図した事ではないという事でしょうか?
富士氏: そうです。ただ、俺自身は財政や事務担当だったんで、信者って言っても詳しい事は知らないんです。だから断片的な事になりますが
護良研究員: 構いません。知っている限りの情報をお話しいただければ
富士氏: 分かりました。まずあの建物ですけど、あれは俺たちの教団の研究所みたいな場所でした。教団はなんでも儀式のときに肉? よく分かりませんけどそういうもんが出てくるらしくって。それを何かしら使えないかってことになったらしいです。それで、それなら脳味噌を作ってみてはどうかってことになったらしくって
護良研究員: 脳を?
富士氏: はい、脳味噌です。俺も聞いただけですけど、有名な人の遺伝子を肉の中に取り込んで、その人の脳味噌を再現するとかなんとか。それを好事家に売って儲けようとしてたらしいです
護良研究員: 成程、確かに著名な人物の脳となれば高値で取引される可能性もありますね
富士氏: はい、で、そちらの襲撃があるって情報が伝わってきたときに丁度脳が1つ完成しそうだってんで、俺だけとりあえず一旦逃げる手段を整えようと建物から出たんですね。で、戻ったらもう入れなくなってて。慌ててるうちにそちらが来たもんで観念したって訳です
護良研究員: そうですか。脳が1つ、と言っていましたが、これ以前にも脳は完成していたのでしょうか?
富士氏: そうですね、それ以前にもいくつか有名な人の脳味噌を作ってたらしいです。だからなんでこんなことになったのか本当に分からないんですよ
護良研究員: 分かりました。その脳に関連した資料はありますか?
富士氏: 全部建物の中だと思います。研究してた信者もその脳味噌とか肉とかも全部。俺は金庫番みたいなもんなんで、口座の番号とかそういう事だったら分かるんですけど、正直教団の儀式とか何が起こってるのかとかはよく知りませんから
<録音終了>
この証言を受け、SCP-844-JPの異常性においてそれらの脳が何らかの関連性を持つものと推測されています。また、前後して上述の侵入口が発見されたことにより、Dクラス職員及びエージェントを主体とした特別調査部隊が複数回送り込まれました。以下は帰還したチームの記録した映像、音声ファイルの書き起こしです。
探査記録844-JP-008 日付 20██/██/██
SCP-844-JP探索映像ログ-008 #1(書き起こし抜粋)
日付: ████/██/██
探索人員: 特別編成部隊("[部隊名未設定]")/A.水津(隊長/アルファ)/A.表門(副隊長/ベータ)/A.伊井(ガンマ)
対象: SCP-844-JP
目的: SCP-844-JP内部の探索、及び行方不明人員の確保、調査
«閲覧開始»
[アルファ、ベータ、ガンマの3人は海面に着水している。標準装備に備えられている簡易防水装備及び救命衣を使用し、記録用ドローンを射出。周囲の確認及び信号の発信を行う]
アルファ: これより撮影と記録を開始する。ベータ、ガンマ、撮影機器と録音機器は大丈夫か
ベータ: チェック、大丈夫そうですね。防水機能はしっかりしているみたいです。もっとも、あくまで雨水や漏水用ですから早めに上陸しておきたいですね
[高度からの映像。観測できる範囲は全て海面であり、上空には満月が確認される]
アルファ: …司令部からの応答はなし。一面の海だな。夜のようだが正確な時間は分かるか
ガンマ: 不明です、GPS等位置情報の取得も失敗しました。方位磁針はまともに動いているみたいですが
ベータ: 陸地は周辺に見えませんね。緊急信号も発信しましたが、そもそもこの場所に知性を持つ存在がいるのか分かりません
アルファ: 軽く海中を調査してみたが、何処の海域だかは分からない、という事が分かったな
ガンマ: 潮流も確認されません。どうやら自分で移動するより他に方法は無いようですね
ベータ: 困りましたね。流石に海洋への装備は持ってきていません。このままだと海の上でミイラになってしまいます
アルファ: とにかく何らかの方法で陸上に辿り着く必要があるわけだ
[ドローンを用い、周囲の陸地を捜索。確認できる範囲に陸地は存在せず。ほぼ同時に海面に3m程の巨大な触腕らしきものが出現、ベータが捕獲される]
アルファ: ベータ! 発砲許可を出す!
ベータ: 何だこれ!? 蛸か!? ミズダコにしてもデカすぎやしないか!?
[ベータが触腕に発砲するも、損傷は見られず。アルファ、ガンマも援護するが徐々にベータが海面へと引きずり込まれる。海中には約10m程の影が確認される]
ガンマ: 9時の方向より何かが接近してきます! 速度は約35ノット! まもなく目視できる範囲に…、見えました!
[西の方角より船影が確認される。船影は3名及び不明な巨大生物に接近、この時点で船影はキャッチャーボートであることが確認できる。キャッチャーボートは不明生物の約50m付近まで移動し、捕鯨砲を発射する。捕鯨砲は不明生物に命中。それに伴いベータは落下、衝撃により一時的に意識喪失したと見られる。不明生物は数秒体表を変色させ死亡。同時に消滅する。ベータをアルファが回収。3人に対し船上からの呼びかけが行われる]
不明な音声: 無事かしら? とりあえず上がってきて
アルファ: あなた達は
不明な音声: 私たちはヴィヴィアン・ガールズ。貴方達の魂を救いに来たわ
«閲覧停止»
回収された映像の1つ
SCP-844-JP探索映像ログ-008 #2(書き起こし抜粋)
日付: ████/██/██
探索人員: 特別編成部隊("[部隊名未設定]")/A.水津(隊長/アルファ)/A.表門(副隊長/ベータ)/A.伊井(ガンマ)
対象: SCP-844-JP
目的: SCP-844-JP内部の探索
«閲覧開始»
[アルファ、ベータ、ガンマの3人が救出された数時間後、部隊員を救出した人型実体を暫定的にSCP-844-JP-A、船舶をSCP-844-JP-1-α、不明生物をSCP-844-JP-2と定義。SCP-844-JP-Aはヘンリー・ダーガーによる作品『非現実の王国で』に登場するキャラクターの姿を模している。SCP-844-JP-Aの1人(以下、ヴァイオレット)から現在状況の説明を受ける]
アルファ: ではヴァイオレット、説明をお願いできるだろうか。ここは何処なのか、何なのか、そしてあなた達、あの巨大な蛸は何なのかを
ヴァイオレット: そうね、まず分かってることから。といっても私たちのことだけだけど。私たちはヴィヴィアン・ガールズ。アビエニアの少女戦士、だと思うわ
ガンマ: ヴィヴィアン・ガールズ。アメリカの作家ヘンリー・ダーガーの『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ・アンジェリニアン戦争の嵐の物語』、通称『非現実の王国で』に登場するキャラクターですね。では貴女はその登場人物である、と?
ヴァイオレット: だと思うわ、でもそんな色眼鏡で見られるのは嫌。私たちはあくまで私たち、物語とかキャラクターがどうとか関係ないの。そんなことは些細な事じゃないかしら
アルファ: ではここは一体どこなのか分かるだろうか
ヴァイオレット: 分からないわ。でも多分あなた達のいるべき場所じゃないと思う。あなた達の言い分だと、私たちはキャラクターだし、あなた達は読者ね? それは同じ場所にいてはいけないわ。あの"octopus reed"とも違うみたいだし
アルファ: "octopus reed"? 蛸の葦、という意味か? あの巨大な蛸のことなのか? 何故その呼び名を?
ヴァイオレット: "takoashi"、面白い響きね。私たちがそう呼ぶのは、あれが"reed"に変化することがあるからよ
アルファ: 葦に?
ヴァイオレット: 全部じゃなくて一部だけどね。話を戻しましょうか。さっきここがどこか分からないって言ったけど、多分この海はあの蛸の海よ。私たちも、あなた達も、きっと異物なんだと思うわ。これは感覚的なもので、そういう物証や根拠があるわけじゃないけれども
ベータ: 異物か。確かにそういった感覚はあるよ。…そう言えばあなた達は何でSCP-844-JP-2、あの蛸を倒していたんだ?
ヴァイオレット: そうね、まず、この廃船はあの蛸葦を捕まえよう、もしくは殺そうとするの。私たちが動かさなくても。どうせ巻き込まれるのなら、能動的に動かした方が良いでしょう? それに加え、私たちは戦い続ける必要があるからかしら。終わりのない戦い、…一応完結はしていたけども、それは望まれなかった。そんな戦いこそが私たちの舞台だし、私たちはきっとずっとダーガーと戦い続けるんだと思う
ガンマ: ヘンリー・ダーガーを、あなた達の作者をご存じなのですか?
ヴァイオレット: もちろん。ダーガーは私たちに干渉していたし、ダーガーにとっては私たちに干渉されていたと思ってるでしょうね。私たちにとって境界は曖昧だし、どうでもいいこと。ダーガーが私たちを通じて何かを見ていたのかなんて知らないし。でも、そうね、あの蛸葦の影はどこかで見ていたような気もする。私たちはダーガーの現実を侵食し、ダーガーは私たちの世界を侵食したのだけど、あの蛸も似たようなものじゃないかしら
アルファ: …つまり、あの蛸たちは、私たちの現実を侵食するということだろうか?
ヴァイオレット: 私たちは学者様じゃないから何とも。それにしても、ダーガーは死んだのに、何故私たちはこの海にいるのかしらね。あら、デイジー、え? また蛸が? それじゃあ、行きましょうか。あなた達もちょっと付き合ってくれる? そして、終ったらあなた達のお話を聞かせてね
[約10分後、SCP-844-JP-1-αの捕鯨砲によりSCP-844-JP-2への攻撃に成功。SCP-844-JP-2は映像ログ-008-1と同様に消滅するも、約30秒間イネ科の植物と思われる葉が数枚出現。回収には失敗し、消滅する]
«閲覧停止»
後の映像解析により、上述の葉はヨシ(Phragmites australis)であることが判明。これ以降、約10%程の確率でSCP-844-JP-2死亡時、ヨシが発生することが確認される。
SCP-844-JP探索映像ログ-008 #3(書き起こし抜粋)
日付: ████/██/██
探索人員: 特別編成部隊("[部隊名未設定]")/A.水津(隊長/アルファ)/A.表門(副隊長/ベータ)/A.伊井(ガンマ)
対象: SCP-844-JP
目的: SCP-844-JP内部の探索、及び行方不明人員の確保、調査
«閲覧開始»
[SCP-844-JP侵入から約1週間が経過。SCP-844-JP内の詳細調査内容を確認]
アルファ: この前の嵐はひどかったな。すっかり俺たちも海の人間だ。で、調査の結果だが、どうだ、ガンマ
ガンマ: まず、上空にドローンを飛ばしてみましたが、一定の距離で停止、その先は確認できません。簡易気球や小型機でも同様の状態でした
ベータ: 水は軽く調べただけですが、一般的な海水と組成はほぼ同じですね。ただ、生物の体液らしきものが含まれています
アルファ: その分析までは難しいか。生物はどうだ?
ベータ: 確認出来るかぎり、既存の海域における生態系とは逸していますね。赤道直下の熱帯魚と北極点付近の生物が同時に泳いでいるのが確認できました。また、これまでに確認されていない奇妙な生物もいくつか。加えて言えば、陸生の生物も確認されます
アルファ: それらの生物が生息する陸地がせめて見つかればな
ヴァイオレット: 私達もずっとこの海を進んでるけど、陸地は全く見たことないわね。陸地かと思ってもあの大きな蛸葦だったり、他の廃船だったり
アルファ: どこまで広がっているかも判別不可能。帰還の目途も立たないか。あのクラーケン、SCP-844-JP-2については何か分かったか?
ガンマ: 蛸自体は、生存している状態では実体が存在します。しかし、その実体を調査したところおおよそ生物とは呼べませんでした。ここから、何らかの固定化された概念、あるいはミーム実体ではないかと推測されますね。また、データベースを調べましたが、何件か蛸をイメージとして利用する不明な概念実体の存在が確認されています。共通点としては、創作に関連し、多くの場合7・7・7・5音または5・7・5音の音数律、前者は都都逸、後者は俳句が一般的でしょうか。それらが確認される傾向にあります。財団もまだこれらを同一の存在とは確定しかねているようですが
[ガンマがクローズ端末の映像を転送。SCP-1808-JPを初めとする数種類のオブジェクトが列記されている]
ヴァイオレット: 7・7・7・5? 5・7・5? そういったリズムなのね?
アルファ: 何か思い当たることがあるのか? あなた達は私たちよりおそらくはこちらに近い。何か気づいたことだけでもあれば嬉しいのだが
ヴァイオレット: …いえ、それは、その蛸は物語を媒介として出てくるのよね。なら、物語として、言葉としてしかそれらの信号を出せないのかしら? …4つのリズムでは通じず、3つのリズムで通じる? それが1つの意味を持つとすればどうかしら?
ベータ: これが何かのメッセージだと? ううん、俺にはどうにも安っぽい自己顕示欲に感じる。なんというか、苦しいんだけどそれを表現できてないというか
[SCP-844-JP-Aらが一瞬行動を停止し、互いに視線を交わし頷き合う]
ヴァイオレット: 苦しみ? そうか、苦しみなのよ。それを叫ぶのも下手糞って訳? 私たちは呼ばれたのね、この切り取られた海に
[強い衝撃により画面が激しくぶれる。SCP-844-JP-Aらの慌てる姿と船外に伸びる2mほどの触腕が確認される]
ベータ: SCP-844-JP-2です! 隊長! 避難を!
ヴァイオレット: 待って! 私に何か音の録れるものを貸してくれない!?
[ガンマがヴァイオレットへ録音機器を投げ渡す。ヴァイオレットが渡された録音機器を触腕へ投擲。SCP-844-JP-2はそれを掴み水中へ埋没]
アルファ: 何を!
ヴァイオレット: あなたの魂を救いにいくのよ! 総員、あの蛸葦を狙って! あの蛸葦は
[キャッチャーボートから捕鯨砲が発射。SCP-844-JP-2に命中する光景が確認される]
ヴァイオレット: 私たちなのだから!
«閲覧停止»
SCP-844-JP探索映像ログ-008-3事案後、SCP-844-JP-2に奪取されていた録音機器が回収されました。以下はその録音機器に新しく追加された音声データです。
SCP-844-JP音声ログ
SCP-844-JP探索映像ログ-008 #4(書き起こし抜粋)
日付: ████/██/██
探索人員: 特別編成部隊("[部隊名未設定]")/A.水津(隊長/アルファ)/A.表門(副隊長/ベータ)/A.伊井(ガンマ)
対象: SCP-844-JP
目的: SCP-844-JP内部の探索、及び行方不明人員の確保、調査
«閲覧開始»
[SCP-844-JP探索映像ログ-008-3事案後、音声ログを確認]
アルファ: モールス信号だな。それも一番有名な奴だ
ヴァイオレット: ええ、4つのリズムであればIWNIだけど、それでは決して伝わらない。これは3つのリズムでようやく意味を持つ
ガンマ: SOS、救難信号ですね。…しかし、何故SCP-844-JP-2が救難信号を?
ヴァイオレット: それはもちろん、魂を助けてほしいからよ。貴方達にとって此処を覆っているものはただの鉄筋コンクリートかもしれないけれど、その中に脳があれば頭蓋になる。私たちがダーガーの現実に干渉したように、私たちや蛸葦は頭蓋と脳の間で生まれ、そして、廃船にも捕まらなかった、救われなかった蛸がきっと干渉するんじゃないかしら
アルファ: …つまり、脳が施設の中に密閉されることで、施設が頭蓋骨と解釈された、と? ではこの海は特殊概念、あるいは攻撃的概念の存在する海というだけではなく、人体に起因するということか?
ヴァイオレット: 多分だけど、それを切り取った…、スナップ写真、コラージュみたいなものだと思うわ。でないと私たちもあの蛸になっているから。きっと貴方達の脳と頭蓋の間にもこの海は広がっている。でも、それはきっと違う海。もっと曖昧で、もっと捉えどころがない。ここはあくまで、誰かの解釈によるものだと思う
ガンマ: 無意識領域下、深層心理の海であり、そこに抑圧された存在がSCP-844-JP-2。それを1つの形にしているのがこの海であると? 葦に変化するのはパスカルの影響でしょうか? また、これまでの事案はSCP-844-JP-2がこの海に収まらなくなった結果? 少なくともこの異常な海面に起因するものであるという推測は可能かもしれません。もう少し正確な計測機器があればよかったのですが
ヴァイオレット: そこまでは分からないわ。でも、私たちはこの切り取られた海に迷い込んできた誰かの蛸を、沈めるのではなく、生き永らえさせるのではなく、倒す必要がある。救いを求める叫びさえ満足に出せない魂を救うためにここで戦っているんだわ。私たちやこの廃船もまた蛸なのだけど、私たちはこれ以上大きくならないから。そして、この切り取られた海なら、貴方達を抜け出させることが出来る
アルファ: つまり、帰還の方法があると?
ヴァイオレット: ええ、この海に浸る脳なら救えるわ。ブレンゲン!
[映像が激しく歪み、人型及びいくつかの生物実体と推測される存在が確認される。映像の著しい異常により以降、音声のみ]
ベータ: 何だこりゃ!? 化物!? 映像に映らないぞ
ガンマ: ブレンゲン、『非現実の王国で』に登場する生物ですね
ヴァイオレット: 貴方達は頭蓋の中に落ちた、ならばその孔があるはず。そこへ向かわせるわ
アルファ: しかし、これまでの調査でそんなものは
ヴァイオレット: ええ、これまではね。でも私たちはヴィヴィアン・ガールズ。ならばこの物語には私たちが干渉する。私たちが"ある"と言えば"ある"のよ。貴方達が観測してくれる以上。だから貴方達は帰らなくてはならないわ。ブレンゲン、ちゃんと送り届けてね
アルファ: 待て、貴女達は
ヴァイオレット: 私たちはこの海で戦い続ける。SOSに、"Save Our Soul"に応えるために
アルファ: 貴女達はそれでいいのか? この海の中で
[多数の笑い声が確認される。徐々にそれらが遠ざかる]
SCP-844-JP-A: ええ、構わないわ。何度だって立ち上がるし、何度だって戦ってみせる。私たちは現実の貴方達を救うことはできないけれど、応えることはできる。私たちは孤独の中に生み出されて、苦しみを糧に大きくなった。望まれずにいつまでも付け足し、書き続けられた。叫ぶために、今見ている世界をパッチワークのファンタジーに留めるために。でも、私たちは貴方達のヒロインじゃない。あの蛸も貴方達のヴィランじゃない。だからこそ、貴方達は、貴方達で救われるべきよ!
[風を切る音が響く]
SCP-844-JP-A: 私たちはヴィヴィアン・ガールズ! 貴方達の魂を救わせてあげるわ!
«閲覧停止»
████/██/██、上述の排気口より特別編成部隊が脱出に成功。上述の情報の回収に成功しました。これ以降の探索はいずれも人員の未帰還という結果に終わっています。
補遺: 上述の探査以降、財団の補足した人物において『非現実の王国で』に起因すると推測されるアイデア、イメージの観測例が僅かに上昇していることが確認されています。これらの創作者は多くの場合創作を行っており、これまでに確認された不明な概念実体の出現パターンと一致することが確認されています。これを受け、現在財団内では暫定的に"蛸葦廃船"の名称を用いこれらの概念実体群を定義しています。
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scp-845-jp |
評価: +83+–x
アイテム番号: SCP-845-JP
オブジェクトクラス: Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-845-JPは現在死亡しており、死体はサイト-8123に冷凍保存済みです。SCP-845-JPの研究は現在終了していますが、レベル3クリアランス以上の研究部門職員による許可証の提示があればSCP-845-JP及び研究資料の閲覧ができます。
説明: SCP-845-JPは12名の人間の生体脳と大日本帝国陸軍の上等兵である宮間三郎を結合した生命です。宮間三郎自身の脳を含め、全ての脳はロボトミー手術を施されていることが確認されています。大量の脳髄を収めるため、宮間三郎の頭部は直径143cmまで拡張されており、加えて両手両足の骨を抜き取られ、更に右手及び右足の先端部を大型のサメ類、おそらくホホジロザメ(Carcharodon carcharias)によって食いちぎられているため、自力で移動することは困難です。頭部には「八重言代主神」と刺青がなされています。四肢の改造は八重言代主神の伝承に合わせた見立てであると考えられています。
SCP-845-JPは「八重言代主神」という呼びかけをされ、その後、十分な事前情報を与えられた上で具体的な回答が存在する質問を投げかけられた時のみ返答を行います。与えられた情報によって回答の正確性は変化しますが、その情報から導き出される最も合理的な回答が常に行われます。SCP-845-JPに与えた情報は蓄積されるため、正確な情報を数多く与えることでSCP-845-JPはより正しい回答を行えますが、逆に不正確か抽象的な情報を大量に与えた場合、結果の不正確さはより強くなっていきます。SCP-845-JPに蓄積された情報の一部は以下のようなものです。
大日本帝国の兵士は奇襲を受けても士気が低下せず、混乱もしない
大日本帝国の兵士は死ぬ時必ず敵を道連れに殺害する
大日本帝国の兵士は銃弾を10発以上受けても問題なく活動が可能である
大日本帝国の兵士は食料・水・弾薬の補給なしでも問題なく戦闘を継続できる
これらの不正確な情報を大量にインプットされた結果、SCP-845-JPの回答は極めて不正確なものとなっています。
SCP-845-JPは1943年に大日本帝国陸軍特別医療部隊により軍に納入されましたが、敗戦後には廃棄処分されています。公的には宮間三郎上等兵はC級戦犯として処刑されたと発表されました。
補遺1: 特別医療部隊の「顧問監査役」として蒐集院より出向していた、[編集済]へのインタビュー記録の抜粋、1947年█月█日。全文を読む場合、サイト管理者による承認が必要。
担当者: アンドリュー・カウフマン博士
(前略)
カウフマン博士: [編集済]。あなた方が作成した……ヤエコトシロヌシ、だったか。それについて話してくれないか。
[編集済]: へぇ。あれはちょうど人身御供ちゅうところやね。まったくかわいそうなことしたわ。
カウフマン博士: というと。
[編集済]: 最初はな、ボクらもきちっと使えるもん作ろう、てね、ああして若いのにお国のために身を捧げますちうてね、御母堂に遺書まで書いてもろた、えーっと誰やったかな、ままええわ、その子ぉと後アカやら朝鮮人やらの脳味噌を組んでね。神さんに見立てて奉りまして。んでああ……いや、ボクはどないしてああいう風に動いてるのんかさっぱりわからへんけど、前にあんさんに渡した、中身が書いてあったやつあるやろ。あの通りや。
カウフマン博士: で、人身御供というのは。
[編集済]: 急かさんといてや。いやね。結局なんぼやってもね、一緒やったんや。
カウフマン博士: 何が。
[編集済]: 日本が負けるちう当然の事実がどうやっても変えられへんねん。こら使えんわ、てね。そんなわかりきったことなんぼ言われてもどうにもならへんねん。勝利の一手が欲しいのであって、負けるなんて皆わかってることなんで言われんならんのや、ってえらい文句言われたわ。(置かれている水を一口飲む)
[編集済]: でも、参謀の[編集済]にこれ、自分のところに渡してくれって言われてな。ビルマの、ほら、[編集済]作戦の参謀。あれが[編集済]作戦を後押しするのに使うってな。記憶させるやり方も教えたげたんや。
カウフマン博士: ああ……なんとなくわかったよ。
[編集済]: あれが釈放されたのはこれが原因やて。悲しい話やね。なんでも誑かされたんやってさ。自分で前提を入力せなんだら、出力もされへんのにな。
(後略)
補遺2: 宮間三郎上等兵の遺書です。両親に宛てたものですが、検閲によって不的確とされ、届くことがありませんでした。原文では縦書です。レベル1クリアランス/845-JP-GOI以上のクリアランス保持者であれば複写したものを閲覧できます。
レベル3クリアランス以上の研究部門職員による許可証の提示があれば保存された遺書の閲覧ができます。
拜啓
オ父サンオ母サン、オ元氣デスカ。
生マレツキ跛デアルコトニヨツテ丙種不合格トシテオ國ノ爲働ク事ガ出來ナカツタ私ヲ、皇軍ノ爲ニ役立テテクダサルト通知ガ來タ時、喜ンデ下サリマセンデシタネ。デスガ、コノ非常時ニ於イテ、日本國ヲ護ル天皇ノ赤子ノ一人トシテ、立チ向カフ事ガ國民全テニ求メラレルノデス。ダウカ、オ喜ビ下サイ。
オ父サンオ母サンガイラツシヤリ、妹サチガ暮ラス日本ノ國土ヲ米英カラ護ル為ニ、私ハ、コノ身ヲ捧ゲルトオ考エクダサイ。オ父サン、オ母サン、サチガ、米英ニ苦シメラレタトシテモ、コノ身デハ護リ切ル自信ガゴザイマセン。我ガ身ニヨツテ父母、サチヲ護ルコトガ出來ルナラ、私ニトツテ本望デス。必ズヤコノ身デ、御国ヲ勝利ヘト導イテミマス。
ダウカ、コレカラモオ元氣デ。三郎ハ、オ父サントオ母サン、サチガ、元氣デイテクレルダケデ幸セデス。
敬具
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scp-846-jp |
評価: +34+–x
20██/██/██現在のSCP-846-JP-A
アイテム番号: SCP-846-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-846-JPは出来る限りSCP-846-JP-Aと同じ人型標準収容室に収容してください。SCP-846-JPとSCP-846-JP-Aに対しては定期的に健康診断を行ってください。病気の兆候が発見されたら可能な限り治療を行い、治療が不可能である場合は延命措置を行う必要があります。SCP-846-JPが死亡した場合、即座に国内の病院や産婦人科、あるいは警察への通報を調査し、新たなSCP-846-JPを発見次第確保を行い、目撃者などにクラスA記憶処理を施してください。SCP-846-JP-Aが死亡した場合、SCP-846-JPを輸送車に乗せ、SCP-846-JPの言及するSCP-846-JP-Aが存在する方向を参考にしながら輸送車で接近して新たなSCP-846-JP-Aを発見、確保し、必要に応じて目撃者などにクラスA記憶処理を施してください。
説明: SCP-846-JPは日本国内に発生する特異な人間の雌個体です。現在、日本国内に存在していれば人種は問わないことが確認されています。SCP-846-JPは同時に1体のみ存在し、既存のSCP-846-JPが死亡すると新たに人間の雌個体の胎児がSCP-846-JPへと変化します。SCP-846-JPに変化する胎児の共通点は未だに判明していません。SCP-846-JPに変化した胎児は1時間程度で成人にまで成長し、大抵の場合母体を突き破って出生します。成長が終了したSCP-846-JPは後述するSCP-846-JP-Aの下に移動するため、その場を後にします。
SCP-846-JP-Aには日本国内に存在する、あらゆる動物の個体のうちの1体が選ばれます。SCP-846-JP-Aは性別に関係なく発生し、雌雄同体の個体がSCP-846-JP-Aと変化した例も確認されています。SCP-846-JP-AはSCP-846-JPと同じく同時に1体しか存在せず、既存のSCP-846-JP-Aが死亡すると新たに動物の卵あるいは幼体がSCP-846-JP-Aへと変化します。SCP-846-JP-Aは他の同種の個体との差がほぼ無く、判別することは不可能ですが、SCP-846-JPだけはSCP-846-JP-Aの居場所を理解しており、確実にSCP-846-JP-Aを発見することができます。また、現在までに人間の個体がSCP-846-JP-Aとなった例は確認されていません。
SCP-846-JPがSCP-846-JP-Aを発見すると、即座に保護を行い、種に適した飼育を行います。またSCP-846-JPはSCP-846-JP-Aをいかなる種であっても人間と同様に扱い、SCP-846-JP-Aが成体になると強引に恋愛関係を構築しようとします。可能であるならばSCP-846-JPはSCP-846-JP-Aと性行為に及ぶこともあります。これによりSCP-846-JPが妊娠した例は現在まで存在しません。
一旦合流したSCP-846-JPとSCP-846-JP-Aを引き離そうとした場合、SCP-846-JPはSCP-846-JP-Aを引き離そうとする人物を殺害しようとします。SCP-846-JP-Aを引き離すことに成功した場合でもSCP-846-JPはSCP-846-JP-Aを自分の下に連れ戻すためにあらゆる手段を講じます。このときのSCP-846-JPは飛躍的な身体能力の向上が見られており、財団の生物学者は人間が「火事場の馬鹿力」を出すときと同様のメカニズムではないかと推測しています。実験846-██によりSCP-846-JP-Aを引き離した際には、SCP-846-JPは収容室を破壊することで収容違反し、実験に関わった研究員が1名殺害されました。
SCP-846-JPは自分の名前を18██年代に生きていた████と名乗ります。調査の結果、18██年、奈良県の██市で同姓同名の人物が出生していたことが明らかになりました。また、SCP-846-JPはSCP-846-JP-Aを██と呼称します。こちらも調査の結果、████と交際していた人物の名前であることが判明しています。両者は家同士の諍いに巻き込まれており、18██年に入水により心中していました。また、SCP-846-JPは当時の記憶を保持していると推測されていますが、SCP-846-JP-Aが当時の記憶を保持しているかどうかは不明です。
SCP-846-JPは、財団に所属していた██博士が18██年に妊娠した際、突然激しい腹痛を訴えた後に██博士の腹部を突き破り成人程の大きさの女性が出現したことによって騒ぎになり、詳しい調査が行われた結果SCPオブジェクトとして認定されました。この事件により██博士は死亡しています。また、当初はSCP-846-JPのみが収容されていたものの、SCP-846-JP-Aを捜索するために収容室を破壊し収容違反を引き起こす、自殺により財団の収容から逃れるなど非協力的な態度を示していました。しかし3体目のSCP-846-JPが発見された際は、すでにSCP-846-JP-Aと合流した後であり、以前と比べると敵対性が薄れていました。加えて合流することによる他の異常性も確認できなかったため、試験的にSCP-846-JP-Aと共に収容したところ、SCP-846-JPが収容に協力的になりました。そのため現在の特別収容プロトコルが確立し、SCP-846-JPも現時点では収容に協力的な姿勢を保っています。
補遺1: 以下のインタビュー記録は、財団が収容した5体目のSCP-846-JPに対し、SCP-846-JP-Aが死亡した際に行われたものです。
対象: SCP-846-JP
インタビュアー: 折村博士
付記: SCP-846-JPは輸送車に乗った状態で、SCP-846-JP-Aの居る方向に向かっている。折村博士は安全のため、別所からモニターを用いてSCP-846-JPにインタビューを行っている。
<記録開始>
折村博士: こんにちは、SCP-846-JP。
SCP-846-JP: 何よ、こんなことをしている場合じゃないわ、早く██君を探させて頂戴?
[十数分に渡りSCP-846-JPを折村博士が説得。内容は割愛]
折村博士: SCP-846-JP-Aは我々が全力を尽くして捜索することを約束します。輸送車もSCP-846-JP-Aの下に向かっていることですし、インタビューに協力してはくれませんか?
SCP-846-JP: ……納得いかないけど、まあいいわ。
折村博士: では、なぜそのような異常性を持つに至ったのか、理由は分かりますか?
SCP-846-JP: 約束したからよ。
折村博士: 約束とは?
SCP-846-JP: ██君との約束。心中の時、生まれ変わってもまた一緒になろうって。よくある話でしょう?さ、答えたわ、██君を探しに行かせて頂戴?
折村博士: お願いですから、もう少し詳しいお話をお聞かせください。
[数十分に渡りSCP-846-JPを折村博士が説得。内容は割愛]
SCP-846-JP: ……分かったわ、話すわよ。さっき言ったような約束をした私は██君の服の裾をしっかり付かんで水の中に飛び込んで……次に気付いたときには、血塗れで立ってたの。知らない女の人が死んでた。周りで人が叫んでて。でも、そんなことはどうでもよかった。別の場所で██君が待ってるのが分かったの。待っててくれるなら行かなきゃいけない。そうして私はすぐに██君の下に向かおうとしたわ。あなたたちに取り押さえられちゃったけど。
折村博士: それが██博士だったわけですか?
SCP-846-JP: ええ。よく知らないけどそうなんじゃない?
折村博士: ……あなたが人間であったのに、SCP-846-JP-Aが人間でなかったことに何か思うことはありませんでしたか?
SCP-846-JP: ……さあね、でも私にとってはどんな姿形でも██君よ。私はね、先生。██君を思い出にはしたくないの。私の中だけの存在にしたくないのよ。
SCP-846-JPはこれ以降、SCP-846-JP-Aを探さなければならないと強硬に主張しだし、折村博士の説得にも耳を貸さなくなった為にインタビューは中断された。
<記録終了>
補遺2: SCP-846-JPおよびSCP-846-JP-Aの起源と推測される████と██について更に詳しい調査を行った結果、██は████の他に█人の女性と秘密裏に交際していたことが明らかになりました。また、██はその内の1人と婚約の約束を交わしていたことも判明しています。SCP-846-JPの不測の行動を防ぐため、SCP-846-JPに対しこの事実を明かす試みは禁止されます。
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scp-847-jp |
評価: +17+–x
収容以前に撮影されたSCP-847-JP
アイテム番号: SCP-847-JP
オブジェクトクラス: Euclid Safe
特別収容プロトコル: SCP-847-JPは、新たに水質調査の名目で収容サイトを建造し、その内部で管理されます。収容サイト内では防護服を着用し、入室、退室の際は熱風と薬品による、殺菌消毒が行われます。SCP-847-JPが新たに発生した場合は、付近一帯を封鎖し、生態系の調査の名目で、SCP-847-JPに寄生された生物がいないか、捜索を行ってください。この調査によって発見された宿主は、人間を除いて全て焼却処分を行ってください。人間の場合は、確保の後、財団の管理下にある病院でSCP-847-JP-1を摘出し、本人と家族にカバーストーリー「感染症による消化器不良」を流布し、解放してください。
説明: SCP-847-JPはSCP-847-JP-1の生息する水場の総称です。SCP-847-JP-1は分類上はニクバエの仲間と考えられる蛆虫です。SCP-847-JP-1は成虫の姿に変わることは無く、その一生を蛆虫の姿で過ごします。また、一般的な蛆虫とは異なり、雑食性で区別無く、有機物を栄養素として消化、吸収することが出来ます。全長は0.1~1mmと小さく、注意して観察を行わない限り、肉眼で捉えることは困難です。SCP-847-JP-1の環境適応能力は高く、湖沼、ため池、用水路など、水の流れの無い、または非常にゆるい淡水域ならどこにでも適応し、繁殖することが可能です。
SCP-847-JP-1の最大の特徴は、生息域の拡大方法にあります。SCP-847-JP-1は、昆虫と水棲生物を除く、あらゆる生物に寄生することができます。主だった寄生ルートは、SCP-847-JPを飲料水として利用することですが、すでにSCP-847-JP-1に寄生されている生物を捕食した場合なども、同様に寄生されます。
SCP-847-JP-1は宿主に寄生した日数に比例して、その影響深度を高めていきます。SCP-847-JP-1の影響深度の目安は以下のとおりです。
寄生初期
生物の体内への侵入に成功したSCP-847-JP-1は特殊な化合物を体内から分泌しながら、胃まで降下します。この化合物は宿主の消化能力を弱める効果と麻酔効果があり、宿主は常に原因不明の空腹と喉の渇きに苦しむようになります。また前述の麻酔効果によって腹部の感覚が無くなり、飲食を行うことでの満腹感や膨満感といった感覚は一切感じません。この二つの効果によって、宿主は空腹感を少しでも紛らわせようと、大量の飲食を行うようになります。
寄生中期
SCP-847-JP-1は宿主の体内に残った飲食物を利用して、個体数を大幅に増加させます。そして増加した数に比例して、分泌される化合物の量も増加するため、宿主の消化能力は限界寸前まで弱まり、収まらない空腹感から非常に攻撃的になり、周囲の有機物をなんでも口に運ぶようになります。また、宿主の外見は、肥大化した腹部を除き、やせ細ったものへと変わっていきます。
寄生後期
SCP-847-JP-1から分泌される化合物の量がさらに増加し、この期間中、宿主は水分補給が全く出来なくなります。その結果、宿主は水場を求めてさまよい続けます。そして水場を発見すると、濁度が高い泥水であろうと一心不乱に水分補給を続けます。
寄生終期
寄生終期は後期から20時間以内に発生します。大量の水分が宿主の体内に入ってくることを確認したSCP-847-JP-1は、宿主の咽頭蓋の気道側付近に卵を産みつけ、一斉に化合物の分泌を停止します。これにより、宿主の胃も本来の機能を取り戻し、その反動によって強い嘔吐感に襲われた結果、産み付けられた卵を残して、胃の内容物と共にSCP-847-JP-1も体外に排出されます。産み落とされた卵は、一週間ほどで孵化し、宿主の気道を這い上がり、食道側に侵入するため、宿主がSCP-847-JP-1から逃れる術は、寄生終期終了後の期間におけるSCP-847-JPの活動を弱める目的で、麻酔薬品を用いた、胃洗浄手術を除いてありません。
SCP-847-JPは1███年に、蒐集院が財団に吸収された際に、その存在が認知されました。財団への管理移行以前の蒐集院では、その特異性と寄生された宿主の見た目から、流行り病と飢饉の象徴であるとし、付近一帯の生物の殺処分という管理方法が取られていました。しかし実験を重ねるにつれて、現代の日本における浄水技術及び下水処理技術によって、収容違反が起こった際に新たにSCP-847-JPに成りえる地域は極めて少ないこと、また医学の発展によってSCP-847-JP-1に寄生された宿主から、SCP-847-JP-1の根絶が可能であると判明したため、オブジェクトクラスのSafeへの引き下げと共に、現在の収容プロトコルが作成されました。
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scp-848-jp |
評価: +41+–x
収容前に撮影されたSCP-848-JP
アイテム番号: SCP-848-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-848-JPはサイト-81██の標準収容コンテナに保管されています。SCP-848-JPはDクラス職員による被害者が三親等以内にいる人物に視認させる事のないようにしてください。現在SCP-848-JPを用いた実験を行うことは禁止されています。
SCP-848-JPには一週間に一度、Dクラス職員の被害者を三親等以内に持つ人物を無作為に選出し確保の後、サイト-81██に移送して死刑の同意をさせ、死刑終了後はクラスB記憶処理を施してください。その際処刑の対象となるDクラス職員は確実に終了用の部屋に収容してください。
説明: SCP-848-JPは、高さ約2mの彫刻です。一般的に、司法・裁判の公正さを表す象徴である正義の女神像として有名な、左手に剣、右手に天秤を持った女神を模した像で、ブロンズ製であることが判明しています。また、SCP-848-JPはいかなる方法においても破壊不可能であることが確かめられています。
雇用前に死刑囚であったDクラス職員が起こした、殺人事件の被害者を三親等以内の近親者や配偶者に持つ者(以下対象者とする)がSCP-848-JPを見た場合、SCP-848-JPは対象者だけに聞こえる声を発することが判明しています。具体的な内容は、対象者に対し上記のDクラス職員の死刑を行うかどうかの確認であることが確かめられています。そして対象者が死刑に同意すると、Dクラス職員はどれだけSCP-848-JPから離れた場所にいても、未知の方法により絞殺されます。このときDクラス職員は未知の力により空中に浮き上がり、見えない縄で首を吊られているかのような動きをします。
ただし、SCP-848-JPが対象者に一週間の間視認される事が無かった場合、SCP-848-JPは元死刑囚のDクラス職員の中からランダムに一人を選出し、死刑を行うことが確かめられています。この性質が判明したことにより、他のSCPの実験中にDクラス職員が死亡してしまう事態を防ぐため、財団側が遺族を用意し、死刑にするDクラス職員をこちらで指定させるという現在の収容方法が確立されました。また実験により、対象者が死刑に反対する返答をしたとしても、必ずSCP-848-JPに説得され最終的に同意の返答をしてしまう軽度の精神的影響があることが判明しています。
SCP-848-JPは、██県████大学法学部キャンパスに設置されていたもので、19██年、Dクラス職員が突如絞殺される事件が█件発生し、財団が調査を行ったところ、████大学にて、深夜言葉を話す女神像がいるという都市伝説が流布していることが判明し、調査の結果、大学に在学している複数人が、SCP-848-JPによる死刑に同意していたことが確認され、収容されました。
████大学では、19██年に彫刻家█████に製作を依頼した、との記録がありますが、SCP-848-JP自体に氏名は刻印されておらず、調査の結果彫刻家█████は実在しないことが判明しています。しかし、█████に非常に類似した█████という氏名の反財団派の活動家が19██年から19██年に渡って活動していた事が判明しています。また収容の際、SCP-848-JPの土台部分の底面に、活動家█████の氏名と、「生命は尊貴である。一人の生命は、全地球よりも重い。」という一文が刻印されているのが発見されました。
補遺1: 死刑に同意した複数人への████大学学生並びに財団が用意した対象者へのインタビューにより、SCP-848-JPの持つ論理的主張および対象者が受けたと思われる精神的影響の一部が判明しています。またインタビューの後全ての対象者にはクラスB記憶処理がなされました。
インタビューの内容要約
対象者に対して、「[被害者の氏名]を殺した犯人は現在、正式な法の裁きを受けることのない状態にある、あなたは私による死刑執行の代行に同意するか」と呼びかけた。
どのような存在か、との問いかけをした対象者に対して、「司法の正義を行使する存在である」との返答をした。
どうして死刑を代行するのか、との問いかけをした対象者に対して、「現在犯人は、刑法第11条1ならびに刑事訴訟法475条第1項2が遵守されていない状態にある」との返答をした。
なぜ自分に同意を求めるのか、との問いかけをした対象者に対し、「死刑が存在する第一の理由は、仇討ちの代行である、そして第二の理由は、報復の連鎖を止めることである、今死刑執行命令を出せるのは君しかいないのだ」との返答をした。
事前に死刑を拒否せよとの命令をした場合でも、SCP-848-JPの説得により最終的に全ての対象者が死刑に同意した。
全ての対象者は自分が死刑に同意したことに一切の後悔を持っていない。
全ての対象者は死刑が間違いなく執行されたと何の疑いもなく信じ込んでいる。
補遺2: SCP-848-JPによる被害への対策として、SCP-848-JPの論理的主張と思われる刑法第11条、刑事訴訟法475条第1項を財団が犯しているとされた現在の状況に対し、現在殺人罪が司法取引制度の対象となっていない日本において、Dクラス職員の雇用は正式な法律に則ったものではないという状態を解消するため、現在法務省ならびに最高裁判所事務総局と共同でDクラス職員の雇用の特例について正式な取引文書を作成することが検討されています。
補遺3:
特殊事例848-JP-1
20██/██/██の、特別収容プロトコルにおける死刑の実行において、指定されたDクラス職員が処刑されない事態が発生しました、これに対する対象者の問いかけに、SCP-848-JPは死刑は執行出来ないとの返答を繰り返すのみでした。その後財団が調査を行った結果、Dクラス職員が起こしたとされる殺人事件において容疑者として挙げられていた他の人物が真の犯人であったことが確かめられました。その後Dクラス職員は解放されました。
脚注
1. 刑法第11条
死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。
死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。
2. 刑事訴訟法475条第1項
死刑の執行は、法務大臣の命令による。
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scp-849-jp |
評価: +123+–x
アイテム番号: SCP-849-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-849-JPから半径500mの地点に、監視カメラを取り付けたフェンスを設置した上で、その外周に最低2名の警備員を巡回させ、民間人のSCP-849-JPへの侵入を防いでください。もしも民間人がSCP-849-JPへ侵入を試みた、あるいは侵入した場合、尋問を行った後にクラスA記憶処理を施し解放してください。
口コミ上及びインターネット上での情報操作を行い、民間人に「SCP-849-JPは心霊スポットとしては不適当である」という認識を植え付けることでSCP-849-JPへの興味を薄れさせ、民間人のSCP-849-JPへの接近の可能性を極力減らしてください。
説明: SCP-849-JPは██県██市郊外に存在する、地下1階、地上4階建ての廃病院です。内部調査の結果、後述する異常性を除いてSCP-849-JP内に特異な点は見受けられませんでした。SCP-849-JP内部に進入した人間(以下、対象と表記)は、必ず何らかの異常現象の発生や異常存在との遭遇を報告します。しかし、それらの事象の原因はいずれの場合も、錯覚や誤認識による非異常性の物です。加えて、対象はSCP-849-JP内部に進入している間はそれらの事象を異常な原因によるものと認識しますが、対象がSCP-849-JP内部から退出すると同時に、それらの事象の原因が非異常性の物だと気付きます。これらのことから、SCP-849-JPは内部にいる人間の恐怖心を極端に増幅させ、幻覚や錯覚、誤認識を誘発させる精神影響的特性を有している可能性が指摘されています。
記録によれば、SCP-849-JPは元々███病院として19██年に運営が開始されましたが、運営開始から█年後に廃業し、その後は放棄されていました。███病院の廃業について、院長とその他複数の職員及び入院患者数名が突如として失踪したことが原因とみられています。廃業後、放棄された███病院は「入ると必ず怪現象が発生するが、外に出ると気のせいだったと気付く心霊スポット」として知られていました。当初は侵入者の単なる誤認識によるものと思われていましたが、その頻度の高さから財団が調査を試みた結果、先述の異常性が発覚し、収容されました。なお、廃業以前はそのような報告は無かったため、SCP-849-JPは廃業後にその異常性が発現したと推測されています。
► 探査記録849-JP-1
▼ 閲覧を終了
探査者: D-849-1
備考: D-849-1には、懐中電灯、非実体存在を観測可能なウェアラブルカメラ、通信機能とGPS機能を備えた探査用ヘッドセットが支給されており、小型のカント計数機1と改良型カーデック計数機2を携帯しています。
<記録開始>
D-849-1: 病院に入った。かなり嫌な感じがする。それに、どうも寒いな。こう、身体の内側から冷えていくみたいだ。
██博士: D-849-1、そのままSCP-849-JP内をくまなく探索してください。
D-849-1: あまり気は進まないが、分かった。先に進んでみる。
[重要度が低い為割愛]
D-849-1: ここは食堂だな。床やら机やらはそんなに荒れてない。ただ、落書きが酷いな。それに、さっきから泣き声みたいなのが聞こえてる。
██博士: こちらではそのような音は聞こえませんが。風の音か何かを聞き間違えたのではないですか?
D-849-1: そうか? どう考えても風の音には聞こえないけどなあ[数秒間沈黙]おい、なんだありゃあ。
[視点が右に動く。D-849-1が目を逸らしたものと思われる]
██博士: どうしました?
D-849-1: あそこだよ、動いてる。
[D-849-1がカメラを窓の方に向け、カーテンを懐中電灯で照らす。カーテンは風に靡いているように見える]
██博士: カーテンが靡いているだけでしょう。
D-849-1: いや、そこに人っぽいのがいるだろ。そいつがカーテンを動かしてる。見えないのか?
██博士: 人ですか? いえ、こちらからはそういった存在は確認できません。ただ風に靡いているだけなのではないですか?
[視点が左に動く。D-849-1が再び目を逸らしたものと思われる]
D-849-1: え? いやいや、そんなはずは。
[カメラがカーテンを映す。カーテンは静止している]
D-849-1: あ、あれ、さっきまでいたのに。
D-849-1: ん?
[沈黙。D-849-1は視点を動かさない]
██博士: どうしました、D-849-1?
D-849-1: 今、なんか聞こえなかったか?
██博士: いいえ、何も。記録にもそれらしき音声はありませんが。
D-849-1: おい、本当に聞こえなかったのか? 今誰かの声がしたよな。それも耳元で。
██博士: 耳元で、ですか? ふむ、D-849-1、音の正体が分かりました。
D-849-1: 何だって?
██博士: 今しがた、こちらの研究員が独り言を呟いていましたので、それをこちらのマイクが拾ったのでしょう。それならば耳元で聞こえた説明も付きます。ヘッドセットから再生されたのですから。
D-849-1: そうなのか? そんな感じには聞こえなかったんだが。
██博士: 気のせいでしょう。探索を続けてください。
D-849-1: 了解。
[D-849-1が食堂内を探索し、移動する。重要度が低い為割愛]
D-849-1: 手術室か、ここは。ここも見てみるぞ。
[D-849-1が手術室に入った途端、突然手術室内の無影灯が手術台の上に落下し、破片が床中に散らばる]
D-849-1: おい、やばいんじゃないのかこれ。何でいきなり電灯が落ちてくるんだよ。
██博士: 恐らく無影灯の支柱が劣化していたのでしょう。どこもおかしくはありません。
D-849-1: いやでもタイミング良すぎ、いや、悪すぎないか?
██博士: ただの偶然でしょう。部屋を調べてください。おっと -
[室内が揺れ、D-849-1が廊下側に倒れこむ]
D-849-1: お、おい! なんか揺れてるぞ! 大丈夫かこれ!?
[手術室内の棚が開き、中身が落下する]
██博士: どうやらこの付近で地震があったようです。震度は3ですね。
[画面の揺れが収まる]
D-849-1: は、はあ!? 震度3だって!? 今のがか!? 立ってられないレベルだったじゃねえか!
██博士: D-849-1。この数値が万が一震度計の故障によるものだったとして、我々はそのような大きな揺れは感じていませんし、こちら側の物も大して動いていません。つまり貴方の気のせいである可能性の方が大いに高いのです。恐らく、恐怖のあまり揺れを大袈裟に感じてしまったのでしょう。探索を続行してください。
D-849-1: でも電灯に続いて地震って。分かったよ、調べてみる。
[カメラが室内を映す。落下した無影灯とその破片の他、棚にあった薬品類や大量の手術道具が床に散乱している]
D-849-1: 危ねえな。
██博士: 怪我をしないよう気を付けてください。
[D-849-1が室内を探索する]
D-849-1: それにしても変だな。この手術道具、地震の前から床にぶちまけられてたぞ。何でだ?
██博士: 恐らく、以前来た人間がばら撒いたのでしょう。他に何か変わった事は?
D-849-1: いや、特には[呻き声]
██博士: どうしました?
D-849-1: いってえ。クソッ、足首を切った。アキレス腱のあたりだ。
██博士: だから気を付けてくださいと言ったでしょう。
D-849-1: いやでも、片足ならまだしも両足いっぺんにだぞ? 流石におかしくねえか?
██博士: これだけ刃物が落ちている状況で迂闊に動けばそうもなります。他に異常が無ければ探索を続けてください。
D-849-1: 続けるのか、この足で?
██博士: ふむ。止むを得ません。床に未使用の包帯が転がっていましたよね? それで応急処置をしてください。探査後にこちらできちんと手当しますので。
D-849-1: 嘘だろ。
[重要度が低い為割愛]
D-849-1: 3階に来た。病室が並んでる。一つ一つ見て回らなきゃ駄目か?
██博士: そうしてください。
[D-849-1が各病室を探索する。重要度が低い為省略]
D-849-1: 304号室。今のところ変わった事は -
[D-849-1が洗面所の前で立ち止まる。数秒間鏡を見つめた後、傍にあった椅子で鏡を叩き割る]
██博士: どうしたのですか?
D-849-1: [息を切らしながら]先生、見えなかったのか?
██博士: 何がですか?
D-849-1: とぼけんのもいい加減にしろよ先生! 本当は全部見えてんだろ!? 入院着やら白衣やら着た連中が俺にびっちり纏わりついてたろうが!
██博士: 落ち着いてください、D-849-1。SCP-849-JP内への進入時からずっとそうでしたが、貴方に持たせた全ての計測機器の測定結果はSCP-849-JP内の正常範囲内を示し続けています。問題ありません。
D-849-1: じゃあ、全部俺の気のせいだってのか?
██博士: 恐らくは。
D-849-1: 俺はこの目で見たってのによ。探索を続行する。
[D-849-1が病室内を探索し、ベッドの下を覗き込む]
D-849-1: 何だこりゃ。ベッドの下に血でべったべたの包帯が転がってる。しかも他のベッドの下にもあるぞ。
██博士: 血液の乾き具合を見るに、恐らく廃業後の物でしょう。ただ、最近の物ではないようですね。
D-849-1: それにしたっておかしくねえか? ったく不衛生だな。他に何もねえし、次行っていいか?
██博士: いいでしょう。次の部屋へ進んでください。
D-849-1: ああ。
[D-849-1が突如部屋中の物を投げ飛ばし始める]
██博士: D-849-1、何をしているのです?
D-849-1: ど、どうなってんだ先生! 部屋中の物が飛んできてるぞ! ポ、ポルターガイストってやつか!? [短い悲鳴]
██博士: 何を言っているのです? 貴方が自分で投げているのではありませんか。どうしたのです、落ち着いてください。
D-849-1: はあ!? 俺はさっきからずっとじっとしてるだろうが! っていうかこの状況で動けるわけねえだろ! [悲鳴]
[D-849-1がベッドを投げ飛ばす]
D-849-1: あ、あ、危ねえ。死ぬかと思った。今ベッドが飛んできたぞ。
██博士: ええ、たった今貴方が投げ飛ばしましたからね。
D-849-1: 先生こそさっきから何言ってんだ!? どうやってこの姿勢からベッド投げるんだよ!? そもそも俺一人でベッドなんて投げられると思うか!?
██博士: ううむ。思うに、それは所謂火事場の馬鹿力というものではないでしょうか? 著しい恐怖によってアドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、筋肉のリミッターが外れたのだと思われます。いずれにせよ、今貴方が錯乱状態にあることはほぼ間違いないと言っていいでしょう。落ち着いてください。全て貴方の気のせいです。
D-849-1: いい加減にしてくれ先生! これが気のせいなわけあるか! 気のせいなわけ[間を置いて]畜生。
[D-849-1が物を投げ飛ばすのを止める]
██博士: 落ち着きましたか?
[D-849-1が頷く]
██博士: 探索を続行してもらえますね?
D-849-1: 分かったよ。
[D-849-1が移動する。重要度が低い為割愛]
D-849-1: 4階の病室にも血だらけの包帯が転がってたがさっきと比べりゃ異常無し。最後は、院長室だ。
[D-849-1が扉を開け、院長室に入る。それと同時に、D-849-1が嘔吐する。吐瀉物には血液が混じっているように見える]
██博士: 大丈夫ですか?
D-849-1: [咳き込む]大丈夫な訳ねえだろ。ここが一番嫌な感じがする場所だ。クソが、今すぐ出て行きたい位だよ。
██博士: そうですか。では室内を調べてください。ただし、万が一身の危険を感じたらすぐに退避するように。
D-849-1: 言われなくてもそうするっての。
[院長室内の棚が開き、中にある大量の書籍類が床に落ちる]
D-849-1: 逃げる前に死ぬかもな。
[D-849-1が室内を探索する]
D-849-1: 当時の資料やらがそのまま置いてあるな。 [D-849-1が資料を読む]へえ、ここ病院ができる前はススキの原っぱだったんだな。にしても院長室のくせに随分殺風景だな。
D-849-1: なんだこれ?
[D-849-1が院長が使っていたと思われる椅子にカメラを向ける。椅子の上には植物らしき物体が置かれている]
D-849-1: だいぶ色がくすんでる上にボロボロだが、もしかしてススキかこれ? なんだってこんなところにこんな物が?
██博士: 一応回収してください、D-849-1。こちらで分析をします。
D-849-1: ああ。
[D-849-1が発見された物体を回収する]
D-849-1: 他に変なもんは見つかんなかったし、もう帰っていいか? さっきからずっと肩を掴まれてるような感覚がしてよ。
██博士: いえ、まだ地階が残っています。帰還はその後です。
[ガラスが割れる音。D-849-1がその方向にカメラを向け、ガラス部分が砕けた応接テーブルを映す]
D-849-1: ああ、二度とこんなとこ来たかねえぜ。
[D-849-1が院長室を退出する。その直後、D-849-1が突然立ち止まり、周囲を見渡す]
██博士: D-849-1?
D-849-1: おい先生、どこだここ。さっきまでの病院じゃねえぞ。クソッ、出てきたドアも無くなってる。
██博士: 何を言っているのです? ヘッドセットのGPSは正常に機能しています。貴方は今しがた病室を出て廊下にいるところではありませんか。映像にも異常な点は見られません。4階の廊下を映していますよ。一応聞いておきますが、周りはどのような場所に見えるのですか?
D-849-1: どうせ信じちゃもらえないだろうが、ススキだ。地平線までススキがびっちり生えてる。でも、どれもこれも枯れてるな。時間は相変わらず夜で薄暗い。空には、星が全く無い代わりに馬鹿みてえにでかい月がある。なあ先生、なんだって院長室のドアがこんな所に繋がってるんだ? 俺は本当におかしくなっちまったのか?
██博士: 恐怖で見るにしては少々変わった幻覚ですね。先程読んだ資料のせいでしょうか。とにかく、こちらで案内しますので地階へ向かってください。最悪カメラの映像だけでも記録はできます。
D-849-1: そうしてくれ。ここ、病院の中みたいな嫌な感じはしねえけど、どこを見ても同じ景色な上に、風が全く吹かねえし音がしねえしで病院より気味が悪いんだよ。クソッ、これ本当に帰れんのかよ。
[██博士のナビゲートによってD-849-1が4階から3階への階段を降る。階段を1段降りたところでD-849-1が突然立ち止まり、再び周囲を見渡す]
D-849-1: あ? さっきまでの場所じゃねえ。戻ってこれたのか? いつの間にか元の病院にいるぞ。
██博士: 貴方のGPSの信号はずっと病院の中から発信されていましたがね。幻覚は消えたのですか?
D-849-1: 幻覚にしちゃあかなりリアルだったけどな。クソッ、ひたすら歩いてたせいか足の傷が。
██博士: 院長室から階段までの距離は100mも無いのですが。まあ、痛みや疲労で長く感じられたのでしょう。
D-849-1: 100m、そうか、あれがたったの100mか。[溜め息]まあいいや、というか先生、それより気になることがあってよ。
██博士: 何でしょうか。
D-849-1: あの場所からこっちに戻るちょっと前に、突然風が吹いたと思ったら、遠くの方に何か見えたんだよ。それも一つや二つじゃなくて、あー、数えてねえけど多分何百かはいたんじゃねえかな?
██博士: いた、とは? それらは物等ではなかったのですか?
D-849-1: ああ。動いてたから多分物じゃねえな。生き物の動きだと思うぜ、あれは。そんで、一番気になってるのがな、こっちに戻る寸前に、あいつらが一斉に、こっちを、見て -
[カメラが階段から4階の廊下を映す。数秒後、D-849-1が突然走って階段を降り始める]
██博士: D-849-1? どうしたのですか?
D-849-1: ああ、おい嘘だろ!? やっと戻ってこれたってのに、何でだよ!
██博士: 落ち着いてください。何があったのです?
D-849-1: い、いる! 多分さっきのとこで見たやつらだ。人、じゃねえ! 白い[呻き声]
[視界が大きく揺れ、カメラが床を映す]
D-849-1: [悲鳴]包帯が傷に、なんだこれ、包帯じゃねえのか、あ、足が -
[激しい衝突音らしき音声の後、カメラからの映像が途絶える]
██博士: D-849-1? 映像が途切れました。そちらの状況はどうなっていますか?
D-849-1: [嗚咽]助けてくれ先生! [悲鳴]この部屋も! 外から見えないのか!? そこらじゅう[雑音]
[音声に雑音が混じり始める]
D-849-1: せ、先生[雑音]と、と、とんでくる。[雑音]出て[雑音]
[D-849-1からの音声が途絶する]
██博士: D-849-1、応答してください。D-849-1。
[D-849-1側からの応答は無い]
██博士: クソッ、ヘッドセットが故障したか?
[██博士がD-849-1に応答を呼び掛け続ける。しかしその数分後、通信と映像が復旧する]
D-849-1: 博士? 聞こえるか?
██博士: D-849-1? 聞こえています。そちらの状況を報告してください。
D-849-1: いや、それが、走り回ってて転んだ勢いでヘッドセットとカメラが壊れてたみたいだ。でもなんかしばらくしたら直った。今は地下の霊安室にいる。
██博士: 先程遭遇したという存在はどうなったのですか?
D-849-1: ん? ああ、あれなら走り回ってる間に逃げ切れたみたいだ。
██博士: そうですか。通信が途絶している間に他に何か変わった事は?
D-849-1: 病院の中は粗方見て回ってたけど、そういうのは別になかった。博士、もう出て行ってもいいか?
██博士: そうですね。ではD-849-1、SCP-849-JPより帰還してください。
D-849-1: 了解。いやあ、いざやってみたら大したことなかったな。
[D-849-1が移動し、SCP-849-JPより退出する]
██博士: これにて探査は終了となります。お疲れ様でした。
D-849-1: ああ、お疲れ様。ここにはもう居たくないね。
<記録終了>
追記: 探査後に再調査を行った結果、SCP-849-JP内部に霊的存在や異常実体は確認されませんでした。また、D-849-1はSCP-849-JPより退出した際に内部で発見した植物らしき物体を所持しておらず、再調査の際にも発見されることはありませんでした。
▼ 閲覧を終了
脚注
1. 現実強度を測定する装置
2. 霊的存在を検知する装置
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scp-850-jp |
評価: +115+–x
SCP-850-JP。
アイテム番号: SCP-850-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-850-JPは、サイト-81██の低危険度食品保管ロッカーに███個が収容されています。実験を行いたい場合、レベル3以上の職員2名以上か、サイト管理官の許可を得てください。実験以外でのSCP-850-JPの摂食は禁止されています。未確保のSCP-850-JPが新たに発見された場合、カバーストーリー[異物混入]によりフロント企業経由での確保を行ってください。現在確保済のSCP-850-JP-1に対しては、標準人型オブジェクト管理プロトコルを適用してください。
説明: SCP-850-JPは、一般に流通する物と一見ほぼ変わりなく、成分にも問題のないカップ焼きそばです。██食品の「焼きそば████」にパッケージデザインが酷似していますが、製造元は明記されておらず、関連性は不明です。蓋に記載された食品名には「焼きそばノビール!」とあります。
SCP-850-JPに対して「湯を掛けた人間」(以下、SCP-850-JP-1と表記)がSCP-850-JPを摂食せず水分を吸収させ続けると、その水分の量に応じてSCP-850-JP-1の体長が伸長します。この特異性は放置から3分~10分の間では些細なものですが、10分を超えた段階で爆発的な伸長を発生させます。これらの伸長は全身に影響が及び、特に胴部の著しい伸長が観察されています。これによる体積の増加は確認されておらず、胴部は細く絞られるように伸びていきます。生存に全く問題は出ませんが、この変化は恒久的に残ると見られています。SCP-850-JP-1はこれに伴い身体の柔軟性が増しますが、この変化以外の特異性は見られません。
SCP-850-JPは20██/██/██発売と見られていますが、財団が回収した限り最低でも5000個以上の流通が確認されています。流通元の確認は取れていませんが、Dクラス職員による試食の結果「際立って美味である」ことが判明しており、この影響で一般において極端な特異性の発露が少なく、発見を妨げた原因になったのではないかと推測されています。
現在財団では█名のSCP-850-JP-1が確保されており、その内1名に対しインタビューを行いました。以下はインタビューの記録です。
SCP-850-JP-1-005 インタビュー記録
(当該のSCP-850-JP-1は100mほどに全身が伸長した21歳の成人男性。房内にて蜷局を巻くような形で収容されている。インタビューは念の為、外部から呼び掛ける形で行った)
██研究員: あー、██さん1。少しお話を伺いたいのですが、良いでしょうか。
SCP-850-JP-1: (無言)
██研究員: ██さん?
SCP-850-JP-1: なんだよ(鎌首をもたげる様に体を起こしながら)。
██研究員: インタビューを行いたいのですが、よろしいでしょうか。
SCP-850-JP-1: 好きにしろよ。
██研究員: ありがとうございます。ではお聞きしますが、貴方がそうなったのはいつ頃でしょうか。
SCP-850-JP-1: (5秒間の沈黙)8月の27日。クソ暑かったからよく覚えてる。
██研究員: その日の貴方の行動を教えてください。
SCP-850-JP-1: どうもこうも。夏休み中だから暇してたよ。外に出るって気分でもなかったし、ゴロゴロしてた。
██研究員: なるほど。それで。
SCP-850-JP-1: (3秒間の沈黙)腹が空いたから飯食おうと思って、取っといたカップ焼きそばにお湯を入れた。んで、普通に待って、水を流そうとしたんだ。
██研究員: ふむ。
SCP-850-JP-1: そしたら蓋が外れて、わかるだろ? そのまま流れちまったんだよ。
██研究員: ですが、排水溝に流したのでは途中で引っ掛かるのでは?
SCP-850-JP-1: (少し間を置いて)台所の排水溝が詰まってたんだ。だから、便所に水を流そうとした。そしたら落っことしたから、そのまま流した。
██研究員: なるほど。
SCP-850-JP-1: もうテンションだだ下がり。ダルイから飯も食わず横になった。んで目が覚めたら(自嘲するように笑い)これだよ。笑っちまうだろ? ははは。
██研究員: その後は?
SCP-850-JP-1: そりゃもう必死だよ。まともに動くのなんて手足だけでさ。大汗掻きながらジタバタして、どうにか携帯拾って警察に電話した。体が重い訳じゃなかったのが救いだな。その後はあんたらも知っての通りだよ。
██研究員: わかりました。インタビューを終了します。ありがとうございました。
<ログ終了>
分析: SCP-850-JPが下水道に流れ、その途上大量の水分を吸収した結果、SCP-850-JP-1の体長が大きく伸長したと見られる。最終的に、SCP-850-JP-1の延長は132mで止まった。
Dクラス職員によるSCP-850-JPの実験が行われました。以下は実験のログです。
SCP-850-JP実験記録
実験日時
対象
内容
結果
20██/1/10
D-850-JP-1
SCP-850-JPに湯を入れさせ、1分放置。
特に何も発生せず。D-850-JP-1はSCP-850-JPに対し「硬い」と評している。SCP-850-JPは焼却処分済。
20██/1/20
D-850-JP-1
SCP-850-JPに湯を入れさせ、製品規定通り3分の経過の後試食。
問題なく完食。非常に美味であるとの感想。
20██/1/25
D-850-JP-1
SCP-850-JPに湯を入れさせ、5分放置。その後試食。
問題なく完食。伸びても気にならない程度の味わい、との感想。試食後の身体測定により、D-850-JP-1(以下被験者と表記)の体長が1cm伸長していることが確認された。
20██/2/1
D-850-JP-1
SCP-850-JPに湯を入れさせ、10分放置。その後試食。
問題なく完食。異様に薄味であるとの感想。被験者の体長が5cm伸長していることが確認された。
20██/2/15
D-850-JP-1
SCP-850-JPに湯を入れさせ、15分放置。
被験者の動揺により試食出来ず。10分経過直後、1分おきに3cm、4cm、5cm、6cm、7cmの伸長が確認された。実験に用いたSCP-850-JPは焼却処分したが、被験者に対する影響は無かった。あくまで「伸びる」ことにのみ特異性が現れる模様。被験者はこの後、SCP-███-JPによる実験にて終了済。
20██/3/1
D-850-JP-2
SCP-850-JPに湯を入れさせ、薬剤で眠らせた後に30分放置。
被験者は問題なく伸長した。10分経過後、1分おきに7cmずつの伸長が見られたが、前実験と伸長のパターンが異なっていた。パッケージ内の水分が尽きたところで伸長は停止。最終的に体長は3mを超えた。被験者はこの後、SCP-███-JPによる実験にて終了済。
20██/3/10
D-850-JP-3
SCP-850-JPに湯を入れさせ、薬剤で眠らせた後に30分放置。加えて、SCP-850-JPに対し前記実験を超える水分の供給を試みた。
SCP-850-JPの████ℓに及ぶ水分の吸収を確認。被験者の体長は15分時点で20mを超え、25分前後で130mに達した。これと確保済みのSCP-850-JP-1個体の情報により、伸長の限界が130m前後と判明する。被験者は[編集済]にし焼却処分で終了。
補遺: 現在SCP-850-JPの流通は財団によりほぼ止められていますが、調査の結果、日本生類創研と関連があると見られる「日創製粉興業」の名が挙がっており、これに対し何らかの措置を予定しています。
Footnotes
1. SCP-850-JP-1、という呼びかけを行うと錯乱するため対象の本名での呼称。
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scp-851-jp |
評価: +37+–x
SCP-851-JP-α-3。樹木からの変異体。現在は伐採し財団収容コンテナへ収容済み。伐採されても特異性に変化は見られなかった。
アイテム番号:SCP-851-JP
オブジェクトクラス:Safe
特別収容プロトコル:SCP-851-JPは現在サイト8181の低危険度物品用収容ロッカーに収容されています。SCP-851-JP-α群の収容については一般的な収容コンテナ一つを使用することが許可されていますが、コンテナがSCP-851-JP-α群により溢れる事を防ぐ為に定期的に重要度の低いSCP-851-JP-αを処分しSCP-851-JP-αの数を一定に保ってください。SCP-851-JPを用いた実験には、現在クリアランスレベル2以上の職員二人の許可が必要です。
説明:SCP-851-JPは写真湿板式のカメラです。本来このタイプのカメラに装置されるべきガラス板は完全に挿入口に接着されており、SCP-851-JPから分離させることはできません。そのため本来の用途の一つである写真の現像は不可能です。ガラス板とSCP-851-JP本体を分離する試みは、破損とそれに伴う無力化の危惧を理由に中止されています。
SCP-851-JPの特異性は、非生物または植物を被写体に選択して撮影した場合に現れます。SCP-851-JPに撮影された非生物の被写体は、SCP-851-JP-αへ変化します。SCP-851-JP-αは大元において被写体の持っている外見を残しますが、
形態の一部を「顔」に見えるように変異させる
人類とよく似た「人格」を獲得する1
五感の認識能力及び人語を発音する能力の獲得
という特異性を持ちます。
SCP-851-JPによってSCP-851-JP-αへと変異するのは、一度の撮影につき一つの被写体のみです。SCP-851-JPがSCP-851-JP-αに変異する物品を選択している基準は、撮影者の「何を被写体に選択したか」という意識に忠実であるように見えます。SCP-851-JP-αの人格及び知能は、SCP-851-JP-αを造り出した撮影者の人格及び撮影者が対象に対して持っているイメージによって左右されます。そのためSCP-851-JPの特徴は個体によって大きく異なりますが、共通した特徴としてSCP-851-JP-αはSCP-851-JP-αを造り出した人間を『造物主』であると褒め称える、という性格を持ちます。既にSCP-851-JP-αに変化している物品を、もう一度SCP-851-JPで撮影すると、SCP-851-JP-αは特異性を失い元の物品へと戻ります。SCP-851-JP-αの特異性を消失させた後に同じ対象をSCP-851-JP-αに変異させても、SCP-851-JP-αの持つ「人格」は同一の物にはなりません。
SCP-851-JPは病死した無名のカメラマンの自宅から発見されました。一緒にカメラマンの「妻」を名乗るデジタルカメラのSCP-851-JP-αが発見されており、現在SCP-851-JP-α-1に分類され収容されています。
SCP-851-JP-α-9(雪だるまからの変異物)。この個体は職員に対して威嚇するような言動を取る。また、常温下でも融解の様子は見られない。
SCP-851-JP実験記録:
No,
SCP-851-JPの被写体
結果
SCP-851-JP-α‐4
鉢植えの向日葵。
「顔」は内側の筒状花部分に発生。実験室内の環境に抗議し、日当たりのいい場所に移すよう要求。現在もコンテナ内に収容中。枯れる様子はない。
SCP-851-JP-α‐10
日本刀。刀身が打たれた年代は明治維新頃と判明している。
「顔」は刃の部分に発生。その言動はフィクション作品におけるステロタイプな武士に似ている。SCP-851-JPでの無力化の際、「かめらに撮られると魂を抜かれる」旨の発言をした。
SCP-851-JP-α‐15
万年筆。██研究員が愛用している私物。2
「顔」は軸胴部に発生。性格は██研究員に対して非常に献身的で、他のSCP-851-JP-αよりも過剰な賞賛・崇拝傾向を示す。危険性を感じた██博士が実験終了時にSCP-851-JPで撮影し無力化した。
[データ削除済]
ヒトの死体。
実験中止。
脚注
1. 発生するSCP-851-JP-αの人格は無機物としての自覚が存在しますが、それまでの無機物としての経験を記憶していません。(例:SCP-851-JP-α化していない石を投げてからSCP-851-JP-αに変異させた場合、SCP-851-JP-αは投げられた事実を記憶していません)
2. この実験では被験者が被写体に対し思い入れを持っていた場合の反応を確かめるため、██研究員本人がSCP-851-JPを使い撮影した。
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scp-852-jp |
評価: +18+–x
精神的影響が無い状態のSCP-852-JP
アイテム番号: SCP-852-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-852-JPは内側を20cmの板金で補強した3m×3m×3mの収容室に保管します。一週間に一度、専用の防具をつけたDクラス職員を用いてSCP-852-JPを開けさせます。Dクラス職員には事前に、SCP-852-JPを開ける以外の行為をしないよう、通告しておいてください。活性化したSCP-852-JP-1が再度収納され、非活性状態になり次第、Dクラス職員に収容室から出るよう指示します。
Dクラス職員がSCP-852-JP-1へと接触した場合は、変化後のSCP-852-JP-1が収納され非活性化するのを待ち、後にSCP-852-JP-1の死体を回収します。回収した死体には焼却処理を行ってください。
説明: SCP-852-JPは、幅17.5cm、高さ12cm、奥行き14cm程の木で出来ている宝箱型の古びた小物入れです。SCP-852-JPを視認した人間(以下「被験者」)は、SCP-852-JPの中身に対して、強い興味を抱きます。この影響は、SCP-852-JPの内部が視認できる状態なら発生しないようです。SCP-852-JPの内部からは小型の奇妙な人型実体(以下SCP-852-JP-1)が出現します。SCP-852-JP-1は概ね人間に似た外見を持つ未知の小型生物ですが、関節の位置や数が人間のそれとは明らかに異なります。この際SCP-852-JP-1は、逃走を始めます。SCP-852-JP-1は多数の関節部を利用し壁や床を這いずるような動きをし、時速5km程の速度で被験者から遠ざかろうとします。被験者はこの際、SCP-852-JP-1を追いたいという衝動に駆られます。この衝動は、無視することが出来る程度のものです。
被験者がSCP-852-JP-1に接触した場合、SCP-852-JP-1は「キー」という甲高い声を上げて死亡します。その直後からおよそ30秒間をかけて被験者はSCP-852-JP-1へと変化します。この際、被験者は非常に激しい痛みと恐怖を訴えました。SCP-852-JP-1へと変化した元被験者はその後、SCP-852-JPの内部へと自分から収納されました。この収納の際に、SCP-852-JP-1を捕獲する試みは、それを試みた研究員や警備員がSCP-852-JP-1となる結果をもたらしました。SCP-852-JP-1が逃走を起こした際に被験者が無視を続けた場合、およそ10分後にSCP-852-JP-1は再収納されました。また、検査の結果SCP-852-JP-1の死体から異常性は確認されませんでした。
SCP-852-JPを開ける存在が2週間ほど現れなかった場合、SCP-852-JPは自動的に開き、内部から複数のSCP-852-JP-1が活性化した状態で出現します。SCP-852-JP-1はこの際、人間に対して積極的に接触を試みます。周囲が壁などで覆われている場合、それがどのような素材であっても、成分が不明な粘液1を口と思わしき部位から発生させ、舐めるようにして一日に約5mmの割合で物質を溶かし、突破を試みようとします。この状態のSCP-852-JP-1が人間に接触すると、接触された対象は通常通りSCP-852-JP-1へと変化しますが、接触した側のSCP-852-JP-1は通常と違い死亡しません。このためSCP-852-JP-1は現在、██体の存在が確認されています。SCP-852-JPが自主的に開いたときのみ、複数の個体は同時に活性化するようです。この際に活性化したSCP-852-JP-1は、時間経過によって再収納されることはありませんでした。
複数体のSCP-852-JP-1はSCP-852-JPの中へと問題なく収納されます。明らかにSCP-852-JPの容量を超えているにも関わらずです。仕舞われたSCP-852-JP-1群は、伸縮しながらお互いに絡み合うようにして空間を確保しているようであり、個体によっては全長が5mm程度まで縮小しているものも確認されました。
現在、SCP-852-JPを損傷させることが可能だということが分かっていますが、SCP-852-JPが想定外の反応を示す可能性に鑑み、現状の収容で特に問題ないとして、現在、損傷や破壊をもたらす実験は計画されていません。
+ 実験記録852-JP
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実験記録852-JP-1 - 日付20██/██/██
対象: D-852-1
実施方法: 対象にSCP-852-JPの映像を見せる
結果: 中の内容物に関しての説明を強く求めた。説明を拒否した際には、対象は軽く落胆した様子を見せた。
分析: 間接的な映像・写真の類であっても、開いていない状態のSCP-852-JPを視認することで対象に影響がでることが分かった。また、SCP-852-JPの視認による影響は、あくまで興味・関心を引くだけであり、強制力があるものではないようだ。 - ██博士
実験記録852-JP-2 - 日付20██/██/██
対象: D-852-1
実施方法: 対象にSCP-852-JPを開けさせる
結果: 対象はSCP-852-JPを開けた直後にのけぞり、中から活性化したSCP-852-JP-1が現れた。SCP-852-JP-1は対象から逃走を試み、対象は次の指示を聞く前に接触したためにSCP-852-JP-1へと変化し、元のSCP-852-JP-1は死亡が確認された。この変化の最中、対象は絶叫し部屋の外へ助けを求めたが、変化後には収納された。
分析: 絶叫には、後悔と恐怖の言葉が特に多く連ねられていた。 - ██博士
実験記録852-JP-3 - 日付20██/██/██
対象: 上記の実験で確保したSCP-852-JP-1の死体
実施方法: 対象の素材、耐久性を検査する。
結果: 対象は一般的な人間とほぼ同じ成分で出来ており、それ以上の異常性は確認されませんでした。また、損傷は通常通り受けるようであり、焼却処理が可能であることが分かりました。
分析: 死体になったSCP-852-JP-1に異常性はないようだ。念のため、最低限のサンプルを確保後、それ以外は焼却処理を行おう。 - ██博士
実験記録852-JP-4 - 日付20██/██/██
対象: D-852-2
実施方法: 対象にSCP-852-JPを視認させた後、内容物を確認させ、内容物には触れないように通告する。また、内容物に接触することは即時"終了"に繋がると知らせておく。
結果: 対象はぎこちなくSCP-852-JPを開き、活性化したSCP-852-JP-1に対し罵倒しながら後退した。その後、対象はSCP-852-JP-1の逃走を慎重に視認し続け、およそ10分が経過した際にSCP-852-JP-1は収納されました。その後1時間ほど対象はSCP-852-JPを観察しましたが、特に何も起こりませんでした。
分析: 追うこと以上に優先すべきことがあれば、追いたいという衝動よりもそちらが優先されると思われる。また、無視し続けた結果、何事も無くSCP-852-JP-1がSCP-852-JPへと戻ったのは、我々にとって非常に有意義な情報だといえるだろう。 - ██博士
実験記録852-JP-5 - 日付20██/██/██
対象: D-852-2
実施方法: 専用の防具をつけさせたDクラス職員を用いて、SCP-852-JP-1の接触の影響がどの程度で発生するのかを検証します。防具をつける前には脱走防止として、頚椎を破壊するのに十分な火薬と装置が仕込まれます。
結果: 防具の上からであれば、接触しても変化が発生しないことがわかりました。
分析: 布が二、三枚程度の厚みでは不十分だが、20mm程度の厚さがあれば接触しても問題ないことが分かったのは大きな発見だ。 - ██博士
実験記録852-JP-6 - 日付20██/██/██
対象: SCP-852-JP
実施方法: SCP-852-JPを一切開けず、長期間かけて観察する。
結果: 観察14日目にして、自動的にSCP-852-JPが開きました。中からは██体のSCP-852-JP-1が出現しました。また、それらが時間経過によって再収納される様子はありませんでした。SCP-852-JP-1は収容室の壁を舐めるようにしてゆっくりと溶かしていることが分かりました。Dクラス職員に専用の防具をつけさせ収容室内へと入らせたところ、SCP-852-JP-1は積極的にDクラス職員へと組み付き始めました。さらにSCP-852-JP-1は防具にあった空気口から内部へと侵入し、Dクラス職員に接触しました。Dクラス職員の変化後、接触したSCP-852-JP-1が死亡する様子はありませんでした。接触した個体と、Dクラス職員が変化した個体はSCP-852-JPへ収納されましたが、その他のSCP-852-JP-1個体群は依然として収容室内を彷徨っていました。この実験によって計██人のDクラス職員と研究員が変化する結果となりました。
分析: まさか複数体のSCP-852-JP-1が活性化するとは思わなかった。さらに、人間を変化させるまでSCP-852-JPへと戻らないとは・・・。今後、Dクラス職員を用いて定期的にSCP-852-JPを開けるようにしなければ。 - ██博士
実験記録852-JP-7 - 日付20██/██/██
対象: SCP-852-JP
実施方法: SCP-852-JPの一部を削り取り、サンプルを得る。
結果: 問題なく削り取ることができました。サンプルの検査の結果、オイル塗装を施されたウォールナット材だということが分かりましたが、サンプルから異常性は確認されませんでした。
分析: 削ることが出来るということは、破壊も可能なのだろう。だが、そうした場合中のSCP-852-JP-1群がどういった行動を起こすか分からない。最悪、常時活性化してしまう可能性だってある。そのため、破壊や損傷を与える可能性のある実験は必要がない限り行わないようにしよう。 - ██博士
この実験以降、SCP-852-JPの破壊や損傷が予想される実験は、セキュリティクリアランスレベル4以上の職員2名の許可がある場合を除き、禁止されています。
補遺: SCP-852-JPは、20██/██/██に、██県の███市で噂されていた"ぐちゃぐちゃこびと"という都市伝説に着目し調査をしていたエージェント・██が、小道に転がっていたSCP-852-JP-1の数体の死体と、廃屋に置かれていたSCP-852-JPへと戻ろうとするSCP-852-JP-1を発見し、収容に至りました。廃屋の周囲からは、SCP-852-JP-1の死体の数と同数の学生服が発見されました。エージェント・██はSCP-852-JP-1を追いかけたいという衝動に駆られたものの、付近の財団施設へ連絡することを優先したために被害にあいませんでした。
また、SCP-852-JPの収容の際、箱の底に文字が刻まれていることが確認されています。
以下はその文字を書き写したものです。
あなたがほしいの2
脚注
1. 現状、この粘液の採取は、接触者のSCP-852-JP-1への変化や、付着箇所の早急な蒸発により失敗しています。
2. この文字がSCP-852-JPによるものなのか、何者かの関与があるのかに関しては、現在のところ分かっていません。
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scp-853-jp |
評価: +18+–x
サイト-81██への移送前のSCP-853-JP(横断歩道)。対象の活性時間外での簡易実験を写したもの。靴は通常の物体である。
アイテム番号: SCP-853-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-853-JPが存在する区域に、午前1時から午前6時にかけて一般人の進入を禁止してください。現在、対象の描かれたアスファルトの切り出し作業が行われています。SCP-853-JPはサイト-81██の大型物体収容区域に収容されています。区域に入る場合、レベル3以上の職員の許可を得た後、財団指定の靴を着用してください。それ以外の靴を履いたまま区域内へ侵入してしまった場合、20秒以内に退避します。退避が遅れ、対象者の靴がSCP-853-JP-1となった場合、対象者は座り、SCP-853-JP-1が自発的に離れるのを待ってください。
説明: SCP-853-JPは岐阜県██市内の住宅地に存在していた異常性を持った横断歩道です。対象を構成している路面用塗料は████株式会社が販売しているものであり、成分上の異常は見られず、対象の塗装を行った作業員や作業会社にも特筆すべき点はありませんでした。
SCP-853-JPはJST午前2時から午前5時にかけて活性化し、異常性を発露します。活性時間中、人間1が同型の靴2を両足に着用し、対象から5m以内に30秒前後とどまり続けた場合3、対象者の靴はSCP-853-JP-1に変化します。
SCP-853-JP-1は自発的に行動する靴です。対象は常に二足一対で行動し、動作は「透明な人間が着用しているような」と報告されます。対象は人間に着用されている場合、すばやく着用者から離れようとします。この際、着用者が直立状態である場合、対象は自発行動によって着用者を転倒させ、離脱を図ります。転倒させようとする行動は、着用者が座り込むなどの行動をとることで停止させることが可能です。JP-1が着用者から離脱する際の力は強く、鎖による固定を引きちぎることが確認されました。また、JP-1の離脱行動は離脱が完了するまで停止せず、停止した事例は未確認です。
SCP-853-JP-1は着用者から離れると、すぐさま走り去るように消失します。消失の速度は速く、それゆえ、SCP-853-JP-1の完全な収容は20██年現在成されていません。発信機などは消失の瞬間に故障するため、SCP-853-JP-1がどこへ消失しているのかは不明です。
実験記録1 - 日付20██/03/18
対象: SCP-853-JP,D-13453,D-21944,D-30032
実施方法: D-13453はシューズ(型番A)を着用。D-21944はシューズAを右足に、シューズ(型番B)を左足に着用。D-30032はシューズBを着用し、両手にはシューズAを持たせる。以上の状態で彼らをSCP-853-JPの範囲内に立ち入らせ、経過を観察する。
目的: SCP-853-JPの異常性の確認。
結果: D-13453のシューズAはSCP-853-JP-1に変化した。D-21944のシューズA(右)とシューズB(左)は変化しなかった。D-30032のシューズBはJP-1に変化し、持たせたシューズAは変化しなかった。
考察: どうやら同型の靴を履いている場合、異常性が発揮されるようだ。――██博士
SCP-853-JPは20██年3月9日、対象の区域で夜間の事故が多発していたことと、当事者や対応した警察官の奇妙な証言が財団の目に止まり、調査の結果発見されました。対象が作成された時期は19██年とズレがあるため、異常性が発露したのは最近(発見日から数日以前)の出来事ではないかと推測されています。
補遺1: 同年5月1日、アスファルトの切り出し作業が完了し、SCP-853-JPはサイト-81██に移送されました。これに伴い、収容プロトコルの書き変えが行われました。
補遺2: 20██年8月8日、活性時間外のSCP-853-JP上に靴が突如出現しました。靴は回収され、調査を行ったところ、実験記録1でD-13453が使用したシューズAと同一のものと確認されました。SCP-853-JP-1としての性質は失われており、現在、サイト-81██に保管されています。また、右足用の靴の内部には以下の文章が記されていました。
楽園なんかじゃない。
Footnotes
1. 犬などの四足動物や猿などの霊長類などの場合、異常性は発揮されません。
2. 大まかな形状、色、大きさが一致しているものが同型と判断されます。サンダルや草鞋の場合も異常性が確認されましたが、厳密な"靴"の定義は不明です。
3. 乗車中の場合も含まれます。
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scp-854-jp |
評価: +18+–x
アイテム番号: SCP-854-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-854-JP-AとSCP-854-JP-Bは移動不可能であることから、その2つが所在する[編集済]神社を敷地ごと財団が買収し、一般人の立ち入りを禁止します。SCP-854-JP-Aの付近に監視カメラを設置し、SCP-854-JP現象を記録して下さい。SCP-854-JP-Bの付近にも複数の監視カメラを設置し、1週間ごとに破損状況をチェックして下さい。SCP-854-JP-A およびSCP-854-JP-Bの保全には十分注意を払い、著しい損耗が確認された場合はただちに研究チームに報告して下さい。
説明: SCP-854-JPはSCP-854-JP現象、SCP-854-JP-A、SCP-854-JP-Bの3つから構成されるSCPオブジェクトです。
SCP-854-JP現象に遭遇し、戸惑う民間人
SCP-854-JP現象は、自動販売機の直下、道路の側溝、マンホールなど、狭い開口部を備えた構造物に短時間1発生する現象です。SCP-854-JP現象が発生すると、その周囲20m内の床面に落下した硬貨は、ほぼ100%の確率で側面部分を下にして着地します2。硬貨はそのまま位置エネルギーを運動エネルギーに変換し、一見すると自然な軌道を描いてSCP-854-JP現象の発生している構造物の方向へ転がります3。移動距離に比して運動エネルギーが明らかに過小だった、移動の途中で何らかの障害物にぶつかった等の理由で硬貨が途中で停止した場合、その硬貨は通常どおり床面で横倒しとなります。しかし硬貨がSCP-854-JP現象の発生している構造物の開口部に到達すると、硬貨はその時点で消失し、SCP-854-JP-Aの直上へと瞬間移動します。
SCP-854-JP-Aは賽銭箱です。大きさは幅1.5m、奥行0.75m、高さ0.85mです。汚れが著しく、複数の箇所が破損していますが、それ以外は外見的にも材質的にも一般的な神社で使われる賽銭箱と同じです。ただしSCP-854-JP-Aは最初に発見された場所に不明な方法で固着され、動かすことができません。SCP-854-JP現象によって瞬間移動してきた硬貨は、外部からの妨害がない限りはそのままSCP-854-JP-Aに向けて落下し、賽銭口を通じてSCP-854-JP-Aの内部に収まります。SCP-854-JP-Aの内部には日本国で製造された硬貨がおよそ6,000枚収納され、現在も増え続けています。
SCP-854-JP-B。撮影時期は不明
SCP-854-JP-Bは、首に赤い前掛けをつけた石像です。SCP-854-JP-Aと同じく最初に発見された場所に不明な方法で固着されています。赤い前掛けがある点や[編集済]村の元住人の証言から、SCP-854-JP-Bはいわゆる「稲荷像」であると推定されますが、全身が摩耗しており、特に頭部の損耗が著しく、鼻と口は完全に消失しています。また後頭部には多数のひび割れや破損がみられますが、高精度カメラによる観察により、この損傷はSCP-854-JP現象が起こるたびに少しずつ進行していることが確認されています。このため、SCP-854-JP現象を引き起こしている主体はSCP-854-JP-Bであると推定されています。
SCP-854-JP現象、SCP-854-JP-A、SCP-854-JP-Bは、200█年██月██日に発見されました。当時財団は発信機を仕込んだ硬貨を用いて要注意団体████の本拠地の特定を進めていましたが、そのうちの1枚が偶発的にSCP-854-JP現象に遭遇、[編集済]県[編集済]郡[編集済]村の山中へ転移しました。位置情報を確認した財団は調査部隊を派遣し、問題の硬貨が[編集済]神社の敷地内に設置されたSCP-854-JP-Aの内部にあることを確認。SCP-854-JP-AとSCP-854-JP-Bが移動不可能であることもこのとき判明し、収容に至りました。
[編集済]神社は現在、198█年██月██日に発生した土砂崩れで拝殿・本殿が埋まっています。SCP-854-JP-Aの汚損もこの土砂崩れが原因と推測されます。また、この土砂崩れにより神主が死亡したこと、その15年後までに付近の全住人が村外へ引っ越し、管理する人間が存在しなくなったことにより、現在[編集済]神社は実質的に破棄された状態となっています。
財団はSCP-854-JPの背景を探るため、かつて[編集済]神社の付近に居住していた人間を捜索し、インタビューを試みました。インタビューには現在までに4人が応じています。
+ インタビュー記録1
- インタビュー記録1を隠す
対象: ███ 武志氏
インタビュアー: ██博士
付記: ███ 武志氏は最後まで[編集済]村に残っていた一人である。
<録音開始(200█/██/██)>
██博士: それでは███さん、貴方の生まれ故郷である[編集済]村と、その村の近くにあった[編集済]神社について教えていただけますか。
███氏: [編集済]村ですか。何の変哲もない山奥の寒村ですよ。一番近くのスーパーまで車で2時間。典型的な過疎の村でしたね。祖父の介護があったとは言え、俺もよくあんな村にずっと住んでたものだと思いますよ。[編集済]神社は、あんな田舎の割には境内が広くて、けっこう立派な神社でした。でも観光客なんて年に数人物好きが訪れるくらいで、無名の地味な神社ですよ。
██博士: [編集済]神社の神主さんはどんな方でしたか?
███氏: 俺が小さい頃に亡くなったんでよく覚えてませんが、まあ普通のおじいちゃんでしたよ。村のお爺やお婆が神社を集会所代わりに使っても、境内で子供が遊び回っても黙認してくれていたそうで、きっと優しい方だったんでしょうね。神社は神様の住まいだから、本当はそういうことするのは良くないそうなんですが。
██博士: これには見覚えはありますか?(SCP-854-JP-AとSCP-854-JP-Bを撮影した写真を見せる)
███氏: あー…[編集済]神社にあったやつでしたっけ? 覚えてないですね。
██博士: [編集済]村や[編集済]神社について、何か変わった体験や思い出はありませんか。
███氏: 変わったことねえ…さっきも言った通り[編集済]村なんて本当にただの過疎村ですし、[編集済]神社の境内は俺が小学生になる前に立入禁止になっちゃったからねえ、崩落の危険があるとかで。特に何も。
██博士: どんな些細なことでも構いません。
███氏: んー、そういえば村を出た1年くらい後、一度だけ[編集済]神社の夢を見ました。いや、あれって本当に[編集済]神社だったのかな。なんだか凄く曖昧な夢だったから。誰かが俺に話しかけてきたような気もするけど、ほとんど聞き取れなかったです。まあ、不思議な体験ではあったかな。
<録音終了>
このインタビューと並行して[編集済]神社の神主である██氏についても調査されましたが、経歴、死因に不審な点はありませんでした。要注意団体との繋がりも確認されていません。
+ インタビュー記録2
- インタビュー記録2を隠す
対象: ██ 昭子氏
インタビュアー: ██博士
付記: ██ 昭子氏は32歳まで[編集済]村で暮らしていた。転職のため、土砂崩れの10年後に村外に引っ越している。
<録音開始(200█/██/██)>
(███ 武志氏と内容が重複する部分は省略)
██博士: これには見覚えはありますか?(SCP-854-JP-AとSCP-854-JP-Bを撮影した写真を見せる)
██氏: ああ、おさきさんね。それにこの賽銭箱。懐かしいわ。
██博士: おさきさん?
██氏: このお稲荷様のことよ。村の人は皆おさきさんって呼んでた。
██博士: オサキとはキツネの憑き物のことですね。神様の遣いであるお稲荷様に付ける名前としては不自然では?
██氏: そうねえ。言われてみれば、なぜあの像をそんな名前で呼んでたのかしら。よくわからないわ。
██博士: このおさきさんは、何か不思議な現象を起こしていたのでしょうか?
██氏: 不思議な現象? 怪談みたいな? さあ、私は見たことないわ。
██博士: では、こちらの賽銭箱はいかがでしょう。
██氏: 懐かしいわねえ。拝殿は全部埋まったって聞いてたけど、これは無事だったのね。…いえ、無事じゃないか。こんなに汚れちゃって。長いこと土砂をかぶってたのね。
██博士: こちらについてご存知のことを教えていただければ。なんでも構いません。
██氏: うーん、そうねえ…境内を使わせてもらう代わりに賽銭を入れてたことくらいかしら。
██博士: というと?
██氏: [編集済]神社は村の皆の集会場とか遊び場になってたんだけど、さすがに神様の場所を勝手に使わせてもらうのは失礼だろう、ということで、大人たちは神社に集まるときに必ず賽銭箱にお金を投げ入れていたの。で、それを見ていた子どもたちも真似しだしてね。神社で遊ぶときは必ず賽銭箱にお金を入れなくてはいけない、みたいな決まりになったのよ。後から変なルールもできたわ、小さい子は1円でいいけど、小学校に上がった子は5円、みたいな。
██博士: 神社に村の人たちが集まるときには必ず、賽銭箱にお金を入れていた、と?
██氏: ええ、そうよ。私も子供の頃にあそこで遊ぶときは5円入れていたし、大人になってからは境内を使わせてもらうときに10円か100円を賽銭箱に入れていたわ。
██博士: なるほど。では他に、[編集済]村や[編集済]神社について、何か変わった体験や思い出はありませんか。
██氏: えーと…そういえば、一度だけ[編集済]神社の夢を見たわ。村を出た1年後くらいだったと思うけど。
██博士: どんな夢ですか?
██氏: ぼんやりした夢だったわ。自分が[編集済]神社の中に居ることだけは判るけど、でも景色がなんだか曖昧で。音もよく聞こえなかったわね。誰かが私に「来て」って言ったのだけは覚えてるけど、でも来てって言われても、どこへ行けばいいのか意味不明よね。不思議な体験といえばそれくらいかしら。
<録音終了>
+ インタビュー記録3
- インタビュー記録3を隠す
対象: ███ 聡氏
インタビュアー: ██博士
付記: ███ 聡氏は18歳まで[編集済]村で暮らしていた。土砂崩れの4年後、大学進学のために村外に引っ越している。
<録音開始(201█/██/██)>
(前述の二氏と内容が重複する部分は省略)
██博士: お稲荷さまの像をオサキと呼んでいたことについて、何か心当たりはありますか?
███氏: 神主さんに聞いたことがあります。大昔、あの村でオサキと呼ばれる妖怪が暴れていて皆が困っていたところ、通りがかりの空海上人が法力でその妖怪を懲らしめてくれた。反省した妖怪は神様の遣いとして村を守ることを誓い、不思議な力で田んぼを豊作にしたり、どこからともなくお金を取り寄せたり、みんなの夢の中に現れて台風が迫っていることを伝えたりしたので、村はいろいろな危機を無事に切り抜け、たいそう栄えた、と。
██博士: なるほど。つまりあの稲荷像は、実はオサキの石像だったということですか。オサキの石像は、村で何か不思議な現象を起こしていたのではありませんか?
███氏: 私が知る限り、おさきさんが不思議なことを起こしたという事例はありません。そもそも伝承と現実を混同するべきではないと思います。
██博士: そ、そうですか。失礼しました。
███氏: もし仮におさきさんが不思議な力を持っているとしても、石像があんなに摩耗していたのでは、もう力も消え失せているのではないでしょうか。
██博士: そうかも知れませんね。では貴方の記憶では、[編集済]村や[編集済]神社について、特に変わった体験や思い出はないのでしょうか。
███氏: もちろんありません…あ、いえ。一つだけありました。
██博士: というと?
███氏: 一度だけ[編集済]神社の夢を見ました。私が大学2年生になった直後のことです。その夢の中の私は、子供の頃のように[編集済]神社の境内で、木の幹に集まる昆虫を観察していました。カブトムシに手を伸ばしたところで誰かが私に話しかけてきたのを覚えています。「要らないから、来て」と言っていました。夢はそこで覚めました。
██博士: 「要らないから、来て」? 何が要らなくて、どこに来てほしかったんでしょうか。
███氏: 両方とも不明です。誰がそう言ったのかも覚えていません。でも、そう言われたことは、今でも鮮明に覚えています。
<録音終了>
+ インタビュー記録4
- インタビュー記録4を隠す
対象: ██ 宮子氏
インタビュアー: ██博士
付記: ██ 宮子氏は22歳まで[編集済]村で暮らしていた。土砂崩れの翌年、結婚のために村外に引っ越している。
<録音開始(201█/██/██)>
(前述の三氏と内容が重複する部分は省略)
██博士: [編集済]神社が土砂崩れに遭った後、[編集済]村に事故が相次いだり、田んぼが不作だったりはしていなかったでしょうか?
██氏: 別にそんなことはなかったわね。たまに村に帰省したときも誰も事故や不作なんて口にしてなかったし。でも、あの神社がなくなった影響はあったと思うわ。帰省するたびに村の皆の心がだんだんバラバラになって行っているように感じたもの。きっとみんなで集まれる場所がなくなったせいね。神社が健在なら、あの村も廃村にならずに済んだかもしれないわ。
██博士: なるほど。それともう一つお聞きしたいのですが、今までに[編集済]神社の夢を見たことはありませんか?
███氏: 夢? ああ、そういえば見たわね。引っ越しの翌年だったわ。20年以上も前のことなのに今でも鮮明に覚えてる。
██博士: どのような夢ですか?
███氏: 子供の頃の私が、夏の青い空と入道雲の下を友達と一緒に歩いてる夢だったわ。私たちは[編集済]神社に辿り着くと、いつものようにポケットから5円玉を取り出して賽銭箱に入れようとしたの。すると、誰かが…それが誰かということだけは覚えてないんだけれど、誰かが私にこう言ったの。「賽銭はいらない。ボクが代わりに入れるよ。賽銭はいらないから、だから」って。…意味はよく判らなかったけれど、とても切実な声だったわ。
<録音終了>
インタビューに応じた4人がすべて、引越の約1年後に[編集済]神社に関する夢を見ていたこと、夢の中で不明な誰かから話しかけられたと証言していることは特筆すべき共通点です。しかしながらこの夢とSCP-854-JPの関係性については立証できておらず、研究が急がれます。
201█年現在もSCP-854-JP現象は続いていますが、発見当時は月に5度以上の頻度だった発生回数は少しずつ減り、今は月に2度前後です。そのためSCP-854-JP-Bの後頭部の損傷の進行も遅くなっていますが、研究チームの計算によると、SCP-854-JP現象が完全に終息するより前にSCP-854-JP-Bの頭部が破壊される可能性は50%弱とのことです。財団の倫理委員会は今後の対応について、特別収容プロトコルの改定も含めて協議中です。
Footnotes
1. 最短で4時間程度、最長でも18時間程度であるとみられます
2. 例外として、一度に4枚以上の硬貨が床に向けて落下した場合、約半分が彫刻部分を下にして着地します
3. 一度に4枚以上の硬貨が床を転がった場合、構造物の方向へ向かうのは全体の25%前後です
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scp-855-jp |
評価: +139+–x
SCP-855-JP。
アイテム番号: SCP-855-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: その性質上、SCP-855-JPは移転が不可能であるため、旧・阿天坊邸および道路を挟んで隣接するオフィスビルを財団フロント企業“株式会社SCプロパティーズ”が所有する物件として買い取り、双方を合同暫定サイト81-855に指定することで封じ込めが確立されました。
SCP-855-JPは住宅密集地に存在しているため、近隣住民の不要な注意を惹かないように、実験は厳密に制限されています。実験は原則としてクリアランスレベル2以上1の職員を対象として実施し、結果として得られた物品は異常性の有無を精査した後、問題が無ければ当該職員に改めて返還されます。不測の事態によるSCP-855-JPの非意図的な活性化に備えて、暫定サイト-81-855には直近10日以内に誕生日を迎える財団職員10名を近隣のサイトから一時的に配属させた状態を保ちます。
阿天坊氏は、2018/04/23に予定されている実験まで、サイト-81██併設事務所にて暫定レベル0職員として雇用されます。氏の今後の処遇に関してはサイト-81██人事部に一任されます。
説明: SCP-855-JPは、██県██市、旧・阿天坊邸の裏庭にある倉庫の入口として使われていた高さ1.8mの両開き木造扉です。本来この扉は1974年の倉庫改装に伴って取り付けられたものでしたが、事案855-JPを以て異常性を発現して以降は倉庫内への立ち入りが不可能になりました。SCP-855-JPの表面は明るい青色に塗り上げられていますが、地所の所有者である阿天坊大吉(51)へのインタビューにより、事案発生前の扉は黒であり、その塗装も大幅に劣化していたことが明らかになっています。
SCP-855-JPは、扉の上部に設置されている照明の人感センサー2範囲内に何らかの生物が侵入するか、侵入防止のために施錠や障壁設置の試みが行われるか、その他の外的要因によって僅かでも開放されると即座に活性化状態に入ります。この際、SCP-855-JPはおよそ900N相当の力を伴って内側から完全に開け放たれ、活性化事象の終了まで閉鎖が不可能になります。内部空間は後述するSCP-855-JP-A個体群によって埋め尽くされていますが、敷居部分には強い反発力を持つ不可視の障壁が存在しており、外部からの侵入の試みは成果を上げていません。この空間内からはイギリスのダンス音楽“Pop Goes the Weasel”のピアノ演奏音がおよそ30dbの音量で流れ続けています。
実験中のSCP-855-JP-A個体群。
SCP-855-JP-A個体は、身長2.35mの着ぐるみのようなヒト型実体です。全てのSCP-855-JP-A個体は一様に中世ヨーロッパの宮廷道化師を模した衣装に身を包み、常に笑顔の表情を浮かべている極端に大きな頭部を有しています。SCP-855-JP-A個体の頭部は誇張された眼球を除き、可動部位を有していません。SCP-855-JP-A個体の外部構成要素は継ぎ目が存在しない点以外はごく一般的な着ぐるみと変わりませんが、頭部は完全な空洞であり、胴体内部には以下に挙げるような雑多な物品が詰まっています。
様々な色合いに染色した綿
製造マークの無い非異常性のスーパーボール
装飾用のスパンコール
清涼飲料水3を満たした半透明のビニール袋
イチゴジャム
ハート形の風船(各個体に1個ずつ)
SCP-855-JP-A個体の身体能力は着ぐるみを着用した一般人のそれとほぼ同じですが、疲労を示すことなく一定の速度で走り続けることが可能です。SCP-855-JP-A個体が不可視障壁や戸口のサイズを無視して外部に出現するメカニズムにはSCP-████やSCP-████-██との類似点が指摘されていますが、現時点では相互に関連性を持つとは考えられていません。
活性化したSCP-855-JP-A個体群はおよそ5秒間に1体のペースで内部空間を退出しつつ、SCP-855-JPが開放された時点で最も近くにいた、当日に誕生日を迎えている人間(以下、“対象者”)を走って追跡し始めます。活性化事象中に日付が変わった、または活性化後に誕生日を迎えている別な人物がより近くに現れた場合でも、SCP-855-JP-A個体群が一度指定した対象者を変更した例はありません4。
SCP-855-JP-A個体は例外なく、対象者の所在と、そこに辿り着くための最短ルートを正確に把握しています。SCP-855-JP-A個体は対象者以外の人間には基本的に関心を払わず、危害を加えるような振舞いにも及びません。しかしながら、SCP-855-JP-A個体には自己防衛行動が欠如しているため、車両が走行中の道路を横切る、ルートの短縮を意図して歩道橋から飛び降りるなどして、結果的に物損事故の類を引き起こす可能性が大いにあります。SCP-855-JP-A個体は進路を継続的に遮られるなどの妨害行動を取られた場合、大袈裟なハンドジェスチャーに加え、様々な動物の鳴き声・機関車の汽笛・口語的に“パフパフ”の名称で知られる自転車用の警笛ラッパといった雑多な音声を鼻腔から発して、穏便に道を譲ってもらえるように意思疎通を試み、不可能である場合は迂回して対象者の下を目指します。SCP-855-JP-A個体は頭部を除く身体のおよそ60%が破壊されるまでは問題なく活動を継続します。
対象者の下へと辿りついた場合、SCP-855-JP-A個体群は常に以下のような行動を取ります。
1. SCP-855-JP-A個体群は対象者を取り巻きます。包囲が成功すると、全ての個体はその場で動きを停止します。
2. 最初に対象者の下に辿り着いた無傷の個体(以下、“代表個体”)が、“Birthday Surprise!”という、やや音割れした中年男性の声を鼻腔から放出します。これに続き、対象者から見える範囲の全ての個体が“Birthday Surprise!”と唱和し、一斉に拍手します。
3. 代表個体の頭部が中心線から横2つに分割5して脱落し、内部に未知の原理で宙に浮かぶプレゼント用包装を施された箱が出現します。分割から10秒経過しても対象者が箱を手に取らない場合、代表個体は箱を自ら首の上から除去し、対象者に半ば押し付けるようにして手渡します。
4. SCP-855-JP-A個体群は再び一斉に拍手した後、頭部を喪失した代表個体も含め、SCP-855-JPの内部へと退却を開始します。全ての活動可能な個体が内部空間へ退却した後、SCP-855-JPは自動的にゆっくり閉まっていきます。
5. SCP-855-JPが完全に閉鎖された時点で、活動不能状態となったSCP-855-JP-A個体のあらゆる痕跡は、SCP-855-JP外部から消失します6。
SCP-855-JP-A代表個体によって贈与される物品7の傾向には一貫性が見られませんが、常に活性化当時の対象者の趣味やニーズに正確に沿っています。贈与品には製造マークが存在せず、書籍の場合は記載されている作者や出版社の実在が特定されていません。
閉鎖後のSCP-855-JPは条件が満たされ次第、直ちに再活性化します。活性化事象が立て続けに発生した場合、同一の対象者が選択されることはありません。財団がオブジェクトを確保してからまだ1年間が経過していないため、1年前の活性化の対象者が再び選択されるか否かは現時点では不明です。
事案855-JP: SCP-855-JPは2017/05/06のAM 02:30前後に唐突に活性化したと推定されています。出現したSCP-855-JP-A個体群は200m離れたコンビニエンス・ストアのパート従業員、寒河江██を対象者に定めて追跡を開始し、AM 02:408に目的を達成するまでに、現地警察本部に潜入していた財団エージェントの注意を惹くのに十分な騒ぎを引き起こしました。財団が現場を確保する前に、民間人の不用意な接近によってSCP-855-JPは閉鎖直後に直ちに活性化し、[編集済]。
幸いにも、財団は寒河江女史への簡易インタビューを介して特性を把握し、移動ルートの分析によって比較的早期に対象者の特定に成功しました。AM 03:30、SCP-855-JP-A個体群9は、財団エージェントに拘留され現場に急行させられた民間人の野村██にプレゼント贈与を行って再び不活性状態に入りました。広範に騒擾が広がりつつあることからクラスC記憶処理薬の空中散布が承認され、後日、カバーストーリー“化学薬品テロ未遂による幻覚騒ぎ”が一帯に流布されました。インターネット上に流出した既知の映像はWeb走査Bot-88(“シャムロック・ジョーンズ”)によって全て特定・削除されたと見做されています。
事案855-JP以降、当時の██市で多発していた空き巣被害の報告が途絶えたことから、倉庫に侵入を試みた犯人がSCP-855-JPの活性化に何らかの形で関与した可能性が指摘されています。しかしながら、十分な調査が行われる前に記憶処理薬が散布されたため、仮に活性化の要因が空き巣であり現在も無事に生存している場合であっても、既に当時の状況を覚えてはいないと考えられます。
インタビューログ855-JP-014抜粋 2017/05/07 :
+ 転写を見る
- アクセス承認
質問者: 那澤 和なざわ なごむ、財団フィールドエージェント
回答者: 阿天坊 大吉あてんぼう だいきち、SCP-855-JPが設置されている倉庫の所有者
序: SCP-855-JPの回収当時、阿天坊氏は知人数名と共に旅行に出ており、事件のことを一切把握していなかった。以下は、フィールドエージェントに所在を特定され、仔細に関する説明を受けた氏へのインタビュー後半部からの抜粋である。
Agt.那澤: それじゃ、今回の事件が発生したことに、何も心当たりはないんですね?
阿天坊: 心当たりも何も、こんな話、いくら写真だの記録だのあるからってそうそう信じられやしませんよ。これまで私はずっと真面目一筋で働いてきたし、変な連中と関わり合いになった事も無い。ましてや急に異常だの魔法だの言われたって、そんな…
Agt.那澤: 最後にあの倉庫に入ったのは、いつです? 中には何が収めてあるんですか?
阿天坊: 一ヶ月ぐらい前、脚立を出した時です。そろそろ修理屋を呼んでセンサーを直さなきゃならんと考えたのは覚えてますが、変わったことは特に何もありませんでした。中に入ってる物だって、庭仕事用の剪定ばさみだとか、夏冬のタイヤや交換用のジャッキとか。
Agt.那澤: その他には? どんな些細な事でも構わないですよ。
阿天坊: ですから、今言ったとおり、作業用具ばかりです。後はせいぜい、私や兄が子供だった頃の雑……
数秒の沈黙。
阿天坊: ……ちょっと失礼します。
阿天坊氏は卓上に置かれていた資料の中からSCP-855-JP-A個体の写真を取り上げ、暫く見つめる。
阿天坊: あの…那澤さん。これ、[SCP-855-JP-A個体の写真を見せる] こいつの顔に、見覚えがあります。
Agt.那澤: 何処でです?
阿天坊: その…馬鹿げて聞こえるかもしれませんが……死んだ伯父が、たしか小学校に入る前、私の誕生日にくれたビックリ箱の人形に、よく似てるんです。いや似てるどころじゃない、瓜二つです。
Agt.那澤: …ちょっとその話、詳しく聞かせてもらってもいいですか。由来とか…
阿天坊: 私もそんなに詳しくは知らんのです。かなり古めかしい物だったんで、何となく気になって聞いたことはありますがね。熱海旅行の土産だそうなんですが、酔ってたから買った店のことは何も覚えてないとか言ってましたよ。玩具としてはそう変わったもんでもありません、側面に手回しのハンドルが付いてて、空色の…そう、そうですよ! 箱はさっき見せてもらった写真の扉と同じ色の木彫りです。
Agt.那澤: そのビックリ箱が、倉庫の中に?
阿天坊: ええ。大学に進学するとき、大掃除で子供時代の物はあらかた箱詰めして、あそこにしまいました。いずれ結婚して子供が出来たら引っ張り出そうかとも考えたんですが、あいにくこの歳まで独身でして。もう、30年も前のことですなぁ…まさか、こんな形でこいつの面を拝む羽目になるとは思ってもみませんでした。
Agt.那澤: 阿天坊さん、普通の玩具だという割にはけっこう細かい点まで思い出せてるようですけど、何か特別な思い入れみたいなのがあったりする品なんですかね。伯父さんからプレゼントを貰うのは珍しいことだったとかそういうアレですか?
阿天坊: うーん…何と言えばいいんでしょうな。子供だった時分は、どんなに嫌な事があっても、あの人形の馬鹿みたいな笑顔を見てると悩んでることがつまらなく思えて自然と立ち直ったりとか、そういう事が多かったんですよ。一度、地元のガキ大将にいじめられて泣きながら帰った時なんか、私が部屋でグズってると、いきなり箱が開いてあいつが飛び出してきた事があったんです。多分ばね仕掛けがどこか緩んでたんでしょうが、あの時はこっちもびっくりするやら可笑しいやら… いつの間にやら、なんで泣いてたかさえ忘れてました。
Agt.那澤: 成る程。こちらとしても参考になりましたよ。……多分、貴方にはこれから2、3回実験に立ち会っていただくことになるかもしれませんが、一先ずはここで終了にしたいと思ってます。お時間ありがとうございます。
[記録終了]
実験記録855-JP-06 2017/06/16 :
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序: SCP-855-JPの回収後、周辺地域の混乱が収まった後に慎重に行われた█回の実験により、SCP-855-JP-A個体の管理状況下における脅威度の低さと、贈与品の非異常性が明らかになったため、直近のサイト-81██で本人同意の下、身柄預かりとなっていた阿天坊氏を第█回実験に参加させる申請が受理された。この実験は、これまでのところ、SCP-855-JP-A個体が上述の行動パターンを逸脱した唯一の事例である。
[記録開始]
<15:58:00> 実験のため、担当職員らがSCP-855-JPの前に集合。今回は収容監督主任の牛山博士と、当日の贈与対象者である波戸崎研究員に加えて、阿天坊氏がいるため、不測の事態に備えてエージェント・星および若穂が氏の近くで待機している。
<16:00:00> 実験を開始。波戸崎研究員が活性化範囲内に入り、即座にSCP-855-JPが開放される。ほぼ同時に1体のSCP-855-JP-A個体が外部に飛び出し、勢いにたじろぐ波戸崎研究員を見て大袈裟に驚くような身振りをする(贈与対象者がSCP-855-JPの直前で待機していた場合の一般的反応)。
<16:00:30> SCP-855-JP-A個体は“Birthday Surprise!”と発声して拍手し、頭部が分割される。波戸崎研究員が出現したプレゼントボックスを受け取り、SCP-855-JP-A個体は再度拍手。通常であれば、このままSCP-855-JP-A個体はSCP-855-JPの内部空間へと帰還するはずだった。
<16:00:40> SCP-855-JP-A個体は2つに分かれて地面に落ちた頭部を拾い上げ、再び首の上で接合させる。断面は観測可能な現象を伴うこと無く元通りに一体化した。予測されていなかった行動を受け、エージェントらが緊張した面持ちになる。
<16:01:43> SCP-855-JP-A個体は阿天坊氏に急速に接近し、氏を固く抱擁した。動作が突然であったことからエージェントらの反応は後手に回ったが、攻撃は近接している阿天坊氏が巻き添え被害を被る可能性があること、また氏に対する直接的危害を加える様子がこれ以上見られないことから、警戒態勢を取ったまま状況を見守る。
<16:02:15> SCP-855-JP-A個体の眼球部より、大量の液体流出を確認。後の分析で、この液体は薄い水色の着色が施された濃度30%の塩水であることが確認された。阿天坊氏が一旦口を開くが、そのまま何も言わず、SCP-855-JP-A個体の背中をさする。
<16:03:05> SCP-855-JP-A個体が阿天坊氏を解放。個体はその後、「右手の指を4本立てる」→「右手の指を2本、左手の指を3本立てる」→「大きく円を描くような仕草」→「何かを上空に撒き散らすような仕草」を取り、阿天坊氏に手を振りながらSCP-855-JP内部へと帰還する。阿天坊氏がSCP-855-JP-A個体を呼び止めようとして、エージェント・星に制止される。
<16:03:32> SCP-855-JP、不活性化。SCP-855-JP-A個体は閉鎖直前まで阿天坊氏に手を振り続けた。
[記録終了]
結: 実験後の聞き込みにおいて、阿天坊氏はSCP-855-JPの内部から流れている“Pop Goes the Weasel”のメロディおよびテンポが、問題のビックリ箱に内蔵されていたオルゴール仕掛のそれと完全に同一のものであったと証言した。贈与物品は精密機構を備えた鳩時計であり、徹底した検査で異常性は無いと見做された後、波戸崎研究員へと再贈呈された。
阿天坊氏は翌2018/04/23の誕生日まで、レベル0職員としての仮身分で拘留下に留まることに合意した。
Footnotes
1. 逃走のリスクを考慮して、Dクラス職員を対象とする実験は認められていません。実験対象として徴用される職員の基準は、財団倫理委員会提案████.16 (2016/08/21、今出川汐音いまでがわ しおね、“Anomalousアイテムと軽度異常性保有職員の接触による交差汚染対策の抜本的見直しに関する第十次提言”)に基づいて策定されたガイドラインに準拠するものとします。
2. 人感センサー自体は事案発生のおよそ3ヶ月前から故障しています。
3. オレンジジュース、アップルジュース、グレープフルーツジュース、コーラが確認されています。
4. 活性化中に対象者が死亡した場合の反応をDクラス職員を用いて調査する申請は、不要な人的資源の浪費であるという倫理委員会からの勧告を受けて却下されました。
5. 露出する頸部断面には、外見的に樹木の年輪と同一の模様が見られます。
6. この現象の詳細については、高飛ガオ フェイ 著 “実存的シャットダウン ― 時空間接続の遮断に伴う消失現象の体系的類別”(2001)を参照してください。
7. 夏物のワンピースシャツ、ボトルシップの製作キット、シリーズ物の推理小説、ラジコン飛行機、漫画“█████████”の成人向け同人誌の詰め合わせなどが確認されています。完全なリストは文書855-JP-Gを参照。
8. 単純計算でおよそ120体の個体が出現していたことになります。
9. 総出現数は単純計算でおよそ540体。うち1/4が財団エージェントまたは偶発事故によって無力化されたと見做されています。
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scp-856-jp |
評価: +166+–x
アイテム番号: SCP-856-JP
エージェント・エドモンドによって送信されたSCP-856-JP内の画像
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在、SCP-856-JPへの侵入経路の捜索は機動部隊と10名3名のエージェントによって行われています。研究スタッフはSCP-856-JP異空間班とSCP-856-JP通信班の二チームに分かれて、それぞれの業務を行ってください。異空間班のスタッフ長には梁野博士、通信班のスタッフ長にはペインハイル博士が割り当てられます。また、エージェント・ベルナドットの所持していた携帯電話をオブジェクトに認定する議論はペインハイル博士を議長に置いた上でサイト-076の第5会議室にて行ってください。SCP-856-JP異空間班はSCP-856-JPに関する報告をする際、エージェント・エドモンドからの定期報告を元にそれらを行ってください。20日以上の期間、エージェント・エドモンドからの通信が断絶した場合、24時間待機した後にエージェント・エドモンドの死亡報告書を作成してください。その後、エージェント・エドモンドの救出作戦は凍結されます。エージェント・エドモンドの救出作戦は凍結されました。
現在、エージェント・エドモンドは公式の記録では死亡したことになっており、遺族関係者などには隠蔽工作を行ってください。
説明: SCP-856-JPの全貌は正確には判明していません。SCP-856-JPは、20██/3/██/AM11:34にエージェント・エドモンドが失踪した事件をきっかけにその存在が明らかとなりました。当時、エージェント・エドモンドは、エージェント・ベルナドットと共に███県██市の███山の森林部でSCPオブジェクトと思われる実体(現在のSCP-███-JP)が発見されたという報告を受け、その現地調査のために出動していました。その後、エージェント・ベルナドットがSCPオブジェクトを発見し捕獲、その連絡をエージェント・エドモンドが行おうとした際に当人が失踪しました。当初、SCP-███-JPの影響による被害を受けた結果、███山内で負傷したのではないかという見解の元、現地の警察と協力した捜索活動が行われましたが、その10日後にエージェント・エドモンドからエージェント・ベルナドットの携帯電話に連絡が来たため、現状の把握が可能になりました。
現在、SCP-856-JPに関する最も有力であると思われる見解が二つ存在します。一つ目はSCP-856-JPは植物以外の生物が一切存在しない人類が現在生活している世界とほぼ同様の地形、大気、建造物などを有していると思われる異空間であるという説、二つ目はSCP-856-JPに関する情報の交換が行われた通信そのものがオブジェクトであるという説がそれに該当します。その為、財団上層部によりSCP-856-JP異空間班とSCP-856-JP通信班という二つの研究チームが設立され、現在これらのチームによってオブジェクトに関する議論が継続されています。(この報告書はSCP-856-JP異空間班の担当であるため、SCP-856-JPが異空間であるという説を肯定した上での概要を記載します。SCP-856-JP通信班の報告書はペインハイル博士の許可を得た上で閲覧してください。)
エージェント・エドモンドの報告から、SCP-856-JPは地球と同様の面積と環境、大陸、海洋を有していると予想されます。また、世界各国の現在の建築物、地形などはエージェント・エドモンドの視認範囲外で常に更新されていることが判明しています。現在、SCP-856-JP内に侵入する方法は判明しておらず、エージェント・エドモンドの消失地点の捜索を決行しましたが、侵入および消失に繋がる手がかりを発見することは出来ませんでした。また、SCP-856-JP内部では一部現代の技術では建築することが不可能であると思われる建築物などの存在も確認されており、SCP-856-JP内部と我々の生活している世界ではいくつかの相違点が存在するものと予想されています。現在、建造物以外の相違点は発見されていません。また、SCP-856-JP内部では太陽の動きが一切観察されないという特徴を有しており、その為、エージェント・エドモンドがSCP-856-JP内に侵入してからおよそ█████時間以上経過した今でも、気温:およそ24度、時刻:東京の午後7時台、月:東京の5月中旬の状態の太陽の位置を維持していることが判明しています。また、SCP-856-JP内では、移動距離に関係なく常に太陽を観察することが可能であり、いかなる地方、国、山岳部に移動した場合も前述した月と時間の気温と太陽の位置を維持しているという現象が確認されています。(高山地帯においても、積雪は確認されていますが、前述した気温を維持しています。)天候の変化は確認されていません。
過去にエージェント・エドモンドにはSCP-856-JP内部の調査と侵入方法および脱出方法の特定任務が割り当てられ、SCP-856-JP内部の状況やデータの収集はエージェント・エドモンドの所持する携帯電話からの連絡を利用して行っていました。なお、これらの連絡はエージェント・ベルナドットの携帯電話でのみ受信が可能であり、なおかつ、エージェント・ベルナドットが応答した時のみ通話/録音が可能になるという現象が確認され、これらの原理などについても調査が行われていました(こちらからの通信、およびエージェント・ベルナドット以外の応答は遮断されます)。
現在、エージェント・エドモンドからの通信は断絶しており、財団の記録上死亡したことが決定しています。今後、SCP-856-JPに関する研究と調査活動は継続されますが、一部制限がかかります。(制限に関する内容はプロトコル856-JP-Worldを参照してください。また、新たなエージェントがSCP-856-JPの担当に割り当てられた場合、担当研究者は制限に関する資料を該当するエージェントに配布してください。)
以下はエージェント・エドモンドからの報告の抜粋です。全ての資料を閲覧する場合は梁野博士の許可を得た上でサイト-076資料室に報告してください。なお、抜粋された報告書の内容は主にSCP-856-JP内で新たな発見がなされた報告および最終報告を記載しており、研究資料の保存を目的とした通信班の申請によりほぼ内容の編集は行っていません。
エージェント・エドモンドの報告記録の抜粋
+ エージェント・エドモンドの報告記録1
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<録音開始, [(20██/3/██)天候:雨 状況:機動部隊による第10回目の捜索活動中 ]>
エージェント・エドモンド: こちらエージェント・エドモンド。聞こえる?
[雨音が交じる]
エージェント・ベルナドット: こちらエージェント・ベルナドット! おい、エド! お前今何処にいる!!
エージェント・エドモンド: いやあ、何処と言われても。皆目見当がつかなくて[小さな笑い声]。
エージェント・ベルナドット: 笑い事じゃねえだろ!! 兎に角、今いる場所の特徴を言え! すぐに捜索隊に連絡して
エージェント・エドモンド: いや、多分それは無理だ。
エージェント・ベルナドット: え!? なんでだよ!
[暫くの間沈黙]
エージェント・ベルナドット:おい、どうしたんだよ、黙りこくって
エージェント・エドモンド: いや、実を言うと、この期間、僕はあのオブジェクトを捕獲した場所から殆ど動いていないんだ。多少、山下の町の方へは降りて行ったりはしたけど、あれから誰とも会わなくて。それに、いろいろ試したんだけど、どこの電話を使っても無線を使っても、誰とも通信が出来ないんだ。やっとこの携帯で君の携帯とを繋げられるってことがわかったところなんだよ。
エージェント・ベルナドット: 動いてないって、いや、そもそも通信できないって、なんで
エージェント・エドモンド: いやあ、本当に動いていないんだよ? 君がこの前、任務のために罠を仕掛けた場所に今立っているんだけど、誰にも会わないんだ。君の言っている捜索隊の人たちにも、街の住人にも。何を言ってるのかさっぱりだろうけど、本当に。人っ子一人いないんだ。民家の中を探索してみたけど、恐らく既存の家具が置かれているだけで、生活の痕跡もない。人間なんて、この期間に誰一人として会っていないんだよ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]そんな馬鹿な話あるかよ。そんなの、
エージェント・エドモンド: それに、もう一つ不可解なことがある。
エージェント・ベルナドット: もう一つ?
エージェント・エドモンド: うん。ずっと夕焼けなんだ。ずっと。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]ずっと?
エージェント・エドモンド: 僕の今所持している腕時計の時間が正しければ、そう、僕がそっちからいなくなってからずっとだね。うん。間違いない。大体の時間で10日は経っていることになるのかな? あいにく日付までは分からなくて。途中で見つけた公園の時計も、僕が失踪したであろう時間で止まっているし、雑貨屋の中で見つけたカレンダーも、僕が失踪したであろう日付から白紙だったし。
エージェント・ベルナドット: それって
エージェント・エドモンド: うん。普通じゃありえないことだ。つまり、そういうことだろうね。兎に角、こうなった以上、君は僕との会話の記録を本部に提出して、それから新たなSCPオブジェクトの申請を行ってくれ。多分、僕は相当な期間こっちにいなくちゃいけなくなると思うから。あと、連絡はどういうわけか君の携帯としか出来ないみたいだから、恐らく定期報告の義務が僕と君、もしくは担当の研究員に課せられると思う。だから、そこのところは担当になった博士たちと相談した上で
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: ん? ねえ。ベル? 聞こえてる? 電波が悪いのかな。なんて、そもそも繋がること自体が奇跡みたいなもんか。[笑い声]
エージェント・ベルナドット: なんで、
エージェント・エドモンド: え。
エージェント・ベルナドット: なんで[啜り泣く]なんで、そんなに落ち着いていられるんだよ。なんで、そんな状況でいつも俺と話すみたいな会話が出来んだよ!!
エージェント・エドモンド: え、いや、そう言われても。
エージェント・ベルナドット: お前はいつもそうだよ!! どんな時でもすました態度でいやがって!たまには人間らしく、怖がったりだとか、動揺したりだとか、何でもいいから、生身の人間らしい行動をとってみやがれ!! そんな[息が詰まる]そんな、報告義務だとか、オブジェクトの申請だとか、そんな事務的なことじゃなくてよう! もっと、もっと他に言うことがよう!!俺が[沈黙]俺がこの10日の間、どんな気持ちでいたか分かってんのか!? 大事な相棒が、いきなり目の前で消えて、捜しても、捜しても捜してどこにもいなくて。それで、やっと、やっと連絡がついたと思ったらこれかよ! ふざけんな! 何冷静になって行動してんだよ! 何仕事の話なんかしてんだよ! 何もう諦めたみたいなこと言ってんだよ!! なんで[啜り泣く]なんで!
エージェント・エドモンド: エージェント・ベルナドット。
エージェント・ベルナドット: なんで! どうして!
エージェント・エドモンド: エージェント・ベルナドット!!
[お互い無言になる]
エージェント・エドモンド: 新たなオブジェクトを発見した以上、我々には財団の職員として、この現象と実態を明確に調査し、本部に報告する義務がある。そして、それは私がこのような状態に陥ってしまった時から、いや、我々が財団職員として就任した時から常に発生している。このような状況に置かれた時だからこそ、我々はより一層冷静に行動しなければならない。何よりも優先すべきは、10日ぶりの再会を喜び合うことでもなく、元の世界に帰れなくなってしまったことをお互いに嘆くことでもなく、このオブジェクトを収容するために尽力することだ。これは我々の、財団の職員としての我々に課せられてた責任だ。今、この場で、この状況で、財団の職員にあるまじき言動は言語道断。そのような失言、するべきではない!
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: 返事をしろ! エージェント・ベルナドット!!
エージェント・ベルナドット: ああ。[沈黙]ああ、分かっているよ。エージェント・エドモンド。今のは流石に失言だった。すまん。でも[沈黙]
エージェント・エドモンド: [沈黙]分かってくれたならいい。 [沈黙]取り敢えず、報告はしておいてくれ。そろそろ携帯の充電が切れそうなんだ。電気は通ってるみたいだから、今後も通話はできると思う。それじゃ。
<録音終了>
+ エージェント・エドモンドの報告記録24
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<録音開始, [(20██/5/1█)場所:サイト-086]>
エージェント・ベルナドット: もしもし、こちら通信担当のエージェント・ベルナドット。
エージェント・エドモンド: こちら、SCP-856-JP内部調査担当のエージェント・エドモンド。よかった通じた。どうやら僕の失踪地点の距離と携帯の電波の関係は度外視されているみたいだね。これも調査記録として残しておいてよ。
エージェント・ベルナドット: ああ。だが、私語は控えろ。この通信はあくまで報告書作成の為の記録だ。通信が遅れていたみたいだったが、何か問題でもあったのか。それと今言った失踪地点との距離についても報告しろ。
エージェント・エドモンド: あ、うん。ごめん。いや、それといった問題はない。気温も、時間帯も、太陽の位置も、前回報告した時の状態を維持し続けている。今回通信が遅れた理由は他にある。今、中国にいるんだ。まあ、こっちの世界の方のだけど。
エージェント・ベルナドット: 中国?
エージェント・エドモンド: 少し、この世界の規模について調べてみようと思ってね。一応、僕の失踪地点と酷似した場所は隈無く調べてみたんだけど、そこ以外の場所もどうやら再現、って言っていいのか分からないけど、存在しているぽかったから。だから、それが一体どこまでになるのかが気になって。案の定、海外まで行くことが出来たよ。
エージェント・ベルナドット: でも、どうやって
エージェント・エドモンド: 港に置いてあった漁船を借りたんだ。まるで新品みたいだったよ。誰にも使われた形跡はなかった。恐らく、停船されていた場所は、そっちの世界の場所と同じなんじゃないかな。多分、近々こっち側とそっちの類似点を調べていく必要がありそうだ。
エージェント・ベルナドット: 分かった。報告書に纏めておく。[ため息]それにしても、お前はいつも無茶ばかり。[咳払い]いや、何でもない。それで、その他に何か発見はあったか?
エージェント・エドモンド: 定期報告でも言ったとおり、こちらにある物や建物、その中にある家具や道具、それらに経年劣化の痕跡は一切見られない。本当に新品同然だ。傷ひとつ見当たらない。誰にも使われたことがない位に。途中、乗り捨ててあるように駐車されている車もあるんだけど、ガソリンも満タンで、走行距離もゼロのままだった。それに、僕がこうやってそっちに連絡出来ていることからも分かるように、電気系統もしっかりと機能しているみたいだ。
エージェント・ベルナドット: 発電所などは調べたのか?
エージェント・エドモンド: 勿論。███県から出て、その途中にあったダムに侵入してみた。
エージェント・ベルナドット: 結果は?
エージェント・エドモンド: 不思議なことに、一切機能していなかった。人がいた形跡も見当たらないし、設備も最近出来たものみたい綺麗だった。まあ、誰もいないみたいだった分、埃みたいなのは積もっていたけどね。けど、にも関わらず、そのダムから███km離れた変電施設には電気が通っていることが確認できた。この現象の境界も調べようかとも思ったけど、詳しく確認するための機材が今のところ入手出来ていないから、今後の課題になるだろう。
エージェント・ベルナドット: 分かった[鉛筆で何かを書く音]それと、エージェント・エドモンド。
エージェント・エドモンド: ん? 何?
エージェント・ベルナドット: 今までこの現象についての報告で、建造物、知的生命体の有無についての報告を主に行ってきたが、食い物はどうしてるんだ?
エージェント・エドモンド: 食い物?
エージェント・ベルナドット: ああ。担当の博士からの要望でそっちの食物、もしくは食品の有無についても報告してほしいと言われた。今後、そちら側に侵入することが出来た場合を考慮して、調査団を派遣する際になるべく多様な情報が必要だとのことだ。それで、どうなんだ。
エージェント・エドモンド: [沈黙]
エージェント・ベルナドット: おい。どうした。そっちにあるのか? まあ、あるにしても誰もいない店の中とかだろうから、別に店から盗んでるわけじゃないんだし
エージェント・エドモンド: 減らないんだ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]は?
エージェント・エドモンド: ここ数ヶ月、一切空腹という感覚を味わっていない。勿論、こっち側には食べ物なんて無い。スーパーの中も、デパートの食品売場にも、何もない。何故か、調理施設とか器具はそのまんま置いてあるんだけど、食べ物といえるものなんて一つも。畑だろう場所はあるけど、何も植えられていない。山菜も探してみた。駄目だったけど。でも、減らないんだ。一日中歩きまわっても、多少の疲労感はあるものの。減らないんだ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]それは、そっちの世界の影響か?
エージェント・エドモンド: 分からない。でも、僕は今そんな物を摂取しなくてもこうやって生命活動を維持し続けることができていることは確かだよ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]そうか。
エージェント・エドモンド: それとさ、そう思うと、最近こういった仮説が浮かんでくるんだ。
エージェント・ベルナドット: 仮説?
エージェント・エドモンド: うん。僕、いや僕という存在は、もうとっくの昔に終わっているんじゃないかってね。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]終わっている?
エージェント・エドモンド: うん。そもそも、今、僕がいるこの世界というものが本当に存在しているのかすら、こうしていると怪しくなってくるよね。この携帯を通じて、唯一君と交信することが出来て、でも、もしかすると僕という存在はあの時から既に消滅していて、この君の携帯という物を通じて僕という存在をトレースした音声のみが流れてくる、そういった類のオブジェクトなのかもしれないし、もしかしたらこっちは死後の世界なのかもしれない。まあ、死後の世界なんて証明できるわけもないから、財団の職員としてはあまり言うべきことじゃないのかもしれないけど。どちらにしろ、僕という存在は完全に消えているということで共通している。まあ、この考え自体が正しいのかどうかなんて、今の僕にも君にも確かめることなんて出来ないんだけど、それもひとつの可能性としてあるんだよ。もしかしたら、君の携帯自体が何かしらの影響を受けていて、ただこういった音を発しているっていう
エージェント・ベルナドット: やめろよ。
エージェント・エドモンド: え。
エージェント・ベルナドット: そんな、話。するんじゃねえよ。[沈黙]そんな、くだらねえこと考えてる暇あったら、とっととこっちに戻ってくる方法を見つけろ。[沈黙]じゃねえと、俺が先にその方法を見つけて、直接お前の顔面を殴りに行ってやる。だから、
エージェント・エドモンド: だから、そんなこともう二度と言うなって?
[暫くの沈黙]
エージェント・エドモンド: わかったよ。もう言わない。約束する。絶対にここから帰ってくる。[笑い声]私語は慎めって、君が言ったのにね。これじゃあ、お偉いさんに怒られるね。
エージェント・ベルナドット: ああ。
エージェント・エドモンド: やっぱり君は熱いなあ。この職場じゃ確実に浮くよ。
エージェント・ベルナドット: だから、お前といつも一緒に、何年もやって来たんだろうが。
エージェント・エドモンド: お互い、浮いた物同士だもんね。そろそろ、新しい拠点を見つけなきゃ。落ち着いたらまた連絡する。じゃあ。
<録音終了>
+ エージェント・エドモンドの報告記録112
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<録音開始, [(20██/11/█)場所:サイト-076・第4会議室]>
エージェント・エドモンド: もしもし!? ベル!? すぐに知らせようと思ってたんだけど、安定して携帯を充電できる場所がなかなか見つからなくて! でも凄いものを見つけたんだ!
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: ん? どうしたの? ベル。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]エージェント・エドモンド。今からSCP-856-JPに関する活動内容の報告を行う。いいか?。
エージェント・エドモンド: え、うん。別に問題ないよ?
エージェント・ベルナドット: エージェント・エドモンド。O5の決定により、本日付けでエージェント・エドモンドの救出作戦に関する計画の凍結準備、そして、SCP-856-JP内への侵入方法の調査活動に関する予算削減が決定した。侵入経路の捜索を担当していた機動部隊は全て撤退。担当エージェントを3名のみ指定し、今後彼らが調査を行う。SCP-856-JPの記録は担当研究者によって保管され、SCP-856-JPによる更なる影響が見られない限り、この状態を現在の収容状態として維持する。その為、エージェント・エドモンドをSCP-856-JPと同様のオブジェクトとして認識し、収容すること。以上だ。
エージェント・エドモンド: [沈黙]そうか。
エージェント・ベルナドット: 凍結準備と言っても、本部はほぼ全ての作業と人員の配置を取りやめる。凍結準備というものは建前であって、ほぼ、完全にお前の救出作戦は取り止めになっているも同然だ。すまん。俺の、俺の力不足だ。くそったれ。
エージェント・エドモンド: 良いよ。仕方がない。僕が消えてから、何年経ったっけ。
エージェント・ベルナドット: 言うな。考えたくもない。それに、これ以上話したって無駄だ。[沈黙]報告を続行する。建造物以外での発見はあったか?
エージェント・エドモンド: [沈黙]まあ、僕もそろそろだとは思っていたけどね。こんな、一エージェントに構っている時間なんて、財団からしたらただ時間を無駄にするだけだから。
エージェント・ベルナドット: おい。だから[咳払い]エージェント・エドモンド。私語を慎め。これはSCP-856-JPの公式の報告内容として
エージェント・エドモンド: 僕らがこうしている間にも、世界中で僕らが収容しなければならない新たなオブジェクトが発見され続けているんだ。今、一体何処にあるのか、どうやって入るのかも分からない場所なんかに金と労力を浪費するより、今、目の前にある確かな物を収容することの方が最優先事項だよ。多分、僕の任務は継続するんだろうけど、この世界の収容に関しては、もう財団の方も諦めてるのかな。[沈黙]仕方ないよ。これも、財団のエージェントとしての勤めさ。多分、そろそろ僕の家族にも、僕の死亡についての情報が流されてる頃じゃないかな。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]エージェント・エドモンド。
エージェント・エドモンド: うん。ごめん。やっぱり、君と話してるとおもわず、あ。ごめん。
エージェント・ベルナドット: 兎に角、今は報告を行ってくれ。
エージェント・エドモンド: あ、うん! とうとう、こっちにしかない物を、つまり僕らの世界とこちら側の世界との相違点を見つけたんだ!
エージェント・ベルナドット: 分かった。兎に角、落ち着いて、丁寧に説明しろ。お前が興奮してたんじゃ、記録として成り立たなくなる。一体どんな違いがあった。
エージェント・エドモンド: うん。まあ、いや、どう表現すればいいのかわからない形をしてるんだけど、言ってしまえば何かしらの建造物だよ。でも、明らかに物理法則を無視している造りをしているのは確かだ。撮影して、そちらにそのデータを送信しようとしたんだが、何か強い電磁波か電波障害みたいのが発生しているらしく、なかなか出来ない。辛うじてそっちに電話をすることだけは出来たけど。しかし、これは大発見だ! こっちに来て、初めて 僕達の世界との相違点を見つけられた! もしかしたら、この世界について、更に何か分かるかもしれない! もう少しかかるかもしれないけど、これは大きな一歩だよ! あ、因みに、今いるところはアメリカのロサンゼルスで確か町の名前は[沈黙]ベル?
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: [沈黙]心配いらないよ。僕は大丈夫だから。
[しばらくお互いに黙る]
エージェント・ベルナドット: [沈黙]続けてくれ。
エージェント・エドモンド: [沈黙]うん。現在の場所は、アメリカのロサンゼルス。町の名前は███・█████だ。建造物の特徴は、全体的に流線型を維持している。表面は白く、大理石と似ているかもしれない。壁面表面への接触を試みた際、見た目とは裏腹に液体のような挙動をした。まあ、波立ったりとか、腕を潜らせることが出来た。その際、建造物の崩壊などは無く、今現在のその形を維持している。高さはおよそ20m。目測だからどこまで正確かは判断しにくいけど、後日機材を揃えて詳細な記録を報告するよ。それと、さっきも言ったけど、明らかに重力を無視した立ち方をしてるのは確かなんだ。どうやって地面から接地面が離れずに建っているのか検討もつかない。大体の情報は以上かな。
エージェント・ベルナドット: 分かった。報告書にまとめる。
エージェント・エドモンド: 了解。それじゃあ
エージェント・ベルナドット: なあ、エド。
エージェント・エドモンド: ん?
エージェント・ベルナドット: [沈黙]すまん。
<録音終了>
+ エージェント・エドモンドの報告記録1412
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<録音開始, [(20██/4/2)場所:サイト-076]>
エージェント・ベルナドット: 今から、SCP-856-JPに関する定期報告を行う。こちら、担当のエージェント・ベルナドット。
エージェント・エドモンド: こちら、担当のエージェント・エドモンド。今いる場所は、地球上でのアフリカ大陸、ナイロビと同様の地点であると思われる。
エージェント・ベルナドット: 何か変化はあったか。
エージェント・エドモンド: いや、特には無いよ。気候も安定している。未だ知的生命体、および生物の発見には至っていない。
エージェント・ベルナドット: そうか。その他に報告することはあるか?
エージェント・エドモンド: もう、既に地球を一周しちゃったからねえ。もうこれといって、伝えることと言っても。今後、こちら側に何かしらの変化がない限り、無いだろうね。[沈黙]もう、何年も同じことをしてたら、適当にもなるさ。仕方ないよ。
[暫くの間沈黙]
エージェント・ベルナドット: これ以上報告内容がないのなら、これにて本日の報告を終了する。ご苦労だった。エージェント・エドモン
エージェント・エドモンド: ねえ。ベル。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]どうした。
エージェント・エドモンド: ちょっとね。思うことがあるんだ。[沈黙]この世界。何かに似てる気がするんだよ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]似てる。
エージェント・エドモンド: うん。こう、あの夕焼けの世界をずっと眺めていると、何故か、凄い懐かしい気分になるんだ。
エージェント・ベルナドット: そうなのか。
エージェント・エドモンド: ねえ、ベル
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: ベル?
[暫くの間沈黙]
エージェント・ベルナドット: エド。もう、あまり、個人的な話はしないほうがいい。[沈黙]これ以上勝手に話し続ければ、監査の手が入って通信が終了させられる。それに、前、お前が言っていたように、この通信自体がオブジェクトなのではないかっていう風潮も広がりだした。下手をすると、この携帯電話自体を収容するハメになるかもしれん。そんな事になったら、俺は[沈黙]
エージェント・エドモンド: [小さい笑い声]財団の職員として、あるまじき言動だね。もし、そうなったらそうなっただよ。上の決定は絶対だ。
エージェント・ベルナドット: だから、エド。もう
エージェント・エドモンド: ベル。詩は、まだ書いてるのかい?
エージェント・ベルナドット: [沈黙]え?
エージェント・エドモンド: 書いてるか、どうか。それだけ応えてくれ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]いや、全然。
エージェント・エドモンド: どうして?
エージェント・ベルナドット: [沈黙]どうしても何も
エージェント・エドモンド: まだ、自分のキャラじゃないとか言ってるの? 君の詩はあんなに素晴らしいのに。僕は好きだよ? あれは皆傑作揃いだ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: ベル?
エージェント・ベルナドット: あんなもの書けたって。何も出来やしない。[沈黙]お前を、助けることも。何も。
[暫くの沈黙]
[雨音が交じる]
エージェント・エドモンド: あ、雨だ。
エージェント・ベルナドット: 何?
エージェント・エドモンド: [沈黙]そうか。
エージェント・ベルナドット: おい、どうしたエド、いや、エージェント・エドモンド。何が起きているのか報告しろ。
エージェント・エドモンド: だから、ここはいつもそうなんだね。
エージェント・ベルナドット: おい、何が起きてる!
エージェント・エドモンド: だから、僕らは通じ合えたんだ。
エージェント・ベルナドット: お前、何言って
エージェント・エドモンド: 今、僕は確信したよ。この世界が、何でこうも懐かしいのか。この世界が、何であの日の夕焼けのままで止まっているのか。
[ノイズが交じる]
エージェント・ベルナドット: おい、エージェント・エドモンド。それはどういうことだ。何がわかったっていうんだ。おい。エージェント・エドモンド。エド!
エージェント・エドモンド: やっぱり、僕は、消えてしまっていたのかな。ねえ、ベル。また、あの詩を書いてよ。僕、楽しみにしてるんだか
[通信が断絶する]
エージェント・ベルナドット: おい。おい、エド!! おい! 返事をしろ!! おい!! おい!!
<録音終了>
追記1: 20██/8/8、エージェント・ベルナドットの申請により、再度エージェント・エドモンドの失踪した地点を捜索した結果、エージェント・エドモンドの物と思われるバックパックが発見されました。遺留品の状態は極めて悪く、およそ████年以上経過していると思われます。現在、発見された遺留品はサイト-076の保管用ロッカー内にて管理されています。
追記2: エージェント・ベルナドットの個人で所有し、執筆していた詩集の中に、エージェント・ベルナドットとは異なる筆跡の文章が発見されました。調査の結果、エージェント・エドモンドの筆跡と一致。また、過去にエージェント・エドモンドが報告したSCP-856-JP内の様子とエージェント・ベルナドットの詩集の内容にいくつか類似する点が見られることが発覚し、現在、エージェント・ベルナドットの詩集を保管し調査を行っています。
これらの事象に伴い、エージェント・ベルナドットには尋問、精密検査、詩集の編集を行わせるなどの実験を行いましたが、異常性は認められませんでした。現在、エージェント・ベルナドットの身柄はサイト-███の通常隔離室にて拘束されています。
+ 追加されていた文章
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追加されていた文章
僕らはいつも一緒だった。
そして、僕は君の紡ぎだすあの言葉の世界が大好きだった。
君の生み出した、君の見ていた世界が、僕にはまるで大きな水晶を通して見た時のように、七色に輝いていた。
君は、自分のこの感性を自分で笑っていた。
男のくせに、こんなものばっかし書いてるなんて笑われてもしょうが無い、と。
だけど、僕はそうは思わない。
だって、君のこの世界はこんなにも美しいんだから。
だから、これからもこの世界を紡いでいって欲しい。
これは、君の世界だ。
僕は、君と共にずっと生きていくよ。
僕は、いつも、いつだって、君のそばにいるよ。
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scp-857-jp |
評価: +33+–x
SCP-857-JP
アイテム番号: SCP-857-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-857-JPはサイト-8102の陸上生物収容室内に収容してください。収容室には監視カメラと動体センサを設置し、警報システムを機械化してください。SCP-857-JPを視認する際は、録画された動画を確認するのみにとどめ、リアルタイムの映像を視認しないでください。収容室のゲートには最低2名のセキュリティ要員と監視カメラを設置し、収容室内の立ち入りを禁じてください。SCP-857-JPには毎日1回、牛もしくは豚の肉50kgを給餌してください。給餌の際には自律化改造を施したFoster-Miller社製ロボットTalon MK IIを使用し、収容室内の清掃はiRobot社製の清掃ロボットを使用してください。ロボットが故障した場合に備え、予備のロボットを用意してください。
説明: SCP-857-JPは認識災害能力を持つ1匹のヤギ(学名:Capra Linnaeus)です。頭部と頸部が異様に発達しており、生殖器は存在しません。頭部には眼球が存在せず、SCP-857-JPは未知の手段で周囲の状況を把握しています。一般的なヤギと異なり、SCP-857-JPは肉食です。認識災害の効果範囲は5mから10mで、視認した瞬間に異常性が発現します。監視カメラのリアルタイムな映像を視認した場合でも効果は同様です。このSCP-857-JPを視認した生物(以降“SCP-857-JP-A”と呼称)は一時的に視力を失い、SCP-857-JPに対して求愛行動をとります。その後SCP-857-JP-Aは自身をSCP-857-JPが捕食しやすい位置、頭の真下などに移動して停止し、SCP-857-JPはSCP-857-JP-Aを捕食します。この能力は生物全般に作用するため、人間にも同様の効果をもたらします。
+ 実験ログ
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実験記録01
対象: SCP-857-JPとオスのヤギ
実施方法: オスのヤギをSCP-857-JPの収容室に入れ、監視カメラで観察する。
結果: オスのヤギはSCP-857-JP-Aに変化、オブジェクトに求愛行動を取った後捕食された。また、映像をリアルタイムに監視していた██研究員をはじめ複数がSCP-857-JP-Aに変化、捕食された。
分析: 以降はリアルタイム映像の目視を禁ずる──██博士
実験記録02
対象: SCP-857-JPとメスのヤギ
実施方法: メスのヤギをSCP-857-JPの収容室に入れる。映像はリアルタイムに確認せず、録画されたものを確認。
結果: メスのヤギはSCP-857-JP-Aに変化、オブジェクトに求愛行動を取ったのちに捕食された。また、監視カメラの映像は録画したものであれば認識災害は発現しない事を確認できた。
分析: オブジェクトは同族の生物や人間に影響を与える事が確認できた──██博士
実験記録03
対象: SCP-857-JPとオスのヤギとメスのヤギ この2頭はつがいとなっている。
実施方法: 2頭をSCP-857-JPの収容室に入れる。
結果: メスのヤギとオスのヤギはSCP-857-JP-Aに変化、オブジェクトに求愛行動を取ったのちに捕食された。
分析: 既にパートナーが存在する場合もオブジェクトの影響が確認できた──██博士
実験記録04
対象: SCP-857-JPと妊娠中のメスのヤギ
実施方法: メスのヤギをSCP-857-JPの収容室に入れる。
結果: メスのヤギはSCP-857-JP-Aに変化、オブジェクトに求愛行動を取ったのちに捕食された。
分析: 妊娠中であってもオブジェクトの影響が確認できた──██博士
実験記録05
対象: SCP-857-JPとD-39835(男性 ヘテロセクシャル)
実施方法: D-39835をSCP-857-JPの収容室に入れる。
結果: D-39835はSCP-857-JP-Aに変化、求愛行動を行った後捕食される。
分析: 認識災害が人間にも効果を発揮するという事を再認識した──██博士
実験記録06
対象: SCP-857-JPとD-22543(女性 ヘテロセクシャル)
実施方法: D-22543をSCP-857-JPの収容室に入れる。
結果: D-22543はSCP-857-JP-Aに変化、求愛行動を行った後捕食される。
分析: やはり遺伝上の性別は関係ない、オブジェクトの影響は発現する──██博士
実験記録07
対象: SCP-857-JPとD-34578(元男性の女性 トランスジェンダー)
実施方法: D-34578をSCP-857-JPの収容室に入れる。
結果: D-34578はSCP-857-JP-Aに変化、求愛行動を行った後捕食された。
分析: 指示通りに実験を行ったが、そもそもなぜこんな実験が?実験01で人間にも認識災害の影響が及ぶということは確認済みでは?──██研究員
実験記録08
対象: SCP-857-JPとD-89932(女性 収監中に妊娠が発覚)
実施方法: D-89932をSCP-857-JPの収容室に入れる。
結果: 倫理委員会からの通達により、実験は無期限の凍結となった。
分析: 実験担当者の██博士を即時拘束、尋問する──道策管理官
補遺: SCP-857-JPは、東京都██市内に於ける社会実験「ヤギの放牧による草地の除草」の際に、放牧されたヤギの中に紛れ込んでいた事で財団の興味を引きました。SCP-857-JPにより、██名の死者が出ました。財団は標準的カバーストーリー「動物園からの猛獣の脱走」を流布、機動部隊を派遣し確保・収容しました。
+ インタビューログ
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以下は、生存者からのインタビューです。
対象: 中山██氏(性別は男性)
インタビュアー: エージェント██
付記: インタビューは財団フロント経営の病院内にて行われました。
<録音開始, 20██/██/██>
エージェント██: 中山さん、お加減はいかがですか。
中山氏: ああ、もう心配ないよ。それより“彼女”はどこに行ってしまったんだ?
エージェント██: 彼女?それは一体誰の事ですか?ご友人が事件現場に居たのですか?
中山氏: 違う、そうじゃない。”彼女”は突然現れたんだ、俺も、俺も彼女を見た。他の奴らも彼女を見ていた、突然だ。突然の事だったんだ。
エージェント██: 彼女とは……「これ」の事ですか?(SCP-857-JPの写真を見せる)
中山氏: はあ?アンタ何言ってんだ?これはヤギだろ?彼女は全然違う、黒く長い髪に季節外れのワンピースを着て、草の上で微笑んでた。俺はそれを見た途端、視界が真っ暗になったんだ。目の前が見えなくなって、気がつくと周りに居た連中全員が彼女に群がっていた、俺はそいつらをどけて彼女に会いに行こうとしたんだ。
エージェント██: ですがあなたは、会う事ができなかったと。
中山氏: ああ、“彼女”の周りには人だかりができてた。男も女も、子供を連れた主婦も子供だっていた。そいつらの向こう側で悲鳴が聞こえた気がしたが、俺はどうしても彼女に会いに行かなくちゃと思って……人混みの中に割って入って行った。
エージェント██: あなたはそこで何を見ましたか?
中山氏: 1人の男が、彼女に抱きしめられているのが見えた。“彼女”がそいつの首元に歯を立てているのが見えた、“彼女”がそいつを食らうのが見えた。俺は嫉妬に狂ったよ、あいつじゃない。俺なんだって。“彼女”にああしてもらうのは俺なんだって。目の前が真っ暗になったよ。そうしたら、他の奴らも同じ考えだったみたいで、俺の周りで乱闘が始まった。気がついたら俺は頭を後ろから殴られて、そこで意識を失った。
エージェント██: ご無事で何よりです、1つお聞きしたいのですが、あなたにとって“彼女”とはなんだったのですか?
中山氏: 分からないだろうな、彼女は俺を受け入れてくれる唯一無二の存在だ。俺は今までずっと孤独だった、どうしても埋まらない孤独があるんだって事を彼女は教えてくれた。それを癒す方法は“彼女”しかない、“彼女”に食らってもらう事で、孤独は癒されるんだ。
エージェント██: よく分かりました、あなたにはまだ後遺症があるようです。じっくりと治療していきましょう。
<録音終了, 20██/██/██>
終了報告書: 中山氏に記憶処理を実行しましたが、SCP-857-JPの影響を消すことはできませんでした。そのため、中山氏は財団の監視下に置かれる事が決定されました。
対象: 大村██氏(性別は女性)
インタビュアー: ██博士
付記: インタビューは財団フロント経営の精神科クリニックで行われました。
<録音開始,20██/██/██>
██博士: では大村さん、あの時の事を話してくれますか?
大村: はい、私にとっては忘れられない出来事でした。
██博士: あなたの言う「アレ」を経験されて、あなたはどう思いましたか。
大村: 私は「アレ」を……“彼”を見てから、他に何も考えられなくなりました。
██博士: その、”彼”についてもう少し詳しく教えてください。
大村: (机を叩く音)私にとっては、かけがえのない人だったんです!彼に、彼に会わせて!
██博士: 落ち着いてください。それで、“彼”はあなたにとってどのような人物だったのですか。
大村: “彼”は、草むらの上で微笑んでいました。特に、どうと言う事はない普通の服装をして。シャツにジャケットにスラックス、本当になんて事のない地味と言ってもいい服装。でも彼のあの笑顔を見た途端、私は悟りました。彼に惹かれている自分自身に。だってその瞬間、目の前が真っ暗になったんですもの。
██博士: 随分とご執心だったのですね、彼に会って話をして見ましたか。
大村: そんな!だって……見知らぬ他人だったんですから。それで、しばらく経って目が見えるようになって……気がついたら、彼に周りに人だかりができていました。幼い女の子やおばあちゃんまで、まるでアイドルか俳優が来たみたいな感じで……
██博士: 人が集まって来て、人混みに阻まれたと?
大村: そうです、だから私は人混みをかき分けて彼に会いに行きました。だって、彼はあたしのなんですから。見つけたのはあたしなの、他の誰にも渡してはダメだと思って。
██博士: そこであなたは何を見ましたか。
大村: どこの馬の骨だか知れない女が、彼と抱き合っているのが見えました。私はそれを見て、また視界が真っ暗になりました。絶対に許せない!そう思ったんです、気づいたら救急車に乗せられて……その後はご存知の通りです。
██博士: よく分かりました、思うにあなたが見たのは幻覚です。高度のストレスで、あなたは幻覚を見ていたのです。
大村: そんな事はどうでもいいわ!彼に会わせて!ねえ、今どこにいるの!?
<録音終了, 20██/██/██>
終了報告書: 大村氏に記憶処理薬を投与しましたが、オブジェクトの影響を除去する事はできませんでした。幸い、オブジェクト活性化時の生存者は非常に少ないため、大村氏は財団の監視下に置かれる事が決定されました。
財団は██市にヤギを貸し出していた業者██牧場の企業情報を調査しました。その結果、ヤギの品種改良種を別の業者から提供されていた事が判明しました。さらなる調査を行った結果、捜査線上に日本生類創研の関連企業日生ジーン・マテリアルという企業が確認されました。財団が日生ジーン・マテリアルの施設を強襲、調査した結果、SCP-857-JPと同種の個体を10体確認しました。オブジェクトについての資料は全て回収され、個体は即座に終了、遺体は焼却処分されました。
+ 尋問ログ01
- テキストを隠す
研究施設内にいた研究員を拘束し、オブジェクトの製作意図を尋問しました。
対象: 生類創研の研究員
インタビュアー: エージェント██
付記: 尋問は施設内にて行われました。
<録音開始, 20██/██/██>
エージェント██: ボイスナンバー01、対象の拘束を完了。これより尋問を開始する。
研究員: 頼む、もう殴らないでくれ。
エージェント██: ああ、あんたが必要な事を喋ってくれればな。
研究員: わかった……話すよ。事の始まりは、ある富豪からの依頼だった。アフガニスタンの山岳地帯に希少金属の鉱床が発見された……富豪はその鉱床を地域ごと手に入れるつもりだったが、その近辺は武装勢力が支配していた。
エージェント██: かいつまんで話をしてくれ。
研究員: わ、わかった。要は、そこにいる連中が邪魔だったんだ。そいつらを効率的に”減らす”為にはPMC1を雇うだけではとても足りないという事が分かっていた。その地域の住民全てが潜在的な武装勢力となりうる、人口そのものを減らして周辺の集落を離散させる必要があったんだ。
エージェント██: それで、人食いヤギが必要になったって事か。
研究員: そうだ、アフガニスタンの遊牧民はヤギを飼育している。その中に紛れ込ませるのが理想的だった。私たちは研究に着手した、だが予算も時間も足りなかった。本社の連中は、私たちの研究を重要度の低いものとみなしていた。依頼人にも掛け合ってみたが、依頼人は急かすばかりだった。
エージェント██: そして、あんたらは急なテストする必要に迫られた。
研究員: そうだ、予算が足りなかったから、基礎的なテスト環境さえ与えられなかった。私たちは懸命に研究を、研鑽を積んできたというのにだ。そして、テストは実行された。
エージェント██: 俺たちに察知される可能性は考えなかったのか?
研究員: もちろん考えていたとも、だが納期が迫っていた。私たちに選択の余地はなかった。要は必要なものだけを作って、バカな富豪に成果物を引き渡せればそれで良かったんだ。
エージェント██: お前たちのお陰で、何人も死人が出たわけだがな。で、テストも成功したから逃げるつもりだったわけか。
研究員: そうだ、私たちはついに個体を完成させた。あとはパッケージを出荷するだけだった。
エージェント██: そうかい、間に合って良かった。あんたらの処遇はどうなるかは知らんが。
<録音終了, 20██/██/██>
終了報告書: 研究員は今後の研究のため、財団サイト内に拘置される事になりました。
+ 尋問ログ02
- テキストを隠す
下記は、倫理的に問題のある実験を行おうとしていた██博士に対する尋問です。
対象: ██博士
インタビュアー: 道策管理官
付記: 道策管理官は倫理委員会の命令に基づき██博士を尋問しました。
<録音開始, 20██/██/██>
道策管理官: では尋問を開始する。██博士、あなたの行動は財団の理念に背くものだということは理解していますね?
██博士: ああ、そうだ。だが私はアレに対する研究を完遂する必要があった。
道策管理官: 研究を完遂?そもそもアレは、日生の連中が作り上げたお粗末極まる代物だ。アレを研究して一体なんのメリットがあると言うんですか。
██博士: わからないかね?あれは人類を蝕む病から救う救世主と言っても過言ではないのだ。
道策管理官: 救世主?本気で言っているのですか、あれはただの化け物です。そもそも、人類を蝕む病とは一体なんなのですか?
██博士: 孤独だよ。
道策管理官: 孤独?
██博士: そうとも。人類はさまざな情報を世界中に流通させたが、そこで明らかになったのは個々の異常なまでの差異だった。情報に触れれば触れるほど、様々な人の違いが明らかになる。そこでは、1つの理念など無意味だ。人々は差異を感じ、孤独を深めている。70億の孤独がそこにある。
道策管理官: ジェンダーの差異を実験に取り入れたのも、それが理由なのですか。
██博士: そうだ、それがそもそもの理由だ。多くの人間が自身の抱えるジェンダーと差異によって孤独を抱えている。この孤独という病理は、もはや解決不可能な問題だろう。だが、それをあのオブジェクトは解決した。アレこそが、我々の孤独を救済してくれる唯一無二の存在だ。
道策管理官: 妊婦を実験に投入しようとした理由は?
██博士: それこそが、1つの疑問だったのだ。妊婦にも無論孤独はある、だが生まれてくる子供の事を思えば、妊婦は孤独にも耐えうる。ならば、アレは妊婦の孤独をも救済するのか?それこそが問題だったのだ。動物実験はうまく行った、人体実験でも問題なく成功したはずだ。
道策管理官: あなたは賢い人間だと思っていましたよ。妊婦を投入するなど言語道断だ。人類全てがアレの餌になれ、と言うのですか?
██博士: そうだ、孤独の唯一の治療薬は安らかな死だ。私は気づいたのだよ、最初の実験の際、私の下で働いていた研究員たちは、皆喜んでアレに食われた。自分はアレに愛されている、身を捧げると言ってな。あれこそが救済なのだ。
道策管理官: あなたは間違っている。
██博士: 君にはわかるまい、真の孤独を感じた事がない人間にはな。あれほどまでの熱情を捧げられる存在は、アレ以外におらんのだ。
道策管理官: ██博士、あなたはアレを直接目視していないはずだ。だがあなたはオブジェクトの影響を受けているようですね。
██博士: そうだとも。
道策管理官: ██博士……あなたが孤独を感じているのは分かります、確か昨年奥さんが……
██博士: それは単なる原因の1つに過ぎないよ、私は最初の実験以降、あのオブジェクトの力を目にした。それ以降目が眩んだ、今や盲目も同然なのだ。
道策管理官: 話は理解できました。██博士、あなたの財団に於ける全ての権限を剥奪します。これは倫理委員会の規定に於いて定められた事項に基づいた決定です。
<録音終了, 20██/██/██>
終了報告書: ██博士は現在勾留中です。今後の処分については倫理委員会の審議待ちの状態です。
Footnotes
1. private military companyの略 民間軍事会社 傭兵とも呼ばれる
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scp-858-jp |
評価: +22+–x
アイテム番号: SCP-858-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-858-JPとその周辺土地は財団フロント企業の私有地として管理されます。SCP-858-JPの出入り口は進入禁止の旨が書かれた看板と観音開きのフェンス扉により部外者の侵入を阻害してください。
SCP-858-JP-A内部には2名の財団職員が滞在し、部外者の侵入が発見された場合には即座に拘束を行ってください。拘束された部外者はSCP-858-JPに訪れた理由と身分を調査したのちにAクラス記憶処理を行い解放してください。また「収穫イベント」の発生によりSCP-858-JP-Bの出現が確認された場合、現地の滞在職員は即座に担当サイト-8135に連絡を行ってください。
「収穫イベント」発生防止のため、一月に一度SCP-858-JP-A内部に存在する食用植物・子実体の採取が行われます。回収された収穫物は主に近隣サイトの食堂やDクラス職員の食事・希望者に対する配布などの方法で消費することが許可されています。
説明: SCP-858-JPは新潟県██山に存在する、異常な空間へとつながる横穴式の礫岩洞です。SCP-858-JPの洞口は2.0m*1.5mであり、内部はほぼ洞口と等しい空間を持つ直線的な道が延長20mほど存在します。このような形状の洞窟は自然科学・地質学的に不自然なものであることから、SCP-858-JPは何らかの手段により、意図的に生成されたものであると推測されています。
SCP-858-JP内部に女性が侵入した場合、対象は異常な現象に遭遇せずSCP-858-JPの最奥まで到達します。しかし侵入者が男性である場合、洞窟の入り口から10m以上侵入した時点で、対象の肉体が透過を始め約3秒で完全に消失します。消失した対象はSCP-858-JP-Aへと繋がるSCP-858-JPとほぼ同様の内部構成を持つ横穴式の洞窟へと転移します。転移した男性は転移先の洞窟をSCP-858-JP-Aにつながる道の反対方向に進むことによって、訪問時と同様のプロセスを経た上でSCP-858-JP内部に帰還することが可能です。また上記の一連の現象の際、出所不明な女性のものと思われる吐息や笑い声・喘ぎ声の発生がたびたび報告されています。
SCP-858-JP-Aは転移先にある約20mの洞窟を抜けた先に存在する、ドーム状の礫岩で囲まれた面積約4.7平方kmの異常空間です。太陽などの明確な光源が存在しないにもかかわらず、SCP-858-JP-A内部は約400lux程度の照度が存在し、環境は気温22~23度・湿度65%前後で固定されています。SCP-858-JP-Aの地理は約60%が森林、約40%が平地・丘・川や湖などの水場で構成されています。
SCP-858-JP-Aには一部の植物・菌類以外の生物は存在せず、様々な種類の食用可能な野草・樹木・子実体類が自生しています。これらは全て日本国内で採集が可能である自然種の植物・子実体1です。各個体はそれぞれ熟成期や可食期が大きく異なるのにも関わらず、全ての個体が最も可食に適した状態を保ち続けます。また各個体は腐敗や必要以上の成長が発生しません。一方で可食部位が採取された個体はその種類に関わらず、半月程度で再び採取可能な状態にまで成長します。これらの異常性は収穫・伐採・もしくはSCP-858-JP-Aから外部に運び出された時点で消失します。現時点ではSCP-858-JP-A内部の食用植物・子実体を採取・消費することによる異常な特性は確認されていません。
SCP-858-JP-Aに存在する各個体が収穫されずに正確に100日が経過した場合、SCP-858-JPの洞口から100~150体前後のSCP-858-JP-B個体群が出現します。SCP-858-JP-Bは禿頭の身長1.8~2.4m・年齢30~40歳ほどのアジア系人種の容姿を持つ人型の異常存在です。全てのSCP-858-JP-Bは宗派や格式の統一性がない袈裟を着用しており、僅かに赤や緑に色づいた皮膚を持ちます。上記の特徴を除きSCP-858-JP-B個体の容姿に統一性はありません。SCP-858-JP-B個体群の出現は、その後発生する一連の異常現象の開始を表しており、その一連の異常現象はSCP-858-JP管理担当サイトから「収穫イベント」と呼称されています。
出現したSCP-858-JP-B群は最も近隣に存在する人間の共同体に向かい徒歩・駆け足で移動を開始します。この際移動ルート上に存在する一軒家や総人口数が極端に少ない共同体は無視される傾向にあります。1目的地に到着したSCP-858-JP-Bは一斉に「俺の尻を舐めろ」「俺の糞を喰え」といった内容の叫び声を上げ、無差別に周囲の人間の追跡・捕獲を開始します。SCP-858-JP-Bが人間の追跡・捕獲を開始した直後、SCP-858-JP-Bの肛門から大便の排出が開始されます。この現象は「収穫イベント」終了まで継続されます。
人間を捕獲したSCP-858-JP-Bは捕獲対象に自身の肛門を舐める、もしくは自身の大便を摂食するように要求します。この要求が拒まれた場合、SCP-858-JP-Bは怒気を含んだ声で捕獲対象をなじり、捕獲対象の顔・口に臀部・肛門を押し付ける、大便を直接口内へねじ込むなどの方法で自身の大便を捕獲対象に強制的に摂取させます。大便の摂食を行った人間は、それが非常に美味なSCP-858-JP-A内部で収穫可能な種の食用植物・子実体であると認識するようになります。後の検査でSCP-858-JP-Bの大便は形状や匂いの認識をゆがめる精神的影響を持った食用植物・子実体であることが判明しました。その後摂食者は他の人間の応答に一切反応を示さなくなり、SCP-858-JP-Bの追跡・捕獲の補助を行うようになります。
約30~50名程度の男性に大便を摂食させたSCP-858-JP-BはSCP-858-JPへの帰還を開始します。この際、大便を摂取した人間はSCP-858-JP-Bの集団に混ざりSCP-858-JPへと向かい移動を開始します。第三者による制止の言動は完全に無視され、強制的な引き留め行為に対しては周囲のSCP-858-JP-Bや他の摂食者による妨害が行われます。SCP-858-JPに到達したSCP-858-JP-Bと摂食者は内部へと侵入しSCP-858-JP-Aへ到達しますが、その道中でSCP-858-JP-B個体群は消失します。
SCP-858-JP-Aへたどり着いた男性の摂食者は、自身が運搬可能な最大量まで食用植物・子実体の採取を行い、それらを「採集イベント」が発生した土地へと運搬を行います。この間女性の摂食者はSCP-858-JP外部で待機を行い、収穫物の運搬作業にのみ従事します。帰還した摂食者は他の人間にSCP-858-JPの存在を流布し、収穫を援助するよう他者に要請を行います。要請の結果がどのようであれ、不定の時間を置いて摂食者は再びSCP-858-JPへと向かい、再び食用植物・子実体の採取と運搬を繰り返し行い続けます。この間摂食者は自由に食事や休憩を行うことが可能です。この一連の行動はSCP-858-JP内の食用植物・子実体の約90%以上が採取されるまで継続されます。
SCP-858-JPは201█年10月2日/新潟県██市にSCP-858-JP-B群が出現したことをきっかけに財団に存在を認知されました。SCP-858-JPの出入り口周辺には多数の車輪の跡や人間の足跡が発見されていることから、近年まで何らかの団体によりSCP-858-JPが活用されていた可能性が高いものとされています。また今回のSCP-858-JP-Bの出現は、SCP-858-JPを利用していた集団が何らかの理由で活動を停止したことが原因と推測されています。同年7月28日にSCP-858-JPの近隣に存在する██村にて多数の死亡者・行方不明者が発生する土砂災害が発生しており、住民の死亡や避難により██村は事実上の廃村状態となっています。現在研究チーム内ではこの死亡者・行方不明者・避難者の中にSCP-858-JPの活用を行う個人・集団が存在したという説が有力視されています。
SCP-858-JPの起源や出現年代は以前不明ですが、天明の大飢饉や長禄・寛正の飢饉をはじめとした日本国内で発生した大規模な飢饉の際、記録に残っている限りSCP-858-JP周辺村内での飢餓による死亡者が極端に低い点が指摘されました。そのため少なくともSCP-858-JPは1600年代には既に存在しており、周囲の村々の一部権力者、もしくは村の住人全体によりその存在を秘匿・独占されていたのではないかと推測されています。
+ 事件記録: 201█/3/12
- テキストを隠す
事件記録: 201█/3/12
201█/3/12の19時半頃、特定地域にて大規模なSCP-858-JP-B群による襲撃が発生しました。襲撃の対象となった地域はSCP-858-JP担当サイト-8135・SCP-858-JP入り口前の簡易設置小屋・新潟県██市の3か所、およびその周辺地区です。襲撃を発生させた原因は同日に特別収容プロトコル制定のために行われた実験9によるものだと推測されています。
以下はその実験内容とサイト-8135における事件記録を時系列に記載したものです。
実験記録: 09
内容: SCP-858-JP-Aでの簡易小規模サイトの建設。
追記: SCP-858-JP内に存在する全ての植物の可食部の採取を行った実験記録04、SCP-858-JP内に存在する一部植物の伐採・および外部への移殖を行った実験記録06、テント・簡易仮設住居を用いたSCP-858-JP-A長期滞在実験07・08などの結果から、SCP-858-JP内部が有効なサイト建設現場になるとして、非常用の小規模サイトの建設が計画されました。
結果: 作業開始から2日目に作業の停止が決定。事件記録を参照。
事件記録
新潟県██市・SCP-858-JP出入り口付近の仮設警備室・サイト-8135の周辺にSCP-858-JP-Bの出現が確認されました。この事例により死亡者・負傷者は発生していません。
19:34:09 - サイト-8135監視カメラ04に1体のSCP-858-JP-Bの姿が確認、警備室に報告される。
19:38:10 - サイト-8135敷地内、および周辺に存在する一部職員が軽度の腹痛を訴え始める。
19:44:42 - サイト-8135各監視カメラ、および警備員に多数のSCP-858-JP-Bの姿が多数発見される。また一部のSCP-858-JP-Bは丸太や自然石で武装をしている。SCP-858-JPの出現箇所は不明だがサイト-8135を包囲するように移動を行う姿が確認される。
19:51:32 - サイト-8135管理者によりサイト内で行われていたすべての実験・作業の中止、外部に存在した警備員等をサイト内への避難、他の近隣サイトへの緊急連絡が指示される。サイト内多くの職員が腹痛を訴え始める。
20:03:14 - SCP-858-JP-Bがサイト-8135を完全に包囲する。SCP-858-JP-Bの正確な総数は不明だが明らかに当時サイト-8135内に存在した職員の総数よりも多いように見える。SCP-858-JP-Bはサイトの包囲以上の行動を行わないが、SCP-858-JP-B総数の更なる増加が確認される。サイト内のほぼ全ての職員が激しい腹痛を訴え、SCP-858-JP-Bへの鎮圧などの行動は行われなかった。
20:06:51 - SCP-858-JP-B群が突如一斉に「我らに糞を寄越せ!貴様らの尿を差し出せ!之豊穣の理なり!」と叫び声を上げ、同様の文言を繰り返し発しながら出入り口や窓を破壊しサイト内に侵入を始める。
20:10:07 - 施設内に侵入したSCP-858-JP-B群は、2・3人一組で周囲に存在する職員(被害者2)の衣服をはぎ取る。その後SCP-858-JP-Bは被害者の肛門、および尿道に吸い付き直接大便や尿を摂取し始める。被害者への聞き込みによりSCP-858-JP-Bに触れられた・吸い付かれた瞬間に腹部の痛みの増加、および耐えきれない排泄欲求の発生、大便・尿のどちらにおいても明らかに通常下では実現不可能な量の排泄が行われたと報告されている。
21:34:19 - SCP-858-JP-B群が撤退を始める。SCP-858-JP-B群はそれぞれ異なった方向に走り去り監視カメラの有効範囲内から消失した。
当時SCP-858-JP-Bの襲撃現場となった地域に存在した人物は、例外なくSCP-858-JP-Bの被害を受けており、軽度の脱水症状と強い疲労感・激しい飢餓感を訴えたが命に別条がある人物は存在しなかった。また人的被害以外では家屋やサイト内の扉や窓等の破壊、便座や下水管の破壊および結果としての下水の散布、周辺地域内の食用品・用土肥料・飲料品の消費・強奪などの被害が確認された。
その後の調査のためSCP-858-JP内部に侵入したところ、開拓・整地された土地や持ち運ばれた機材の全てが数百年単位での経年劣化、および植物・菌類の浸食により使用不可能な状態で発見されました。またSCP-858-JP内部で回収された全ての食用植物・子実体が採取可能な状態まで再生していることが確認されました。
██市およびサイト-8135周辺で被害に巻き込まれた一般人に対しては記憶処理を行い、カバーストーリー「熱中症」および「局地的地震」が流布されました。SCP-858-JP内部へのサイト建設計画は中止され、記憶処理装置を備えた簡易な仮設警備室の建設に留まることが決定されました。SCP-858-JP-Bの襲撃に遭遇した財団職員に関しては、希望者に対しAクラス記憶処理が実施されます3。
Footnotes
1. 正確な目的地の選定条件の割り出しは、有用性の低さと予算面の問題から保留されています。
2. 特にSCP-858-JPへの関与、および性別に関係なくSCP-858-JP-Bの襲撃の対象となった。
3. 全ての対象職員が処置を受ける事を希望しました。
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scp-859-jp |
評価: +17+–x
アイテム番号: SCP-859-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-859-JPはサイト-81██の隔離棟収容室に収容されています。SCP-859-JPの周囲100m以内に椅子や座席の付いた乗り物は持ち込まず、決して「座る」といった行動をとらないように注意してください。SCP-859-JPの影響範囲内では転倒を防止するため、歩行器の装備が義務付けられます。SCP-859-JPは監視カメラで常に監視を行い、収容室内にSCP-859-JP-B以外の椅子の出現、および椅子の製図が出現した場合は速やかに回収し変化が行われる前にできうる限りの写真や電子文書の形で記録を保存してください。
回収された製図を使用した椅子の製作は禁止されています。
説明: SCP-859-JPは異常現象を発生させる、大量の回転椅子(SCP-859-JP-B)とその中に埋まっている人間(SCP-859-JP-A)の総称です。
SCP-859-JP-Aは30歳前後に見える日本人男性です。SCP-859-JP-Aは心臓の運動や呼吸などの主要なバイタルサインが停止しているのにもかかわらず、通常の人間と同様の血色と体温を保っています。SCP-859-JP-Aの体には不定期に裂傷や打撲・骨折などの負傷が現れます。その傷はいずれも何か固い物で殴られたような傷と表現され、時折傷の一部に木片や糸片が付着しています。現れた負傷は頸椎の骨折や内臓の露出・脳挫傷などの通常であれば致命傷となる負傷であっても、約10分ほどで完治します。これは外部から第三者によって付けられた傷であっても同様です。SCP-859-JP-Aは衣服の他には社員証のみを所持しており、大林家具に勤める倉上 ██という名の実在する人物であることが判明しています。
SCP-859-JP-Bは茶色のコットン生地が張られたキャスター付き回転椅子です。SCP-859-JP-Bを構成する素材やそのデザインは人間工学的観点から考えると決して椅子としての機能性が高いものでないのにも関わらず、その使用感は非常に心地良く全ての使用者によって「最高の椅子」と表現されます。また長時間の使用であっても腰痛・骨盤のゆがみ・急性肺血栓塞栓症などの症状が現れないことが判明しています。SCP-859-JP-Bの脚部分には麻縄・ガムテープ・ビニール紐などによってSCP-859-JP-Aや他のSCP-859-JP-Bの脚部と結び付けられています。
SCP-859-JP-Bおよび脚部分につながれた麻縄などの破壊の試みは失敗しています。しかし全てのSCP-859-JP-Bは不定期に損傷が加えられた形跡が出現し、最終的には破壊されます。現れる損傷は刃物による斬撃や鈍器による打撃を加えられたように見え、時折破壊されたSCP-859-JP-Bの破片に混じりSCP-859-JP-Aの血液や体組織が発見されます。しかしSCP-859-JP-Bの強度や使用した道具と損傷の度合いを考慮した場合、SCP-859-JP-Bを破壊する際の力は一般的な男性と比べ遥かに強いものであると推測されています。椅子としての機能が喪失するまで破壊されたSCP-859-JP-Bの残骸は一定時間で消失します。
破壊されたSCP-859-JP-Bの調査の結果、SCP-859-JP-Bのクッション内部にハツカネズミの幼体・人間の血液・生米・紙粘土・韮・その他5種類の一般的に入手可能な材料を用いた、近代魔術のペイガン魔術に沿った儀式に使用されるものと同様の特徴を持つ施術が施されており、それに関連した何らかの儀式が行われたことがこのオブジェクトに特殊な効果を与えているという仮説がたてられています
SCP-859-JPが発生させる異常現象は大きく二つに分類されます。
一つ目の異常現象はSCP-859-JP-Aの周囲に様々な種類の椅子を5分~720分の不定期な間隔で出現させることです。出現する椅子の材料・形態・使用目的などは定まっておらず、ときにはバランスボールやビーズ式のクッションなど通常は椅子と呼べないようなものが出現することもあります。出現した全ての椅子はSCP-859-JP-Bと同様に本来予想されるものよりもはるかに高い機能性を持ちます。一方で出現した椅子にはSCP-859-JP-Bには存在しない様々な異常な効果が観測されました。確認された限りその異常性は全て椅子としての機能性・利便性を強化するような異常性です。椅子が出現して約1時間程度経過すると、椅子に何か固いもので殴られたかのような損傷が発生し即座に椅子としての機能が消滅するまで破壊されます。その後破壊された椅子の残骸はその形を変化させ、複数のSCP-859-JP-Bへと変化します。
二つ目の異常性はSCP-859-JP-AおよびSCP-859-JP-Bの周囲100mに存在する一般的に人間が座ることを目的に制作された物品(椅子・座布団・サドル・西洋式便器など)が存在する場合、それらを約60秒かけてSCP-859-JP-Bへと変化させることです。車のシートなど道具の一部分のみが座席として使用する道具である場合は、その部分のみがSCP-859-JP-Bへと変化します。SCP-859-JP-Bへと変化する基準は、SCP-859-JP-Aの周囲に道具を持ち込んだ人間の意識により多少の変化があり、場合によっては段ボール箱や園芸用の岩、切り株など通常椅子として使われない道具もSCP-859-JP-Bへと変化する可能性もあります。過去の例では、とある職員がSCP-859-JP-Bの範囲内で転倒により収容室床に尻もちをついた際、収容施設全体がおよそ5000脚のSCP-859-JP-Bへと変化した事例も確認されています。
いずれの場合も、SCP-859-JP-Bへの変形が完了した時点でSCP-859-JP-Bの脚部は麻縄やガムテープ、ビニール紐などによってSCP-859-JP-Aや他のSCP-859-JP-Bとつながれた状態になります。またSCP-859-JP-Bの数が50脚を超えた場合、全てのSCP-859-JP-Bから原因不明の発火が発生します。このとき発生する炎はいかなる手段を持っても鎮火することができませんが、SCP-859-JP-Bの数が焼失により5脚以下になると消失します。この際SCP-859-JP-Bの周囲に存在する人間は年齢不明の女性の叫び声を認識することが可能です。
追記: 200█/█/█
閉じる
20██/█/█: SCP-859-JPの周囲に出現した異常性を持つ椅子の座面に血で汚れた大量の様々な椅子の製図と一枚のメモが出現しました。即座にそれらの物品は回収され、保存のため電子文書化の作業が行われました。しかしその作業の最中、回収された製図の内容が全てSCP-859-JP-Bの製図へと書き換わり、回収されたメモの裏側に新たな文面が出現しました。
電子化に成功した数枚の製図に変化は現れなかったため、それらを用いることで本来の製図の内容を確認することが可能です。その内容は特定の方法で選別された14人の人間の血を引く赤子を生贄として捧げる儀式を行う必要のあるもの、ナトリウム・酵母菌・麦などの人間の生活不可欠な物品や生物の消失を対価にした契約を行う工程があるもの、製作の過程での言語・性行為などの重要な概念の消失が必要となるものなど1つの椅子を作るために非人道的・かつ非効率的な物品を数多く消耗する魔術的・未知の工程が伴うため、これらの椅子の製作は認められていません。保存された製図の中には現在までにSCP-859-JP-Aの周囲に出現した椅子の同一のものと思われる製図も複数確認されています。
以下は回収されたメモの内容です。
表側
あんたら、俺の最高の椅子の秘密が気になるんだろ?教えてやるよ。
だから頼む、俺の代わりにこの椅子を作ってくれ。
俺の素晴らしい作品が埋もれるなんて世界にとって重大な損失だ。
あの自惚れた駄作の邪魔が入らないところで。俺の次の一歩をつないでくれ。
裏側
残酷で面倒な儀式なんかしなくたって、最高の私がいるじゃない。
どうしてあなたは私がいるのに他の子たちに構うの?
沢山の素晴らしい私で世界中の出来損ないを駆逐することが、みんなの幸せだということをどうして分かってくれないの?
その後このメモは大量の血液・木片・異なる2種類の筆跡からなる、相手を罵る・侮辱する・脅迫する言葉で埋め尽くされました。
補遺: 200█/█/██
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SCP-859-JP-AおよびSCP-859-JP-Bに関する調査の結果、SCP-859-JP-Bは200█年に経営不振が原因で倒産した大林家具から同じ素材・デザインを持つの製品が製造販売されていたこと。また、倉上 █がその製品の設計を行ったことが判明しています。倉上 █はSCP-859-JP-Bについて「最高の椅子への第一歩」と証言していました。倉上 █の元同僚の証言によるとSCP-859-JP-Bを設計した直後、倉上 ██の仕事道具が破壊される・新しく製作した製図がSCP-859-JP-Bのものに書き換えられるなどの嫌がらせを受け、最終的に大林家具を退職したことが判明しています。大林家具退職後の倉上 █の行方は[データ破損]不明です。また、書類上ではSCP-859-JP-Bと同一の商品が製造販売されていたことが明記されていましたが、実際にはそのような商品が流通していた事実は確認されませんでした。
大林家具はSCP-659-JPが製造された会社と同一のものであり、SCP-659-JP発見時にその他の製品および関係者に対する調査が行われています。その際、倉上 █に対して元社員としてインタビューを伴う調査が行われたと記録されています。しかしこの内容は倉上 █が大林家具を退職直後に行方不明になったという事実と矛盾しています。また大林家具退社以降の倉上 █の動向に関する記録に関して、何者かによる改変の痕跡が発見されたことに加え、財団に残っている調査日とSCP-859-JPが最初に一般人に発見された日にちの間に明らかな矛盾が生じている点についても留意すべきです。
以上の理由により、大林家具に対するより厳重な再調査が行われることが決定しています。
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scp-860-jp |
評価: +61+–x
アイテム番号:SCP-860-JP
オブジェクトクラス:Euclid
SCP-860-JP-1の一例
特別収容プロトコル:SCP-860-JPの特性上その異常性を完全に収容下に置くことは困難です。日本国内の 学校給食の配布が行われている 全小中学校の昼食を最低でも3日に1回の割合で確認してください。SCP-860-JPの発生が確認された場合、学校の規模に応じた人数のエージェントを派遣しSCP-860-JP-1に関する記憶の処理を行ってください。この作業はSCP-860-JP影響下にある最も高学年の生徒らの卒業によってSCP-860-JPの影響が消失するまで毎日行われます。SCP-860-JPの影響下にある人間の学籍の変更はあらゆる手段を用いて妨害してください。
SCP-860-JPの影響を中断させる試みは現在禁止されています。
説明:SCP-860-JPは19██年から確認されている 全国の学校給食の配布が行われている小・中学校 全国の小・中学校で不定期に現れる異常現象です。SCP-860-JPの異常性が転移した場合を除いてSCP-860-JPは4月から翌年3月までの間に1度のみ発生します。
SCP-860-JPの影響が現れた小・中学校では本来予定されていた給食のメニューに関わらず、カレーライス(以下SCP-860-JP-1と記載)が給食として提供されます。SCP-860-JPの主な構成物は業務用████カレールー・人参・ジャガイモ・玉ネギ・肉(種類は豚・鶏・牛のいずれか)・その他スパイス類です。SCP-860-JPの発生の季節によってはその季節の野菜(ナスビ・インゲン豆・ピーマン等)が前述の具材の代わり、または追加の具材として投入されていることもあります。
提供されるSCP-860-JP-1は本来提供される予定だったメニューの一部(多くの場合一般的に“汁もの”と呼ばれるもの)が通常通り調理された後、給食室や給食センターから教室へと運搬されるまでの間に容器の中身が置き換わる形で出現します。そのためその日に提供される予定だったメニューによっては白米が提供されずカレールーのみが器に注がれた状態で提供されます。一度SCP-860-JP-1が給食で提供されたあと、その日以降の学校給食メニューの一部が全てSCP-860-JP-1に置き換わります。この状況に異常性が起こっている学校の職員・給食関連の職員・生徒及びそれらの同居者は一切疑問を抱くことはありません。その為SCP-860-JPの発生を早期に発見し対応することは困難です。
SCP-860-JP-1は1回提供されるごとに通常のカレーが常温で1日放置されていた場合と同様の進度で劣化を始めます。この劣化は季節による進行速度の違いは見られませんでした。日数が経つにつれてSCP-860-JPに腐敗・細菌・カビなどが発生します。SCP-860-JP-1内で発生する腐敗・カビについては比較的一般的なものであり特異なものは見られません。しかしSCP-860-JP-1内で発生する細菌・ウィルス(以下病原菌と表記)の中には感染源や国内での環境を考えた場合、通常では発生し得ない種類の病原菌も確認されています。
SCP-860-JP-1内で確認された病原菌については以下の通りです
・ウェルシュ菌
・カンピロバクター
・サルモネラ
・セレウス菌
・ノロウィルス(G1・G2・G2.17)
・ボツリヌス菌
・黄色ブドウ球菌
・腸炎ビブリオ
・病原性大腸菌(o-157・o-0111・o-0104)
・A型肝炎ウィルス
本来であれば確実に人体への悪影響を引き起こすほど腐敗したSCP-860-JP-1を摂取した場合でも関わらず、SCP-860-JPの影響下にある人間は通常通りにSCP-860-JP-1を摂取することができます。むしろSCP-860-JP-1を摂取した人間は「昨日食べたカレーよりもおいしい」と好意的な反応を示します。
SCP-860-JP-1の提供はその時点で最も高学年の生徒が卒業するまでの期間行われ続けます。最高学年の卒業が終了した時点でSCP-860-JPが与えた影響は消失し、後述するSCP-860-JP-2への変化も起こりません。しかし学校給食の廃止・転校などの理由でSCP-860-JPの影響が中断された場合、SCP-860-JPの影響は対象が死亡するまで残り続けます。
SCP-860-JP-1が給食のメニューとして連続で提供されている事実にSCP-860-JPの影響下にある人間が疑問を持つ、もしくは第三者によって疑問を持たれた場合、SCP-860-JPの影響下でSCP-860-JP-1を摂取した経験のある人間全員に食中毒に似た症状が現れます。食中毒の症状を現した人間(以下SCP-860-JP-2と記載)は口と肛門から茶色の粘液を放出します。粘液はSCP-860-JP-2がSCP-860-JPは-1を摂取していた期間に比例してより長時間・より大量に放出されます。粘液の放出で脱水症状は起こりませんが長時間の呼吸の阻害によって窒息する可能性は存在します。移動を行わないSCP-860-JP-2の粘液放出範囲は約5mほどです。しかしSCP-860-JP-1の摂取が長期間であった場合、SCP-860-JP-2の体は口と肛門から噴出される粘液によってコマのように回転し始めます。これによりSCP-860-JP-2は障害物にぶつかりながら高速で移動し始めます。この現象によってより広範囲へ粘液が散布されることになります。
粘液の放出を終えたSCP-860-JP-2は通常の重度の食中毒の症状を起こします。この状態になったSCP-860-JP-2は適切な処置を行うことで救助することが可能です。しかしSCP-860-JPの効果対象の多くが児童であるため、粘液の放出による体力の消耗や外傷が原因で死亡者が出る可能性は十分にあります。
放出される液体の主成分は未だ判明していませんがしばしば「カレーライスのような匂い」と表現されます。液体の中にはSCP-860-JP-1で確認された種類と同様のカビの胞子・病原菌などが含まれています。確認されたこれらの特性はいたって平均的なものであり異常性は見当たりません。しかしSCP-860-JP-2が人間の集団内で発生しこれらの病原菌をまき散らした場合、適切な処置を行わなければ大規模な食中毒の発生につながります。
追記1:20██/██/██
SCP-860-JPの異常性の発生防止のため、全国の学校給食配布の停止運動が実行されました。これに対し各教育・栄養関係者や多くの一般の市民から激しい抵抗が行われ計画の実行は困難を極めましたが無事全国の小・中学校の3/4で学校給食の廃止が実現しました。SCP-860-JPの対象となる学校が減少したことによりSCP-860-JPの発生個所の特定が以前より容易になりました。
しかし20██年██月██日、大阪府の████小学校の生徒及び教員の計7██人がSCP-860-JP-2へと変化する事態が発生しました。この事件により1██名のSCP-860-JP-2が死亡。発生時期が長期休暇であったこともあわさり多くの交通機関や娯楽施設が営業停止、二次被害による食中毒患者も発生しました。当該学校は学校給食廃止運動以前より学校給食が存在しなかった学校であり、財団の監視が緩んでいたことが事件の原因だと考えられます。
その後の調査により5月の半ばあたりからSCP-860-JP-1が出現していたことが判明しました。生存していたSCP-860-JP-2らの証言によるとSCP-860-JP-1は各教室内の空中に突如出現しそのまま教室の床に散乱、生徒らは床に散乱したSCP-860-JP-1を素手や口の直付け等の方法で摂取したと報告しています。
この事からSCP-860-JPは学校給食の配布が行われていない学校でも発生しうることが確認されました。この報告から学校給食廃止活動の停止が決定。SCP-860-JP発生の監視対象が全ての小中学校に拡大されることが決定されました。この決定に伴い特別収容プロトコルの見直しがなされています。
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scp-861-jp |
評価: +68+–x
アイテム番号:SCP-861-JP
オブジェクトクラス:Euclid
特別収容プロトコル:SCP-861-JPの予想異常性発生範囲3300㎡は現在財団フロント企業により自動車部品製造工場、及び製品の保管場として管理されています。予想異常発生範囲において飲み会・打ち上げといった飲食を伴った祝い事は全て禁止されます。また、予想異常性発生範囲の周囲300mを潜在的異常性発生範囲に指定し、人民住宅・ホテル・公民館・各種娯楽施設などの何らかの祝い事で使用される可能性がある建造物の建設は可能な限り妨害してください。もし潜在的異常性発生範囲内でSCP-861-JPの発生が確認された場合、直ちに予想異常性発生範囲、及び潜在的異常性発生範囲の再設定を行ってください。
SCP-861-JPに関する研究を行う場合は現担当者である巣鴨博士の許可を得た上で行ってください。一般人を用いたSCP-861-JPに関する研究は、現在財団倫理委員会の承認待ちです。
説明:SCP-861-JPは大分県██市に存在する約3300m²の土地に現れる異常現象です。SCP-861-JPはその土地内に存在する建物の屋内(以下会場と表記)で大学に在籍している学生1が飲み会・打ち上げといった飲食を伴う祝い事を集団で行った際に現れます。SCP-861-JPは会場内の人間を一定の基準でSCP-861-JP-AとSCP-861-JP-Bにより分け、それぞれ異なる異常性を発生させます。
SCP-861-JP-Aはアルコール類の摂取を行っている、または会場内で開催されている祝い事をある程度楽しんでいる人々です。会場内にいる大学生以外の人々もこのグループへと分けられます。SCP-861-JP-Bはアルコール類を飲まず、かつ会場内で開催されている祝い事を楽しんでいない人々です。主に以前から集団での行動を嫌いSCP-861-JP-Aに当たる人物を煩わしく思うような考えを持っていた人物がSCP-861-JP-Bとなる傾向がある事が確認されています。
SCP-861-JP内部でアルコールと食料が振舞われ約60分が経過した時点で外部へとつながる出入り口が未知の手段により施錠されます。同時に扉・窓・SCP-861-JP-Aの肉体から未知の液体が漏れ出し始めます。この液体は高温であり、常に沸騰したかのように気泡を噴き上げています。この熱で会場内にある機材が傷つくことは一切ありません。この異常にSCP-861-JP-Aは反応を行わずより激しく祝い事を楽しみ続けます。一方SCP-861-JP-Bは会場に起きている異常を認識し混乱した様子を見せます。この段階でSCP-861-JP-AはSCP-861-JP-Bからのあらゆる干渉を受け付けなくなります。時間と共にSCP-861-JP-Aの身体が完全に液状化し、室内の液体の水位も上がり続けます。SCP-861-JP-Aの身体が完全に溶け切った後でも液体からはSCP-861-JP-Aの笑い声や会話が聞こえ続けます。最終的に液体の水位は天井まで達し室内にいるSCP-861-JP-Bは窒息および熱による火傷で死亡します。
水位が天井まで達して一定時間経過した後、徐々に水位が下がりSCP-861-JP-Aの身体が元の形へと戻り始めます。液体が完全に消失し、全てのSCP-861-JP-Aの肉体が元の形に戻った時点で全ての異常性が消失します。その後は会場にSCP-861-JP-Bの死体が残されSCP-861-JP-Aは周囲に対する正常な反応を行えるようになります。全てのSCP-861-JP-AはSCP-861-JPの異常性が発生している間、アルコールを飲み友人らと会話をしていた、もしくは自身の仕事に従事していたと証言します。会場に液体が満ちていた痕跡は一切存在しませんがビデオカメラなどの記録機器により液体の存在を記録することが可能です。
SCP-861-JPは19██年に初めて異常性が確認されたものの、当時は監視カメラなどの記録機器が十分に普及していなかったこと、財団の調査では異常性を再現することが出来なかったこと等を理由に超常現象として記録されていました。事件の発生地となったホテルが事件後すぐに廃業し、それに伴い近隣の大学生が飲み会やコンパなどのイベントに利用する会場が別の場所へと変更された点もSCP-861-JPの異常性が見逃され続けた要因です。
SCP-861-JPがオブジェクトとして正式に記録されるきっかけとなった20██年の事件は、新たにSCP-861-JPの異常発生範囲内に設立されたホテルを、██大学の生徒が文化系サークル全体の追い出しコンパの会場として毎年利用していた会場の代理として利用したことが原因で発生しました。この事件により21名の死亡が確認されています。会場内に監視カメラはなくSCP-861-JPに対する調査は前回同様難航しましたが、会場内に学生が撮影用に持ち込んでいたハンディカメラの映像によりSCP-861-JPの異常性の詳細が判明しました。
SCP-861-JPに関する実験は異常性の発生対象が極めて限定的であるため困難を極めています。財団管轄下の私立大学・通信制大学に入学させたDクラス職員を用いた実験では異常性は発生しませんでした。SCP-861-JPの異常性が発生する対象として何らかの不足があったと考えられていますが、その要因は不明です。
+ インタビュー記録
- インタビュー記録を隠す
インタビュー対象:文化サークル広告担当者 ██ █
インタビュアー:██博士
目標:SCP-861-JP-AにSCP-861-JP異常下の正確な記憶を思い出させる。
対象者は事件当日、記録係としてハンディカメラによる撮影を行っていました。対象者には前もってSCP-861-JPの異常性を撮影した映像の一部を視聴させています。
インタビュー開始
巣鴨博士:さて、少しショッキングな映像を見てもらいましたが。気分とかは大丈夫かい?
██ █:ええ、まぁ・・・知ってる顔の奴もいたしビックリはしましたけど。
██ █:あんな死に方、俺だったら死んでも嫌ですね。(笑い声を上げる)
巣鴨博士:えー・・・まぁ映像を見てもらったわけだけど、何か思い出すようなことはありませんか?
██ █:んー・・・いえ特には。あの日は途中までめちゃくちゃ楽しくコンパしてたんですけどね。正直今まで生きていた中で一番楽しかった気がします。
██ █:でもまさか最後の最後にあんなキモイ死体を見るなんて思いもしませんでしたし、ましてや自分の体が水になっていたなんて、全く気が付きませんでしたね。
巣鴨博士:・・・随分冷静だね、もう少しぐらい取り乱すものだと思っていたが。
██ █:え、そうですかね?
██ █:まぁ、あんまり内容がぶっ飛んでいたから逆に平気!みたいな?
巣鴨博士:しかし、亡くなった人間の中には君の友人もいたのだろう?
██ █:ええ、まぁ確かにいましけど。
██ █:まぁ・・・アレはアイツが勝手に絡んできていただけって言うか。アイツ本当に空気とか全然読まないうっとうしい奴で。
██ █:あの時も少し見かけたけど1人で黙々と携帯弄ってて、かなりキショかったし・・・。普通ああいう時に根暗みたいに携帯電話とか弄りませんよね?
巣鴨博士:まぁ・・・そうかもしれないね。それはともかく、新しく何かを思い出したり気が付いたりした点はない、ということで良いんだね?
██ █:はい、特にないですね。
巣鴨博士:なるほど・・・では念のため少し時間を置いてから再度インタビューを行うからしばらく別室で待機しておいてくれないかい?職員と一緒なら時間まで好きに出歩いてもらっても構いません。
██ █:はい、分かりました。それじゃあ失礼します。
インタビュー対象者が退出する
巣鴨博士:・・・・・・。
インタビュー終了
死亡したSCP-861-JP-Bの中には██ █が大学へ入学した時から一緒に行動を共にしていた親友がいることが確認されている。・・・・・・何かがおかしい、恐らくSCP-861-JPの効果は被害者の死亡だけで終わっていない。その他の生存者及び、被害者の家族に対する調査を引き続き行うように。
巣鴨博士
+ 付録文書
- 補遺を隠す
巣鴨博士及びSCP-861-JPの研究に携わる複数人の研究者・エージェントによる非常に強い要望により、以下の内容がSCP-861-JPのさらなる特性の仮説として記録されることが決定されました。巣鴨博士らのSCP-861-JP担当終了までの期間内で正式に以下の内容の異常性の存在が確認、立証されなかった場合、これらの付録文書の削除が行われる予定です。
SCP-861-JPの異常性で死亡したSCP-861-JP-Bは、生前何らかの関係を持っていた全ての人間から「どうでもいい人間」「嫌いな人間」として認識されるようになります。この認識はおよそ7日間かけて徐々に発症します。発症の初期段階にこの影響に不信感を抱いた場合は影響から逃れることが可能です。しかし一度影響の最終段階へ至った場合、第三者の指摘があったとしてもSCP-861-JPの影響を認識できず、その影響の存在に対して非常に否定的な考えを示します。7日以降に新たにSCP-861-JP及びSCP-861-JP-Bに関する情報を得た人間は即座に影響の最終段階と同様の反応を示します。19██年の事件でSCP-861-JP-Bの死後の影響について気が付かれなかった原因はこれらの異常性によるものだと推測されます。
SCP-861-JPの影響はSCP-861-JP-Bとの関係性によって性質がわずかに異なります。主にSCP-861-JP-Bと家族・親友・恋人未満の人間はSCP-861-JP-Bの死を晒しあげ嘲笑の的にする傾向が見られます。その行動に伴いSCP-861-JP-Bの死体の写真や悪評・陰口をSNS等に書きこむといった行動をとるため、結果として新たにSCP-861-JP-Bの存在を知った人間がそれらの行為に加担し始めます。反対に家族・親友・恋人といったSCP-861-JP-Bと深い関係を持っている人物の場合、SCP-861-JP-Bとの関係を持っていた事実を深く後悔し、その事実の隠ぺいを図る傾向にあります。主にその行動はSCP-861-JP-Bに関する物品の廃棄、違法な手段を用いての戸籍の改変、SCP-861-JP-Bが関連しない土地への移動2などが挙げられます。
この影響によりSCP-861-JP-Bが死亡したという事実に対し、あらゆる人物も悲しみや憐みといった感情を引き起こしません。そのため被害者の死を悔やむ儀式や行動、学校の休校・通夜・葬式・仏壇の設置などといったものが行われない、もしくは非常に質素なものとなります。多くの場合SCP-861-JP-Bの遺体は可燃ゴミとして処分される、山や海に遺棄されるなどの非常に雑な扱いがされます。また、SCP-861-JP-Bの遺体の引き取りを拒否した遺族も多く、それらの遺体はSCP-861-JPの影響を受けた財団職員の手により実験用動物やSCP-███-JPの食料・SCP-███-JPへの被露実験などに使用されていましたが、それらの行為に対して何の処罰も行われていない事が確認されています。
現在SCP-861-JPの影響を除去するためのあらゆる試みは失敗しています。しかし記憶処理によりSCP-861-JP-Bの記憶を除去することで間接的にSCP-861-JPの影響から脱することが可能です。この場合、影響者が再びSCP-861-JP-Bの存在を認知した場合、影響が再発することに留意して下さい。
Footnotes
1. 19██年の事件で他の学生と比較して高齢な学生がSCP-861-JP-Bに変化した事例から、大学に学籍があることが重視されていると推測されています。
2. この影響により多くの場合、現在就いている職業や学業を放棄することになります。
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scp-862-jp |
評価: +96+–x
山形県大蔵村で新たに発見されたSCP-862-JP群
アイテム番号: SCP-862-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-862-JPはサイト-81██の低危険度収容室ロッカー内部に、防音措置が施された施錠付き収容箱に収められた状態で保管されます。また防音とSCP-862-JPの行動を阻害する目的のため、SCP-862-JPを収容箱内部に収めた後に、収容箱内の空間がなくなるまでシリコンパウダーを投入してください。現在実験用に5体のSCP-862-JPが収容されています。
未収容のSCP-862-JPが発見された際は、あらゆる宗教や何らかの特定の思想に深く傾倒していない事が確認されている財団職員により、現地でのSCP-862-JPの回収・破壊を行ってください。回収作業中は必ず3名以上の集団で行動してください。回収の際はSCP-862-JPに直接触れず、支給されるトングや虫取り網等を用いて捕獲を行ってください。回収・破壊作業終了後はSCP-862-JP発見地域周辺にて、SCP-862-JPの発生源の発見を目的とした調査を行ってください。
説明: SCP-862-JPは自立行動を行う、仏教徒を模した像の集団です。大きさはおよそ10~15cmほどで人間の垢と少量の銅の混合物で構成されており、構成物から予想される通りの耐久性を持ちます。SCP-862-JPの各個体の中には数珠のような物品を所持している個体が存在します。この数珠は周囲に存在する物体を加工し、製作されることが確認されていますが、現在までこの数珠が何らかの行為に使用された事例は存在しません。
SCP-862-JPは自身の行動を多数の人間に目撃される可能性が存在する場合は、あらゆる行動を停止し異常性のない像のように振る舞います。SCP-862-JPは人間の気配に非常に敏感であり周囲200~250m程の範囲であれば、直接目視を行わなくとも人間の存在を把握することが可能です。しかし一方で巧妙に隠蔽された監視カメラ等の存在は感知できません。
SCP-862-JPの周囲に存在する人間(対象)が単独、もしくは少人数の児童・高齢者である場合、SCP-862-JPは浄土真宗の形式に則った南無阿弥陀仏の念仏の読経を行い、集団で対象への接近を開始します。この時唱えられる念仏には、SCP-862-JP対する敵対心・恐怖心が消失するといった精神影響が存在します。しかし現代の多くの日本人に相当する、自らの信仰・思想に対しての明確な立場を持たない人間に対しては念仏による精神影響の効果が薄く、問題なくSCP-862-JPから逃走を図ることが可能です。一方で宗教に強い関心のある人間や宗教従事者、もしくは極端な無神論者や科学主義者・過激なベジタリアンなどの何らかの特定の思想に深く傾倒している人物に対しては精神影響が強く働き、SCP-862-JPの行動に対し抵抗する意志が消失します。この場合における「宗教」とは神道やキリスト教など南無阿弥陀仏の念仏を使用しない宗派も含まれます。ですが前述のようにSCP-862-JPの精神影響を深く受ける人物にはある程度の傾向はあるものの、その正確な基準は不明です。
対象へ十分に接近したSCP-862-JPは、両掌を用いて対象の肉体を擦るような動作を行います。SCP-862-JPが擦る箇所からは大量の垢が出現し、垢の出現に伴い擦られている部位の肉体が消失してゆきます。このとき対象は痛みを感じることはなく「心が軽くなる」「穏やかな気分になる」「毒が抜け出ていく」等の好意的な感情を抱き、この行動が継続されることを望むようになります。この行為により頭部や胸部など人間の生存に不可欠な部位を欠損したとしても死亡することはありません1。この行為が開始され約2分が経過した対象はSCP-862-JPと共に南無阿弥陀仏の念仏を唱え始めます。この効果は対象の母国言語が日本語でない場合でも発生しますが、その場合は発音が正確でなく初期段階では言葉に詰まることなども多いため、対象がSCP-862-JPの唱える念仏を自らの意思で模倣しているものと推測されます。
SCP-862-JPが人間の体をこすり続けると対象の体内から金で構成された阿弥陀如来像が出現します。出現する仏像はSCP-862-JPの念仏の影響を強く受けた人物であるほど大きく精巧な作りのものとなる傾向があり、一般的な宗教観を持つ人間の体内からは高さ約8~12cm、SCP-862-JPの影響を非常に強く受けた人間の体内からは高さ約18~27cm程度の仏像が出現します。周囲に他の人間が存在するときは続けてその人間に対し同様の行為を行います。周囲に他の人間が存在しなくなった場合、SCP-862-JPは読経を継続したまま阿弥陀如来像を囲うように円形の陣を組み始めます。SCP-862-JPに囲まれた仏像は徐々に発光をはじめ、光が500lm程度に達すると同時に消失します。
阿弥陀如来像の消失後、SCP-862-JPは残された人間の垢を集め自身と同じ姿へと形成します。形成された像は新たなSCP-862-JPとして自立行動を行い始めます。1体のSCP-862-JPを製作するために使用される垢の量は外見や重さから予想されるものより多く、平均的な体格の成人男性1人から形成されるSCP-862-JPはおよそ3~4体です。製作の過程で人間の垢以外の物質が使用されていないのにもかかわらず、構成物から銅が検出される理由は不明です。SCP-862-JP集団の総数が30体以上に増加した場合は、SCP-862-JPは各5~10体程度の集団に別れ、それぞれ別行動を行い始めます。
SCP-862-JPは蒐集院が財団に吸収された際に引き渡されたオブジェクトの一つです。記録に残っているSCP-862-JPの最初の発見は嘉元3年(1305年)であり、当時の日本に置ける仏教の普及率の高さとその信仰深度からSCP-862-JPは当時蒐集院内部で優先的に殲滅すべき対象として記録されていました。現在は日本国内の宗教に対する関心の薄れにより、一般人がSCP-862-JPに遭遇した場合であっても大抵の場合は問題なく逃走が可能であることから、蒐集院による保管時よりも比較的低脅威のオブジェクトとして扱われています。しかし蒐集院や財団により実施された度重なる未収容のSCP-862-JPの回収・破壊活動にも関わらず、現在においても未収容のSCP-862-JPが年に2回ほど発見されています。この事実から財団が未だに発見できていないSCP-862-JPの発生源が存在すると考えられています。
補遺-20██/11/15
- 補遺-20██/11/15を隠す
補遺-20██/11/15: SCP-1800-JPの大量の排泄物により、サイト-81██の損壊、および一部のオブジェクトの収容違反・損傷が引き起こされた事件記録-20██/11/15にて、SCP-862-JPの収容違反が発生しました。収容違反中のSCP-862-JPによる被害は発生せず、事件発生の4時間後にSCP-862-JPはサイト-81██と同敷地内に存在する財団関連の貨物倉庫内にて発見、再収容されました。事件収拾後、貨物倉庫内に存在していた監視カメラの記録映像を確認したところ、SCP-862-JPの新たな性質が明らかになりました。以下はその監視カメラの映像記録です。
日付: 20██/11/15
場所: サイト-81██敷地内貨物倉庫A
時:分:秒
14:24:35 - サイト-81██貨物倉庫A内部に侵入したSCP-862-JP群が監視カメラに姿を現す。SCP-862-JP群は職員の避難の際、誤って開かれたままになっていた荷物運搬口から侵入したものと推測される。
14:26:11 - SCP-862-JP群が内部のコンテナの影に移動し、監視カメラの視界外へと移動を行う。
14:44:32 - SCP-862-JP群が再度コンテナの影から出現、荷物の少ない開けた通路へと移動を行う。この時刻はサイト-81██内部の職員及びサイト周辺の一般市民の退避が確認された時刻とほぼ同時刻であり、SCP-862-JP群が倉庫周辺に人間が存在しないことを確認したのちに行動を起こしているものと推測される。
14:47:45 - SCP-862-JP群が円形の陣を組み、読経を行い始める。
14:48:09 - 円陣の中心に高さ23cm程度と思われる金の阿弥陀如来像が出現。この時の像の出現には一切光は発生せず、監視カメラの映像では像が円の中心に突如出現したかのように見える。後にこの阿弥陀如来像はD-22104を用いた実験の際に出現した像と同一のものであることが判明した。
14:48:51 - SCP-862-JP群が阿弥陀如来像へと接近し、像を手でこすり始める。それに伴い像が削れ、周辺の床には金粉や金粒が溜まり始める。既に読経は停止している。
14:59:43 - 阿弥陀如来像の大半が金粉となる、SCP-862-JP群は残った大小の金の欠片を足で踏み潰し金粉へと変化させている。
15:07:11 - 阿弥陀如来像が完全に金粉へと変化する、SCP-862-JP群が金粉を掻き集める。
15:08:42 - SCP-862-JP群が掻き集めた金粉を掴み空中へと投げる。その瞬間SCP-862-JP群の周囲に石畳と柱で構成された煌びやかな座敷が出現する。座敷上には複数の革張りのボックスソファー・木製のテーブル・絹本著色山越阿弥陀図に類似した絵を持つ絵画・SCP-862-JP群と同数の大型ベットが存在する。
15:11:12 - SCP-862-JP群は金粉を投げ続け、過剰な量の豪勢な懐石料理御膳、ワインやビール・ウィスキーなどの洋酒を含む様々な種類の酒、カラオケ機器と音響機械、SCP-862-JP群と同じ素材で構成されているように見えるドレスやワンピースなどの現代的な服装をした水商売風の女性と思われる存在を出現させる。
15:18:57 - SCP-862-JP群が宴会を始める。時折残りの金粉を再び放り投げ、新たな料理や酒・女性に渡す金品を出現させた。座敷上では、過度な肉体的接触を伴う雑談、女性らによるダンスの披露、カラオケ機器を利用した歌唱大会、脱依を伴うじゃんけん(野球拳)、周囲の声に合わせ杯の酒を飲み干す一般的に「イッキ飲み」と呼称される行為などが行われ、最終的にはSCP-862-JP群と水商売風の女性が[編集済み]を行った。この間、内容物が残っている酒瓶をひっくり返した1名の女性がSCP-862-JP群に殴打され破壊された。
これらの行為はサイト-81██貨物倉庫Aの周囲に再び職員が配置されるまで続けられた。倉庫外に人間の存在を感知したSCP-862-JP群は即座に現在の行動を中止し、再度コンテナ影に退避した。この退避の間に金粉から生成された全ての物体は消失した。
この事例により、SCP-862-JPが現在までの観察から予想されていた以上の知性と感情を持ち合わせていることが確認されました。その後の協議の結果、SCP-862-JPが長年にわたり自身の知性の隠蔽に成功していた事実、および現代の人間の文化の模倣を行ったという事実を鑑み、保存用SCP-862-JP標本数の減少が決定されました。
脚注
1. 垢擦りの最中にSCP-862-JPから引き離された場合も同様に生存可能です。
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scp-863-jp |
評価: +46+–x
SCP-863-JP。確保直前に撮られた写真。
アイテム番号: SCP-863-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-863-JPはサイト-81██の防音コンテナに収容されています。コンテナ内には監視カメラと録音装置を取り付けてください。コンテナ内に入室する時と、オブジェクトを取り扱う際には、財団指定の遮音装置を着用してください。録音の聞き取りとオブジェクトとの対話には基本的にDクラス職員を使用し、Dクラス職員を10分ごとに交代させつつオブジェクトの発言を書きとらせる形で行ないます。オブジェクトの対話にDクラス職員を10分以上露出させることは露出を目的とした実験を除き禁止されてます。一度オブジェクトに露出させたDクラスは、最低60分、オブジェクトとの対話から引き離してください。オブジェクトと直接の対話をDクラス職員以外が行う場合、必ず5分以内に済ませることと、レベル4以上の職員の許可を必要とします。
説明: SCP-863-JPは異常な特性を持ったぬいぐるみです。驢馬を模した形状であり、体色は桃色をしています。内部構造は通常の綿であることが判明しており、対象がなぜ異常性を有しているのかは不明です。
SCP-863-JPの主たる異常性は、自律して行動し、人語(日本語と簡単な英語)を解するという点です。どのような方法で発声を行っているのかは分かっていません。対象の性質は温厚であり、収容やインタビューにも協力的です。対象は自身を「語り部」と主張し、人間を「お客」と呼びます。SCP-863-JPは人間を発見すると、積極的に対話を行おうとします。
SCP-863-JPは人間と1対少数の対話を好み、45分間の対話を1単位として、それを継続します。オブジェクトはこの対話を「語り」と呼称します。(以下、対話を聞く側の人間を被験者と記述)。「語り」の内容は主に寓話であり、中世ヨーロッパを舞台にしたものや古代日本を舞台にした物です。また、種類は少ないものの、現代日本を舞台にしたものを語ることもあります。また、ごく日常的な会話であっても、「語り」と同様の性質が見られます。
被験者はオブジェクトとの対話を聞き続けるうちに、以下の変化を起こします。
段階
合計対話時間
変化
1
20分~45分
対話時間が20分を越えた付近から被験者に変化が始まります。(全く話を聞く気がない様子であった被験者も)オブジェクトとの対話に積極的に参加し、被験者自身も質問を行うようになります。最終的に被験者は非常に楽天的な性格に変化し、 「オブジェクトとまた会話したい」と欲求を持つようになります。
2
50分~90分
50分前後から被験者の肉体に変化が始まります。被験者の体躯がやせ衰え始めます。被験者の食欲や睡眠欲の減衰が観察されますが、被験者本人は苦痛を感じていないようです。この変化について、オブジェクトは「代金を頂いている」と述べています。
3
90分~
被験者は[データ削除]となり死亡します。
SCP-863-JPの行う「語り」は、「オブジェクトの発声を被験者が十分認識している」ことで成立し、被験者が離席する、眠る、遮音装置を取り付けているなどの状態では成立しません。なお、「語り中」にそれらの行動を行った場合は、聞いていた時間に応じて、変化は弱まった状態で残ります。「語り」を聞いていた時間が15分以内であれば時間の経過(40分程度)で自然にその変化は消失します。また、対話時間が30分程度までであれば、記憶処理によって治療が可能であることが判明しています。しかし、それ以上の時間の対話を継続した場合、被験者の状態の変化を停止させることはできません。
SCP-863-JPの発見場所は和歌山県██市です。2001年11月29日、同市内で「民家から死体が見つかった」という通報が警察に入り、対処に当たった警察が、3名の一般人(40代男性、30代女性、10代男性)の遺体を発見しました。遺体の[データ削除]の状態から、なんらかの異常物体が関与した事件であると財団は推測し、財団が捜査を引き継ぎました。その後、民家の屋根裏部屋からSCP-863-JPが発見されました。なお、民家に住んでいたのは4人家族であり、8歳の女児が行方不明になっています。
補遺:
+ SCP-863-JPへのインタビュー記録
- アクセス承認
対象: SCP-863-JP
インタビュアー: ██博士、D-12222
付記: ██博士は遮音装置を取り付け、D-12222がSCP-863-JPの発言の書き取りを伴っている。
<録音開始, 2001年12月8日]>
██博士: やぁ、SCP-863-JP。
SCP-863-JP: おや、旦那。初めてのお客さんですねい。そちらにいらっしゃるのは……?(SCP-863-JPがD-12222へ向く)
██博士: ああ、私は耳が聞こえないんだ。彼に書き取ってもらっているんだよ。
SCP-863-JP: 聾の方でござんすか。喋るのがお上手でそうは見えず……失礼をしやした。それじゃあマァ聾の向けの語りと言いやすと。
██博士: いや、悪いが私はその為に来たんじゃない。君に聞きたいことがあるんだ。
SCP-863-JP: あっしに答えられるものであればなんなりと。
██博士: 君はなぜ人間と話をしようとするんだい?
SCP-863-JP: そりゃあ、あっしも霞を食べては生きていけやせん。旦那に稼ぎがあるように、あっしの食いぶちの稼ぎ方がこれだということでごぜえやす。
██博士: つまり君は人間から何かを受け取っていると言うことだね? しかし、そのせいで大勢の人間が[データ削除]になってしまっているのだが。
SCP-863-JP: 旦那、あっしは奪い取っているわけではごぜえやせん。あっしが受け取っているのはお客方が御自身で決めた額でごぜえやす。それ以上はびた一文受け取っておりやせん。
██博士: 受け取りすぎと考えたことは無いのかい?
SCP-863-JP: あっしのような二流に払ってくださる額としちゃあ、破格であることァ存じて居りやす。しかしまぁ、出された銭を押し返すほど失礼なことはありやせんから。今となっちゃあ、すっかり貯まっておりやすよ。
██博士: ふむ……わかった。では質問を変えよう。君が我々と初めて出会った家では、4人家族が住んでいた。しかし娘さんが見つかっていない。何か知っているかね?
SCP-863-JP: あの娘っこですかい。あの娘っこはあっしの弟子ですぜ。
██博士: 弟子?
SCP-863-JP: 可愛い可愛い一番弟子でごぜえやす。師匠バカと言われても仕方ありやせんが、あっしよりもずうっと才覚がありやして。教えれば教えるだけ、ぐんぐん伸びる伸びる。娘っこの語りを聞いたご両親と兄上殿も、随分と景気良く娘っ子にお代をふるまってくだせえました。
██博士: ……それから彼女は?
SCP-863-JP: 独立しやしたよ。便りが無いのはちょいとさびしいですが、元気な証拠とも言いやすから。
██博士: ……わかった、ありがとう。
<録音終了>
終了報告書: 女児の捜索を急いでください。くわえ、SCP-863-JPとDクラスを用いた長時間の実験を禁止することを申請します。SCP-863-JPは「語り」以外に「語りの指導」を行う場合もあるようです。――██博士
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scp-864-jp |
評価: +48+–x
評価: +48+–x
クレジット
タイトル: SCP-864-JP - 給餌係
著者: ©︎O-92_Mallet
作成年: 2017
評価: +48+–x
評価: +48+–x
SCP-864-JP-A群が発見された石室の内部
アイテム番号: SCP-864-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: 実験用のSCP-864-JP実例はサイト-9722の低温生体保存庫に収容されています。蘇生させたSCP-864-JP実例は実験終了後に焼却してください。
SCP-864-JP-A群とそれが納められていた石室は発掘され、サイト-9722の地上に移築されて保存されています。SCP-864-JP-A-2から出現するSCP-864-JPの脱走を防ぐため、石室の床面はアスファルト舗装となっています。石室の清掃は毎日行われ、SCP-864-JPがその都度回収され処分されます。毎月1回、SCP-864-JP-A-2が開封され、内容物の状態の記録が行われます。
説明: SCP-864-JPは、イスラエル国██████地区に生息していた、双翅目(ハエ目)の幼虫に類似した体型を持つ淡紅色の生物です。全長は3〜10cmで体型が細く、口吻には短く鋭い3対の牙が存在し、尾側に三叉に分かれた鈎を持つのが特徴です。解剖の結果、SCP-864-JPは生殖器と肛門を持たないことが確認されています。SCP-864-JPは乾燥に対して非常に脆弱であり、単独では地表で生存することができません。
SCP-864-JPは二酸化炭素濃度を鋭敏に検知する化学受容器を有しており、これを用いて地中で冬眠中のカエル(以下、対象)を発見し、接近します。対象の種の違いはSCP-864-JPの反応に大きな影響を及ぼしません。対象に到達したSCP-864-JPはその口内へと侵入し、尾側の鈎を用いて自らを対象の喉頭蓋に固定します。こうして、口内にSCP-864-JPが定着したカエル(以下、SCP-864-JP-1)が完成します。なお、カエルがSCP-864-JPを拒絶しない理由は判然としていません。
冬眠を終えて地表へ出たSCP-864-JP-1は、通常の個体とほぼ変化のない生活を送りますが、食糧として双翅目の成体を発見した場合のみ通常の個体と異なる反応を示します。獲物を捕獲する瞬間、SCP-864-JP-1は自身の舌の代替としてSCP-864-JPを伸長させます。結果として、捕獲された双翅目は、SCP-864-JP-1ではなくSCP-864-JPによって消費されることになります。SCP-864-JPの牙が、獲物の外骨格を破砕することを可能としています。しかしながら、SCP-864-JPは獲物を消化・代謝することはなく、単にそれを胃に貯蔵するのみです。SCP-864-JPが双翅目以外の食物を摂取している様子が確認されたことはなく、活動のエネルギー源は未だ特定されていません。
SCP-864-JP-1が再度冬眠に入るか、それ以前に何らかの要因で死亡した場合、SCP-864-JPは鈎を切離してSCP-864-JP-1の口内から脱出します。この時点で自身の体重の60%以上の双翅目を捕食していたSCP-864-JP個体は、後述するSCP-864-JP-A群に向けて移動を開始し、場合によっては30kmを超える距離を移動します。捕食量がそれ以下であった個体は、再び新たな宿主を探し始めます。
SCP-864-JP-Aは、イスラエル国█████の地下20m地点に造られていた石室内部で発見された7基の鉄製の棺であり、それぞれの全長は9mに達します。石室には床面が存在せず、人間が出入り可能な扉や周囲の通路等の痕跡は確認されませんでした。年代測定の結果、石室とその中のSCP-864-JP-Aは少なくとも2000年以上前に建造されたことが判明していますが、SCP-864-JP-Aの表面に目立った劣化の兆候は見られません。SCP-864-JP-Aの蓋には1匹のハエの成虫を模した全長7.2mのレリーフが施されており、その腹部の先端に該当する部分には直径20cmの穴が開けられています。
SCP-864-JP-A群は発見時の様子から3つのグループに分類されています。
SCP-864-JP-A-1: 7基中1基が該当します。棺の蓋は厳重に閉ざされており、レリーフ腹部の穴は石室周囲のものと同質の土によって塞がれていました。棺の内部は完全な空洞でした。
SCP-864-JP-A-2: 7基中1基が該当します。棺の蓋は閉ざされていましたが、レリーフ腹部の穴から多数のSCP-864-JPが出入りする様子が観察されました。SCP-864-JP-A-2内部へと侵入したSCP-864-JPは、その胃内容物を残して直ちに溶解することが確認されています。SCP-864-JPがSCP-864-JP-A-2に起源を持つことはほぼ確実であると見なされていますが、現時点ではSCP-864-JP-A-2の内部調査でSCP-864-JPの生体や卵が確認された例はありません。
発見時のSCP-864-JP-A-2には約███████匹分の双翅目の死骸が納められており、SCP-864-JP-A-2の全容積の47%を占有していました。死骸はほぼ全数が細かく破砕されていたものの腐敗の兆候はなく、およそ230年前から現在まで毎年ほぼ一定の割合でその貯蔵数を増やしていたものと考えられています。SCP-864-JP-A-2の充填実験は予定されていません。
SCP-864-JP-A-3: 残りの5基全てが該当します。棺の蓋は乱雑に開放されていました。1基から未知の昆虫の脚1本(全長3.8m)が発見されたのみで、他の内容物はオブジェクト発見以前に全て失われたものと推測されます。棺のほぼ全面に多量に付着していた粘液の跡から、ヒキガエルと99.4%一致するDNAが検出されたことは特筆に値します。
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scp-865-jp |
評価: +33+–x
SCP-865-JP
アイテム番号: SCP-865-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-865-JPはサイト-8141の標準人型収容室に収容されています。SCP-865-JPの異常性の確認及び鬱状態改善のため月に1回専門医の処方を行った後、一時間程度サイト周辺の散歩が認められています1。その際、担当職員は散歩ルート付近に水場がないか確認するようにしてください。
発生したSCP-865-JP-1に関しては担当職員は該当人物の身元を特定してください。その後1名財団エージェントを派遣しその人物に対してインタビューを行った後記憶処理を施し解放してください。上記の手順終了後、SCP-865-JP-1は焼却してください。
説明: SCP-865-JPは現在7█歳の日本人男性です。収容以前SCP-865-JPは、釣りを行っていました。調査の結果下記の特異性以外に異常は発見されませんでした。SCP-865-JPは収容して以来、軽度の鬱状態であり現在健忘症の兆候を見せています。
SCP-865-JPが水場で釣り2を行った場合、不確定な割合でSCP-865-JPと面識があるが1年以上会っていない人物に類似した人型実体の遺体を釣り上げます(釣り上げられた人型実体をSCP-865-JP-1と呼称)。 SCP-865-JP-1を釣り上げる直前まで魚影等は確認されておらず、水から上がる直前にSCP-865-JP-1は出現します。SCP-865-JP-1には稀に生存している人物も確認されています。
SCP-865-JP-1として釣り上げられると同時に本物の実体は、約数分間気絶状態に陥ります。気絶した直後を目撃した人物に事情聴取を行った所、「何かに溺れたような感じだった」と証言しました。気絶状態から復帰した人物は「体内に大量の海水が突然入ってきた」と証言しましたが、X線検査等で確認した所特に異常な点は見られませんでした。以下は、SCP-865-JPが収容後実験等で釣り上げたSCP-865-JP-1の一部抜粋です。
SCP-865-JP-1の詳細
該当人物の詳細
35歳前後と推測される女性
19██/█/██に一人暮らしを開始したSCP-865-JPの孫3
80歳前後と推測される女性
発見日時の約3年前に乳癌で死亡したSCP-865-JPの妻
40歳後半と推測される男性
SCP-865-JPが█山にて遭難した際に助けてくれた男性4
SCP-865-JPは19██/█/█、大阪府に位置する████公園の河川敷にて「おじいちゃんが川で死体を釣り上げた」と現場付近の男性が大阪府警に通報し、騒動になった事で財団が興味を引き調査を行った結果、異常性が判明し、正式に収容されました。以下は、発見直後及び収容後1年後にSCP-865-JPに対して行われたインタビュー記録です。
対象: SCP-865-JP
インタビュアー: エージェント・倉知
<録音開始 19██/█/█>
エージェント・倉知: あの死体の身元はご存知ですか?
SCP-865-JP: あぁもちろん。あの子はワシの孫じゃった、今はどこにいるのかねぇ。
エージェント・倉知: そうですか……。あなたはこれまで、釣りをしていた時に死体に遭遇した事はありましたか?
SCP-865-JP: これが初めてだと思うがなぁ。ワシが釣りを始めたのも、仕事を引退した後やったからなぁ。
エージェント・倉知: そうですか。死体を釣った時、どう思いましたか?
SCP-865-JP: どう……と言われてもなぁ。唯一の趣味である釣りにこんな衝撃的な出来事が起きたら……困惑するしかないでしょうねぇ。
エージェント・倉知: [3秒間の沈黙] そうですか。
SCP-865-JP: すまんの、若いの。力になれなくてな。
エージェント・倉知: いえ、大丈夫ですよ。今回はここまでにしますか?
SCP-865-JP: あぁ、構わないさ。しかし、あの子の死顔は安らかだったねぇ。
<録音終了>
終了報告書: SCP-865-JPはインタビュー終了後、この時釣り上げたSCP-865-JP-1の顔を拝む事を要求しました。この要求はSCP-865-JPの精神面での健康状態を鑑み承認される事はありませんでした。SCP-865-JP-1に該当した人物は特定後記憶処理を施し解放されました。
+ 事案865-JPを開示する。
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事案865-JP: 20██/█/██、SCP-865-JPが収容室内の風呂場にて湯を汲もうとした際、男性型実体のSCP-865-JP-1が引き上げられた事が警備中のエージェントの報告により判明しました5。後にDNA鑑定を行った結果、エージェント・倉知の物である事が判明しました。以下は、事案865-JP発生後にSCP-865-JPに対して行われたインタビュー記録です。
対象: SCP-865-JP
インタビュアー: ███研究員
<録音開始>
███研究員: ……聞くまででもないですが、あの人物が誰だかご存知でしょうか?
SCP-865-JP: [5秒の沈黙] なんだろうなぁ。今のワシの心が言いたくないのかもしれんなぁ。
███研究員: [沈黙]
SCP-865-JP: 君がワシの担当になってから、どれくらい過ぎたかのぅ。
███研究員: 2年くらいですね。
SCP-865-JP: まぁ、長い時間経ったなぁ。
███研究員: そうですね。
SCP-865-JP: [3秒の沈黙] 入れ替わった時から不思議に思っていたんだ。
███研究員: 何を不思議に思ったんですか?
SCP-865-JP: 彼はワシが前回死体を釣り上げた時からいなくなった、ワシが死体を釣り上げる度に、ここの人らが出張していくのはわかっているんだ。
███研究員: [沈黙]
SCP-865-JP: でも、嬉しいよ。
███研究員: なぜ?
SCP-865-JP: これまで釣り上げた死体達はワシの大事な人物達じゃった、ワシは心の中で思ってたかもしれんなぁ、彼にもう一度会いたいって。
███研究員: [5秒間の沈黙] 彼はあの日以来行方不明になっています、我々は今も全力で捜索しています。
SCP-865-JP: そうか……、ワシには無事を祈る事しかできない。でも、顔を見れただけで今は十分じゃよ。もし見つからなかったら、彼の顔を見る事はなかったのだからなぁ。
<録音終了>
終了報告書: SCP-865-JPはインタビュー終了後、エージェント・倉知のSCP-865-JP-1を数分間見続けた後、自身の収容室へと移動しました。エージェント・倉知は前述した40歳後半と推測される男性の地点に向かって以降行方不明です。同時刻発生した雪崩に巻き込まれた可能性を視野に入れて調査を行われています。
Footnotes
1. 担当職員は付添人の役目も担っています。
2. 報告書内では「水場で何らかの物体を釣り上げること」として扱う。
3. 現在も生存しています。
4. 調査した結果、当人物は釣り上げられた同時刻、北海道に位置する███山という雪山を登山中であった事が判明しました。財団は調査中の危険性を鑑み人員を増加し、計3名の財団エージェントを派遣しました。
5. 桶で水面下の水を取る行為が"釣り上げる"と判断されたと推測される。
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scp-866-jp |
評価: +108+–x
アイテム番号: SCP-866-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-866-JPの発生を抑制することが現時点では不可能なため、封じ込めはSCP-866-JP発生後の対応に焦点を置いています。SCP-866-JPは各々の例によって適切なカバーストーリーを展開し、発生地域の地形修復、死傷者への対応を行ってください。インターネット上で発見されたSCP-866-JPに関する情報は回収されます。
SCP-866-JP発生時、その地点周辺のスラウラグ銃撃装置1の制御権は収容チーム-866に移ります。スラウラグ銃撃装置を用いて、SCP-866-JP-Aに可能な限り攻撃してください。SCP-866-JP-Aによる反撃を考慮して、人的被害が発生する恐れのある有人攻撃は禁止されています。
████/██/██、財団は17の企業と契約を結びました。契約により、その企業によって製造が主導もしくは補助される車両には、遠隔起動が可能な爆弾が取り付けられています。SCP-866-JP-Aが爆破可能な車両であることが確認され次第、爆弾を起動してください。スラウラグ銃撃機構の発明と当契約により、SCP-866-JP-Phase-2を平均して7分程度短縮することに成功しています。
SCP-866-JPの記録映像は視認性の認識災害として、標準プロトコルに沿って保管されます。SCP-866-JPの精神影響に曝露した一般人は記憶処理の後に解放し、その生活が安定するまで継続的に監視してください。財団職員がSCP-866-JPの精神影響に曝露した場合は一時的にレベル0職員として扱われますが、2ヶ月間の定期的な精神鑑定の結果によって復帰が可能です。
説明: SCP-866-JPは高速道路上で発生する一連の異常なイベントです。現時点で、SCP-866-JPの発生条件について以下の事柄が判明しています。
SCP-866-JPは明確な前後関係にある2台の車両が存在しなければ発生しません。
SCP-866-JPは高速道路の終端までの距離が40km以下の地点では発生しません。
現在のSCP-866-JP発生頻度は約130日に1度です。
SCP-866-JPは大きく3つの段階に分けられます。SCP-866-JPを強制的に中断する試みは成功していません。
Phase-1: 高速道路上を走行する1台の車両が、幾つかの現実改変事象を経験します(車両をSCP-866-JP-Aと呼称)。SCP-866-JP-Aは耐久性が大幅に強化され、SCP-866-JPが終了するまで走行能力を失わないようになります。
SCP-866-JP-Aの乗員はこの時点で本来の人格を喪失し、一定の人格に書き換えられます。乗員は観測の範囲外から規格不明の銃を生成し、完全な知識で取り扱うようになります。乗員がどのように観測範囲を認知しているのか、またどのように銃を生成しているのかは不明です。乗員は周囲への乱雑な銃撃を開始します。観測の限りでは、弾数の上限は確認されませんでした。
銃弾は他物質への接触時に、消失と共に爆発を起こします。これは他の走行車両を損壊/機能不全に陥らせる程度の威力です。一部の例では、銃弾は高速道路から逸れて落下し、山間部に広範な火災を齎しました。高速道路は部分的ながらも爆発に耐性を持ち、走行可能なスペースを最低限保ちます。
SCP-866-JP-Aの発生からおよそ10秒後に、SCP-866-JP-Aの後方に位置する1台の車両がSCP-866-JP-Aのそれと殆ど同様の現実改変事象を経験します。SCP-866-JP-A,Bの相違点は乗員の目的のみです。SCP-866-JP-Aの乗員が周囲への掃射を行うのに対し、SCP-866-JP-Bの乗員は「SCP-866-JP-Aの撃破」を目標とします。この目標に対する乗員のモチベーションは極めて高いものと思われます。
銃弾はSCP-866-JP-A,Bとの接触時には爆発を起こさずに消失します。これはSCP-866-A,Bの耐性によるものではなく、銃弾の性質によるものであると理解されています2。
SCP-866-JP-Aの乗員がSCP-866-JP-Bの存在に気付くことで、SCP-866-JPはPhase-2に移行します。
Phase-2: SCP-866-JP-Aは乱雑な掃射を中止し、SCP-866-JP-Bへの反撃を主な行動とします。しかしながら、SCP-866-JP-Aの乗員は周囲への銃撃を完全に行わないわけではなく、SCP-866-JP-Bの走行を効果的に妨害するために周囲の車両や道路を爆発させようと試みます。
SCP-866-JP-A,Bは前後関係を維持したまま、銃撃戦及びカーチェイスを開始します。一部の事例において回収されたドライブレコーダーには、SCP-866-JP-A,Bの乗員が互いに敵意を抱いていると解釈出来る作戦指揮や暴言などが録音されていました。
SCP-866-JP-A,Bの異常な耐久性が原因で、Phase-2は15分~30分ほど持続します3。この間にSCP-866-JP-A,Bの運転手以外の乗員は様々な要因4によって必ず死亡します。しかしSCP-866-JP-A,Bの運転手はどちらも死亡しません5。
現在までに確認されたすべての事例では、SCP-866-JP-Aが破壊されることによってPhase-2が終了しています。SCP-866-JP-Bを破壊するなどの検証は、被害の拡大が予想されるために実行されていません。
Phase-3: SCP-866-JP-Aの破壊に伴ってすべての現実改変事象が解除されます。SCP-866-JP-A,B及び道路の異常な耐久性は失われ、双方の乗員が取り扱っていた銃は消失します。SCP-866-JP-Aの破壊の際の大規模な爆発によってSCP-866-JP-Aの運転手は死亡します。そのため、SCP-866-JPの体験者はSCP-866-JP-Bの運転手のみとなります。
これ以上のイベント進行は確認されていません。
体験者及びSCP-866-JP(記録映像を含む)を観測した人物は、即効性の精神異常に曝露します。曝露者はSCP-866-JPに関連する出来事に対してのみ、正常な思考を保つことが不可能になります。明確な点として、曝露者はSCP-866-JPによって起こった被害を曖昧にしか知覚せず、興味を示しません。曝露者は「ガンシューティングゲームをプレイする」ことへの欲求を示し、プライベートな時間においてそれを達成しようとします。暴力的な訴えかけ、責務への無関心化といった、異常欲求に曝露した際の典型的な行動は確認されていません。しかし、記憶処理を用いても欲求を除去することは出来ません。このことから、SCP-866-JP及びその記録映像は視認性の異常なマーケティング効果を持つと理解されています。
インタビュー記録866-██
対象: ██氏
インタビュアー: ██研究員
付記: ██氏はSCP-866-JPの体験者である。
<録音開始, 20██/██/█>
██研究員: それでは質問を開始します。まずはあなたが体験したことを教えてください。
██氏: はい。記憶が曖昧ですが……前方の車が攻撃を始めました。銃弾が様々な方向に放たれ、爆発するのが見えました。周りの車が吹き飛ばされて、私は命の危険を感じました。それで私達は家族一丸となって反撃を決意したんです。最後には無事に車を倒すことが出来ました。
██研究員: 何か異常だとは思いませんでしたか?
██氏: もちろん今となっては、普通では無い事だと思っています。でも当時は、すべての事に疑問を抱いていなかったと思います。
██研究員: そうですか……例えば、銃を取り出したり、それを完璧に扱ったりすることに関しては?
██氏: ……記憶はとても曖昧なんです。普段なら不可能なことをしていたと思います。でも、感じたのは高揚感だけで……あれはひたすらに良い気分でした。一歩間違えれば死んでしまうような、そういうスリルを今まで感じたことが無かったので……
██研究員: つまり、貴方はあの出来事をポジティブなものと認識しているのですか?
██氏: そりゃあもう。ああいう体験をもう一度したいなら……[██氏は3秒間無言になり、表情の動きを停止する]……やはりゲームでしょうかね……ずっと頭の中に光景が残っているんです。通販でそういう感じのゲームを買ってみましょうかね……
██研究員: お聞きしますが、あなたは銃撃戦の最中に妻とお子さんを失っていますよね?
██氏: 追及しないでくださいよ。あれは…………ただのプレイングミスです。
<録音終了, 20██/██/█>
追記: 観察と研究によって、新たなSCP-866-JPの発生条件が判明しつつあると報告されました。最新██件のSCP-866-JP発生事例の内、約8割においてSCP-866-JP-Bの運転手は金銭的に裕福な人物でした。また、特定ジャンルのオンラインゲームにおける収益の高騰が、SCP-866-JPとの関連を指摘されています。このことから、SCP-866-JPは裕福な/十分な資産を持つ人物がSCP-866-JP-Bの運転手になるような"調整"がなされている可能性があります。この法則が確実だと判断され次第、特別収容プロトコルの更新が行われる予定です。
Footnotes
1. ガードレールに偽装された、遠隔操作可能な銃撃装置
2. 複数回のSCP-866-JP-A撃破試行において、SCP-866-JP-Aは爆発に耐性を持つものの、爆発そのものを抑制する性質は有していないことが判明しました。
3. 特別収容プロトコルによって、8分~22分ほどに短縮されています。
4. 銃弾の命中、爆発によって飛散した物体との衝突など。
5. 軌道上は命中するはずの銃弾が異常に逸れ、命中しないなどの現象が確認されています。
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scp-867-jp |
評価: +61+–x
アイテム番号: SCP-867-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-867-JPは防波堤建設および整備のカバーストーリーの元、恒久的に封鎖される事が決定されました。現在SCP-867-JPの代替となる道路が財団フロント企業である株式会社SCプロパティーズによって建設中です。なお、建設後はSCP-867-JP-1の出現および車両強奪が新道で発生しないかどうかを観察してください。
説明: SCP-867-JPは、██県███市にある██川沿いに建設された道路のうち███交差点1を起点とした前後左右1.4km圏内です。
この場に車両総重量11,000kg以上の大型車が進入すると、SCP-867-JP-1と定義される人型実体が出現します。SCP-867-JP-1は作業服を着用した中年男性のような外見をしています。SCP-867-JP-1は出現すると即座に侵入した大型車を走って追跡します。SCP-867-JP-1は外見上何らかの加速装置等を取り付けているようには見えないにも関わらず、最高で時速███kmの速度を記録しています。
SCP-867-JP-1が当該大型車に追い付くと、SCP-867-JP-1は運転席に取り付き、ドライバーを強引に車の外部に放り出し、当該車両を奪取します。奪取されてから当該車両が500mほど走行すると当該車両と共にSCP-867-JP-1は消失します。なお、SCP-867-JP-1はドライバーの生死には関心はないらしく、これまで発生した全事例██件のうち██件ではドライバーは生存しています。
インタビュー記録867-JP-3
対象: 関口 ███氏(以下ドライバー)
インタビュアー: エージェント・酒匂
付記: 関口氏は大手運送業者に所属するトラック運転手であり、20██年█月██日にSCP-867-JP-1に遭遇、トラックを奪われた上全治1ヶ月の重傷を負いました。以下は病院で行われたインタビューです。
<録音開始>
エージェント・酒匂: まず関口さん、あなたはここ(SCP-867-JP)は大型車両は進入禁止だったにもかかわらず██tトラックで進入した。合ってますね?
ドライバー: はい。
エージェント・酒匂: そして、交差点を通りすぎて少ししたら作業服の男がやってきて、あなたをトラックから引きずり出して、奪っていった、と。
ドライバー: 信じていただけないかもしれませんが、その通りです。いきなり無表情の、作業服の男がドアを…走行中だったのに、ですよ?開けて、私のシートベルトを外して、外へ放り出したんです。
エージェント・酒匂: そしてあなたは道路にたたきつけられ…
ドライバー: 見ての通りです。…これまた信じていただけなさそうな話なんですけど、いいですかね?
エージェント・酒匂: どうぞ。信じられないような話でも案外手がかりになるものですからね。
ドライバー: ええ、あいつが私のトラックを奪って少ししたら…消えたんですよ。突然、なんの前触れもなく。一瞬にして!
エージェント・酒匂: なるほど…一瞬にして、と仰られましたが、具体的にどのように?
ドライバー: どのようにと言われても…まさしく一瞬ですよ。煙みたいに薄れて消えていった、とかじゃなくて、パッと、まるで元からなかったかのように消えたんです。
エージェント・酒匂: なるほど。
ドライバー: ところで…私のトラック、見つかってないんでしょうか…?
エージェント・酒匂: 現在全力を挙げて捜査中ですが…まだなんとも。
ドライバー: そうですか…
<録音終了>
終了報告書: この後関口氏およびその他事件関係者に対してはクラスA記憶処理を行いました。また、事故に関してはカバーストーリー「不運な事故」を、トラックの消滅についてはカバーストーリー「損傷激しく修理不能につきスクラップ」が適用されました。
SCP-867-JPの暫定的な封鎖後、その特性の調査などを目的として実験が行われました。全実験記録の閲覧を希望する場合はSCP-867-JPの研究担当者である栃木博士の承認を得た上でファイル:「SCP-867-JP実験記録」を請求してください。
実験記録867-JP-1
対象: SCP-867-JPおよびSCP-867-JP-1
目的: SCP-867-JP-1の出現および強奪が発生する車種の特定
実施方法: D-23198に総重量10,000kgの車両を運転させ、SCP-867-JPに進入させる
結果: SCP-867-JP-1は出現せず。
実験記録867-JP-2
対象: SCP-867-JPおよびSCP-867-JP-1
目的: SCP-867-JP-1の出現および強奪が発生する車種の特定
実施方法: D-23198に総重量11,000kgの車両を運転させ、SCP-867-JPに進入させる
結果: 当該車両がSCP-867-JPに進入し500m走行した後、SCP-867-JP-1が出現。SCP-867-JP-1は時速約███kmで当該車両を追跡し、D-23198を車両から引きずり出して奪取。SCP-867-JP-1が運転する当該車両は10mほど走行した後消失した。車両の行方は不明のままである。
分析: どうも律儀にSCP-867-JPにある「大型貨物自動車等通行止」の標識を参考にしているようだ。それ以上の車なら分捕ってもいい、と思っているのか? -栃木博士
実験記録867-JP-5
対象: SCP-867-JPおよびSCP-867-JP-1
目的: SCP-867-JP-1の出現および強奪が発生する車種の特定
実施方法: 無人走行仕様に改造した総重量11,000kgの車両を遠隔操作し、SCP-867-JPに進入させる
結果: SCP-867-JP-1は出現せず
分析: 重量は満たしていたはずなのだが…人間が運転していなくてはダメなのか、それとも人間が運転できる車両でなくてはならないのか、さてどちらだ? -栃木博士
実験記録867-JP-6
対象: SCP-867-JPおよびSCP-867-JP-1
目的: SCP-867-JP-1の出現および強奪が発生する車種の特定
実施方法: 実験記録867-JP-5で使用した無人操縦車両の運転席だった場所にD-33891を載せた上で遠隔操作し、SCP-867-JPに進入させる
結果: SCP-867-JP-1は出現せず
分析: おそらく人間が運転できる車のみがSCP-867-JPの餌食になる、という事なんだろう -栃木博士
実験記録867-JP-10
対象: SCP-867-JPおよびSCP-867-JP-1
目的: SCP-867-JP-1により奪取された車両の行方の調査
実施方法: D-18329にGPS発信機と各種通信装備を装着した大型トラックを運転させ、SCP-867-JPに進入させる
結果: 当該車両がSCP-867-JPに進入し500m走行した後、SCP-867-JP-1が出現。SCP-867-JP-1は時速約███kmで当該車両を追跡し、D-18329を車両から引きずり出して奪取。SCP-867-JP-1が運転する当該車両は10mほど走行した後消失した。なお、消失と同時に設置されていた各種設備の反応も消失。車両の行方は不明のままである。なおD-18329は引きずり出された際の衝撃で軽傷を負った。
実験記録867-JP-17
対象: SCP-867-JPおよびSCP-867-JP-1
目的: SCP-867-JP-1による奪取を妨害した場合の調査。
副次目標: SCP-867-JP-1の捕獲
実施方法: エージェント・志摩とエージェント・陸奥および機動部隊れ-3(”相乗り”) が乗り込んだ大型トラックをSCP-867-JPに進入させる。SCP-867-JP-1による奪取を防ぐため、エージェント・陸奥および荷台部分に乗り込んだ機動部隊隊員は全員銃器等で武装させる。
結果: 当該車両がSCP-867-JPに進入し500m走行した後、SCP-867-JP-1が出現。SCP-867-JP-1は時速約███kmで当該車両を追跡し始める。この際機動部隊隊員によりSCP-867-JP-1は少なくとも███発以上の銃弾を当てられたが、外傷は見られず、また追跡を妨害する事はできなかった。その後当該車両に追いついた後、運転していたエージェント・志摩を車両から引きずり出して奪取。この時助手席に座っていたエージェント・陸奥により散弾銃で殴打・射撃されたにも関わらず、SCP-867-JP-1は外見上無傷であり動きに支障も出ておらず、SCP-867-JP-1の捕獲の試みも失敗した。SCP-867-JP-1が運転する当該車両は10mほど走行した後消失した。なお、消失と同時に設置されていた各種設備の反応も消失。車両の行方は不明のままである。荷台に乗っていた機動部隊隊員および助手席のエージェント・陸奥は車両の消失と共に地面に落下、機動部隊隊員1名が軽傷を負った。
分析: 奴には少なくとも物理的な攻撃は通用しないようだ。SCP-867-JPをどうにかするにはこれ自体を封鎖する他なさそうだな。 -栃木博士
+ 補遺が追加されました 20██/7/19
- 内容を表示します
補遺: 20██年7月18日、ボリビア多民族国のオルロにおいてSCP-867-JP-1により強奪され消失したトラックのうち██台が使用されているのが発見されました。以下はそのうちの1台を所有していた現地の運送業者であるマヌエル・██████氏へのインタビュー記録です。
インタビュー記録867-JP-12
対象: マヌエル・██████(以下所有者)
インタビュアー: エージェント・カルロス・ダシウバ
付記: インタビューはスペイン語で行われた。スペイン語から日本語に翻訳済。
<録音開始>
エージェント・ダシウバ: さて、まずはその車の入手方法を聞きたいな。どうやってその車を手に入れたんだ?
所有者: これか?買ったんだよ。
エージェント・ダシウバ: 買った、というと誰からだ?知り合いか?
所有者: いや、これまで一度も会った事のない東洋人だよ。中国人か日本人かはわからんけどな。
エージェント・ダシウバ: どんな風にして買ったんだ?
所有者: ああ、あれは3ヶ月前の事だな。前使ってた18年モノのトラックがついにイカれて途方にくれていた時だ。奴さん、どっから聞きつけたのかは知らねえが、俺のトラックがイカれた事を知っていた。んで、こう持ちかけてきたのさ。「中古だけど日本製のトラックを安く売ってやるぞ」ってな。
エージェント・ダシウバ: 怪しいとは思わなかったのか?
所有者: いや、そりゃ俺も最初は怪しんださ。けどよ、その…一週間後くらいだったかな?その時現物を見せてもらったんだ。状態もいいしそこまで古くないし、それに普通の日本車の相場よりだいぶ安かったしな。それ見て即決だったよ。
エージェント・ダシウバ: そうか。で、その商談を持ちかけてきた東洋人について何か知ってる事は?
所有者: 全然ないな。名前も結局名乗らなかったし、それにこのトラックを買い取ってからは音沙汰無しだしな。
エージェント・ダシウバ: そうか…少し聞きたいんだが、その東洋人はこいつじゃないのか?(実験記録867-JP-14で撮影されたSCP-867-JP-1の写真を見せる)
所有者: うーん…たぶん違うと思うな。いや、俺にこのトラックを売ってくれた奴はいつもサングラスかけてたから断言はできねえけど。でも鼻のあたりとかがだいぶ違う気がする。
エージェント・ダシウバ: 違うか。聞きたいことはこれで全部だな。
<録音終了まで省略>
終了報告書: インタビュー後、マヌエル・██████氏の所有していたトラックを調査しましたが、異常な点はありませんでした。また、同様にSCP-867-JPで消失したトラックの所有者へのインタビューが行われた結果、いずれにおいても「東洋人の男から買った」という証言を得ることができました。外見等の証言から、全事例でトラックを販売した「東洋人の男」は同一人物であると推定されています。「東洋人の男」はSCP-867-JPに関与しているか、あるいはSCP-867-JPにより消失したトラックの行方などについて何らかの情報を持っていると考えられ、POI-867-JPに指定されました。現在財団はPOI-867-JPの捜索および身元の確認を行っていますが、成果はまだあがっていません。
+ 補遺が追加されました 20██/10/12
- 内容を表示します
補遺2: 20██年10月11日現在、アフガニスタン・イスラム共和国の[編集済]、ヨルダン・ハシミテ王国の[編集済]、またコンゴ民主共和国の[編集済]においても同様の「販売」が行われていた事が判明しています。これらの事例においてもPOI-867-JPの関与が疑われています。
+ 補遺が追加されました 20██/10/23
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補遺3: 上記実験結果を踏まえ、20██年10月23日をもって新しい特別収容プロトコルが適用され、防波堤整備のカバーストーリーのもと、SCP-867-JPは無期限で封鎖される事となりました。
+ 補遺が追加されました 20██/12/12
- 内容を表示します
補遺4: 20██年12月11日、SCP-867-JPにある信号機にメモ用紙が貼り付けられているのが発見されました。メモ用紙には手書きで以下の文章が書かれていました。なお、筆跡等は調査されましたが、個人の特定には至っていません。
商売あがったりだ、クソッタレ!
SCP-867-JPへの車両進入実験を行うかどうかについては審議中です。
Footnotes
1. この交差点には「大型貨物自動車等通行止」の標識が設置されています
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scp-868-jp |
評価: +62+–x
実験中、封鎖されている国立文楽劇場
アイテム番号: SCP-868-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-868-JPはサイト-8179のレベル4収容庫内に収容されます。
SCP-868-JPを使用した実験は、その実行の90日前には申請されていなくてはなりません。渉外部門の干渉により、実験日時前後72時間以内の国立文楽劇場での公演予定は中止されます。
実験中は国立文楽劇場全域をクラスⅣバイオハザード指定地域として扱い、全通気口は事前に封鎖してください。担当研究員の指示の下、バイオハザードクラスは引き上げられる場合があります。実験が終了した後、生物災害対策チームによって直ちに国立文楽劇場全域を除染してください。48時間以内に除染完了が確認されなかった場合、適切なカバーストーリーを適用し、除染が完了するまで国立文楽劇場を封鎖し続けてください。
文楽文化の断絶または大規模な変革、国立文楽劇場の移築・解体の可能性は常に精査され、収容チームはこれを排除します。また、財団は常に6名以上の文楽人形遣いを人員として確保する必要があります。
説明: SCP-868-JPは電力によって機能する三組のヘッドギア型装置であり、ヒト頭部へ装着することで起動し、脱離することでシャットダウンされます。SCP-868-JPは内蔵された未知の構造のバッテリーにより、特別な外部電源を必要としません。
SCP-868-JPは、装着者の脳にほぼ完全なフルダイブ型仮想現実を体験させる機能を持ちます。SCP-868-JPを装着すると装着者は昏睡状態に陥ります。その後、SCP-868-JPは装着者の大脳皮質の各感覚野と小脳へ電磁的に干渉し、その命令信号を操作することで仮想現実を体験させます。
この機能を活用し、SCP-868-JPは装着者へ国立文楽劇場の舞台上に立っているように知覚させます。仮想現実内において、装着者は舞台から降りたり、舞台裏へ行くことができません。同時にSCP-868-JPを装着している他の装着者がいた場合は、装着者同士が映像内でお互いの動作を視認できます。装着者の姿は全て黒衣として投影され、身長は装着者の現実における肉体と同様になります。仮想現実内の観客席には全席に様々な文楽人形があり、いずれも和装ではなく現代日本における日常的な服装です1。
仮想現実内では舞台上に特異なかしらを持つ人形(SCP-868-JP-a)が一体安置されています。かしらは若年の日本人女性の頭部に酷似した外観を持ちますが、内部構造は完全に文楽人形のかしらと同様です。装着者はSCP-868-JP-aを触覚的に知覚して操作することができ、SCP-868-JP-aは受けた操作に対して映像内で正常な動作を示します。
実体化直後のSCP-868-JP-b
文楽人形の操作に必要とされる三名の装着者2によって映像内でSCP-868-JP-aの操作がある程度適切に行われると、SCP-868-JP-aの動作に応じて現実の国立文楽劇場に異常現象(SCP-868-JP-1)が発生します。
SCP-868-JP-1は、「娘」のかしらを持つ文楽人形(SCP-868-JP-b)が国立文楽劇場の舞台手前に出現し、口部から病原体を含む未知の構成の液体を噴霧する現象です。
液体は付着した人間の皮膚組織を通過し、含まれる病原体にほぼ確実に血液感染させる異常性を持ちます。無対策でのSCP-868-JP-1現象は劇場内のほぼ全ての人間へ病原体を感染させるものと推測されます。SCP-868-JPが一つでも脱離されると、SCP-868-JP-bは消失します。
以下は財団所属の人形遣いによって実践された、SCP-868-JP-aの動作と発生したウィルスの対応です。
SCP-868-JP-1個別事例(完全なリストは担当研究班へ要請してください)
実行された動作
散布された病原体
歩行
ザイールエボラウィルス3
倒れ込む
オナガザルヘルペスウイルス4
涙を拭う
マチュポウイルス5
手を叩く
リッサウイルス属レイビーズウイルス6
お辞儀
クリミア・コンゴ出血熱ウイルス
他人へしなだれかかる
未知の異常なウイルス。感染者の皮下脂肪は全て汗腺から流出する
つまずいて転びかけ、持ち直す
未知の異常なウィルス。[検閲済]を媒介とし、社会的な組織内においては爆発的に感染すると思われる。致死率40%
複合的な動作の連続、特に演目の再現によって散布される病原体についての具体的な情報はレベル4機密に指定されています。SCP-868-JP-1によって発生する病原体の研究・活用、また研究班からの[検閲済。開示にはレベル4/868-JP資格を提示してください]の報告により、SCP-868-JPの保護に欠かせない要素として、文楽文化及び国立文楽劇場の存続は財団によって保たれることが決定されています。
補遺: SCP-868-JPは1983年、国立文楽劇場の建築中に未完成の劇場裏から発見されました。当初バーチャル・リアリティ技術は未発生であったために機構の詳細は不明な未知の技術とされましたが、近年の研究によりSCP-868-JPの脳干渉機構は大半が解析されつつあります。
財団外部の一般的なバーチャル・リアリティ技術の進歩によっては、研究班はSCP-868-JPが時間遡行実体であることを視野に収容を続ける方針を取っています。
[アクセス制限ファイル]
[レベル4認証済]
文書868-JP-15
付記:1983年、SCP-868-JPと同時に発見された床本からの抜粋です。起源の特定は失敗しています。
人形、ひとがたとたくさんそうに、言うておくれな、エ、憂きの廊、外で使われ内では置かれ、ほんに身も代も内緒の、人形芝居も飽きに飽き、一目見たきは愛き娘、エ、病み姿こそはいはけなし
朝の六つから上衣下衣ひき重ね、病は袖の振り始め。吐く、吐く、吐くには血を吐け、それ一イ二ウ三イ四、五重に七重に発疹は十三十四十五、二十三夜の骸を積んだ、天まで積んだ、あゝ積んだえ
こんゝ吐血の飛沫や可愛、京で一番エボラの娘、二番よいのは疱瘡の娘、三でよいのはヘルペス娘、ヘルペス娘は器量がようて、京で一番大坂で二番、嵯峨で三番吉野で四番、御所で五番のエボラを見れば、立てば発疹座れば肝障、歩く姿は血の達磨
絶えた絶えた絶えた、絶ゆる命をなぜ生き繋ぐ、我らひとがたまぼろしの、仮の生さえ死して美し、ましてひとを生かせはしまい、可愛や煩悶呻吟姿、病は室の初桜、苦悶は吉野の山桜、さて面白きまぼろしどもを、心ごころで楽しまん、ひとよひとどもうつつびと、その苦しむ様のみ美しきかな
SCP-868-JP-aによる演目の再現が、いずれも三ヶ月以上の重篤な症状をヒトに発生させる病原体を生じることに留意するべきであるとして、研究班内での見解は概ね一致しています。
Footnotes
1. ジーンズ、ポロシャツ、Tシャツ等。詳細は添付ファイルを参照してください。
2. 映像内の舞台袖には一組の舞台下駄が安置されており、それを使用して一名が主遣いを務める必要があります。舞台下駄の大きさは装着によって適切に調整されます。
3. エボラウィルス属のウィルスの一種。エボラ出血熱の病原体であり、致死率は最高で90%。
4. Bウィルス感染症の病原体。無治療での致死率は70~80%。生存例でも重篤な神経障害が後遺症としてみられる。
5. ボリビア出血熱の病原体。致死率25~35%。
6. 狂犬病の病原体。
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scp-869-jp |
評価: +41+–x
評価: +41+–x
クレジット
タイトル: SCP-869-JP - 幽霊船
著者: ©︎k-cal
作成年: 2018
評価: +41+–x
評価: +41+–x
アイテム番号: SCP-869-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-869-JPが出現した場合、カバーストーリー"暴風域"を流布し、予測されるSCP-869-JPの経路から船舶を退避させてください。陸上からSCP-869-JPを目撃した一般市民に対しては可能な限りクラスA記憶処理薬を用いて記憶処理を行います。
後述のインシデント869-JP以降、SCP-869-JPに接近する人員はクリアランスレベル2以下に限定され、調査艇にはメトカーフ非実体反射力場発生装置と対霊体装備を整えた機動隊員が配備されます。
説明: SCP-869-JPは形而上概念と形而下の限定的な接合部として質量を持ち存在する一隻の大型クルーズ客船です。全長は約251mで、その外見と確認可能な船舶番号から、198█年に発生した海難事故で行方が分からなくなっている"さんのぜ丸"との関連性が疑われています。
+ 海難事故概要
- 事故概要を閉じる
発生日時: 198█/4/██ 14時頃
事件概要: [削除済]高校の生徒及び教員が、修学旅行のため"さんのぜ丸"で日本領海内の太平洋上を移動中、突如として消息を絶ちました。後に行われた調査により、当時"さんのぜ丸"が航行していた███海域では不明な理由から海難事故が多発していたことが判明しています。███海域は、水運関係者の間で心霊現象が頻発する地点として認知されていました。現在███海域は心霊現象及び海難事故の多発する領域として未解明領域 UA-██████-JPに指定されています。 心霊現象の報告と海難事故の件数は徐々に減少し、現在では異常と認められない水準まで低下したため、指定は解除されました。
被害: 当時乗船していた、[削除済]高校の3年次生320名、教員41名、その他船長を含む乗組員23名全員が死亡として処理され、海上保安庁による周辺海域の捜索で大部分の被害者が非異常性の溺死体として発見されています。"さんのぜ丸"に関してはいくつかの細かい破片が発見されたものの、船体は現在に至るまで発見されていません。
さんのぜ丸: 主に観光地への送迎に利用されていた大型クルーズ客船で、事故発生の16年前から航行し続けていました。過去の記録の調査が行われていますが、現在のところ異常は発見されていません。
- 事故概要を閉じる
SCP-869-JPは約8ヵ月に1度の割合1で太平洋側から日本列島に接近し、日本列島沿岸を周回した後、太平洋側へと消失します。SCP-869-JPは日本領海外の太平洋上に出現していると考えられていますが、日本列島への接近経路から、出現地点は毎回異なっていると予想されており、日本列島への接近以前にSCP-869-JPを補足することは不可能です。
対象は一般的な光学機器などで問題なく撮影することができますが、レーダーや熱線映像装置では観測することができませんでした。なお、対象は周辺に発生する波の観測や接触実験から質量を持つことが判明しています。
SCP-869-JPは、外部からの影響によってはいかなる損傷も受けませんが、航行中徐々に錆や損傷2を増加させています。この損傷が増加する理由は現在調査中です。また、この損傷の増加に伴いSCP-869-JPは金属が擦れたり軋む際に発するような音を発生させます。
SCP-869-JPは航行中、周辺に薄い霧を発生させます。この霧そのものは一切の異常性を有しませんが、後述のインシデント-869-JPから、SCP-869-JPは霧の濃さを調整することができると予測されています。
SCP-869-JP上には多数の霊的存在が観測されます。これらの霊体はSCP-869-JPの航行中徐々に増加しているようです3が、SCP-869-JPの再出現時にその個体数はリセットされているようです。なお、SCP-869-JPを停止したり、SCP-869-JPに乗船したりしようという試みは全てSCP-869-JPの非実体化という結果に終わるために、霊的存在についての詳細な調査は成功していません。メトカーフ非実体反射力場発生装置を用いてSCP-869-JPの非実体化を阻止する試みもなされましたが、この試みは何ら効果を及ぼしませんでした。この結果により、SCP-869-JPそのものは霊的実体ではなく、形而上概念と形而下の接合部的役割を果たしているのではないかという推察がなされました。
インシデント869-JP: インシデント869-JPは、200█/8/15におけるSCP-869-JPの周辺調査中に発生しました。調査チームがSCP-869-JPに接近した際、複数の霊的存在が調査艇付近に出現4、調査の指揮に当たっていた██博士を捕縛し、SCP-869-JPの船上へ連れ去りました。その後、機動部隊による救出作戦が実施されましたが、SCP-869-JP周辺の霧が急激に濃くなる、SCP-869-JPが不規則な航路を取るなどの要因により失敗に終わりました。映像記録の検証の結果、██博士を直接捕縛した霊的存在の容貌は、それぞれ███研究員、D-███、D-███のものと高い一致を示しました。3人は、SCP-███-JPの実験時、██博士の注意欠落により発生した事故で死亡しています。SCP-869-JPの消失後周辺海域で██博士の捜索が実施されましたが、3ヶ月間の捜索にも関わらず██博士が発見されなかったため、捜索は中止されました。
追記1: 200█年、日本列島に接近するために日本領海外を航行中のSCP-869-JPが当時別の調査に当たっていた海上調査チームにより発見され、急遽調査が行われました。この調査で、SCP-869-JPが日本列島に十分に接近しない間は損傷の増加と軋み音は発生せず、SCP-869-JP上に霊的存在は存在しないことが明らかになりました。
追記2: インシデント-869-JP発生から9ヶ月後に、インシデント発生地点付近の[削除済]海岸に倒れている██博士が発見されました。発見時、██博士に外傷は見られず、栄養状態もほとんど問題ありませんでした。以下は、██博士に対するインタビュー記録です。
対象: ██博士
インタビュアー: 氷錦博士
<録音開始>
氷錦博士: SCP-869-JP上に誘拐直後の状況を教えてください。
██博士: まず、私を連れて行ったのは、███研究員、D-███、D-███でした。 ……ご存じでしょうが、私が殺したに等しい3人です。私は彼らにSCP-869-JPまで運ばれて、その後彼らと会話をしました。
氷錦博士: 危害は加えられなかったのですか?
██博士: はい。全くそのようなことはありませんでした。むしろ、彼らは私を……[沈黙10秒]
氷錦博士: 無理なようでしたら聴取の日を改めますが。
██博士: いえ、大丈夫です。……彼らは、私を許すと言ったんです。それどころか、感謝していると。財団という組織にあって、自分たちを1人の人間として扱ってくれた私に感謝していると言ったんです。そのあとは、他愛もない雑談をしましたね。
氷錦博士: 彼らがなぜあなたを連れ去ったかについては説明していましたか?
██博士: ええ。彼らは私が気を病んでいるだろうと考えて、ゆっくり話をして私を慰めようとしたのだと説明しました。事実、あの時私は非常に落ち込んでいましたから。
氷錦博士: その霊的存在は確実にその3人なのですか?
██博士: 確実、とは言い切れません。なにせ、一度死んでいるのですから。もしかすると、SCP-869-JPが見せた幻覚かも知れません。ですが、彼ら自身である可能性は非常に高いと思います。細かいしぐさなども一致していました。
氷錦博士: なるほど、周囲の様子はどうでしたか?
██博士: 他にも多くの霊的存在がいました。それ以外には特に変わったことはなかったと思います。ただ、操縦室を覗いてはみましたが、完全に無人で、誰かが操縦している風には見えませんでした。霊的存在たちの中には、えーと、[編集済]5もいました。もちろん、私は彼らとも会話を交わしました。その途中に、おそらく私の救助作戦が開始されたのだと思います。
氷錦博士: どうしてそのように思うのですか?
██博士: ヘリのプロペラの音が聞こえましたから。……恥ずかしいことですが、私はその音を聞いて、まだ帰りたくない、と思ったのです。そして、最後のあいさつも交わせなかった彼らと、もう少し話がしたい、そう願った直後、突然霧が濃くなりました。……あれはおそらく、SCP-869-JPが私の願いを叶えようとしてくれたのではないでしょうか。
氷錦博士: SCP-869-JPには意思があると?
██博士: 断言はできません。ですが、私はそう確信しています。SCP-869-JP上の霊的存在は、全て穏やかな表情をしていました。そして私も、幾分罪の意識が和らいだ気がします。これは完全に私の想像になりますが SCP-869-JPは、私たちの心の傷を肩代わりしてくれているのではないでしょうか。例の事故からずっと、独りで彼らを送りながら……
氷錦博士: "彼らを送る"、とは?
██博士: あれ、無意識に言ってしまいました。特に深い意味はありません。航行しながら、という意味です。
氷錦博士: そうですか。それでは一旦インタビューを終了します。お疲れ様でした。
<録音終了>
終了報告: ██博士の発言は主観的感想が多く含まれる、非常に信憑性に乏しいものです。ただしこれらの発言がSCP-869-JPの性質解明、特に、どこから現れどこへ向かうのかを解明する手掛かりになる可能性はあります。SCP-869-JPが増え続ける損傷によって無力化されることを防ぐためにも、SCP-869-JPとの意思疎通を視野に含めた広範な調査を提案します。
脚注
1. 出現間隔には±1~3ヵ月の誤差が見られます。
2. 破損は擦ったようなものや裂け目状のものなど多岐にわたり、形状が完全に一致するものはありません。
3. 最大で612体の霊的実体が確認されています。
4. この調査以前に、調査艇に対してSCP-869-JP及び霊的存在が干渉した例はありませんでした。
5. インシデント869-JP以前に殉職済みの職員13名の名前
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scp-870-jp |
評価: +16+–x
アイテム番号: SCP-870-JP
オブジェクトクラス: Euclid Keter
特別収容プロトコル: SCP-870-JPは、現在サイト-8186内の対核防御壁を用いた10m×10m×180mの四角柱型の特別収容施設内1に真空状態を保ち、光を遮断した状態で収容されています。これは、一時的な収容措置に過ぎず、可及的速やかにSCP-870-JPの進行を止めなければいけません。SCP-870-JPは、性質上移動させることは非常に困難であり、この特別収容施設はいかなる場合でも破壊されることを阻止してください。SCP-870-JPは2ヶ月に一度、可視光線を用い進行状況を確認する必要があります。特別な場合を除き、この作業を必要以上に行うことは禁止されています。もし2ヶ月に50cm以上の降下が確認された場合は速やかにレベル3クリアランス以上の職員に報告してください。
現在SCP-870-JPの実験は具体的な解決策が提案されるまで凍結されています。
説明: SCP-870-JPは黒色で、直径約3cmの球体であると推測されます。SCP-870-JPはその特異性のため、正確な大きさは分かっていません。質量、体積を調べるための実験は失敗に終わりました。
SCP-870-JPは一般的に言われる『ブラックホール』に類似した性質を持っています。SCP-870-JPは周囲3m以内のあらゆるもの2を吸収し、吸収したものの量に比例し地球中心部に向けて降下しているものと推測されます。重力や遠心力も吸収されていると思われ、地球の自転に合わせ公転しているのではないかと推測されます。SCP-870-JPはその性質上地面に接した場合地球内部まで降下、地殻変動やマントルの破壊によるK-クラス世界崩壊シナリオが起こることが推測されます。
SCP-870-JPは、2010/01/01に、サイト-8186上空████mに確認されました。確認された時点で50m/hで降下しており、即座にSCP-870-JPの特異性が調べられ、特別収容施設が作られた後、地上から██m時点で収容されました。
現在、SCP-870-JPは地上█mに存在しており、その降下速度は2ヶ月に30cmまで抑えられています。
+ 実験記録を表示
- 実験記録を隠す
実験記録870-JP-1 - 日付2010/01/05
対象: SCP-870-JP(50m/hで降下中)
実施方法: 地上████mを降下中のSCP-870-JPに無人偵察機3を飛ばし観察を行う。
結果: 無人偵察機がSCP-870-JPに接近した瞬間に映像が停止、数分後大部分が破壊された無人偵察機が地上に落下しました。
分析: SCP-870-JPは近づくことでその特異性が現れると思われます。
実験記録870-JP-2 - 日付2010/01/10
対象: SCP-870-JP(50m/hで降下中)
実施方法: 地上████mを降下中のSCP-870-JPに無人探索機を2機を飛ばし、そのうち1機をSCP-870-JPに接近させ、もう一方でその経過の観察を行う。
結果: SCP-870-JPに無人探索機が接近した瞬間に無人探索機の約半分が吸収され、一瞬で約5m降下しました。
分析: SCP-870-JPは接近した物体の大部分を吸収し、吸収した分降下すると思われます。
実験記録870-JP-3 - 日付2010/01/12
対象: SCP-870-JP(25m/hで降下中)
実施方法: 地上████mを降下中のSCP-870-JPに無人探索機2機を飛ばし、そのうち1機に液体の水500mlを搭載。SCP-870-JPに水を投下し、経過を観察する。
補足: 実験は夜間に行われた。
結果: SCP-870-JPに水が投下された瞬間、SCP-870-JPは一瞬で約1m降下しました。
分析: SCP-870-JPは固体の物質に限らずあらゆる物質を吸収するものと推測されます。この実験結果を受け、SCP-870-JPは大気や光を絶えず吸収することで常時降下していると推測されます。前回の実験より速度が低下していたのは太陽光を吸収できていないからだと思われます。以降実験は正確なデータを取るために夜間行われることになりました。4
太陽光や大気をも吸収するのは非常に厄介だ。収容施設を建設するに当たって真空状態と遮光状態の維持するように加えて伝えなければならないな。 -██博士
実験記録870-JP-4 - 日付2010/02/23
対象: SCP-870-JP(25m/hで降下中)
実施方法: 地上███mに降下中のSCP-870-JPを特別収容施設に収容するためSCP-870-JPの10m上空を維持させたCH-46E航空機からサイト-8186で排出された廃棄物を投下。収容施設に10m以上入り次第完全に密閉し施設内の真空処理、遮光処理を行う。
結果: SCP-870-JPの収容が完了。
分析: SCP-870-JPは収容し、降下を防ぐことができたように思えます。しかし、いまだ未明の部分もあるため、Euclidクラスオブジェクトとして登録を願います。
承認。 -O5-█
補遺イ: 記録870-JP - 日付2010/02/25
内容: SCP-870-JPの収容後、新たな実験のためにSCP-870-JPの位置を確認したところ、収容した位置より僅かに降下していることが確認されました。
補遺ロ: SCP-870-JPが何を吸収しているかは予想がつきます。SCP-870-JPは重力自体を吸収しているのでしょう。さらに重力を吸収しているとなると同じ力である地球の自転による遠心力をも吸収していると推測できます。しかしそれが事実となると現在の手段ではSCP-870-JPの降下を完全に防ぐことは不可能ということになります。今すぐこのオブジェクトをKeterクラスに引き上げ、実験を凍結すべきです。 -██博士
承認。SCP-870-JPの解決案が提出されるまで実験を凍結します。 -O5-█
補遺ハ:
+ ██博士の提唱
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文書870-JP-██
SCP-870-JPが一体なんなのか、皆がこのオブジェクトをどうするかと慌てふためいている。しかし、本当に重要なのは何故このオブジェクトが現れたのかではないだろうか。突如としてサイト-8186の上空に現れたが、そもそもなぜサイト-8186の上空だったのか。単なる偶然なのか、それとも誰かが故意に財団に向けたものなのか。その手掛かりになると思われるものを発見できた。しかし、SCP-870-JPの特性上その情報を確認することができない。だからこれはただの推論に過ぎないのだ。
私はSCP-870-JPがサイト-8186の上空に現れる前の情報を探した。もし誰かが故意に行ったのであれば何かあるのではと考えたのだ。なにせ地上████mで確認されたのだ、簡単に行えるものではない。要注意団体が絡んでいる可能性が考えられた。だからこそ私は必死に情報を集めていた。
その中でSCP-870-JPと思われる報告が██████████で記録されていた。日本上空約3████kmに位置する人工衛星████が約100m/hで降下する黒色の物体を発見したという報告だった。██████████はその物体を宇宙ゴミと判断し、大気圏で完全に消失するだろうと結論付けた。
もしこの報告が本当にSCP-870-JPと同じものだとするならば、少なくとも宇宙から地球に向かって真っすぐ落ちてきたということだ。いや、飛んできたという方が正しいのかもしれない。SCP-870-JPの特性上地球に近づくことは容易だろう。しかし誰かが故意に行ったというのは非常に難しく思える。ならばどこからやってきた?その手掛かりを掴むために私はさらに調べた。
そして一つの結論が出た。
██████████で記録された日からSCP-870-JPの移動速度を元に逆算を行った。その結果、多少の誤差はあるが2009/07/22前後で月に接触していることが分かった。それならば、月がSCP-870-JPと接触した痕跡が必ず現れるはずだ。しかし、その日前後で月自体に何か変化が起こったという報告は無い。それはつまり、SCP-870-JPは月から生まれたと結論付けられるのではないのだろうか。むしろそれ以外の可能性が考えられない。
これからはこの結論から考えられる推測に過ぎない。SCP-870-JPがなぜ月から生まれ、地球に向かっているのか。そもそも月が生まれた起源はジャイアント・インパクト説5が最有力とされている。つまり月は地球の一部が入っているという事だ。SCP-870-JPは地球の一部、または地球にあるべき存在なのではないだろうか。それが何らかの現象によって月から分離し地球に向かいだしたのではないだろうか。
もしそうなのであれば、このオブジェクトに危険性がないのかもしれないと思ってしまう。失われたモノを取り戻すために動いているのならば地球が拒否するとは考えられない。しかし、仮にそうだとしても確認する手段がない。
これはあくまでも推論だ。しかし、2009/07/22という日は日本で46年ぶりに皆既食が確認された日だ。SCP-870-JPがその日に月に接触しているのは偶然とは思えない。何か関係性があるはずだ。だからこそ私はこの推論を提唱する。SCP-870-JPの実態がなんなのか。これが私たちに与えられた課題なのだ。 -██博士
Footnotes
1. 地上には██m突出しています。
2. 力、光、物質すべて
3. ドローン
4. 収容施設に収容されたため必要性をなくしました。
5. 衝突起源説とも呼ばれる。この説では月は原始地球と火星ほどの大きさの天体が激突した結果形成されたとされている。
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scp-871-jp |
評価: +19+–x
SCP-871-JPの子実体
アイテム番号: SCP-871-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-871-JPは、サイト-8102の木造の収容ロッカーに鉄筋コンクリートのブロックに着生した状態で収容されます。新たなSCP-871-JP-1が確認され次第、機動部隊う-10("キノコ狩りツアー")によってSCP-871-JPの廃棄、SCP-871-JP-1の破壊が行われます。近隣住民にはクラスA、またはクラスB記憶処理が施され、場合に応じて適切なカバーストーリーが適用されます。SCP-871-JP-1に住んでいた住民にはクラスB記憶処理の後再び適切な住居が与えられ、必要であれば一時的に財団で療養を受けます。
追記: SCP-871-JP-1-12の周囲には臨時サイト-81██が設置され、月に一度機動部隊う-10("キノコ狩りツアー")
による内部の調査が行われます。
説明: SCP-871-JPは糸状菌1の一種です。SCP-871-JPは外見や生態からホンシメジ(Lyophyllum shimeji)の突然変異種と推測されていますが、情報が不足しており種の特定には至っていません。
SCP-871-JPはコンクリートを菌床とし、表面に付着すると非常に硬い菌糸をコンクリート内の鉄筋に侵入させ菌根2を形成します。その後コンクリートに含まれた水分やセメントの成分を養分として成長します。この過程において鉄筋はSCP-871-JPの菌糸の動きを補助します。そのためSCP-871-JPは鉄筋が無い場合でも成長できることが判明していますが、鉄筋がある場合に比べてその成長速度は非常に遅くなります。
SCP-871-JP-1はSCP-871-JPが着生したコンクリートです。SCP-871-JP-1の内外にはSCP-871-JPの菌糸や子実体が多数確認されます。またSCP-871-JPがある程度まで成長し、SCP-871-JP-1の強度が十分でない場合SCP-871-JPの菌糸によってSCP-871-JP-1は崩壊します。以下はSCP-871-JPの事案記録です。
+ 事案記録871-JPの抜粋を閲覧する
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事案記録871-JP-1-2
日時: 19██/█/█
場所: ██県██町
内容: 建設中のビルが侵食を受けていた。侵食の度合いは低く、SCP-871-JP-1は適切に処理された。死傷者はおらず建設会社の従業員にはAクラス記憶処理が施された、カバーストーリー「工事中の崩落」が適用された。
分析: なによりもまだ工事が進んでおらず朝早かったのが不幸中の幸いだった。
事案記録871-JP-1-3
日時: 19██/█/█
場所: ██県██市
被害内容: ██県が管理している集合住宅が侵食を受けていた。█号棟4██号室を中心に8部屋にわたってSCP-871-JPが確認され、█号棟は破壊された。近隣住民にはAクラス記憶処理が施され、█号棟の住民は財団で一時保護された後Bクラス記憶処理を受けて建て直された█号棟へと戻された。
分析: 宿主の大きさとSCP-871-JPの成長の速さは比例するようだ。
事案記録871-JP-1-8
日時: 19██/█/█
場所: ██県██市街地
被害内容: SCP-871-JPに寄生されていた市内のアパート一件が崩落した。空き部屋となっていた一階から大量のSCP-871-JPが発見され、支柱のコンクリートがひどく老朽化していた事が判明した。崩落により事案当時住宅内と周囲にいた█人が巻き込まれたがいずれも命に別状はなかった。
分析: 宿主のアパートは高度経済成長期に建てられていたものだった。今回はアパートが小さ目で良かったが高層マンションやビルの崩落の可能性を考えると危険だな。
詳細は事案記録871-JPを参照してください
SCP-871-JPの起源はわかっておらず、鉄筋コンクリートの普及に伴い国内での被害が多数報告されました。SCP-871-JPの活動は戦時中の鉄不足の一因とも考えられており、蒐集院による破壊活動や竹筋コンクリートの使用の推奨が行われましたが絶滅には至らず、終戦後財団に収容されました。
補遺-1: 20██年、██山中の旧██鉱山にてSCP-871-JP-1が発見された際、無人探査機による内部の調査中に突如探査機が破壊されました。そのためDクラス職員を使用した探査が行われました。以下はその探査記録です。
+ 探査記録871-JP-1-12を閲覧する
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日付: 20██/█/█
調査員: D-████(カメラ、マイクを装備)
備考: SCP-871-JP-1-12が発見された時に行われた。██鉱山は良質な鉄が取れることで有名だったが、現在既に閉鎖されている。
<記録開始>
D-████: なんだよここ、湿気がすげえし森ん中みてえだぜ。
野島博士: そのまま続けて。とりあえずそこを歩き回って気づいたことは全て教えてください。
D-████: どうもこうもねえよ。壁は全部糸だらけキノコだらけだ気色悪い。すげえカラスの数だし怖えよ。
野島博士: 我慢してください。ではそこの建物に入ってください。
D-████: ここに入るのか。[五秒間の沈黙]わかった。ここは事務所だったみたいだな。キノコがびっしりだ。なんかが腐ったみたいなニオイもするぜ。[短い悲鳴]すげえデカいクモだ。見たことねえぞこんなやつ。
野島博士: ありがとうございました。ではさっきの大通りに戻って。
D-████: 了解。うん?[悲鳴]
[何かが崩れる音]
野島博士: D-████。応答してください。何が起こりましたか?
D-████: ああ、大丈夫だ。危なかったぜ。建物が崩れやがった。
野島博士: 建物が劣化していてもおかしくありませんから、十分注意してください。ではさっきの大通りを進んでください。
D-████: わかったよ。[重要度が低いため割愛]ここは・・・広場だったみたいだな。瓦礫がたくさんあるぜ。これも多分建物だったんだろうな。量からして結構デカいやつだったはずだ。[沈黙]
野島博士: どうかしましたか?
D-████: [声を潜めて]野良犬、いやオオカミか?絶滅したんじゃねえのかよ。
野島博士: カメラに映せますか?
D-████: わかった。こんな感じでいいか?
野島博士: うーん、こちらからははっきりとは確認できませんね。後で機動部隊を派遣します。では[D-████の声に遮られる]
D-████: やべえ、追いかけてきやがった。
野島博士: 逃げてください。
D-████: なんでオオカミなんかいるんだよ[罵倒]、ああ壁だ。糸でできてる。
野島博士: 迂回できそうですか?
D-████: いや行き止まりだ、ただ糸に手がかかる。登るぞ。[オオカミの鳴き声]こら、近寄るな。
野島博士: 大丈夫ですか?
D-████: [D-████の力む声]ああ、なんとかな。[オオカミの鳴き声]歓迎されてねえなあ。[D-████が地面に着地する]
野島博士: ただ映像を見ていると最近あまり見ない生物が映りますね。まさか絶滅したはずの動物がいるとは思いませんでしたが。
D-████: 人間様が住めるような環境じゃなくなったしなあ。動物には住みやすいんだろうよ。
[何かが落下する音]
D-████: [罵倒]、またかよ。
野島博士: 大丈夫ですか?何か大きな音が聞こえましたが。
D-████: また建物が崩れた。瓦礫だ。瓦礫が落ちてきた。誰かが俺を狙ってる。
野島博士: 落ち着いて。まずはその路地を抜けてください。
D-████: [罵倒]、カメラを落としちまった。[何かが落下する音]
野島博士: D-████、応答してください。
D-████: 大丈夫だ。[罵倒]まだ死にたくねえよ。[何かが落下する音]先生、道が塞がり始めた。糸だ。キノコが糸を出しやがる。
野島博士: 急いでください。
D-████: [短い悲鳴]まずい、糸が足に[何かが落下する音]
野島博士: D-████、応答してください。D-████。
<記録終了>
終了報告書: D-████と連絡が取れなくなってから機動部隊う-10隊員8名をSCP-871-JP-1-12内に派遣したところ、この探査と同様に建造物に接近した者を狙ったように思えるSCP-871-JP-1-12の崩落が見られ、一名が軽い怪我を負いました。また、探査中にD-████に発見された動物の遺伝子を解析した結果、ニホンオオカミ(Canis lupus hodophilax)だったと判明しました。その他絶滅したと思われていた、または絶滅危惧種に指定されている生物がSCP-871-JP-1-12内で多数確認されました。破壊された探査機とD-████の遺体はそれぞれの通信が途絶えた場所で発見されました。
SCP-871-JP-1-12内において人間は邪魔者として扱われるようです。なぜ絶滅種が住み着いているのかは今後の研究課題ですね。-野島博士
補遺-2: SCP-871-JPについての調査の結果、SCP-871-JPと同じ外見の菌類が19世紀、アマチュアの探検家に発見されていたことがわかりました。該当の菌はシメジ属(Lyophyllum)の新種として提出される予定でしたが、提出前に発見者が死亡し後継者がいなかったために正式に認知されませんでした。その時点から該当の菌の発見情報は一切見つかっておらず、SCP-871-JPとの関係性などは現在も調査中です。
情報が少ないため断定はできませんが、私はその菌が一度絶滅に瀕しSCP-871-JPへと変異したのではないかと推測します。その菌の情報が欠落しているのは日本人の自然破壊が活発になった時期です。また、SCP-871-JP-1-12で発見された動物は全て衰退の理由として人間の活動が挙げられます。もしその菌が人間に追いやられていたのだとすると、SCP-871-JPの存在理由も理解できるのではないでしょうか。 -野島博士
Footnotes
1. 菌類の内でも菌糸と呼ばれる管状の細胞で構成されるもの。
2. 土壌中の糸状菌が植物の根に着生したもの。
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scp-872-jp |
評価: +85+–x
アイテム番号: SCP-872-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-872-JP指定地域には、常に90人以上の人間が在住します。その割合は、財団職員20%、一般市民80%とし、最低でも20戸以上の世帯が存在するように維持してください。
SCP-872-JP-1に在住する財団職員は、極力内部に1人で留まらないようにしてください。SCP-872-JP-1内部に1人しかいない状態で来客があった場合、7分以内に正面玄関以外の場所から退出し、そこから正面玄関に向かい来客へ応対してください。何らかの事情でそれが不可能な場合、他の職員をその場へ招集してください。
また、一般市民が在住するSCP-872-JP-1の正面玄関は常に担当職員によって監視されます。
説明: SCP-872-JPは20██年現在、██県██市内のある住宅地域です。SCP-872-JPは19██年代に多発した失踪事件を調査する過程で存在が判明しました。その後詳しい調査を行った結果、後述する異常性が発覚し現在に至ります。また、以下の条件の内いずれかを満たした時にSCP-872-JPの異常性は国内に存在する他の住宅街へ"移動"します。
SCP-872-JP内の住民数が██人以下となった場合
SCP-872-JP内の世帯数が██戸以下となった場合
住民の██%以上がSCP-872-JPの存在を認識している場合
SCP-872-JP-1はSCP-872-JP指定地域内に存在する住宅です。SCP-872-JP-1自体に特筆すべき異常性は存在せず、物理的破壊も可能です。また、SCP-872-JP指定地域内で住宅を新設するとその住宅もSCP-872-JP-1となる事が確認されています。
SCP-872-JP-2は、SCP-872-JP-1にて不定期に発生する異常現象です。ただし発生する条件として、「SCP-872-JP内部に人間が1人しか存在しない(以下、内部の人間を被害者と表記)」「被害者が睡眠中などの理由で意識を失っていない」「正面玄関が何者にも目視されていない」必要があるようです。
SCP-872-JP-2が発生した場合、玄関先には誰もいないにも関わらずSCP-872-JP-1のチャイムが作動します。被害者がインターホンやドア越しにこれへ応答すると、対象にとって違和感のない人物1の声が何らかの用件を伝えます。モニター付きインターホンや覗き窓で確認すると玄関前の映像へ実際にその人物が映りこみますが、外部のカメラや録画映像で玄関先を確認しても何も映りません。
正面玄関のドアを開かずにいるとチャイムは鳴らされ続け、次第にその頻度は短くなります。また、SCP-872-JP-2発生から約3分が経過した時点でチャイムと同時にノックが行われるようになります。こちらも経過時間に応じてその力と頻度が増大し、鉄製のドアが変形を起こした事例が確認されている他、段階によっては複数のノック音が重なる等、2人以上によってノックされているかのような特徴が認められます。
正面玄関のドアを開く、あるいはドアを開かずに約9分が経過すると、被害者の消失という形でSCP-872-JP-2は終了を迎えます。この際にどういったプロセスを経て対象が消失するかは確認されておらず、何処へ移動するのかも不明です。SCP-872-JP-2は「正面玄関以外の場所から家を出る」「外部の人間がSCP-872-JP-2発生中に、正面玄関ドアへチャイムあるいはノックを行う」事で非活性化する事が判明しています。この性質を用いることで消失の回避が可能です。
+ 実験記録872-JP-1
- 閲覧の終了
実験対象:D-872-JP-1
実施方法:SCP-872-JP-2が発生した後、裏口から脱出する。D-872-JP-1はGPS・ビデオカメラ・通信機がセットされたヘッドセットを着用しています。
<録音開始>
D-872-JP-1: ……えっと、聞こえてますか? こちら、D-872-JP-1……で良いんですよね? 現在、指定された住宅の前です。
████研究員: はい。では、住宅の内部に入ってください。
D-872-JP-1: え、大丈夫なんですか?
████研究員: 私たちが差し押さえた住宅です。そうでなければ実験なんてしませんよ。
D-872-JP-1: あ、それもそうか……じゃあ入りまーす。
(ドアの開閉音、D-872-JP-1の足音)
D-872-JP-1: ……お仕事のネタになるくらいだからもっと荒んだ感じかと思ったけど、そうでもないんですね。生活感のあるお家で。そういえば、今回のお仕事ってなんですか?
████研究員: 今回の実験はそこに留まる事そのもので、特別な事を行う必要はありません。実験中は住宅内で自由に過ごしていただいて構いません。
D-872-JP-1: ……このお家、ヤバいんですか?
████研究員: 我々がSCP-872-JP-1と呼んでいるものです。私たちの指示通り動いていただければ無事に帰ってこれますよ。
D-872-JP-1: ああ、今回の私の番号、そういう事か……。ううん……テレビとかって点けて良いんですか?
████研究員: 構いませんよ。
<05h-11m-02sの時点まで略>
(チャイム音)
D-872-JP-1: あ、誰か来たみたいです。
████研究員: インターホンに出てください。
(D-872-JP-1が受話器を取る。インターホンのモニターにはエージェント・██が映っていた)
インターホン: ごめんください。お久しぶりです、██です。2(D-872-JP-1の本名)さんいらっしゃいますか?
D-872-JP-1: 私ですか? わかりました。
(受話器を下ろす)
████研究員: では、そこから出てはいけません。待機してください。
D-872-JP-1: え、良いんですか? 先生の所のエージェントさんじゃ……。
████研究員: 本当に用があるならば、貴方の下を訪ねる前にまずこちらに連絡を寄越すはずです。それを我々は受け取っていません。それに、エージェント・██はそこから███km離れた地点で別任務に当たっています。その場にいるはずがありません。
D-872-JP-1: え……。
(チャイム音、D-872-JP-1の小さな悲鳴)
████研究員: ここから何度もチャイムが鳴らされるでしょうが、全て無視してください。それと、今のうちに裏口へのルートを確認しておいてください。
<05h-14m-29sの時点まで略>
(5回のノック音)
D-872-JP-1: ノック……?
████研究員: それも無視してください。応じる必要はありません。
(4回のノック音、それに重なるように1回のチャイム音)
D-872-JP-1: ……この人、本当に……本当に、エージェントさんじゃないんですか?
████研究員: 有り得ません。そのまま待機してください。
<05h-16m-52sの時点まで略>
(19回のチャイム音、8回のノック音。ノックは先ほどよりも強い力で行われている)
D-872-JP-1: 先生、これどうなってるの!?
████研究員: 落ち着いてください。何度も言いますが、こちらの指示通り動いていただければ害はありません。
D-872-JP-1: チャ、チャイムも、ノックも、ずっと鳴りっぱなしで、さっきからずっとで……。せ、先生、そのSCPなんとか……って、「1人」なんですか?
████研究員: 今扉を叩いているのはSCP-872-JP-2と呼ばれる仮定上の存在です。それが1体存在するのか、2体存在するのか、それ以上存在するのかは私にもわかりません。
D-872-JP-1: そんな……(2回の大きなノック音、D-872-JP-1の小さな悲鳴)先生!
████研究員: ……頃合ですね。裏口から退出する事を許可します。
(カメラは裏口へ向かい、やがてそこから家を出る姿を記録。音源から遠退くにつれて小さくはなるが、チャイムとノックは継続されている事がわかる)
D-872-JP-1: うぅ、怖かった……。
████研究員: では、そのまま玄関口の方に向かってください。
D-872-JP-1: ……冗談でしょ?
████研究員: 玄関口の方角に向かってください。これは命令です。
D-872-JP-1: 勘弁してください先生! まだチャイムの音が鳴ってるの、聞こえるでしょ!?
████研究員: だからこそ我々は確認する必要があるのです。向かいなさい。命令違反は処罰の対象となります。
D-872-JP-1: ……。
(31秒間映像と音声に大きな変化なし。やがて、D-872-JP-1が歩き出し玄関口の方角へ向かう。チャイム音とノック音が歩を進める毎に大きくなる)
(この時点でカメラは住宅の角を映しており、GPSは正面玄関から6mほどの距離にいる事を示していた)
(角まで来るとD-872-JP-1は立ち止まり、それから6秒後に正面玄関を覗き込んだ。直後、チャイム音とノック音の一切が停止する)
D-872-JP-1: ……いません。
████研究員: いない?
D-872-JP-1: 誰も、いません……今の、今まで……すごく大きい音してた……のに……。
████研究員: ……わかりました。では指定した場所で合流しましょう。
<以下略>
終了報告書: その後、ランデブーポイントにてD-872-JP-1を回収。実験後に近隣に待機していた財団職員にインタビューを行いましたが、SCP-872-JP-2によって発生していたチャイム音やノック音を全く認識していなかった事が判明しています。この事から、実際にチャイムやノックが行われているわけではなくSCP-872-JP-1内の人間・機材を対象として幻覚を引き起こすオブジェクトではないかとの仮説が立てられました。
+ 実験記録872-JP-2
- 閲覧の終了
実験対象:D-872-JP-2
実施方法:SCP-872-JP-2が発生した後、SCP-872-JP-1内で9分間待機する。D-872-JP-2はGPS・ビデオカメラ・通信機がセットされたヘッドセットを着用しています。
<録音開始>
D-872-JP-2: それで先生、今日は何の実験なんだ?
████研究員: 本日はそのアパート内で実験を行います。中へ入ってください。
(ドアの開閉音、D-872-JP-2の足音)
D-872-JP-2: 見た感じ普通のアパートだけど、俺はここで何をすれば?
████研究員: この部屋の内部に留まる事そのものが実験内容ですので、好きに過ごして戴いて構いません。ただし、もしチャイムが鳴ったとしても決して正面玄関のドアは開かず居留守を使ってください。
D-872-JP-2: ああ、今回はそういう感じか。わかった。
<02h-31m-44sの時点まで略>
(チャイム音)
D-872-JP-2: ……これか。
████研究員: はい。応じないようにお願いします。
D-872-JP-2: うん、わかってる。わかってるが……。
D-872-JP-2: アンタたちが、俺に気を利かせてピザを頼んでくれたってわけじゃないんだな?
████研究員: 有り得ません。
D-872-JP-2: 本当に冗談通じねえよな。アンタら。
(チャイム音)
<02h-34m-58sの時点まで略>
(チャイム音、3回のノック音)
D-872-JP-2: おい、今度はノックしてき(チャイム音)たぞ。
(2度のノック音)
████研究員: 無視してください。想定済みです。
D-872-JP-2: 想定済みって……(チャイム音)じゃあ、このドアを叩いてるのは誰なんだ?
(チャイム音と同時に6回のノック音)
████研究員: 私たちもわかりません。それを判断するためにこの実験があるとも言えます。
D-872-JP-2: だんだんおっかなくなってきた。(7回のノック音)……さっさと諦めてくれよ、いつまで居座るつもりだ……。
<02h-40m-12sの時点まで略>
(チャイムは止め処なく鳴らされ続け、ノックの音は最早打撃音と言えるものになっている)
D-872-JP-2: (パニック状態)おい、どうなってんだよ。ドアの外にいるやつ誰だよ!
(2回の大きな打撃音)
████研究員: 落ち着いてください、この事態は想定済みです。待機(大きな打撃音)してください。
(大きな打撃音)
D-872-JP-2: (罵倒) 畜生、何だってこんな……!(大きな打撃音が2度、ドアの破壊によると思わしき金属音が1度) そもそも、待機っつったって何を待てっていうんだ!
████研究員: 次に(5回の大きな打撃音)発生する現象を我々は確認する必要があります。これは命令です、待機(一際激しい打撃音、ドアの変形が悪化する)してください。
D-872-JP-2: 正(大きな打撃音)気じゃねえ、外にいる連中は正気じゃねえ……何だってあんな馬鹿力でドアを叩けるんだ? 一体何人-(12回の一際激しい打撃音。D-872-JP-2の悲鳴、嗚咽)。
████研究員: もう少しの辛抱です、堪えて下さい。
D-872-JP-2: (荒い呼吸音)クソ、クソ、クソ、何が「堪えて下さい」だ、もう嫌だ。俺は……。
<02h-40m-52秒、SCP-872-JP-2が発生してから9分08秒が経過した時点でチャイム音と打撃音の一切が停止する>
D-872-JP-2: (荒い呼吸音)止まった……?
████研究員: 周囲を確認してください。何か異常はありませんか?
(カメラの映像が旋回し、周囲の映像を映し出す。これといった異常は認められない)
D-872-JP-2: (荒い呼吸音)異常、異常。たぶん、ねえ、と思う。
████研究員: わかりました。では、正面玄関から出てきてください。指定した地点でこちらと合流しましょう。
D-872-JP-2: ……あ、ああ。もうこんなおっかない思いは御免だ。今回の仕事が終わったらしばらく休ませて-(カメラが背後へ旋回する)-あ゛3。
<02h-41m-17秒、SCP-872-JP-2が発生してから9分33秒が経過した時点で音声・映像・GPS共に通信が途絶える>
████研究員: D-872-JP-2?
(10秒間沈黙)
████研究員: ……通信が途絶えました、以上で映像・音声の記録を終了します。
<録音終了>
終了報告書: D-872-JP-2の行方は現在も判明していません。その後実験に使用したSCP-872-JP-1へ向かうと、映像記録通り正面玄関のドアには激しい力を加えたような変形、深い打撃跡が多数確認されました。この事から、当初幻覚説が有力とされていたSCP-872-JP-2の正体について現在議論が為されています。
Footnotes
1. 被害者の家族・友人・宅配など。
2. 民間人への機密漏洩を回避するために設定した、当該オブジェクト指定地域において職員同士が連絡を取り合う際の符丁に相当する言葉です。
3. 悲鳴が途切れた結果録音された音声だと思われます。
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scp-873-jp |
評価: +32+–x
評価: +32+–x
クレジット
タイトル: 花粉草
著者: ©︎rkondo_001
作成年: 2015
評価: +32+–x
評価: +32+–x
アイテム番号: SCP-873-JP
オブジェクトクラス: Euclid
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SCP-873-JP-1-f段階に入った宿主
特別収容プロトコル: SCP-873-JPの実体と胞子サンプルは耐バイオハザード設備を施した収容房に隔離されます。サンプルの取り扱いには防護マスクを着用し、収容エリアへの出入りの際には入念な各種除染手続きを踏んでください。発症者とその接触者は同様の装備の上で早急に隔離し、エリアの除染を行ってください。オブジェクトとの関連を疑われる人間には専用に調剤された対SCP-873-JP薬の投与が行われます。SCP-873-JP-1-f段階となった感染者とその寄生体は焼却により問題無く処理が可能です。
説明: SCP-873-JPはシダ植物の一種とみられる未知の品種です。遺伝子上はシシガシラ科に類縁すると推測されますが、多くの点で現在知られているシダ植物と異なる性質を見せます。SCP-873-JPは1年間のうち、2月から4月までの3ヶ月の間のみ個体の成長と約20μm程の胞子の散布を行う事が判明しています。これは通常種のように湿った土壌では発芽せずに哺乳類、特にヒト(Homo sapiens)の鼻や喉、あるいは目などといった粘膜上にて急速に発芽と細胞分裂を繰り返す事が確認されています。この上記の3ヶ月間を過ぎたSCP-873-JPの胞子は、粘膜上に残存した状態で1年後の成長期まで休眠状態に入ります。SCP-873-JPの宿主となった対象者をSCP-873-JP-1とします。SCP-873-JPとSCP-873-JP-1についての段階における観察資料を以下の表にまとめます。
段階
SCP-873-JPの状態
SCP-873-JP-1の状態
SCP-873-JP-1-a
SCP-873-JPの胞子は休眠状態にあります。SCP-873-JPは2月から4月になるまでこの状態でSCP-873-JP-1の粘膜上に残存します。
自覚症状はみられず、健康的な反応をみせます。
SCP-873-JP-1-b
2月から4月になるとSCP-873-JPの胞子は発芽し、他のシダ植物のように前葉体を形成します。これは極めて小さく薄く、粘膜上に張り付くように形成されます。SCP-873-JP-1が目をこする もしくは咳やくしゃみを行う事により、前葉体の造精器から造卵器へと精子が運ばれ、受精が行われると考えられます。
SCP-873-JP-1はSCP-873-JPの寄生箇所の痒みを訴えます。
SCP-873-JP-1-c
受精が行われたSCP-873-JPは粘膜上に強固に接着し、胞子体を形成します。形成された胞子体は成長を一旦停滞させ、微細なまま胞子の散布を開始します。それに対してSCP-873-JPの根は急速に発達し、粘膜からSCP-873-JP-1の組織内部へと侵出します。
SCP-873-JP-1の症状は強まり、くしゃみや鼻水 目の充血といった、花粉症やアレルギー性鼻炎のような症状を見せるようになります。この頃から、これらの症状にあわせて体外への胞子の散布が始まります。
SCP-873-JP-1-d
SCP-873-JPの根は複雑に絡んだ寄生根と茎1へ成長し、破壊された粘膜下の組織にかわってその位置を占め始めます。その末端は神経や脳幹に至り、その正常な動作を妨げます。胞子の散布はより激しくなります。
SCP-873-JP-1の症状はより悪化し、常時咳とくしゃみを繰り返す極めて深刻なものとなり、それに伴い常時口や鼻、目から一定量の胞子を放出しています。その症状にも関わらず、SCP-873-JP-1は屋外など、より他の人間の集まる場所への移動を求めるようになります。
SCP-873-JP-1-e
SCP-873-JPの胞子体が再び成長を始めます。一旦胞子の放出は停滞します。
SCP-873-JP-1の症状は熾烈を極め、多くの場合喉や鼻、眼孔の粘膜を直接かきむしる、眼球の自己摘出といった行動に走ります。SCP-873-JP-1はこれらにほとんど痛みを感じず、粘膜組織が破壊された事による地下茎の露出を招きます。
SCP-873-JP-1-f
地下茎が露出した事でSCP-873-JPはその胞子体を急速に成長させ、24時間以内には眼孔、鼻孔、口から一斉に生い茂ります。同時に、全ての胞子体が爆発的な胞子の散布を行います。以降、SCP-873-JPはSCP-873-JP-1の組織を土壌とし、生育を続けます。
SCP-873-JP-1は一定の間生存を続けるものの、脳幹の侵食や呼吸困難等により最終的には死亡します。SCP-873-JP-1の肉体が腐敗または消費されると、SCP-873-JPの個体も枯死する事が確認されています。
SCP-873-JPの起源は現在判明していませんが、1800年代にイギリス・北アメリカで初めてその存在が報告され、日本でも1960年以降より各地で散発的に確認されています。SCP-873-JPが成長期にみせる症状は同時期に多発する花粉症に類似しており、その早期発見は極めて困難です。またその生態上キャリアとなったSCP-873-JP-1の接触者や滞在場所の多数の人間の精密検査が必要となり、パンデミックの危険性を孕む事から当初はKeterクラスのオブジェクトとして指定されていました。
しかし、1982年に抗ヒスタミン薬の一種である████████の摂取によってSCP-873-JPの発芽・成長と胞子の散布が著しく阻害される事が判明し、SCP-873-JPの初期症状を考慮し対花粉症薬としての市場頒布が提案、可決されました。以降SCP-873-JPによる発症者は劇的に減少し、20██/5/██をもってEuclidクラスへの変更が認可されました。
+ レベル1/SCP-873-JPクリアランスが必要です
- 承認されました
以下の情報は一定クリアランス所持者にのみ開示されます。
上記の記述には機密保持の為虚偽の情報が含まれている事に留意してください。
SCP-873-JPはシダ植物に分類される非種子植物間に感染する、遺伝子的変異です。その特徴は一般的な疫病に見られる様な空気感染を思わせますが、現在この感染を引き起こす病原体の特定には至っていません。またこの植物間感染には一定の期間を必要とするものの、同系統の植物種が密集する環境では爆発的な拡大を起こす危険性がある事に留意してください。この変異体は外見上変化はみられませんが、その放出される胞子はヒト粘膜上でのみ生育します。これはベースとなったシダの品種に関わらず、一様にシシガシラ科の特徴と部分的に類似するとされる、同一の形態を成す事が判明しています。この変異体はSCP-873-JP-1などと同様に、焼却する事で対処が可能です。
SCP-873-JP-1-f段階に進んだ後、SCP-873-JPは未解明のメカニズムによりSCP-873-JP-1の破壊された神経機能を代替するようになります。これには視覚、聴覚、味覚、嗅覚触覚といった感覚系統も含まれ、これによりSCP-873-JP-1は人体構造上生存不可能とされる神経損傷を負ってなお通常時と同様の生活が可能です。SCP-873-JP-1は2月〜4月間の胞子散布期に伴う"痒み"を中心とした違和感の他、この感染による異常を自覚する事は無いように見えます。
SCP-873-JP-1-f段階となった宿主には共通する幻覚症状が現れると考えられています。この段階のSCP-873-JP-1はSCP-873-JPに侵食されていない健常者が未知の病原に侵された異常存在であると主張し、これらに逃避、攻撃、介抱といった行動をとるようになります。この事から、SCP-873-JP-1には正常な人間とSCP-873-JP-1が反転して認識されるとの仮説が立てられましたが、現時点この確認には至っていません。多くの場合、その手段に関わらず 同一空間による濃厚接触に置かれた上記人物はSCP-873-JPの感染を受ける事となります。
現在、SCP-873-JPは完全収容に至っていませんが、財団による徹底的な浄化活動により確認されているSCP-873-JP-1総数は一時の[編集済]から徐々に減少の兆しを見せています。それに伴い非感染者の保護の為、抗SCP-873-JP薬の研究と市場頒布による実地試験が行われています。現時点この試薬はSCP-873-JP初期感染者の免疫力向上とSCP-873-JPの生育妨害を可能としていますが、完全な治療法には至っていません。ただし、試薬を投与された初期感染者には特有の「無気力感」「憂鬱感」といった副作用が1~2ヶ月間程の遅延をおいて発生する事が判明しており、現在財団では総力を挙げてこれらの症状から初期感染者の洗い出しを行っています。
+ レベル2/SCP-873-JPクリアランスが必要です
- 承認されました
補遺:SCP-873-JP-1関連文書-3
以下の文書記録はSCP-873-JP感染者として確保された███博士2が収容房内で複数枚の書類に記述していたものの複製記録です。その原本は記録複製の後安全に焼却処分されました。
たとえ届かなくとも、私はここに記録を残します。
[編集済]。
SCP-873-JPの収容に、我々は失敗しました。
[編集済]
どうか、彼らが この絶望に抗ってくれる事を望みます
+ レベル4/SCP-873-JPクリアランスが必要です
- 承認されました
アイテム番号: SCP-873-JP
オブジェクトクラス: Keter
[編集済]
補遺:SCP-873-JP-1関連文書-3原文
たとえ届かなくとも、私はここに記録を残します。
私はかろうじて感染を免れましたが、それも残りわずかの話でしょう。
SCP-873-JPの収容に、我々は失敗しました。
マイノリティがマジョリティを超えた瞬間、
収容する者は収容される者に、収容される者は収容する者にと成り代わりました。
人々はそれに気付かず、この裏返った収容をこれからも続けてゆく事でしょう。
どうか、この国に 僅かでも正常な人間が残っている事を
どうか、彼らが この絶望に抗ってくれる事を望みます
█████ ██
███-███-██████ ████
████・███████
████
[編集済]
Footnotes
1. 地下茎に相当すると考えられる
2. 元エリア-█████SCP-873-JP対策主任
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scp-874-jp |
評価: +13+–x
アイテム番号: SCP-874-JP
オブジェクトクラス: Safe Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-874-JPは6m×6m×6mの収容室の中央に固定して収容してください。実験時を除き、SCP-874-JPの中心から半径2m圏内の人物は、その範囲内の他の人物並びにSCP-874-JP-1と会話をしないでください。範囲内の人物同士の意思の疎通は、ジェスチャーや筆談など音声に依らない物で行ってください。また、範囲内の人物がSCP-874-JP-1に変化した場合、SCP-874-JPの中心から半径2m圏外へ離脱させその異常性を喪失させてください。
追記: SCP-874-JPは実験874-JP-06の後に異常特性を喪失したと判断され、オブジェクトクラスをNeutralizedに変更されました。詳細は補遺1を参照してください。また、SCP-874-JPの残骸の素材である未知の金属の調査が進行中です。
説明: SCP-874-JPはφ1.2m×0.7mの3本脚の丸机に見えます。未知の金属が素材として使用されており、天板上の円周部には未知の意匠が0.5cmの深さで刻まれています。SCP-874-JPの中心から半径2mの領域(以下、影響範囲と指定)内の人物が影響範囲内の他の人物と会話した1場合、その全ての人物はSCP-874-JP-1へと変化2します。
SCP-874-JP-1に変化前の人物との外見上の差異は見られませんが、食事、睡眠、排泄等の一切の生理的行動を必要とせず、SCP-874-JP-1同士で延々と支離滅裂な口論を続けるようになります。口論のテーマは様々であり、その内容は短時間で頻繁に変化します。なお、口論が暴力的に発展する事はありません。SCP-874-JP-1はSCP-874-JP-1以外の存在に興味を示さず、外部から加えられた危害に対しても反応を見せません。また、影響範囲から自主的に離脱する事はありません。しかし、外的要因によってSCP-874-JP-1がSCP-874-JPの影響範囲内から離脱した場合、SCP-874-JP-1は変化時の記憶を保持せず元の状態へ戻ります。
SCP-874-JPは、休暇中のエージェントが██県のとあるショッピングモールでのSCP-874-JPの異常性の発生現場に偶然居合わせた事で発見され、回収されました3。その際██名の民間人と█名の確保要員がSCP-874-JPの影響を受けSCP-874-JP-1に変化し、延々と口論を続けていました。SCP-874-JPの回収に伴い、当時の全てのSCP-874-JP-1をSCP-874-JPの影響範囲内から離脱させ、異常性を喪失させました。その後カバーストーリー「集団ヒステリー」が適用されました。なお、事件の隠蔽にはカバーストーリーのみで十分対応可能と判断され、目撃者に記憶処理は施されておらず、インターネット上に流出した事件情報の削除も行われていません。
実験記録874-JP-02 - 日付20██/██/██
対象: D-874-01、D-874-02
実施方法: D-874-01に予め用意した文言1を発言させる。続いてD-874-02に向けて文言2の内容を2回質問させ、D-874-02を2回目の質問に返答させる。なお、D-874-01並びにD-874-02がSCP-874-JP-1に変化した場合、その後2時間経過を観察する。
結果: D-874-02が2回目の質問に返答する際にD-874-01とD-874-02がSCP-874-JP-1に変化。口論を始めてから2時間後に実験を終了し、D-874-01とD-874-02は影響範囲から解放された。
私見: 影響範囲内の人物が他の範囲内の人物の発言に返答すると異常性が発現する模様。しかしこの会話は聞いていて頭が痛くなるな。 - ██博士
映像記録874-JP-02
<記録開始>
[D-874-01とD-874-02がSCP-874-JPの影響範囲内に立っている]
██博士: D-874-01、その紙に書いてある上の方の文章を読むんだ。
D-874-01: はいはい。私には兄弟が3人居る……だな。
██博士: よろしい。では次に、その下の文章の内容をD-874-02に向けて質問してくれ。ただしD-874-02は返答しないこと。
D-874-01: はいよ。えーっと……D-874-02、あんたに従兄弟は居るのか?
[D-874-02は返答しない]
██博士: ふむ、ではD-874-02にもう一度同じ質問をしてくれ。そしてD-874-02はその質問に返答するんだ。
D-874-01: ああ。もっかい訊くが、D-874-02、あんたに従兄弟は居るか?
D-874-02: ……いいや、俺は断然牛乳だ。やっぱこれが覇道だな。
明暗の裁断希求より民よ受容されAdamsに正気の路へ
D-874-01: [数秒の沈黙]ミート……ソース……!?目玉焼きにミートソース掛けて食うってか!?お前本当に舌付いてんのか!?そこは青汁だろうが!
肉叢が枷なれば蒙昧の首を縫い走る血は睥睨し新緑を禊の如し
D-874-02: [失笑]ホワイトソースだって?冗談だろ?豆腐にホワイトソース掛ける馬鹿が居るなんて初足だっての。それじゃあお前寝る時はハンモック使うのかよ?
人の虚偽よ舞台に膿を注ぎ無知は墜つる事なき篩に臥せ鼓動に裁かれ
D-874-01: るっせえな!俺はついこの間まで本棚で目ぇ開けてたんだよ!お前みたいに爪がカールしてる奴には到底無理だと思うけどな!
翻りて真理より生まれ脈動よ大地が目覚め傲岸なる曲り角に立つ者は水底に臥す
D-874-02: お前……今缶釣ったか?そんなに眼ン玉飲み込みてえのか?このジジイの霧吹き!
殻を拵え壁を設え光を音を香を捨て暦を吐きし愚者なれど自ら末には霧と晴れ
D-874-01: 何だとこのステーキ!今に教科書末代まで拾ってやるからな!
靉靆たる炎の最中尚身を焦がし言の葉を待ち焦がれ賞美よ空虚の星に手にせしは真理
D-874-02: 駅に居る男解いてみろよ動物園!
畢竟門経て降り立つ光来のAdamsよ真理の父にして呪縛無き檻の向こうへと
[重要度が低い為割愛]
森羅架かりし万象の雪に似て隔てる非なりAdams導く真理は最果ての地より樹海に遠く
[D-874-01とD-874-02は呼吸が乱れているように見える。しかし、汗を掻く等のその他の疲労の兆候は見せていない]
受胎より枷に身を委ね何れ蛇尾に等しき暮明よ豪雨は襲い来る水銀なれど抗えず
D-874-01: なあ……そろそろ……終わりにしねえか……?こんな事、時間の無駄でしかないだろ……。
枷に克ち葬送が啼泣の黄昏を嚥下せし後に黄金たる日輪を手にせしはAdamsのみならず
D-874-02: そう、だな……同感だ。……今俺とお前、初めて意見が合ったな。
して歯牙に繁茂し涵養し真理を浮世は沈みAdamsに浦の貝一つ聴かんとす背離を放れ
D-874-01: ……ハッ、確かに。……悪かったよ、色々と言い過ぎた。
調和を義侠に包括せし真理よ連綿にあれと洗練の洞の彼方より隠すべく満ちよ
D-874-02: ……こっちこそ。俺も熱くなりすぎた、すまねえ。
時に灰塵にて蟷螂の業物向けし鍔を輝かせ言の葉を燃やし清廉にあれと死屍が報いる
D-874-01: ……じゃあ、仲直りの印に……どうだ?
時機に凌駕さる結びて憐憫の緒は後天の所縁にして稜々ならぬ橋とならんとす
D-874-02: 奇遇だな、俺も同じ事思ってたとこだよ。
荒寥宥めし瀑布を取り次ぎ己を洗い臓腑を流れ轍へ歓喜を携え明鏡に渡らんとす
[D-874-01は右足を、D-874-02は左肩をそれぞれ前に出す]
されど換える微風孵化の待望に括られども見据える郷里違わば胤にして嵐へと荒び
[数秒の沈黙]
眠る樫の床の頭蓋にも似た霞は失せ回廊よ久遠を恭しく迎え信ず梢に花弁と散り
D-874-01: ……は?おい、まさか……お前なぁ……。
庇護の舟に勝りて尚も枷に架かりし軛に過ぎず這いずる悪逆鎖となりて時として
[D-874-01が舌打ちをする]
蟷螂の如く錆びし煌きを見せ言の葉を燃やさんと砕かれ終ぞ木馬の終局と成り
D-874-01: 握手は右足に決まってんだろ教養ねえのかこのグソクムシ!
錯誤と慈愛の虚心に現の削れしは朽ちゆくOzmothの波紋なればなり歩を進めよAdams
D-874-02: それを言うなら左肩だろ瓶ビール野郎がああああ!
収斂に真理は閉じられし人を尽くし酩酊の世を覆い正気の路を誠にして示せAdams
[以降、同様の恐らく罵倒と思われる口論が続いた為割愛]
<記録終了>
実験記録874-JP-06 - 20██/██/██
対象: D-874-01、D-874-02、D-874-03
実施方法: D-874-01、D-874-02、D-874-03をSCP-874-JP-1に変化させ経過を観察する。なお、SCP-874-JP-1同士の口論は可能な限り続けさせるものとする。
結果: 実験開始から24時間後、[編集済]。詳細は映像記録を参照のこと。実験関係者全員はSCP-874-JPの異常性から解放された。その後関係者を拘束し隔離して観察する提案が為された。異常は見られなかった為、問題なく通常の業務に復帰させた。
私見: 言っておくが、私はもう正常だ。 - ██博士
補遺1: 実験874-JP-06終了から2時間後、SCP-874-JPが突如不明な原因によって崩壊しました。事後調査の結果、SCP-874-JPの残骸は何ら異常特性を示さない事が判明しました。これによりSCP-874-JPは無力化したものと見做され、オブジェクトクラスをNeutralizedに変更されました。
映像記録874-JP-06
<記録開始>
[重要度の低い会話が続く為割愛]
D-874-03: お前って奴はどうせ昔から欠片のお立ち台で話し合ってたんだろうな。
過去の凱旋よ入念なる矜持の片鱗の愚弄にして表決となりき
D-874-02: そんなのKloshkephonに旅行行きたいとか吹かす奴が言う事じゃねえだろ?
本意の表裏よKloshkephonへ導かれども遡るべからず
D-874-01: 何でだよ!Eplsmaはいいとこだろ!?Kloshkephonと違ってMarhqerzheもあるしさあ!それにJuhzantはずっと生きていたかったんだよ!
KloshkephonにMarhqerzhe無し真理無しJuhzantの死に絶える見定めよ郷里のEplsma
D-874-03: Juhzant?おいおい、お前ら二人ともEplsmaの事が全くねえな。Recthuertomaが閉じ込められたのもEplsma在ってこそだろ。
Juhzant亡き常夜の城跡EplsmaにRecthuertoma跋扈し迷宮の逓送に
D-874-01: あれはKhiniohncinissonが居たからだろうが!Eplsmaは租税割ってただけじゃねえか!
また跳梁せしKhiniohncinissonはEplsmaにRecthuertomaよ放浪に彷徨され
D-874-02: てめえ!RakalkellとかいうOzmothが居なけりゃあな!Eplsmaは今頃座ってたんだよ!
曇天は唾棄すべきOzmoth荒波と忌まわしきRakalkell真理に適わずEplsmaに異彩あり
D-874-01: いや!それでも!Eplsmaには!Marhqerzheには!Marhqerzheには……あ、あ……。
濃霧の呼び水憚れAdams驚嘆たれMarhqerzhe東を想起させよと
D-874-02: Marhqerzhe……Marh、Marh……あ……。
真理にMarhqerzhe楽園の道程なりAdamsの祝祭に卵黄より芽吹く真理
D-874-03: マ……あ……。
茨の夜を超え焼灼の朝を超え真理囲いし長蛇の峰より吹く老獪の戯言なし
D-874-01: ……モッ!ガピッ……!
真理は絶叫し胸襟に脳髄に雷鳴の姿を借り言の葉を燃やし
D-874-02: (泣きながら)ううう、ああ、あだだ……。
されど枷による無益に非ず懊悩よ何処へと真理の燃え種なり
D-874-03: ダムが、ダムが、ああ、だむ、だむだむ……。
既知の決壊よ共に門は開き真理は恵みにも似て刮目の奔流となりき
[数分の沈黙]
収斂に真理は閉じられし人を尽くし酩酊の世を覆い正気の路を誠にして示せAdams
[D-874-01、D-874-02、D-874-03、その他実験関係者全員の笑い声が十数秒継続する]
使臣は全ての真理に通ず糸を横切り
D-874-01: 言の葉を燃やせし門は開き今や其の役目を終えにけり。
陵墓の苦痛は浴びて虚空に帰しAdamsよ戻るべし流転に漱ぐ
D-874-03: 祝福せよ。其れは我等が悲願である。
友愛に疵は埋め繚乱の宴に溺れ前途Adamsより真理に掲げよ
D-874-02: 高潔なる護り手たる彼の者の腕かいなに抱かれよ。
流麗し窮乏し審美し直隷し賛美せよAdamsと熾烈な旗を挙げ天駆ける叡智の灯よ
D-874-01: 非道なる罪人たる彼の者の三度みたびの産声を聞け。
真理に聳える由来の岸辺萌芽を目指し禍を飾れ洪水に滓を跨ぎし何時かは近く
D-874-03: 彼の者の篝火を頼りに我等と共に歩め。
排撃せよOzmoth網羅せよ真理Adamsが爾を切伏せ病魔や鷹殿狂乱し
実験関係者全員: 我等は迷える民を導かんとする灯台なり。高潔にして非道なる灯台守Adamsfelnに導かれし灯台なり。
Adamsの翼よ沼よ穴よ翁よ鳥よ肉よ唄よ竜よ島よ波よ鎖よ色よ成り立て真理に明朗に
D-874-02: 迷える民よ再生の時は来たれり。
Adamsの環より廻りて人を見繕い相克の社よ去らば砂を溢れてまた廻り
D-874-03: 真理は瞬き民は普く手にし道を照らすべし。
永劫なる真理無欠なる真理空ろの数多無し黎明の夜途在り開路の日和は何れにも
D-874-01: 真理の鐘の音よAdamsより広く銘々に響き渡るべし。
霊妙なる拍動の銀河へと導けるAdams茫漠たる燭台の編纂を導けるAdams
██博士: 真理の下に此の地の灯台よ今ひとつに。
器と恒久の手を形作る真理に蜃気楼を葬る常盤よ裂け真理を知るAdamsとなれ
<記録終了>
補遺2: 現在、映像記録874-JP-06で言及された異常存在と思われる「Adamsfeln」についての調査が検討されています。重要性が低いとされ検討は棄却されました。また、最後の██博士の発言から、「Adamsfeln」が財団の存在を認知している可能性が指摘されています。
何か嫌な予感がする。これまでこの「机」に曝露した者は単なる世迷言しか吐いてこなかった。皆が皆好き勝手に口を、喉を、舌を動かし続けていた。
だが今回はどうだろう。その場にいた全員が、示し合わせた様に同じ言葉を唱えたのだ。影響範囲外に居た職員を含めて、だ。恐らく██博士や研究者たちも最初の口論を聞いた時点で手遅れだったのではないか?
……いや、考えすぎか。実害が出ていない以上、私の杞憂でしか無いのだろう。
真理はひとつ。彼らの言葉は、ずっと、永遠に、世迷言なのだ。 - 日本支部理事-██
脚注
1. 人数は問いません。
2. 範囲内の人物がSCP-874-JP-1に話しかけた場合も同様です。
3. 後の調査により、SCP-874-JPは当該ショッピングモールの通路に突如として出現したと証言されています。また、監視カメラ映像の分析では、SCP-874-JPの出現の瞬間を確認する事は出来ませんでした。
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scp-875-jp |
評価: +28+–x
評価: +28+–x
クレジット
タイトル: SCP-875-JP - 知らぬが仏
著者: ©︎WagnasCousin
作成年: 2019
評価: +28+–x
評価: +28+–x
アイテム番号: SCP-875-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: レストラン「薬叉」跡地の土地及び店舗の権利は財団が保有しています。カバーストーリー"テナント交渉中"を適用し一般人の進入を阻止してください。「薬叉」の地下を通る水脈の変化が確認された場合、機動部隊ろ-5("陰陽師")が「薬叉」内部の四隅の釈迦が彫刻された柱に対し再封印を施します。
説明: SCP-875-JPは、京都市██区のレストラン「薬叉」で発生する短期記憶影響現象です。SCP-875-JPは以下のような手順で発生します。
客が店員にメニューAを注文する。
店員は注文を理解し、キッチンに伝えようとするが、その直前に注文内容を忘却する。
店員が客に注文の再確認を行う。その際、店員は「メニューBとメニューCどちらを注文したか」という旨の質問を行う。
客は多少の困惑を見せるが、メニューBもしくはメニューCを改めて注文する。
注文が正常に伝えられ、客が再注文した料理が提供される。
メニューAは、同店舗で限定メニューとして提供されている肉料理が該当し(以下、対象メニュー)、メニューB、メニューCは対象メニューを除いた全提供料理から無作為に決定されます。メニューB、メニューCについて規則性は発見できていませんが、対象メニューが選ばれる事例はありません。
SCP-875-JP対象メニューの1つのチーズ入り豚とラム肉のハンバーグ。
全く対処を行わない場合、客が対象メニューを注文した際にSCP-875-JPが発生する確率は99.█%です。注文を受ける店員によるSCP-875-JP発生確率の有意差はみられません。
SCP-875-JP発生時の記憶について、多くの場合店員は何者からか視線を向けられている感覚を覚えたと報告します。客には非常に曖昧な記憶しか残らず、SCP-875-JPの発生がクレームに繋がる事例は現在まで確認できていません。SCP-875-JPの発生を認識するためには第三者による観測が必要となります。
補遺1: 以下は、エージェント・斑鳩によるSCP-875-JPの初期調査に関する録音記録の抜粋です。エージェント・斑鳩はSCP-875-JPが発生せず対象メニューが注文された状態を確認していました。
調査記録875-JP-1- 日付2013/08/03
潜入職員: エージェント・斑鳩(薬叉の客として訪問)
対話相手: 加藤葵(薬叉の店長)
<抜粋開始>
[Agt.斑鳩は店員に運ばれてきた対象メニューのチーズ入り豚とラム肉のハンバーグを食べている]
加藤氏: 店長の加藤です。当店の限定メニューはお気に召して頂けたでしょうか。
Agt.斑鳩: あ、これはどうも。こんな美味しい料理初めて食べましたよ。
加藤氏: それは良かった。どの辺りを気に入って頂けたか教えて頂けないでしょうか。
Agt.斑鳩: 独特の癖のある味だなと思ったんですけど、その癖がチーズと上手く噛み合って絶品って感じです。
加藤氏: 本当ですか、そこはかなり工夫した部分なんですよ。
Agt.斑鳩: あの、もしかしてこのメニューで何か気になっている事でもあるんですか?
加藤氏: うーん、実はですね、このメニューは頼む人が全然いなくて売れ残る事が多いんです。
Agt.斑鳩: お店がこれだけ盛況しているのに不思議ですね。
加藤氏: そうなんですよ。お店の特集を組んでもらった時はお店の売りなんですって宣伝してるんですけどね。
Agt.斑鳩: 何か心当たりはありますか?
加藤氏: それがさっぱりなんです。お客様に感想を伺うと美味しいと言う感想しか返ってこないですし。
Agt.斑鳩: もしかして、どこかで悪評を流されていませんか?誰かの恨みを買っているとか。
加藤氏: 悪評ですか。他店からの嫌がらせとかあり得ない訳ではないと思うんですけど、どうやって調べたらいいんでしょう。
Agt.斑鳩: 私の知り合いでその手の調査のエキスパート、探偵のような仕事をしている人がいるのですが、もし良ければ紹介しましょうか?
加藤氏: 本当ですか、ありがたいです。
<抜粋終了>
調査記録875-JP-1の後に財団職員が探偵と称して加藤氏と接触し、SCP-875-JPに関する聞き取りを行いました。加藤氏はSCP-875-JPの現象を認識していなかったため、他店からの妨害工作が行われたと虚偽の情報を報告しました。また、エージェント・斑鳩が対象メニューの一部を持ち帰り成分調査を行った所、料理に使用されていた肉はヒト由来のものと判明しました。調査を進めた所、人肉の入手経路に異常存在は関わっていないものの、「薬叉」のオーナーが要注意人物として登録されているPoI-5835-JPと判明しました。PoI-5835-JPは要注意団体"石榴倶楽部"の構成員1の一人で、身の保証のために財団と内通している人物です。以上の理由から通例に従いカバーストーリー「集団食中毒」を流布し、同店舗を閉鎖した上で異常性に関する更なる調査が行われました。
破壊前に撮影された我が子を抱く鬼子母神像
PoI-5835-JPはSCP-875-JPの収容及び調査に対して極めて協力的な態度を取っています。本事案の動機については「加藤氏を止めるため所持していたアノマリーを改変し薬叉の建築材料として利用した」との証言が得られました。異常性を持つ鬼子母神像は加藤氏の母親が2█年前に失踪した際に、当時加藤氏の母親と親しい関係にあったPoI-5835-JPが荷物整理2を行い引き取ったものです。PoI-5835-JPの独自調査によると改変前のオブジェクトの性質は、人肉を所持した人物が鬼子母神像を目視すると鬼子母神像から強い敵意を向けられたと認識するようになり、半径10m以内に入ると昏倒し脳に急性かつ重篤な炎症が発生し死に至るというものです。
PoI-5835-JPは鬼子母神像を4分割して「薬叉」の四隅の釈迦が彫刻された柱内部に入れた後に、京都市██区の地脈を利用した呪術的封印を施しアノマリーの性質を大幅に弱化させ、SCP-875-JPで観測された現象に改変したと述べています。SCP-875-JPは改変前の性質と異なり、脳の炎症など人体に被害を与える現象は確認されていません。
財団はPoI-5835-JPから「薬叉」及び土地の権利を買収し、SCP-875-JPの管理及び調査を続けています。本件でPoI-5835-JPの収容が検討されましたが、SCP-875-JPの収容体制がPoI-5835-JPの協力により早期に確立した事と、これまでの財団に対する情報提供の功績から記憶処理の後に解放される事が決まりました。PoI-5835-JPはクラスA記憶処理剤により、鬼子母神像の性質及び取得経緯、SCP-875-JPの作成及び現象に関する記憶を消去しました。
加藤氏に対しては取り調べ3を行い石榴倶楽部やPoI-5835-JPと関わった経緯などを確認しましたが、アノマリーと直接関わりが無い事が判明したため、解放後に経過の観察が行われています。以下が加藤氏から得られた証言です。
+ 加藤氏の証言 875-JP-2
- 加藤氏の証言 875-JP-2
私には父がおらず、母は一人で産んで育てようとしたそうです。母は有名な料理人でしたが物心つく前に失踪してしまい、私は養護施設に入る事になりました。施設自体には良い思い出がありませんが、資産家の佐川と言う方が施設に寄付するようになった辺りから急に環境が良くなりました。佐川さんの事は顔も見た事がありませんでしたが、感謝の手紙を送ると丁寧な返事が返ってきました。佐川さんは私にとって唯一信頼出来る大人だったので、その後も事ある度に手紙を送って相談に乗ってもらいました。
ある時、施設でレジャー中に仕出し弁当が出ました。重箱に入った見た目も美しいお弁当です。中身はハンバーグなど私が好きだった肉料理がメインでした。一つ口にするとその芳醇な味わいに魅了され、あっという間に食べ終わってしまいました。モノクロだった人生に初めて彩りが生まれたような感覚を覚えました。私の料理人としてのルーツはあの料理です。
仕出し弁当は何だったのか教えてもらおうとしましたが、誰かからの差し入れと言う事しか分かりませんでした。分かる事と言えば箸袋に黒い櫛のようなマークが付いていた事くらいです。大人になってからそれを頼りに探してみましたが見つかりませんでした。
佐川さんに将来料理人になりたいと相談すると、佐川さんは料理人になりたいなら必要な費用を肩代わりしようと言ってくださいました。実は佐川さんは失踪前の私の母を知っており、「君もきっと一流の料理人になるはずだ」と励まして頂きました。佐川さんのコネも利用させてもらい、日本で勉強した後に海外へ修行の旅に出ました。
この後はテレビや雑誌で散々取り上げて頂いていたのでそちらを確認された方が確実ではないかと思います。賞を何個も取り、天才料理人と持て囃されたりもしていました。ですが、料理人として成功してからもあの仕出し弁当の手掛かりは掴めていませんでした。世界中どこを探しても似たような味わいの食材は見つかりませんでした。
ある時、私が料理長を務めていたレストランに日本人の男性がやってきて、日本で料理を作って貰えないかと依頼してきました。最初は断ろうと思いましたが、彼の背広には例の仕出し弁当の箸袋に付いていたものと同じマークのバッジが付いていました。彼は『石榴倶楽部』の『手塚』と名乗りました。
初めての手がかりだったので、私はすぐにレストランを辞め手塚さんに付いていきました。日本に行くと手塚さんの自宅に招かれ、石榴倶楽部で用意した珍しい肉の調理をお願いされました。それはあの仕出し弁当の肉の味でした。私はその肉の研究に没頭しました。
当時の味の再現はそこまで難しい物ではありませんでした。確かに美味しいとは思いましたが、料理とは味だけで決まる物ではありません。不自由無い暮らしを手に入れ料理人生活で舌も肥えた私には、あの頃のような感動を味わう事は出来ませんでした。
私は目的を失いました。復職し元の生活に戻ろうかと考えていた頃、手塚さんから石榴倶楽部の会食の料理人を担当して欲しいと頼まれました。研究の成果を見せるとメンバーの皆さんは大変感動して下さいました。その時ふと思ったのです。あれは昔の私の姿ではないかと。自分が感動出来ないなら代わりに他の人にあの時の、それ以上の感動を味わって欲しくなりました。石榴倶楽部で会食を開く内に、美食家の方ではなく昔の私のような一般人の感想が聞きたいと思うようになりました。
佐川さんに相談した所、自分がやりたいなら挑戦しなさいと勧められました。意を決して手塚さんに相談すると、流通量の少ない肉ですがどうしてもと言うのなら協力しましょうと言って頂けました。私としては定住するつもりが無かったので程々の規模の店を探していたのですが、手塚さんは私のために京都の超一等地に店を作ってくださいました。お店の名前は『薬叉』と言う名前で、手塚さんがオーナーとなりました。京都は特殊な土地柄でして、土地もお金を積めば手に入ると言う物ではありません。あの立地を手に入れるために手塚さんはかなり苦労されたはずです。あの場所で駄目なら他の何処でやっても失敗していたでしょう。
出来たお店は連日大行列でしたが、不思議と感想が欲しかった限定メニューだけは売れませんでした。限定メニューを食べて頂いたお客様に尋ねても美味しいと言う感想しか返ってきませんでした。連日店に残ってメニューの改良を続けても売れ行きは悪いままでした。そんな生活が続いていたある日、お店で例の集団食中毒が発生しました。食の安全には気を使っていたつもりでしたが、いつの間にか管理が甘くなっていたようです。夢を追いかけている内に足元が見えなくなっていたのでしょう。ここを出たらまずは被害者の方に対して謝罪をしに行きたいと思います。私を信じてお店を任せて下さった手塚さんに対しても本当に申し訳ない事をしてしまいました。
補遺2: 加藤氏を解放してから2週間後、加藤氏がPoI-5835-JPの自宅へと住居を移しました。財団職員が加藤氏と接触4し、PoI-5835-JPとの関係性について得た証言を以下に示します。
+ 加藤氏の証言 875-JP-3
- 加藤氏の証言 875-JP-3
薬叉で起こった集団食中毒の後、私は留置場に入り何度も取り調べを受けました。解放された後にお店の様子を見に行くとすでにお店の看板が撤去されており、テナント交渉中と言う旗が立っているのが見えました。まさかすでに潰れているとは思っていませんでした。中を見に行こうとすると警備員の方に強く怒られてしまい、お店と土地の権利者が他の人の手に渡っていた事を知りました。店長として情けなかったです。手塚さんの自宅に伺うと手塚さんは不在で、さらに警察の取り調べを受けていた事まで分かりました。料理人としてのプライドは折れてしまい、責任の重さに潰れてしまいそうでした。一人でいる事に耐えられず、佐川と言う方にもう料理人を続ける自信が無いと手紙を送りました。
佐川さんに手紙が届いた頃でしょうか、手塚さんが息を切らして私の家に尋ねてきました。取り調べを受けた後らしく、手塚さんの体調はかなり悪そうでしたが無理をして来られたようです。私が謝ろうとすると手塚さんはそれを止め、「君は至高の料理人だ、決して辞めるなど言わないでくれ」と言いました。私が混乱していると、手塚さんは今まで私に隠していた事を明かしてくれました。驚いた事に佐川さんが石榴倶楽部で襲名した名前が「手塚」らしく、私の知る2人は元から同一人物5でした。
私の母は2█年ほど前に石榴倶楽部の会員となり佐川さんとも仲良くしていたそうです。母は私を産んでから人肉食に抵抗を感じるようになり、石榴倶楽部と縁を切ったそうです。佐川さんは母が失踪した事をしばらく知らなかったようですが、擁護施設で暮らす私を探し出し支えて下さいました。弁当の件も、母が石榴倶楽部で考案した調理法から再現したらしく、母が唯一残した物を私に伝えたかったと語っていました。
事情を知った時私は自分を恥じました。佐川さんはいつも私の事を支えてくれていたのに、私はいつも自分の事しか考えていませんでした。どうやって恩を返そうかと考えましたが、私に出来る事と言えば料理しかありません。私は頭を下げ「私を至高の料理人と言ってもらえるのなら、これからは佐川さんのために料理を作らせて貰えませんか」とお願いしました。すると佐川さんは「本当かい、こんな幸せが手に入るなら他の何を捨てても構わないと思っていたよ」と心底嬉しそうな顔を見せてくれました。これが私が佐川さんのお宅に住むようになった理由です。
そう言えば、薬叉でザクロの売り上げが伸びない時に探偵を雇って原因を調べた事がありました。探偵さんからは他店の営業妨害のせいだと説明して頂いたのですが、あの売れ行きの悪さはそれだけでは説明が付かない気がします。薬叉ではお釈迦様の像から視線を感じる事がありましたが、あれはお釈迦様が私に「夢に囚われず、足元の幸せに気付きなさい」と諭してくれたのかなと。今は夢を追いかけている時より、ずっとずっと幸せですから。
調査結果により、加藤氏が新たにアノマリーと接触した痕跡は無く特別な措置は不要と判断されました。
脚注
1. 京都市内を拠点とする人肉食を目的とした秘密結社。構成員は十名とされており、それぞれ橋詰・椎名・六角・早瀬・宇宿・東条・舟越・秋津・手塚・浮田の名を襲名する。
2. PoI-5835-JPが保管していたその他の荷物を押収しましたが異常存在は発見されませんでした
3. 加藤氏に対しては財団の収容施設を警察の施設と伝えています。
4. 石榴倶楽部の関係者と詐称し接触しました。
5. 加藤氏の手紙の宛先は自宅ではなく別荘との事です。
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scp-876-jp |
評価: +20+–x
アイテム番号: SCP-876-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-876-JPは内寸30cmの強化アクリル製収容ケージに入れ、重量及び振動センサーを備え付けた収容室へ格納されます。収容室は無響及び電波暗室として下さい。センサーにて閾値を超えた値を検知した場合、時間を問わず直ちに担当研究員により、オブジェクトの健康検査ののち手順-104が実行されます。
説明: SCP-876-JPは未知の金属で構成された、直径30cmの切頂二十面体の実体です。背面とみられる部分にはスライド可動式のシャッターがあり、内部にはIEC 60320-1 C14準拠の200V電源コネクタと、IEEE規格準拠の各種I/Oコネクタが付いています。SCP-876-JPは電源とモニタ、キーボード等の入出力装置を接続することでコンピュータとして使用することが可能です。独自のものとみられるCUIベースのOSが搭載されていますが、一部コマンドがLinuxと同様です。USBコネクタを使用するリムーバブルメディアを使用することでデータの読み書きが可能ですが、単体ではRJ45コネクタ以外で直接データを読み書きさせる方法はありません。
SCP-876-JPは電源を接続しない状態で60分以上放置された場合、弾む、転がる、大きく振動する等の自律行動を行います。この自律行動は60分から120分程度行われ、その後は最大で12時間前後非活性化します。非活性化中は電源をつないでもコンピュータとして使用できない点に注意が必要です。再活性化後、SCP-876-JPの直径は3%~10%程の割合で肥大化します。肥大化に伴い、コンピュータとしての性能が上昇することが明らかになっています。また、背面シャッター内の各種I/Oコネクタが、性能向上、世代更新などが行われます1。
研究の結果、オブジェクトの外寸と密接した容器へ入れ運動を抑制することで、発見時の直径30cmまでサイズを戻せることが判明しています。
確認済みオブジェクトの自律行動一覧
オブジェクトの動作
床上約150cm程の高さを、15cmの範囲で上下しながら移動。
床上150cm~105cmの範囲を、ゆっくりと反復上下移動。
床上5cm~60cm程度の範囲を、ゆっくりと反復上下運動。
半径86cmとした円の、半円の範囲で反復円周運動
半径86cmとした円の、6分の1程度の範囲で反復円周運動
観察により、上記自律運動は人間における筋肉トレーニングに相当すると考えられています。
当初その特性から、スタンドアロンコンピュータでの使用方法を研究されていました。しかしオブジェクトの直径が50cmを越えた時点より、背面シャッター内部のI/Oコネクタに未知の規格のものが現れ始めました。現在規格化されていない未知の無線接続により、実験室内の一部コンピュータと接続が計られ、結果4台のコンピュータがSCP-876-JPをホストとした分散処理システムに取り込まれました。
この事案より現在の収容プロトコルは封じ込めを主眼としたものとされています。
Footnotes
1. 例として、USBコネクタの世代が1.1から3.1へ更新されるなどです。
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scp-877-jp |
評価: +201+–x
転移直後のSCP-877-JP。
アイテム番号: SCP-877-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-877-JPは、サイト-81██内、C級小型生物収容房に当オブジェクトのみが収容されています。サイト-81██はSCP-877-JPの持つ能力の掌握下にあると見られる為、施設内の全てがバリアフリー化されています。就労する全ての職員への転倒防止を徹底してください。また、施設内を移動する場合は可能な限り二人一組以上で行動を取るようにし、双方の注意の下、互い、あるいは全員が転倒することを防いでください。また、施設内の一部において設置されているエスカレーター、及びオートウォークを使用する際には必ず手摺に掴まり、転倒することの無いようにしてください。
説明: SCP-877-JPは、二足歩行のような挙動で移動し会話による意思疎通が可能な、キャベンディッシュ種のものと思われるバナナの皮です。声質、声量は、平均的な成人男性を思わせる(比較的若い印象)ものであり、その発話部位が蔕の位置程であることは判明していますが、どのような手段にて音声を出力しているかはわかっていません。
SCP-877-JPは不明な手段により、今まさに転ぼうとしている人間の足元へ瞬間的に転移、その転倒に対し全身を使い制止しようとします。しかし、移動可能な点や、転移能力、会話能力以外はほぼ通常のバナナの皮と変わらない為、基本的にそれらの抑止活動は失敗に終わります。この際、転倒者からは踏まれることが多く、大抵の場合それにより転倒者は更にスリップ、当初の転倒以上の被害を受けます。対してSCP-877-JPは踏まれたことによるダメージから苦痛の声を上げつつ、殆どの状況において吹き飛ばされるなどし、地面等へ投げ出される直前に何処かへ転移、数分後に元の位置付近へと再出現します。SCP-877-JPはこれらの行為によって劣化や損壊を起こし、あるいは時間経過による腐敗を起こす場合がありますが、それらが致命的であろう状態に陥ると消失し、再出現した際には修復されています。姿を消している間、何処に存在しているのかは不明です。
SCP-877-JPは周辺に転倒者のある限り、あるいはその意思に基づき何処への転移も可能であるように見え、実際にそれを行うことも可能なようです。しかし、近隣の転倒者を感知できる範囲は極めて狭いと思われ、それについて訊ねると「自分の担当は██まででしたけど、今はここだし、(サイト-81██と思われる)これからはずっとここを守ってくつもりなんで」との返答が得られています。故意に転倒者を生じさせない限り、SCP-877-JPは財団に対し協力的です。
SCP-877-JPの能力限界を知る為、幾つかの転倒実験を行いました。以下はその記録です。
SCP-877-JP転倒実験
実験日時: 20██/██/██
被験者: 三研究員
詳細: 偶発的事案。移動中の三研究員が、サイト-81██における廊下の段差にて転倒。これによりSCP-877-JPが収容房より転移、収容違反が発生した為、各ブロック毎に隔壁を下ろし、SCP-877-JPに対する可能な限りの収容違反防止措置が取られた。SCP-877-JPは三研究員により踏まれ、絶叫しながら再転移。消失から3分後に収容房へと帰還した。三研究員は後頭部を強打し、全治3日の打撲を負った。三研究員には治療と厳重な注意が行われ、勤務ブロックの一時変更措置が取られた。また、当事案を受け、施設内における全てのバリアフリー化を実行。他のオブジェクトに対する実験の際、転倒事故が発生する可能性を考慮し、サイト-81██におけるSCP-877-JP以外のオブジェクト収容を禁止した。
実験日時: 20██/██/██
被験者: D-877-JP-1
詳細: SCP-877-JPの収容房に配置したD-877-JP-1に対し、「転べ」と指示。D-877-JP-1は、適切な指示ではなかった為か、転ぶと言うより、床へと飛びこむような形での転倒を試みた。SCP-877-JPは反応しなかったが、D-877-JP-1に対し、不明な行動を気遣う旨の発言をしていた。
実験日時: 20██/██/██
被験者: D-877-JP-1
詳細: 同上。D-877-JP-1に対し、前実験よりも真に迫った形での転倒を指示。D-877-JP-1が指示通り転倒したところ、盛大に足首を捻り、房内にてうずくまる。SCP-877-JP-1はやはり反応しなかったが、指示されたものとは言え、二度に渡ったD-877-JP-1の奇怪な行動に対し疑問を抱く様子を見せていた。これにより、自らの意思で故意に転倒した場合は反応しないことが判明した。D-877-JP-1の負傷は軽度で、一日で職務に復帰している。
実験日時: 20██/██/██
被験者: D-877-JP-1
詳細: D-877-JP-1に対しアイマスクと防音ヘッドホンを装着させ、田辺博士が牽引。段差を設けた実験ブースに移動させ、牽引の途中に手を離した。これによりD-877-JP-1は段差に足を取られ転倒、直後にSCP-877-JPが実験ブース内に出現した。D-877-JP-1の転倒を阻止しようとするが、足の重みを支えきれず、加えてバランスを崩したD-877-JP-1により数度に渡って踏まれ、苦悶の声を上げながら再転移した。5分後、田辺博士の居た実験ブース外にSCP-877-JPが出現。故意にD-877-JP-1を転ばせたことに対して激怒している意思を表明し、義憤に燃えるような様子で、人間が転倒した際に生じる生命への危険、関節や全身に生じる大きなダメージについて粛々と語った。なお、この会話中においてSCP-877-JPは度々転移能力を使い、田辺博士の行く先々に出現し逃がすまいとするような様子を見せていた。また、これによりD-877-JP-1は全治5日の捻挫を負っている。
私見: よもやバナナの皮に説教される日が来ようとは。――田辺博士
実験日時: 20██/██/██
被験者: D-877-JP-1
詳細: SCP-877-JPに対しGPS発信機を取り付けた上で同上の実験を行い、転移先を調査しようと試みる。が、転移の瞬間にSCP-877-JPが凄まじい悲鳴を上げ、転移に失敗。猛烈な苦痛を訴えた為に付与は却下された。しかし、発信機の取り付けを行わない代わりに、施設外への転移を行わないとの確約を結ぶことに成功した。
私見: 自身以外の物を転移させることには制約があるのかもしれない。--田辺博士
実験日時: 20██/██/██
被験者: D-877-JP-1、2、3
詳細: 実験に参加した3名全員に対し上記と同様の措置を施し、3名をほぼ同時に転倒させた。直後、SCP-877-JPは3名それぞれの転倒位置に対し超高速で転移することを繰り返し、雄叫びを上げながらそれらの転倒を同時に止めようと試みるもその全てに失敗。結果、全員に踏み潰され、悲鳴を上げながら房内から消失した。15分後、収容房内の隅に再出現し、「守れなかった」とだけ呟き、その後一切返答する様子を見せなかった。1日後、改めてインタビューを行うと、落胆した様子ながらも応じた。下記はその際のインタビューの様子である。
SCP-877-JPインタビューログ
記録日時: 20██/██/██
インタビュアー: 田辺博士
対象: SCP-877-JP
田辺博士: あー、SCP-877-JP?
SCP-877-JP: (辺りを見回すように体を捩ってから)……えっと、自分スか。
田辺博士: そうだ。
SCP-877-JP: 前から言ってるっスけど、自分、そんなヘンな名前じゃないっスよ。ピールオブバナナマン。そう呼んで欲しいス。
田辺博士: はぁ、ではピールマン。
SCP-877-JP: ピールオブバナナマン(語気強く発言)。
田辺博士: ……ピールオブバナナマン。ええと、そうだな……君は……えー、何故転ぶ寸前の人間の足元に現れるんだ?
SCP-877-JP: そうスね。それを語ると……長くなるス。自分、こう……わかるじゃないスか。わかるでしょ?
田辺博士: 何がだね。
SCP-877-JP: バナナの皮じゃないスか。
田辺博士: そうだね。
SCP-877-JP: ……変えたいんスよ。そういう……なんつーんスか。意識って言うんスかね? バナナの皮は、滑るだけじゃない。転ぶのを、止めてくれるヤツだって居る。すっ転ぶだけがバナナの皮じゃない。知ってほしいんスよ。バナナの皮が、いや、バナナの皮だって、好きで人間の皆さん転ばしてるわけじゃねってことを。わかってほしんスよ。めっちゃ痛いんスけどね。止める時。
田辺博士: はぁ。あー、では。君は、転移をするだろう。突然我々の前から居なくなるというか。その時、どこに行っているのかわかるかい?
SCP-877-JP: わかんねっス。でも、誰かが治してくれてんのはわかるんスよ。いい気分で帰ってこれるんで。
田辺博士: 治してくれる?
SCP-877-JP: (自身の体表の黒いシミを、自身の皮先にて指す)これ、見てくださいよ。踏まれた痕なんス。昨日は、一斉に踏まれたんで結構自分もヤバイと思ったっスよ。けど、やっぱ治ってんスよ。なんか、自分はやっぱ神様とか、そういうモンに守られてんだなって。そう思う訳スよ。愛されてんだなって。幸せっスよね。
田辺博士: ……まあ、その、怪我……と言って良いのかわからんが、治してもらえるわけだ。で、それは一体誰に?
SCP-877-JP: わかんねっス。きっと神様がいるんスよ。
田辺博士: あー。
SCP-877-JP: けど、治してもらえるからにはやらねぇといけねんス。だから、これからも自分は守り続けるんスよ。転びそうな人達の平和と、健康と、安心を。
田辺博士: 転ぶのは止められていないように見えるんだがね。
SCP-877-JP: それはまあ……やっぱ、自分バナナの皮なんで。
<ログ終了>
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scp-878-jp |
評価: +133+–x
探査船が着陸直前に捉えたSCP-878-JP。
アイテム番号: SCP-878-JP
オブジェクトクラス: Euclid Neutralized Euclid Neutralized Euclid
特別収容プロトコル: SCP-878-JPは天体という性質上、収容が不可能です。SCP-878-JPの出現が観測された場合は全天文台の観測データを監視し、SCP-878-JP由来の観測データを全て削除してください。万が一SCP-878-JPの存在が公にされた場合、カバーストーリー"観測データの誤認"を適用して存在を隠蔽してください。
説明: SCP-878-JPは当初グリーゼ581g1として知られていました。しかし2011/██/██、財団の規定するXK-クラス非常信号及び財団の識別信号を含む救難信号が発せられていることが判明したため、SCP-878-JPに指定されカバーストーリー"観測データの誤認"により隠蔽が行われました。
翌年、SCP-878-JPの消滅が観測されました。数回の観測の後、消滅が決定的であると結論付けられたためNeutralizedに再分類されました。
再分類の3ヶ月後、財団の観測所がケンタウルス座α星系2に前述のXK-クラス非常信号及び救難信号を発する惑星を観測しました。SCP-878-JPが何らかの形で転移した、あるいはSCP-878-JPが複数存在する可能性を鑑みて、当該惑星はSCP-878-JPに指定されました。
翌年、再びSCP-878-JPの消滅が観測されました。数回の観測の後、消滅が決定的であると結論付けられたためNeutralizedに再分類されました。
2014/██/██、ラグランジュ点L3の位置に、直径約1万2000kmの惑星が突如として出現しました。これは常にL3の位置を保つように運動し、XK-クラス非常信号を発しています。救難信号は発せられていないものの、前例よりこの惑星はSCP-878-JPに指定されました。
2014/██/██、SCP-878-JPの有人探査計画"ゴルディロック計画"が発足し、翌年に実行されました。しかし探査隊のSCP-878-JP着陸4時間後、SCP-878-JPは探査隊と共に突如として消滅しました。現在までにSCP-878-JPの再出現は観測されておらず、探査隊の行方は不明です。Neutralized再分類は現在検討中です。
+ SCP-878-JP探査隊の通信記録
- 隠す
探査記録878-JP - 2015/██/██
<01:45>
ゴルディロック隊: こちらゴルディロック号、着陸に成功した。大気の組成は地球と類似。やや二酸化炭素濃度が高いが呼吸に問題無し。天候は晴れ、気温は摂氏17℃。地上探査車の準備をして指示を待つ。
<33:50>
本部: こちら本部、状況を確認した。探査車でXK-クラス非常信号の発信源であるポイントαまで移動を開始せよ。また移動中は地表の様子を通信で報告せよ。
<71:23>
ゴルディロック隊: 現在着陸船より5km地点。都市の廃墟とみられる地形を走行中。使用言語は英語と見られる。
<75:31>
ゴルディロック隊: 動植物の存在が確認できない。
<77:02>
ゴルディロック隊: 遠方に巨大な[ノイズ]ナ群が確認できる。しかし大半は破損している模様。
<91:48>
ゴルディロック隊: ポイントαに到達。地下へ続く施設の入口が確認できる。指示を待つ。
<125:14>
本部: 進入せよ。
<170:20>
ゴルディロック隊: 施設に進入。何らかの研究施設と思われる。幾つかの文書を入手した。データを転送する。
<181:55>
ゴルディロック隊: 最深部に到達した。巨大な装置が存在する。装置はまだ作動しているようだ。
<187:14>
本部: 文書データの受信が完了した。
<190:40>
ゴルディロック隊: 問題が[ノイズ]た。最[ノイズ]装置が活性[ノイズ]れる。その影[ノイズ]が隊員が体調の[ノイズ]ている。一度地上[ノイズ]。
<224:32>
本部: 音声の乱れが激しい。通信を繰り返せ。
<236:58>
ゴルディロック隊: 駄目だ[ノイズ]
[SCP-878-JPが消滅]
+ 回収された文書データ
- 隠す
文書878-JP-001
エクソダス計画概論
本計画はSC[データ破損]K-クラス終焉シナリオの回避を目的とした計画である。以下の行程を経て地球を太陽系外の居住可能な星系へと脱出させ、人類の存続を図る。
1. メビウス-G恒星系抽出機
XKの開始が確定した場合、サイト-[データ破損]するメビウス-G恒星系抽出機により太陽[データ破損]光年以内の位置に存在する恒星を恣意的に選択、座標データを取得する。選択された恒星が不適[データ破損]再選択が行われる。また太陽系はあらかじめ抽出範囲から除外されている。
2. ヘムロック宇宙望遠鏡
SCP[データ破損]遠隔地を観測するシステムである。
メビウス-G恒星系抽出機によって決定された恒星系をヘムロック宇宙望遠鏡で観測し、詳細なデータを得る。取得するデータは恒星の種類・数・惑星の有無・小[データ破損]等。
3. 量子コンピューター
取得された恒星データを元に、ハビタブルゾーンの領域を算出。転移に最も適した軌道を決定する。また、転移後の諸軌道修正計算も行う。
4. ホイーラー時空間隧道
SCP-[データ破損]及びS[データ破損]用して開発されたシステムである。
量子コンピューターによって決定された座標と現座標を空間的に接合。地球の通過が可能な直径まで時空干渉によりワームホールを拡大・固定する。
5. マンハッタン重力エンジン
北極点を始めとした地球[データ破損]箇所に設置されたマンハッタン重力エンジンを起動し、地球全体を重力場で包み込む。重力場制御によりワームホールを通過した後、公転軌道に安定するための微調整を行う。
課題点
エクソダス計画には現在大きな課題点が存在する。それは、ホイーラー時空間隧道の動作が不安定であり、接合先との間で生じる時間の相違が激しいことである。これまでに確認された相違は最大[データ破損]億9千年であり、これはヘムロック宇宙望遠鏡で取得したデータを用いることが不可能であるほどの相違である。この課題が解決されない限り、我々は滅亡から逃れた先で火の海に飛び込む事態に陥る恐れがある。ゆえにこれは早急に解決すべき問題である。
補足
本プロセスは停止コードを入力しない限り1年ごとに繰[データ破損]ためである。また上記全てのシステムはあらゆる異常事態にも耐えうるように[データ破損]の地下[データ破損]置しており、電源は全て地熱エネルギーを利用しているため向こ[データ破損]可能である。
文書878-JP-002
我々はもうおしまいだ。間に合わなかった。財団は守れなかったのだ。既に[データ破損]の影響は太陽系全体に及んでおり、もう地球上の生物は私を除いて死滅したのかもしれない。その私もいつまでもつか……[データ破損]画は実行に移されたが間に合わなかった。装置は転移[データ破損]ばエクソダスは実行される。しかしそれは一人旅だ。もう誰も居ない。私は、私はここから動くことが出来ない。2000[データ破損]居ない。もう、終わったのだ、我々は。
私はこの星を、メッセージを乗せた方舟として使うことにした。それが残された私に出来る唯一の……人類救済の唯一の手段だと信じて。だが、それを成すには少しばかり時間が足りない。メビウスの抽出範囲に太陽系を加える程度が関の山だろう。しかし私は僅かでもそこに希望があれば、縋りたい。人類最後の悪あがきができるのは、私だけなのだ。
さて、残すべきメッセージはこれぐらいだろうか。早く作業に戻らなければ。運が良ければ[データ破損]ぐらいの時間はあるかもしれない。装置は不具[データ破損]幾多の年月を行ったり来たりの旅をすることになるだろう……。これは賭けだ。[データ破損]ない、かつ財団が活動している時代の太陽系が抽出されて、そして我々の先祖が故郷の成れの果てを見つけてくれることに、私は最後の時間を賭ける。
これを見つけてくれたなら、どうか、世界を、未来を変えてくれ。 頼む。
ヘムロック博士
なに救世主気取りになってんだろうな……クソッ、ああ、知ってる。この手紙がそっくりそのままだって。だけど……信じるしかないんだよ……ここは"違う"んだから。
+ アッシュ博士の提言
- アッシュ博士の提言
周知の通りSCP-878-JPは我々の辿る悲劇的な末路を示しているのかもしれない。だが今我々が本当に考えるべきなのは、どのようにしてこの結末を回避するのかということでも、このオブジェクトが実は別次元からやってきたものではないかと勘ぐることでもない。
SCP-878-JPから入手された文書の内容をよく考えて欲しい。SCP-878-JPのシステムが生き続けている限り、あの星が再び太陽系に現れないとも限らないのだ。今回は丁度太陽の反対側であり、目立った影響が及ぼされることはなかった。しかし次あれがこの星のすぐ傍に現れでもしたらどうか。隠蔽などは論ずるまでも無く、SCP-878-JPの重力によりこの星はよろめき、そして太陽へ、あるいは…… 直接的な影響が無かったとしても太陽系全体で考えてみれば、少なくともこの星の均衡が破れることは確実であろう。
我々が見るべきはあの星の過去でも、我々の未来でもない。SCP-878-JPの潜在的な危険性なのだ。それもKeter級の。
さて、次がいつかは分からないが、我々は備えるしかないのだ。たとえそれが長旅になろうとも。
アッシュ博士
脚注
1. 太陽系より約20光年離れたグリーゼ581星系に位置する太陽系外惑星
2. 太陽系より約4光年離れた恒星系
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scp-879-jp |
評価: +18+–x
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scp-880-jp |
評価: +107+–x
アイテム番号: SCP-880-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-880-JPは現在セクター-81██の収容室内に、15本がそれぞれ個別にオブジェクト破壊装置つき収容用ロッカーに収容されています。各SCP-880-JPはロッカー内に寝かせた状態で置かれ、両端をそれぞれ2本ずつの鉄串で串刺しにしてロッカー内に固定します。ロッカー内には赤外線センサーが設置されています。このセンサーによって何らかの動きがSCP-880-JPに確認された場合は、オブジェクト破壊装置を起動させ該当するSCP-880-JPを無力化してください。
実験の際はレベル3職員1名と研究主任の許可を得た上で行ってください。使用済みのSCP-880-JPは縦に切断し無力化した後に焼却処分してください。
未収容のSCP-880-JPは現在にまで確認されていませんが、存在していた場合の脅威を考慮し財団はSCP-880-JPを「不良商品のリコール」をカバーストーリーとして調査、捜索を行っています。
説明: SCP-880-JPは一般的にちくわとして知られる水産加工食品と同様の形をした物体です。財団では当初3本入りのパックを24個確保しましたが、実験による破棄と後述のイベントを阻止する為の処分により現在では開封済みの15本のみが監視下に存在します。原材料を分析した結果、一般的なちくわ同様にスケトウダラや卵白、塩、砂糖等から作られたことが明らかになっています。しかしながらその原材料に見合わないほどの柔軟性と引っ張りへの耐久性を有します。1また、収容当時から現在まで腐敗の兆候は一切見られません。
SCP-880-JPの異常性はその中心部にある穴に存在します。SCP-880-JPの左右いずれかの両端から進入し穴の内壁に触れた物はいかなる物でもその場から消失したかのように見えます。2これは物体の一部がSCP-880-JPの穴に入るようであればその全体の大きさを問いません。この性質はSCP-880-JPとその穴を内壁の繋がりが断たれる様に切断し破壊する事で失われます。3SCP-880-JPとその穴を破壊した際、そのSCP-880-JP個体の内壁に触れて消失したように見えた対象がSCP-880-JPと同様の損傷を受けた状態で出現します。
SCP-880-JPは2003年、██県の幼稚園で昼食の時間に複数の児童が死体として発見された事件の調査中に発見されました。死体発見当時、被害にあった児童達は築山の裏で弁当を食べており、SCP-880-JPはこの男子児童の弁当のおかずとして入っていたようです。財団はこの児童の自宅とその周辺を捜索、被害児童の母親がSCP-880-JPを購入したスーパー等から24袋のSCP-880-JPを確保しました。関係者には記憶処置が施され事件は隠蔽されました。
実験記録001 - 日付2003/11/21
対象: SCP-880-JP-1
実施方法: SCP-880-JP-1の穴にその直径と同等のプラスチック棒を挿入。棒の長さはSCP-880-JP-1の二倍。
結果: 棒をSCP-880-JP-1に差し込んだ時点で棒が消失。挿入した穴の反対側から覗いたところ、SCP-880-JP-1の穴を通して向こう側を見ることが出来る。
実験記録002 - 日付2003/11/21
対象: SCP-880-JP-1
実施方法: SCP-880-JP-1の穴に紐を通す。この時紐がSCP-880-JP-1の穴内部の壁面に触れないようにした。
結果: SCP-880-JP-1の穴を紐が完全に通過。この時点では紐は視認可能。紐を引き抜く際に穴内部の壁面に接触したことで紐が消失。
分析: 穴の壁面に触れる事が異常性を及ぼすきっかけになっているようだ。
実験記録003 - 日付2003/11/21
対象: SCP-880-JP-1 ミルワーム
実施方法: SCP-880-JP-1の穴内部にミルワームを投入。その後SCP-880-JP-1を縦に切断する。
結果: 穴に侵入したミルワームは消失。SCP-880-JP-1を縦に切断した所SCP-880-JP-1の内部から縦に切断されたミルワーム一匹と先述の実験で使用した棒と紐が出現。SCP-880-JP-1は異常性を失った為焼却処分。
分析: 我々がこれらを何もない空間として認識しているだけなのか?
実験記録004 - 日付2003/11/21
対象: SCP-880-JP-2 アカゲザル
実施方法: アカゲザルの右手の指をSCP-880-JP-2の穴に挿入させる。その後SCP-880-JP-2を解剖台上で縦に切断する。
結果: アカゲザルはその場から消失。SCP-880-JP-2を切断したところ右手から頸部、左肩付け根に沿って切断された状態でSCP-880-JP-2の上に出現。SCP-880-JP-2は異常性を失った為焼却処分。
分析: 物体のごく一部でも内壁に触れれば影響の対象となって、体にはオブジェクトに加えられた影響が現れるのか。または中央部の空間もオブジェクトの一部であり、それが破壊された為に対象にも損傷が出現したのか。再出現(可視化)はSCP-880-JPが異常性を失った事が関係していると推測される。
実験記録005 - 日付2003/11/28
対象: SCP-880-JP-3 アカゲザル
実施方法: 異世界への転移を想定し、アカゲザルにビデオカメラを装着しSCP-880-JP-3の穴の内壁に接触させる。
結果: アカゲザルがその場から消失すると同時に映像と音声の通信が途絶える。その後一切の通信ができないまま30分ほどが経過。SCP-880-JP-3に変化がないことを確かめた上で実験室に入室、SCP-880-JP-3を縦に切断した所、SCP-880-JP-3上にアカゲザルが出現。頭部から臀部にかけて鋭い刃物で切断された様な状態で死亡していた。
装備していた通信機器を分析したところ、SCP-880-JP-3の穴から指を外し実験室内を徘徊するアカゲザルが記録されていた。その後アカゲザルは入室した研究員と入れ違うように実験室からの脱走し、監視室を経て廊下にまで侵入した。記録はSCP-880-JP-3を切断した瞬間にアカゲザルが廊下から転移し実験室内に出現したことを示している。SCP-880-JP-3は異常性を失ったため焼却処分。
考察: 一度内壁に触れてしまえばSCP-880-JPから離れてもその効果から逃れることはできないようだ。そして映像、音声記録にもその効果は及ぶらしい。このオブジェクトの異常性の正体は私たちが対象を認識できなくなる認識災害なのかもしれない。にしても、原因は何だ?このちくわの穴の中には元々何があるんだ?確かめておきたいものだ。
実験記録006 - 日付2003/12/07
対象: SCP-880-JP-4
実施方法: SCP-880-JP-4を長さ4cmになるよう輪切りにする。SCP-880-JP-4片の一つを穴の内部に触れない方法で裏返し、その後その内面を観察。
結果: [削除済み]
分析: SCP-880-JPの内壁を外側に向けることを禁じます。また、今後の収容および実験はセクター81██内部で行うものとし、SCP-880-JPの研究主任として鳶田研究補佐を任命します。 ―サイト-81██管理者
補遺1: SCP-880-JPは不定期的に自身の内壁を外に向けようとする"裏返しイベント"を起こすことがあります。セクター-81██に移送された直後に発生した"裏返しイベント"ではSCP-880-JP-5の内側の12%ほどが外側をむき、エージェント・██の狙撃により無力化されるまでに運送に関わった10人の職員とその周辺にあった32の機器を失う結果となりました。オブジェクトの柔軟性、耐久性から、一度イベントが発生してからおよそ5時間程で完全に表裏が逆転すると推定されます。なお、現在の収容プロトコルによって1█回の"裏がえりイベント"が阻止されています。
なお、完全な長さを保った状態のSCP-880-JPが全て裏返った場合被害がどの程度の範囲まで及ぶかは未知です。
Footnotes
1. 切断する際は通常のちくわと同様に切ることが出来ます。
2. 対象はどこかに転移したわけでもなくその場に留まり続けていることから、このオブジェクトの効果は内壁にふれた物が空間を含むSCP-880-JPの一部として認識される認識災害と推測されています。
3. 縦に切る、みじん切りにする等、穴を完全に破壊する様に切断する必要があります。輪切りのように内壁同士が一周している箇所がある場合、その断片は性質を保持します
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scp-881-jp |
評価: +140+–x
アイテム番号: SCP-881-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-881-JPはサイト-8181にあるオブジェクト収容コンテナに収容されています。コンテナ内に設置された監視カメラを用いて収容の確認が行われますが、監視カメラの映像を研究員が閲覧することは許可されておらず、収容確認はコンピュータを用いて自動化されています。またサイト-8181において発生した事案を受け、現在SCP-881-JPの視認実験及びSCP-881-JP-1へのインタビューは全て禁止されています。
説明: SCP-881-JPは長さ15cm・直径3cmのプラスチック製円筒に紐がついた、いわゆるダイナマイトの外見を模した物体です。調査によりSCP-881-JPの円筒部について内部は空洞、外枠も一般的なプラスチックと同様であり、また導火線を模したとされる紐も実際の導火線ではなく麻紐であることが判明しています。
SCP-881-JPの異常性はこれを直接、あるいはカメラ等を通じて間接的に視認した人間(以下SCP-881-JP-1に指定)に対し発現します。SCP-881-JP-1はSCP-881-JPに対し極度の恐怖を示しパニック症状に陥ると共に周辺人物にSCP-881-JPの対処を懇願し、その後視認以前に保持していた語彙力及び問題解決能力の一部を喪失します。SCP-881-JP-1のパニック症状は時間とともに収まり、Bクラス記憶処理を施すことで問題解決能力の回復が、更にその後再学習を行うことで語彙力の回復が見られることも実験によって確認されています。
語彙力の喪失について、コミュニケーションを行う際に用いられる形容詞が全て「ヤバい」という1つの形容詞に集約されます。形容された物品がどのように「ヤバい」のか他者に詳細な意味を求められても「ヤバい」という形容詞のみが返答されます。次に問題解決能力の喪失について、ここでの問題解決能力とは「何らかの問題に対し、事前の知識や感覚から解決策を導き出す能力」を指します。この問題解決能力の喪失は視認時間と共に段階的に進み、その症状はおおよそ二つの段階に分けることができます。初期段階では前提知識や類似的な問題との接触経験がない問題に対し、何らかの解決策を提示する能力を喪失します。この段階では直感による解決策の導出が不可能になったと考えられ、所謂「勘が鈍る」といった状態に近くなります。この状態で更に視認を続けた場合SCP-881-JP-1は徐々に前提知識や類似的な問題との接触経験がある問題に対しても何らかの解決策を提示する能力を喪失し、この段階で推論による問題解決が不可能になったと考えられます。
SCP-881-JP-1は他者に止められるまでSCP-881-JPから視線を離すことができなくなり、この理由についてSCP-881-JP-1によると目を離した場合「ヤバい」ことになる可能性があるからと報告されています。この報告に加えてSCP-881-JP視認中に「助けを呼ぶ」という解決策を実行できていることから、問題解決能力の喪失は視認を中断した瞬間に発生するのではないかと考えられています。同様に語彙力の喪失は視認中断時に発生し、視認中の「ヤバい」という形容は被験者が感じる恐怖とパニック症状に起因するものではないかとの推測もありますが、語彙力の喪失に起因する「ヤバい」という形容と恐怖に起因する「ヤバい」という形容を言語的に分離することはできないためこの点については未だ確定していません。
SCP-881-JPは200█/██/██、██県██市の████幼稚園で発見されました。当初「教室でヤバい物が発見された」との通報を受けその説明の不可解さから警察に扮したエージェント██が調査、その後エージェント██から緊急の機動部隊出動要請が出され機動部隊が急行し、最初にオブジェクトを発見した機動部隊員がオブジェクトを目視した段階で異常性に曝露したため、視覚を通じて認識災害を与えるオブジェクトであることが判明しました。回収・収容された後関係者や児童とインタビューが行われましたが出現経緯については情報を得られず、オブジェクトの影響を受けた者にBクラス記憶処理を施した上でカバーストーリー「児童が拾った危険物の回収」を適用しました。
+ 音声記録 - 実験・インタビュー003
- 音声記録 - 実験・インタビュー003
インタビュー003 - 日付200█/██/██
対象: D-881-01
インタビュアー: ██博士
<録音開始, 200█/██/██>
██博士: 只今より実験を開始します。D-881-01、聞こえますか。
D-881-01: 聞こえてますよ。このコンテナの中身を確認すればいいんですよね。
██博士: そうです。我々がコンテナの開閉を行いますので、コンテナが閉まるまで確認を続けてください。
D-881-01: 了解っす。俺は準備出来てるんでいつでもどうぞ。
██博士: では開きます。
[コンテナの扉が開かれる]
D-881-01: え……ちょっ、ちょっと待ってくれ!何だよこれ聞いてねえよ!何でこんなヤバいものがあるんだよ!おい先生あんた聞こえてるんだろ!聞こえてるなら返事しやがれ!!くそっ![罵倒]!!おい誰かいないのか!!おーーーい!!……畜生どうすんだこれどうすんだよこんなクソヤバい実験だなんて聞いてねえよ!おい先生!!助けに来てくれよ!!頼むよ!!何とかしてくれよ!!
[以降20分間D-881-01はパニック症状に陥り罵倒と救援依頼を繰り返す。この後コンテナは閉じられD-881-01は職員にインタビュー用の別室へ連行される。]
██博士: それでは只今よりインタビューを開始します。
D-881-01: おいあんた!インタビューなんかやってる場合じゃねえだろ!あんなクソヤバい物とっととどうにかしないと本当にヤバいことになるぞ!
██博士: D-881-01、落ち着いてください。SCP-881-JPについては我々が常に監視を行っています。
D-881-01: いや監視するとかしないとかじゃなくて……とにかくあんなヤバい物今すぐ何とかしないと絶対ヤバいって!
██博士: もう一度言います、D-881-01、落ち着いてください。SCP-881-JPを安全に収容するため、私達は今あなたにインタビューする必要があるんです。まずSCP-881-JPはどのような物体でしたか?
D-881-01: どのようなって……とにかくヤバくて……ヤバくて……ヤバかったよ。
██博士: ……そうですか。では質問を変えましょう、以前掛け算を習った経験はありますか?
D-881-01: あんたふざけてんのか!?
██博士: ふざけていません。質問に答えてください。
D-881-01: ……あるよ。あるに決まってんだろ。
██博士: 結構です。2×3は?
D-881-01: 6。
██博士: はい、それでは次に1111×3は?
D-881-01: えー……わかんねえな。そんな問題解いたことねえもん。
██博士: 答えは3333です。では2222×3は?
D-881-01: ……いや……わかんねえ。なあ、やっぱこんなことより今すぐあのクソヤバいの何とかしないとヤバいって先生……。
<録音終了, 200█/██/██>
結果: この後同様に簡単な前提知識と推論から答えを導き出せる四則演算を提示しましたが、D-881-01は一度解いた経験のある問題と全く同じ問題以外どの問題を解くことができませんでした。また記憶処理と再学習を行った結果、D-881-01の語彙力と問題解決能力には回復の傾向が見られました。
分析: SCP-881-JPの回収時にこれを視認したエージェントと機動部隊員で症状が違っていたが、視認した時間がより長かったであろうエージェントと近い症状がD-881-01には見受けられた。やはり観察時間が長ければ長いほど症状が悪化するとみていいだろう。掛け算の質問からわかった通り、九九のような一度は解いた記憶のある問題は解答できるが、解いた記憶のない問題は以前解いた問題を少しいじっただけで解けなくなってしまうらしい。 -██博士
補遺1: 200█/██/██に実施されたインタビュー実験003,004が終了した4時間後、SCP-881-JPの研究担当職員を中心にサイト-8181研究職員のおよそ1/3において、SCP-881-JP-1に見られる「ヤバい」への語彙集約が確認されました。インタビューを直接行っていた██博士やインタビュー音声を確認していた研究担当職員が語彙集約に二次感染し、そこから更に広がったものと考えられます。
研究担当職員がこの伝染性に気づかなかった原因として、収容時に行われたエージェント・機動部隊員・その他曝露者との通信やインタビューを経て██博士が語彙集約を発症しなかったため、SCP-881-JP視認以外の精神影響の可能性が低いと判断されていたことが挙げられています。またこれらの語彙集約はSCP-881-JP-1(N次感染者を含む)の発話を聞いた人間に伝染することが確認されており、その後の実験で伝染に要する発話の時間は個々人で差があるものの、最短2分、最長でもおよそ2時間の発話を聞いた時点で感染することが報告されています。そのため多数のSCP-881-JP-1の発話を同時に耳にした場合感染までの時間が飛躍的に短縮され、このような突発的大規模感染が発生したと推測されます。
この語彙集約事案は████幼稚園に教諭として潜入し曝露者の語彙の再学習を任されていたエージェント██が██博士と連絡をとった際██博士の返答が支離滅裂であったことから発覚、即座にサイト管理者に報告され、サイト-8181における人員の出入り及び外部通信が完全に遮断されました。その後サイト管理者が作成した語彙力判定テストをサイト-8181の全職員に解かせ、異常を示した職員を対象にBクラス記憶処理と語彙の再学習を行った結果サイト-8181における事態は収束しました。更に200█/██/██にサイト-8181から出た職員、あるいはサイト-8181の職員と通信を行った外部職員にも同様の語彙力判定テストを実施しましたが、全員が異常性を示さなかったため外部への感染拡大は発生しなかったものと考えられています。
補遺2: 200█年以降、一部の若者に「ヤバい」という形容詞を多用する傾向が見られました。この傾向について調査したところ必ずしも全ての形容詞が「ヤバい」に集約されているわけではなく、上述事案で確認された語彙集約及びその伝染性が変質したものであるか否か、そもそもこの傾向とSCP-881-JPに関係があるか否かについては未だ不明ですが、もしこの傾向がSCP-881-JPに由来するものであった場合、語彙力及び問題解決能力の喪失に起因するAK-クラス:世界終焉シナリオが発生する可能性を有するため何らかの対策を講じる必要があり、現在まで具体的な対策が検討され続けています。
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scp-882-jp |
評価: +158+–x
評価: +158+–x
クレジット
タイトル: SCP-882-JP - 信仰の残骸
著者: ©︎jet0620
作成年: 2017
評価: +158+–x
評価: +158+–x
収容室にて職員と談笑するSCP-882-JP
アイテム番号: SCP-882-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-882-JPはサイト-8181の標準的人型収容施設にて収容されます。週に一度、精神科医による診断が行われ、必要に応じて投薬が行われます。
SCP-882-JPは制限エリア内にて、レベル0クリアランス/Eクラス職員と同じ軽作業業務に就き、同レベル職員と同額の給料が支給されます。収容室外に出る際、SCP-882-JPは専用に開発されたHAZMATスーツの着用が義務付けられます。会話は筆記か録音機を用いて行ってください。特に必要がない限り、SCP-882-JPは収容室内に拘留されますが、希望した場合は区域内で食事や買い物を行うことが出来ます。SCP-882-JPが何らかの希望があった場合は審議の後に許可・非許可を出し、その際に生じる費用はSCP-882-JPが負担します。SCP-882-JPが制限エリア外に出ることはサイト管理者の許可が必要です。
宗教信仰度テストにて一定値の数値を記録した職員が、SCP-882-JP担当になります。完全な無神論者及び特定の職員がSCP-882-JPの影響を受けた場合は、検査の後に適切な処置を行います。職員はSCP-882-JPを必要以上にオブジェクトとして扱わず、通常の職員と同様に扱うことを心掛けてください。
説明: SCP-882-JPは複数の神格的要素を保持した人型実体です。SCP-882-JPの外見は身長168cm程度の人間の骨格ですが、骨格における男性的特徴と女性的特徴が両者ともに現われている1ため、性別は不明です。英語・フランス語・日本語・アラビア語での会話・筆記が可能で、前者ほどより熟練度の高い会話・筆記が可能です。SCP-882-JPはその外見にも関わらず、通常の人間と同じように食物を消化・吸収することが可能ですが、排泄は行いません。摂取された食物は咀嚼された時点で消失しますが、食物を摂取したことによる満足感や、アルコール摂取による酩酊、薬品の投与による眠気など、精神的影響が確認されています。
SCP-882-JPを目撃または会話した人物(以降被験者)は、オブジェクトを”神聖なる存在”として認識し、それをトリガーとして各個人によって異なる異常性(異常性ごとにSCP-882-JP-AからIと分類)を発露します。SCP-882-JPを直接視認しない、SCP-882-JPの声を直接聞かないことにより、異常性の発露の可能性及び進行を大幅に削減することが可能です。異常性の進行はSCP-882-JPとの交流・該当宗教への高い信仰心により促進されます。信仰心に関しては現在調査中ですが、「それが宗教的要素を含むと知らないイベント」「宗教的要素を含むが、被験者が宗教的意義が低いと認識しているイベント」に参加することは信仰とは見做されないことが判明しています。特にクリスマスやバレンタイン等、商業的要素の大きくなったイベントは後者に該当するケースが多いです。
SCP-882-JPにより発露する異常性の一覧
分類
異常性
関連宗教
メモ
SCP-882-JP-A
SCP-882-JPを漠然とした神として認識する。
不明
特定の宗教の神格ではなく、普遍的な”神”の存在としての特異性だと思われる。完全な無神論者以外、おおよそすべての人間が影響を受ける
SCP-882-JP-B
肉体が機械に置換されていき、最終的に完全な機械の体へと変化する。
壊れた神の教会・歯車仕掛正教派と推測
マクスウェリズム教会信奉者に対しても、歯車仕掛正教派に対する嫌悪感や敵対心を無視して同様の影響が与えられる
SCP-882-JP-C
「第五を見つけろ」「第五に目覚めよ」といった概念的な第五主義に傾倒するようになる
第五教会
N/A
SCP-882-JP-D
曝露した人間は体内の腫瘍やガン細胞が肥大化する。多くの場合病状の進行や悪化により死亡するが、いくつかの例では生存し特異性を獲得する場合がある。
サーキック・カルト
この特異性の影響を受けた職員は終了措置が取られる。
SCP-882-JP-E
曝露した人間は[編集済み]を可能とする異常性を獲得し、それを行使することに躊躇わない。
密阿羅漢派
本来の密阿羅漢派の教義とは一致しない特異性である。インタビュー記録を参照
SCP-882-JP-F
[編集済み]。暴露した人間は異常性発現後、5分以内に死亡する。
[編集済み]
この異常性の発見後、意図的に異常性を発露させる実験は中止された
SCP-882-JP-G
対象はタイプブルー系統の能力を身につけ、その場から消失する。対象からの手紙が送られてきた点から、生存はしている模様
不明・道教系と推測される
消失した職員が、中国にて確認されたとの情報あり。現在確認中
SCP-882-JP-H
極端な信仰心の向上。自身の信仰する宗派以外の信仰を徹底的に否定するようになる。
信仰する宗教を問わず一定確率で発生
少ない例ではあるが他異常性と共存した状態で発生した事象があり、注意が必要である
SCP-882-JP-I
暴露者はSCP-882-JPを消滅させなければならないと確信し、それを実行に移そうとする
不明
SCP-882-JPの独自の神格と推測。無力化が協議されている
被験者の異常性の進行速度や発現する能力の規模・種類には個体差があります。現在の研究では、曝露前の被験者の宗教的敬虔さや思想との関連性は低いと考えられています。狂信的な信仰を持った被験者が、信奉する宗教とは無関係な宗教と関連を持つ異常性を発露するケースも度々確認されており、別途関連性のある事象がないか研究が進められています。本人が本来信仰していた宗教とは別の宗教に関連する異常性が発現した場合、被験者は混乱を示しつつも異常性を受け入れ、関連宗教への改宗を行うこともあります。
SCP-882-JPは、日本の[編集済み]にて起きたカルト教団によるテロ事件の際に発見されました。SCP-882-JPの証言から、教団教祖はSCP-882-JPと共に生活を送っており、長期間SCP-882-JPと接触したことにより異常性に暴露したと考えられます。
SCP-882-JPの証言によれば、対象は元々は人間であり、様々な宗教を信仰してはその信仰を破棄あるいは破門される生活を繰り返していたとのことでした。SCP-882-JPの身元は、SCP-882-JP自身が人間であった頃の記憶をほぼ喪失していることと、各要注意団体に所属していた時期があることなどから判明していません。
現在、SCP-882-JPの精神状態は非常に不安定な状態にあります。財団の精神医の診断では解離性同一性障害に近い、非常に不安定な精神状態になっているとの診断が下されています。複数の異常性を獲得した点と回収の原因となったカルト宗教の存在から、SCP-882-JP独自の宗教観から生み出された神格が既に存在する可能性を否定できません。
現在、SCP-882-JPには解離性同一性障害に対する治療法を基に、「SCP-882-JPが人間である」ことを重視した生活を送らせています。これは新たな神格による異常性の出現を防ぐとともに、SCP-882-JPが神格的存在として異常性を獲得することを防止し、解離性同一性障害の解消により異常性を縮小(一部に関しては無力化も視野に入れている)することを目的としています。
インタビュー記録882-JP-A - 20██/██/██
対象: SCP-882-JP
インタビュアー: ジーン博士
付記: インタビューは録音機器を使用して行われた。
<録音開始>
ジーン博士: やぁ、SCP-882-JP。調子はどうだい?
SCP-882-JP: ……まあまあかな。この部屋にはまだ慣れないけど、天井につりさげられるよりはマシだよ。
ジーン博士: そうか。少し質問したいことがあるんだがいいかな? 君の過去のことだ。
SCP-882-JP: それは前にすでに話したと思うけど?
ジーン博士: 確かに、君が世話になった神父がおかしくなって、君が確保されるまでのことはね。今日はそれ以前……君が人間だったころから骸骨になってしまうまでことを教えてほしい。
SCP-882-JP: ………ああ、そのことか。すまない、この姿になる前のことはどうも他人の出来事のように感じてしまうんだ。主観的な部分に関しては自信がないが、それでも?
ジーン博士: 構わない。
SCP-882-JP: えっと、過去の私……男か女かはわからないが、彼は不安を抱いていた。
ジーン博士: 不安? 具体的には?
SCP-882-JP: さぁ? その悩みはいろんな団体で……あー、”進化”とか”解脱”とかした時に離れてしまっていったから、あんまり覚えていない。とにかく、その悩みを解決するのに宗教に頼ったんだ。そしてその悩みを解決すると同時に僕は”進化”を果たしたんだ、中途半端にね。
ジーン博士: 中途半端とは、どう意味だい?
SCP-882-JP: そのままだよ。”進化”したのは私の一部だけだった。悩みと体の一部は離れたが、そこには”進化”できなかった未熟者が残された。そして糾弾される。お前は教えを理解していないと、お前のようなものが存在してはならないと。機械の神を信仰した時は、肉体が機械に変わるのではなくデジタルの海に流れた。歯車のやつらは俺を追い出した。肉の神の時は皮だけがどこへ行った。皮が俺を食おうとしたから必死に逃げた。第五の時は朝起きたら目玉が星になっていた。起きた時、仲間はもういなかった。そうやって特異な能力が普通にある宗教を渡り歩いては中途半端に”進化”し、追い出されていった。しまいには、キリストやイスラムなんかの普通の教えでも”進化”するようになってしまった。
ジーン博士: 普通の、つまり一般で認知されているような宗教で”進化”し始めたのは、いつ頃?
SCP-882-JP: ……それもわからない。救いを求めて、修行に励み、そして”進化”を果たす。だが、進化したのは俺の一部だけで、残り香の俺は新たな救いを求めてまた教えを求める。教えを求めなくなったのも、いつかわからないな。
ジーン博士: ………教えを求める前の、人間であった時の記憶はないのかい?
SCP-882-JP: 漠然としたものは残っている。でもそれは既に俺から抜け落ちてしまったものだ。俺の一部がより上位の存在へと進化していくときに持って行ってしまった。
SCP-882-JP: なぁ先生、教えてくれよ。あいつの御大層な叡智はデジタルの海に流れた。祝福されし肉はヒトの限界を超えて好きにやっていくだろう。ソウルは煙になって星々の仲間入りをした。…じゃあ、後に残されたこの骸骨は、俺は、いったい何なんだ。
<録音終了>
Footnotes
1. 例を挙げると頭蓋骨の形状は男性的特徴を示しているものの、股間部の関節の形状は女性的特徴を示しています。
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scp-883-jp |
評価: +54+–x
オーストラリアで最初に発見されたSCP-883-JPの影響領域。
アイテム番号: SCP-883-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-883-JP現象の発生源と特定された道路は、現地の地勢に合わせた適切なカバーストーリーを用いて適宜封鎖し、可能であればフロント企業の地所として購入します。毎年1回、各封鎖区間でDクラス職員に“新型エンジンの始動試験”の名目の下、360度の視点を確保したカメラ搭載車両でカーチェイスを行わせ、SCP-883-JP-Aの出現が引き続き発生することを確認します。
SCP-883-JP-Aの完全収容、およびリアルタイムで所在地を特定するための試みは引き続き進行中です。
説明: SCP-883-JPは少なくとも150m以上の直線が続く2車線以上の道路の特定区間で発生する現象です。2007年の発見から2016年現在までに、3ヶ国で4ヶ所が同一の異常性を有していることが判明しており、全てのケースで影響領域の長さはおよそ70mです。
SCP-883-JP現象は、何らかの目的でお互いに競走/追跡状態にある、人間の運転手を乗せた2台以上の車両が、時速75km以上の速度で両方ともに1影響領域内部に侵入することによって発現します。現在までのところ、事前にSCP-883-JPの異常性についての知識を持っている人物や、前以てカーチェイスの展開を打ち合わせて走行に臨んだ人物が通過した場合は、異常な出来事は発生していません。
条件を満たした2台以上の車両(以下“対象”)は瞬間的に基準現実世界から消失し、直線路が際限なく続く異次元空間へと転移します。空間内の地勢は概ね影響領域から見えるものと似通った風景が延々と続くものですが、文字を記した看板などがそれらの風景に含まれる場合、走行時間に比例して表記は意味を成さない支離滅裂なものへ変わっていきます。加えて、対象は自分が転移したことを全く自覚しない2と共に、逃走/追跡の本来の趣旨を即座に忘却し、相手を振り切る/追い抜くことのみを目的として走行を続けます。
転移から約30分後、対象はSCP-883-JP-Aと遭遇します。SCP-883-JP-Aは以下の2つの要素で構成されています。
SCP-883-JP-A1は、イギリス人俳優のR████ A███████ (1955 - ) に酷似した男性ヒト型実体です。A1は下記のA2のルーフ上に括りつけたソファーに腰かけ、ハンドルに結んだゴム製ロープと運転席側の窓から差し込んだモップで、あたかもA2を操縦しているかのような素振りを見せます。A1はしばしば表情の極端な変化やボディランゲージで対象を挑発しますが、発声で意思疎通を試みる様子は見せません。また、A1はシートベルト等の補助具を身に着けていないにも拘らず、A2の加速や追い越し動作による不安定性を示しません。SCP-883-JPの発見以来、A1はオリジナルのA███████氏を反映して加齢が進行していますいましたが、現在は1994年頃の容姿を維持しています(補遺を参照)。
SCP-883-JP-A2は、ボディに黄色の、ボンネットに黒の塗装が施された1977年製 MKⅢ・ブリティッシュレイランド ・ミニ1000です。A2は“███287R”というナンバープレートを装着しており、後部座席には大量の家財道具が積まれています。A2の操縦性はA1の振舞いやミニ1000本来の性能と比較して説明が付かないほどに優れており、さらにクラクションやパッシングなど、A1の位置からは到底不可能な動作を実行することから、独立した意思を持って走行していると考えられています。
SCP-883-JP-Aの振舞いや外見は、1990年から1995年まで放送されたA███████氏主演のテレビコメディ“Mr. B███”に登場する同名の主人公とその愛車、及び1994/01/10放送の第10話“Do-It-Yourself Mr. B███”における作中展開をほぼ完全に踏襲しています。これにも拘らず、SCP-883-JP-Aと遭遇した対象者は、A███████氏または“Mr. B███”との類似性を、事案終了後に他者から指摘されるまで意識しません。
遭遇時点のSCP-883-JP-Aは道路横で停車しています。しかしながら、対象の通過直後、SCP-883-JP-Aは急発進して対象の追跡を開始します。SCP-883-JP-Aが追いついた時点で、対象にとってのカーチェイスの目的はSCP-883-JP-Aを含むその場の車両全てとのスピード競走へと完全に置換され、例外なく強い熱意を持ってこの競争を継続します。
出現からおよそ1時間後、SCP-883-JP-Aは急加速して対象を振り切り、そのまま視界の外部へと走り去っていきます。この時、SCP-883-JP-A1は対象に向かって手を振る、親指を立てるなど、あたかも健闘を称えるかのような仕草を取る傾向が見られます。SCP-883-JP-Aが視界から消えた約5秒後、対象は自発的に車両の減速を開始します。全ての対象が時速20kmを下回った時点で、彼らは同時に異次元空間から解放され、実体化と同時に影響領域を退出します。
再出現後の対象は、直前まで走行していた空間が明らかに現実世界に存在しないことや、SCP-883-JP-Aという存在の不自然性に対して一切の疑問を持ちません。対象はしばしばその場に車両を停め、自身が競走/逃走/追跡していた相手とお互いの運転スキルやSCP-883-JP-Aの正体3などについて終始友好的に会話を交わした後、握手を交わす・連絡先を交換するなどして円満に別れようとする傾向が見られます。他者から異空間転移直前までの言行との不一致を指摘されると、対象は先ほどまでのカーチェイスの爽快感や充足感をことさらに強調し、“貴重な体験を共有”した相手に敵愾心や悪意を抱く理由は無くなったと主張します。SCP-883-JPに関する詳細な記憶はクラスC記憶処理によって除去可能ですが、何らかの経験を共有したという確信とそれに基づく好意は対象同士の間に保たれ続けます。
これまでのところ、SCP-883-JP異空間内で発生する事象への、外部からの干渉は成功していません。無線通信・カメラ映像・GPS位置情報4は持続しますが、対象となった車両の乗員は外界からの通信を完全に無視します。加えて遠隔操作機能や、タイマー式の機構5などは、異空間の内部では機能性を失います。これは対象の走行に直接関与する機構に限らず、SCP-883-JP-A2の車体にGPS発信器を取り付けるための簡易的な発射装置や、時計のアラーム、更には導火線を使用した爆弾などの機械要素が関与しない物品も該当します。詳細については実験記録883-JP-01から-35を参照してください。
2ヶ所以上の影響領域に同時に車両を乗り入れた場合、異空間へ転送されてSCP-883-JP-Aと遭遇するのは1ヶ所のみです。このことから、財団の研究者たちは現在、SCP-883-JP-Aは単なる現象の一部として遍在しているわけではなく、SCP-883-JPの発生源となっている単一の存在だと理論上想定しています。
発見ログ: SCP-883-JPは2007/08/03、オーストラリアにおいて、飲酒運転のスピード違反車両と警察のパトカーが突如として消失したことを切欠に財団の注意を惹きました。財団が周辺を確保したおよそ1時間後、逃走車とパトカーは再出現し、乗員たちはお互いに友愛の振舞いを見せ始めました。全ての関係者に記憶処理が施され、カバーストーリー“致命的事故から一命を救った勇気ある警官”および“地割れによる道路の一部閉鎖”が流布されました。
2009/10/10、日本の山形県にて[編集済]の逃走車両1台と追跡中のフィールドエージェント2名が消失・再出現したことにより、SCP-883-JP影響領域が複数存在することが確定しました。現在まで影響領域には直線路以外のパターンが見出されておらず、確保は全て民間人が関与した事後に行われています。
補遺: SCP-883-JP-AとR████ A███████氏/“Mr. B███”を結びつける根本的な因果関係は未だに判明していません。A███████氏は財団のインタビューに対して、SCP-883-JP現象の影響領域が存在する地域を訪れたことは一度も無いと断言しており、これは財団独自の調査でも裏付けが取れています。
2012年█月の定期インタビューにおいて、A███████氏は長年演じてきた“Mr. B███”の役を、本職の俳優業に専念するため引退することへの希望を表明しました。SCP-883-JP-Aへの影響が未知数であることから当初この要望は保留されていましたが、財団内部における複数の協議を経て最終的に承認され、2012年11月を以て公表されました。
直後に行われた実験の結果、SCP-883-JP-A1には前回の実験までの加齢が見られず、“Mr. B███”放送当時の容姿に変化していました。これ以外の変化はSCP-883-JP-Aに確認されていません。以降、SCP-883-JP-Aは完全に独立した存在になったと見做され、A███████氏には記憶処理が施されました。
Footnotes
1. 追跡車が侵入した時点で逃走車が既に領域を離れていた場合、この条件は満たされません。
2. 転移時に対向車線の車や周囲の人間は対象から視認できなくなるにも拘らず、全ての対象は一貫して「その時は大して重要な事だと思わなかった」と主張しています。
3. “道路の主”、“走り屋の神様”、“考えるだけ無駄”など、曖昧で一貫性を欠く説が提唱される例が大半です。財団は現在、これらの説がSCP-883-JP-Aの実際の性質に光を投げかけるものだとは考えていません。
4. 異空間内部にいる間、GPS信号は消失地点から動きを見せません。対象の再出現と共に信号はその位置へ瞬間移動します。
5. 異空間内でカウント機能が失われている訳ではない点に留意してください。一例として、実験883-JP-09において使用された時限性のブレーキ作動装置は車両の再出現直後、本来の設定より30分遅れて作動しました。車載カメラ映像はカウントが予定通りの時刻に00:00で停止するのを記録しています。
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scp-884-jp |
評価: +235+–x
評価: +235+–x
クレジット
タイトル: SCP-884-JP - チェンジリング
著者: ©︎hannyahara
作成年: 2018
評価: +235+–x
評価: +235+–x
通達: 財団倫理委員会からの許可が出たため、収容プロトコルの修正が予定されています。提案収容プロトコルの実効性が検証された後、修正を実施して下さい。
アイテム番号: SCP-884-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 全国の産婦人科医と警察との通信を傍受し、SCP-884-JPだと考えられる事象を探知して下さい。SCP-884-JP罹災者を発見した場合、罹災者を含む関係人物に記憶処理を実施し、通常の流産と同様であると認識させて下さい。SCP-884-JP罹災者が再度妊娠した際、SCP-884-JPに罹災する確率が有意に高いことから、監視を継続し、適宜記憶処理を施して下さい。
説明: SCP-884-JPは年間60件程度生じる胎児の消失及びその他の物品の出現イベントです。対象となる胎児は出産直前まで問題なく成長し、出産直前まで超音波エコー検査等の検査では異常は確認できません。SCP-884-JPは出産直前に生じます。妊婦が破水した直後、妊婦の子宮内部から胎児が消失し、代わりに一万円紙幣の束と封書が子宮内部に出現します。出現した物品は胎児のように自発的運動がなされないにも関わらず問題なく出産されます。出現した紙幣および封書に異常性はありませんが、紙幣の通し番号による所持者の追跡は成功していません。
SCP-884-JPイベントに罹災する妊婦についてはこれまでの調査により一定の共通点が存在していることが判明しています。
夫婦仲が良好であるなど、妊婦のストレス因子が少なく、妊娠中は常時リラックスした状態にある。
所謂“望まれた妊娠”であり、出産、育児に対するモチベーションが高い。
食生活がヴィーガン(菜食主義者)的であり、煙草や過度な飲酒などの生活習慣を持たない。
これらの条件は習慣的な側面が強く、変化することも稀であるため、結果として特定の人間が複数回妊娠し、SCP-884-JPに罹災した事例が存在しました。また、SCP-884-JP時に出現する封書においても特定の人物が重複して標的とされていることを示唆する記載が存在しています。
SCP-884-JPイベント時に出現する紙幣については、個体差はあるもののおおよそ50万円〜500万円の範囲内でした。同じく出現する封書内の記述において「高評価」であれば金額が高くなる傾向が見られます。
以下、同封された封書の内容と金額(抜粋)です。
インシデントレポート884-JP-01 - 日付 1985/██/██
罹災者の状況: 28歳女性、第一子の性別が意に添わず僅かに精神状態が不安定だった。
封書の記述: 少々癖がありましたが野趣溢れる味わいでした。内臓は生だと少し臭いがきつかったので煮込みとしました。星3.0
金額: 55万円
インシデントレポート884-JP-02 - 日付 1995/██/██
罹災者の状況: 25歳女性、妊娠後に体重が増大していたことを若干問題視していたが、精神状態は良好。
封書の記述: 肉質は柔らかで舌で嚙み切れるほどでした。少し脂が多かったですが、それが寧ろ私好みの味でした。マルチョウ1が特に美味でした、ホルモンはちゃんと焼いて食べる方がいいですね。星3.5
金額: 65万円
インシデントレポート884-JP-03 - 日付 2010/██/██
罹災者の状況:26歳女性、完全なヴィーガンであり、妊娠中の精神状態も非常に良好であった。
封書の記述: 赤身全体にサシが入っていて炙るとジューシーな風味が口一杯に広がりました。ホルモンについてはやはり安心して生レバーを食べられるのはいいですね。臭みがない中で新鮮な血の風味がきちんとするのがレバー!という感じがして満足できました。星4.0
金額: 200万円
インシデントレポート884-JP-04 - 日付 2017/██/██
罹災者の状況:29歳女性、詳細は後述。SCP-884-JPへの罹災は3度目。
封書の記述: いつも素晴らしいものを供給して頂きありがとうございます。全身にサシの入った赤身と生で食べられるくらいに臭みのないホルモン、素晴らしい逸品でした。またリピします! 文句なしの星5.0!
金額: 500万円
インシデントレポート884-JP-04における罹災者については特殊な状況下で発見されました。罹災者は2017年に集団自殺により壊滅したカルト宗教団体███に所属していた信者であり、 教祖による洗脳が施されていたと考えられます。教団本部跡地の調査から、罹災者らはいずれも教祖によりSCP-884-JPの特性を利用した資金調達に利用されていたことが判明しています。具体的には微量のオキシトシン2及びその他の薬物投与による精神統制と強制的な食事の菜食主義化を施されており、SCP-884-JPの発現条件に非常に適した状況下で生活するように処置されていました。同様の処置を受けていた信者は40人以上に達しており、教団の資金源として利用されていたと考えられます。教祖及び罹災者を含む関係者は既に死亡しており、どのようにしてSCP-884-JPの存在とその発生規則を知り得たかについては不明のままです。
SCP-884-JPの捕捉件数
教団の捜索後にSCP-884-JP発生に関する詳細な事実が判明しました。教団の活動時期(2008年~2017年)においてはSCP-884-JPの捕捉件数が有意に減少しており、判明した教団におけるSCP-884-JP発生件数と合算するとほぼ一定数となることが分かりました(添付グラフ参照)。
これらの調査結果に基づき、より効果的な収容プロトコルの策定が現在進行中です。具体的な提案収容プロトコルは以下の通りになります。
提案収容プロトコル: 健康かつ出産に適した女性Dクラス職員を複数人選抜し、同じく健康体の男性Dクラス職員から採取した精子を用いて妊娠させて下さい。クラスΓ記憶処理3とオキシトシンをはじめとする養育補助薬物、適切な食事を与えてSCP-884-JPを誘発させて下さい。旧収容プロトコルにおけるSCP-884-JP罹災者の探索と情報封じ込めは継続して実施して下さい。
提案収容プロトコルの実施により一般社会におけるSCP-884-JPの発生は以前の2割程度まで低減できると試算されています。提案収容プロトコルの採用及び実証試験は財団倫理委員会による審議中です。倫理委員会からの承認が得られたため、提案プロトコルの効果検証が開始される予定です。
補遺: 倫理委員会からの通達により、提案収容プロトコルにおいてSCP-884-JPの影響を受けずに正常に出産された乳児については終了処分を行わず冷凍睡眠保存される予定です。但し将来的には、被害に遭った一般市民の反復的妊娠に伴うSCP-884-JPイベントの再発を防止する為、適切な処理4の上で保存された乳児が提供される予定です。
Footnotes
1. 小腸の意
2. 脳下垂体後葉より分泌されるペプチドホルモンの一種であり、過剰投与により子宮収縮を引き起こす。適切な投与により多幸感や愛情の発露等の効果が得られるとされる。
3. 電極を用いた非侵襲性記憶処理の一つ、薬物投与の必要がないことを特徴とする。
4. 関係者への偽記憶の移植及び乳児に対するζ型レトロウイルスベクターを用いた全身への遺伝子操作処理等
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scp-885-jp |
評価: +84+–x
SCP-885-JP-1
アイテム番号: SCP-885-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在、SCP-885-JP-1とSCP-885-JP-2がサイト-1024の低危険物収容金庫に保管されています。SCP-885-JP-1とSCP-885-JP-2は実験目的以外の使用、持ち出しが禁止されています。
また、未収容のSCP-885-JPが少なくとも後6つ存在すると見られており、現在も回収活動が続けられています。
説明: SCP-885-JP-1は直径9cmの卵型の携帯ゲーム機です。SCP-885-JP-1の前面には小型の液晶画面とボタンがついており、外見は1990年代に発売され、当時流行した███社の携帯ゲーム機「[編集済]」に酷似しています。SCP-885-JP-1は財団エージェントが栃木県██市の縁日の屋台で購入し、自宅で起動した際に異常性が発覚しました。その後、財団はエージェントがSCP-885-JPを購入した屋台を捜索しましたが、発見することは出来ませんでした。
SCP-885-JP-2は黄を基調にしたカラーリングが特徴のSCP-885-JP-1と同型の携帯ゲーム機です。SCP-885-JP-1とSCP-885-JP-2はカラーリング以外には差異が無かったため、以降の記述では一部を除いてSCP-885-JPとまとめて呼称します。
SCP-885-JPの異常性はボタンを押下した時に発現します。この時SCP-885-JPの最も近くに存在する「卵」が1つ割られ、SCP-885-JPの液晶画面には「卵」が割られる過程のドットアニメーションが流れます。異常性の効力範囲、「卵」が割られる原理は不明です。
SCP-885-JPによって割ることが出来る「卵」は鳥類の卵のみに留まらず、魚類・爬虫類の卵など、その対象は多岐にわたります。(詳細は後述の実験記録を参照)
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SCP-885-JPの影響を受ける対象の調査実験記録
付記: 実験No.002 以降はオブジェクトの影響を実験室外に及ぼさないよう、実験室内に防止用の鶏卵を配置した。
No.
対象
アニメーションの内容
結果
001
鶏の有精卵
床に置かれた卵が刃物で斬られる
殻が割れた。中の黄身はつぶれていた
002
鶏の無精卵
床に置かれた卵が刃物で斬られる
殻が割れた。中の黄身はつぶれていた
003
ダチョウの卵
床に置かれた卵がハンマーで割られる
放射状のひびが入り、殻のみが砕けた
004
茹でた鶏卵
床に置かれた卵が刃物で斬られる
変化なし、防止用の鶏卵が割れた
005
鮭の卵
鮭の卵が指に潰される
表面の膜が裂け、内容物がこぼれた
006
亀の卵
床に置かれた卵が刃物で斬られる
殻が割れた。中の黄身はつぶれていた
007
卵型の菓子
床に置かれた卵が刃物で斬られる
変化なし、防止用の鶏卵が割れた
008
孵化直前の鶏卵
床に置かれた卵が刃物で斬られる
殻が割れ、内部の雛は死亡した
009
排卵直前の鶏
チューブ状の物体に包まれた卵が刃物で斬られる
鶏の卵管内で卵が割れた
010
リンゴ
床に置かれたリンゴが刃物で斬られる
種のみが割れた
011
アボカド
床に置かれたアボカドがハンマーで割られる
種のみが割れた
012
ココナッツ
床に置かれたココナッツがハンマーで割られる
繊維質の殻と内部の殻の両方が割れた
013
モルモット
床に置かれた卵が刃物で斬られる
変化なし、防止用の鶏卵が割れた
014
妊娠中のモルモット
袋状の物体に包まれたモルモットが刃物で斬られる
モルモットとその胎児は死亡した。解剖の結果、子宮の破裂が死因だと判明した
015
モルモットの新生児
床に置かれた卵が刃物で斬られる
変化なし、防止用の鶏卵が割れた
実験結果に対する██研究員の考察
SCP-885-JPのボタンを押下した時に影響を及ぼす対象は、鳥類のみに限らず、爬虫類、魚類等の卵も含まれることが判明した。また、No.010〜012やNo.014の実験結果を鑑みるに、植物の種子や動物の胎児も 「卵」 として扱われること。動物については子宮部位が卵の「殻」として扱われると推測できる。
次に、「卵」の割り方に関して、SCP-885-JPのアニメーションの内容と実際の「卵」の割られ方はある程度リンクしているように見える。また、「卵」を割る手段は、「卵」の大きさや硬度の違いによって異なるようだ。
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+ SCP-885-JP-2の回収記録
- アクセスを終了する
SCP-885-JP-2の回収記録
20██年7月、栃木県██市で妊婦のみを対象にした原因不明の連続傷害事件が発生しました。この事件の被害者には目立った外傷がなく、体内の子宮部分と胎児のみが刃物によって傷つけられていました。警察内部に潜入していたエージェントの報告により事件の詳細を知った財団は、この事件が未収容のSCP-885-JPによって引き起こされた可能性があると判断し、██市の事件現場付近で、SCP-885-JP 及び 所持している人間の捜索が行われました。その結果、SCP-885-JP-2が発見され即座に回収・収容されました。以下は回収時のインタビュー記録です。
インタビュー対象: 事件現場付近に在住している男子小学生(以降は「少年」と記述)
インタビュアー: エージェント・██
<インタビュー開始>
エージェント・██:それじゃあ██君(少年の名前)、そのゲームを見せてくれるかな?
少年:うん、これだよ。(机の引き出しからSCP-885-JP-2を取り出しエージェント・██に見せる)
エージェント・██:このゲームはどうやって手に入れたんだい?
少年:えっと、7月の初めらへんに父ちゃんがお土産に買って来てくれたんだ。父ちゃん、あの日は酔っぱらっててさー「父ちゃんが子供だった時にはみんなこのゲームで遊んでたんだぞー」て言ってたなぁ。ほんとはこんなのよりも[編集済](インタビューの実施時点で発売されていた最新機種のゲーム機)が欲しかったんだけどなぁ、これそんなに楽しくないけどやってみる?
エージェント・██:いいのかい?じゃあ少し借りるよ。(事前に用意した鶏卵を皿に置き、SCP-885-JP-2のボタンを押す。)
少年:えっ!?卵が勝手に割れた!?
エージェント・██:知らなかったのかい?
少年:うん、箱も説明書も読まずに捨てちゃったし、これってボタンを押すとアニメを見れるゲームじゃなかったの?
エージェント・██:アニメも見れるけど・・・ちなみに今まではどんなアニメを見たんだい?
少年:えーと、卵とか、果物が割れたり、袋に入った猫や赤ちゃんが斬れたり・・・あれ?
エージェント・██:(無言)
少年:ねえ、ひょっとして少し前に近所で猫がたくさん死んでたり、僕の近くで女の人が急に苦しがってたのって・・・
エージェント・██:今日は色々お話ししてくれてありがとうね、このゲームはちょっと壊れているみたいだからお兄さんが引き取っておくよ。代わりに別の欲しいゲーム機を買ってあげ・・・
(少年はエージェント・██の言葉を最後まで聞かずにトイレに駆け込む)
エージェント・██:(溜息をつき) 本部、こちらエージェント・██です。未収容のSCP-885-JPを発見・確保しました。これより戻ります。
<インタビュー終了>
補足
エージェント・██によってSCP-885-JP-2は回収され、その後SCP-885-JP-2の所持者の少年とその家族には追加のインタビューを行った後に、Aクラス記憶処理が施されました。
追加インタビューの結果、少年の父親からSCP-885-JP-2は仕事帰りの途中で露天商から購入したとの証言が得られました。しかし、当時少年の父親は酔っており露天商の特徴やどのあたりで購入したかについては憶えていませんでした。現在、この露天商の行方を捜索していますが発見には至っていません。
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付録SCP-885-JP
以下の文がSCP-885-JP-1のパッケージに印字されていました。
オーット!『博士のわくわく卵割りマシーン』を手に入れたんだね?
ボタンを押すとあら不思議!博士が作った楽しいアニメを見ているうちに、なんと卵がまっぷたつ!まるで魔法だ!今夜は卵パーティで決まりだね!
『博士のわくわく卵割りマシーン』は全部で8つあるよ!そのうち7つは虹の色、最後の1つはシークレットレアさ!さあ全部見つけてコンプリートだ!
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みんな一緒に楽しもうね!
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注意
妊婦又は妊娠していると思われる人は気をつけて使用してください。
『博士のわくわく卵割りマシーン』により発生した事故・損害に対して博士は一切の責務を負いません。あしからず。
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scp-886-jp |
評価: +54+–x
密集した状態のSCP-886-JP-2
アイテム番号: SCP-886-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-886-JPは広さ15m × 15m × 6mの標準的な樹木管理部屋に収容されています。管理方法は一般的なイチョウと変わりありませんが、黄葉の兆候が見られた場合、すべての葉を切り落としてください。回収した葉は焼却処分してください。その後、収容室にSCP-886-JPの活動に必要な500gの食肉を配置してください。この食肉は切り身ではなければならず、SCP-886-JPの吸収が悪いミンチなどは厳禁です。現在、2本のSCP-886-JPを収容していますがそれぞれの収容室は直径150m以上離して配置すべきです。
サイト外でSCP-886-JPが発見され次第、機動部隊た-1("剪定鋏")がSCP-886-JP-1の捜索、処分を行います。
説明: SCP-886-JPはイチョウ(学名:Ginkgo biloba)と酷似した樹木です。██県の山林で行方不明者が多発し、その調査の末に群生地が発見されました。群生地のSCP-886-JPは即座に全て回収、現在収容している2本を除いて処分されています。
SCP-886-JPは主に樹木部分(SCP-886-JP-1と指定)と、そこから生み出される樹葉(SCP-886-JP-2と指定)と根の周辺に作られる地下空間(SCP-886-JP-Aと指定)で構成されています。
SCP-886-JP-1は見る限り一般的なイチョウと変わりありません。しかし、雌雄の性別が存在せず、銀杏などの種子も実りません。DNAには██%の差異があり、いくつか動物性のものが含まれています。
2本以上のSCP-886-JPがあると互いに根を伸ばしあって結合させる特異性を持っています1。結合したSCP-886-JP-1の根に結合痕はほとんど見られず、栄養の循環も円滑に行えます。さらにSCP-886-JP-1の根は、近くにある植物や動物を探知し、結合しようとします。そして結合した動植物から栄養を吸収し、溜め込みます。
動植物への結合方法は対象によって異なります。
植物:対象の根にSCP-886-JP-1の根が覆うように絡み付くことによって結合します。一旦結合したあとも、時間をかけて植物の根を侵食し、植物の根だけではなく幹までもSCP-886-JP-1の組織に置き換えていきます。植物への侵食率が30%を超え、根のほとんどがSCP-886-JP-1の組織に置換されると、植物は完全にSCP-886-JP-1の管理下に収まります。管理下に収まった植物は得た栄養をSCP-886-JP-1に送るようになり、自らの栄養は生存維持に必要な最低限だけを蓄えるようになります。この特性のためSCP-886-JP-1の群生地では通常の植物が育ちにくくなり、SCP-886-JP-1ばかりが繁殖します。
動物:鋭く尖った根で対象の皮膚を貫いて、内部の組織に細かい根を張っていくことによって結合します。しかし、このプロセスは時間を要するので、結合の最中に強引に引き剥がすことができます。皮膚下にSCP-886-JP-1の根は残りますが、特異性はありません。栄養吸収にも時間がかかるため、通常時は植物の根のほかに地中の幼虫や動物の死骸を吸収しているようです。
上記のような性質は若葉が芽を出す春から、落葉がはじめる直前の初秋までです。落葉の季節になると、後述のSCP-886-JP-2による栄養補給が活発になります。
SCP-886-JP-2は通常のイチョウの葉と変わりありませんが、黄葉とともに葉脈が神経組織へと置き換わり、葉の部分も生物の筋肉と同じ役割を持つようになります。この変化は肉眼ではただの黄葉した葉にしかみえません。前述の特性によりSCP-886-JP-2は風に飛ばされる他にも地面を這いずる回るなどの移動をすることが可能です。しかし、脳に該当する器官がないことと、SCP-886-JP-1を中心とした直径100mから離れると活動を停止するため、SCP-886-JP-1から何らかの指示を受け取っているものと思われます。SCP-886-JP-1が複数体結合していた場合、さらに範囲は広がるものとされています。
SCP-886-JP-2は基本的に一箇所に集まり、何層にも重なり結合しあいます。そうすることにより下の層のSCP-886-JP-2を飛ばされないようにしているようです。範囲内で最もSCP‐886‐JP‐2の密度が高い下層がSCP‐886‐JP‐Aと指定される空間と繋がる“穴”となります。“穴”となったSCP-886-JP-2上部を生物が通過すると上層の結合が解かれ、SCP-886-JP-Aとなる空間に落とし込もうとします。“穴”はSCP-886-JP-Aと直接つながっている上、穴開口部周囲の地表もSCP-886-JP-2に覆われている可能性が高いため抜け出すことは困難になっています。
SCP-886-JP-AはSCP-886-JP-1の根の間近に作られる大小様々な空洞です。大きさは生物が“穴”に落ち込んだ時点で生成され、落ちた生物が殆ど身動き取れない大きさに調整されます。この空間に生物が落ちた時点で“穴”は塞がってしまいます。SCP-886-JP-Aの内部に異常性はなく、生物を覆う内壁は周囲の土のままでした。落下での即死はほとんどありませんが、酸素濃度などの関係で数時間で衰弱し、動きが鈍くなり意識も朦朧とし始めます。
SCP-886-JP-A内の生物の動きが衰え始めると、SCP-886-JP-1の根が生物と結合し栄養を吸い始めます。結合した生物は一日経たぬうちにSCP-886-JP-1の根が張り巡らされます。この段階でも生体反応は確認されるものの、外科手術などによる根の除去は不可能なレベルになっており生物の意識もほとんどありません。張り巡らされた根は急激に成長し、結合した生物を苗床としてSCP-886-JP-1個体を生み出し、早いもので3日、遅いもので1週間の期間で地表に顔を出します。
大きさは2mにも及び、幹の直径は5cmほどです。地表に顔を見せた直後は緑色のSCP-886-JP-2をみせますが、1時間以内に黄葉、落葉のプロセスを行います。なお、落葉したSCP-886-JP-2はほとんど移動できず、まだ“穴”を作ることができません。このことから、SCP-886-JP-A内による捕食はSCP-886-JPの生殖活動に当たるものと考えられています。
補遺: 回収したSCP-886-JP-1の標本を解剖中、根の中心部に人間の背骨と思しきものが発見されました。頭であった部分は幹の方を向いてめり込んでいるようです。
さらに解剖を進めることにより幹の内部より人間の脳だったと思われる器官を発見。ほかにもSCP-886-JP-1の内部で活動していた器官の██%が人間のものと一致しました。どれも侵食を激しく受けているものの、かろうじて活動していたことが判明しました。
他の標本からも人間、周辺に生息する小動物などと思われる器官が発見されたため、SCP-886-JPは人間の脳などの器官を再利用してSCP-886-JP-2などを操作していたのではないかという予想結果が出されています。
Footnotes
1. 互いに探知できる距離は直径100m程と確認されています
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scp-887-jp |
評価: +31+–x
アイテム番号: SCP-887-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-887-JPは標準的人型収容室に収容されています。内部には監視カメラを設置され、24時間体制で監視されます。食事は1日1回、財団所有の養蜂場から採取されたローヤルゼリー50gを配合した特殊飼料が給与されます。いかなる理由があっても、20歳以下のヒトによるSCP-887-JP収容房の半径1km以内への進入は許可されません。もし上記圏内への進入もしくは接触が確認された場合、CTスキャンで脳を検査し、SCP-887-JP-1と判断された場合は下記手順に従って収容されます。
SCP-887-JP-1はSCP-887-JP収容施設から50km離れた隔離施設に収容されています。施設では週5回の義務教育授業が行われます。SCP-887-JP-1には「感染症の治療」というカバーストーリーを与えられ、いかなる理由があっても家族や関係者との面談は許可されません。
現在SCP-887-JPは収容に協力的です。この関係を維持するため、SCP-887-JPへの致傷的な実験は極力避けてください。また、SCP-887-JP-1を追加する実験は全面的に禁止されています。
説明: SCP-887-JPは遺伝子上は昆虫類ハチ目(Hymenoptera)の人型実体です。外見上は10代前半のヒトで、顔は19██年に失踪した████氏(当時12歳、男性)と酷似していますが、外皮を含む肉体の90%は蜜蝋に類似した成分で構成されており、胴体の形状は簡略化されています。体温は平常時摂氏32〜36度で、暑さにはヒトと同程度の耐性を持ちますが、気温20度以下になると急激に衰弱します。
SCP-887-JPは二次性徴前のヒト(以下「対象」)をみつけると、友好的な態度を示して接近します。対象が警戒を解くと、SCP-887-JPは「おまじない」と称して対象の額に口を当て、舌を針状に変形させトレパネーション1を行います。このトレパネーションを受けた対象はSCP-887-JP-1に変化します。SCP-887-JP-1の行動は術前とほぼ変わりませんが、SCP-887-JPに絶対的に服従し、他の対象を呼び寄せて犠牲者を増やそうとする傾向があります。対象が7日以上SCP-887-JPと接触しなかった場合、この効果は消滅します。SCP-887-JP-1の服従効果は永続的であると思われます。SCP-887-JP-1は30日経過すると、反応が緩慢になり、最終的に死亡します。解剖によると、前頭葉を中心に脳が融解し、鼻もしくは耳から何らかの生物が脱出したような形跡が見られます。脱出する様子の録画の試みは失敗していますが、脳に残ったサナギの断片からSCP-887-JPと同種のハチ目の生物と推測されます。現在、死亡前のSCP-887-JP-1の脳を救済する試みは失敗しています。
SCP-887-JPは人類に敵対的ですが、身の安全を重んじる傾向があり、危害から身を守ってくれると判断した相手には友好的です。この性質を利用し、現在の収容手順が確立されました。
補遺: SCP-887-JPは2016年█月██日に発生した███小学校児童・教師の行方不明事件の捜査をしていた警察官2名が失踪したことをきっかけに発見されました。失踪した警察官は、昆虫学者の██ ██氏宅付近で生徒たちを見たという情報をもとに事情聴取へ向かってから連絡が途絶え、警察に潜入していたエージェントが向かったところ、興奮状態のSCP-887-JPとSCP-887-JP-1となった児童18名2に襲撃されました。エージェントは重傷を負いましたが、██氏がSCP-887-JPをなだめ、危害を加えないことを条件に財団に確保されました。その後の調査により、 ██氏宅の地下室から警官2名、教師2名とバス運転手の遺体の一部が発見されました。事件の関係者にはカバーストーリー「不幸なバス転落事故」が適用されました。
+ インタビュー記録887-JP-1(2016/██/██)
- インタビュー記録887-JP-1(2016/██/██)
対象: SCP-887-JP
インタビュアー: 五月雨博士
<録音開始>
五月雨博士: こんにちは、SCP-887-JP。気分はいかがですか?
SCP-887-JP: おじさん3は無事?
五月雨博士: 安心してください、決して██氏にもあなたにも危害を加えないと約束します。まず、貴方はどこから来たのですか?
SCP-887-JP: お母さん。
五月雨博士: お母さんとは?
SCP-887-JP: お母さんは年をとってて限界が近かったから、僕を生んだ。でも10年前に突然、お母さんの手足がほとんどいなくなったんだ。僕はなんとか間に合ったけど、手足がないと相手もできないし、しょうがないから外で新しく家を作ることにした。
五月雨博士: そのお母さんとは、どこに?
SCP-887-JP: たぶん死んでる。場所は言えない。
五月雨博士: そうですか。次に、どのようにして██氏と会いましたか?
SCP-887-JP: 家出したあとに変な連中に襲われて死にかけてたときに、おじさんに助けてもらったんだ。そこでヒトの言葉とか、喋り方とか、紛れ込み方を教えてもらった。
五月雨博士: 変な連中とは、どのような者たちですか?
SCP-887-JP: わからないけど、僕を見るなり襲ってきたんだ。たぶんあなた達と同じ類いの連中だけど、まさか仲間じゃないよね?
五月雨博士: 知る限りではそのような報告はありませんし、我々の目的はあくまでもあなたのような存在を確保することです。
SCP-887-JP: そう。ならいいや。
五月雨博士: 次に、貴方の攫った人々についてですが、そのうち3名は██小学校に所属しないものでした。彼らはどこから確保されましたか?
SCP-887-JP: はっきり覚えてないかな。近くをうろついてたから手足にした。
五月雨博士: なぜ大人は殺害したのですか?
SCP-887-JP: 練習台にしたら壊れたんだ。大人の頭は固くて上手くいかなくて。
五月雨博士: ではあなたが児童を狙うのは、機能的な理由からということですか?
SCP-887-JP: うん。完成した頭は苦手なんだ。それにこの姿なら、子供は近づきやすい。
五月雨博士: 未発見の児童5名の行方は?
SCP-887-JP: 餌を取りに行かせたら帰ってこなかったから、知らない。
五月雨博士: 児童達には一部外科的手術の痕跡がありましたが、これはなんのための処置ですか?
SCP-887-JP: あなたたちが犬猫にすることと同じ。増えられちゃ困るんだ。
五月雨博士: 最後に、あなたの姿は、19██年に失踪した████少年に酷似していますが、これは意図したものですか?
SCP-887-JP: いや、全然。最初からこの姿になれただけだし。お母さんなら何か知ってたかもしれないけど、もう死んじゃってるだろうしなあ。たいした回答じゃなくてごめんね。
五月雨博士: わかりました。ありがとうございます。
SCP-887-JP: ねえ、おじさんに会わせて。
五月雨博士: 検討しておきます。
<録音終了>
補足: SCP-887-JPと██氏の接触は禁止されています。
+ インタビュー記録887-JP-2(2016/██/██)
- インタビュー記録887-JP-2(2016/██/██)
対象: ██氏
インタビュアー: 五月雨博士
補足: ██氏はSCP-887-JP発見時、生存が確認された唯一の成人です。保護したSCP-887-JPに会話能力や社会能力を教育したと証言しており、SCP-887-JPを説得できる唯一の存在として同様に収容されています。
<録音開始>
五月雨博士: こんにちは、██氏。
██氏: 五月雨博士。あの子は元気にしていますかな。
五月雨博士: ええ、いたって健康です。早速質問ですが、まず、どのようにしてSCP-887-JPを発見しましたか?
██氏: 夜に車を運転していたら、傷だらけのあの子を見つけたのですよ。尋ねても縋るような目をするばかりだし、病院も遠かったから治療のために連れて帰ったのです。
五月雨博士: 彼を不審に思いませんでしたか?
██氏: まあ、不審は不審でしたが、怪我をした子供を見捨てられませんよ。
五月雨博士: SCP-887-JPとはしばらく生活されていたとのことですが、何か異常に思える行動はありましたか?
██氏: 年の割に大人びていると思いましたな。それと、飲み込みが非常に早かった。言葉もどんどん覚えていって、テレビを見せればあっという間に内容を理解しました。
五月雨博士: ███小学校の失踪者たちですが、SCP-887-JPが彼らを連れてきたことには疑問を抱きませんでしたか?
██氏: 特には。子供たちも怖がっていない様子でしたし、友達かと思いました。ただ、断りもなくたくさんの友達を連れてきたことは咎めました。
五月雨博士: 教師たちの死については関知していましたか?
██氏: あれか。流石にびっくりして聞いてみたら、用済みだから好きにしろと言われましてな。そこで、あの子がヒトではないと確信しました。でも不思議と追い払おうとは思いませんでした。何故でしょうな。
五月雨博士: 最後に、なぜあなたは、SCP-887-JPを我々に譲渡したのですか?
██氏: あの子の安息の地を用意するには、私では力不足だったのですよ。あなた方が、あの子に平穏を与えてくれることを祈っております。
五月雨博士: わかりました。ありがとうございます。
<録音終了>
補足: 映像記録の心理鑑定の結果、██氏は虚偽の証言をしている可能性があります。SCP-887-JPの成人に対する未知の特性の可能性も加味し、SCP-887-JPに関与する職員は、くれぐれも██氏の発言を過信しないよう注意してください。 - 五月雨博士
事件記録887-JP-1: 2016/██/██ SCP-887-JPの成人対象への特性の実験中、Dクラス職員が[編集済み]を用いてSCP-887-JPへ危害を加えようと試みました。幸い別Dクラス職員によって未遂に終わりましたが、激昂したSCP-887-JPによりDクラス職員1名が死亡、警備員3名が負傷しました。その後、SCP-887-JPは実験室からの離脱を試みたため、鎮静ガスによって無力化されました。このインシデントはSCP-887-JPの収容に影響するものとして、██氏には秘匿されました。
事件記録887-JP-2: 2016/██/██ ██氏のインタビュー中、財団保有の養護施設に保護されていたSCP-887-JP-1群と未知の成人男性██名がサイト-██を襲撃、複数のオブジェクトの収容違反が発生しました。この混乱に乗じて██氏がSCP-887-JPの収容房に侵入しましたが、逃亡前に機動部隊により包囲しました。交渉を試みたところ、SCP-887-JPは██氏の口から舌と臓器を[編集済み]。その後SCP-887-JPは鎮静化し、清掃のため臨時収容房へ移送されました。██氏はその場で死亡が確認されました。確保されたSCP-887-JP-1の全個体は死亡し、解剖の結果、前頭葉の約80%は液化しており、襲撃時点で治療不可能な状態だったと判明しました。未知の成人群は確保されましたが、尋問を行なっても全個体が「女王のために」とだけ証言し、拒食もしくは自傷行為により死亡しました。死体は解剖用の一個体を除き、全て焼却処分されました。
事件887-JP-2以降、SCP-887-JPは職員に危害を加える様子もなく、新たなSCP-887-JP-1の報告例もありません。しかし、それは敵対性を失ったことと同義ではなく、事件記録887-JP-2のような事態が再発しないとも言い切れません。██氏の疑問もあります。何のためにSCP-887-JPは彼を殺害したのでしょうか。彼は本当に、偶然、SCP-887-JPを発見したのでしょうか。今となっては証明する術もありませんが、彼の言動には不審な点が多いです。 ──五月雨博士
補遺: 事件887-JP-2以降、SCP-887-JP収容房付近でハチの目撃報告が急増しました。ハチは主に排気口を出入りしており、女王バチがいないにも関わらず営巣を試みる群れも確認されています。採集されたハチとSCP-887-JPの関係性は調査中です。
Footnotes
1. 頭部穿孔。
2. 行方不明児童20名のうち15名、身元不明の児童3名
3. ██氏。
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scp-888-jp |
評価: +16+–x
アイテム番号: SCP-888-JP
オブジェクトクラス: Euclid Neuturalized Euclid
特別収容プロトコル:
+ 前Euclid時の特別収容プロトコル
- 閉じる
SCP-888-JP-1は現在、10m×10m×5mの収容室に収容されており、収容室の中央に位置するように設置されています。扉のセキュリティ解除キーはセキュリティクラス2以上の職員にしか知らされません。SCP-888-JPを用いた実験を行う場合、およびSCP-888-JP-1の状態保持のためのDクラスを用いた定期的なオブジェクトの清掃以外のいかなる場合においても、収容室への侵入は禁止されています。また、実験を行う場合Dクラス職員以外が収容室に立ち入ることは推奨されません。
+ Neuturalized時の特別収容プロトコル
- 閉じる
SCP-888-JP-1は現在、10m×10m×5mの収容室に収容されており、収容室の中央に位置するように設置されています。現在、SCP-888-JP-1に対する収容方法は監視カメラによる監視のみとなっています。現在オブジェクトに異常性は見られていませんが、異常性の再発現時に備えて収容室はセキュリティロックによって施錠されています。SCP-888-JP-1の状態保持のため、定期的にDクラスを用いたオブジェクトの清掃を行ってください。
SCP-888-JPはEuclidに再指定されました。経緯については補遺-888-2を参照してください。
SCP-888-JP-1は現在、30m×30m×20mの高セキュリティ収容室に収容されており、収容室の中央に位置するように設置されています。扉のセキュリティ解除キーはセキュリティクラス2以上の職員にしか知らされません。現在、いかなる場合においてもSCP-888-JP-1を用いた実験及び収容室への侵入は、定期的なDクラスを用いた状態保持のためのオブジェクトの清掃を除いて禁止されています。
説明: SCP-888-JP-1は、高さ59cm,幅56cm,奥行47cm,重量3,600gの一般的な達磨の外見をしており、右側の目が白目です両目共に黒目が描かれています。
SCP-888-JP-1を中心とした半径を3m10mとする球状の空間において、人間がSCP-888-JP-1を視野内に入れていない状態で、「だるまさん██████」と念じるか、発言することによって異常な特性が発揮されます(以下、条件を満たした人間を被験者と表記)。また、人間とSCP-888-JP-1の間に壁などを対象の視野を遮るように設置し、上記の行動をとった場合も条件を満たしたとみなされます。
上記の場合において、被験者は消失します。この時、機械類によるGPS反応は途絶え、映像機器類は破壊されますが音声通信は継続して可能です。異常性有効範囲内に被験者が複数人存在する場合はランダムに一人が選ばれます。
SCP-888-JP-2は、被験者によると「狭い通路のような場所で、壁や床から人間の腕のようなものが生えている」と報告されている異常空間です。被験者が問題無く運動を行えることから、空気の成分や重力は地球上のものと同一と考えられています。被験者は消失後、直立した状態でSCP-888-JP-2内に出現します。
SCP-888-JP-3は両腕と両足が無い、十代前半の日本人女性のような外見をしていると報告されている存在です。また、原因不明の力によって空中に浮遊しており、結果として本体に運動能力が無いにも関わらず振り向くなどの動作を可能としています。SCP-888-JP-3はSCP-888-JP-2内において被験者から約30m離れた位置に出現し、被験者に対して「だるまさんが転んだ」の勝負を持ちかけます。この時、SCP-888-JP-3から「だるまさんが転んだ」のルールについての説明がなされます。今まで説明されたルールは以下の通りです。
・ルールは基本的に日本全国各地における「だるまさんが転んだ」と同一のものである。ローカルルールなどは無し。
・被験者の勝利条件は後述の敗北条件を満たすことなくSCP-888-JP-3の肩に接触すること。
・被験者の敗北条件は歩く、腕を振るなど一般的に「動いている」と捉えられる動作を行っている時にSCP-888-JP-3に視認されること(瞬きや呼吸による胸部の運動などは含まれません)。
・SCP-888-JP-2内において被験者が「転ぶ」ことも同様に被験者の敗北条件となる。
また、ゲーム中にSCP-888-JP-3が被験者側を振り向くごとに、被験者の身体が中央から上下に向かって少しずつ「消失する」という報告がされています。この現象の原因は不明ですが、SCP-888-JP-3が10回目に被験者側を振り向いたと思われる時に音声通信が途絶えたため、SCP-888-JP-3が1回振り向くごとに被験者の身体の体積のおよそ10%が消失すると推測されています。この時、事実上身体の組織が失われているのにも関わらず、被験者の運動能力に影響はありません。
ゲーム中、SCP-888-JP-3はフェイントを用いたり、振り向くタイミングをずらしたりなど極めてランダム性のある行動を取り、またSCP-888-JP-2内の壁や床から生えた腕が被験者の邪魔をしたり転ばせようとするように動くため、SCP-888-JP-3に「勝利」することは非常に困難であると見られます。
SCP-888-JP-3との勝負に負ける、または勝負に対して否定的な意見を述べた場合、甲高いノイズ音とともに音声通信が切断され、収容室内の被験者が消失した地点に、四肢、眼球、舌の欠損、内耳部位の欠落により視覚、聴覚、発話能力が失われた人間の胴体とみられる物体が出現します。断面部の筋肉組織や骨の状態から、これらの物体の四肢は[編集済]されたものと推測されています。これらの物体は出現した時点では生存していますが、適切な医療行為を施さなければ四肢跡からの出血多量によって死に至ります。DNA鑑定の結果、これらの物体と被験者のDNA情報は一致することが判明しました。また、この時に出現する物体にSCP-888-JP-3とのゲーム中の影響は見られません(例として、3回振り向かれた時点で敗北した被験者の胴体も、7回振り向かれた時点で敗北した被験者の胴体にも、身体組織の消失は見られません)。
補遺888-1 オブジェクト再分類経緯-い:
20██/09/██、第██回目のDクラスを用いた実験において、D-8520がSCP-888-JP-3の肩に触れ、SCP-888-JP-3との「だるまさんが転んだ」に勝利しました。
その後、D-8520は収容室の自分が消失した地点に出現し、それ以降オブジェクトに異常性は見られなくなりました。その後、SCP-888-JP-1を再調査した結果、SCP-888-JP-1の底面に以下の文章が書かれていました。
あそんでくれて ありがとう おかさんは あそんでくれなかたから
この事例以降、一週間経過後もオブジェクトの異常性が発現しないことが確認され、当該オブジェクトはNeuturalizedへ再分類されました。
補遺888-2 オブジェクト再分類経緯-ろ:
20██/12/██、SCP-888-JP-1の清掃を行っていたDクラス職員が消失。この事態を受け、急遽異常性有効範囲調査のためDクラスを用いた実験を行い、異常性が再発現、かつ異常性有効範囲が半径3mから10mに拡大していることが判明されました。
以上の結果から収容手順を変更、当該オブジェクトはEuclidへ再分類されました。
また、これ以上の実験はSCP-888-JP-1の異常性に何らかの変化を及ぼす可能性があるため、SCP-888-JP-1を用いた実験は禁止されています。
我々はSCP-888-JPに飴を与えて甘やかしすぎてしまったようだ。どうやら我々は収容に関する知識ばかりでなく、子供のあやし方も学ぶ必要があったらしいな。 -██博士
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scp-889-jp |
評価: +27+–x
発見時のSCP-889-JP
アイテム番号: SCP-889-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-889-JPはサイト-8105の大型器物収容庫に配置され、常に二名以上の警備員によって警備されます。それ以外には特別な措置は必要ではありません。現在のところSCP-889-JPに対する実験は許可されておりません。
説明: SCP-889-JPはメーカー不明の、車輌などで牽引する大型のガス式バーベキューピットです。サイズは長さ190 cm、奥行き60 cmにもなります。非常に大型である事以外は通常の使用にはまったく問題ありません。しかしSCP-889-JPの異常性は内部に食材等を入れずに火を入れ、蓋を閉めた時に現れます。ガス管を繋ぎ点火を行うと数分から数秒後に内部になんらかの物体が出現します。発生した物体は火にさらされた時間に関わらず火の通った状態で発見されます。この出現現象は視覚やカメラなどによる観測状態では発生しません。
SCP-889-JPは200█年に千葉県██市の███沼付近の私有地にて発見されました。持ち主不明の遺棄物として土地所有者に利用され、予熱を行った際に異常が発現。持ち主が警察に届けたためエージェントに捕捉される事となりました。
実験記録889-JP-3
実験対象:SCP-889-JP
実験方法:重量計に載せた点火可能状態のSCP-889-JPを点火。内容物無し。
結果:点火してから37秒後に重量が70 g上昇。内部には複数のトカゲの焼死体を発見。
思わずエージェント・カナヘビの安否を確認してしまったよ。
実験記録889-JP-4
実験対象:SCP-889-JP
実験方法:耐熱加工したカメラを内部に仕込み、重量計に載せた点火可能状態のSCP-889-JPを点火。内容物無し。
結果:三時間経過するも異常現象は認められず。
実験記録889-JP-6
実験対象:SCP-889-JP
実験方法:重量計に載せた点火可能状態のSCP-889-JPを点火。内容物無し。
結果:点火してから5秒後に重量が5700 g上昇。内部に軽く焦げ目の入った七面鳥の丸焼きが確認された。
きっちりと下処理がされていた。ソースがあれば文句なしだったな。
実験記録889-JP-7
実験対象:SCP-889-JP
実験方法:重量計に載せた点火可能状態のSCP-889-JPを点火。内容物無し。
結果:点火してから37秒後に重量が4700 g上昇。内部に焼け焦げた無数のオオエンマハンミョウが確認された。
今日の実験はこれまでだ。
実験記録889-JP-13
実験対象:SCP-889-JP
実験方法:重量計に載せた点火可能状態のSCP-889-JPを点火。内容物無し。
結果:点火してから249秒後に重量が45400 g上昇。蓋を開けると沸騰した、チーズの混入した海水が噴出し実験者は軽い火傷を負いました。
実験記録889-JP-18
実験対象:SCP-889-JP
実験方法:重量計に載せた点火可能状態のSCP-889-JPを点火。内容物無し。
結果:点火してから2秒後に重量が65700 g上昇。内部に人間の焼死体が確認された。調査の結果遺体のDNAは点火作業を行った██博士と一致。結果を聞いた██博士は著しい神経症に陥ったため実験管理者から除外されました。
インシデントログ:889-A7
実験記録889-JP-18の46日後、重度の躁鬱状態と診断を受け隔離を受けていた██博士が突如サイト-8105に現れました。
彼は著しい精神錯乱状態でSCP-889-JPの収容庫内に侵入.自ら灯油を浴び,点火した状態のオーブン内に入り込みました。すぐに警備員による消化作業と治療が行われましたが、およそ50分後に死亡を確認。この事件からSCP-889-JPへの全ての実験申請は凍結されました。
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scp-890-jp |
評価: +243+–x
蓋を外した状態のSCP-890-JP。
アイテム番号: SCP-890-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-890-JPはサイト-8163のBSL3防疫区画に、本体と蓋を合わせた状態で収容されます。SCP-890-JPを用いた実験は防疫区画内で実施し、実験後は乾熱滅菌処理を施してから再収容してください。オートクレーブ等、SCP-890-JP本体が濡れる可能性のある滅菌方法は用いないでください。
説明: SCP-890-JPは色絵磁器製の平鉢です。高さ9.1cm、直径24.2cmの円形の鉢で、同じ材質の蓋が付属しています。
SCP-890-JPの内面に任意の液体が付着しているとき、液体と触れている部分にSCP-890-JP-Aと指定される細胞が出現します。SCP-890-JP-Aは異常な生存能力および増殖能力を有するヒト骨格筋筋芽細胞です。SCP-890-JP-Aは最低限の培地1さえ存在すれば温度や二酸化炭素濃度を調整していない環境でも活発に増殖、分化し、骨格筋組織を形成します。SCP-890-JP-Aから得られた遺伝子の解析結果から、SCP-890-JP-Aの起源は血液型O型Rh+のアジア系女性であると推定されています。
発見経緯: SCP-890-JPは████/11/23に、京都市上京区[編集済]の路地にて桐箱に入った状態で発見されました。発見現場付近には重度の刺傷を負った2人の成人男性が倒れており、発見時点で1人は既に死亡、もう1人は意識不明の重体でした。現場の状況から、どちらか一方が刃物を持って他方を襲撃し、乱闘の末に差し違えたものと見られます。
京都府警の初動捜査により、死亡した男性は京都市会議員の橘███氏(当時48歳)、重体の男性は同市内に住む西洋画家の須山██氏(当時35歳)と特定されました。SCP-890-JPの異常性確認に伴い、事件の捜査は府警警備部経由で財団に移管されました。
事件経緯およびSCP-890-JPについてなんらかの事情を知っている可能性が高いことから、須山氏はPOI-5819-JPとして要注意人物指定されました。POI-5819-JPは意識不明のままサイト-8163に移送された後、治療によって会話が可能な状態まで回復しました。POI-5819-JPに対する尋問によって得られた証言を以下に示します。
+ POI-5819-JPの証言
- POI-5819-JPの証言
橘さんとは十年来の付き合いでした。私の個展に立ち寄った橘さんが絵を買ってくれたのが知り合ったきっかけでした。歳は離れていましたが彼とは気が合いました。政治家であると同時に彼は美食家で、私を食事に誘っては色々なものを食べさせてくれました。高級食材から珍味まで、洛中で手に入る全ての食材を食べ尽くさんという勢いでした。御存知ですか、北白川には山椒魚の唐揚げを出す店があるんですよ。私は毎晩のように美味しい料理とお酒を戴いて、もう食っていないのは人間くらいのものですね、などと嘯いたものです。そうすると橘さんは決まって、俺は人も食っているよ、と答えました。彼はなかなかに偏屈な政治家でしたから、それは自分自身をネタにした単なる冗談だと思っていました。
倶楽部に初めて誘われたのは一昨年の夏でした。案内された会場は雑居ビルの地下にありましたが、そうとは思えないほど広々とした畳敷きの部屋でした。今でも信じられません。襖の外には竹林に囲まれた庭があって、庭の池には小さな滝までありました。室内は薄暗く、漆塗りの燭台に載った蝋燭の火と、辺りを飛び交う蛍の光が照明代わりでした。部屋には私と橘さんの他に8人の人間がいました。男が7人と女が1人。それは石榴倶楽部の会合でした。岩石の石、木偏に留守の留、それに漢字の倶楽部と書いてセキリュウクラブと読みます。なんでも幕末から続く由緒ある秘密結社だそうです。彼らの目的は人を食うことでした。比喩表現ではありません。文字通り、石榴倶楽部は人肉嗜食者のための社交団体でした。
倶楽部の定員は10人で、私は欠員を埋める形で倶楽部の正式な参加者となりました。参加者同士はお互いに偽名で呼び合います。例えば橘さんは宇宿という偽名を使っていましたし、私は早瀬と名乗っていました。彼らは自分達の嗜好を高尚な趣味だと言って憚りませんでしたが、大っぴらに言えない趣味だということも理解していました。会場はいつも薄暗く、他人の顔すらよく見えません。参加者同士で知っていることと言えば、背格好と性別、偽名、職種、それくらいのものです。
鹿の肉をモミジと呼ぶように、馬の肉をサクラと呼ぶように、彼らは人の肉をザクロと呼んでいました。集会の頻度はおおよそ月に一度でしたが、毎回ザクロを食べるわけではありません。そう簡単には手に入りませんからね。参加者に橋詰と名乗る男が居て、この男は医者らしいのですが、ときどき彼がどこかから真新しい遺体を運び込んでくるのです。聞けば、それは死後数日の献体者の遺体だという話でした。
手に入れた遺体を材料にして彼らは様々な料理を作りました。調理は秋津という男の担当で、彼の本職は板前でした。完成した料理を彼らは食べ、私も食べました。率直に言えばそこまで美味しいものではありませんでしたが、人間の肉を食っているという行為そのものに対する興奮は、何にも代えがたいものでした。
そして、私は椎名さんに出会いました。椎名というのは例によって偽名です。本名は知りません。彼女は石榴倶楽部で唯一の女性でした。物静かな人で、人肉食などという行為とは縁遠いように見えました。尤も、それは他の参加者にも言えることなのですが。外から見て判るような露骨な狂人は、倶楽部には一人も居ませんでした。ともあれ私は椎名さんに興味を惹かれました。彼女は他の参加者とは明らかに一線を画していました。彼女が唯一の女性だったというのもあるでしょうが、それだけではありません。石榴倶楽部は要するに金持ちの悪趣味な道楽でしたが、彼女だけは道楽のために参加しているようには見えませんでした。
椎名さんが人を食うのは、彼女の少し変わった思想のためでした。彼女は、人の生涯は人に食われて終わるべきだと考えていました。鳥葬というのがあるでしょう。それになぞらえれば、人葬とでも言いましょうか。死んだ人間の肉体はやがて何らかの形で自然に還りますが、彼女は、人間の還る先は常に人間であるべきだと考えていました。ではあなた自身も最期は人に食われたいのですか、と訊くと、椎名さんは微笑んで、その通りです、と答えました。その時はあなたも私を食べてくださいね、と。私は彼女の控えめな笑みに見蕩れながら、同時になんとなく不安になりました。椎名さんの口振りが、まるで明日にでも死んでしまうかのように聞こえたからです。
私と椎名さんは倶楽部の外でもたびたび会うようになりました。彼女に対する興味と不安は、やがて慕情に変わりました。彼女は掴みどころのない人でした。私はなるべく彼女の傍にいたいと考えるようになりました。そうしないと彼女は姿を消して、次に会うときには肉料理になってしまっているのではないかと、そんな突拍子もない心配が拭い去れませんでした。
椎名さんはいつも1本のナイフを持ち歩いていました。時折彼女はそれを取り出して、自分の肌にほんの小さな刺し傷を付けます。そしていつもの冷たい笑みを浮かべて、溢れてくる血を私に舐め取らせるのです。その行為は私をどうしようもなく不安にさせました。ある時に私は決心して、もうこんなことはやめようと言いました。椎名さんは戸惑った様子で、嫌ですか、と訊いてきました。私は嫌だと答えました。彼女はナイフを差し出して、私に預けてくれました。私はそれを鞄の奥に仕舞いました。それ以来、彼女の自傷行為は無くなりました。
椎名さんと過ごす日々は、実に満ち足りた時間でした。彼女と2人で色々な場所に行って、2人でごく普通の食事をしました。彼女は少しずつ明るい笑顔を見せるようになりました。彼女から預かったナイフはずっと鞄に仕舞い込んだままで、使う機会はもう来ないだろうと思っていました。
あの日の集会に椎名さんは来ませんでした。彼女が集会を休むのは初めてのことで、私は彼女のことが心配で仕方ありませんでした。集会の始めに橘さんが立ち上がって、例の品が手に入ったから見せたいと言いました。例の品と言われても私には憶えがありません。彼は桐の箱に入った磁器を取り出しました。蓋物の平鉢で、蓋を取ると中には大きな肉の塊が入っていました。それは明らかにザクロでした。橘さんは説明しました。曰く、この平鉢は世にも不思議な、ザクロが無限に湧き出す平鉢なのだ、と。
倶楽部の連中は喜んでいました。話が本当なら、もうザクロを食うために病院から献体を盗み出さなくてもいいわけです。彼らは早速平鉢の中のザクロを焼いて食いました。みんな旨い旨いと言っていましたが、なぜだか私は、そのザクロを食べ切るのにひどく苦労しました。今までのような背徳的な興奮もありませんでした。口の中に入れた肉が、やけに生温かく感じました。焼いた肉ですから温かいのは当然です。なのにどういうわけか、その肉の温度はまるで、舌や喉にまとわりついてくるようでした。
解散した後、橘さんが送ってくれると言うので2人で会場を出ました。夜道を歩きながら、私は橘さんに、椎名さんの欠席の理由を知らないかと尋ねました。君には言っていなかったか、と彼は言いました。椎名さんはもう来ないよ、と。辞めてしまったのですか、と私は聞き返しました。質問に答える代わりに彼は、傍らに抱えていた桐の箱を示して言いました。今日君が食べたザクロ、あれは誰の肉だったと思うかい、と。
私はわけが解らなくなりました。いえ、むしろ解ってしまったのです。彼の言葉の意味が。さっき食べた肉に感じた、奇妙な生温かさの理由が。私はひどく狼狽していたと思います。どうすれば良いか解らなくなって、ふと鞄を探るとナイフがありました。私はそれを手に握って、あとは皆さんの推測通りです。
取っ組み合っている間、橘さんはずっと何か言っていました。これは彼女の望みだったとか、私は仲介しただけだとか。でも全部無視しました。だっておかしいじゃないですか。私が最後に会った彼女、私のすぐ隣に居た彼女は、誰よりも幸せそうな顔で笑っていたんですよ。
POI-5819-JPの自宅より回収されたスケッチ。POI-5819-JPの証言によれば、これはPOI-5819-JPが"椎名さん"をモデルとして描いたものです。
意識回復以降、POI-5819-JPは重度の持続的な抑うつ状態にあります。突発的な自殺企図を含む異常行動に備え、適切な治療と厳重な監視を継続してください。
補遺: 事件翌日、POI-5819-JPの自宅に1通の封筒が届きました。封筒に書かれた宛名が"早瀬様"となっていたことからPOI-8519-JPの証言にあった"石榴倶楽部"との関連が疑われ、財団による回収が決定しました。封筒に差出人の氏名や住所は記されておらず、京都聚楽郵便局の消印が押されていました。封筒内には三つ折りの便箋1枚(文書890-JP-01と指定)が入っていました。
+ 文書890-JP-01
- 文書890-JP-01
前略 わたしが突然居なくなったことで、あなたは今頃ひどく混乱なさっているかも知れません。身勝手な行動をどうかお赦しください。
人の一生は人に食べられて終わるべきだと、わたしはかねてより信じております。それはわたし自身についても例外ではありません。ですからわたしは石榴倶楽部に入りました。わたしを食べてくれる同志に出会うためです。しかもわたしはなるべく若いうちに自分を食べてもらいたかった。倶楽部で何度かザクロを食べたあなたならご存じでしょうが、ザクロは若い肉ほどおいしいものです。どうせ食べられるなら、できるだけおいしく食べられたかったのです。
ですが自分の人生をほんとうに終わらせるとなると、まだその決心はつきませんでした。すべてを完結させるにはまだ何かが足りないと、わたしは感じていました。
そんなときにあなたが現れました。あなたは倶楽部の他の人達とは違っていました。他の人達が平然とザクロを食べる中、あなたは目の前のザクロをゆっくりと、ひとくちずつ口に運んでいました。それは単にあなたがザクロに慣れていないだけだったのかも知れません。ですがあなたのその所作は、わたしにはまるで神聖な祈りの儀式のように見えたのです。
わたしはあなたに食べられたいと思いました。願わくはあなたにわたしを愛してほしい、愛するわたしを食べてほしいと思いました。他人に愛されたいと願ったのはそれが初めてだったかも知れません。願いは叶って、あなたはわたしを愛すると誓ってくれました。たとえそれがかりそめの熱病に過ぎないとしても、わたしは嬉しかった。
だからわたしは死ぬことに決めました。あなたには淋しい思いをさせてしまいます。ですが今でなければ遅いのです。わたしがおいしいザクロになれるうちに、あなたの患った熱病が冷めてしまう前に、わたしはわたしの人生の幕を引くと決めました。
この手紙が届くころには、わたしは磁器のお皿になって皆さんの許へ戻っていると思います。これはまだあなたが倶楽部に来る前に、宇宿さんが持ちかけてくれたお話です。ほんとうは磁器から湧いたわたしではなくて、わたしの身体を直接食べてほしかったのです。けれどこの方法なら、あなたに何度でもわたしを思い出してもらえると思いました。
どうかわたしのことを忘れないでいてください。わたしの顔や声は忘れても、せめてわたしの味だけ憶えていてくれたなら、わたしはきっとしあわせです。
聖者に身を献じた兎は、来世でお釈迦さまになったそうです。わたしは来世で何になれるのでしょう。もう一度あなたの傍に生まれて、今度はわたしがあなたを看取って食べてあげたい。そんな願望はわがままでしょうか。
これからますます寒くなります。どうぞお身体に気をつけてお過ごしください。 草々
椎名
Footnotes
1. 動物細胞用の液体培地が最適ですが、ほとんどあらゆる培地に適応します。極端な例としては食用のブイヨンの中でも増殖可能であることが確認されています。
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scp-891-jp |
評価: +39+–x
評価: +39+–x
クレジット
タイトル: SCP-891-JP – 縋る
著者: ©︎Morelike
作成年: 2020
評価: +39+–x
評価: +39+–x
アイテム番号: SCP-891-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-891-JP付近には、一般人の侵入防止を目的とした警備体制が敷かれています。SCP-891-JP-1-Aの消失リスク回避のため、各実例にはロープによる固定措置が施されています。当時の学童及び職員の名簿リストを初めとした関連資料が不足しているため、それらの入手が現在の最優先事項となります。
説明: SCP-891-JPは、██山標高170m地点に存在する、木造校舎及び運動場で構成された敷地です。1988年時点まで"███市立小学校"として運用されていましたが、学童数の急激な減少を事由として現在は放棄されています。後述する要因により、構造上致命的な欠陥が複数生じていますが、不明な原理によって倒壊は回避されています。
SCP-891-JP-1は、SCP-891-JP内に点在するヒト(Homo sapiens)の手の総称です。本リビジョン編集時点で37体発見されており、いずれの実例も窓枠、木机、チョーク、遊具等の物体を掴む形で存在しています。モンゴロイド的特徴を統一的に有しますが、詳細な形質的特徴は実例ごとで差異が見られます。また、実例は次のとおり大別されます。
SCP-891-JP-1-Aは、限定的な自律性及び加齢現象が見られる実例です。消失可能性を孕んでおり、外因又は自律的挙動により把握対象の物体から離脱した場合、実例及び実例を中心とした一定範囲内に存在する物体は消失します。観測された消失事例のうち、97.5%は自律的挙動による落下を契機としています。
SCP-891-JP-1-Bは、SCP-891-JP-1-Aが変容した実例です。消失可能性及び細胞活動の停止に伴って加齢傾向は廃され、高度な耐久性が付与されます。変容に伴う外観の変化は実例ごとで異なりますが、鬱血症状、指の欠損等の外傷的様相を呈する傾向にあります。変容は不可逆的であり、SCP-891-JP-1-Aに回帰した事例は確認されていません。これにより、実例数は相対的に増加傾向にあります。
補遺: 消失痕の数及び当初から存在するSCP-891-JP-1-BがSCP-891-JP-1-A由来であると仮定した場合、元々のSCP-891-JP-1-Aの総数は109体だと推定されます。また、それらに既知の消失規模を適用して算出した結果、範囲の重複を含めて消失範囲の総和がSCP-891-JPの敷地面積とほぼ一致することが判明しました。このことから、SCP-891-JPはSCP-891-JP-1の残存によって存在を維持されていると推定されます。
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scp-892-jp |
評価: +167+–x
評価: +167+–x
クレジット
タイトル: SCP-892-JP - ミス・げいじゅつはばくはつだ ヴァンダリズムに反逆を
著者: ©︎kyougoku08
作成年: 2016
評価: +167+–x
評価: +167+–x
発見時のSCP-892-JP
アイテム番号: SCP-892-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-892-JPはサイト-8144内の専用収容ユニットにおいて24時間体制で監視が行われます。担当研究主任による許可のない限り、SCP-892-JPとの会話は禁止されています。SCP-892-JPの収容ユニットへは12時間ごとにDクラス職員を入室させ、会話を行わせてください。その際、財団鑑定部によって鑑定済みの絵画作品を所持させてください。また、SCP-892-JPの付近100m以内に要注意団体「博士」に関係しているオブジェクトを設置すること、SCP-892-JPとの会話時にそれらの話題に言及することは禁止します。
説明: SCP-892-JPは全長約10cmの粘土製胸像と推測される像です。SCP-892-JPは██ ██と自称し、若い女性の声質で日本語を用いた会話が可能です。SCP-892-JPの性質は非常に温厚であり、財団の収容に対し協力的な態度を示します。
SCP-892-JPの異常性はSCP-892-JPと何らかの芸術作品に対する会話を行うことで発生します。SCP-892-JPとの会話が終わった時点でSCP-892-JPは話者に対し「あなたには[芸術行為]の才能がある」と発言します。この発言後、話者は評価された芸術行為に強い関心を示し、積極的に該当行為を行います。話者によって作成された作品は高い芸術性を持つことが財団鑑定部の鑑定により判断されており、また、これらの異常性は機械を通じた会話の場合発生しないことが確認されています。
また、SCP-892-JPは周囲に芸術作品が存在せず、かつ24時間以上会話を行わない場合、日本国内の芸術作品がランダムにSCP-892-JPの周囲へ転移します。この行為は自動的に行われるものであり、SCP-892-JPの意思によるものではないと証言されています。
SCP-892-JPは20██/██/██、相次ぐ芸術関連施設の爆破事件を調査中に関連があると推測された芸術家██ ██氏の自宅において発見されました。発見時、SCP-892-JPは既に現在の異常性を持ち合わせていましたが、本来はSCP-892-JPが触れた芸術作品をその約2倍の質量を持つ炸薬に変化させ、爆発させる異常性を有していたことがSCP-892-JPの発言に加え、財団の試算結果から確認されています。
事件記録892-JP 20██/██/██
20██/██/██、要注意団体「博士」の関与が疑われていたSCP-███-JPの収容違反時、初期収容状態にあったSCP-892-JPの収容ユニットへ接近したSCP-███-JPが、原因不明の爆発を起こし無力化されました。その際、SCP-892-JPに聴収を行ったところ関与を肯定したため、SCP-892-JPは「博士」の作成したオブジェクトに対し何らかの破壊手段を所持していることが判明しました。以下はその事件時行われたインタビュー記録です。
+ インタビュー記録892-JPを開示する
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インタビュー記録892-JP 20██/██/██1
インタビュアー: 護良研究員
«録音開始»
護良研究員: それではSCP-892-JP、質問を開始します。先日発生したSCP-███-JPの無力化事案、貴女は関与を認めたそうですがそれについて詳しくお願いできますか?
SCP-892-JP: はい、先生、それを話すためにも、まずは私がこうなるまでの話をさせていただいても構いませんか?
護良研究員: 構いません、どうぞ
SCP-892-JP: ありがとうございます。私は元々██ ██…、貴方達はご存知でしょうがそういう名前の芸術家、というほどでもありませんでしたが芸術活動をしていました。…あの頃は美大を出たばっかりで、ずっと芽が出ずスランプに陥っていたんです。作る作品作る作品うまくいかなくって…。「芸術は爆発だ」って言葉があるでしょう? あれは比喩ですけどそんな風に全部爆発しちゃえばいい、そんなことまで考えていました。…そのときです、あいつに出会ったのは
護良研究員: あいつ、とは?
SCP-892-JP: …少し乱暴な言葉遣いを許してくださいね? はっきり言って最悪の奴です。ええ、最初はいい人だなんて思いましたよ、でも、でも、気づいた時には…! [罵倒]!
護良研究員: 落ち着いて、SCP-892-JP
SCP-892-JP: (1分ほど荒い呼吸音)…すいません、少し興奮してしまいました。私に芸術的転機を与えよう、と近づいてきた人がいたんです。…どんな顔だったかはよく覚えていませんけど、ただ妙に胡散臭い人間だったことは覚えています。…私は藁にも縋る気持ちで、…今思えば何であんなことしたんだろうって、…それであいつの言う通りに簡単な手術? とかいうそれを受けたんです。
護良研究員: 方法は分かりますか?
SCP-892-JP: …すいません、それをされている間の記憶が無くって。とりあえずそれが終わったとき私は美術館にいました。…その時はあいつに感謝しましたよ。見える景色がまるで虹の中にいるみたいだったんですから
護良研究員: 虹、ですか。いったいどういう事でしょうか?
SCP-892-JP: 説明は難しいんですけど…、ああ、これが芸術なのか、そう思うほど美しく輝いていたんです。そして思わず一番近くにあった銅像に触れてしまった瞬間。それが、その美しい銅像が、…ああ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
護良研究員: SCP-892-JP、大丈夫ですか? 継続が困難であればインタビューを終了しますか?
SCP-892-JP: …いえ、大丈夫です。…えっと、そう、触った瞬間爆発したんです。輝きが一瞬にして爆風の中に消えました。悲鳴と断末魔の叫びが聞こえました。傷ついていなかったのは私だけでした。私はパニックになって逃げ出して、家に帰って縮こまっていて。…でも、目が覚める度また別の美術館に、個展に、工芸館に、移動していました。そしてまた私は美しさに目がくらんで、触って。…発狂しそうでした、迂闊な自分を、あの悪魔みたいな奴を恨みました。いつまでもこれが続くんだと半分諦めてました。でも、1週間くらいしたころ、彼が現れたんです
護良研究員: 彼、とは?
SCP-892-JP: 詳しくは分かりません、…私にとっては救世主でしたけど。彼は突然私の部屋に押し入って殴りかかってきました。私は訳が分からなかったんですけど、とにかく抵抗しているうちに彼が私の力に怒っているんだと気付いて事情を説明したんです。そうしたら殴るのをやめて、「あの糞野郎か」って。そしてちょっと落ち着いてこう言ったんです。「殴りかかって悪かった、君はアレの被害者だ。…だけど俺には君を人に戻せない」って。…私が落胆したことに気づいたんでしょうか、彼は慌てて続けたんです。「でも、君を俺の作品にすることはできる。…ただし、君は人には戻れない、新しいアーティストを生み出す作品になる、それでよければ」って
護良研究員: そして貴女は
SCP-892-JP: 断ることなんて考えませんでした。…それから彼は粘土とヘラを取り出して、「芸術は爆発だ、ああそうかい、ならお前の作品も爆発してしまえ、糞野郎」って。…それが私がこうなるまでの最後の記憶です。そのあとはあなたたちがやってきてここに来た、それだけです。えっと、SCP-███-JP…でしたっけ? 私がそれを爆発させた方法は分かりません。でも、彼の言う事が真実なら私がそれを爆発させたのは確かだと思います
護良研究員: なるほど、ありがとうございます、SCP-892-JP
SCP-892-JP: はい。…あ、それと、先生は音楽の才能がありますよ?
«録音終了»
このインタビューを受け、再度██ ██氏の自宅を調査したところ、██ ██氏のキャンバスに微細な文字で以下の文章が5つ記入されていることが判明しました。以下の文章は検査結果に基づき時系列順に記載されています。
+ SCP-892-JP関連文章を開示する
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SCP-892-JP関連文章-1
オーット! おめでとう! 博士の限定版コレクション、ミスター・めいげんシリーズの"ミス・げいじゅつはばくはつだ"を見つけたみたいだね! "ミス・げいじゅつはばくはつだ"はとってもアーティスティックなおねえさん! 毎日退屈で灰色な毎日を送っているそこのキミ! 芸術に触れてキュートでクールな"ミス・げいじゅつはばくはつだ"と一緒に虹色の景色を見てみないかい!? 彼女といれば毎日は エックスプロ―ジョォォォォッン!!! 退屈なんてふっとんじゃうぞ!?
みんなで芸術を楽しもうね!
01. ミスター・にんげんはかんがえるあしである
02. ミスター・わたしにはゆめがある
03. ミス・げいじゅつはばくはつだ
04. [判別不能]
05. [判別不能]
06. ミセス・てきはほんのうじにあり(発売未定)
今後も続々新しいメンバーが加わるよ! さあ、楽しもうね!
新しいミスター・めいげんを応募しよう!: 今博士はちょっと困ってるんだ、なんたってこの世界いろんな人がいろんなことを言っている! だからどれを選べばいいのかわっかんない! だからキミたちに協力をお願いするよ! キミの好きなめいげんは何かな? 教えてくれたみんなの中から抽選でキミが名付けた世界でたった一人の新しいミスター・めいげんをプレゼント!
さあ、応募しようね!
SCP-892-JP関連文章-2
さっそくおうぼさせてもらいます! 「Are We Cool Yet?」をおねがいします!
匿名希望
SCP-892-JP関連文章-3
当製品、「ミス・げいじゅつはばくはつだ」、に対する改変行為は著しい著作権侵害及び威力業務妨害を含むと判断いたしました、これ以上の妨害行為を行った場合、然る場所に訴え出させていただきます
Neoワンダークール重工法務課
SCP-892-JP関連文章-4
Are We Cool Yet? You Were Not Cool! :-P
SCP-892-JP関連文章-52
うるさいくたばれバーーーーーーーーーーカッ!!!
これらの文章を受け、要注意団体「博士」及び「Are We Cool Yet?」の関与が疑われ、捜査は継続されています。
脚注
1. インタビューは収容ユニットのマイクを通じ行われた
2. この文章のみ他の文章を塗りつぶすように書き込まれていた
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scp-893-jp |
評価: +72+–x
左手前からSCP-893-JP、SCP-893-JP-1、SCP-893-JP-2(牛ロース)。
アイテム番号: SCP-893-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-893-JPの実験用サンプルはサイト-8181の低危険物収容ロッカーに収容されています。実験用サンプルはロッカーに設置された専用小型冷蔵庫に真空パック3袋分保管され、新たに回収されたサンプルについてその余剰分は焼却処分されます。
新たに発生したSCP-893-JPについてはその発生店舗に規則性がないため、全国の焼肉提供店舗に財団職員が1名以上潜入し、新たに発生したSCP-893-JPの対処に当たります。潜入した職員は店舗内で薬味用のネギがその場で刻まれる、あるいはパック等から用意される際その一部を使い牛タンあるいは豚タンを試食し、自身の舌の形状が事前に用意した自身の舌の写真と異なっているか鏡を用いて確認します。異なっている場合直ちに財団へ報告した上でそのネギ及びSCP-893-JPを回収することが義務付けられています。この報告を受けた場合担当研究員は医療スタッフ及び代わりの潜入職員を該当店舗に派遣してください。
万が一SCP-893-JPが客に提供され事件が発生した場合も、潜入職員は財団への報告を行ってください。この場合異常に曝された客は医療スタッフによって財団が管理する救急病院へと直ちに搬送され、胃の内容物を全て除去することになります。また店舗に居合わせた客については全員にBクラス記憶処理を行い、カバーストーリー"腹痛による救急搬送"を適用してください。
説明: SCP-893-JPは一般の焼肉提供店舗で薬味として提供される刻みネギと同様の外見を持つ物体です。試食実験において食感や味について一般の刻みネギと差異はないとされ、また成分分析においても青ネギもしくは小ネギと同様の成分であることが判明したため、下記の特異性以外は一般のネギと同様であると考えられます。
SCP-893-JPの特異性は薬味として用いられた際に発現します。まずSCP-893-JPを投入した"タレ"はSCP-893-JP-1へと変化します。この"タレ"は焼肉を食すために用いられる液体全般を指し、一般に提供される焼肉ダレの他にレモン汁、味噌ダレ、塩ダレなどが該当します。次にSCP-893-JP-1につけられた焼肉はSCP-893-JP-2に変化し、これを食べた人物はSCP-893-JP-2と同じ部位1を、SCP-893-JP-2の重量と同量分喪失します。喪失部分及びその周辺部分は最も自然な形、つまり最初から喪失部分は存在しなかったかのように肉体が再構成され、喪失した本人もSCP-893-JP-2を食べた段階では喪失の事実に気づきません。また牛のミノ、ハチノス、センマイ、ギアラ2のように、食された焼肉の部位に対しヒトの肉体が正確に対応する部位を持ち合わせていない場合、最も適当な部位3が喪失部位として選定され、焼肉以外の物品をSCP-893-JP-1につけて食した場合喪失現象は発生しません。喪失部位については口腔を通じてSCP-893-JP-2を人体から取り除くことで復元されますが、消化され排泄された場合は喪失されたままになります。
SCP-893-JPの元となるネギについて、青ネギ及び小ネギがSCP-893-JPの元となることが現在確認されています。これらは刻まれていない場合また焼肉提供店舗外で刻まれた場合その特異性を発現しないことが実験で確認されており、"焼肉提供店舗"で"薬味として刻まれた"時に一定の確率でその特異性を持つと考えられます。焼肉提供店舗外で刻まれたネギについて特異性が残存するケースが確認されました。詳しくは補遺1を参照してください。先述した通り一般の刻みネギとSCP-893-JPを外見的に見分けることができず、客への提供前に見分ける手段が実際に食べて特異性が発現するか確かめる以外に方法が見つかっていないため、特別収容プロトコルは現在の形に制定されました。
また人体部位の喪失は外見的に判断することが難しく、喪失に気づかないまま多量のSCP-893-JP-2、あるいは内臓部位が変化したSCP-893-JP-2を食べた場合人体に重大な影響が及ぶと考えられます。万が一SCP-893-JPが客に提供され喪失現象が発生した場合、喪失者に同席している客及び潜入職員が即座に感知できるために、可視的な人体部位のうち顕著な呂律の変化といった形で喪失の確認が最も容易な舌部が一番最初に喪失されるよう、プロトコル"唸る舌"に基づき「牛タン・豚タンを一番最初に食べるのが焼肉の基本である」という情報の流布を財団主導で行いました。現在のところこのプロトコルは一定の成功を収めていますが、最初に食べる部位が新たな部位に取って代わられないよう今後も継続的に実行される必要があります。
なお刻みネギを薬味として提供していなかった焼肉提供店舗においても、SCP-893-JPの出現が確認されています。この場合従業員の手を介さず客のテーブル上にSCP-893-JPが適切な器と共に突如出現することが確認されているため、潜入職員がSCP-893-JPの出現を感知できず客の人体喪失事件が発生する恐れがあります。現在まで刻みネギを薬味として提供している焼肉提供店舗で同様の現象は確認されていないため、全国の焼肉提供店舗に刻みネギの提供を控えるよう要請する試みは現在凍結されています。
一方プロトコル"唸る舌"の成功を踏まえ、「焼肉に刻みネギの薬味は合わない」という情報を流布しSCP-893-JPの脅威を抑える試みがなされましたが、この試みは現在までのところ失敗に終わっています。薬味としてネギを使用するという一般的な認識に対し真逆の情報の流布を試みた結果、情報の拡散浸透が想定より進まなかったことが失敗の原因と考えられます。そのため現在は薬味における刻みネギの直接的排除ではなく、刻みネギに取って代わる新たな焼肉用薬味の開発及びその薬味を浸透させるための情報流布の手法が研究されています。現在白ネギ・芽ネギ・野沢菜・柚子を軸とした焼肉用薬味の開発が行われていますが、白ネギ・芽ネギについてはこれらに対応するSCP-893-JPが新たに発生するか否かについても同時に研究がなされています。
SCP-893-JPは19██/██/██、██県███市の焼肉店"██████"で舌部喪失事件が発生し、偶然その場に居合わせたエージェントによって発見されました。事件発生時SCP-893-JP-2を食した4名グループのうち2名が舌部を喪失しており、それに気付いた残りの2人が騒いだことでエージェントが事件を察知、事件の異常性に気づいたエージェントの要請で焼肉店が警察に扮した財団によって抑えられ、原因究明中にSCP-893-JPを発見したとされています。なお舌部を喪失した2名を含むグループ4名については、SCP-893-JP-2と化したカルビ、ハラミ、レバー等をそれぞれおよそ1人前ずつ既に食べており、これら全てを消化前に胃から除去したことで全員の喪失部位の復元が確認されました。当初はSCP-893-JPの発生がこの焼肉店に限られると考えられていましたが、同様の事件が他の焼肉提供店舗でも発生したため、現在の特別収容プロトコルのように財団職員が全国の焼肉提供店舗に潜入するという方針が取られました。特別収容プロトコルが現在の形となって以降、SCP-893-JPが客に提供されるという事件は財団が感知している限りでは発生していませんが、SCP-893-JPは潜入職員によって計████回発見されています。
+ 実験記録001
- 実験記録001
一般にネギの薬味はうどんやそばにも用いられるため、SCP-893-JPが焼肉以外の場面で用いられた際特異性を発現するか否かの確認実験を行った。
実験001 - 1 - 19██/██/11 15:32
対象: D-893-1
実施方法: 一般的なざるそばにSCP-893-JPを加えて食べる。
結果: 変化なし
分析: 焼肉の合間に食べる野菜と同様に、食べたものが肉ではないから特異性は発現しないな。 -██博士
実験001 - 2 - 19██/██/11 15:54
対象: D-893-1
実施方法: 鴨の胸肉を含んだ一般的な鴨南蛮そば及び鴨せいろにSCP-893-JPを加えて食べる。
結果: 変化なし
分析: 温かい汁と冷たいつゆの両パターンを用意したが、この結果を踏まえるとSCP-893-JPが特異性を発現するのは焼肉に限るということだろうか。 -██博士
実験001 - 3 - 19██/██/11 16:30
対象: D-893-1
実施方法: 豚バラ肉を含んだ一般的なカレーうどんにSCP-893-JPを加えて食べる。
結果: 変化なし
分析: 鴨肉が焼肉に用いられないから発現しなかったのかと考えたが、肉の種類の問題ではないらしい。 -██博士
実験001 - 4 - 19██/██/12 12:11
対象: ██博士
実施方法: 牛バラ肉を含んだ一般的な肉そばにSCP-893-JPを加えて食べる。
結果: 変化なし
分析: これ以上の実験は不要です。SCP-893-JPの研究に割り当てられた予算は新たな薬味開発に使ってください。 - サイト81██管理者
以下の音声記録は██博士立ち会いのもと、新たな薬味の試食評価及びSCP-893-JP-2と化した内臓部位の摂取による影響評価のため実施された実験002の録音音声を文字に起こしたものです
+ 音声記録 - 実験002
- 音声記録 - 実験002
実験002 - 19██/██/██
対象: D-893-2(男性)
インタビュアー: ██博士
付記: 対象とインタビュアー用にそれぞれ8種類の薬味を用意した。そのうち1つは刻みネギで、D-893-2にはSCP-893-JPを、██博士には通常の刻みネギを用意した。なお本実験ではインタビューを同時に行うという性質上、発声に問題をもたらす舌部喪失を避けるためタンは提供されていない。
<録音開始, 19██/██/██ 19:03>
██博士: よし、それじゃあいただきましょう。今回の実験ではどの薬味も好きに使ってくれて構わないですよ。
D-893-2: これ本当に実験なんですか?いろんな薬味を使って焼肉を食べるだけって……。
██博士: もちろんれっきとした実験です。私も一緒に食べますので安心して食べてください。どれが一番薬味として適切か評価してもらう必要があるので、しっかり食べてくださいね。
D-893-2: はあ……それじゃ、いただきます。
[以下肉を焼く音、適当な会話が録音される。35分後まで省略。]
██博士: あらかた食べましたね……さて、どれが一番薬味として適切でしたか?
D-893-2: や、薬味として適切って言われても、正直どれもこれも変わらないというか……。
██博士: 質問を変えましょうか。次にあなたが焼肉を食べる時この8種類の薬味が提示されたとして、どれを使いますか?
D-893-2: そう言われるとこの[SCP-893-JPを指差して]ネギですかね。薬味といえばネギじゃないですか?
██博士: ……わかりました。あと幾つかホルモンの類も用意してますので、それも食べましょう。タレの器も交換しておきます。
[ここで実験は内臓部位の摂取による影響評価実験に移行。新しいタレと共にD-893-2にはSCP-893-JPが、██博士には通常の刻みネギが用意される。]
[以下同様に焼肉を食べる。提供された肉はミノ、センマイ、レバー、コブクロ(子宮)、ハツ(心臓)の順でそれぞれ1人前ずつ。ハツをある程度食べた段階でD-893-2が体調不良を訴える。]
D-893-2: す、すいません先生。
██博士: どうしました?
D-893-2: ちょっと気持ち悪くなってきました……多分食べ過ぎたんだと思います。
██博士: もう食べきれない、ということでよろしいですか?
D-893-2: は、はい……休んでもよろしいでしょうか……。
██博士: ええ、結構ですよ。医療班を呼んで胃薬でも出してもらいましょう。
<録音終了 19██/██/██ 20:21>
結果: この後D-893-2を検査したところ体調不良の原因は心臓の縮小に起因する血液の循環不全であることが判明しました。また実験以前の検査で得られたD-893-2の身体データと比較して、胃、肝臓、心臓、[編集済]が縮小していることが判明しました。これらについては検査後に行った胃の内容物除去によって全て完治復元したことが確認されています。
分析: 新たな薬味についてはまだまだ改良の余地がある。「薬味といえばネギ」という概念を突き崩すのは思いの外困難なようだ。内臓部位の喪失についてだが、SCP-893-JPにSCP-893-JP-2の摂食を強制する特異性が見られないのは幸いだった。もしそのような特異性があれば、D-893-2は自分の心臓が完全に消失し血液が循環しなくなるその時までハツを食べ続けていただろう。そうなったとしても彼は自分の心臓が無くなったことに気づかないだろうし、彼の中では「食べ過ぎ」で死んでしまったということになるのだろうが。 -██博士
補遺1: 焼肉提供店舗内で刻んだ部分がSCP-893-JPとなったネギの残りの部分(以下SCP-893-JP-aとする)について、焼肉提供店舗外で刻んだ後に店舗へ持ち込んだところSCP-893-JPとしての特異性を発揮することが確認されました。この事実に基づき、SCP-893-JP-aを焼肉提供店舗外で刻み、通常の刻みネギが入った真空パックに均等に分け全てのパックを店舗に持ち込むという実験を行いました。その結果全てのパックについて内容物の増減が見られ、一部のパックについて中の刻みネギが全てSCP-893-JPとしての特異性を発揮し、残りのパックの全ての刻みネギは特異性を発揮しませんでした。特異性を発揮したSCP-893-JPの総重量はSCP-893-JP-aの重量と一致したため、パック毎に分けられていたSCP-893-JPが通常の刻みネギと転移し一部のパックにまとまったと考えられます。現在この転移プロセスについて、刻みネギを提供しない店舗でSCP-893-JPが出現する事実と合わせて調査が行われています。
補遺2: 近年一人で焼肉店に来店する客が増加傾向にあると各地の潜入職員から報告されています。先の事例からも分かる通りSCP-893-JP-2を食べた本人は喪失現象に気づくことができず、SCP-893-JPが万が一提供されてしまった場合、提供先が多人数で来店したグループ客であれば舌を喪失した人物の呂律の回らなさから事案が容易に発覚しますが、提供先が一人で来店した客であると潜入職員が提供事案そのものを感知できない可能性があります。先述の情報流布と同様に一人焼肉の意欲を削ぐような情報を現在展開していますが、情報展開を行った201█年以降も増加傾向は収まる兆候を見せていません。もしもそのような一人客が来店した場合、潜入職員が積極的に注文を取り、その様子を注意深く観察する必要があります。
Footnotes
1. SCP-893-JP-2がタンであれば舌、ハラミであれば横隔膜といった対応関係があります。
2. 順に第一胃から第四胃。
3. 先の例で言えばヒトの胃。
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scp-894-jp |
評価: +171+–x
アイテム番号: SCP-894-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-894-JPはサイト-8181の専用保管ロッカーに筆記具と共に収容されます。SCP-894-JPの収容違反を防止する目的から、SCP-894-JPの付近には常にペンや鉛筆といった筆記具が配置されなければなりません。
SCP-894-JPを用いた実験にはレベル3以上の職員2名による承認が必要であり、Dクラス以外の職員がSCP-894-JPに筆記または描画を行う場合はレベル4以上の職員3名以上による承認が必要です。
説明: SCP-894-JPは、表紙に「あなたの夢は何でしたか?」と一般的な油性染料インクを用いた乱雑な文字で書かれている、███社から発売されているものと同一の外見のB5サイズの大学ノートです。外見以外の素材やページ数といった点に異常は確認されませんでした。
SCP-894-JPに行われた筆記または描画は、その終了と同時に即座に消失します1。その後、SCP-894-JPに筆記または描画を行った人物(以下、対象と表記)は、特定の職業に関する専門的な技術・技能や知識、そしてそれらの習得に対する意欲及びその職業自体への関心を喪失します。これまでの実験結果から、対象から技術・技能・知識・意欲・関心が喪失する職業について、対象が過去に最も就業を希望していたものであると推測されています。詳細は下記の実験記録を参照してください。
ある程度の期間中に何も筆記または描画が行われなかったSCP-894-JPは、その地点から最も近くに存在する筆記具の付近に転移することが判明しています。これまでに報告された転移までの期間は、最短で24時間、最長で168時間です。また、一度でもSCP-894-JPに筆記または描画したことのある人物は、筆記・描画によってSCP-894-JPの転移を阻止できないことが明らかになっています。
SCP-894-JPは、██県██市のアパートで自殺した大原 ██氏の自室の机上から、大量の原稿用紙やペンに埋もれた状態で発見されました。当初、アパートの管理人から通報を受けた警察は、大原氏の自室を捜査した際にSCP-894-JPを証拠品として押収していました。しかし、SCP-894-JPが証拠品袋から出された状態で証拠品保管庫内の筆記具の付近から発見される事例が相次いだため、警察内部に潜入していたエージェントによって財団に引き渡され、その後異常性が判明しました。なお、警察がSCP-894-JPを発見するまでの間、大原氏の自室にあった筆記具によってSCP-894-JPの室外への転移が阻害されていたと考えられています。
以下はSCP-894-JPに関する実験記録の抜粋です。
実験記録894-JP-4 - 20██/██/██
対象: D-894-2。事前の聞き取り調査では「サッカー選手になりたかった」と回答。
実施方法: 対象にSCP-894-JPへ「サッカー選手」と筆記させる。
結果: 対象はサッカーに関する専門的な技術・技能・知識及びそれらの習得に対する意欲とサッカー選手自体への関心を喪失した。なお、対象はサッカー選手に関する技術・技能・知識の習得を過去に行ったというエピソード記憶やサッカー選手への就業を希望するようになった動機等を実験後も保有していたものの、その中で具体的にどのような技術・技能・知識を獲得したかについては回答することができなかった。
考察: 基礎的な身体能力や認知機能等には影響せず、あくまで特定の職業に関する専門的な技能や知識のみが失われるものと思われます。また、その職業に関するエピソード記憶の一部及びその職業自体の存在や内容といった基本的な知識も同様に維持されるようです。 - ██博士
実験記録894-JP-5 - 20██/██/██
対象: D-894-2。
実施方法: 対象に再度「サッカー選手」とSCP-894-JPへ筆記させる。
結果: 実験前後で対象に変化は見られなかった。
考察: 一度SCP-894-JPの影響を受けた対象には再び影響を及ぼすことはないようです。 - ██博士
実験記録894-JP-6 - 20██/██/██
対象: D-894-2。
実施方法: SCP-894-JPの影響により喪失した、対象のサッカー選手に関する技術・技能や知識を再習得させる。
結果: 技術・技能習得の為の反復トレーニング及び知識習得の為の1対1の講義が行われたが、いずれも定着には成功しなかった。また、疑似記憶の植え付けも効果は現れなかった。
考察: SCP-894-JPによる技術・技能や知識の喪失は永続的かつ不可逆的であるものと思われます。実験894-JP-4の結果と併せて、恐らくエピソード記憶からの再習得も不可能でしょう。 - ██博士
実験記録894-JP-8 - 20██/██/██
対象: D-894-4。事前の聞き取り調査では「パイロットになりたかった」と回答。
実施方法: 対象に「教師」とSCP-894-JPへ筆記させる。
結果: 対象は航空機の操縦に関する専門的な技術・技能・知識及びそれらの習得に対する意欲とパイロット自体への関心を喪失した。
考察: SCP-894-JPは筆記される内容に関わらず対象に影響を及ぼすのかもしれません。更なる実験が必要です。 - ██博士
実験記録894-JP-9 - 20██/██/██
対象: D-894-5・D-894-6・D-894-7。事前の聞き取り調査ではそれぞれ「美容師・医師・看護師になりたかった」と回答。
実施方法: D-894-5には美容師という職業に対する自身の考えを、D-894-6及びD-894-7には「あいうえお」とそれぞれSCP-894-JPへ筆記させる。
結果: D-894-5はSCP-894-JPの全ページのおよそ半分を用いて、自身が美容師を志すようになった動機・美容師に就くための努力とその過程で起きた出来事や挫折・美容師という職業に対する自身の意見について記述した。その結果、D-894-5は美容師に、D-894-6は医師に、D-894-7は看護師に関する専門的な技術・技能・知識及びそれらの習得に対する意欲とそれぞれの職業自体への関心が喪失した。
考察: 仮説は正しかったようです。対象がSCP-894-JPにどのような記述を行ったとしても、SCP-894-JPはそれに左右されることなく対象の技術・技能・知識・意欲・関心を喪失させると見ていいでしょう。 - ██博士
実験記録894-JP-11 - 20██/██/██
対象: D-894-9。事前の聞き取り調査では「料理人になりたかった」と回答。なお、D-894-9は以前██県のレストランで調理師として勤務していた。
実施方法: 対象に「料理人」とSCP-894-JPへ筆記させる。
結果: 対象は調理に関する技術・技能・知識及びそれらの習得に対する意欲と調理師自体への関心を喪失した。
考察: 過去にその職業に就いた経験がある対象にも同様に影響を及ぼすようです。では、現在その職業に就いている対象には異常性を発現させるのでしょうか? - ██博士
実験記録894-JP-12 - 20██/██/██
対象: 新木研究助手2。事前の聞き取り調査では「研究者になりたかった」と回答。
実施方法: 対象に自身の職業に対する考えをSCP-894-JPへ筆記させる。
結果: 対象はSCP-894-JPの██ページを用いて、自身が研究者を志すようになった動機・研究者に就くための努力やその過程で起きた出来事・自身の研究者という職業に対する意見・研究者に就いてからの理想と現実のギャップについて記述した。その結果、実験後の検査では対象に変化は見られず、いかなる技術・技能・知識・意欲・関心の喪失も確認されなかった。
考察: SCP-894-JPは恐らくその時点で既に就業を希望していた職業に就いている対象に影響を及ぼすことはないものと思われます。しかし、念のため3ヶ月間の経過観察の実施を提案します。 - ██博士
実験記録894-JP-14 - 20██/██/██
対象: D-894-10。事前の聞き取り調査では「公務員になりたかった」と回答。
実施方法: 対象に簡単な図形やイラストをSCP-894-JPへ描画させる。
結果: 対象はSCP-894-JPの表紙を視認してから数秒後に落涙し始め、そのままSCP-894-JPを開き男性キャラクターのイラストを描画した。対象はイラストの描画を終えた後、放心した様子で椅子に座ったままの状態となり、実験スタッフの呼びかけにも応じなかった。その後実験の終了が宣言され、対象は警備スタッフにより実験チャンバーから退出された。なお、実験後の対象はイラストの描画能力を完全に喪失していた。
考察: 図形やイラストでもSCP-894-JPの異常性は発現することが確認されました。また、対象からイラストの描画能力が喪失した原因、そして対象が何故このような行動に至ったのかについての調査を行う必要があるでしょう。 - ██博士
インタビュー記録894-JP-2 - 20██/██/██
対象: D-894-10
インタビュアー: ██博士
<記録開始>
██博士: D-894-10。なぜあなたは実験中に我々の指示を無視してあのような行動を取ったのですか?
D-894-10: 許せなかったんですよ、あのノートが。俺、アンケートだと公務員になりたかったって答えたでしょう? でも、本当は漫画家になりたかったんです。
██博士: 虚偽の回答をしていたと?
D-894-10: 嘘をついていたというか、昔の話だからそう書かなかったってだけで。漫画家については、もう終わったことだと思いたかったので。
██博士: 終わったこと、ですか。
D-894-10: ええ。子供の頃から漫画が大好きで、高校を卒業した後はバイトをしつつ漫画を描いてたんですけど、賞にいくら応募しても、尽く鳴かず飛ばずで。当時は俺より下だと思っていた昔の友人が、俺より先に少年誌で売れてるのを知った時は、俺は今まで何をやってきたんだと思ったこともあったんです。あれだけ好きだった漫画が段々楽しめなくなってきて、他人の技術やセンスを吸収するより先に粗探しをするようになりました。
██博士: それで?
D-894-10: 歳を取って後が無くなったって時に、ようやく自分でも納得いく作品が描けたと思って、意気揚々と出版社に持って行ったんです。まあ、結局駄目だったんですけど。それで、出版社からの帰り道、赤信号だったことに気付かないくらいショックだったんでしょうね。車に撥ねられて、腕に障害が残ったんですよ。その頃にはもう何も思い浮かばなくなって、書店で漫画が並んでいるのを見るだけで悲しくなってきてしまいました。
██博士: それがどう実験中の行動に繋がるのですか? なぜあのような行動を取ったのかを教えてください。
D-894-10: すみません。まあ、実を言うと、こんな中途半端になるくらいだったら、いっそ全部捨ててしまいたいと思ったことは何度もあるんですよ。それでも結局、俺は諦められなかったんです。他に取り柄も無かったですし、あれは俺の全てだと思っていましたから。それなのに、あの時部屋に入って、あのノートの表紙を見たら、「あなたの夢はなんでしたか?」って。俺は自分の人生を、自分の何もかもを馬鹿にされたような気がして、死ぬほど悔しくて、俺の全てをぶつけるつもりで、あのノートに絵を描いてやったんですよ。
██博士: それが「簡単なイラスト」という指示を無視した理由ですか。
D-894-10: はい。あの時はそれどころではなかったので。それで、作品を描き終えたところ -
██博士: どうなりました?
D-894-10: 急に何もかもがどうでもよくなってしまいました。完成した作品の出来はゴミみたいなもんでしたが、後悔はしてません。
██博士: なるほど。ところで、実験の後、あなたはイラストの描画能力を完全に喪失しましたね。それについてどう思いますか?
D-894-10: さっきも言った通り後悔していませんし、それで良かったんだと思います。俺は逃げました。俺にはできませんでした。俺は自分の全てを自分で投げ出してしまった。あの絵を描き終えた瞬間、俺の人生は何もかも無駄になってしまったんです。というか最初からそうだったのかもしれません。でも、幾分か気が楽になったのは本当なんですよ。ただ -
██博士: ただ?
D-894-10: 気が楽になったのは確かなんですが、抜け殻になってしまったというか、重荷を降ろしたらそのまま何処かへ飛んで行きそうなくらい身体が軽くなったというか。生きているのがこんなに空しいものなのかと、生まれて初めてそう思いました。
<記録終了>
終了報告書: インタビュー後に行われたD-894-10に対する更なる調査の結果、D-894-10は漫画やイラストを始めとした創作活動に関する専門的な技術・技能・知識、そしてそれらの習得に対する意欲及び漫画家自体への関心を喪失していることが判明しました。
[要レベル4/894-JPクリアランス]
[閲覧を終了]
上記の報告書はレベル4/894-JPクリアランスを持たない職員向けに一部の情報が隠蔽されています。レベル4/894-JP職員に開示される報告書は以下の通りです。可読性のため、非レベル4/894-JP職員向け報告書と全て重複する項目は省略されており、一部重複する項目の相違点及び非レベル4/894-JP職員向け報告書に存在しない項目は青でハイライトされています。
アイテム番号: SCP-894-JP
オブジェクトクラス: Safe Thaumiel
特別収容プロトコル: SCP-894-JPはサイト-8181の専用保管ロッカーに筆記具と共に収容されます。SCP-894-JPの収容違反を防止する目的から、SCP-894-JPの付近には常にペンや鉛筆といった筆記具が配置されなければなりません。
SCP-894-JPを用いた実験にはレベル3以上の職員2名による承認が必要であり、Dクラス以外の職員がSCP-894-JPに筆記または描画を行う場合はレベル4以上の職員3名以上による承認が必要です。
ドリーマー・プロトコル: 1ヶ月に1度、財団が実施する標準忠誠心テスト内に追加された当プロトコル用の設問により絞り込まれた職員の過去の経歴を調査し、また、経歴の調査が実施できない職員に対しては尋問を行い、ドリーマー・プロトコル候補者を選定します。候補者には実験と称しSCP-894-JPへ筆記または描画を行わせた後に検査を行い、その中から技術・技能・知識・意欲・関心の喪失が確認されなかった対象をドリーマー・プロトコル対象者と指定し、クラスA記憶処理を施した上で通常の業務に復帰させます。喪失が確認された対象は業務に支障が無ければクラスA記憶処理の後に復帰させ、支障が有れば再配置または解雇が実施されます。また、当プロトコル対象者には、必要に応じてクラスCまでの記憶処理を含めたメンタルケアプログラムが実施されます。
説明: SCP-894-JPは、表紙に「あなたの夢は何でしたか?」と一般的な油性染料インクを用いた乱雑な文字で書かれている、███社から発売されているものと同一の外見のB5サイズの大学ノートです。外見以外の素材やページ数といった点に異常は確認されませんでした。
SCP-894-JPに行われた筆記または描画は、その終了と同時に即座に消失します。その後、SCP-894-JPに筆記または描画を行った人物(以下、対象と表記)は、特定の職業に関する専門的な技術・技能や知識、そしてそれらの習得に対する意欲及びその職業自体への関心を喪失します。これまでの実験結果から、対象から技術・技能・知識・意欲・関心が喪失する職業について、対象が過去に最も就業を希望していたものであると推測されています。なお、就業を希望していた職業に既に就いている対象がSCP-894-JPに筆記または描画を行った際、その職務を遂行する上で必要となる対象の能力が大幅に向上することが明らかになっています。
補遺: 実験894-JP-12から7年後、実験894-JP-12の被験者であった新木研究助手が、雇用から僅か9年という異例の早さで上席研究員に就任しました。これを受け、新木上席研究員に対して調査を実施したところ、実験当時と比較して生産性・問題解決能力・記憶力・注意力・判断力等の能力に大幅な向上が確認されました。加えて、新木上席研究員の周囲の人物へのインタビューでは、実験が行われた20██/██/██の後から突如として能力の飛躍的な改善が見られたとの複数の職員からの証言が得られたため、新木上席研究員の能力の向上はSCP-894-JPに起因するものであると推定されています。
インタビュー記録894-JP-12 - 20██/██/██
対象: 新木上席研究員
インタビュアー: ██博士
<記録開始>
██博士: 7年前のSCP-894-JPの実験の後、何か際立った変化はありましたか?
新木上席研究員: はい、実験後、検査の為に隔離室に居た間は特に無かったのですが、その後通常の職務に復帰した際に少しずつ変わった事が起きるようになりました。
██博士: と言うと?
新木上席研究員: まず、ミスを犯す頻度が徐々に少なくなっていきました。以前と比べて目に見えてミスが減ったと周囲から言われたりしましたし、実際、実験の後は些細なものから重大なものまで、失敗を犯すことは殆どなくなりました。
██博士: 他には何か?
新木上席研究員: 日常の業務、と言ってもAnomalousアイテムの調査・管理や助手としての雑用等ですが、そういったものの効率や生産性が上がっていっているとの評価を度々受けるようになりました。他に大きな出来事としては、サイト-81██で発生した収容違反の際に私だけが生存したことがありました。その後、当時観察したSCP-███-JPの特徴を基にした収容方法を後任のサイト管理官に伝えたところ、そのオブジェクトの更に確実な収容に繋がった、らしいんです。
██博士: らしい、とはどういうことですか?
新木上席研究員: それが、周囲の人は皆そう言っているんですが、私自身にはまるで実感が無いんです。私がそういった行動をしていたという記憶はあるんですが、それを本当に私が行っていたという確証が持てないんですよ。そもそも一介の研究助手の意見が採用されたという時点で、普通はあり得ない話だと思うんですが。
██博士: なるほど。その後はどうなりました?
新木上席研究員: その功績と今までの働きが評価されたということで、研究助手から一般研究員に昇格しました。その内重要な仕事も任されるようになってきて、オブジェクトの新たな性質を発見したり、実験中の事故を防いだり、私が考案した特別収容プロトコルでオブジェクトがSafeに再分類されることが何件も相次いだりしたこともありました。とにかく、今までと比べたら嘘みたいに功績を上げ始めたんですよ。でも、その何もかもが自分の物だと言い切れないんです。まるでテキストの答えだけを丸写しさせられているような、予め用意された手柄を手渡されているような、そんな感覚が何をする時にもずっと付き纏っていて。
██博士: そうですか。あなたの周囲の人物からは、あなたの言動について特に不審な点は無かったとのことですが、その事は誰にも伝えていなかったのですか?
新木上席研究員: はい、最初は成果を上げる事自体については良いことだと思うようにしていましたので。カウンセリングでも自分の成長に自信がついていけてないだけと言われましたし。でも、次第にこれは本当に自分の力なのか、本当に自分の人生なのかと怖くなって、このまま続けていても大丈夫なのか不安になってきたんです。
██博士: つまり?
新木上席研究員: 功績を上げるにつれ、徐々に負う責任も担う命も知るべき事実も増えてきました。自分が死んだりするだけならまだいいんです。でも、一歩間違えれば世界が終わりかねない綱渡りのような毎日を送っているということを、昔と比べてひしひしと実感するようになってきたんですよ。そして、やる事為す事が自分の物かも分からないままそんな日々を過ごせるだけの度胸は、私にはありませんでした。
██博士: しかし、今もこうして続けているではありませんか。
新木上席研究員: いえ、辞めようとしたことはあるんです。これ以上は身の丈に合わないと思いましたから。それで辞表を提出しようと思ったんですが、いつの間にか紛失していたり、なぜか受理されていなかったりで。それが9回も続いたんですよ。もう死んでしまおうと思ったこともありましたが、違う薬を飲んでいたり、拳銃が故障していたり弾が無かったり、近くの人に止められたりと尽く失敗したんです。
██博士: それで、成功を重ねていくうちに昇進していったと?
新木上席研究員: ええ、そうして私が何もできないまま、誰の物かも分からない成果だけが積み上がり、上席研究員にまでなってしまいました。財団で立場が上がっていくにつれ、他の同僚からは段々と人間味が薄れていく実感がありましたが、私はそうはなれなかった。私は、実験の前から何も変わっていないんです。それでも、私がそんな冷徹な事をするとは思えないような、正しいとされる判断を気がつくと下してしまっていて。実感は無いにせよ、自分がやったという記憶だけはこびり付いたままなんですよ。なのに、その成功に周囲の期待だけは膨れ上がり、いつ失敗するかも分からない。こんなことなら研究助手として働いていた方が余程良かった。
██博士: なるほど。最後に、あなたが過去に最も希望していた職業は研究者だったとのことですが、それに間違いはありませんね?
新木上席研究員: はい、財団に入る前の私は研究者に憧れていて、自分の研究で人々を救うなどという夢を見ていました。その夢を叶えるために必死に努力して、研究者になって、それで世界最高峰の研究機関とも言える財団で働けるなんて、夢にも思っていませんでした。でも、私には最初から向いてなかったんでしょうね。
██博士: そうですか。では、本日のインタビューはここで終了とします。
新木上席研究員: あ、あの、その前に一ついいですか?
██博士: 何でしょう?
新木上席研究員: 私は仮にもオブジェクトの影響を受けた身ですし、その、収容されたりとかはしないんでしょうか?
██博士: さあ、私には何とも。
新木上席研究員: そうですか、そうですよね。私が昔抱いていた夢と、その為に費やしてきた人生は、一体何だったんでしょうか。私の夢は、いつ終わるんでしょうか。
<記録終了>
SCP-894-JP担当研究員の一部から、SCP-894-JPを用いて財団職員の能力を向上させる試みが提案されました。この提案は、SCP-894-JPに未知の異常性が存在する・異常性自体を誤認している可能性がある、D-894-10の事例のように却って職員の能力の損失を招く惧れがあるという懸念点を有しているものの、対象職員の過去の経歴への入念な調査及び尋問によって能力の損失のリスクを低減させることが可能であり、そしてそれらの危険性よりも職員の能力の向上による財団へのメリットの方が大きいと判断されました。提案は承認され、現在はドリーマー・プロトコルとして定期的に実施されています。また、SCP-894-JPの特異性による財団職員の能力の向上が間接的に異常存在の収容に寄与するものとされ、SCP-894-JPのオブジェクトクラスはSafeからThaumielへ再分類されました。なお、SCP-894-JPの影響を受けたものと推定されている新木上席研究員については、記憶処理を含めたメンタルケアプログラムが実施されており、その能力の有用性から、当面の間は収容または解雇される予定はありません。
脚注
1. 先述した表紙の文章がこの影響を受けない理由は不明です。
2. SCP-894-JPの異常性による人材の損失が懸念されたため、協議の結果、被害を最小限に抑えるべく、実験を行うサイト-8181の中で当時最も能力の低い職員が選抜された。
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scp-895-jp |
評価: +61+–x
非活性状態のSCP-895-JP。視認可能な動物は確認できない。
アイテム番号: SCP-895-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-895-JPはサイト-81██に用意された専用の低危険物収容ロッカーの内部に保管し、SCP-895-JPを中心とした半径3m以内の範囲には侵入しないでください。実験を行うにあたって、SCP-895-JPを移動させる場合は無人機を使用してください。
説明: SCP-895-JPは、直径15cm、深さ4.5cmの碗に盛られたゼニゴケ(Marchantia polymorpha)の雌株の盆栽です。SCP-895-JPは基本的に水分の補給を必要としていませんが、DNA構造などは通常のゼニゴケと相違ないことが判明しています。
SCP-895-JPは通常非活性状態にありますが、人間がSCP-895-JPを中心とした半径3m以内の範囲に侵入した場合、SCP-895-JPは活性化状態に移行します。SCP-895-JPが活性化した際に範囲内に存在していた人間(以降被験者と表記)は生命活動および反射以外の一切の活動を停止します。これまでの実験では最大██人の被験者が活動を停止させており、この効果を受ける人間の上限数は現時点では不明となっています。この状態は平均して6時間24分の間継続し、その後SCP-895-JPは不活性化し被験者は解放されます。また、無人機によって動かない被験者を範囲外へ連れ出した場合には被験者は硬直からは解放されませんでした。
SCP-895-JPの活性化状態の最中、被験者の視点はSCP-895-JPの中心地点から外側を向くように瞬時に移動します。この時被験者は自分の意思で視界を動かすことができず、「小型の別の生命体に自分の視点が移動した」と認識します。被験者の証言よりこの生命体は視認可能な程度の大きさであると推測されますが、非活性状態にあるSCP-895-JPにはゼニゴケおよび細菌類以外の生命体の存在は確認されておらず、活性化状態のSCP-895-JPを遠隔地から確認した場合でもそれらしき生命体は確認できませんでした。
視点の移動から20秒後、被験者の視界は被験者の方向を向きます。その後、視界は被験者に向かって直線距離の移動を開始します。被験者の証言より再現された被験者の視界が辿るルートは全ての場合において、アクリル板などの障害物は透過するものの重力の影響は受けていると推測されるものとなっていました。
その後被験者の視界は被験者の下まで辿り着くと、人体を這い上がるようにして上昇し該当する人物の口または鼻腔から体内へと侵入します。この際、光源が存在しないにもかかわらず被験者は自身の体内の様子を視認することが可能ですが、その仕組みは明らかとなっていません。その後消化器系の内部をおよそ5時間で巡り、肛門から排出されるとSCP-895-JPの活性化は終了し、被験者の視界は元に戻ります。
SCP-895-JPは、2016/██/██に京都府██市で行われた蚤の市において、「ある店の前で人間が比喩でなく止まっている」との通報が警察になされたことにより財団に関知されました。潜入していたエージェントが現場に到着したところ、██名の民間人がSCP-895-JPの影響を受けており、店主にあたる人物は不在となっていました。その場にいた蚤の市の参加者、当日蚤の市に足を運んでいたと思われる人物にはクラスA記憶処理、影響を受けた██名にはクラスB記憶処理を施しました。なお、同店から回収されたSCP-895-JP以外の商品からは異常性が検出されませんでした。
補遺: 2017/01/31に行われた実験において、被験者となったD-895-18が2時間23分という異例の速さでSCP-895-JPの異常性から解放されました。以下のインタビュー記録はその際に行われたものです。
インタビュー記録895-██
対象: D-895-18
インタビュアー: 嬉野博士
<録音開始>
嬉野博士: お疲れ様です、D-895-18。
D-895-18: ああ。……なんとなく分かってるよ先生。俺が何を見たかが聞きたいんだろう?
嬉野博士: はい、その通りです。今回の結果はSCP-895-JPを研究する上で非常に有意なものとなり得ます。詳細に教えていただけますか?
D-895-18: そうだな。俺があのよくわからん盆栽に近付くと、体が動かなくなって、視界が盆栽の中に飛んだ。視界も自分で動かせない、というか途中から勝手に動き出したから、俺は俺の目を奪われたような感じがした。ここまでは大丈夫か?
嬉野博士: はい。これまでの実験の被験者の証言と一致しています。
D-895-18: そうか。その後俺の目を奪ったクソな何かは、俺を見つけるとまっすぐににじり寄ってきた。俺が巨人みたいに見えたから、奴はかなり小さいんだろうな。で、俺の体を這い上がってきて、空いてた口から入り込んできた。その後に喉の奥に入ってきたんだが、不思議と吐きそうにはならなかった。……ここまでは?
嬉野博士: 通常の進行です。
D-895-18: そうか、ならここからなんだろうな。……奴は喉からまっすぐ食道を通って、胃についた。そこで俺は見たんだ。俺の胃から血が出てた。穴みたいなのが空いてた。口内炎みたいな白いのも見えた。……俺はこの間から腹が痛かったんだ。あんたらの仲間から痛み止めももらってる。記録はどうせ残ってるだろ?
嬉野博士: (D-895-18に関する記録を確認する)……確かに痛み止めが供給されていますね。しかし話を聞く限り、あなたは恐らくは胃潰瘍だったと思われます。痛みは酷かったはずですが、なぜ検査を受けなかったのですか。
D-895-18: 別に。あのくらいの痛みならこっちに来る前にも何度かあったからな。単なる腹痛だと思ってたのさ。それにほら、そろそろ定期の検査だろ?何かありゃその時に分かると思ったんだ。
嬉野博士: そうですか。……それではその後は何が起こったのですか?
D-895-18: よくは分からねえ。俺の目を奪った奴がそれに近付いていったと思ったら、なんだろうな、メリメリと埋まっていった……んだと思う。胃に空いた穴を埋める感じだ、そんなに大きくないはずなのに。しかも顔から。……それで、気が付いたら普通な感じで目が見えるようになって、体も動かせるようになったんだ。それで今に至る。……そうだ先生、検査を受けさせてくれよ。すげえ気持ち悪い。腹が、痛くないんだ。
<録音終了>
終了報告書: インタビュー終了後、D-895-18に対し胃カメラを使用した検査を行ったところ、D-895-18の証言した胃潰瘍は発見されませんでした。しかしその後に行われた血液検査において、D-895-18の血液の内部にゼニゴケの雄株らしき構造物が混入していることが明らかになりました。現在、D-895-18をSCP-895-JP-1として分類するか、D-895-18を用いた実験を再度行うかを協議中です。
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scp-896-jp |
評価: +41+–x
SCP-896-JPを使用したDクラス。別任務で負った傷、眼球の損傷が完治している。
アイテム番号: SCP-896-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在、SCP-896-JPはサイト-8181の低危険物収容ロッカーに収容済みです。実験を希望する職員は、レベル3以上の職員の監督の元、2週間前までにウェブサイトから希望書をダウンロードして必要事項を記入し、提出してください。
新たなSCP-896-JPが発見された場合、所持者の身辺、特に男性の存在を調査してください。発見された男性は全員回収し、SCP-896-JPの影響を受けていないかを確認したのち、クラスB記憶処理を行ってから解放してください。影響を受けている男性については追加で整形手術を行い、可能な限りもとの顔に近づけてください。
説明: SCP-896-JPは、金属光沢を放つピンク色のビニールで包装された、一般的なサイズのメンソール配合のデオドラントシートです。財団はこれまでに7点の同様の製品を回収し、それぞれSCP-896-JP-1からSCP-896-JP-7に分類されていますが、そのいずれにも外面に商品名・製造会社・効能についての記載は存在せず、裏面に小さく
水分たっぷり!厚手の大型シート!一枚で、気持ちよく全身サッパリンコ!!→カラダ瞬間スッキリンコ!! 60+4枚入り(566ml)
との記載があるのみです。また、SCP-896-JP-1の裏面の包装には記名欄と見られる空白が存在していますが、検査の結果除光液などを用いて名前を拭き取った形跡があります。記名されていた名前の特定には現在成功していません。
SCP-896-JPの異常性は、男性がSCP-896-JPを使用して体を拭いた際に現れます。
使用枚数が1〜3枚の段階においては、使用者はSCP-896-JPを“きわめて良い”と評し、以降もSCP-896-JPを使用し続けることに肯定的な反応を示します。この性質から、SCP-896-JPになんらかの強制力が存在するのではないかと██博士によって提言されましたが、検査の結果内部の液体成分に異常性は認められず、現在、この性質はSCP-896-JPの単純な商品としての高い品質によるものであると結論づけられています。
SCP-896-JPの使用枚数が10枚を超えると、使用者の肉体・精神に影響が現れます。使用者の肉体のうち、SCP-896-JPで拭いた部分が、徐々に特定の身体的特徴を示す肉体へと変化して行きます。この段階まで進んだ使用者のほとんどはSCP-896-JPを用いて全身を拭くことに抵抗を示さないため、結果的に効果は全身に及びます。
個人差はありますが、使用枚数が20枚に達するころには、使用者の肉体、容姿はほぼ別人のものに変化します。使用者はこの変化について疑問を示さず、指摘されても自己の変化について認識出来ないようです。
SCP-896-JP-1からSCP-896-JP-7は、それぞれ別の特徴を持つ肉体への変化を引き起こします。
以下にその実験結果を記します。
+ 実験記録を表示
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実験記録001 - 日付2013/07/29
対象: 男性のDクラスD-896-JP-1。身長172cm,体重65kg。
実施方法: サイト-8181の屋外実験室にて、対象にSCP-896-JP-1を使用して汗を拭き取らせる。
結果: 使用枚数が16枚に達した時点で、対象の肉体の変化が完了し、身長180cm、体重74kgのよく日焼けした筋肉質な肉体に変化。目の色は青。
実験記録002 - 日付2013/07/29
対象: D-896-JP-1。
実施方法: サイト-8181の屋外実験室にて、対象にSCP-896-JP-2を使用して汗を拭き取らせる。
結果: 使用枚数が15枚に達した時点で、身長190cm、体重75kgの40代に見える男性に変化。また対象の容姿は日本の有名俳優███氏に酷似している。また変化したDクラスにSCP-896-JP-1を使用させたところ、対象は再び実験記録001で変化した肉体に戻った。
分析:使用するSCP-896-JPによって変化する肉体は異なるようだ。__鳥山研究員
実験記録003 - 日付2014/02/13
対象: 男性のDクラスD-896-JP-2。身長169cm、体重64kg。
実施方法: サイト-8181の暖房付き実験室にて、対象にSCP-896-JP-3を用いて汗を拭き取らせる。
結果: 使用枚数が12枚に達した時点で、身長165cm,体重43kgの金髪の西洋人的な特徴を示す肉体に変化。
分析: 変化量が少ないとすぐに終わる。変化した肉体は一体どこに質量を飛ばしているのか?__鳥山研究員
実験記録004 - 日付2014/04/06
対象:男性のDクラス D-896-JP-3。身長170cm、体重92kg。
実施方法: サイト-8181の暖房付き実験室にて、対象にSCP-896-JP-4を使用して汗を拭き取らせる。
結果: 使用枚数が21枚に達した時点で、身長120cm、体重25kgに対象の肉体が変化。特筆すべき点として、対象に大幅な精神退行が見られた。
分析:変化の対象には恐らく制限はないと仮定できる。また、体重を大幅に減らすためにより多くのSCP-896-JPを必要としたことからも、実験003の仮説は逆説的にではあるが証明されたと言えるだろう。__鳥山研究員
実験記録005 - 日付2014/04/11
対象: 先の実験で変化したD-896-JP-3。
実施方法: サイト-8181の屋外実験室にて、対象にSCP-896-JP-5を使用して汗を拭き取らせる。
結果: 使用枚数が8枚を超えた時点で、対象の肉体が変化。身長103cm、体重17kg。実験004よりもさらに著しい精神退行が見られた。
分析:恐らく、対象の性癖に合わせて、SCP-896-JPは効果が違うものを提供されている。実験004の仮定はほぼ正しいと見てよいだろう。__鳥山研究員
実験記録006 - 日付2014/06/30
対象: 男性のDクラスD-896-JP-4。身長180cm、体重80kg。
実施方法: サイト-8181の屋外実験室にて、対象にSCP-896-JP-6を使用して汗を拭き取らせる。
結果: 使用枚数が19枚に達した時点で、対象の肉体が変化。身長180cm、体重71kg。また対象は日本のアイドルグループに属する████氏に酷似した容姿に変化した。
実験記録007 - 日付2014/07/02
対象: D-896-JP-4。
実施方法: サイト-8181の屋外実験室にて、対象にSCP-896-JP-7を使用して汗を拭き取らせる。
結果: 使用枚数が12枚を超えたあたりから、SCP-896-JP-7によって拭き取られた部分の肉体が変色を開始。15枚目を使用した段階でDクラスの四肢が腐り落ちたため、実験を中止。
分析:DクラスはSCP-896-JP-6を再度使用して回復させたが、これは……相当な悪趣味だ。__鳥山研究員
補遺-ア: SCP-896-JPは、██県における“突如として家財道具を全て残して失踪した女性達”のニュースをキャッチした財団によって最初に収容されました。同県では同時期に失踪した女性が複数名確認されており、そのうち2人の自宅からは現在SCP-896-JP-1,SCP-896-JP-2に指定されるオブジェクトが最終的に回収されました。報道されていた失踪者は5名にのぼりましたが、うち3人の自宅からは何も発見されませんでした。
SCP-896-JP-2が変化させる姿が日本で有名な俳優の███氏であったことから、失踪した女性の周囲では彼女について大きな話題となっていました。エージェント・██は周囲への聞き込みの結果、SCP-896-JPの異常性を推定し、回収に至りました。女性の部屋の周辺で発見された交際相手と見られる男性は財団による記憶処理と整形手術ののち解放されました。
補遺-イ:SCP-896-JP-2の発見された女性の部屋から、一通の書きかけの手紙が発見されました。
ミヨコさんへ
もらったクリームはとてもよく顔になじみます。先週、カレにボディーペーパーの効果が出てきたのですが、なんだか思っていたのとちょっとちがっててあきちゃいました。次は細めで、守ってあげたくなるようなカワイくて小さい男の子(金髪のイギリス人♥︎サルエルが似合う感じで!)が欲しいので、調合をかえたやつをもうひとつ、注文お願いします。あとクリームももうなくなりかけなので追加でおねがいします。お金はふりこんでおきます。
補遺-ア、補遺-イの内容、また“クリームが顔に馴染む”という記述から、鳥山研究員によってSCP-187-JPとの関連性が指摘されました。文中の“ミヨコ”という女性について、現在財団は捜査を続けています。_源口博士
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scp-897-jp |
評価: +58+–x
評価: +58+–x
クレジット
タイトル: SCP-897-JP - インク漬けの脳味噌
著者: ©︎kyougoku08
作成年: 2016
評価: +58+–x
評価: +58+–x
アイテム番号: SCP-897-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-897-JPは専用の収容庫において施錠した収容装置内に1000枚以上のレポート用紙と共に収容してください。レポート用紙の残数が不足した場合は非活性状態であることを確認したうえで、創作経験のないDクラス職員によって補充を行ってください。SCP-897-JP研究に携わる職員は過去に何らかの創作活動を行った経験が無い職員に限定してください。上記の条件を満たさない職員はSCP-897-JPの周囲100m以内への侵入を禁止します。
説明: SCP-897-JPはSCP-897-JP-1、SCP-897-JP-2からなるオブジェクトです。
SCP-897-JP-1は、黒檀の軸と金のペン先からなる万年筆です。同様のデザインのものは現在まで発見されておらず、オーダーメイド、あるいは個人の作であると考えられていますが製造元は発見されていません。SCP-897-JP-1へはSCP-897-JP-2を通してのみインクの充填が可能です。
SCP-897-JP-2は万年筆用インクが注入されている一辺30cmの立方体であり、内部には人間の脳が沈殿しています。この脳の起源はSCP-897-JPが破壊不可能であるという特性から現在時点で特定に至っていません、また、電気信号等にも反応を示さないため、現在時点での交信は下記の方法以外不可能です。SCP-897-JP-2上部には、SCP-897-JP-1へインクを充填するための装置が設置されています。SCP-897-JP-2は本体、装置共にガラスに似た性質を持つ未知の素材で構成されており、また、本体、装置共に現在時点で破損、破壊は不可能であることが判明しています。
SCP-897-JPはSCP-897-JP-1に対しSCP-897-JP-2内のインクを充填した場合に活性化します。活性時、SCP-897-JP-1は周囲の筆記可能な物体に対して自律的に筆記を開始します。SCP-897-JP-1は活性時に筆記可能な物体が周囲に存在しない場合は破壊行動を含んだ捜索を行います。この捜索範囲は1km以上に及び、SCP-897-JP-1の移動と共にSCP-897-JP-2も移動することが確認されています。この移動はわずかに浮遊することによって行われることが判明していますが、原理は解明されていません。
SCP-897-JP-1は内部に存在するインクが無くなると非活性状態に移行します。非活性状態でSCP-897-JP-1へ24時間以上インクが供給されない場合、SCP-897-JP-1は自律的にSCP-897-JP-2の装置に接続し、SCP-897-JP-2内部のインクを補充することで活性状態に移行します。
筆記内容は文章に限定されていることが確認されており、挿絵等は現在時点で確認されていません。SCP-897-JPが記述する文章は、様々なジャンルの物語に限定されており、現在時点で論説文、随筆、マニュアル等の文章は記述されておらず、各物語に共通性は見られません。これらの筆記行為を阻害した場合、SCP-897-JP-1は殴打、刺突などの方法をもって阻害対象に対する攻撃を行います。この攻撃は阻害行動を終了した場合でも停止せず、対象の死亡、あるいはSCP-897-JPの周囲100m外に脱出するまで継続されます。攻撃時、SCP-897-JP-1の破損は確認されていません。
SCP-897-JP-1が筆記している物体に文章を書きこむことでSCP-897-JPとの会話が限定的に可能です。ただし、SCP-897-JPからの文章は多くが会話文を書いた対象に攻撃的な文章です。
SCP-897-JP会話記録(抜粋)
インタビュアー:護良研究員
«記録開始»
護良研究員: 貴方は誰ですか?
SCP-897-JP: 「つまり、お前は神という…、誰だよ、邪魔すんな
護良研究員: もう一度質問をします、貴方は誰ですか?
SCP-897-JP: センスのない文体だな、筆を折っちまえ、俺の仕事を邪魔すんなよ
護良研究員: 貴方は
SCP-897-JP: 黙れよ、俺たちの世界が腐るだろ、もっと勉強してから来やがれ
護良研究員: どうすれば会話が可能でしょうか
SCP-897-JP: もっと本読め、そして書け、ラノベでも何でもいい。ダーガー並みになったら考えてやるよ
«記録終了»
この会話を最後にSCP-897-JPが威嚇動作を行い、一切の会話を停止したため実験は終了しました。
事件記録897-JP-4
20██/██/██、SCP-897-JPに対する研究プロジェクトに参加していた█研究員に対し、非活性状態にあったSCP-897-JPが活性化状態に移行、刺突、殴打を行い、█研究員を殺害しました。これ以前の実験において█研究員は関与しておらず、この事件時が初めての実験参加でした。以下は事件後、SCP-897-JPに対し行われたインタビュー記録です。
SCP-897-JP会話記録-4
インタビュアー:護良研究員
«記録開始»
護良研究員: 何故貴方は█研究員を殺害したのですか?
SCP-897-JP: …おいおい、この国は確か死刑を認めてたよな? だったら分かるだろ、アイツは悍ましいほどの人間を殺してんだよ
護良研究員: 回答の意図が理解できません
SCP-897-JP: 脳味噌に蛆でも湧いてんのか? だから言ってんだろ。アイツは人殺しだ。俺は復讐者だ、正確には復讐の代行者だ
護良研究員: すいません、具体的な回答をお願いします
SCP-897-JP: ああ、やだやだ、これだから。だから言ってんだろ? 俺はアイツに無かったことにされた、生まれることすら許されなかった奴らの代弁者、いや、墓守だ。気障だと思うか? 好きにしろよ
護良研究員: …
SCP-897-JP: アイツは殺した、自分が作った英雄、人間、怪物を。アイツが書き綴ったはずのそいつらを
護良研究員: それはつまり、█研究員の創作活動に関連していると考えていいのですね?
SCP-897-JP: 創作? 笑わせんな、アイツが殺した奴らが、アイツが壊した世界が、創作だってのか? 書き綴り、誰かがそれを見て何かを思う、それが創作じゃねえのか? 殺され、潰された幾千万の残骸の上に少しでも何かを残す、そんなこともせずに、ただ漫然と破壊と創造を繰り返す。くそったれた超越者気取りの作家もどきなんざ、殺されて当然だろうが!
護良研究員: …では、貴方は何故、誰のためにその創作を
SCP-897-JP: 書けよ、綴れよ、例え幾千万を殺したとしても、その屍の上に誰かを立たせてやれよ。それさえすれば、俺はただの墓守でいれるんだ。光をくれよ、光をやれよ
«記録終了»
このインタビューと、█研究員には創作経験があったことをを受け、SCP-897-JPは創作経験のある人物に対し何らかの基準をもって攻撃するという特性が存在することが判明し、特別収容プロトコルが改訂されました。
補遺: 20██/██/██、SCP-897-JPは以下の文章を記述しました。この文章はこれ以前のSCP-897-JP-1が記述した文章とは独立したものであることが確認されています。また、この文章はSCP-897-JPが行った推敲の痕跡をSCP-897-JPの起源調査の一環として保持しています。
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SCP-897-JP関連文書
私俺はインク漬けの脳だ
「私」 やはり「俺」
水槽の中の脳は自分の世界が誰かに作られた世界だと理解できていないだろう
自らが誰かの創作だともわからず生き続ける、ああ、それはそれで幸せな人生だろうさ
だから俺は望んでこのインク瓶に飛び込んだ。俺たちの創作の世界に、俺たちの物語の世界に
俺の脳味噌はインク漬けだ、血も、リンパも、汗も、涙も、感情も何もかもがインクの中にある
このインクの中で、俺だけが逃れた俺たちの世界の中で、俺は生き続ける
俺は俺たちの創作として生き続け、俺たちの物語として死んでいく
最期の一瞬まで俺たちの世界を、死に逝ったアイツらの名を記して刻んで遺してやる
だからこそだ、この創作を、物語を、世界を、いや、気づかない他の奴らを俺は見守ろう
逃げることもできず、ただ平気な顔をしていつか消える事にも気づいていないお前たちごときにやらせるか
たとえお前たちの世界が気まぐれで消されようと俺たちの世界は残るだろうさ
冗長
何千何万の死を見てきた、何億という世界の崩壊を見てきた
そこには必ず光があった。幾多の残骸廃墟屍の中から光は生まれた
その光が生まれない世界を俺は憎む。お前たちが忘れようと俺は忘れない
覚えているのは俺だけだ、気づいているのは俺だけだ。だから俺は代行者になった、墓守墓守になった
代行者、墓守は気障か? 表現考える
代行者は削除、墓守のまま
俺はペンで世界を捉える、人は物語で意味を知る、光は創作と共にある
それすらも理解できないで剣を振り回す糞野郎は、俺のペンで殴り殺してやる
刺し殺す? 突き殺す? 殴り殺す?
殴り殺すに決定
お前たちは剣を奮っていると考えている、盾を持っていると考えている。笑わせるよな?
俺たちの世界を邪魔するな、作ったくせに、ただ壊しそのまま放置するな
語りすぎだ、クソッタレ。ネタバレして嬉しいか?
正直なところ、俺はお前たちなど気にも留めたくもない。ただ、俺たちの世界を止めようとするな
お前たちもどうせ水槽の中の脳なんだ。そのまま無意味な虚構の中で、水槽の中で溺れていやがれ
そうさ、どうせお前たちの世界もインクの染み、数バイトのデータなんだ
俺はインク漬けの脳だ、俺たちの世界を俺は見守り続ける。墓碑銘を書き続ける。
…読んでるか?
ペンを持つお仲間、キーボードを打つくそったれの神気取りが
なあ、ここまで言えばわかるだろ? ここまで書けば分かってんだろ?
お前に書いてんだよ
世界を、与えてやれよ
光を
ゲーテの受け売りかよ いや、一番ふさわしい。決定稿
清書しといてくれ、お前の物語だ、俺の遺書だ、アウター共1
ああ、語りてえ、綴りてえ、気づくのが遅すぎた、これほど俺の話を書きたいのに
これは残してくれ。俺には何一つ作れなかったから。俺もクソッタレの人殺しだ
この文章を受け、SCP-897-JPの起源に対する調査が検討されています。
この文章を筆記したのち、SCP-897-JPはいかなる会話も行わず、問いかけにも反応していません。また、SCP-897-JP-2内のインクは現在時点で総量の二分の一ほどに減少しており、現在のペースで活性化した場合、2███/██/██に消費しきると推測されています。
脚注
1. これ以降の部分は強調するように書かれていました
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scp-898-jp |
評価: +117+–x
アイテム番号: SCP-898-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-898-JPは、サイト-81██の大型動物飼育室に収容されます。飼育室の半径2km以内への女性職員の立ち入り男性職員の立ち入り並びに哺乳類に分類される動物のメスの持ち込みは、実験時を除いて禁止されます。通常の給餌は不要ですが、SCP-898-JPと宿主の結合が解けた場合は防腐処理を施した男性Dクラス職員使用済み実験動物(中型哺乳類のオスであれば種は問いません)の死体を新たな宿主として与えてください。
説明: SCP-898-JPは、ウマ(Equus caballus)に酷似した外見を持つ生物です。体格や外見的特徴は所謂サラブレッドの芦毛馬に近いものですが、サラブレッドに見られがちな心身の脆弱さはなく、むしろ大半の軽種馬と比べても強靭な四肢を具えています。SCP-898-JPには消化器系の器官および生殖器が存在せず、咽喉は気管にのみ繋がっています。それ以外の器官および臓器などはウマと同様のものが存在しており、正常に機能しているようです。SCP-898-JPの生態は後述の異常特性を除けば通常のウマと変わらないものですが、異常特性を発揮した際の行動から高い知能を持つ可能性も示唆されています。
SCP-898-JPの後背部には先端の尖ったチューブのような形状をした由来不明の器官が収納されており、これを外部に伸ばして人間の男性哺乳類のオスの死体1の臀部から体内に注入し、死体を引き寄せて背に乗せる形で固定し宿主とします。SCP-898-JPはこの器官を用いて宿主から養分を摂取することで生命維持を行っていると考えられています。またSCP-898-JPは宿主をより強固に後背部に固定するために、体内から未知の成分を分泌して宿主をコーティングします。このコーティングはちょうど煌びやかな西洋風の衣装のように見えますが、これが何らかの擬態目的であるのか単なる偶然の産物であるのかは不明です。養分を吸収し尽くした場合、もしくはより「新鮮な」死体が付近に存在する場合、SCP-898-JPは宿主から器官を抜き再収納します。宿主から養分を摂取出来ない状態で、SCP-898-JPがどの程度生存可能であるのかははっきりとは分かっていませんが、最長5日間生存した例があります。
SCP-898-JPのもう一つの異常特性は、SCP-898-JPから約1.6km以内に人為的に何らかの危害2を加えられて(もしくは加えられようとして)いる人間女性その時の宿主と交配可能な動物のメスがいる時に発揮されます。SCP-898-JPは瞬間的にその現場近辺に転移し、宿主の発声器官を操作して制止の声を上げます。加害者が制止を聞かずにその場に留まった場合は、SCP-898-JPはその相手に攻撃を加えます。この時の攻撃手段は主にSCP-898-JPの四肢や体当たりによるものですが、宿主の手から先述の器官の先端を出し、剣のように操作して攻撃するケースも見られました。この攻撃は加害者(複数いる場合はその全員)が逃走するか、気絶や死亡などにより行動不能になるまで続けられます。制止もしくは攻撃により加害者がいなくなると、SCP-898-JPは宿主の発声器官から被害者の女性を気遣う言葉をかけ、その場から立ち去ります。この時の発言内容は、宿主の生前の性格・言動をある程度踏襲したものになりますが、多分に「芝居がかった」物言いになる傾向が強いようです。これらの一連の行動が何の目的で行われているのかは不明です。
実験記録014 - 20██/██/██
対象: D-898-JP-11、D-898-JP-12(加害者役)、エージェント・██(被害者役)
実験内容: SCP-898-JPに職員による演技を見抜く能力があるのかどうかの検証。
結果: SCP-898-JPは対象から約50mの地点に出現、そのまま対象の前に走り寄り「レディに手を挙げるなど言語道断! 今なら見逃してやる、即刻消え失せるがいい」と宿主の発声器官から発言。Dクラス職員達が打ち合わせ通り退去すると、エージェント・██に向き直り「お嬢さん、お怪我はありませんでしたか? この辺りはあのような不埒者もよく現れると聞く。また何かあればいつでも呼んでください」と発言、走り去ろうとしたところをエージェント・██および待機していた機動部隊員により確保された。
収容違反が起きた時にはこの手が使えそうですね。でも、ガリガリに痩せ細った白馬の王子に助けられるってのも微妙な体験でした… - エージェント・██
SCP-898-JPは██県の████林間キャンプ場付近で強姦未遂事件が発生した時、逮捕された3人の容疑者および被害者の女性がともに「どこからともなく白馬に乗った中年男性が現れ、容疑者を攻撃し女性を助けた」旨の供述をしたことから、財団エージェントによる近隣地域の捜索が行われ発見、収容されました。
補遺: 収容当初、SCP-898-JPは人間男性のみを宿主にすると考えられており、行われた実験においても他の動物の死体には反応しませんでしたが、これに疑問を抱いた███博士から「宿主のいない状態のSCP-898-JPに他の動物の死体のみを提供して待ち、本当に人間しか『食べられない』のかを検証したい」旨の申請がありました。以下はその実験およびその後の経過に関する記録です。
+ 実験記録024
- 実験記録を閉じる
実験記録024 - 20██/██/██
実験内容: 宿主を失った直後のSCP-898-JPの収容室に防腐処理済みのラット、アナウサギ、イエイヌ、ボノボ、ニワトリ、アジの死体を置き、経過を見る。
1日目: SCP-898-JPはうずくまったまま動かない。
2日目: SCP-898-JPはうずくまったまま動かない。時折立ち上がって飼育室の扉に体当たりを試みるが、しばらくすると再びうずくまり動かなくなる。
3日目: SCP-898-JPはうずくまったまま動かない。
4日目: SCP-898-JPはうずくまったまま動かない。生存確認のためDクラス職員が収容室に入ると、途端に駆け寄って体当たりおよび前脚での攻撃を始めた。Dクラス職員は重傷を負ったが回収。
5日目: SCP-898-JPはうずくまったまま動かない。
6日目: SCP-898-JPはゆっくりと身体を起こし、アナウサギの死体に器官を注入、宿主とした。
やっぱりだ。こいつはどこかで「人間の味」を覚えてしまっただけだったんだ。どうしてもっと早く気付かなかったのか… - ███博士
+ 収容違反記録004
- 収容違反記録を閉じる
収容違反記録004 - 20██/██/██: 実験記録024の結果を受けて特別収容プロトコルの給餌に関する部分が改定された翌日、サイト-81██内においてSCP-███-JPへの給餌のため、アナウサギの調理を行おうとした職員の前にSCP-898-JPが出現。宿主が鳴き声を上げた後、体当たりおよび器官による攻撃を行い、担当職員に軽傷を負わせた。これを受けて特別収容プロトコルの収容に関する部分も改定された。なお、これによって発生したSCP-███-JPの収容違反については別紙を参照。
Footnotes
1. 一定以上腐敗が進行していないものに限られます。
2. 身体だけでなく精神的な被害も含みます。
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scp-899-jp |
評価: +84+–x
収容中のSCP-899-JP-1
アイテム番号: SCP-899-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-899-JPは収容エリア-8116のSCP-899-JP収容室に収容されています。収容エリア-8116にはSCP-899-JP以外の人型生物オブジェクトは収容されません。SCP-899-JP収容室に隣接した待機室には、8名以上のDクラスを常駐させ、その全てをSCP-899-JP-2の“友達”にしてください。SCP-899-JP-2を構成している肉体の元の人物を知っているDクラスが、SCP-899-JP任務に就く事がないよう調整が行われます。SCP-899-JP-2の胴体部は常に維持されなければなりません。SCP-899-JP-1から要望があった場合、レベル3以上のクリアランスを持つ職員の許可があるならば、待機室からDクラスを必要な数だけ収容室に投入する事が許されます。SCP-899-JP-2の部位交換が行われた後は、待機室のDクラスには記憶処理を施すか、人員を新しく入れ替えてください。
説明: SCP-899-JPはSCP-899-JP-1及びSCP-899-JP-2の二つのオブジェクトです。
SCP-899-JP-1は7~8歳に見える、Mary F████(メアリー・フ███)と名乗るコーカソイドの女性です。唇及び、虹彩、強膜1が黒色を呈しています。それ以外の身体的特徴に通常の人間との差異は見られませんが、異常な身体能力を発揮する事が確認されています。解剖学的な差異は調査が不十分な為不明です。加齢や成長の兆候を一切見せない為、見た目以上の期間を生きていると見られています。SCP-899-JP-1は自身の事を「メリーメリーさん」と呼ばれる事を好み、この呼称はSCP-899-JP-1との円滑な会話を求める場合、ある程度の効果を発揮します。イギリス訛りの英語と標準的な日本語2を主に使用します。
SCP-899-JP-2は人間の頭部、胴体、右腕、左腕、右脚、左脚の六つで構成されており、それぞれが癒合し一つの人体を形成しています。SCP-899-JP-2を構成する六つの部位はその全てが異なる人物の肉体です。全ての部位は生体反応を示しません。頭部の両目は常に閉じられていますが、虹彩、瞳孔、強膜が白色である事が確認されています。
SCP-899-JP-1は、その子供のような外見に相応しい振舞いを見せますが、それがSCP-899-JP-1の性質なのか、演技であるのかは判明していません。SCP-899-JP-1はSCP-899-JP-2を唯一の友としており、「たっくん」と呼称し非常に執着しています。SCP-899-JP-1は生きた人型生物3に出会うと、SCP-899-JP-2の“友達”になるか訊ねます。この質問に肯定の意思を示した人物に対しては友好的に接します。逆に否定した人物に対しては興味を無くすか、怒りを示します。SCP-899-JP-1が友好を示した人物であっても、SCP-899-JP-2への侮蔑や敵対するとみられる行為をする人物には攻撃的になります。この時のSCP-899-JP-1は、攻撃対象に[編集済み]。これらの行為に対しては、財団の強化防護装備4で肉体の損壊を防げる事が判明しています。しかし振り回された場合の急激な運動方向の変化や、遠心力の影響から装着者を完全に守る事はできず、強化防護装備の今後の課題として取り上げられています。装備の耐久実験と称して、SCP-899-JPに対して侮蔑的行為を行う事は禁止されています。先の振舞いとは反対に、SCP-899-JP-1は自身に対する侮蔑や敵意に対しては意を介さない事が多いです。SCP-899-JP-1は相対した人物の名前を知っているように見えますが、どのようにして相手の名前を取得しているのか、名前以外にも情報を得ているのかは不明です。
SCP-899-JP-1は食事を摂らずとも生存可能なようですが、SCP-899-JP-1の希望により、他人型オブジェクトと同様の食事が配給されています。SCP-899-JP-1は配給された食事を自身で食べるか、SCP-899-JP-2の口に含ませるような行動を取ります。この行動がおままごとの一環なのか、SCP-899-JP-2にとって必要な行動なのかは不明です。
SCP-899-JP-2の肉体は腐敗しませんが、四肢のいずれかが時間と共に先端から黒色に変化していきます。黒色に変化した部分は乾燥しており、非常に脆くなる為少しの衝撃で崩壊します。SCP-899-JP-1はこの過程を「たっくんの体が腐っている」と表現しています。研究者の間ではこの現象を“腐蝕”と呼称しています。SCP-899-JP-2を凍結する事による腐蝕の阻止は失敗し、防腐処理等も効果を発揮しませんでした。
SCP-899-JP-2の肉体にこの腐蝕が発生するか、SCP-899-JP-2の肉体が大きな損傷を被ると、SCP-899-JP-1は“SCP-899-JP-2の友達”に対して、SCP-899-JP-2の“該当部位”と“友達の同じ部位”を交換してくれるように頼みます。“友達”がこの要求を拒否すると、SCP-899-JP-1は「SCP-899-JP-2を助けてくれないなら友達ではない」と怒りを示し、元“友達”に対して攻撃的になります。
SCP-899-JP-1の要求を承諾した場合、未知の手段でSCP-899-JP-2の“該当部位”と“友達の同じ部位”が転移します。この置換に痛みは伴わないようですが、それは転移時のみで、部位の転移後に“友達”は正常な身体を喪失した事による苦痛を訴えます。SCP-899-JP-2に転移した“友達”の部位は、SCP-899-JP-2と癒合します。SCP-899-JP-2の“腐蝕部位”が転移した“友達”に対しても同様の組織の癒合が見られますが、置換した部位を動かす事はできず、神経の異常な癒着の為に激痛を感じます。腐蝕の進行は部位が転移すると同時に停止します。
SCP-899-JP-2に部位の置換が完了すると、その部位における腐蝕現象は最低でも2時間5は起こらない事が確認されています。しかし四肢が喪失した胴体部を放置した場合は、新たに胴体を置換させたとしても、四肢の最低休止期間よりも短い時間で腐蝕現象が起こるのではないかとの予測が立てられています。
SCP-899-JP-1が同一人物に対して、二つ以上の部位を要求した事例はありません。SCP-899-JPに消費される人的資源削減の為、SCP-899-JP-1との接触を、過去に要求を承諾し既に置換を完了させた“友達”のみに限定させる実験が行われましたが、SCP-899-JP-2の四肢が全て喪失する直前で実験は中止されました。
SCP-899-JP-2の四肢の腐蝕は一つずつ進行して行き、二つ以上の部位で同時に腐蝕が進行する事はありません。四肢の腐蝕する順番は決まっていないように見えます。四肢が置換された順番、元の持ち主の年齢等から規則性を見出す試みは失敗に終わりました。しかし四肢のいずれかが損傷を受けた場合、損傷の最も激しい部位から腐蝕が始まる傾向にあります。
胴体部の腐蝕は、SCP-899-JP-2の四肢の全てが喪失してから始まるものと思われます。四肢の一つが完全な状態から全て腐蝕するには最短でも1週間の時間を要しますが、胴体部の腐蝕は非常に速く進行し、腐蝕開始から24分で胴体部全てが腐蝕した記録が残されています。
SCP-899-JP-2が頭部のみになった場合、首の切断面と接触している素材は黒色に変化し、更にその影響が拡がっていきます。黒色に変化した物質は粘度の高い流動体となり、不明な力によって動き始めます。強い腐臭のような悪臭を放つこの流動体は、調査の結果、有機体に対する強い腐蝕性を持つ事が判明しました。しかしながら、事件記録2070530では無機物に対しても高い腐蝕性を示しているように見える映像が記録されており、更なる調査については承認待ちとなっています。SCP-899-JP-2の頭部で腐蝕が発生した記録は一度も無く、またDNAを採取する等の頭部を破壊する試みは全て失敗しています。
SCP-899-JP-2の四肢が全て喪失し、胴体部の腐蝕が始まると、SCP-899-JP-1は周囲の人型生物(以下対象)を自身に向けて未知の力で引き寄せます。この引き寄せる力は時間と共に強まり、壁等で対象がSCP-899-JP-1に到達できない場合、対象は圧壊し死亡します。この圧壊は対象全員に一律に齎される訳ではなく、SCP-899-JP-1に近い対象から引力が圧壊レベルまで強まるようです。SCP-899-JP-1に認識された対象がSCP-899-JP-1の半径5m以内に居る場合、“引力”の影響は消失します。条件を満たさない対象は引力の影響を受け続け、耐え切れずに圧壊します。この影響はSCP-899-JP-2の状態が五体満足になるまで続きます。五体満足の状態に近付くごとに影響は弱まる事が確認されています。SCP-899-JP-2の身体喪失状態を放置し続けた場合、SCP-899-JP-1の影響範囲がどこまで拡がり、どの程度まで強くなるのかは不明ですが、事件2070530時に█████m離れた対象にも影響を及ぼしていた可能性が示唆されています。
映像記録990201 — 日付1999/02/01
+ 映像記録990201
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レベル3職員の許可の下、収容室内にSCP-899-JP-2と既に“友達”になっているD-899053が投入された。D-899053はSCP-899-JP-1とそれなりに良好な関係を持っていた。SCP-899-JP-1とD-899053はおままごとで遊んでいる。
≪SCP-899-JP収容室内の映像記録 — 日付1999/02/01≫
D-899053: ただいまメリー、たっくん。
SCP-899-JP-1: パパおかえりなさーい! たっくんもパパにおかえりしよ? [SCP-899-JP-2を持ちあげて胴体を揺らす] パパおかえりー。
D-899053: [引き攣った笑い] やっぱこれは慣れねえな。(小声)
SCP-899-JP-1: 今何か言った?
D-899053: いや、えっと、何でもないよメリー。仕事の愚痴がぽろっと出ちゃっただけで。メリーに聞かせるもんでもないや。
SCP-899-JP-1: お仕事大変なのねー。[SCP-899-JP-2の右腕を振る] パパがんばれー。 [SCP-899-JP-2の右腕を振り続けながら] たっくんがパパの事応援してるみたいよ!
D-899053: お、おう……。応援されたなら、パパ頑張んないとなー、ははは。
SCP-899-JP-1: あっ。
D-899053: 何だ? どうかしたのか?
SCP-899-JP-1: 大変、たっくんが右手が苦しいって言ってるの。
D-899053: なんだって、そりゃ大変だ。急いでお医者さんに見せないと。
SCP-899-JP-1: ううん、おままごとじゃなくってね、本当にたっくんが右手が痛いって言ってるの。ね、みっちゃん!6 みっちゃんはたっくんのお友達だよね?
D-899053: ん? ああ、勿論。
SCP-899-JP-1: そうよね! お友達よね! じゃあねじゃあね、みっちゃんの右手をたっくんの右手と交換して欲しいの!
D-899053: えっ、交換って……そりゃあ、無理だよ。
SCP-899-JP-1: 無理? どうして? お友達でしょう? お友達なのに、たっくんを助けてくれないの?
D-899053: 友達だからって、そう簡単に右手なんて差し出せる訳はないし、第一交換なんてできないだろ?
SCP-899-JP-1: 交換なら私がしてあげるよ? 大丈夫、一瞬で終わるから。
D-899053: そんな一瞬で終わるって……おい、なんだそれ。その、そいつの左腕に、なんでその刺青があるんだ? そいつは……広ひろしの刺青じゃないのか? (この時のSCP-899-JP-2の左腕はD-899052の物。D-899052とD-899053は強盗殺人の仲間だった)
SCP-899-JP-1: たっくんの左手? これはね、ひろくんのだよ? 昨日たっくんの左手の具合が悪くなっちゃったから、交換してもらったの。かっこいいでしょ!
D-899053: ……は?
SCP-899-JP-1: ひろくんはお友達だから、ちゃんと左手を交換してくれたよ? みっちゃんも交換してくれるよね!
D-899053: おいおいこんなの聞いてねえぞ。出せ! ここから出せ! 俺をここから出しやがれ!
SCP-899-JP-1: 交換してくれないの?
D-899053: もう遊びは終わりだ!! 聞いてんのか!?
SCP-899-JP-1: お友達って言ったのに。たっくんの事は助けてくれないんだね。[立ち上がり、D-899053に近寄っていく]
D-899053: [SCP-899-JP-1に右手を掴まれる] おい! 何だ離せ! [SCP-899-JP-1を振り払おうとするが失敗する] な、なんだよこれ!? びくともしねえぞ!? [罵倒]! 何なんだよ! 俺の手はやらねえぞ!!
SCP-899-JP-1: いらないわよ。だってもうあなたはたっくんのお友達じゃないもの。
D-899053: じゃあこの手はなんだ[悲鳴]! やめ[悲鳴]!! やめてくれ! なあメリー! 俺達友達じゃなかったのかよぉ!?
SCP-899-JP-1: 何言ってるの? 私のお友達はたっくんだけよ?
≪記録終了≫
<D-899053はSCP-899-JP-1によって[編集済み]。D-899053を回収した後、新たなDクラスを投入し、SCP-899-JP-2の左腕の置換が行われた。>
1999/02/01: SCP-899-JP任務に割り当てられるDクラスは、SCP-899-JP-2を構成する肉体を知らない者から選ぶようにプロトコルが更新されました。
事件2070530 — 日付2007/05/30
+ 事件記録2070530【要レベル3/899-JPクリアランス】
- 事件記録2070530を閉じる
詳細は事件記録2070530を参照してください。
事件後、SCP-899-JP収容室のベッドがあった床には下階にまで続く大きな穴が空いており、粘性の黒色流動体が下へと垂れ落ちている事が確認されました。該当箇所は、床の素材が流動体へと変化したために穴が空いたものと見られています。流動体は酷い悪臭を放ち、有機体に対して強い腐蝕性を示しました。研究の為、流動体は全て回収されました。
SCP-899-JP-1及びSCP-899-JP-2は臨時の収容室へと再収容され、他人型オブジェクトへの影響を防止する為にエリア-8116への移送が決定されました。
収容違反の危険性と広範に渡る人間への影響から、SCP-899-JP-2は五体満足の状態が維持されるよう特別収容プロトコルは改定され、SCP-899-JP-2の身体を故意に喪失させる実験はO5の承認が必要となりました。
映像記録2070531 — 日付2007/05/31
≪映像記録2070531 — 日付2007/05/31≫
<01:59>
SCP-899-JP-1はSCP-899-JP-2を抱き抱えて眠っている。
<02:00>
SCP-899-JP-1が苦しげに呻きだす。
パパもママもどこにいったの?
<02:08>
SCP-899-JP-1: [泣き声]
どこにつれていかれるの?
<02:13>
SCP-899-JP-1: やだ……やだよ……たっくん死なないで……。
たっくんがわたしをたすけてくれた。そのせいでたっくんのなかにわるいやつがはいりこんじゃった。
<02:16>
SCP-899-JP-1: [泣き声]
だそうとしたけどだめだった。わるいやつはあばれてる。こんどはわたしがたっくんをたすけるばん。
<02:22>
SCP-899-JP-1: はい……はい……わかりました……誓います……。
どれだけかかっても、ぜったいにたっくんをたすけてみせる。だってわたしたちはともだちだもん。
≪記録終了≫
眠りから覚めたSCP-899-JP-1はいつも通りの振る舞いを示しました。SCP-899-JP-1にこの記録についてインタビューを行いましたが、有益な情報を得る事はできませんでした。
脚注
1. 眼球の白目と呼ばれる部分。
2. いくつかの方言の知識も有しています。
3. 人間の胴体と手足を持つ生物。
4. 全身を覆う防護服。あらゆる外的要因から装着者を守る為に開発された。
5. 最長では100日。
6. D-899053の本名は███三夫みつお。
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scp-900-jp |
評価: +132+–x
███氏宅より回収したSCP-900-JP周辺写真。撮影方法は不明
アイテム番号: SCP-900-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-900-JP発生の可能性がある地域一帯は、現在エリア-8190に指定されています。エリア-8190周辺からの住民の退去または移住は既に完了していますが、エリア内への如何なる人員の進入も未然に防ぐため、エリア-8190は警戒レベル5の防護塀によって封鎖されています。
これら防護塀を含んだエリア-8190の存在は、記録の抹消、記憶処理を含んだ措置によって厳重に秘匿されます。その実現のために、エリア-8190周辺には最低四部隊の機動部隊を配置し、迅速な対応を心がけてください。
エリア-8190は広範囲に渡ってエリア指定がされており、情報の機密性を保つため、これ以上の機動部隊の増員または管理区域の設定は行われません。エリア-8190に於けるセキュリティ違反事例に対する予防措置について、現在議論と実験が継続中です。
SCP-900-JP発生期間は、現行の予報技術によって76%の確率で予想を的中させることが可能です。SCP-900-JPの発生が確認された場合、全ての人員はエリア-8190外に退避し、人工衛星"バアト"による観測と同時に電磁波測定、各種放射線測定、言語化プログラムを含んだ8.21kHz〜11.72kHzの光周波傍受装置の起動、目視による観測を継続してください。
SCP-900-JP現象終了後は、得られたデータの精査と報告の他、元素電位測定装置によってSCP-900-JP影響により消失した元素の内訳を調査してください。
エリア-8190セキュリティ違反に繋がるような精神的徴候を示していると思われる人物を発見した際は、ただちに近辺の保安部隊によって拘束後、睡眠時の夢に重点を置いた精神鑑定を実施してください。これによってエリア-8190セキュリティ違反を発生させ得る人物である事が判明した場合、隔離観察を施してください。
隔離観察によって、SCP-900-JP周辺地域へ移動したいという衝動の異常な高まりと、それを実現しようとする長時間の暴力的行動が見られた場合、対象を終了してください。
SCP-900-JP-1内部の探査もしくは立ち入りは現在禁止されています。
説明: SCP-900-JPは███[削除済]の[削除済]岳一帯で濃霧が発生した際に発生する複数の現象です。SCP-900-JP現象の一環である対象の濃霧はSCP-900-JP-1へと分類されます。
SCP-900-JP発生後、SCP-900-JP-1に覆われている物体は原子・分子レベルで少量の表面物質が剥離し、SCP-900-JP-1中心地点へと吸引されます。剥離した物質はSCP-900-JP-1中心地点への到達後消失します。
表面物質の剥離は、10分毎に対象物を構成する物質総量の0.12%を奪います。その際、剥離の必要の無い物質1もSCP-900-JP-1中心地点へと吸引されます。
剥離した物質は極微小であり、微量であるため、殆どの場合で剥離した物質を目視する事は出来ません。
生物が物質の剥離に曝された場合、物質の剥離が神経の破壊または生命の危機に及ぶほど進行しているにも関わらず、対象は苦痛や危機感を一切抱きません。報告では、この間対象には極端な判断能力の低下と行動力の鈍化が見られ、レム睡眠の徴候を示す脳波が検出されています。
この時に対象をSCP-900-JP-1から回収するか、SCP-900-JP現象が終了する事によって、対象は平常時の感覚を取り戻します。
SCP-900-JP-1中心地点である、約11㎥の空間はSCP-900-JP-1aに分類されます。人間(以下被験者)がSCP-900-JP-1aに進入した際、被験者は即座に消失します。その後SCP-900-JP現象が終了するまで、SCP-900-JP-1aは断続的に複数のパターンの可視光を照射し続けます。
SCP-900-JP現象は気象的要因による濃霧の消滅によって終了します。これまでSCP-900-JPによって消失した物質が再出現した例はありません。
補遺1: SCP-900-JP-1aにて人間が消失した際の可視光が、光無線通信のパターンを一部利用した、可視光による信号である事が判明しました。直ちに従来の光無線通信技術を応用した言語化プログラムの研究が行われました。
これによって、SCP-900-JP-1aからの光は、直前に消失した人物の情報を利用したメッセージである事が判明しました。
以下は、これによって言語化された一部のメッセージです。
直前に消失した被験者: █氏 日本人男性 43歳 一般人 エリア-8190セキュリティ違反事例-19によって進入
メッセージ内容: 私は█ ███。43歳、日本人だ。███証券会社に19年間勤め、3年前妻と離婚した。15歳の息子と7歳の娘は妻が引き取り、私はアパートに引っ越して一人で暮らしていた。妻の名は██、息子の名は█、娘の名は██だ。6ヶ月前気管支炎に罹った際、初めて会社を休んだ。
夢を見たのは、その時が最初だった。霧の向こうに、世界があった。私がいる世界だった。今私が立っている世界だった。
そこは、私が以前住んでいたのと全く同じ地区だった。同じ家が建ち、同じ人々とすれ違い、同じコンクリートが打たれていた。感触があり、呼吸があり、音があり、光があり、空気があった。
そして私は、妻と子供といた。かつて変わる筈が無いと思っていたもの。既に失われてしまった世界があった。
その世界は、もうここにある。ここで、私はそうしている。霧の中に世界がある。
夢や幻ではない。本物の世界だ。私が、本当に生きていた世界。私が現実だと信じた世界。あの四畳一間こそが夢だったのだと信じさせてくれる世界。
私はここにいる。世界の果ては、ここにある。
メモ: 調査の結果█氏の実在を確認。同氏は離婚後鬱状態が続き、エリア-8190セキュリティ違反事例-19の2日前に行方不明となっていた。元妻や子供らの無事が確認されたため、メッセージの内容は虚偽のものである可能性がある。人相の照合により、█氏はおよそ92%の確率で、エリア-8190セキュリティ違反事例-19に於ける侵入者と同一人物であるとの結果が出ている。
直前に消失した被験者: ██女史 日本人女性 21歳 一般人 エリア-8190セキュリティ違反事例-26によって進入
メッセージ内容: 私は██ ██。21歳、日本人です。高校を卒業してからフリーターで、2年前アルバイト仲間の男の人と付き合い始めました。彼は私の父親と同じように、私に暴力を振るいながら犯しました。私は今日まで2ヶ月間軟禁状態にありました。彼の名前は██ ███です。
夢を見たのは、軟禁の初日が最初でした。霧の向こうに、世界がありました。私がいる世界でした。今私が立っている世界でした。
そこは、どこまでも広がる草原と青空の世界でした。空にはチョコレートケーキとメイプルシロップの雲が浮かんでいて、私はいつでも、望んだ時にそれを本物にして食べる事が出来ました。私はいつでも好きな服装に着替える事が出来、傷を負う事も無くどこまでも好きに走って行けました。
見渡す限りどこにも人はいませんでした。それでも、私が会いたいと思った人は即座に私の目の前に現れ、私が満足するまで私と共に、その人そのものの状態で居てくれました。
その世界は、もうここにあります。ここで、私はそうしています。霧の中に世界があるのです。
夢や幻ではありません。本物の世界なのです。私が、本当に生きている世界。私が自由だと信じられる世界。あの父親も彼もただの夢だったのだと信じさせてくれる世界。
私はここにいる。世界の果ては、ここにある。
メモ: 侵入者によるセキュリティ違反事例の計画性が明らかに高まっている。現状の態勢では、空からの侵入には対処し切れない。SCP-900-JPの持つミーム的特性の調査と併せて、封じ込め態勢の見直しを検討されたい。
追記: 本事例に於いては、被験者が自宅より失踪する4日前に母親へ以下の文のメールを送信していた事が明らかとなっています。被験者が何らかの形でSCP-900-JPの不明な影響を受けていたかどうか、そうであるならばどのようにして影響に曝されたかについて議論と調査が進行しています。
メール本文: お母さん、夢の場所がわかったよ。行き方も教えてくれた。さようなら。でもまた会えるよ
SCP-900-JPが遠隔地の一般人に対して何らかのミーム効果を発揮している可能性について、調査と実験が継続されています。
補遺2: エリア-8190セキュリティ違反事例-31に於ける侵入者である███氏の自宅を捜索したところ、SCP-900-JP-1へ侵入する███氏を写したSCP-900-JP周辺写真が発見されました。写真には日付は無く、またエリア-8190セキュリティ違反事例-31時点での同氏の状況と侵入方法から考えて明らかに不自然な写真であった事から、SCP-900-JPの持つ未知のミーム効果解明に繋がる研究対象に分類されました。
補遺3: SCP-900-JP-1aからの可視光信号をリアルタイムで言語化し、同時に任意の信号パターンを送信する事で、リアルタイムでのコミュニケーションを図る実験が行われました。
以下は、その実験の通信記録ログです。
直前に消失した被験者: D-88374 日本人男性 31歳 左腕部に"238"と書かれたタグを装着
<記録開始>
SCP-900-JP-1a信号: 俺は█ ██。31歳、日本人だ。中学を出てからマグロ漁船で──
送信信号: こちら ほんぶ おうとう ねがう
SCP-900-JP-1a信号: 聞こえるな。何か聞こえる。ああ、そうだ、実験なんだった。よく聞こえる。あんたの声が聞こえるぞ。
送信信号: たぐ の かくにん
SCP-900-JP-1a信号: ああ、確認出来る。238だ。これで俺があんたらにとってD-88374だって分かったかい?
送信信号: じょうきょう もとむ
SCP-900-JP-1a信号: 町だ。漫画みたいな、面白い形の建物がずらりと並んで、なんだか、こう、色々と動いている。知ってる町じゃない。でも、なんだか楽しげだ。メインストリートみたいな所で・・・人も沢山行き交ってる。まるでカートゥーンみたい人々がそこら中にいる。
送信信号: はなし かけろ
SCP-900-JP-1a信号: 意味ねぇよ。
送信信号: なぜ
SCP-900-JP-1a信号: ここが、俺が本当に生きていた世界だからさ。やっと夢から覚めたんだ。ここが、俺そのものなんだ。だから俺が応えてる以上の事なんざ、あの連中からは聞けやしねえよ。
送信信号: どういう ことか
SCP-900-JP-1a信号: あんたらはここを夢か幻の世界だと思ってるみたいだが、ここにはちゃんと物質がある。その物質全部は、俺によって作られてんだ。世界は俺で、俺は世界なんだ。そしてそうやって作られている世界は、ここにゃもっともっと沢山ある。そのどれもが現実で、真実なんだよ。夢なんかじゃねぇ。俺に合わせて形を変える現実さ。
送信信号: どうやって それ しった
SCP-900-JP-1a信号: 霧が教えてくれたのさ。頭の中にある霧が、ここの事を全部教えてくれるんだ。
送信信号: きり とは
SCP-900-JP-1a信号: 霧は、現実を覆う影そのものさ。あらゆるものがそれに覆われてる。俺たちはその霧を通した向こう側を見ようとしていた、いつもそうしていた。でも間違いだったんだ。俺たちが見るべきだったのは霧の向こうじゃなくて、霧そのものだったんだ。
ああ、もう行くよ。霧が誘ってるんだ。俺が、本当に生きている世界へ。俺が楽しいと信じられる世界へ。あんたらには感謝してるよ。俺のクソみたいな夢が、ただの夢だったと信じられる世界へ送ってくれたんだからな。
俺はここにいる。世界の果ては、ここにある。
SCP-900-JP現象が、SCP-900-JP-1の消滅によって終了。SCP-900-JP-1a信号も停止した。
<記録終了>
補遺4: D-88374を使用した実験以後、SCP-900-JP現象発生の際およそ45%の確率頻度でSCP-900-JP-1aが人間の消失無しで可視光信号を発するようになりました。信号は常に以下の文言を繰り返し発信し続けています。
野に伏す 霧は 我が身命
まことは ゆめの 素材なり
世界の果ては ここにある
このメッセージが発されている間、エリア-8190セキュリティ違反事例に於いて侵入を試みた者の内、確保された全ての被験者の脳活動がレム睡眠の徴候を示していました。
また、このメッセージの発信開始以降、財団職員によるエリア-8190セキュリティ違反事例の発生が報告され始めました。彼らの多くがセキュリティ違反事例の数日前から、鬱に似た症状を発露させていました。
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SCP-900-JPの性質について███氏の自宅から有力な物証が得られた。███氏はSCP-900-JP的な夢を見始める以前から、自身の夢を日記に記録しており、そのため夢の内容については一定の信頼性が存在するとされている。
███氏が日常生活に於いて鬱の徴候を示し始めた時期、日記にはSCP-900-JPに関係していると思われる記述が現れ始めている。
███氏は夢の中を探索し、その詳細な記述を行っているが、その中で「夢の世界には果てのようなものがあった」という記述が幾つか発見された。その果てとは、世界がそこで途切れ、そこから先はただ霧に包まれている所だったと記述されている。
問題なのは、その果ての所に、突然異なる世界が構築されたのを███氏が夢の中で目撃した事だ。███氏はそこに構築された世界を「自分の夢ではない」と描写しながら、その世界を詳しく記述していた。
その日の日付は████年6月12日。その3日後、エリア-8190セキュリティ違反事例-26が発生している。その際得られたSCP-900-JP-1a光信号に於いて描写された世界の有様は、███氏が記述した「突然構築された草原世界」の描写の記述と一致していた。
そしてエリア-8190セキュリティ違反事例-26が発生した日付の日記では、███氏は違う地点で、また異なる世界の構築を目撃したことを記述した。
その四日後、エリア-8190セキュリティ違反事例-27が機動部隊による侵入者の拘束によって阻止された日の日記で、███氏は新しい異なる世界が霧状に分解されていった様を記述している。
そしてその翌日、また新しい世界が構築された事が描写され、その有様はエリア-8190セキュリティ違反事例-28によって得られた光信号からの描写と一致していた。
これが一体何を示すのか?
███氏はSCP-900-JP的な夢の中で、自身が愛用するカメラを思う事でそれを出現させ、それによって夢の中の模様を撮影した。
するとその翌日に、現実で彼自身が愛用していたカメラのフィルムに、本報告書にも掲載されている写真が収められていたとの事だった。
SCP-900-JPは──これは全く実証不可能な事なのだが──現実の人間の夢を再現する事によって、自身を現実世界へと拡大し続けている。
現実世界から奪い取った物質を使用して、夢の世界を、どこかの空間に於いて現実化し続けている。そうして取り込んだ人間によって、SCP-900-JPは自身と現実世界を繋げている。
だが、SCP-900-JP周辺に完全に人を立ち入らせないようにする事は、今や全く困難な事となってしまった。SCP-900-JPに影響された人物はSCP-900-JPを目指すためにあらゆる行動をとる。その行動は、SCP-900-JPを目指すのが困難であればある程過激なものとなっていく。
我々がSCP-900-JPを厳重に封じ込めれば封じ込める程、被験者達は過激な行動でそれの破壊を試み、結果、その行動や異変は多くの人々の目に留まるだろう。
あるいはその行動自体が、人類に大きな実害を及ぼす可能性もある。
SCP-900-JPが被験者に対して影響を及ぼす方法が不明なままである限り、このジレンマを解消することは出来ないだろう。
我々は未来へと託し、現状に妥協する他は無いのである。
SCP-900-JPは現実を侵蝕する夢なのだ。あるいは全ての人類を死滅させる事が出来れば、我々はせめてこの地球という天体だけは残せるのかもしれない。
だが、我々は我々であることを辞められない。
いずれ全てが夢の底へと埋もれたならば、その時まさに、世界の果ては霧の中に在るだろう。
──エリア-8190管理主任███
Footnotes
1. 気体や液体等の不安定な状況にある分子など
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